JP2005029653A - 乾式摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【課題】室温においても静摩擦係数、動摩擦係数が高く、摩耗量を少なくすること。
【解決手段】アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材において、カシューダストを組成物全体に対して15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合し、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性を向上させてなる。
【選択図】 図2
【解決手段】アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材において、カシューダストを組成物全体に対して15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合し、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性を向上させてなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式摩擦材に係り、特に、室温においても摩擦係数が高く、耐摩耗性の良好な組成物を含み、ブレーキやクラッチなどに対して、保持、制動、動力伝達を行うに好適な乾式摩擦材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブレーキおよびクラッチなどに使用される乾式摩擦材には、高摩擦係数と良好な耐摩耗性が求められている。乾式摩擦材は、有機系繊維であるアラミド繊維、無機系繊維であるセラミック繊維などの繊維類、フェノール樹脂などの結合樹脂、銅、アルミ粉末などの金属粉末、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック類、カシューダスト、ゴムなどの有機系摩擦係数向上材、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機系摩擦係数向上材、黒鉛、二硫化モリブデンなどの潤滑剤などにより構成される。これらの材料は、適合混合されたあと、熱間プレスにて成型され、その後、表面を研磨し、所望の形状に切断して使用される。
【0003】
アラミド繊維は、摩擦材の強度増加を目的に使用される。また、摩擦材に配合する各材料を混合するときに、各材料の粉末粒子を保持し、それらをできるだけ均一に混合する効果がある。セラミック繊維は、アラミド繊維と同様に、摩擦材の強度増加、各材料の粉末粒子の保持などの効果だけでなく、相手材を研削することによる摩擦係数向上の効果もある。フェノール樹脂は、摩擦材の強度増加、摩擦材に配合する各種材料の結合に使用される。この場合、ゴム粉末変性やオイル変性といった変性フェノール樹脂を使用すると、低温でも容易に軟化し、相手材となじみやすくなり、摩擦係数が向上する。銅、アルミ粉末などの金属粉末は、相手材の研削、相手材との凝着により摩擦係数を向上させる。また、高温時にフェノール樹脂が化学分解し、液相化することにより、摩擦係数が不安定になると言われているが、銅、アルミなどの金属粉末により、この反応を抑制することができる。アルミナ、ジルコニアなどのセラミック類は、相手材を研削し、摩擦係数を向上させることができる。カシューダスト、ゴムなどは摩擦材の弾性率を下げることによる制振作用や、摩擦材表面に安定したフィルムを形成し、摩擦係数を安定させる効果がある。炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどは、摩擦材の密度を増加させ、耐摩耗性の改善や、結合樹脂の硬化反応を促進する効果がある。黒鉛、二硫化モリブデンなどは、相手材との摩擦を安定させ、スティックスリップや摩擦面から生じる異音である鳴きを防止する効果がある。
【0004】
従来のブレーキ、クラッチ用の乾式摩擦材は、自動車のように高温で使用される場合があるため、耐熱性が重視されており、高温にて摩擦係数の低下しないような配合が検討されている。
【0005】
