JP2004125081A - ディスクブレーキパッド - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスクブレーキパッドにおいて鳴き特性と効き特性とを適切に両立させる。
【解決手段】回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドD1において、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材10が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に、第1の摩擦材10に比べて摩擦係数およびヤング率が大きく且つ摩耗しやすい第2の摩擦材20が配置されており、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10は第2の摩擦材20よりも突出しており、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間にはスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されている。
【選択図】 図1
【解決手段】回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドD1において、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材10が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に、第1の摩擦材10に比べて摩擦係数およびヤング率が大きく且つ摩耗しやすい第2の摩擦材20が配置されており、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10は第2の摩擦材20よりも突出しており、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間にはスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のディスクブレーキパッドは、有機繊維、無機繊維等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合し、熱成形により成形したものである。
【0003】
このようなディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドの摩擦係数が大きくなるほどブレーキの効きは良くなるが、反面ブレーキの鳴きが発生しやすく、一方、当該摩擦係数が小さいほど、鳴きは抑制されるが、反面効きが悪くなってしまう。
【0004】
そこで、従来より、種々の摩擦特性を持つ摩擦材を複数個設置することで、鳴き特性と効き特性の両立を図ろうとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このものでは、所望の特性を得るための複数個の摩擦材の配置に制約がある。
【0005】
それに対して、1個のディスクブレーキパッドにおいて、複数個の摩擦材の位置を最適化したものとして、ディスクの回入側であるリーディング側の部位とディスクの回出側であるトレーリング側の部位とで硬度の異なった摩擦材を配置したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
それによれば、リーディング側摩擦材の硬度が小さく、トレーリング側摩擦材の硬度が大きいことから、トレーリング側摩擦材の面圧をリーディング側摩擦材の面圧よりも大きくできるため、トレーリング側のディスクブレーキパッドの振動が抑制され、鳴きが防止されるというものである。
【0007】
しかしながら、1個のディスクブレーキパッドにおいてリーディング側とトレーリング側とで硬度の異なった摩擦材を配置したものでは、効きに関しての効果が不十分であり、さらに、硬度の低いリーディング側摩擦材の摩耗粉がディスクの回転方向に沿って、トレーリング側へ移着し、リーディング側とトレーリング側とで見かけ上同じような摩擦特性となってしまうという問題が発生することがわかった。
【0008】
また、従来では、リーディング側摩擦材とトレーリング側摩擦材との間にスリットを設けたものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。それによれば、このスリットを介してリーディング側摩擦材の摩耗粉を排出し、リーディング側摩擦材の摩耗粉がトレーリング側へ移着するのを防止できると考えられる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−112606号公報(第4頁、第1−2図)
【0010】
【特許文献2】
特開2000−12073号公報(第3頁、第1図)
【0011】
【非特許文献1】
