JP2004124020A - 艶消し塗料およびこれを用いた艶消し塗装補修方法および艶消し塗膜 - Google Patents
艶消し塗料およびこれを用いた艶消し塗装補修方法および艶消し塗膜 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】艶消し塗装された塗膜の不良部分を、艶感が均一となるように補修する方法を提供する。
【解決手段】樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)が100nm〜500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含む艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)が100nm〜500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含む艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、艶消し塗膜中に生じたブツなどの塗装不具合を補修する艶消し塗装補修方法、これら艶消し塗膜やその補修に用いられる艶消し塗料およびこの艶消し塗料を用いた艶消し塗膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
艶消し塗装された被塗装物の塗膜に、ブツなどによる塗装不良(不具合)が生じていれば、その部分に補修が施される。艶消し塗装補修方法には、塗装不具合が生じている補修部(不具合部位)を研ぎ、艶消し塗装に用いた塗料と同一種類の艶消し塗料を塗装して補修する方法がある。しかし、この方法では艶消し塗料が補修部周辺の塗装不良の生じていない非補修部にも飛散し、非補修部には、塗料ダストが付着することによる凸状部分が生成されるため、被塗装物の外観が損なわれる。そのため補修部周辺の凸状部分を研磨する必要があり、補修工程での研磨に要する時間が長くかかり、またこうした凸状部分の研磨作業は機械化が困難であり人手によらなければならず、コストアップにもつながるという問題があった。そこで、別の補修方法では、補修部(不具合部位)をペーパーで研ぎ、艶消し塗料(補修塗料)を塗布した後、塗料ダストにぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)をスプレー塗装し、最後に焼き付けを行うことにより、塗料ダストが凸状に残るのを目立たなくし、外観が損なわれないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−124160号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の補修方法では、補修が施された補修部は、補修部周辺の塗装不良とされる凸状部の生成が抑制されるものの、艶感が部分的に異なると言う問題がある。艶消し感は、塗料中に含まれる艶消し材が、焼き付け時に塗膜の表層に配向して塗装表面を微細な凹凸にするため、光が塗膜表面で乱反射することにより得られる。
【0005】
また、特許文献1に記載の補修方法では、ウェットな状態にある艶消し塗料(補修塗料)の上にぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)が塗装される部分があり、その部分では焼付け時に補修塗料とぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)が混合し、艶消しクリヤー塗料中の艶消し材が塗膜の表層に配向しにくくなる。そのため、補修部は、艶消し材が塗膜の表層に配向している部分と、配向していない部分とを有し、部分的に艶感が異なる。すなわち、膜厚や焼き付け条件によって、艶消し塗料中の艶消し材の塗膜の表層での配向が異なり、艶消し感が異なる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、艶消し塗料を塗装して得た塗膜の不良部分を、艶感が均一となるように補修する方法および艶消し塗料とこれを用いた艶消し塗膜を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含むことを特徴とする艶消し塗料により達成される。
【0008】
【発明の効果】
本発明に従えば、艶消し材の最長部の長さ(粒径)を従来よりも小さく抑え、粒子を細かくしたことで、補修塗膜の膜厚や焼き付け条件が周囲の非補修部に対して変動しても、これに起因する艶消し材の補修塗膜表層における配向のばらつきが極めて小さくなり、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保できる。また、補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要がないため、補修に要する時間も短縮できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の艶消し塗料は、樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の艶消し塗料には、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料、または該艶消しクリヤー塗料以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料として利用することができる。これらは、被塗装物たる車両(例えば、自動車車体等)などの上塗りトップコート層用塗料などとして好適に利用することができるものであるが、これらに制限されるべきものではない。以下、本発明に係る艶消し塗料では、特に断らない限り、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料と、それ以外の艶消し塗料(該艶消しクリヤー塗料以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料)との両方を含むものとする。
【0011】
本発明の艶消し塗料に含有されてなる艶消し材は、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、好ましくは300nm以上500nm未満の粒子状樹脂である。艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値が100nmより小さいと艶が消えにくくなり、全艶消し状態にまではできない。また、500nmより大きくなると、膜厚の変動により艶感が異なりやすくなり、補修部と非補修部(補修をしていない部分)とに違いが生じる。艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の測定方法は、既存の測定装置を用いて求めることができる(後述する実施例/比較例参照のこと。)。なお、艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値は、後述する実施例/比較例に示すような市販の想定装置を用いて簡単に求めることができる。
【0012】
上記艶消し材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記艶消し材は、樹脂のガラス転移温度が50〜140℃、好ましくは80〜140℃である粒子状樹脂である。ガラス転移温度が50℃より低いと、焼き付け温度により軟化し、塗料が硬化する際に粒子状でなくなり、艶が消えなくなる。また、140℃より高くなるとひっかき傷による艶あがり(光沢度が増すことを意味する。)を生じる。なお、艶消し材である粒子状樹脂のガラス転移温度は、後述する実施例/比較例に示す数式(1)を用いて算出することができる。
【0014】
本発明の艶消し塗料は、樹脂固形分中に上記艶消し材を5〜30質量%、好ましくは20〜30質量%含んでいる。艶消し材の含有量(質量比)が5質量%より少なくなると艶が消えなくなり、30質量%より多くなると付着性(密着性)が低下する。
【0015】
本発明の艶消し塗料に用いられる塗料(の種類)としては、例えば、メラミン硬化型アクリル塗料、メラミン硬化型ポリエステル塗料、2液型アクリルウレタン塗料、2液型ポリエステルウレタン塗料等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0016】
本発明の艶消し塗料では、塗料のタイプ(溶剤型の塗料など)によっては、溶剤を含有するものである。本発明の艶消し塗料に含有される溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等の炭化水素系溶剤を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0017】
本発明に用いられる艶消し塗料は、上記したような溶剤型の塗料に限定されず、例えば、水系型の塗料などにも適用可能である。これは、公害対策(環境対策)上、水系型の塗料やハイソリッド形(NADを含む)の塗料が望ましいためである。
【0018】
本発明の艶消し塗料には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。本発明の艶消し塗料では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、着色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが更に含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0019】
