JP2004124062A - ポリカーボネート樹脂粉粒体、およびそれを用いた回転成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘度平均分子量が16,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物であって、Tyler篩による標準篩法で得られた35メッシュより大きい粒子が1重量%以下,150メッシュより小さな粒子が5重量%より多く15重量%以下、および200メッシュより小さい粒子が5重量%未満であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体に関する。詳しくは特定の分子量を有するポリカーボネート樹脂を用い、特定の粒径分布を有する樹脂粉粒体および該粉粒体を用いて回転成形によって得られる成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性などの各種特性に優れた樹脂として、幅広い分野において使用されており、例えば、CD,CD―Rなどの光学情報媒体、光学レンズ、シートなどの建材その他の建築物、車両用のグレージング材料などに用いられている。これらは主に押出成形、射出成形、熱圧縮成形などの成形法により製造されている。
【0003】
一方、比較的安価な設備により大型の樹脂成形品を得る方法として、従来から回転成形法が知られている。しかしながら、従来その主たる対象はオレフィン系樹脂などに限られてきた。近年になり、回転成形の方法は急速に進展しており、従来は金型を回転させながら長時間高温の炉の中を通す必要があったのに対し、現在では金型に直接熱媒および冷媒を通す技術、およびその媒体を効率よく金型内に通じる技術が進展し、従来よりも複雑または緻密な成形品が得られるようになっている。
しかしながら、回転成形は押出成形や射出成形とは異なり、樹脂に高い圧力をかけることが実質的に困難であるため、樹脂中に気泡が発生しやすい欠点があった。特に溶融粘度の高いポリカーボネート樹脂を用いる場合は、気泡が発生しやすく、気泡の発生により、成形品の外観や光学的要求が不十分となったり、または機械強度的に不安定な要素を惹起する問題があった。
【0004】
かかる問題の解決方法として、特許文献1では、粘度平均分子量が13,000〜23,000で、特定の粒径分布を有するポリカーボネート樹脂粉粒体を使用して回転成形することを提案している。しかしながら、この発明で採用されている成形温度は330℃と高いため、成形時の気泡発生、表面肌荒れや黄変などの不良を抑えることは難しく、また成形温度が高いことから、冷却取り出し後の温度再設定まで時間がかかるため、成形サイクルが長くなる問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−20496号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実状に鑑みなされたものであって、その目的は、回転成形に好適なポリカーボネート樹脂粉粒体を提供することにある。特に、耐候性、耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性、低温成形性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる粉粒体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、粘度平均分子量が16,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物であって、Tyler篩による標準篩法で得られた35メッシュより大きい粒子が1重量%以下,150メッシュより小さな粒子が5重量%より多く15重量%以下、および200メッシュより小さい粒子が5重量%未満であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体及びかかる粉粒体を回転成形してなる回転成形体に存する。更に、本発明は、前記樹脂組成物が、(a)粘度平均分子量が16,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)最大吸収波長が400nm未満である耐候性改良材0.001〜1重量部及び(c)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体にも関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の粉粒体に使用される(a)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体と反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
【0009】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独で、または2種以上を混合して使用することもできる。
【0010】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0011】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものではなく、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた界面重合法あるいは、炭酸ジエステルを用いてエステル交換を行う溶融法(エステル交換法)等公知の方法を用いて製造することができる。
【0012】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、粘度平均分子量(Mv)が、16,000〜30,000のものが使用される。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は回転成形時の樹脂の溶融粘度に対して大きな影響を与える因子である。回転成形時に樹脂が金型壁面から均一に溶融すること、および樹脂粉粒体がかかる溶融液面を流れながら溶融していくことの2点を満足することにより、均一で欠陥のない肉厚の成形品が形成されると考えられるが、樹脂の溶融粘度が高い場合は、かかる溶融液面を流れる際の抵抗が高くなり均一な溶融層の形成が困難となる。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、16,000より小さいと、回転成形品の耐衝撃性が低下し、割れが発生する虞があるので好ましくなく、30,000より大きいと、溶融粘度が高く、流動性が悪くなり、成形性に問題がある。好ましい粘度平均分子量は16,500〜28,000であり、より好ましくは17,000〜25,000である。なお、粘度平均分子量(Mv)は、塩化メチレンを溶媒とする、芳香族ポリカーボネート樹脂溶液の25℃における溶液粘度を測定し、その値から求めた極限粘度[η]から下記(i)式により算出することが出来る。
【0013】
【数1】
[η]=1.23×10−4Mv0.83 (i)
【0014】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いる。一価芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂として、分子量の異なる2種以上の樹脂を混合して分子量を調節してもよい。