発明協会公開技報公技番号2001−5790号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの検討によれば、両側の摩擦材の間に単純にスリットを設けただけでは、スリットの幅が狭い場合には、摩耗粉がスリットに詰まってしまい、その排出が阻害されることがわかった。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ディスクブレーキパッドにおいて鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドにおいて、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材(10)が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に、第1の摩擦材に比べて摩擦係数およびヤング率が大きく且つ摩耗しやすい第2の摩擦材(20)が配置されており、ディスクに当たる面において第1の摩擦材は第2の摩擦材よりも突出しており、第1の摩擦材と第2の摩擦材との間にはスリット(40)が設けられ、このスリットを介して両摩擦材は離間した形で区画されており、さらに、第1の摩擦材と第2の摩擦材との摩擦係数の差が0.05以上であってスリットの幅が1mm以上であることを特徴とする。
【0015】
一般に、ディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドをディスクに押しつける圧力(パッド押圧力)が小さいほど鳴きが発生しやすい。その点、本発明では、ディスクに当たる面において第1の摩擦材が第2の摩擦材よりも突出しているため、鳴きが発生しやすい低パッド押圧力時には、比較的摩擦係数の小さい第1の摩擦材がディスクに接して摩擦が行われることで鳴きが抑制される。
【0016】
一方、効きが必要な高パッド押圧力時には、第1の摩擦材のヤング率が第2の摩擦材のヤング率よりも小さいため、高いパッド押圧力によって第1の摩擦材が圧縮され、比較的摩擦係数の大きい第2の摩擦材がディスクに接した状態で摩擦が行われる。そのため、十分な効きが得られる。
【0017】
そして、このような摩擦係数の異なる第1の摩擦材と第2の摩擦材による鳴きの抑制や十分な効きを実現するためには、本発明者らの検討によれば、第1および第2の摩擦材の摩擦係数の差が0.05以上であれば良いことを見出した。
【0018】
また、リーディング側の第1の摩擦材の方が、トレーリング側の第2の摩擦材よりも摩耗しにくいため、ディスクブレーキパッド全体の摩耗が進行しても、第1の摩擦材の方が第2の摩擦材よりも突出しているという構成を維持することができる。
【0019】
さらに、本発明では、第1の摩擦材と第2の摩擦材との間にはスリットが設けられ、このスリットを介して両摩擦材は離間した形で区画されているため、リーディング側の第1の摩擦材の摩耗粉は、スリットから排出され、トレーリング側の第2の摩擦材に移着することが抑制される。
【0020】
そして、このスリットの効果を適切に実現するためには、本発明者らの検討によれば、スリット幅が1mm以上であれば良いことを見出した。
【0021】
このようにして、第1の摩擦材の突出構成が維持されること、および第1の摩擦材の摩耗粉の移着の抑制がなされることのため、上述した鳴きの抑制と十分な効きの実現とが長期に渡って達成可能となる。
【0022】
以上のように、本発明によれば、ディスクブレーキパッドにおいて鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることができる。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るディスクブレーキパッドD1の構成図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)中のA−A線に沿った概略断面図である。
【0025】
図1(a)では、ディスクブレーキパッドD1におけるディスク(ディスクローター、図示せず)へ押し付けられる面が正対して示されている。そして、ディスクブレーキパッドD1は、図1(b)中の白抜き矢印Y1に示すように、図示しないピストン等により圧力(以下、パッド押圧力という)が印加され、ディスクに押し付けられるようになっている。
【0026】
また、図1中においては、矢印Y2によってディスクの回転方向が示されている。ディスクブレーキパッドD1は、このように回転するディスクに押しつけられることで当該ディスクの回転を制御する。
【0027】
ディスクブレーキパッドD1は、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材10が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に第2の摩擦材20が配置されたものとなっている。このように第1の摩擦材10、第2の摩擦材20がこの順に、摺動方向に沿って配置されている。
【0028】
ここで、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20とでは、摩擦係数、ヤング率、摩耗性の点で次のような相違がある。摩擦係数およびヤング率については、第1の摩擦材10の方が小さく(低く)、第2の摩擦材20の方が大きい(高い)。このとき第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上である。
【0029】
また、摩耗性については、第1の摩擦材10の方が摩耗しにくく、第2の摩擦材20の方が摩耗しやすい。つまり、リーディング側の第1の摩擦材10の方がトレーリング側の第2の摩擦材20に比べて、ディスクとの摺動において滑りやすく且つ摩耗しにくく、さらに、ディスクへ押し付けられたときに歪み変形しやすいものである。
【0030】
これら第1および第2の摩擦材10、20は、通常のブレーキパッドに使用される有機繊維、無機繊維、金属繊維等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合し、熱成形により成形したものである。
【0031】
