JP2004126344A - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】現像バイアスの加重平均電圧Vavgを多段階に変更設定しながら各条件でパッチ画像を形成し、その画像濃度に基づき加重平均電圧Vavgの最適値を求める(ステップS1〜S9)。各条件で形成されたパッチ画像のうちの最低濃度Dminが目標濃度を超えている、つまり加重平均電圧Vavgをどのように設定しても画像濃度が高すぎる場合には(ステップS8)、装置の動作異常と判断し、表示部にエラーメッセージを表示するとともに(ステップS11)、加重平均電圧Vavgを最小値に設定して(ステップS12)、処理を終了する。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電潜像をトナーにより顕像化することで画像を形成する電子写真方式の画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を応用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置では、所定の表面電位に帯電された像担持体上に静電潜像が形成されるとともに、像担持体と対向配置されてトナーを担持するトナー担持体と、静電潜像を担持する像担持体との間に印加された現像バイアスの作用により、トナーがトナー担持体から像担持体上に移動することでトナー像が形成される。
【0003】
この種の画像形成装置では、装置各部に与えるバイアス電位を始めとする様々な要素からなる画像形成条件を変化させることで画像濃度などの画像品質を制御できることが従来より知られている。また、装置の個体差や温湿度など装置の周囲環境の変化に起因してトナー像の画像濃度が異なることがある。そこで、上記要素のうち画像濃度に影響を与える濃度制御因子を調整することで画像濃度を制御する濃度制御技術が従来より提案されている。
【0004】
例えば、本件出願人は、現像バイアスおよび帯電バイアスを濃度制御因子として用いた画像形成装置を既に開示している(特許文献1参照)。また、非接触現像方式の画像形成装置において、現像バイアスとしての交番電圧の振幅およびデューティ等を画像濃度に応じて変更する装置がある(例えば、特許文献2参照)。ここで、「非接触現像方式」とは、静電潜像を担持する像担持体とトナーを担持するトナー担持体とを所定のギャップを隔てて対向配置し、該ギャップに交番電圧を印加することによりトナーを飛翔させてトナー像を形成する現像方式であり、例えばジャンピング現像方式がこれに含まれる。
【0005】
これらの画像形成装置では、濃度制御因子を変更設定することで画像形成条件を種々に変化させるとともに、各条件でテスト用の小画像(パッチ画像)を形成する。そして、各パッチ画像の画像濃度を検出し、その検出結果に基づいて所望の画像濃度(目標濃度)を得るための画像形成条件を求めている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−100471号公報(図3)
【特許文献2】
特開2001−27837号公報(図19)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この種の画像形成装置では、装置各部の劣化や、トナーの残量低下およびその特性の疲労劣化等に起因して、同一条件で形成された画像の画像濃度が経時的に変化してゆくことが知られている。一般には、像担持体の性能劣化やトナーの帯電性低下等により、画像濃度が次第に低下してゆく場合が多い。したがって、上記した濃度制御技術においては、このような経時変化にも対応できるような画像濃度の制御範囲を予め確保しておく必要がある。
【0008】
しかしながら、画像濃度の制御範囲を広く取ることは容易ではない。というのは、これらの濃度制御因子は、画像濃度に影響を与えるのみならず、装置各部の動作に様々な影響を及ぼしているからである。例えば、上記した非接触現像方式の画像形成装置では、交番電圧の振幅を大きくしすぎるとギャップにおいて放電が生じ、画像形成に支障を来すことがある。一方、像担持体とトナー担持体との間の電位差を小さくしすぎると、これらのいずれにも付着せず装置内に飛散するトナーの量が多くなり、形成される画像や装置内部を汚してしまう。
【0009】
特に、画像濃度が必要以上に高くなる画像形成条件で継続的に画像形成を行うと、トナーの供給量が多くなるため装置内部への飛散が起こりやすく、またトナー消費量も多くなってランニングコストの上昇を招く。
【0010】
また、上記した従来技術のように、形成したパッチ画像の画像濃度に基づいて濃度制御を行う装置では、画像濃度の制御範囲を広く取りすぎると処理の効率が低下するという問題がある。すなわち、画像形成条件の可変範囲が広くなるため、濃度制御を精度よく行うためにはより数多くの条件でパッチ画像を形成することが必要となり、トナー消費量および処理に要する時間が増大してしまう。その結果、トナーおよび処理時間において、画像形成に寄与せぬまま無駄に消費されてしまう比率が高くなる。一方、短時間であるいは少ないトナー消費量で処理を行おうとすれば、形成するパッチ画像の個数を減らす必要があり、その結果、濃度制御の精度は低下してしまうこととなる。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、濃度制御因子を調整することで画像濃度を制御する画像形成装置および画像形成方法において、無駄なトナーの消費を抑え、画像濃度の制御および画像形成動作を効率よく安定して行うことを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、画像濃度に影響を与える濃度制御因子を所定の調整範囲内で調整することによって画像濃度が所定の目標濃度となるように制御しながら画像形成動作を実行する画像形成装置において、上記目的を達成するため、前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が前記目標濃度を超えるときに、動作異常の発生を報知する報知手段を備えることを特徴としている。
【0013】