次に、本発明に係る艶消し塗膜は、本発明に係る艶消し塗料を塗装してなることを特徴とするものである。本発明に係る艶消し塗膜は、車両(例えば、自動車車体等)などの上塗りトップコート層等として好適に利用することができるものであるが、これらに制限されるべきものではない。本発明に係る艶消し塗膜には、補修塗膜のほか、非補修塗膜(被塗物である自動車車体等に塗装して形成される一般的な塗膜)を含むものである。また、本発明に係る艶消し塗膜では、特に断らない限り、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗膜と、それ以外の艶消し塗膜(該艶消しクリヤー塗膜以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗膜)との両方を含むものとする。
【0020】
上記艶消し塗料の塗装には、適宜従来公知の塗装方法を適用し得るものであり、例えば、スプレー塗装方法、静電塗装方法、粉体(静電)塗装方法などを利用することができるなど、特に制限されるべきものではない。また、補修部と非補修部とで異なる塗装方法を用いてもよいし、同じ塗装方法を用いてもよい。
【0021】
上記塗装後の艶消し塗料の焼き付け温度は、140℃以下が好ましい。これは、ガラス転移温度が50〜140℃の艶消し材に対し、焼付温度が140℃より高くなると、艶消し材のガラス転移温度を超えるため粒子状樹脂が粒子状を保持できなくなり、艶が消えにくくなる傾向が生じるためである。
【0022】
本発明の艶消し塗膜(焼付後の塗膜)の膜厚としては、特に限定されるものではないが、20〜40μm程度が好ましい。塗膜の膜厚が20μm未満の場合には、耐候性が低下し易く、40μmを超える場合には塗装時に垂れ易い。
【0023】
本発明の艶消し塗膜には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。本発明の艶消し塗膜では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、有色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0024】
次に、本発明に係る艶消し塗装補修方法は、被塗装物上に、下塗り層(本発明では、下塗り層(電着層)のほか、更に中塗り層を含んでいてもよいが、中塗り層は必須ではない。)と、上塗り層としてベースコート塗料を塗装して得たベースコート層と、本発明の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜とを備えてなる塗装物において、
(1)前記艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、塗装された艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするもの(第1の実施形態)、あるいは
(2)前記艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、塗装された前記ベースコート塗料および艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするもの(第2の実施形態)である。
【0025】
また、本発明に係る艶消し塗装補修方法は、(3)被塗装物上に、下塗り層(本発明では、下塗り層(電着層)のほか、更に中塗り層を含んでいてもよいが、中塗り層は必須ではない。)と、本発明の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料以外の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜とを備えてなる塗装物において、
前記艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消し塗料と同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、塗装された艶消し塗料を焼き付ける工程と、を備えていることを特徴とするもの(第3の実施形態)、あるいは
(4)前記艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、前記艶消し塗料と実質的に同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、塗装された前記ベースコート塗料および艶消し塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするものである(第4の実施形態)。
【0026】
なお、第1及び第2の実施形態では、本発明の艶消し塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料を用いたものであり、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗膜が得られる。第3及び第4の実施形態では、本発明の艶消し塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料以外の塗料、すなわち有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料を用いたものであり、有色顔料等の着色材を含む艶消し塗膜が得られる。以下の説明では、第1及び第2の実施形態で用いる本発明の艶消し塗料を単に「艶消しクリヤー塗料」と称し、これを用いて得られる塗膜を「艶消しクリヤー塗膜」と称する。第3及び第4の実施形態で用いる本発明の艶消し塗料を単に「艶消し塗料」し、これを用いて得られる塗膜を「艶消し塗膜」と称するものとする。
【0027】
本発明の艶消し塗装補修方法では、艶消しクリヤー塗膜および艶消し塗膜(補修部および非補修部)を形成するための塗料として本発明の艶消しクリヤー塗料および艶消し塗料を用いるものである。艶消しクリヤー塗膜および艶消し塗膜の形成に用いられる塗料中に艶消し材として、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂を5〜30質量%含めたことで、本発明の艶消し塗装補修方法での補修塗膜の膜厚や焼き付け条件が周囲の非補修部に対して変動しても、これに起因する艶消し材の補修塗膜表層における配向のばらつきが極めて小さくなり、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保できる。また、補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要がないため、補修に要する時間も短縮できる。
【0028】
以下、本発明の艶消し塗装補修方法につき、図面を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明の艶消し塗装補修方法の代表的な一実施形態(第1の実施形態)の工程概略図であって、各工程ごとの塗膜の様子を模式的に表わした断面概略図である。図2は、本発明の艶消し塗装補修方法の代表的な他の実施形態(第2の実施形態)の工程概略図であって、各工程での塗膜の様子を模式的に表わした断面概略図である。なお、各図面に共通する部分には同じ符号が付してある。
【0030】
本発明の第1の実施形態を図1を参照して説明する。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法は、被塗装物(例えば、自動車車体など;図示せず)上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物(図1(a)参照のこと。)において、
前記艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍に生じたブツなどの不具合部位(補修部)5を研ぐ工程(▲1▼)(図1(b)参照のこと。)と、
補修部5(現段階では、凹状の研ぎあと部6)に、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装する工程(▲2▼)(図1(c)参照のこと。)と、
艶消しクリヤー塗装部(艶消しクリヤー塗料7が塗装された補修部5と補修されていない部分4との境界部)に、必要に応じて溶剤を塗布して、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける工程(▲3▼)(図1(d)参照のこと。)と、
を順に行うことにより、補修部および補修部周辺と補修部以外の部分との艶が同じであり、補修部周辺を研磨することがなくなり、研磨に要する時間を短縮できる。
【0031】
上記工程(▲1▼)では、不具合部位(補修部)5が艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍に生じているため、該艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍を研ぐことで、ブツなどの不具合部位5を除去することができ、該不具合部位(補修部)5には、凹状の研ぎあと部6が形成される。
【0032】
凹状の研ぎあと部6の深さは、艶消しクリヤー塗膜4の表層部から中間部程度に止めるのが望ましい。ただし、これよりも深く研いでもよい。すなわち、ベースコート層3に達する程度まで研いだ場合には、図2に示す第2の実施形態のようにして補修すればよいためである。