例えば、繊維原料としては、アラミド繊維、銅ファイバー、スチール繊維等が挙げられ、摩擦調整剤および充填剤としては、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0032】
このような素材を用いて摩擦材を熱成形する場合、摩擦係数の制御は、例えばスチール繊維やアルミナ等の比較的硬い材料の組成を調整することで可能である。また、ヤング率の制御は、例えばアラミド繊維等の比較的やわらかい材料の組成を調整することで可能である。
【0033】
さらに、摩耗性については、例えば繊維状の原料の組成を増やすことによって摩擦材内の結合力を増加させることにより、摩耗しにくくできる。このような手法により、摩擦係数、ヤング率、摩耗性の制御が可能となる。
【0034】
また、図1(b)に示すように、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10は第2の摩擦材20よりも突出している。この突出における両摩擦材10、20の段差は、具体的には数十μm程度(例えば約30μm)にすることができる。そして、これら両摩擦材10、20は、ディスクに当たる面とは反対側にて裏金30に接着され、この裏金30に保持固定されている。
【0035】
また、本実施形態のディスクブレーキパッドD1においては、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間に隙間としてのスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されている。ここで、スリット40の幅は1mm以上である。
【0036】
なお、スリット40は少なくともディスクと当たる面に開口して形成されていれば良く、スリットの底部すなわち裏金30の近傍部では第1の摩擦材10と第2の摩擦材20とがつながった形となっていても良い。
【0037】
次に、上記ディスクブレーキパッドD1の製造方法について述べる。図2は、本製造方法に用いる金型100の構成を示す斜視図である。
【0038】
この金型100には、第1および第2の摩擦材10、20の外形を規定するキャビティ110が形成されている。このキャビティ110内にはスリット40を形成するための仕切120が設けられ、この仕切120を介してキャビティ110は、第1の摩擦材形成用のキャビティ111と第2の摩擦材形成用のキャビティ112とに区画されている。
【0039】
まず、第1の摩擦材10および第2の摩擦材10、20のそれぞれについて、有機、無機、金属等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合してなる混合体を作製する。そして、第1の摩擦材10の混合体は第1の摩擦材形成用のキャビティ111へ投入し、第2の摩擦材20の混合体は第2の摩擦材形成用のキャビティ112へ投入する。
【0040】
その後、キャビティ110の一方を覆うように裏金30を金型100に取り付ける。このとき裏金30には、各摩擦材10、20との接着を行うための接着剤を配設する。この状態のものを裏金30の反対側から加圧し、その後、加熱して硬化することにより、成形体を作製する。
【0041】
こうして作製した成形体を金型100から取り出し、次に、研磨加工を行う。この研磨は、成形体におけるディスクと当たる面を研磨し、ブレーキパッドとして機能させるべく平坦性を向上させるものである。
【0042】
この研磨においては、上述したように第1の摩擦材10よりも第2の摩擦材20の方が摩耗しやすい性質を有することから、第2の摩擦材20の方が研磨によって摩耗する量が大きい。そのため、上記図1(b)に示したように、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10が第2の摩擦材20よりも突出した形状が形成される。この研磨を終えて、上記ディスクブレーキパッドD1ができあがる。
【0043】
次に、上記ディスクブレーキパッドD1の作用効果等について述べる。一般に、ディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドをディスクに押しつける圧力(パッド押圧力)が小さいほど鳴きが発生しやすい。
【0044】
その点、本実施形態では、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10が第2の摩擦材20よりも突出しているため、鳴きが発生しやすい低パッド押圧力時には、比較的摩擦係数の小さい第1の摩擦材10がディスクに接して摩擦が行われることで鳴きが抑制される。
【0045】
一方、効きが必要な高パッド押圧力時には、第1の摩擦材10のヤング率が第2の摩擦材20のヤング率よりも小さいため、高いパッド押圧力によって第1の摩擦材10が圧縮され、比較的摩擦係数の大きい第2の摩擦材20がディスクに接した状態で摩擦が行われる。そのため、十分な効きが得られる。この鳴きの抑制と十分な効きの実現は、両摩擦材10、20における摩擦係数の差を0.05以上としたことにより達成可能なものである。
【0046】
また、リーディング側の第1の摩擦材10の方が、トレーリング側の第2の摩擦材20よりも摩耗しにくいため、ディスクブレーキパッドD1全体の摩耗が進行しても、第1の摩擦材10の方が第2の摩擦材20よりも突出しているという構成を維持することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間にはスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されているため、リーディング側の第1の摩擦材10の摩耗粉は、スリット40から排出される。