上記したような乾式摩擦材としてカシューダストを多く含み、高速制動時の動摩擦係数が高く、且つ耐摩耗性が良好なものとして、タール分を10重量%以上含有するカシューダストを1〜35体積%含むことを特徴とする非石綿系摩擦材が示されている(特開文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−247852号公報(第2頁から第4頁)
また、繊維として天然鉱物の一種であるワラストナイトを用い、高摩擦係数、耐熱性、表面損傷が少ない摩擦材組成物が示されている(特許文献2参照)。
【特許文献2】
特開平9−157633号公報(第2頁〜第4頁)
【0007】
乾式摩擦材は、適用するブレーキ、クラッチなどの製品に取り付けたあと、使用時と比較して低速、低荷重で強制的に相手材と摩擦させる「摺り合わせ」を行うことがある。摺り合わせの目的は2つあり、第1の目的は、相手材に対して摩擦材がより平行に接触するようになじませることである。第2の目的は、摩擦材表面の結合材樹脂が、摩擦熱で熱分解して摩耗し除去されることで、摩擦材に配合した繊維などが表面に表れ、その機能を発揮させることである。したがって、摺り合わせ前と摺り合わせ後では、摩擦材の摩擦特性は変化することがあり、注意が必要である。一般には、摺り合わせ前のような摩擦初期の特性ではなく、摩擦特性の安定した摺り合わせ後の特性を評価することが多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
乾式摩擦材を用いたブレーキ、クラッチなどは、機械の動力を制御あるいは伝達する重要な部品であり、運搬機器、産業機器などに幅広く使用されている。近年、これらの動力装置の小型化が進み、ブレーキ、クラッチにも小型化が求められている。ブレーキ、クラッチなどの小型化を行う方法の1つとして、使用している摩擦材の摩擦係数を増加させることが挙げられる。摩擦材の摩擦係数が増加すると、同じトルクを出すにも、摩擦材のディスクへの押し付け力を低減したりあるいはブレーキディスク、クラッチディスクの径を小さくしたりすることができ、ブレーキ、クラッチを小型化することができる。またブレーキやクラッチなどには、相手材が室温で作動する場合もあり、この場合は、室温でも摩擦係数が高いことが求められている。
【0009】
本発明の課題は、室温においても静摩擦係数、動摩擦係数が高く、摩耗量を少なくすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂、金属粉末、セラミック粉末、有機系摩擦係数向上材、無機系摩擦係数向上材を組成物に含む乾式摩擦材において、前記有機系摩擦係数向上材を、前記組成物全体に対して、15〜27質量%で構成したものである。
【0011】
前記乾式摩擦材を構成するに際しては、有機系摩擦係数向上材にカシューダストを用いる場合、このカシューダストを、組成物全体に対して15〜25質量%とすることもできる。また、有機系摩擦係数向上材にゴム粉末を用いる場合、このゴム粉末を、組成物全体に対して2質量%以下とすることもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る乾式摩擦材は、アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂(フェノール樹脂)、金属粉末(アルミ粉末、銅粉末)、セラミック粉末(アルミナ粉末)、有機系摩擦係数向上材(カシューダスト、ゴム粉末)、無機系摩擦係数向上材(炭酸カルシウム)を組成物に含んで構成されている。これら組成物の材料について、品質工学を用いて、例えば、タグチメソッドを用いて、それぞれの材料の摩擦係数に対するSN比と感度を求めたところ、図1(a)、図1(b)に示すような結果が得られた。図1において、ダミーはディスク材に用いられる材料を示し、ベースレジンはフェノール樹脂を示す。図1(a)におけるSN比はばらつきを評価するものであり、SN比が−125に近い程ばらつきが少ないことを示している。一方、感度は、横軸を押し付け力、縦軸を摩擦力としたときの傾きに対応しており、感度が大きいものは摩擦係数が大きいことを示している。すなわち、感度が−76に近い程摩擦係数が大きいことを示している。
【0013】
次に、本発明に係る乾式摩擦材の各材料の配合割合を、図2に示すように、種々変えて摩擦材を製作し、各摩擦材を図3に示す試験条件で評価したところ、図4に示すような結果が得られた。摩擦材を評価するための試験には、摩擦試験機として、摩擦材と相手材であるディスクとを摩擦させる大型の摩擦試験機を用いた。本試験機を用いて、摺動速度1m/s、押し付け力0.98kNにて10分間摺り合わせを行い、その後、摩擦係数を測定した。