このような画像形成装置では、トナー残量の低下や装置各部の性能劣化に起因して、同一の画像形成条件で形成される画像の濃度が次第に低下してゆくことが知られている。したがって、使用を重ねるうちに画像濃度が低下し、濃度制御因子をどのように調整しても目標濃度に到達しなくなってしまうことがあり得る。これに対して、濃度制御因子をどのように調整しても目標濃度を超えてしまうほど画像濃度が高くなることは、通常の動作では考えられない。
【0014】
そこで、この発明では、濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の制御範囲の下限値が目標濃度を超える、すなわち、濃度制御因子をどのように調整しても画像濃度が目標濃度を超えてしまう場合には、報知手段によりユーザに対して動作異常の発生を報知するようにしている。そのため、ユーザに対して、異常を解消するための然るべき措置を取るよう促すことができる。また、異常な動作状態のまま画像濃度を目標濃度に適合させようとして濃度制御を行っても、トナーおよび時間を浪費するだけで、好ましい結果を得ることはできない。そこで、上記したように、画像濃度が異常な高濃度となった場合に装置の動作異常が発生したと判断することにより、このような無駄な濃度制御を行うことが回避される。また、異常な動作状態のまま使用が継続されて必要以上のトナーが消費されたり、装置により重大なトラブルが発生するのを未然に防止することができる。このように、この画像形成装置では、無駄なトナーの消費を抑え、画像濃度の制御および画像形成動作を効率よく安定して行うことができる。
【0015】
ここで、前記報知手段は、所定のメッセージを表示可能な表示部を備えるようにしてもよい。すなわち、画像濃度が異常な高濃度となったときには、動作異常が発生した旨のメッセージを表示部に表示することで、ユーザに異常の発生を知らせるとともに、異常の解消を促すことができる。なお、警報音など音声による報知を併せて行うようにすればさらに効果的である。
【0016】
また、この画像形成装置は、パッチ画像として形成された画像の画像濃度を検出する検出手段をさらに備え、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記制御可能な画像濃度の下限値を求めるものであってもよい。このような画像形成装置では、パッチ画像濃度を検出することによって画像濃度を実測することができる。したがって、画像濃度の下限値を精度よく求めることが可能である。なお、このパッチ画像としては、濃度制御因子を調整するために形成されるものを用いるとより効率的である。
【0017】
また、前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が所定の目標濃度を超えているときには、前記調整範囲内において画像濃度が最低となるように前記濃度制御因子を設定しながら前記画像形成動作を実行するようにしてもよい。画像濃度が異常な高濃度となる原因の中には比較的軽微なトラブルによるものもあり、その場合、必ずしも直ちに動作を停止させる必要があるわけではない。そこで、装置への悪影響を最少限に抑えるため、画像濃度が最も低くなる条件とした上で画像形成動作を実行できるようにすることで、引き続き画像形成を行うことが可能となる。
【0018】
一方、前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が所定の目標濃度を超えているときには、前記画像形成動作の実行が禁止されるようにしてもよい。こうすることで、画像形成を引き続き行うことはできなくなるが、異常な動作状態のまま画像形成を行うことによるより重大なトラブルの発生を未然に防止することが可能である。
【0019】
また、この発明は、画像濃度に影響を与える濃度制御因子を所定の調整範囲内で調整することによって画像濃度が所定の目標濃度となるように制御しながら画像形成動作を実行する画像形成方法において、上記目的を達成するため、前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が前記目標濃度を超えるときには、報知手段により動作異常を報知することを特徴としている。
【0020】
このように構成された発明では、上記した装置と同様に、画像濃度が異常な高濃度となったとき、ユーザに対して異常を解消するための然るべき措置を取るよう促すことができる。また、異常な動作状態のまま使用が継続されて必要以上のトナーを消費したり、より重大なトラブルが発生するのを未然に防止することができる。このように、この画像形成方法では、無駄なトナーの消費を抑え、画像濃度の制御および画像形成動作を効率よく安定して行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する非接触現像方式の画像形成装置である。この画像形成装置では、ユーザからの画像形成要求に応じてホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10がエンジン部EGの各部を制御してシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0022】
このエンジン部EGでは、感光体2が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体2の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット3、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部5がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3は帯電制御部103から帯電バイアスが印加されており、感光体2の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。
【0023】