【0048】
そのため、第1の摩擦材10の摩耗粉がトレーリング側の第2の摩擦材20に移着すること、すなわち当該摩耗粉が移動して第2の摩擦材20の表面に付着して見かけ上第2の摩擦材20の摩擦特性が第1の摩擦材10と同様なものになってしまうようなことが防止される。そして、この移着の抑制はスリット40の幅を1mm以上とすることで達成される。
【0049】
このように、特性の異なる両摩擦材10、20を鳴き特性および効き特性を発揮するために適切な位置に配置したこと、且つ、第1の摩擦材の突出構成が維持されること、さらに第1の摩擦材の摩耗粉の移着の抑制がなされることが実現されているため、上述した鳴きの抑制と十分な効きの実現とが長期に渡って達成可能となる。
【0050】
よって、本実施形態のディスクブレーキパッドD1においては、鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることができる。
【0051】
また、上述したように、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上であること、および、スリット40の幅は1mm以上であることとしているが、このことは以下に述べるような検討結果を根拠とするものである。
【0052】
図3は、ディスクブレーキパッドD1において両摩擦材10、20の摩擦係数およびヤング率、スリット40の幅を変えた種々の例を示す図表である。なお、図3では、本実施形態に係る例としての実施例1〜2と、比較例1〜3とを示してあり、比較的摩擦係数の低い第1の摩擦材10を「低μ材」、比較的摩擦係数の高い第2の摩擦材20を「高μ材」と示してある。
【0053】
また、各例における原料は、繊維基材の成分としてアラミド繊維、銅ファイバー、スチール繊維を用い、摩擦調整剤および充填剤の成分として黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、硫酸バリウムを用い、バインダーの成分としてフェノール樹脂を用いている。低μ材、高μ材における各成分の分量については、図3中、wt%の単位にて示してある。
【0054】
各例について、ブレーキパッドは次のように作製した。原料をアイリッヒミキサーを用いて5分間乾式で均一に混合し原料混合物(混合体)を得た。熱成形は、160℃に加熱された金型100中に各原料混合物を投入して10分間、200kg/cm2で加圧した。その後、この成形体を230℃で3時間硬化し、続いて研磨加工することで作製を行った。
【0055】
また、図3に示す摩擦係数は、JASO C406に準拠してダイナモメータを用いた測定により求めたものである。この図3に示す各例では、スチール繊維やアルミナの組成を調整することで摩擦係数の制御を行い、アラミド繊維の組成を調整することでヤング率の制御を行っており、各例において低μ材は高μ材よりも摩擦係数およびヤング率が小さくなっている。
【0056】
また、摩耗性については、低μ材における繊維原料の組成を高μ材よりも増やすことによって、低μ材の方を高μ材よりも摩耗しにくいものとしている。実際に、各例において、ダイナモメータを用いて試験温度100℃にて1000回制動を繰り返した後の摩耗量を調べたところ、各例のいずれも、低μ材の方が高μ材よりも摩耗量が少なかった。
【0057】
また、図4は図3に示す各例について、鳴き特性としての「鳴き発生率(%)」、「効き」、「履歴後鳴き」、「履歴後効き」を調べた結果を示す図表である。
【0058】
鳴き発生率は、ダイナモメータを用いた試験において、鳴き回数を全制動回数で除した値の百分率である。また、効きについては、実車試験で確認したものである。また、履歴後の鳴きや効きは、ダイナモメータを用いて250℃の温度にて500回制動を繰り返した後に、同様に鳴き発生率を求めたり、効きを測定したものである。
【0059】
これら図3、図4から、まず、スリット40の幅が0.5mmと小さいものであると(比較例1参照)、低μ材(第1の摩擦材)の摩耗粉が高μ材(第2の摩擦材)に移着し、履歴後の効きが低下することがわかる。
【0060】
また、低μ材と高μ材との摩擦係数の差が0.02や0.03と小さいものであると、鳴きの悪化や効きの低下が起こる(比較例1、2参照)。これは、低μ材と高μ材とで摩擦係数の大小の差による特性を十分に顕わすことが困難になるためである。
【0061】
それに対して、実施例1、2では、低μ材と高μ材との摩擦係数の差を0.05以上、スリット40の幅を1mm以上とすることにより、初期および履歴後の鳴き、効き共に良好なものとなっている。なお、実施例2では上記摩擦係数の差が0.06以上であるが、当該摩擦係数の差が0.05以上であれば、同様に良好な結果が得られることを確認している。
【0062】
これら図3、図4に示す各例の結果を比較し検討すると、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上であることが必要であり、スリット40の幅は1mm以上であることが必要となる。
【0063】
なお、スリット40の形成方法については、上述した仕切を有する金型を用いる方法以外にも、第1および第2の摩擦材10、20がくっついた状態の成形体を形成した後、両者の界面部分を切り取って除去し、除去された部分がスリット40となるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るディスクブレーキパッドの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のA−A線に沿った断面図である。