【0014】
図2において、実施例1と実施例2はゴム粉末の割合が異なるだけで他の材料の割合は同じになっている。実施例3と実施例4については、フェノール樹脂のうちストレートとゴム変性の割合が異なるだけで、他の割合は同じである。実施例5は、実施例1とはカシューダストと炭酸カルシウムの割合が異なるだけで他の材料は同じ割合である。比較例1は、カシューダストとゴム粉末の割合をそれぞれ15質量%としたものであり、比較例2は、実施例1に対して、カシューダストとゴム粉末の割合を逆にしたものである。
【0015】
図4に、実施例1〜実施例5、比較例1、2の静摩擦係数、動摩擦係数、摩耗厚さ(摩耗量)を示す。
【0016】
実施例1〜5より、カシューダストが15〜25質量%で、ゴム粉末が2質量%以下の場合、静摩擦係数が0.45〜0.48、動摩擦係数が0.47〜0.50と高摩擦係数であり、また、摩耗厚さは0.04〜0.07mmであり、耐摩耗性は良好である。
【0017】
一方、比較例1、2の静摩擦係数は0.48〜0.53と各比較例よりも高いが、動摩擦係数は0.27〜0.39であり、各実施例よりも低く、低摩擦係数である。摩耗厚さは0.8〜1.0mmであり、各実施例よりも耐摩耗性は悪い。
【0018】
次に、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2は、実施例1よりもゴム粉末が1質量%少ない。ゴム粉末は静摩擦係数を向上させるため、実施例1の方が静摩擦係数は高い。しかし、動摩擦係数については、摩擦熱によりゴム粉末が軟化し、摩耗するため、ゴム粉末が多い実施例1の方が小さい値となっている。さらに、軟化したゴム粉末が摩耗粉となって脱落するために、摩耗厚さが大きくなっている。
【0019】
次に、実施例3と実施例4とを比較すると、実施例3では、ストレートフェノール樹脂であり、実施例4ではゴム変性フェノール樹脂を使用している。ゴム変性フェノール樹脂はゴム粉末との相溶性が良く、また低温で軟化するため、摩耗係数を向上させる。しかし、軟化したゴム変性フェノール樹脂の一部が摩耗粉となって脱落するために、摩耗厚さが大きくなる。このような変性フェノール樹脂を使用することで、摩擦係数を向上させても良い。
【0020】
実施例5はカシューダストが25質量%配合されており、各実施例の中で最もその量が多い。ストレートフェノール樹脂を用いた場合でも、このようにカシューダストを増加させて、摩擦係数を向上させても良い。
【0021】
比較例1と比較例2の静摩擦係数は0.48〜0.53、動摩擦係数は0.27〜0.39である。また、摩耗厚さは0.8〜1.0mmである。比較例1と比較例2は、ゴム粉末を15質量%配合しているため、摩擦係数が各実施例よりも高い。しかし、ゴム粉末が多いため、摩擦材表面の摩耗が多くなり、動摩擦係数は各実施例よりも低く、また摩耗厚さが各実施例よりも大きい。
【0022】
以上、本実施例では、アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材において、組成物全体に対して、カシューダストを15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合することにより、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性が改善された。なお、ゴム粉末を含まないときでも、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性を改善することも可能である。この場合、ゴム粉末は、組成物全体に対して、0〜2質量%以下になるので、有機系摩擦係数向上材としては、組成物全体に対して、15〜27質量%で構成されることになる。
【0023】