そして、この帯電ユニット3によって帯電された感光体2の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、露光制御部102から与えられる制御指令に応じて光ビームLを感光体2上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。例えば、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介してメインコントローラ11のCPU111に画像信号が与えられると、エンジンコントローラ10のCPU101が露光制御部102に対し所定のタイミングで画像信号に対応した制御信号を出力し、これに応じて露光ユニット6から光ビームLが感光体2上に照射されて、画像信号に対応する静電潜像が感光体2上に形成される。また、必要に応じて後述するパッチ画像を形成する場合には、予め設定された所定パターンのパッチ画像信号に対応した制御信号がCPU101から露光制御部102に与えられ、該パターンに対応する静電潜像が感光体2上に形成される。
【0024】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、図示を省略する回転駆動部、支持フレーム40に対して着脱自在に構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、図2に示すように、現像器制御部104により制御されている。そして、この現像器制御部104からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体2と対向する所定の現像位置に位置決めされて、選択された色のトナーを感光体2の表面に付与する。これによって、感光体2上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。なお、図1は、イエロー用の現像器4Yが現像位置に位置決めされた状態を示している。
【0025】
これらの現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0026】
図3はこの画像形成装置の現像器を示す断面図である。また、図4は非接触現像の原理を示す図である。この現像器4Kでは、その内部にトナーTを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が軸着されており、当該現像器4Kが上記した現像位置に位置決めされると、現像ローラ44が感光体2と所定のギャップGPを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。この現像ローラ44は、後述する現像バイアスを印加されるべく銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでブラックトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。
【0027】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード45が配置されている。この規制ブレード45は、ステンレスやリン青銅などの板状部材451と、板状部材451の先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材452とで構成されている。この板状部材451の後端部はハウジング41に固着されており、現像ローラ44の回転方向D3において、板状部材451の先端部に取り付けられた弾性部材452が板状部材451の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材452が現像ローラ44表面に弾性的に当接して現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。
【0028】
なお、現像ローラ44表面のトナー層を構成する各トナー粒子は、供給ローラ43、規制ブレード45と摩擦されたことによって帯電しており、ここではトナーが負に帯電するものとして以下説明するが、装置各部の電位を適宜変更することで正に帯電するトナーも使用可能である。
【0029】
このようにして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体2との対向位置に搬送される。そして、現像器制御部104から、直流電圧Vdcと交流電圧Vacとが重畳された現像バイアスVbが現像ローラ44に印加されると、現像ローラ44上に担持されたトナーTはギャップGPに生じる交番電界の作用により飛翔して、感光体2の表面各部にその表面電位Vsに応じて部分的に付着し、こうして感光体2上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。また、感光体2に移行せず、現像ローラ44に残ったトナーはさらに下流側に搬送され、供給ローラ43によって掻き落とされる。
【0030】
図5は装置各部の電位を示す図である。上記したように、現像バイアスVbは直流電圧Vdcと交流電圧Vac(図4)とが重畳されたものであるが、その交流電圧Vacの波形は、図5(a)に示すように、振幅Vppの矩形波である。また、その波形デューティ、すなわち1サイクルにおいてその瞬時値が一方のピーク値となる期間taと他方のピーク値となる期間tbとの比は、所定の範囲で変更設定可能となっている。そのため、現像バイアスVbの1サイクルあたりの平均電圧、つまり加重平均電圧Vavgは、直流電圧Vdcと、交流電圧Vacの振幅Vppおよび波形デューティとのいずれかを変更することで変更可能である。
【0031】
また、感光体2の表面では、図4に示すように、帯電ユニット3により一様な表面電位に帯電された後、露光ユニット6からの光ビームLにより部分的に露光される。その結果、図5(b)に示すように、感光体2の表面電位Vsは、露光を受けなかった領域では帯電後の電位Voが維持される一方、露光を受けたドット部DTでは表面の電荷が中和されて電位Vonまで低下している。以下、本明細書においては、感光体2表面のうち、光ビームLにより露光された領域の電位Vonを「明部電位」、露光されない領域の電位Voを「暗部電位」という。
【0032】
装置各部にこのような電位が与えられることにより、図5に示すように、二次的に以下の各パラメータを定義することができる:
コントラスト電圧Vcon=|Vavg−Von|…(1);
逆コントラスト電圧Vr=|Vo−Vavg|…(2);
最大ギャップ電圧Vm=|Vo−Vdc|+Vpp/2…(3)。
【0033】
このうち、コントラスト電圧Vconが大きくなると、現像ローラ44の平均電位と感光体2に形成されたドット部DTとの電位差が大きくなり、現像ローラ44からドット部DTへのトナー移動が促進される。すなわち、コントラスト電圧Vconは、ドット部DTにおけるトナー付着量に関するパラメータである。