【図2】上記実施形態に係るディスクブレーキパッドの製造方法に用いる金型の構成を示す斜視図である。
【図3】ディスクブレーキパッドにおいて第1の摩擦材および第2の摩擦材の摩擦係数およびヤング率、スリットの幅を変えた種々の例を示す図表である。
【図4】図3に示す例について鳴き特性および効き特性をを調べた結果を示す図表である。
【符号の説明】
10…第1の摩擦材、20…第2の摩擦材、40…スリット。
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のディスクブレーキパッドは、有機繊維、無機繊維等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合し、熱成形により成形したものである。
【0003】
このようなディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドの摩擦係数が大きくなるほどブレーキの効きは良くなるが、反面ブレーキの鳴きが発生しやすく、一方、当該摩擦係数が小さいほど、鳴きは抑制されるが、反面効きが悪くなってしまう。
【0004】
そこで、従来より、種々の摩擦特性を持つ摩擦材を複数個設置することで、鳴き特性と効き特性の両立を図ろうとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このものでは、所望の特性を得るための複数個の摩擦材の配置に制約がある。
【0005】
それに対して、1個のディスクブレーキパッドにおいて、複数個の摩擦材の位置を最適化したものとして、ディスクの回入側であるリーディング側の部位とディスクの回出側であるトレーリング側の部位とで硬度の異なった摩擦材を配置したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
それによれば、リーディング側摩擦材の硬度が小さく、トレーリング側摩擦材の硬度が大きいことから、トレーリング側摩擦材の面圧をリーディング側摩擦材の面圧よりも大きくできるため、トレーリング側のディスクブレーキパッドの振動が抑制され、鳴きが防止されるというものである。
【0007】
しかしながら、1個のディスクブレーキパッドにおいてリーディング側とトレーリング側とで硬度の異なった摩擦材を配置したものでは、効きに関しての効果が不十分であり、さらに、硬度の低いリーディング側摩擦材の摩耗粉がディスクの回転方向に沿って、トレーリング側へ移着し、リーディング側とトレーリング側とで見かけ上同じような摩擦特性となってしまうという問題が発生することがわかった。
【0008】
また、従来では、リーディング側摩擦材とトレーリング側摩擦材との間にスリットを設けたものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。それによれば、このスリットを介してリーディング側摩擦材の摩耗粉を排出し、リーディング側摩擦材の摩耗粉がトレーリング側へ移着するのを防止できると考えられる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−112606号公報(第4頁、第1−2図)
【0010】
【特許文献2】
特開2000−12073号公報(第3頁、第1図)
【0011】
【非特許文献1】
発明協会公開技報公技番号2001−5790号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの検討によれば、両側の摩擦材の間に単純にスリットを設けただけでは、スリットの幅が狭い場合には、摩耗粉がスリットに詰まってしまい、その排出が阻害されることがわかった。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ディスクブレーキパッドにおいて鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回転するディスクに押しつけられることでディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドにおいて、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材(10)が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に、第1の摩擦材に比べて摩擦係数およびヤング率が大きく且つ摩耗しやすい第2の摩擦材(20)が配置されており、ディスクに当たる面において第1の摩擦材は第2の摩擦材よりも突出しており、第1の摩擦材と第2の摩擦材との間にはスリット(40)が設けられ、このスリットを介して両摩擦材は離間した形で区画されており、さらに、第1の摩擦材と第2の摩擦材との摩擦係数の差が0.05以上であってスリットの幅が1mm以上であることを特徴とする。
【0015】
一般に、ディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドをディスクに押しつける圧力(パッド押圧力)が小さいほど鳴きが発生しやすい。その点、本発明では、ディスクに当たる面において第1の摩擦材が第2の摩擦材よりも突出しているため、鳴きが発生しやすい低パッド押圧力時には、比較的摩擦係数の小さい第1の摩擦材がディスクに接して摩擦が行われることで鳴きが抑制される。
【0016】