【0033】
なお、不具合部位5を除去するには、サンドペーパーで研ぐ方法に制限されるべきものではなく、例えば、適当な研削ないし研磨材を用いて研いでもよいなど従来公知の除去方法を適宜利用することができるものである。
【0034】
上記工程(▲2▼)では、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を用いるものであるが、実質的に同一種類としたのは、本発明のポイントである塗膜の艶感に影響を及ぼさない範囲であれば、塗料成分が完全に同一でなくともよく、塗料の樹脂固形分や艶消し材の種類、粒径、含有量など、あるいは添加剤の種類や含有量、塗料の粘度(溶剤の含有量)などが異なっていてもよいためである。
【0035】
また、艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7の塗装方法に関しても、特に制限されるべきものではなく、従来公知の補修塗料の塗装方法を適用し得るものであり、例えば、スプレー塗装方法などを利用することができる。
【0036】
また、塗装により、艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した部分(補修部)は、その周辺の非補修部の表面と面一になっていることが望ましいが、本発明の艶消しクリヤー塗料を用いることで、図1(c)に示すように、該補修部が若干凸状になっていても、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保でき、また補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要もない。
【0037】
上記工程(▲3▼)で、必要に応じて塗布される溶剤は、艶消し補修塗料7の塗料ダストを目立たなくする目的でなされるものである。よって、かかる溶剤としては、上記目的を達成することができるものであれば、特に制限されるべきものではなく、例えば、塗料用のシンナー等を用いることができる。
【0038】
また、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける温度は、既に説明したように140℃以下が好ましい。焼き付けにより、補修部5に艶消し補修塗膜部7’を形成することができるものである(図1(d)参照のこと。)。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態を図2を参照して説明する。図2に示すように、本発明の第2の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法は、被塗装物(例えば、自動車車体など;図示せず)上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を先に塗装されたベースコート塗料の上に塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物(図2(a)参照のこと。)において、
該艶消しクリヤー塗膜4の下層部(ベースコート層3との境界近傍)に生じたブツなどの不具合部位(補修部)5’をサンドペーパー等で研ぐ工程(▲1▼’)(図2(b)参照のこと。)と、
補修部5’(現段階では、凹状の研ぎあと部6’)の下部に、前記ベースコート層3の形成に用いたベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8を塗装する工程(▲2▼’)(図示せず)と、
補修部5’に塗装された上記ベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8の上に、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装する工程(▲3▼’)(図2(c)参照のこと。)と、
艶消しクリヤー塗装部(艶消しクリヤー塗料7が塗装された補修部5’と補修されていない部分4との表面境界部)に、必要に応じて溶剤を塗布して、補修部5’に塗装されたベースコート補修塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける工程(▲4▼’)と、
を順に行うことにより補修部および補修部周辺と補修部以外の部分との艶が同じであり、補修部周辺を研磨することがなくなり、研磨に要する時間を短縮できる。
【0040】
なお、上記工程(▲1▼’)では、不具合部位(補修部)5’が艶消しクリヤー塗膜4の下層部(ベースコート層3の境界近傍)に生じているため、該艶消しクリヤー塗膜4の下層部からベースコート層3上層部程度までを研ぐことで、ブツなどの不具合部位5’を除去することができ、該不具合部位(補修部)5’には、凹状の研ぎあと部6’が形成される。
【0041】
凹状の研ぎあと部6’の深さは、艶消しクリヤー塗膜4の下層部からベースコート層3上層部程度に止めるのが望ましい。
【0042】
なお、不具合部位5’を除去するには、サンドペーパーで研ぐ方法に制限されるべきものではなく、例えば、適当な研削ないし研磨材を用いて研いでもよいなど従来公知の除去方法を適宜利用することができるものである。
【0043】
上記工程(▲2▼’)では、上記ベースコート層3の形成に用いたベースコート塗料を用いるものであるが、実質的に同一種類のものであってもよい。これは、以下に説明する艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7と同じ理由によるものである。
【0044】
上記工程(▲3▼’)では、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を用いるものであるが、実質的に同一種類としたのは、本発明のポイントである塗膜の艶感に影響を及ぼさない範囲であれば、塗料成分が完全に同一でなくともよく、塗料の樹脂固形分や艶消し材の種類、粒径、含有量など、あるいは添加剤の種類や含有量、塗料の粘度(溶剤の含有量)などが異なっていてもよいためである。
【0045】
また、補修部5’へのベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7の塗装方法に関しても、特に制限されるべきものではなく、従来公知の補修塗料の塗装方法を適用しえるものであり、例えば、スプレー塗装方法などを利用することができる。
【0046】
また、塗装により、補修部5’にベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した部分(補修部)は、その周辺の非補修部の表面と面一になっていることが望ましいが、本発明の艶消しクリヤー塗料を用いることで、図2(c)に示すように、該補修部が若干凸状になっていても、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保でき、また補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要もない。また、補修部5’にベースコート塗料8を塗装した部分は、非補修部のベースコート層3の表面と面一になっていることが望ましいが、図2(c)に示すように、補修部5’にベースコート塗料8を塗装した部分の方が若干高くなっていてもよい。
【0047】
上記工程(▲4▼’)で、必要に応じて塗布される溶剤は、艶消し補修塗料7の塗料ダストを目立たなくする目的でなされるものである。よって、かかる溶剤としては、上記目的を達成することができるものであれば、特に制限されるべきものではなく、例えば、塗料用のシンナー等を用いることができる。
【0048】
また、補修部5’に塗装されたベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける温度は、既に説明したように140℃以下が好ましい。焼き付けにより、補修部5’にベースコート補修塗膜部8’及び艶消し補修塗膜部7’を形成することができるものである(図2(d)参照のこと。)。
【0049】
上記第2の実施形態では、上記ベースコート塗料8と艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成したが、本発明では、これらに制限されるべきものではなく、1層ずつ焼き付ける方式(2コート2ベーク方式)で形成してもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0050】
また、本発明の第3及び第4の実施形態の艶消し塗装補修方法は、それぞれ本発明の第1及び第2の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法と同じ工程を順に行うものであるが、本発明の塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料を用いているのに代えて、有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料を用いているものである。よって、第3及び第4の実施形態の図面による説明は、本発明の塗料が異なる点を除いて図1の第1の実施形態、図2の第2の実施形態とそれぞれ同様であるため、ここでの説明は省略する。ただし、図1及び図2では、被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物であるが、第3及び第4の実施形態では、被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層(必須ではない)、ベースコート層、さらに本発明の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物であるか、あるいは被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層(必須ではない)、さらに本発明の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物である。