【0015】
本発明に使用する芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端水酸基濃度が、300ppm以上であることが好ましい。末端水酸基濃度は300〜2,000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましくは350〜1000ppm、特に好ましくは400〜800ppmの範囲である。
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(ppm)は、Macromol.Chem.88 215(1965)に記載されている、四塩化チタンと酢酸を用いる比色定量法により測定することができ、ビスフェノールAを基準物質として次式(ii)により算出することができる。
【0016】
【数2】
末端水酸基濃度(ppm)=芳香族ポリカーボネート樹脂中の末端水酸基量(μmol/g)×17 (ii)
【0017】
さらに、本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂中に含まれる残存モノマーが、合計して500ppm以下であることが好ましい。残存モノマーとは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物類、炭酸ジエステル類、これらの重縮合反応時の副生物および末端停止剤であるモノヒドロキシ化合物類である。これら残存モノマーの合計量が500ppmを超えると、回転成形体内部に気泡が発生したり、成形体表面があばた状となって表面の平滑性が低下する場合がある。本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂中の残存モノマー量は、より好ましくは300ppm以下である。さらに、各残存モノマーの量としては、モノヒドロキシ化合物類が100ppm以下、芳香族ジヒドロキシ化合物類が100ppm以下、炭酸ジエステル類が300ppm以下であることが好ましい。
【0018】
この様な特性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を得る方法は特に限定されるものではないが、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂製造時の条件を選択する方法がある。例えば、エステル交換法により、芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する場合、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物類1モルに対し、炭酸ジエステル類を1.01〜1.30モル、好ましくは1.01〜1.20モルの比率で使用し、140〜320℃の温度範囲、常圧または減圧下、副生物を除去しながら、溶融重縮合反応を行う。また、反応終了後、生成物をペレット化する際に、ベント式押出機を用いて、樹脂中に残存するモノマーや副生物等の低分子量成分を除去しても良い。
【0019】
本発明の樹脂粉粒体を構成する樹脂組成物は、かかる(a)芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とするものであるが、好ましくは、さらに(b)最大吸収波長が400nm未満である耐候性改良剤及び(c)亜リン酸エステル系安定剤を含有する。
【0020】
本発明に使用される(b)最大吸収波長が400nm未満である耐候性改良剤としては、蛍光増白剤または紫外線吸収剤があげられる。両者とも最大吸収波長を400nm未満の紫外線領域に有している点で共通するが、蛍光増白剤は、吸収したエネルギーにより励起した状態を可視領域の紫〜青色の部分に光エネルギーとして放射することにより定常状態に戻るのに対し、紫外線吸収剤は励起した状態を運動エネルギーおよび熱エネルギーとして放射することにより定常状態に戻るところが異なっている。本発明に使用される紫外線吸収剤として具体的にはベンゾトリアゾール系化合物が挙げられ、蛍光増白剤として具体的にはクマリン系および/またはベンゾオキサゾール系化合物が挙げられる。
【0021】
本発明に使用される(b1)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、下記一般式(3)で示される化合物及びメチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物が好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
(式(3)中、R5 〜R8は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の窒素原子及び/又は酸素原子を含有してもよい炭化水素基を示す。)。
R5〜R8として具体的には、水素原子、クロロ、ブロモなどのハロゲン原子、メチル、エチル、イソプロピル等の直鎖または分岐のアルキル基のような炭化水素基が挙げられる。またY1〜Y2としては具体的には、水素原子、メチル、エチル、t−ブチル、オクチル等の直鎖または分岐のアルキル基、ベンジル、ジメチルベンジルなどのアラルキル基、更に、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシ、アルキルなどで置換されたアラルキル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(3)のベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、[メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物、さらには下記式(4)に示す化合物などを挙げることができる。紫外線吸収剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用しても良い。
【0025】
【化5】
【0026】
これらの中で、特に好ましいものは、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、上記式(4)の化合物である。
(b1)紫外線吸収剤の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.05〜1重量部である。(b1)紫外線吸収剤の量が1重量部を超えると射出成形時の金型汚染等の問題があり、一方、0.05重量部以下では、紫外線吸収能が不十分なため、本発明の目的とする色調安定性の優れた成形体が得られない。
【0027】
本発明に使用される(b2)蛍光増白剤は、成形品を明るく見せるため、成形品に配合される顔料または染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させるように機能する。成形品の黄色味を消すという点では、機能がブルーイング剤と類似しているが、ブルーイング剤は単に成形品の黄色光を除去するのに対して、蛍光増白剤は波長400nm未満の紫外線を吸収し、そのエネルギーを波長400nm以上の可視光線、とくに青紫色の光線に変えて放射する点で異なっている。本発明に使用される(b2)蛍光増白剤は、紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部の青紫色の光線に変えて放射する作用を有するものであれば特に限定されないが、クマリン系化合物およびベンゾオキサゾ−ル系化合物が好ましい。