一方、効きが必要な高パッド押圧力時には、第1の摩擦材のヤング率が第2の摩擦材のヤング率よりも小さいため、高いパッド押圧力によって第1の摩擦材が圧縮され、比較的摩擦係数の大きい第2の摩擦材がディスクに接した状態で摩擦が行われる。そのため、十分な効きが得られる。
【0017】
そして、このような摩擦係数の異なる第1の摩擦材と第2の摩擦材による鳴きの抑制や十分な効きを実現するためには、本発明者らの検討によれば、第1および第2の摩擦材の摩擦係数の差が0.05以上であれば良いことを見出した。
【0018】
また、リーディング側の第1の摩擦材の方が、トレーリング側の第2の摩擦材よりも摩耗しにくいため、ディスクブレーキパッド全体の摩耗が進行しても、第1の摩擦材の方が第2の摩擦材よりも突出しているという構成を維持することができる。
【0019】
さらに、本発明では、第1の摩擦材と第2の摩擦材との間にはスリットが設けられ、このスリットを介して両摩擦材は離間した形で区画されているため、リーディング側の第1の摩擦材の摩耗粉は、スリットから排出され、トレーリング側の第2の摩擦材に移着することが抑制される。
【0020】
そして、このスリットの効果を適切に実現するためには、本発明者らの検討によれば、スリット幅が1mm以上であれば良いことを見出した。
【0021】
このようにして、第1の摩擦材の突出構成が維持されること、および第1の摩擦材の摩耗粉の移着の抑制がなされることのため、上述した鳴きの抑制と十分な効きの実現とが長期に渡って達成可能となる。
【0022】
以上のように、本発明によれば、ディスクブレーキパッドにおいて鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることができる。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るディスクブレーキパッドD1の構成図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)中のA−A線に沿った概略断面図である。
【0025】
図1(a)では、ディスクブレーキパッドD1におけるディスク(ディスクローター、図示せず)へ押し付けられる面が正対して示されている。そして、ディスクブレーキパッドD1は、図1(b)中の白抜き矢印Y1に示すように、図示しないピストン等により圧力(以下、パッド押圧力という)が印加され、ディスクに押し付けられるようになっている。
【0026】
また、図1中においては、矢印Y2によってディスクの回転方向が示されている。ディスクブレーキパッドD1は、このように回転するディスクに押しつけられることで当該ディスクの回転を制御する。
【0027】
ディスクブレーキパッドD1は、ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材10が配置されており、ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に第2の摩擦材20が配置されたものとなっている。このように第1の摩擦材10、第2の摩擦材20がこの順に、摺動方向に沿って配置されている。
【0028】
ここで、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20とでは、摩擦係数、ヤング率、摩耗性の点で次のような相違がある。摩擦係数およびヤング率については、第1の摩擦材10の方が小さく(低く)、第2の摩擦材20の方が大きい(高い)。このとき第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上である。
【0029】
また、摩耗性については、第1の摩擦材10の方が摩耗しにくく、第2の摩擦材20の方が摩耗しやすい。つまり、リーディング側の第1の摩擦材10の方がトレーリング側の第2の摩擦材20に比べて、ディスクとの摺動において滑りやすく且つ摩耗しにくく、さらに、ディスクへ押し付けられたときに歪み変形しやすいものである。
【0030】
これら第1および第2の摩擦材10、20は、通常のブレーキパッドに使用される有機繊維、無機繊維、金属繊維等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合し、熱成形により成形したものである。
【0031】
例えば、繊維原料としては、アラミド繊維、銅ファイバー、スチール繊維等が挙げられ、摩擦調整剤および充填剤としては、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0032】
このような素材を用いて摩擦材を熱成形する場合、摩擦係数の制御は、例えばスチール繊維やアルミナ等の比較的硬い材料の組成を調整することで可能である。また、ヤング率の制御は、例えばアラミド繊維等の比較的やわらかい材料の組成を調整することで可能である。
【0033】
さらに、摩耗性については、例えば繊維状の原料の組成を増やすことによって摩擦材内の結合力を増加させることにより、摩耗しにくくできる。このような手法により、摩擦係数、ヤング率、摩耗性の制御が可能となる。
【0034】
また、図1(b)に示すように、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10は第2の摩擦材20よりも突出している。この突出における両摩擦材10、20の段差は、具体的には数十μm程度(例えば約30μm)にすることができる。そして、これら両摩擦材10、20は、ディスクに当たる面とは反対側にて裏金30に接着され、この裏金30に保持固定されている。
【0035】