【0051】
なお、本発明の艶消し塗装補修方法では、艶消しクリヤー塗膜または艶消し塗膜の下層であるベースコート層およびベースコート層形成用のベースコート塗料、さらには補修塗料として用いられるベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。これらベースコート層やベースコート塗料やベースコート補修塗料では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、有色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0052】
また、本発明の艶消し塗装補修方法では、被塗装物の種類、該被塗装物の前処理、該被塗装物上への下塗り層(電着層)、中塗り層(必須ではない)、上塗り層{1層構造でもよいし、2層構造(例えば、第一層(ベースコート層)および第二層(トップコート層))でもよいし、さらに3層以上の多層構造であってもよい。}の製造方法に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜利用することができる。例えば、後述する実施例では、いずれも上塗り層の第一層(ベースコート層)と第二層(トップコート層=艶消しクリヤー塗膜ないし艶消し塗膜)とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成したが、本発明の艶消し塗装補修方法では、これらに制限されるべきものではなく、1層ずつ焼き付ける方式(2コート2ベーク方式)で形成してもよいし、あるいは第一層と、該第一層の下層にあたる中塗り層とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成し、その後第二層を1コート1ベーク方式で形成してもよいし、さらに中塗り層、第一層及び第二層の3層をウェット・オン・ウェット方式(3コート1ベーク方式)で形成してもよいなど、特に制限されるべきものではない。また、本発明の艶消し塗装補修方法では、第一層目用塗料(ベースコート塗料)が溶剤型の塗料の場合には、後述する実施例のように市販の溶剤型塗料をそのまま用いてもよいし、塗装に際し、必要に応じて、該第一層目用塗料を更に溶剤で希釈して用いてもよいし、溶剤型塗料以外の塗料を用いてもよいことは言うまでもない。これは、第二層目用塗料(艶消しクリヤー塗料ないし艶消し塗料)においても同様である。
【0053】
【実施例】
次に、本発明に係わる実施例について説明するが、本発明は、このような実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0054】
実施例1〜7および比較例1〜6
(1)塗板の作製
実施例1〜7及び比較例1〜6の塗板を以下のようにして作製した。
【0055】
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント株式会社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。その後、日本油脂株式会社製のグレーの中塗り塗料(商品名:ハイエピコNo.500)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
【0056】
(2)塗板への上塗り塗膜の形成
次に、実施例1〜7及び比較例1〜6の塗板への上塗り塗膜を以下のようにして形成した。
【0057】
上記(1)の「塗板の作製」により得られた塗板上に、第一層(ベースコート塗膜層)および第二層(トップコート層=艶消しクリヤー塗膜層)からなる積層塗膜(上塗り塗膜)をそれぞれ形成した。第一層は、乾燥膜厚が10μmとなるようにスプレー塗装し、第二層は、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。その後、140℃で30分間焼き付けた。
【0058】
なお、第一層目及び第二層目の塗料としては、以下のものを用いた。
【0059】
(i)第一層目用塗料
第一層目用塗料として、溶剤型黒色塗料(日本油脂株式会社製の2液型ウレタン塗料「ハイウレタンNo.7000」)を用いた。
【0060】
(ii)第二層目用塗料
溶剤型艶消しクリヤー塗料として、アクリルポリオール樹脂(A)に艶消し材(B)を加えて得た樹脂固形分{(A)+(B)}に対し、イソシアネート(C)を100/30(質量比)で混合したものを用いた。
【0061】
ここで、アクリルポリオール樹脂(A)には、いずれも日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセプレン A−1001」を用いた。艶消し材(B)には、樹脂種がアクリル樹脂であり、最長部の長さ(粒径)の平均値、ガラス転移温度、樹脂固形分中の艶消し材の含有量(質量比)を、表1、2の様に変化させたものをそれぞれ用いた。イソシアネート(C)には、いずれも住化バイエルウレタン株式会社製のイソシアネート「スミジュールN75」を用いた。
【0062】
(3)艶消し塗装補修方法
得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜について、下記に示す艶消し塗装補修方法(先述した図2に示す第2の実施形態の艶消し塗装補修方法)により、補修を行った。
【0063】
図2に示すように、実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜4の塗装補修方法では、工程(▲1▼’)として、艶消しクリヤー塗料を塗装して得た実施例1〜7及び比較例1〜6の第二層(艶消しクリヤー塗膜4)の下部(第一層のベースコート層3との境界近傍)に生じているブツなどの不具合部位(補修部)5’(図2(a)参照のこと。)をサンドペーパーで研いで除去し、研ぎあと部6’とした(図2(b)参照のこと。)。ここでは、第一層(ベースコート層3)の一部まで研いだ。
【0064】
次に、工程(▲2▼’)として、補修部5’である凹状の研ぎあと部6’の下部にベースコート塗料である上記第一層目用塗料(ベースコート補修塗料8)を塗装した。
【0065】
続いて、工程(▲3▼’)として、補修部5’に塗装されたベースコート補修塗料8の上に、艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料(上記第二層目用塗料)と同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した(図2(c)参照のこと。)。
【0066】
次に、工程(▲4▼’)として、艶消しクリヤー塗装部{艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7が塗装された補修部と補修されていない部分との境界部}にシンナーを塗布して、塗装された補修塗料(艶消し補修塗料7及びベースコート補修塗料8)を、80℃で30分間焼き付けて(実施例1〜7及び比較例1〜6のいずれも同じ焼付条件とした。)、補修塗膜(艶消し補修塗装部7’及びベースコート補修塗膜部8’)を形成した。
【0067】
(4)塗膜性能
得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜(補修部7’および非補修部4)について、艶感および密着性を以下のようにして評価した。艶消しクリヤー塗膜の艶はJIS K 5600−4−7に記載の方法にて光沢計を用いて60度光沢値で評価し、艶消しクリヤー塗膜の密着性はJIS K 5600−5−6に記載の方法にて碁盤目試験により行い、塗膜の残存する基盤目の数で表した。また、艶消しクリヤー塗膜の補修部と非補修部との艶感の差は目視評価を実施した。その結果を表1、2に示す。なお、艶消しクリヤー塗膜の艶感は、非補修部につき評価した。また、艶消しクリヤー塗膜の密着性は、補修部につき評価した。
【0068】
艶消しクリヤー塗膜の非補修部4の艶感の評価は、下記に従った。
【0069】
◎:光沢値30未満
○:光沢値30以上60未満
△:光沢値60以上80未満
×:光沢値80以上
艶消しクリヤー塗膜の補修部7’と非補修部4との艶感の差の評価は、下記に従った。
【0070】
○:艶感に全く差なし
△:艶感に殆ど差なし
×:艶感に差あり
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
注1)上記表2中の比較例6の補修部と非補修部の艶感の差においては、さらに使用過程の引っかき等により艶消し材が剥がれて艶があがり易い傾向がみられた。
【0074】
上記表1及び表2の艶消し材の含有量(質量%)は、上記樹脂固形分{アクリルポリオール樹脂(A)+艶消し材(B)}に対する艶消し材(B)の含有量(質量%)を示す。実施例1を例にとれば、上記{(A)+(B)}の樹脂固形分中に、艶消し材(B)を20質量%含むものである。
【0075】