【0028】
好ましいクマリン系化合物としては、3−フェニル−7−アミノクマリン,3−フェニル−7−(イミノ−1’,3’,5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−クロロ)−クマリン、3−フェニル−7−(イミノ−1’,3’,5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−メトキシ)−クマリン、3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン、4−メチル−7−ヒドロキシ−クマリンなどを挙げることができる。
【0029】
蛍光増白剤として好ましいベンゾトリアゾ−ル系化合物としては、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン,4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−4’−(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)フランなどを挙げることができる。
【0030】
(b2)蛍光増白剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の範囲とするのが好ましい。蛍光増白剤の配合量が0.001重量部未満であると、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させるという機能、および紫外線を吸収し可視部の青紫色に放射する機能が十分に発揮されず、0.2重量部を超えてもそれ以上の添加効果は見られない。蛍光増白剤の配合量の好ましい範囲は、0.003〜0.15重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。
【0031】
本発明において用いられる(c)亜リン酸エステル系安定剤(以下、単に「リン系安定剤」ということがある)としては、種々のものが使用されるが、耐加水分解性が要求される組成物については、ペンタエリスリトール構造を有する亜リン酸エステル系安定剤の使用は、プレッシャークッカ−試験(120℃,100%RH,5hr)後に、成形品が白濁する場合があり好ましくない。
【0032】
本発明に用いられる(c)亜リン酸エステル系安定剤としては、下記一般式(1)および/または一般式(2)で示される亜リン酸エステル系安定剤(c)が好ましく用いられる。
【0033】
【化6】
【0034】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)。
【0035】
【化7】
【0036】
(式中、R2〜R4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)。
【0037】
これらR1およびR2〜R4で示される基としては、それぞれ、例えば、メチルエチル、iso−プロピル、tert−ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、オクタデシル等の炭素数1〜20のアルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロヘキシルなどの脂環族炭化水素基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が好ましい。また、これらの基はヒドロキシル基などの置換基、また、環状基の場合は更にアルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
上記一般式(1)または(2)の構造を有する亜リン酸エステル系安定剤としては、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0039】
本発明に使用される(c)亜リン酸エステル系安定剤の量としては、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。(c)亜リン酸エステル系安定剤の量が0.01重量部より少ないと、安定剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の安定剤としての効果は得られない。亜リン酸エステル系安定剤の量は,0.02〜1重量部が好ましい。
【0040】
上記リン系安定剤を用いることにより耐候性、耐衝撃性、透明性、色調安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られるが、このリン系安定剤に加えて、さらに(d)フェノール系抗酸化剤を配合することにより、さらなる耐候性、色調安定性が優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本発明に使用される(d)フェノール系抗酸化剤としては,特に制限はないが、ヒンダードフェノール系が好適に用いられる。代表的な例としては例えば、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0042】
上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらのフェノール系抗酸化剤は、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社より、商品名「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されており、容易に入手することができる。
(d)フェノール系抗酸化剤の配合量としては、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ない場合には、抗酸化剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の抗酸化剤としての効果は得られない。フェノール系抗酸化剤の配合量は、0.02〜1重量部が好ましい。
【0043】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、さらに(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物を配合することが好ましい。(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物としては下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0044】
【化8】
【0045】
(式中、X、Yは、同じまたは異なって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子の何れか1種または2種以上を含んでいても良い炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、pは0〜4、qは0〜5の整数を示す。)。