また、本実施形態のディスクブレーキパッドD1においては、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間に隙間としてのスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されている。ここで、スリット40の幅は1mm以上である。
【0036】
なお、スリット40は少なくともディスクと当たる面に開口して形成されていれば良く、スリットの底部すなわち裏金30の近傍部では第1の摩擦材10と第2の摩擦材20とがつながった形となっていても良い。
【0037】
次に、上記ディスクブレーキパッドD1の製造方法について述べる。図2は、本製造方法に用いる金型100の構成を示す斜視図である。
【0038】
この金型100には、第1および第2の摩擦材10、20の外形を規定するキャビティ110が形成されている。このキャビティ110内にはスリット40を形成するための仕切120が設けられ、この仕切120を介してキャビティ110は、第1の摩擦材形成用のキャビティ111と第2の摩擦材形成用のキャビティ112とに区画されている。
【0039】
まず、第1の摩擦材10および第2の摩擦材10、20のそれぞれについて、有機、無機、金属等の繊維原料と摩擦調整剤、充填剤等の粉末原料、フェノール樹脂等のバインダーレジンを混合してなる混合体を作製する。そして、第1の摩擦材10の混合体は第1の摩擦材形成用のキャビティ111へ投入し、第2の摩擦材20の混合体は第2の摩擦材形成用のキャビティ112へ投入する。
【0040】
その後、キャビティ110の一方を覆うように裏金30を金型100に取り付ける。このとき裏金30には、各摩擦材10、20との接着を行うための接着剤を配設する。この状態のものを裏金30の反対側から加圧し、その後、加熱して硬化することにより、成形体を作製する。
【0041】
こうして作製した成形体を金型100から取り出し、次に、研磨加工を行う。この研磨は、成形体におけるディスクと当たる面を研磨し、ブレーキパッドとして機能させるべく平坦性を向上させるものである。
【0042】
この研磨においては、上述したように第1の摩擦材10よりも第2の摩擦材20の方が摩耗しやすい性質を有することから、第2の摩擦材20の方が研磨によって摩耗する量が大きい。そのため、上記図1(b)に示したように、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10が第2の摩擦材20よりも突出した形状が形成される。この研磨を終えて、上記ディスクブレーキパッドD1ができあがる。
【0043】
次に、上記ディスクブレーキパッドD1の作用効果等について述べる。一般に、ディスクブレーキパッドにおいては、当該パッドをディスクに押しつける圧力(パッド押圧力)が小さいほど鳴きが発生しやすい。
【0044】
その点、本実施形態では、ディスクに当たる面において第1の摩擦材10が第2の摩擦材20よりも突出しているため、鳴きが発生しやすい低パッド押圧力時には、比較的摩擦係数の小さい第1の摩擦材10がディスクに接して摩擦が行われることで鳴きが抑制される。
【0045】
一方、効きが必要な高パッド押圧力時には、第1の摩擦材10のヤング率が第2の摩擦材20のヤング率よりも小さいため、高いパッド押圧力によって第1の摩擦材10が圧縮され、比較的摩擦係数の大きい第2の摩擦材20がディスクに接した状態で摩擦が行われる。そのため、十分な効きが得られる。この鳴きの抑制と十分な効きの実現は、両摩擦材10、20における摩擦係数の差を0.05以上としたことにより達成可能なものである。
【0046】
また、リーディング側の第1の摩擦材10の方が、トレーリング側の第2の摩擦材20よりも摩耗しにくいため、ディスクブレーキパッドD1全体の摩耗が進行しても、第1の摩擦材10の方が第2の摩擦材20よりも突出しているという構成を維持することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との間にはスリット40が設けられ、このスリット40を介して両摩擦材10、20は離間した形で区画されているため、リーディング側の第1の摩擦材10の摩耗粉は、スリット40から排出される。
【0048】
そのため、第1の摩擦材10の摩耗粉がトレーリング側の第2の摩擦材20に移着すること、すなわち当該摩耗粉が移動して第2の摩擦材20の表面に付着して見かけ上第2の摩擦材20の摩擦特性が第1の摩擦材10と同様なものになってしまうようなことが防止される。そして、この移着の抑制はスリット40の幅を1mm以上とすることで達成される。
【0049】
このように、特性の異なる両摩擦材10、20を鳴き特性および効き特性を発揮するために適切な位置に配置したこと、且つ、第1の摩擦材の突出構成が維持されること、さらに第1の摩擦材の摩耗粉の移着の抑制がなされることが実現されているため、上述した鳴きの抑制と十分な効きの実現とが長期に渡って達成可能となる。
【0050】
よって、本実施形態のディスクブレーキパッドD1においては、鳴き特性と効き特性とを適切に両立させることができる。
【0051】
また、上述したように、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上であること、および、スリット40の幅は1mm以上であることとしているが、このことは以下に述べるような検討結果を根拠とするものである。
【0052】
図3は、ディスクブレーキパッドD1において両摩擦材10、20の摩擦係数およびヤング率、スリット40の幅を変えた種々の例を示す図表である。なお、図3では、本実施形態に係る例としての実施例1〜2と、比較例1〜3とを示してあり、比較的摩擦係数の低い第1の摩擦材10を「低μ材」、比較的摩擦係数の高い第2の摩擦材20を「高μ材」と示してある。