上記表1及び表2の艶消し材の粒径は、艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値を表わすものである。かかる粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値は、レーザー粒度分布計(シマズ社製 CAPA500)を使用し、水(粒子状樹脂の粒子が変質しない液体ならば任意に適用し得る。)中に、艶消し材であるアクリル樹脂製粒子を入れて測定した。
【0076】
上記表1及び表2の艶消し材のガラス転移温度Tgpは、艶消し材である粒子状樹脂を構成する各樹脂の原料モノマーMiの理論値もしくは文献値Tgiと、その配合質量比率miとから次式(1)によって算出した。
【0077】
【数1】
【0078】
表1、2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の艶消しクリヤー塗膜は、艶、密着性および補修部と非補修部との艶感の差において良好な結果を示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施形態の艶消し補修方法の工程概略図であって、図1(a)は、補修前の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(b)は、補修工程(▲1▼)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(c)は、補修工程(▲2▼)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(d)は、補修工程(▲3▼)後(補修終了)の状態を模式的に表わした断面概略図である。
【図2】本発明に従う他の一実施形態の艶消し補修方法の工程概略図であって、図2(a)は、補修前の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(b)は、補修工程(▲1▼’)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(c)は、補修工程(▲3▼’)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(d)は、補修工程(▲4▼’)後(補修終了)の状態を模式的に表わした断面概略図である。
【符号の説明】
1…下塗り塗膜層、 2…中塗り塗膜層、
3…ベースコート層、 4…艶消しクリヤー塗膜、
5、5’…ブツなどの不具合部、 6、6’…研ぎあと部、
7…艶消し補修塗料(塗装部)、 7’…艶消し補修塗膜部、
8…ベースコート補修塗料(塗装部)、 8’…ベースコート補修塗膜部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、艶消し塗膜中に生じたブツなどの塗装不具合を補修する艶消し塗装補修方法、これら艶消し塗膜やその補修に用いられる艶消し塗料およびこの艶消し塗料を用いた艶消し塗膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
艶消し塗装された被塗装物の塗膜に、ブツなどによる塗装不良(不具合)が生じていれば、その部分に補修が施される。艶消し塗装補修方法には、塗装不具合が生じている補修部(不具合部位)を研ぎ、艶消し塗装に用いた塗料と同一種類の艶消し塗料を塗装して補修する方法がある。しかし、この方法では艶消し塗料が補修部周辺の塗装不良の生じていない非補修部にも飛散し、非補修部には、塗料ダストが付着することによる凸状部分が生成されるため、被塗装物の外観が損なわれる。そのため補修部周辺の凸状部分を研磨する必要があり、補修工程での研磨に要する時間が長くかかり、またこうした凸状部分の研磨作業は機械化が困難であり人手によらなければならず、コストアップにもつながるという問題があった。そこで、別の補修方法では、補修部(不具合部位)をペーパーで研ぎ、艶消し塗料(補修塗料)を塗布した後、塗料ダストにぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)をスプレー塗装し、最後に焼き付けを行うことにより、塗料ダストが凸状に残るのを目立たなくし、外観が損なわれないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−124160号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の補修方法では、補修が施された補修部は、補修部周辺の塗装不良とされる凸状部の生成が抑制されるものの、艶感が部分的に異なると言う問題がある。艶消し感は、塗料中に含まれる艶消し材が、焼き付け時に塗膜の表層に配向して塗装表面を微細な凹凸にするため、光が塗膜表面で乱反射することにより得られる。
【0005】
また、特許文献1に記載の補修方法では、ウェットな状態にある艶消し塗料(補修塗料)の上にぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)が塗装される部分があり、その部分では焼付け時に補修塗料とぼかし液(艶消し材を含む艶消しクリヤー塗料)が混合し、艶消しクリヤー塗料中の艶消し材が塗膜の表層に配向しにくくなる。そのため、補修部は、艶消し材が塗膜の表層に配向している部分と、配向していない部分とを有し、部分的に艶感が異なる。すなわち、膜厚や焼き付け条件によって、艶消し塗料中の艶消し材の塗膜の表層での配向が異なり、艶消し感が異なる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、艶消し塗料を塗装して得た塗膜の不良部分を、艶感が均一となるように補修する方法および艶消し塗料とこれを用いた艶消し塗膜を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含むことを特徴とする艶消し塗料により達成される。
【0008】
【発明の効果】
本発明に従えば、艶消し材の最長部の長さ(粒径)を従来よりも小さく抑え、粒子を細かくしたことで、補修塗膜の膜厚や焼き付け条件が周囲の非補修部に対して変動しても、これに起因する艶消し材の補修塗膜表層における配向のばらつきが極めて小さくなり、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保できる。また、補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要がないため、補修に要する時間も短縮できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の艶消し塗料は、樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の艶消し塗料には、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料、または該艶消しクリヤー塗料以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料として利用することができる。これらは、被塗装物たる車両(例えば、自動車車体等)などの上塗りトップコート層用塗料などとして好適に利用することができるものであるが、これらに制限されるべきものではない。以下、本発明に係る艶消し塗料では、特に断らない限り、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料と、それ以外の艶消し塗料(該艶消しクリヤー塗料以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料)との両方を含むものとする。
【0011】
本発明の艶消し塗料に含有されてなる艶消し材は、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、好ましくは300nm以上500nm未満の粒子状樹脂である。艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値が100nmより小さいと艶が消えにくくなり、全艶消し状態にまではできない。また、500nmより大きくなると、膜厚の変動により艶感が異なりやすくなり、補修部と非補修部(補修をしていない部分)とに違いが生じる。艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の測定方法は、既存の測定装置を用いて求めることができる(後述する実施例/比較例参照のこと。)。なお、艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値は、後述する実施例/比較例に示すような市販の想定装置を用いて簡単に求めることができる。
【0012】
上記艶消し材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記艶消し材は、樹脂のガラス転移温度が50〜140℃、好ましくは80〜140℃である粒子状樹脂である。ガラス転移温度が50℃より低いと、焼き付け温度により軟化し、塗料が硬化する際に粒子状でなくなり、艶が消えなくなる。また、140℃より高くなるとひっかき傷による艶あがり(光沢度が増すことを意味する。)を生じる。なお、艶消し材である粒子状樹脂のガラス転移温度は、後述する実施例/比較例に示す数式(1)を用いて算出することができる。
【0014】