【0046】
上記一般式(5)においては、X,Yは、具体的にはアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等のアルキル基である。p及びqは好ましくは2である。本発明に使用される(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物として、好ましくは、3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−ベンゾフラノ−2−オン[上記一般式(5)において、Xpが5,7−ジーtert−ブチル基、Yqが3,4−ジメチル基である化合物]、もしくは3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−ベンゾフラノ−2−オン[上記一般式(5)において、Xpが5,7−ジーtert−ブチル基、Yqが2,3−ジメチル基である化合物]またはそれらの混合物である。
【0047】
上記ベンゾフラノ−2−オン型化合物は、ポリマー中のアルキルラジカルを捕捉し、自動酸化反応を抑制する効果を有しており、かつ、成形加工時に黄変を抑える効果をも有する特殊な化合物である。このベンゾフラノ−2−オン型化合物を亜リン酸エステル系安定剤及びフェノール系抗酸化剤と併用することにより、大幅に成形加工安定性を改善することができる。
このようなベンゾフラノ−2−オン型化合物はチバ・スペシャリティ−・ケミカルズ社から商品名「HP−136」として市販されている。また、亜リン酸エステル系安定剤及びフェノール系抗酸化剤とを組合わせたものとして、チバ・スペシャリティ−・ケミカルズ社から、商品名「イルガノックスHP2215」、「イルガノックスHP2225」、「イルガノックスHP2251」、「イルガノックスHP2921」、あるいは「イルガノックスHP2411」として市販されており入手が容易である。
【0048】
(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.003〜1重量部である。0.003重量部より少ない場合には、ポリマー中のアルキルラジカルを捕捉する効果、自動酸化反応を抑制する効果、及び成形加工時に黄変を抑える効果が不十分であり、1重量部を超えた量を添加しても、それ以上の効果は得られない。(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物の配合量は、0.005〜0.5重量部が好ましく、さらに好ましくは0.007〜0.1重量部である。
【0049】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)耐候性改良剤、(c)亜リン酸エステル系安定剤、及び必要に応じて(d)フェノール系抗酸化剤、(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物を一括溶融混練する方法、あるいは(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)耐候性改良剤、(c)亜リン酸エステル系熱安定剤を予め混練後、必要であれば(d)フェノール系抗酸化剤、さらに必要であれば(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物を配合し、溶融混練する方法などが挙げられる。
【0050】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、上記の(a)〜(e)の成分の他に、(f)離型剤、さらに必要であれば、顔料、染料その他の添加剤を配合することができる。
(f)離型剤としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の離型剤として知られたものを使用することができる。例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等から選ばれた少なくとも1種の化合物等が挙げられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0051】
離型剤として使用される脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0052】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0053】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0054】
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
(f)離型剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
また、必要に応じて、顔料や染料等或いはその他の芳香族ポリカーボネート樹脂に適宜使用される、それ自体公知の添加剤を配合することが出来る。
【0055】
本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体は、その粒径がTyler篩による標準篩法で得られた35メッシュより大きな粒子が1重量%以下、および150メッシュより小さな粒子が5重量%より多く15重量%以下、および200メッシュより小さな粒子が5重量%未満である。より好ましくは35メッシュより大きな粒子が0.5重量%以下であり、150メッシュより小さな粒子が5重量%より大きく10重量%以下、200メッシュより小さな粒子が0.4重量%以下の粉粒体である。
【0056】
上記条件を満足するポリカーボネート樹脂組成物の粉粒体を得る方法としては、(1)好ましくは、上記の(a)〜(c)の成分、更に必要に応じて他の成分を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の粉粒体を分級して所定粒径の粒子の所定量を配合する方法、(2)ポリカーボネート樹脂組成物を押出機により押出する際、ダイス径および引き取り速度などによりスレッド径およびそのカット長をペレタイザーにより調整する方法、(3)通常の大きさのポリカーボネート樹脂組成物ペレット、または各種成形品を粉砕する方法、(4)ポリカーボネート樹脂粉粒体と他の添加剤などの粉粒体を各種メカノケミカル装置により処理する方法、(5)ポリカーボネート樹脂の溶液中に各種添加剤を配合し、かかる溶液から溶媒を除去する方法などをあげることができる。なお、(2)〜(4)の場合も、必要に応じ、更に分級して粒径分布を調整する。このうち、(3)ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを粉砕する方法が好ましい。
【0057】
かくして得られる本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体は、特に回転成形による成形品の製造に好適に使用されるが、成形方法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形方法として知られる各種の方法、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形などにも使用出来ることは言うまでもない。