【0034】
また、逆コントラスト電圧Vrは、現像ローラ44の平均電位と感光体2の露光されなかった領域の表面電位との差であり、この値が大きくなるとギャップGPに飛翔したトナーTが現像ローラ44に引き戻される作用が強まり、カブリや装置内部へのトナー飛散は減少するが、微小なドット部DTへのトナー付着が阻害されるので細線の画像濃度が低下しやすくなる。一方、逆コントラスト電圧Vrが小さくなると、ギャップGPに飛翔したトナーTを現像ローラ44および感光体2のいずれかに引きつける作用が弱くなり、その結果、いずれにも付着せずトナーTが装置内部に飛散してしまう確率が増加する。このように、逆コントラスト電圧Vrは、細線画像の画像濃度および装置内部へのトナー飛散の程度に関するパラメータである。
【0035】
さらに、最大ギャップ電圧Vmは、ギャップGPに印加される電圧の最大値を示すものであり、この値がギャップGPにおける放電開始電圧以上になると現像ローラ44と感光体2との間で放電が発生し、画像品質を著しく損ねるばかりでなく、装置の故障を引き起こすことがある。このように、最大ギャップ電圧Vmは、ギャップGPでの放電の有無に関するパラメータである。
【0036】
なお、装置各部に与えられる各バイアスの電位や波形は上記に限定されるものではない。例えば、現像バイアスVbに含まれる交流電圧Vacの波形は上記した矩形波以外に、例えば三角波や正弦波などの波形としてもよい。また、上記では、感光体2はネガ潜像、すなわち光ビームLにより露光された領域にトナーが付着するタイプのものとして説明したが、露光されなかった領域にトナーが付着するように構成されたポジ潜像タイプのものであってもよい。
【0037】
また、この実施形態では、図5に示す電位関係に基づき最大ギャップ電圧Vmを上記(3)式のように定義したが、各部に与える電位の大きさによってこれと異なる定義が必要な場合がある。すなわち、最大ギャップ電圧Vmとは、現像ローラ44と感光体2との間に生じうる瞬時的な電位差の最大値のことであり、各部の電位の大小に応じて適宜定義すればよい。
【0038】
図1に戻って、装置構成の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。さらに、中間転写ベルト71を挟んでローラ73と対向する位置には、該ベルト71表面に対して不図示の電磁クラッチにより当接・離間移動可能に構成された二次転写ローラ78が設けられている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体2上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から取り出されて中間転写ベルト71と二次転写ローラ78との間の二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。
【0039】
なお、中間転写ベルト71へトナー像を一次転写した後の感光体2は、不図示の除電手段によりその表面電位がリセットされ、さらに、その表面に残留したトナーがクリーニング部5により除去された後、帯電ユニット3により次の帯電を受ける。
【0040】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76、濃度センサ60および垂直同期センサ77が配置されている。これらのうち、クリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。また、垂直同期センサ77は、中間転写ベルト71の基準位置を検出するためのセンサであり、中間転写ベルト71の回転駆動に関連して出力される同期信号、つまり垂直同期信号Vsyncを得るための垂直同期センサとして機能する。そして、この装置では、各部の動作タイミングを揃えるとともに各色で形成されるトナー像を正確に重ね合わせるために、装置各部の動作はこの垂直同期信号Vsyncに基づいて制御される。さらに、濃度センサ60は中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、後述するようにして中間転写ベルト71の外周面に形成されるパッチ画像の光学濃度を測定する。
【0041】
また、図2に示すように、各現像器4Y、4C、4M、4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの特性などに関するデータを記憶するメモリ91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y、4C、4M、4Kにはコネクタ49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられたコネクタ108と接続され、インターフェース105を介してCPU101と各メモリ91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では本体側コネクタ108と各現像器側のコネクタ49K等とが機械的に嵌合することで相互にデータ送受を行っているが、例えば無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行うようにしてもよい。また、各現像器4Y、4C、4M、4Kに固有のデータを記憶するメモリ91〜94は、電源オフ状態や該現像器が本体から取り外された状態でもそのデータを保存できる不揮発性メモリであることが望ましく、このような不揮発性メモリとしては例えばフラッシュメモリや強誘電体メモリ、EEPROMなどを用いることができる。
【0042】
また、図1への記載を省略するものの、この画像形成装置では表示部12が設けられている(図2)。そして、必要に応じCPU111から与えられる制御指令に応じて所定のメッセージを表示することで、必要な情報をユーザに対し報知する「報知手段」として機能する。例えば、装置の故障や紙詰まり等の異常が発生したときにはその旨をユーザに知らせるメッセージを表示する。また、いずれかの現像器内のトナー残量が所定値以下まで低下したときには、当該現像器の交換を促すメッセージを表示する。この表示部12としては、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を用いることができるが、これ以外に、必要に応じて点灯あるいは点滅する警告ランプを用いてもよい。さらに、メッセージを表示することで視覚によりユーザに報知する以外に、予め録音された音声メッセージやブザー等の音声による警報装置を用いたり、これらを適宜組み合わせて使用してもよい。