本発明の艶消し塗料は、樹脂固形分中に上記艶消し材を5〜30質量%、好ましくは20〜30質量%含んでいる。艶消し材の含有量(質量比)が5質量%より少なくなると艶が消えなくなり、30質量%より多くなると付着性(密着性)が低下する。
【0015】
本発明の艶消し塗料に用いられる塗料(の種類)としては、例えば、メラミン硬化型アクリル塗料、メラミン硬化型ポリエステル塗料、2液型アクリルウレタン塗料、2液型ポリエステルウレタン塗料等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0016】
本発明の艶消し塗料では、塗料のタイプ(溶剤型の塗料など)によっては、溶剤を含有するものである。本発明の艶消し塗料に含有される溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等の炭化水素系溶剤を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0017】
本発明に用いられる艶消し塗料は、上記したような溶剤型の塗料に限定されず、例えば、水系型の塗料などにも適用可能である。これは、公害対策(環境対策)上、水系型の塗料やハイソリッド形(NADを含む)の塗料が望ましいためである。
【0018】
本発明の艶消し塗料には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。本発明の艶消し塗料では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、着色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが更に含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0019】
次に、本発明に係る艶消し塗膜は、本発明に係る艶消し塗料を塗装してなることを特徴とするものである。本発明に係る艶消し塗膜は、車両(例えば、自動車車体等)などの上塗りトップコート層等として好適に利用することができるものであるが、これらに制限されるべきものではない。本発明に係る艶消し塗膜には、補修塗膜のほか、非補修塗膜(被塗物である自動車車体等に塗装して形成される一般的な塗膜)を含むものである。また、本発明に係る艶消し塗膜では、特に断らない限り、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗膜と、それ以外の艶消し塗膜(該艶消しクリヤー塗膜以外の有色顔料等の着色材を含む艶消し塗膜)との両方を含むものとする。
【0020】
上記艶消し塗料の塗装には、適宜従来公知の塗装方法を適用し得るものであり、例えば、スプレー塗装方法、静電塗装方法、粉体(静電)塗装方法などを利用することができるなど、特に制限されるべきものではない。また、補修部と非補修部とで異なる塗装方法を用いてもよいし、同じ塗装方法を用いてもよい。
【0021】
上記塗装後の艶消し塗料の焼き付け温度は、140℃以下が好ましい。これは、ガラス転移温度が50〜140℃の艶消し材に対し、焼付温度が140℃より高くなると、艶消し材のガラス転移温度を超えるため粒子状樹脂が粒子状を保持できなくなり、艶が消えにくくなる傾向が生じるためである。
【0022】
本発明の艶消し塗膜(焼付後の塗膜)の膜厚としては、特に限定されるものではないが、20〜40μm程度が好ましい。塗膜の膜厚が20μm未満の場合には、耐候性が低下し易く、40μmを超える場合には塗装時に垂れ易い。
【0023】
本発明の艶消し塗膜には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。本発明の艶消し塗膜では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、有色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0024】
次に、本発明に係る艶消し塗装補修方法は、被塗装物上に、下塗り層(本発明では、下塗り層(電着層)のほか、更に中塗り層を含んでいてもよいが、中塗り層は必須ではない。)と、上塗り層としてベースコート塗料を塗装して得たベースコート層と、本発明の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜とを備えてなる塗装物において、
(1)前記艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、塗装された艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするもの(第1の実施形態)、あるいは
(2)前記艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、塗装された前記ベースコート塗料および艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするもの(第2の実施形態)である。
【0025】
また、本発明に係る艶消し塗装補修方法は、(3)被塗装物上に、下塗り層(本発明では、下塗り層(電着層)のほか、更に中塗り層を含んでいてもよいが、中塗り層は必須ではない。)と、本発明の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料以外の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜とを備えてなる塗装物において、
前記艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記艶消し塗料と同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、塗装された艶消し塗料を焼き付ける工程と、を備えていることを特徴とするもの(第3の実施形態)、あるいは
(4)前記艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、前記艶消し塗料と実質的に同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、塗装された前記ベースコート塗料および艶消し塗料を焼き付ける工程と、を順に行うことを特徴とするものである(第4の実施形態)。
【0026】
なお、第1及び第2の実施形態では、本発明の艶消し塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料を用いたものであり、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗膜が得られる。第3及び第4の実施形態では、本発明の艶消し塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料以外の塗料、すなわち有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料を用いたものであり、有色顔料等の着色材を含む艶消し塗膜が得られる。以下の説明では、第1及び第2の実施形態で用いる本発明の艶消し塗料を単に「艶消しクリヤー塗料」と称し、これを用いて得られる塗膜を「艶消しクリヤー塗膜」と称する。第3及び第4の実施形態で用いる本発明の艶消し塗料を単に「艶消し塗料」し、これを用いて得られる塗膜を「艶消し塗膜」と称するものとする。
【0027】
本発明の艶消し塗装補修方法では、艶消しクリヤー塗膜および艶消し塗膜(補修部および非補修部)を形成するための塗料として本発明の艶消しクリヤー塗料および艶消し塗料を用いるものである。艶消しクリヤー塗膜および艶消し塗膜の形成に用いられる塗料中に艶消し材として、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂を5〜30質量%含めたことで、本発明の艶消し塗装補修方法での補修塗膜の膜厚や焼き付け条件が周囲の非補修部に対して変動しても、これに起因する艶消し材の補修塗膜表層における配向のばらつきが極めて小さくなり、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保できる。また、補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要がないため、補修に要する時間も短縮できる。
【0028】
以下、本発明の艶消し塗装補修方法につき、図面を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明の艶消し塗装補修方法の代表的な一実施形態(第1の実施形態)の工程概略図であって、各工程ごとの塗膜の様子を模式的に表わした断面概略図である。図2は、本発明の艶消し塗装補修方法の代表的な他の実施形態(第2の実施形態)の工程概略図であって、各工程での塗膜の様子を模式的に表わした断面概略図である。なお、各図面に共通する部分には同じ符号が付してある。
【0030】
本発明の第1の実施形態を図1を参照して説明する。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法は、被塗装物(例えば、自動車車体など;図示せず)上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物(図1(a)参照のこと。)において、
前記艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍に生じたブツなどの不具合部位(補修部)5を研ぐ工程(▲1▼)(図1(b)参照のこと。)と、