【0058】
本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体を使用する回転成形法は特に限定されるものではなく、使用する回転成形機も特に限定されるものではない。しかしながら、回転成形金型を直接急速加熱および急冷できる成形機を使用することが、金型内部の温度ムラがなく、成形効率にも優れるため好ましい。かかる回転成形機としては例えば江南特殊産業(株)製「GYRO SPACE」システムを挙げることができる。
【0059】
樹脂粉粒体の粒径および粒径分布は、加熱回転金型内の粉粒体流動挙動や粉粒体粒子間の熱移動に関係し、成形性に影響を及ぼす。本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体は、Tyler篩による標準篩法で得られた150メッシュより小さな粒子が5重量%より大きく15重量%以下、および200メッシュより小さな粒子が5重量%未満であることを満足する粒径分布を有しているが、このような微粉の混在は、粒子の移動を潤滑し粉体の流れをスムーズにし、熱移動を容易にする効果を有しており、回転成形を行う際に、低い成形温度で成形することが可能となる。
【0060】
上記に記載した回転成形機「GYRO SPACE」システムを用いて、本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体を成形する際の成形可能温度は260〜310℃である。成形温度が260℃以下では、粉粒体の溶融に時間がかかり、成形品の平面部の波打ちなどの成形性に問題点が生じ、310℃より高い温度で成形を行うと、ポリカーボネートの黄変が生じるため好ましくない。好ましい成形温度は270〜300℃である。
本発明ではこのように比較的低い成形温度を採用することができるので、成形時の発泡が抑制され、その結果、成形品表面肌あれ、黄変などの不良品の発生を抑制することができる。
【0061】
回転成形は特に大型の成形品を低歪で得ることが可能である。したがって、かかる回転成形体としては各種グレージング材、照明カバー、および大型容器などを得るのに適しており、航空機、船舶、車両、電子・電気機器、機械装置などの幅広い分野に好適に使用されるものである。
【0062】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例で使用された原材料及び試験方法は次の通りである。
(1)芳香族ポリカーボネート:後記参考例により製造したもの。
(2)紫外線吸収剤:2―(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノール、最大吸収波長343nm。
(3)蛍光増白剤−1:2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール、最大吸収波長375nm。
(4)蛍光増白剤−2:3−フェニル−7−(2H−ナフト[1,2−d]−トリアゾール−2−イル)クマリン、最大吸収波長376nm。
【0063】
(5)リン系安定剤−1:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト。
(6)リン系安定剤−2:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト。
【0064】
(7)フェノール系抗酸化剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)。
【0065】
(8)ベンゾフラノ−2−オン型化合物:3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tertブチル−ベンゾフラノ−2−オン。(商品名:HP−136,チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)。
(9)離型剤:ステアリン酸ステアリル。
【0066】
物性評価試験方法
(A)ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)の測定:ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中25℃で測定した溶液粘度から求めた極限粘度[η]を用い、前記式(i)に従い計算した。
【0067】
(B)初期色相:実施例で得られた回転成形体の成形直後の色相を目視観察し、次の基準で評価した。
○:ほとんど黄変なし、△:わずかに黄変した、×:かなり黄変した
(C)耐候性:実施例で得られた回転成形体から厚さ2mmのプレートを切り出し、サンシャインスーパーロングライフウェザオメーター(スガ試験機製WEL−SUN−HC・B型)を用いて、63℃雨有り(サイクル:108分雨なし+18分雨有り)の条件で、200hr照射後のΔYIおよびΔEを、分光式色彩計SE−2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0068】
(D)穴あけ加工時の割れの有無:
実施例と同様にして得られた回転成形体サンプルを金型から取り出した後、後加工として穴あけを行った際にひび等の割れの発生状況を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:穴あけ加工時に割れなかった。 ×:穴あけ加工時に割れた。
【0069】
(E)平面部の波打ちの有無、気泡発生の有無:
実施例で得られた回転成形体の外観を目視で観察し、平面部の波打ちおよび気泡発生などの有無を確認し、次の基準で評価した。
(平面部の波打ち) ○:ほとんど波打ちが認められなかった。 △:わずかに波打ちが認められた。 ×:かなりの波打ちが認められた。
(気泡発生) ○:気泡はほとんど認められなかった。 △:わずかに気泡が認められた。 ×:かなりの気泡が認められた。
【0070】
(F)粒径分布の測定:
ポリカーボネート樹脂粉粒体を、Tyler篩による標準篩法により粒度分布を求めた。
【0071】
(G)ポリカーボネートの末端OH基含有量: 四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)により比色定量を行った。測定値は、ポリカーボネート樹脂重量に対する末端OH基の重量をppm単位で表した。
【0072】
(H)残留モノマー量: カラムにWaters社製のμ−Bondersphereを使用し、溶媒としてアセトニトリルと酢酸水との混合液を使用し、UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーによって測定した。
【0073】
参考例
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを原料とし、エステル交換触媒として炭酸セシウムをビスフェノールA1モルに対して0.5×10−6モル添加して、エステル交換反応を行い、粘度平均分子量、末端水酸基濃度、およびモノマー残留量の異なる3種類の芳香族ポリカーボネート(PC−1,PC−2,PC−3)を製造した。得られた3種類の芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融状態にある間に、パラトルエンスルホン酸ブチル(失活剤)を5ppm添加した後、押出機で混練してペレット化した。