次に、本発明に係る乾式摩擦材を用いたエレベータ用ブレーキについて、図5を用いて説明する。エレベータ用ブレーキは、図5に示すように、モータ1のモータ軸2に取り付けられた片状黒鉛鋳鉄からなるディスク(ブレーキディスク)3に、乾式摩擦材4を取り付けて構成されている。このエレベータ用ブレーキは、乾式摩擦材4をディスク3に押し付けることで、モータ軸2の回転を制動させたり、停止させたり、あるいは保持したりすることができるようになっている。またモータ軸2には、エレベータ用ロープ5を巻きつけたシーブ6が取り付けられている。このエレベータ用ブレーキでは、乗客の乗った乗りかごが各階に停止したときに、モータ軸2を保持するのに必要な高い静摩擦係数と、停電時に乗りかごの重さで回転するモータ軸2を制動するのに必要な高い動摩擦係数が求められる。また、摩擦材の交換頻度を減らすためには、摩耗厚さはできるだけ小さい方が良い。そこで、エレベータ用ブレーキとして、アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材として、カシューダストを15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合した摩擦材を用いることで、静摩擦係数、動摩擦係数が向上し、ブレーキを小型化することが可能になる。また耐摩耗性が向上することで、摩擦材の交換頻度を減らすことができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、乾式摩擦材として、室温においても静摩擦係数、動摩擦係数が高く、耐摩耗量を向上させることができ、ブレーキやクラッチの小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る乾式摩擦材に配合された材料の摩擦係数に対するSN比を示す特性図、(b)は、本発明に係る乾式摩擦材に配合された材料の摩擦係数に対する感度を示す特性図である。
【図2】本発明に係る乾式摩擦材の成分構成を説明するための図である。
【図3】本発明に係る乾式摩擦材の静摩擦係数、動摩擦係数、摩耗厚さの特性条件を説明するための図である。
【図4】本発明に係る乾式摩擦材の静摩擦係数、動摩擦係数、摩擦厚さの試験結果を説明するための図である。
【図5】本発明に係る乾式摩擦材をエレベータ用ブレーキに適用したときの要部断面図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 モータ軸
3 ディスク
4 乾式摩擦材
5 ロープ
6 シーブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式摩擦材に係り、特に、室温においても摩擦係数が高く、耐摩耗性の良好な組成物を含み、ブレーキやクラッチなどに対して、保持、制動、動力伝達を行うに好適な乾式摩擦材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブレーキおよびクラッチなどに使用される乾式摩擦材には、高摩擦係数と良好な耐摩耗性が求められている。乾式摩擦材は、有機系繊維であるアラミド繊維、無機系繊維であるセラミック繊維などの繊維類、フェノール樹脂などの結合樹脂、銅、アルミ粉末などの金属粉末、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック類、カシューダスト、ゴムなどの有機系摩擦係数向上材、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機系摩擦係数向上材、黒鉛、二硫化モリブデンなどの潤滑剤などにより構成される。これらの材料は、適合混合されたあと、熱間プレスにて成型され、その後、表面を研磨し、所望の形状に切断して使用される。
【0003】
アラミド繊維は、摩擦材の強度増加を目的に使用される。また、摩擦材に配合する各材料を混合するときに、各材料の粉末粒子を保持し、それらをできるだけ均一に混合する効果がある。セラミック繊維は、アラミド繊維と同様に、摩擦材の強度増加、各材料の粉末粒子の保持などの効果だけでなく、相手材を研削することによる摩擦係数向上の効果もある。フェノール樹脂は、摩擦材の強度増加、摩擦材に配合する各種材料の結合に使用される。この場合、ゴム粉末変性やオイル変性といった変性フェノール樹脂を使用すると、低温でも容易に軟化し、相手材となじみやすくなり、摩擦係数が向上する。銅、アルミ粉末などの金属粉末は、相手材の研削、相手材との凝着により摩擦係数を向上させる。また、高温時にフェノール樹脂が化学分解し、液相化することにより、摩擦係数が不安定になると言われているが、銅、アルミなどの金属粉末により、この反応を抑制することができる。アルミナ、ジルコニアなどのセラミック類は、相手材を研削し、摩擦係数を向上させることができる。カシューダスト、ゴムなどは摩擦材の弾性率を下げることによる制振作用や、摩擦材表面に安定したフィルムを形成し、摩擦係数を安定させる効果がある。炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどは、摩擦材の密度を増加させ、耐摩耗性の改善や、結合樹脂の硬化反応を促進する効果がある。黒鉛、二硫化モリブデンなどは、相手材との摩擦を安定させ、スティックスリップや摩擦面から生じる異音である鳴きを防止する効果がある。