補修部5(現段階では、凹状の研ぎあと部6)に、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装する工程(▲2▼)(図1(c)参照のこと。)と、
艶消しクリヤー塗装部(艶消しクリヤー塗料7が塗装された補修部5と補修されていない部分4との境界部)に、必要に応じて溶剤を塗布して、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける工程(▲3▼)(図1(d)参照のこと。)と、
を順に行うことにより、補修部および補修部周辺と補修部以外の部分との艶が同じであり、補修部周辺を研磨することがなくなり、研磨に要する時間を短縮できる。
【0031】
上記工程(▲1▼)では、不具合部位(補修部)5が艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍に生じているため、該艶消しクリヤー塗膜4の表層部近傍を研ぐことで、ブツなどの不具合部位5を除去することができ、該不具合部位(補修部)5には、凹状の研ぎあと部6が形成される。
【0032】
凹状の研ぎあと部6の深さは、艶消しクリヤー塗膜4の表層部から中間部程度に止めるのが望ましい。ただし、これよりも深く研いでもよい。すなわち、ベースコート層3に達する程度まで研いだ場合には、図2に示す第2の実施形態のようにして補修すればよいためである。
【0033】
なお、不具合部位5を除去するには、サンドペーパーで研ぐ方法に制限されるべきものではなく、例えば、適当な研削ないし研磨材を用いて研いでもよいなど従来公知の除去方法を適宜利用することができるものである。
【0034】
上記工程(▲2▼)では、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を用いるものであるが、実質的に同一種類としたのは、本発明のポイントである塗膜の艶感に影響を及ぼさない範囲であれば、塗料成分が完全に同一でなくともよく、塗料の樹脂固形分や艶消し材の種類、粒径、含有量など、あるいは添加剤の種類や含有量、塗料の粘度(溶剤の含有量)などが異なっていてもよいためである。
【0035】
また、艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7の塗装方法に関しても、特に制限されるべきものではなく、従来公知の補修塗料の塗装方法を適用し得るものであり、例えば、スプレー塗装方法などを利用することができる。
【0036】
また、塗装により、艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した部分(補修部)は、その周辺の非補修部の表面と面一になっていることが望ましいが、本発明の艶消しクリヤー塗料を用いることで、図1(c)に示すように、該補修部が若干凸状になっていても、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保でき、また補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要もない。
【0037】
上記工程(▲3▼)で、必要に応じて塗布される溶剤は、艶消し補修塗料7の塗料ダストを目立たなくする目的でなされるものである。よって、かかる溶剤としては、上記目的を達成することができるものであれば、特に制限されるべきものではなく、例えば、塗料用のシンナー等を用いることができる。
【0038】
また、補修部に塗装された艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける温度は、既に説明したように140℃以下が好ましい。焼き付けにより、補修部5に艶消し補修塗膜部7’を形成することができるものである(図1(d)参照のこと。)。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態を図2を参照して説明する。図2に示すように、本発明の第2の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法は、被塗装物(例えば、自動車車体など;図示せず)上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を先に塗装されたベースコート塗料の上に塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物(図2(a)参照のこと。)において、
該艶消しクリヤー塗膜4の下層部(ベースコート層3との境界近傍)に生じたブツなどの不具合部位(補修部)5’をサンドペーパー等で研ぐ工程(▲1▼’)(図2(b)参照のこと。)と、
補修部5’(現段階では、凹状の研ぎあと部6’)の下部に、前記ベースコート層3の形成に用いたベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8を塗装する工程(▲2▼’)(図示せず)と、
補修部5’に塗装された上記ベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8の上に、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装する工程(▲3▼’)(図2(c)参照のこと。)と、
艶消しクリヤー塗装部(艶消しクリヤー塗料7が塗装された補修部5’と補修されていない部分4との表面境界部)に、必要に応じて溶剤を塗布して、補修部5’に塗装されたベースコート補修塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける工程(▲4▼’)と、
を順に行うことにより補修部および補修部周辺と補修部以外の部分との艶が同じであり、補修部周辺を研磨することがなくなり、研磨に要する時間を短縮できる。
【0040】
なお、上記工程(▲1▼’)では、不具合部位(補修部)5’が艶消しクリヤー塗膜4の下層部(ベースコート層3の境界近傍)に生じているため、該艶消しクリヤー塗膜4の下層部からベースコート層3上層部程度までを研ぐことで、ブツなどの不具合部位5’を除去することができ、該不具合部位(補修部)5’には、凹状の研ぎあと部6’が形成される。
【0041】
凹状の研ぎあと部6’の深さは、艶消しクリヤー塗膜4の下層部からベースコート層3上層部程度に止めるのが望ましい。
【0042】
なお、不具合部位5’を除去するには、サンドペーパーで研ぐ方法に制限されるべきものではなく、例えば、適当な研削ないし研磨材を用いて研いでもよいなど従来公知の除去方法を適宜利用することができるものである。
【0043】
上記工程(▲2▼’)では、上記ベースコート層3の形成に用いたベースコート塗料を用いるものであるが、実質的に同一種類のものであってもよい。これは、以下に説明する艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7と同じ理由によるものである。
【0044】
上記工程(▲3▼’)では、上記艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を用いるものであるが、実質的に同一種類としたのは、本発明のポイントである塗膜の艶感に影響を及ぼさない範囲であれば、塗料成分が完全に同一でなくともよく、塗料の樹脂固形分や艶消し材の種類、粒径、含有量など、あるいは添加剤の種類や含有量、塗料の粘度(溶剤の含有量)などが異なっていてもよいためである。
【0045】
また、補修部5’へのベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7の塗装方法に関しても、特に制限されるべきものではなく、従来公知の補修塗料の塗装方法を適用しえるものであり、例えば、スプレー塗装方法などを利用することができる。
【0046】
また、塗装により、補修部5’にベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した部分(補修部)は、その周辺の非補修部の表面と面一になっていることが望ましいが、本発明の艶消しクリヤー塗料を用いることで、図2(c)に示すように、該補修部が若干凸状になっていても、非補修部と補修部との艶消し感を(ほぼ、実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部および補修部と補修部周辺の艶感が均一となり商品性が確保でき、また補修部と補修部周辺との境界を研磨する必要もない。また、補修部5’にベースコート塗料8を塗装した部分は、非補修部のベースコート層3の表面と面一になっていることが望ましいが、図2(c)に示すように、補修部5’にベースコート塗料8を塗装した部分の方が若干高くなっていてもよい。
【0047】
上記工程(▲4▼’)で、必要に応じて塗布される溶剤は、艶消し補修塗料7の塗料ダストを目立たなくする目的でなされるものである。よって、かかる溶剤としては、上記目的を達成することができるものであれば、特に制限されるべきものではなく、例えば、塗料用のシンナー等を用いることができる。
【0048】
また、補修部5’に塗装されたベースコート塗料8及び艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を焼き付ける温度は、既に説明したように140℃以下が好ましい。焼き付けにより、補修部5’にベースコート補修塗膜部8’及び艶消し補修塗膜部7’を形成することができるものである(図2(d)参照のこと。)。