【0043】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0044】
次に、この画像形成装置における濃度制御処理について説明する。上記のように構成された画像形成装置では、装置の個体ばらつきに起因して、また装置特性の経時変化に起因して起こる画像濃度の変動を抑制するため、装置の電源投入直後などの適当なタイミングで各トナー色毎に濃度制御処理を実行し、濃度制御因子としての現像バイアスの加重平均電圧Vavgおよび光ビームLの単位面積あたりのエネルギー(以下、単に「露光エネルギー」という)Eの最適化を行っている。
【0045】
より具体的には、次のようにしている。すなわち、これらの濃度制御因子のうち、加重平均電圧Vavgは高濃度画像および低濃度画像のいずれの画像濃度にも影響を与えるのに対し、露光エネルギーEは低濃度画像の画像濃度に大きく影響するものの、高濃度画像への影響は小さいことがわかっている。ここで、高濃度画像とは、例えばベタ画像や塗りつぶしを多用した画像のように、画像全体に占めるドット部の面積の比率が比較的高い画像であり、また低濃度画像とは、細線画像のように、画像全体に占めるドット部の面積の比率が比較的低い画像である。この性質を利用して、まず濃度検出用のテスト画像として高濃度パッチ画像を形成してその画像濃度を検出し、その検出結果に基づいて加重平均電圧Vavgの最適値を求める。そして、次に低濃度パッチ画像を形成し、その検出結果に基づいて露光エネルギーEの最適値を求めることで高濃度画像、低濃度画像のいずれにおいても所望の画像濃度を得られる画像形成条件を求めている。
【0046】
図6はこの実施形態における現像バイアス設定処理を示すフローチャートである。また、図7はこの実施形態における露光エネルギー設定処理を示すフローチャートである。これらの処理の内容は基本的に同一であり、変更するパラメータ等が一部相違するだけである。そこで、ここではまず図6に示す現像バイアス設定処理について説明し、図7の露光エネルギー設定処理についてはその相違点について主に説明する。
【0047】
この現像バイアス設定処理では、まず露光エネルギーEおよび現像バイアスVbの振幅Vppを所定の基準値に設定する(ステップS1)。この基準値の設定は任意であるが、加重平均電圧Vavgの変更によるパッチ画像の濃度変化が現れやすい条件としておくのが望ましく、この観点から、ここでは露光エネルギーEをその可変範囲における最大値、振幅Vppをその可変範囲における中央値としている。なお、振幅Vppの可変範囲については、ギャップGPにおいてトナーを飛翔させるに十分な電界強度が得られる程度に高く、かつギャップGPにおいて現像ローラ44と感光体2との間で放電が発生しないように設定する必要がある。
【0048】
次に、加重平均電圧Vavgをその可変範囲における最小値に設定し(ステップS2)、高濃度パッチ画像として例えば所定サイズのベタ画像を形成する(ステップS3)。この高濃度パッチ画像はベタ画像に限定されるわけではないが、画像濃度の露光エネルギーEに対する依存性を小さく抑えるために、比較的高濃度の画像、より具体的には、例えばパッチ画像全体に占めるドット部の面積率が80%以上となるようにするのが望ましい。そして、加重平均電圧Vavgがその可変範囲における最大値であることを確認するまで(ステップS4)、加重平均電圧Vavgを1ステップずつ増加させながら(ステップS5)上記ステップS3を繰り返すと、中間転写ベルト71上には加重平均電圧Vavgの最小値から最大値まで各値で形成された高濃度パッチ画像が該ベルト71の搬送方向D2(図1)に沿って並ぶこととなる。
【0049】
そして、このパッチ画像が濃度センサ60との対向位置に搬送されてくるタイミングに同期してCPU101が濃度センサ60からの出力電圧をサンプリングすることで、加重平均電圧Vavgの各値でのパッチ画像それぞれについて、その画像濃度を測定する(ステップS6)。このように、この実施形態では、濃度センサ60が「検出手段」として機能している。
【0050】
このとき、各パッチ画像の画像濃度のうちの最大値Dmaxについて、予め定められた目標濃度との比較を行う(ステップS7)。そして、最高濃度Dmaxが目標濃度より小さい、すなわちどのパッチ画像も目標濃度に達していないときには、現像バイアスVbの振幅Vppを1ステップ増加させ(ステップS10)、ステップS2に戻って再び上記動作を行う。
【0051】
一方、各パッチ画像の画像濃度のうちの最小値Dminについても目標濃度との比較を行う(ステップS8)。ここで、最低濃度Dminが目標値を超えていたときには、所定のエラーメッセージを表示部12に表示し(S11)、加重平均電圧Vavgをその可変範囲における最小値に設定した上で(ステップS12)、現像バイアス設定処理を終了する。このようにする理由については後に詳述する。
【0052】
ステップS8に戻って、上記比較による判断結果がいずれもNOであればステップS9に進む。このとき、目標濃度は最高濃度Dmaxと最低濃度Dminとの間に位置しているから、パッチ画像濃度が目標濃度と一致するような加重平均電圧Vavgの値がその可変範囲内において存在するはずである。そこで、その値を求め、これを加重平均電圧の最適値とする。このようにして、加重平均電圧Vavgの最適値が求められる。
【0053】
上記処理においては、加重平均電圧Vavgの各値で形成したパッチ画像それぞれの画像濃度のいずれもが目標濃度に達しない場合には現像バイアスVbの振幅Vppを増加させた後に再び加重平均電圧Vavgを変化させながらパッチ画像を形成するようにしている。一方、各パッチ画像の画像濃度のいずれもが目標濃度を超えている場合にはエラーメッセージを表示して、加重平均電圧Vavgをその可変範囲における最小値に設定する。このようにする理由は以下の通りである。
【0054】