得られた3種類の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−1,PC−2,PC−3)について、末端水酸基、残留モノマーの量を測定した。その分析値を表−1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1〜11、および比較例1〜6
表−2〜表−6に示す配合処方で、原料を秤量し、タンブラーにて20分混合後、40mm単軸押出機にて、シリンダー温度280℃でペレット化した。得られたペレットを粉砕機にて粉砕し、篩を用いて分級して、所定粒径の粒子を表−2〜表−5記載の量含有する粉粒体を得た。
【0076】
得られたポリカーボネート樹脂組成物粉粒体を80℃で6時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した後、江南特殊産業(株)製「GYRO SPACE」を用いて回転成形を行った。290℃のオイルを通して金型設定温度を約290℃とした後(但し、比較例5では330℃のオイルを通して金型設定温度を約330℃とした後)、金型内に粉粒体2.4kgを投入した。かかる温度で主軸の回転数20rpm、該主軸にと共に回転する小軸の回転数25rpmの条件で回転を行い、約10分間回転させた。その後室温のオイルを投入して徐々に金型温度を室温付近まで冷却させながら更に約10分間の回転を続け、回転を停止させた後、金型内から成形品を取出し、評価を行った。評価結果を表−2〜表−6に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂粉粒体は特に回転成形に好適なものである。特に特定の耐候性改良剤及び亜リン酸エステル系安定剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂粉粒体を用いることにより、耐候性、耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性にすぐれたポリカーボネート樹脂成形体を、310℃以下の成形温度による回転成形により、得ることが出来る。回転成形は特に大型の成形品を低歪みで得ることが可能であることから、各種グレージング材、照明カバ−、および大型容器などを得るのに適しており、航空機、船舶、車両、電子・電気機器、機械装置などの幅広い分野に好適に使用される。
Claims (16)
- 粘度平均分子量が16,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、Tyler篩による標準篩法で得られた35メッシュより大きい粒子が1重量%以下,150メッシュより小さな粒子が5重量%より多く15重量%以下、および200メッシュより小さい粒子が5重量%未満であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- 前記樹脂組成物が、(a)粘度平均分子量が16,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)最大吸収波長が400nm未満である耐候性改良材0.001〜1重量部及び(c)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部を含有することを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂が、その末端水酸基濃度が300ppm以上であり、かつ、残存モノマー量が500ppm以下であることを特徴とする請求項2記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (b)耐候性改良材が、(b1)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤並びに(b2)クマリン系化合物及びベンゾオキサゾール系の蛍光増白剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2または3記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、(b1)紫外線吸収剤を0.05〜1重量部配合してなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、(b2)蛍光増白剤を0.001〜0.2重量部配合してなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、さらに(d)フェノール系抗酸化剤を0.01〜2重量部配合してなることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、さらに(e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物0.003〜1重量部を配合してなることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (e)ベンゾフラノ−2−オン型化合物が、3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−ベンゾフラノ−2−オンもしくは3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tertブチル−ベンゾフラノ−2−オンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項9又は10記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、さらに(f)離型剤0.01〜1重量部を配合してなることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (f)離型剤が、飽和脂肪族カルボン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項12記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ヒドロキシ化合物と炭酸シ゛エステルとのエステル交換反応により製造された芳香族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項2〜13のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体。
- 少なくとも(a)〜(c)の成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をペレット化後、粉砕処理して所望の粒径分布とすることを特徴とする請求項2〜14のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂粉粒体の製造法。
- 請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂粉粒体を回転成形してなる回転成形体。
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