【0004】
従来のブレーキ、クラッチ用の乾式摩擦材は、自動車のように高温で使用される場合があるため、耐熱性が重視されており、高温にて摩擦係数の低下しないような配合が検討されている。
【0005】
上記したような乾式摩擦材としてカシューダストを多く含み、高速制動時の動摩擦係数が高く、且つ耐摩耗性が良好なものとして、タール分を10重量%以上含有するカシューダストを1〜35体積%含むことを特徴とする非石綿系摩擦材が示されている(特開文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−247852号公報(第2頁から第4頁)
また、繊維として天然鉱物の一種であるワラストナイトを用い、高摩擦係数、耐熱性、表面損傷が少ない摩擦材組成物が示されている(特許文献2参照)。
【特許文献2】
特開平9−157633号公報(第2頁〜第4頁)
【0007】
乾式摩擦材は、適用するブレーキ、クラッチなどの製品に取り付けたあと、使用時と比較して低速、低荷重で強制的に相手材と摩擦させる「摺り合わせ」を行うことがある。摺り合わせの目的は2つあり、第1の目的は、相手材に対して摩擦材がより平行に接触するようになじませることである。第2の目的は、摩擦材表面の結合材樹脂が、摩擦熱で熱分解して摩耗し除去されることで、摩擦材に配合した繊維などが表面に表れ、その機能を発揮させることである。したがって、摺り合わせ前と摺り合わせ後では、摩擦材の摩擦特性は変化することがあり、注意が必要である。一般には、摺り合わせ前のような摩擦初期の特性ではなく、摩擦特性の安定した摺り合わせ後の特性を評価することが多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
乾式摩擦材を用いたブレーキ、クラッチなどは、機械の動力を制御あるいは伝達する重要な部品であり、運搬機器、産業機器などに幅広く使用されている。近年、これらの動力装置の小型化が進み、ブレーキ、クラッチにも小型化が求められている。ブレーキ、クラッチなどの小型化を行う方法の1つとして、使用している摩擦材の摩擦係数を増加させることが挙げられる。摩擦材の摩擦係数が増加すると、同じトルクを出すにも、摩擦材のディスクへの押し付け力を低減したりあるいはブレーキディスク、クラッチディスクの径を小さくしたりすることができ、ブレーキ、クラッチを小型化することができる。またブレーキやクラッチなどには、相手材が室温で作動する場合もあり、この場合は、室温でも摩擦係数が高いことが求められている。
【0009】
本発明の課題は、室温においても静摩擦係数、動摩擦係数が高く、摩耗量を少なくすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂、金属粉末、セラミック粉末、有機系摩擦係数向上材、無機系摩擦係数向上材を組成物に含む乾式摩擦材において、前記有機系摩擦係数向上材を、前記組成物全体に対して、15〜27質量%で構成したものである。
【0011】
前記乾式摩擦材を構成するに際しては、有機系摩擦係数向上材にカシューダストを用いる場合、このカシューダストを、組成物全体に対して15〜25質量%とすることもできる。また、有機系摩擦係数向上材にゴム粉末を用いる場合、このゴム粉末を、組成物全体に対して2質量%以下とすることもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る乾式摩擦材は、アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂(フェノール樹脂)、金属粉末(アルミ粉末、銅粉末)、セラミック粉末(アルミナ粉末)、有機系摩擦係数向上材(カシューダスト、ゴム粉末)、無機系摩擦係数向上材(炭酸カルシウム)を組成物に含んで構成されている。これら組成物の材料について、品質工学を用いて、例えば、タグチメソッドを用いて、それぞれの材料の摩擦係数に対するSN比と感度を求めたところ、図1(a)、図1(b)に示すような結果が得られた。図1において、ダミーはディスク材に用いられる材料を示し、ベースレジンはフェノール樹脂を示す。図1(a)におけるSN比はばらつきを評価するものであり、SN比が−125に近い程ばらつきが少ないことを示している。一方、感度は、横軸を押し付け力、縦軸を摩擦力としたときの傾きに対応しており、感度が大きいものは摩擦係数が大きいことを示している。すなわち、感度が−76に近い程摩擦係数が大きいことを示している。