すなわち、この画像形成装置では、周囲環境等による画像濃度の変動範囲を考慮して、加重平均電圧Vavgの調整によってこの変動を吸収できるように、加重平均電圧Vavgの可変範囲が定められている。一方、先に述べたように、この種の画像形成装置においては使用を重ねるにつれて画像濃度は次第に低下する傾向がある。したがって、上記した画像濃度の変動範囲は、装置の使用を重ねるにつれて低濃度側へずれてゆくこととなる。また、部品の寸法ばらつきによってギャップGPが設計値より大きくなり、ギャップGPに発生する交番電界の強度が不足して十分な量のトナーを飛翔させることができない場合もある。したがって、加重平均電圧Vavgをどのように設定しても画像濃度が目標濃度に達しない場合には、現像バイアスの振幅Vppを増大させてギャップGPにおいて飛翔するトナーの量を増加させることで、低濃度側にずれた画像濃度の変動範囲を高濃度側に引き戻すことができる。
【0055】
これに対して、最低濃度Dminが目標濃度を超える、すなわち加重平均電圧Vavgをどのように設定しても画像濃度が目標濃度より高くなってしまうことは通常の動作においては考えにくい。この最低濃度Dminは、本発明の「制御可能な画像濃度の下限値」に相当するものである。このような現象は、装置の動作に何らかの異常が発生しているときに起こると考えられる。
【0056】
例えば、現像ローラ44表面に担持されるトナーの密度が想定した値より大きかったり、ギャップGPが設計値より小さくなっている場合には、ギャップGPにおけるトナーの飛翔量が設計値より大きくなる。その結果、感光体2への付着量も増大し、画像濃度の変動範囲は当初想定したよりも高濃度側にずれることとなる。このようなトナー飛翔量の増加は、装置内部へのトナー飛散の増加につながる。また、ギャップGPが小さすぎると現像ローラ44と感光体2との間で放電が発生し、画像品質を著しく劣化させるばかりでなく、感光体2の性能低下など装置の故障を引き起こすことがある。
【0057】
また、例えば、濃度センサ60表面の汚れによって見かけ上の画像濃度が高くなっている場合がある。すなわち、装置内部に飛散したトナーの一部が濃度センサ60に付着すると、パッチ画像を構成するトナーの量が本来より多く見積もられてしまい、パッチ画像本来の画像濃度より高くなった検出結果が得られることとなる。
【0058】
いずれの場合も、安定して画像を形成することのできる状態とは言い難く、このような場合には速やかに装置の異常をユーザに報知して、然るべき措置を講じるよう促すことが望ましい。そこで、この実施形態では、表示部12にエラーメッセージを表示するとともに、画像濃度ができるだけ低くなるよう、現像バイアスの加重平均電圧Vavgを最小値に設定した上で、現像バイアス設定処理を終了するようにしている。ここで表示するエラーメッセージとしては、例えば「装置に異常が発生しました」あるいは「サービスセンターに点検を依頼してください」といった内容とすればよい。
【0059】
次に、図7の露光エネルギー設定処理について説明する。上記のようにして現像バイアスVbが最適化されると、現像バイアスVbをこの最適値に設定した状態で(ステップS101)、引き続いて露光エネルギー設定処理を実行し、露光エネルギーEの最適化を行う。この露光エネルギー設定処理の基本的な考え方は上記した現像バイアス設定処理と同一である。ただし、上記したように、露光エネルギーEが画像濃度に及ぼす影響が現像バイアスVbとは若干異なっており、これに基づいて処理の内容も異なったものとなっている。
【0060】
第1の相違点は、形成するパッチ画像の画像パターンである(ステップS103)。この露光エネルギー設定処理においては、露光エネルギーEの変化が特に細線画像の濃度に顕著な影響を及ぼすという性質に基づいて、例えば1オン10オフで配置された複数の1ドットラインからなる細線画像を低濃度パッチ画像として用いている。パッチ画像のパターンはこれに限定されるものではないが、上記性質から、例えば孤立ドットや細線で構成された画像を用いるのが望ましく、また、パッチ画像全体に占めるドット部の面積率が20%以下の比較的低濃度の画像とするのが好ましい。
【0061】
第2の相違点は、ステップS107において、パッチ画像の最高濃度Dmaxが目標濃度に達していなかった場合の処理である。図6の現像バイアス設定処理においては、このような場合、現像バイアスVbの振幅Vppを増加させた上で再度パッチ画像を形成し、加重平均電圧Vavgの最適値を求めていた。一方、露光エネルギー設定処理において上記振幅Vppを変更することは、高濃度画像での濃度変化を生じてしまうため好ましくない。また、先に述べたように、細線画像の濃度は逆コントラスト電圧Vrにも依存する。そこで、この逆コントラスト電圧Vrを低下させる、さらに具体的には感光体2の暗部電位Voを低下させることにより、高濃度画像の画像濃度を保持しながら、露光エネルギーEによる細線パッチ画像濃度の制御範囲を高濃度側にシフトさせることができる(ステップS110)。そして、その状態で、パッチ画像濃度が目標濃度と一致する露光エネルギーEの値を求めれば、その値が露光エネルギーEの最適値となる。一方、最低濃度Dminが目標濃度を越えていた場合には、図6の処理と同様に、表示部12にエラーメッセージを表示するとともに(ステップS111)、露光エネルギーEを最小値に設定して露光エネルギー設定処理を終了する(ステップS112)。
【0062】
以上のように、この実施形態の画像形成装置では、パッチ画像として形成したトナー像の画像濃度に基づき、濃度制御因子としての現像バイアスの加重平均電圧Vavgおよび露光エネルギーEを調整している。そのため、画像濃度を所定の目標濃度となるよう制御することが可能である。ただし、これらの濃度制御因子をその可変範囲内でどのように変更しても画像濃度が目標濃度を超えてしまう場合には、装置に異常が生じたと判断し、濃度制御処理を終了するようにしている。そのため、画像濃度の制御範囲を広げるべく各濃度制御因子の可変範囲をむやみに広げる必要がなく、比較的狭い可変範囲内でのみ濃度制御処理を実行すればよい。その結果、この画像形成装置では、トナーおよび処理時間の無駄を最少限に抑えて効率よく、しかも精度よく画像濃度の制御を行うことが可能となっている。
【0063】