【0053】
また、各例における原料は、繊維基材の成分としてアラミド繊維、銅ファイバー、スチール繊維を用い、摩擦調整剤および充填剤の成分として黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、硫酸バリウムを用い、バインダーの成分としてフェノール樹脂を用いている。低μ材、高μ材における各成分の分量については、図3中、wt%の単位にて示してある。
【0054】
各例について、ブレーキパッドは次のように作製した。原料をアイリッヒミキサーを用いて5分間乾式で均一に混合し原料混合物(混合体)を得た。熱成形は、160℃に加熱された金型100中に各原料混合物を投入して10分間、200kg/cm2で加圧した。その後、この成形体を230℃で3時間硬化し、続いて研磨加工することで作製を行った。
【0055】
また、図3に示す摩擦係数は、JASO C406に準拠してダイナモメータを用いた測定により求めたものである。この図3に示す各例では、スチール繊維やアルミナの組成を調整することで摩擦係数の制御を行い、アラミド繊維の組成を調整することでヤング率の制御を行っており、各例において低μ材は高μ材よりも摩擦係数およびヤング率が小さくなっている。
【0056】
また、摩耗性については、低μ材における繊維原料の組成を高μ材よりも増やすことによって、低μ材の方を高μ材よりも摩耗しにくいものとしている。実際に、各例において、ダイナモメータを用いて試験温度100℃にて1000回制動を繰り返した後の摩耗量を調べたところ、各例のいずれも、低μ材の方が高μ材よりも摩耗量が少なかった。
【0057】
また、図4は図3に示す各例について、鳴き特性としての「鳴き発生率(%)」、「効き」、「履歴後鳴き」、「履歴後効き」を調べた結果を示す図表である。
【0058】
鳴き発生率は、ダイナモメータを用いた試験において、鳴き回数を全制動回数で除した値の百分率である。また、効きについては、実車試験で確認したものである。また、履歴後の鳴きや効きは、ダイナモメータを用いて250℃の温度にて500回制動を繰り返した後に、同様に鳴き発生率を求めたり、効きを測定したものである。
【0059】
これら図3、図4から、まず、スリット40の幅が0.5mmと小さいものであると(比較例1参照)、低μ材(第1の摩擦材)の摩耗粉が高μ材(第2の摩擦材)に移着し、履歴後の効きが低下することがわかる。
【0060】
また、低μ材と高μ材との摩擦係数の差が0.02や0.03と小さいものであると、鳴きの悪化や効きの低下が起こる(比較例1、2参照)。これは、低μ材と高μ材とで摩擦係数の大小の差による特性を十分に顕わすことが困難になるためである。
【0061】
それに対して、実施例1、2では、低μ材と高μ材との摩擦係数の差を0.05以上、スリット40の幅を1mm以上とすることにより、初期および履歴後の鳴き、効き共に良好なものとなっている。なお、実施例2では上記摩擦係数の差が0.06以上であるが、当該摩擦係数の差が0.05以上であれば、同様に良好な結果が得られることを確認している。
【0062】
これら図3、図4に示す各例の結果を比較し検討すると、第1の摩擦材10と第2の摩擦材20との摩擦係数の差は0.05以上であることが必要であり、スリット40の幅は1mm以上であることが必要となる。
【0063】
なお、スリット40の形成方法については、上述した仕切を有する金型を用いる方法以外にも、第1および第2の摩擦材10、20がくっついた状態の成形体を形成した後、両者の界面部分を切り取って除去し、除去された部分がスリット40となるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るディスクブレーキパッドの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のA−A線に沿った断面図である。
【図2】上記実施形態に係るディスクブレーキパッドの製造方法に用いる金型の構成を示す斜視図である。
【図3】ディスクブレーキパッドにおいて第1の摩擦材および第2の摩擦材の摩擦係数およびヤング率、スリットの幅を変えた種々の例を示す図表である。
【図4】図3に示す例について鳴き特性および効き特性をを調べた結果を示す図表である。
【符号の説明】
10…第1の摩擦材、20…第2の摩擦材、40…スリット。
Claims (1)
- 回転するディスクに押しつけられることで前記ディスクの回転を制御するディスクブレーキパッドにおいて、
前記ディスクの回入側であるリーディング側の部位に第1の摩擦材(10)が配置されており、
前記ディスクの回出側であるトレーリング側の部位に、前記第1の摩擦材に比べて摩擦係数およびヤング率が大きく且つ摩耗しやすい第2の摩擦材(20)が配置されており、
前記ディスクに当たる面において前記第1の摩擦材は前記第2の摩擦材よりも突出しており、
前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材との間にはスリット(40)が設けられ、このスリットを介して前記両摩擦材は離間した形で区画されており、
前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材との摩擦係数の差が0.05以上であり、前記スリットの幅が1mm以上であることを特徴とするディスクブレーキパッド。
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