【0013】
次に、本発明に係る乾式摩擦材の各材料の配合割合を、図2に示すように、種々変えて摩擦材を製作し、各摩擦材を図3に示す試験条件で評価したところ、図4に示すような結果が得られた。摩擦材を評価するための試験には、摩擦試験機として、摩擦材と相手材であるディスクとを摩擦させる大型の摩擦試験機を用いた。本試験機を用いて、摺動速度1m/s、押し付け力0.98kNにて10分間摺り合わせを行い、その後、摩擦係数を測定した。
【0014】
図2において、実施例1と実施例2はゴム粉末の割合が異なるだけで他の材料の割合は同じになっている。実施例3と実施例4については、フェノール樹脂のうちストレートとゴム変性の割合が異なるだけで、他の割合は同じである。実施例5は、実施例1とはカシューダストと炭酸カルシウムの割合が異なるだけで他の材料は同じ割合である。比較例1は、カシューダストとゴム粉末の割合をそれぞれ15質量%としたものであり、比較例2は、実施例1に対して、カシューダストとゴム粉末の割合を逆にしたものである。
【0015】
図4に、実施例1〜実施例5、比較例1、2の静摩擦係数、動摩擦係数、摩耗厚さ(摩耗量)を示す。
【0016】
実施例1〜5より、カシューダストが15〜25質量%で、ゴム粉末が2質量%以下の場合、静摩擦係数が0.45〜0.48、動摩擦係数が0.47〜0.50と高摩擦係数であり、また、摩耗厚さは0.04〜0.07mmであり、耐摩耗性は良好である。
【0017】
一方、比較例1、2の静摩擦係数は0.48〜0.53と各比較例よりも高いが、動摩擦係数は0.27〜0.39であり、各実施例よりも低く、低摩擦係数である。摩耗厚さは0.8〜1.0mmであり、各実施例よりも耐摩耗性は悪い。
【0018】
次に、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2は、実施例1よりもゴム粉末が1質量%少ない。ゴム粉末は静摩擦係数を向上させるため、実施例1の方が静摩擦係数は高い。しかし、動摩擦係数については、摩擦熱によりゴム粉末が軟化し、摩耗するため、ゴム粉末が多い実施例1の方が小さい値となっている。さらに、軟化したゴム粉末が摩耗粉となって脱落するために、摩耗厚さが大きくなっている。
【0019】
次に、実施例3と実施例4とを比較すると、実施例3では、ストレートフェノール樹脂であり、実施例4ではゴム変性フェノール樹脂を使用している。ゴム変性フェノール樹脂はゴム粉末との相溶性が良く、また低温で軟化するため、摩耗係数を向上させる。しかし、軟化したゴム変性フェノール樹脂の一部が摩耗粉となって脱落するために、摩耗厚さが大きくなる。このような変性フェノール樹脂を使用することで、摩擦係数を向上させても良い。
【0020】
実施例5はカシューダストが25質量%配合されており、各実施例の中で最もその量が多い。ストレートフェノール樹脂を用いた場合でも、このようにカシューダストを増加させて、摩擦係数を向上させても良い。
【0021】
比較例1と比較例2の静摩擦係数は0.48〜0.53、動摩擦係数は0.27〜0.39である。また、摩耗厚さは0.8〜1.0mmである。比較例1と比較例2は、ゴム粉末を15質量%配合しているため、摩擦係数が各実施例よりも高い。しかし、ゴム粉末が多いため、摩擦材表面の摩耗が多くなり、動摩擦係数は各実施例よりも低く、また摩耗厚さが各実施例よりも大きい。
【0022】
以上、本実施例では、アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材において、組成物全体に対して、カシューダストを15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合することにより、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性が改善された。なお、ゴム粉末を含まないときでも、静摩擦係数、動摩擦係数、耐摩耗性を改善することも可能である。この場合、ゴム粉末は、組成物全体に対して、0〜2質量%以下になるので、有機系摩擦係数向上材としては、組成物全体に対して、15〜27質量%で構成されることになる。