また、装置に異常が発生した旨をユーザに報知するエラーメッセージを表示することで、ユーザに装置の異常を早期に認識させることができる。また、このとき、画像濃度が最低となるように濃度制御因子を設定しているので、上記した異常が解消されるまでの間、画像濃度を目標濃度に可能な限り近づけながら、引き続き画像の形成を行うことが可能である。
【0064】
なお、先に述べたように、装置に異常が発生したとき、単に画像濃度の異常として現れるに留まらず、トナー飛散の増加や放電の発生などより深刻な問題を内包している場合もある。したがって、パッチ画像の画像濃度など装置の動作状態を示す情報からこのような異常を検出したときには、画像形成動作の実行を禁止するようにしてもよい。このようにした場合には、引き続き画像形成を行うことはできないが、トナー飛散による装置内部の汚染や、放電による感光体2の性能劣化など、不安定な状態で画像形成を継続することによる弊害を未然に防止することが可能となる。
【0065】
次に、この画像形成装置における濃度制御処理の他の実施形態について図8を参照しながら説明する。この実施形態では、装置構成および基本的な動作については上記実施形態と同一であるが、濃度制御処理において、最も低濃度のパッチ画像の濃度Dminが目標濃度を超えているときの処理内容が上記した実施形態(図6)とは一部相違している。そこで、ここでは、この実施形態における現像バイアス設定処理(2)について上記実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成および処理内容には同一の符号を付して説明を省略する。また露光エネルギー設定処理についても同様に上記実施形態(図7)との相違点を有しているが、その相違点については現像バイアス設定処理における相違点と基本的に同一であるので、ここでは図示および説明を省略する。
【0066】
先に述べたように、濃度センサ60へのトナー付着によってパッチ画像の画像濃度が実際より高い値として検出される可能性があることに鑑み、この実施形態では、各条件で形成したパッチ画像の画像濃度がいずれも目標濃度を超えている場合には濃度センサ60のクリーニングを行った上で再度パッチ画像の形成を行い、濃度制御因子の最適化を試みるようにしている。
【0067】
図8は現像バイアス設定処理の他の実施形態を示すフローチャートである。この現像バイアス設定処理(2)は、上記実施形態における現像バイアス設定処理(図6)に代えて実行されるものであり、図6におけるステップS11およびS22の処理が、図8に示すステップS21ないしS25の処理に置き換えられている。その結果、ステップS8においてパッチ画像の最低濃度Dminが目標濃度を超えたと判断した場合の動作は次のように変更される。
【0068】
まずステップS21で、当該ステップの実行が既に1回実行されているか、つまり今回の実行が2回目のものであるか否かを判断しており、その判断結果によって以降の処理内容は異なったものとなる。ここで、ステップS21における判断結果が「NO」となる、つまり現像バイアス設定処理(2)において初めてステップS21が実行されたときの動作は次の通りである。すなわち、まず表示部12に、濃度センサ60のクリーニングの実施をユーザに促す旨のメッセージ、例えば「センサのクリーニングを実行してください」を表示する(ステップS22)。そして、ユーザによるクリーニング作業が実行されたかどうかを判断し(ステップS23)、作業が終了していればステップS2に戻って現像バイアスの設定をやり直す。クリーニング作業が実行されたかどうかの判断は、例えばエンジン部EGを覆うフロントカバー(図示省略)の開閉がユーザにより行われたか否かに基づいて行うことができる。また、装置に自動的に濃度センサ60のクリーニングを実行するクリーニング動作モードを設け、これを実行するようにしてもよい。こうすることで、改めて行う現像バイアスの設定では、濃度センサ60の汚れに起因するパッチ画像濃度の誤検出の可能性は排除される。そして、ステップS2以後の処理を再度実行することで、加重平均電圧Vavgの最適値が求められる。
【0069】
一方、2回目の処理でも最低濃度Dminが目標濃度を超えてしまうこともあり得る。この場合、パッチ画像濃度が高くなっているのは濃度センサ60の汚れによるものではなく、他の原因によるものと考えられる。したがって、この状態で画像形成動作を許容すると、トナー飛散による装置内部の汚染や放電発生による装置故障など、より深刻な問題を引き起こす可能性がある。そこで、ステップS21においてその実行が2回目であると判断した場合には、装置の異常発生を知らせる旨のエラーメッセージを表示するとともに(ステップS24)、画像形成動作の実行を禁止し(ステップS25)、現像バイアス設定処理(2)を終了する。この画像形成動作の禁止措置は、修理・点検により異常が解消されるまでの間、継続されることが望ましい。
【0070】
以上のように、この実施形態では、各条件で形成したパッチ画像の画像濃度がいずれも目標濃度を超えていた場合には、濃度センサ60のクリーニングを行ってから再度パッチ画像を形成し、濃度制御因子の最適化を試みるようにしている。そのため、パッチ画像濃度が目標濃度よりも高濃度となる原因のうち、濃度センサ60の汚れに起因するパッチ画像濃度の誤検出によるものが排除される。そして、トナー飛散、放電などより深刻な問題を引き起こす可能性のある原因については、その原因が取り除かれるまで画像形成動作を禁止しているので、これらの問題の発生が未然に防止される。
【0071】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、必要に応じて表示部12に表示するメッセージの内容は、上記に例示したものに限定されず、任意のものを用いてよい。
【0072】
また、例えば、上記実施形態においては、現像バイアスの加重平均電圧Vavgおよび露光エネルギーEを調整することで画像濃度の制御を行っているが、画像濃度に影響を与える濃度制御因子としてはこれ以外にも種々のパラメータが公知であり、本発明はこれらのいずれのパラメータを濃度制御因子として用いる装置に対しても適用することができる。
【0073】
また、例えば、上記した各実施形態では、パッチ画像としてのトナー像を形成し、その画像濃度を検出して濃度制御因子の調整を行う画像形成装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこのような画像形成装置に限定されるものではない。例えば、パッチ画像を形成せず、ユーザからの画像形成要求に応じて形成・出力した画像の画像濃度に基づいて濃度制御因子の調整を行う装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0074】