【0023】
次に、本発明に係る乾式摩擦材を用いたエレベータ用ブレーキについて、図5を用いて説明する。エレベータ用ブレーキは、図5に示すように、モータ1のモータ軸2に取り付けられた片状黒鉛鋳鉄からなるディスク(ブレーキディスク)3に、乾式摩擦材4を取り付けて構成されている。このエレベータ用ブレーキは、乾式摩擦材4をディスク3に押し付けることで、モータ軸2の回転を制動させたり、停止させたり、あるいは保持したりすることができるようになっている。またモータ軸2には、エレベータ用ロープ5を巻きつけたシーブ6が取り付けられている。このエレベータ用ブレーキでは、乗客の乗った乗りかごが各階に停止したときに、モータ軸2を保持するのに必要な高い静摩擦係数と、停電時に乗りかごの重さで回転するモータ軸2を制動するのに必要な高い動摩擦係数が求められる。また、摩擦材の交換頻度を減らすためには、摩耗厚さはできるだけ小さい方が良い。そこで、エレベータ用ブレーキとして、アラミド繊維、セラミック繊維、フェノール樹脂、アルミ粉末、銅粉末、アルミナ粉末、ゴム粉末、カシューダスト、炭酸カルシウムを組成物に含む乾式摩擦材として、カシューダストを15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下配合した摩擦材を用いることで、静摩擦係数、動摩擦係数が向上し、ブレーキを小型化することが可能になる。また耐摩耗性が向上することで、摩擦材の交換頻度を減らすことができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、乾式摩擦材として、室温においても静摩擦係数、動摩擦係数が高く、耐摩耗量を向上させることができ、ブレーキやクラッチの小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る乾式摩擦材に配合された材料の摩擦係数に対するSN比を示す特性図、(b)は、本発明に係る乾式摩擦材に配合された材料の摩擦係数に対する感度を示す特性図である。
【図2】本発明に係る乾式摩擦材の成分構成を説明するための図である。
【図3】本発明に係る乾式摩擦材の静摩擦係数、動摩擦係数、摩耗厚さの特性条件を説明するための図である。
【図4】本発明に係る乾式摩擦材の静摩擦係数、動摩擦係数、摩擦厚さの試験結果を説明するための図である。
【図5】本発明に係る乾式摩擦材をエレベータ用ブレーキに適用したときの要部断面図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 モータ軸
3 ディスク
4 乾式摩擦材
5 ロープ
6 シーブ
Claims (4)
- アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂、金属粉末、セラミック粉末、有機系摩擦係数向上材、無機系摩擦係数向上材を組成物に含む乾式摩擦材において、前記有機系摩擦係数向上材は、前記組成物全体に対して、15〜27質量%で構成されてなることを特徴とする乾式摩擦材。
- アラミド繊維、セラミック繊維、結合樹脂、金属粉末、セラミック粉末、有機系摩擦係数向上材、無機系摩擦係数向上材を組成物に含む乾式摩擦材において、前記有機系摩擦係数向上材に属するカシューダストを、前記組成物に対して、15〜25質量%、ゴム粉末を2質量%以下で構成されていることを特徴とする乾式摩擦材。
- 請求項1または2に記載の乾式摩擦材において、前記結合樹脂は、フェノール樹脂で構成され、前記金属粉末は、アルミ粉末と銅粉末で構成され、前記セラミック粉末は、アルミナ粉末で構成され、前記無機系摩擦係数向上材は、炭酸カルシウムで構成されてなることを特徴とする乾式摩擦材。
- モータ軸に連結されたディスクに対して、制動時に前記ディスクを押し付けながら制動力を付与するブレーキ板を備え、前記ブレーキ板として、請求項1、2または3のうちいずれか1項に記載の乾式摩擦材を用いてなることを特徴とするエレベータ用ブレーキ。
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- 2003-07-10 JP JP2003194718A patent/JP2005029653A/ja active Pending
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