また、例えば、ユーザの要求に応じて画像濃度の増減が可能な装置に本発明を適用し、実現可能な最低の画像濃度で画像形成を行っているにもかかわらずユーザがさらに画像濃度の低減を求めた場合に、異常が発生していると判断し、これをユーザに報知するようにしてもよい。というのは、最低濃度で形成した画像でもユーザが濃すぎると感じるようでは、何らかの動作異常が起こっている可能性が高いと考えられるからである。
【0075】
また、上記した実施形態では、濃度センサ60を図1に示す位置に配置し、パッチ画像として形成され中間転写ベルト71上に転写されたトナー像の画像濃度を検出するようにしているが、濃度センサ60の位置はこれに限定されるものではなく任意であり、例えば中間転写ベルト71の移動方向D2において一次転写領域TR1のすぐ下流側に配置したり、さらに感光体2に対向する位置に配置して感光体2上のパッチ画像の濃度を検出するようにしてもよい。このようにした場合には、パッチ画像が形成されて濃度検出が行われるまでの時間差を少なくすることができるので、検出結果をより迅速に濃度制御処理に反映させることができる。
【0076】
例えば、既に形成されたパッチ画像の濃度検出結果から目標濃度を達成可能と判断した場合にはそれ以後のパッチ画像形成を取りやめるようにすれば、無用なトナーの消費を抑え、かつ処理に要する時間の短縮を図ることができる。特に、画像濃度が最も低くなる条件でのパッチ画像を最初に形成し、直ちにその画像濃度を検出して目標濃度より大きいか否かの判断を行うようにすれば、それ以後のパッチ画像を形成するまでもなく、速やかに異常の発生を検知することが可能となる。
【0077】
また、上記した実施形態は、感光体2上で現像されたトナー像を一時的に担持する中間転写ベルト71を有する画像形成装置であるが、転写ドラムや転写ローラなど他の転写体を有する画像形成装置や、転写体を備えず感光体2上に形成されたトナー像を最終的な転写材であるシートSに直接転写するように構成された画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【0078】
また、上記した実施形態は、トナー担持体としての現像ローラ44と、像担持体としての感光体2とがギャップGPを隔てて対向配置された非接触現像方式の画像形成装置であるが、両者が当接された状態でトナー現像が行われる接触現像方式の画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0079】
また、上記した実施形態は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いてフルカラー画像を形成可能に構成された画像形成装置であるが、使用するトナー色およびその色数はこれに限定されるものでなく任意であり、例えばブラックトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0080】
さらに、上記実施形態では、装置外部からの画像信号に基づき画像形成動作を実行するプリンタに本発明を適用しているが、ユーザの画像形成要求、例えばコピーボタンの押動に応じて装置内部で画像信号を作成し、その画像信号に基づき画像形成動作を実行する複写機や、通信回線を介して与えられた画像信号に基づき画像形成動作を実行するファクシミリ装置に対しても本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この画像形成装置の現像器を示す断面図である。
【図4】非接触現像の原理を示す図である。
【図5】装置各部の電位を示す図である。
【図6】現像バイアス設定処理を示すフローチャートである。
【図7】露光エネルギー設定処理を示すフローチャートである。
【図8】他の実施形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…感光体、 4C、4K、4M、4Y…現像器、 12…表示部(報知手段)、 44…現像ローラ、 60…濃度センサ(検出手段)、 Vavg…(現像バイアスの)加重平均電圧(濃度制御因子)
Claims (6)
- 画像濃度に影響を与える濃度制御因子を所定の調整範囲内で調整することによって画像濃度が所定の目標濃度となるように制御しながら画像形成動作を実行する画像形成装置において、
前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が前記目標濃度を超えるときに、動作異常の発生を報知する報知手段を備えることを特徴とする画像形成装置。 - 前記報知手段は、所定のメッセージを表示可能な表示部を備える請求項1に記載の画像形成装置。
- パッチ画像として形成された画像の画像濃度を検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記制御可能な画像濃度の下限値を求める請求項1または2に記載の画像形成装置。 - 前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が所定の目標濃度を超えているときには、前記調整範囲内において画像濃度が最低となるように前記濃度制御因子を設定しながら前記画像形成動作を実行する請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が所定の目標濃度を超えているときには、前記画像形成動作の実行が禁止される請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
- 画像濃度に影響を与える濃度制御因子を所定の調整範囲内で調整することによって画像濃度が所定の目標濃度となるように制御しながら画像形成動作を実行する画像形成方法において、
前記濃度制御因子の調整により制御可能な画像濃度の下限値が前記目標濃度を超えるときには、報知手段により動作異常を報知することを特徴とする画像形成方法。
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