【0049】
上記第2の実施形態では、上記ベースコート塗料8と艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成したが、本発明では、これらに制限されるべきものではなく、1層ずつ焼き付ける方式(2コート2ベーク方式)で形成してもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0050】
また、本発明の第3及び第4の実施形態の艶消し塗装補修方法は、それぞれ本発明の第1及び第2の実施形態の艶消しクリヤー塗装補修方法と同じ工程を順に行うものであるが、本発明の塗料として、有色顔料等の着色材を含まない艶消しクリヤー塗料を用いているのに代えて、有色顔料等の着色材を含む艶消し塗料を用いているものである。よって、第3及び第4の実施形態の図面による説明は、本発明の塗料が異なる点を除いて図1の第1の実施形態、図2の第2の実施形態とそれぞれ同様であるため、ここでの説明は省略する。ただし、図1及び図2では、被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層1、中塗り塗膜層2、ベースコート層3、さらに本発明の艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜4(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物であるが、第3及び第4の実施形態では、被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層(必須ではない)、ベースコート層、さらに本発明の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物であるか、あるいは被塗装物上に、順次、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層(必須ではない)、さらに本発明の艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜(焼き付け硬化されている)が形成されてなる塗装物である。
【0051】
なお、本発明の艶消し塗装補修方法では、艶消しクリヤー塗膜または艶消し塗膜の下層であるベースコート層およびベースコート層形成用のベースコート塗料、さらには補修塗料として用いられるベースコート塗料(ベースコート補修塗料)8には、添加剤として着色顔料および/または光輝材が含まれていてもよく、また着色顔料および/または光輝材が含まれていなくてもよい。これらベースコート層やベースコート塗料やベースコート補修塗料では、これらの添加剤に制限されるべきものではなく、他の添加剤として、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料分散剤、粘度調整剤、有色顔料以外の着色材(着色樹脂、染料等)などが含まれていてもよい。これらの添加剤を用いる場合には、いずれも従来と同様の材質、大きさ、形状等のものを、本発明の作用効果を損なわない範囲で、かつ各添加剤の特性を発現し得る範囲内で適量用いればよい。
【0052】
また、本発明の艶消し塗装補修方法では、被塗装物の種類、該被塗装物の前処理、該被塗装物上への下塗り層(電着層)、中塗り層(必須ではない)、上塗り層{1層構造でもよいし、2層構造(例えば、第一層(ベースコート層)および第二層(トップコート層))でもよいし、さらに3層以上の多層構造であってもよい。}の製造方法に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜利用することができる。例えば、後述する実施例では、いずれも上塗り層の第一層(ベースコート層)と第二層(トップコート層=艶消しクリヤー塗膜ないし艶消し塗膜)とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成したが、本発明の艶消し塗装補修方法では、これらに制限されるべきものではなく、1層ずつ焼き付ける方式(2コート2ベーク方式)で形成してもよいし、あるいは第一層と、該第一層の下層にあたる中塗り層とをウェット・オン・ウェット方式(2コート1ベーク方式)で形成し、その後第二層を1コート1ベーク方式で形成してもよいし、さらに中塗り層、第一層及び第二層の3層をウェット・オン・ウェット方式(3コート1ベーク方式)で形成してもよいなど、特に制限されるべきものではない。また、本発明の艶消し塗装補修方法では、第一層目用塗料(ベースコート塗料)が溶剤型の塗料の場合には、後述する実施例のように市販の溶剤型塗料をそのまま用いてもよいし、塗装に際し、必要に応じて、該第一層目用塗料を更に溶剤で希釈して用いてもよいし、溶剤型塗料以外の塗料を用いてもよいことは言うまでもない。これは、第二層目用塗料(艶消しクリヤー塗料ないし艶消し塗料)においても同様である。
【0053】
【実施例】
次に、本発明に係わる実施例について説明するが、本発明は、このような実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0054】
実施例1〜7および比較例1〜6
(1)塗板の作製
実施例1〜7及び比較例1〜6の塗板を以下のようにして作製した。
【0055】
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント株式会社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。その後、日本油脂株式会社製のグレーの中塗り塗料(商品名:ハイエピコNo.500)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
【0056】
(2)塗板への上塗り塗膜の形成
次に、実施例1〜7及び比較例1〜6の塗板への上塗り塗膜を以下のようにして形成した。
【0057】
上記(1)の「塗板の作製」により得られた塗板上に、第一層(ベースコート塗膜層)および第二層(トップコート層=艶消しクリヤー塗膜層)からなる積層塗膜(上塗り塗膜)をそれぞれ形成した。第一層は、乾燥膜厚が10μmとなるようにスプレー塗装し、第二層は、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。その後、140℃で30分間焼き付けた。
【0058】
なお、第一層目及び第二層目の塗料としては、以下のものを用いた。
【0059】
(i)第一層目用塗料
第一層目用塗料として、溶剤型黒色塗料(日本油脂株式会社製の2液型ウレタン塗料「ハイウレタンNo.7000」)を用いた。
【0060】
(ii)第二層目用塗料
溶剤型艶消しクリヤー塗料として、アクリルポリオール樹脂(A)に艶消し材(B)を加えて得た樹脂固形分{(A)+(B)}に対し、イソシアネート(C)を100/30(質量比)で混合したものを用いた。
【0061】
ここで、アクリルポリオール樹脂(A)には、いずれも日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセプレン A−1001」を用いた。艶消し材(B)には、樹脂種がアクリル樹脂であり、最長部の長さ(粒径)の平均値、ガラス転移温度、樹脂固形分中の艶消し材の含有量(質量比)を、表1、2の様に変化させたものをそれぞれ用いた。イソシアネート(C)には、いずれも住化バイエルウレタン株式会社製のイソシアネート「スミジュールN75」を用いた。
【0062】
(3)艶消し塗装補修方法
得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜について、下記に示す艶消し塗装補修方法(先述した図2に示す第2の実施形態の艶消し塗装補修方法)により、補修を行った。
【0063】
図2に示すように、実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜4の塗装補修方法では、工程(▲1▼’)として、艶消しクリヤー塗料を塗装して得た実施例1〜7及び比較例1〜6の第二層(艶消しクリヤー塗膜4)の下部(第一層のベースコート層3との境界近傍)に生じているブツなどの不具合部位(補修部)5’(図2(a)参照のこと。)をサンドペーパーで研いで除去し、研ぎあと部6’とした(図2(b)参照のこと。)。ここでは、第一層(ベースコート層3)の一部まで研いだ。
【0064】
次に、工程(▲2▼’)として、補修部5’である凹状の研ぎあと部6’の下部にベースコート塗料である上記第一層目用塗料(ベースコート補修塗料8)を塗装した。
【0065】
続いて、工程(▲3▼’)として、補修部5’に塗装されたベースコート補修塗料8の上に、艶消しクリヤー塗膜4の形成に用いた艶消しクリヤー塗料(上記第二層目用塗料)と同一種類の艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7を塗装した(図2(c)参照のこと。)。
【0066】
次に、工程(▲4▼’)として、艶消しクリヤー塗装部{艶消しクリヤー塗料(艶消し補修塗料)7が塗装された補修部と補修されていない部分との境界部}にシンナーを塗布して、塗装された補修塗料(艶消し補修塗料7及びベースコート補修塗料8)を、80℃で30分間焼き付けて(実施例1〜7及び比較例1〜6のいずれも同じ焼付条件とした。)、補修塗膜(艶消し補修塗装部7’及びベースコート補修塗膜部8’)を形成した。
【0067】
(4)塗膜性能
得られた実施例1〜7及び比較例1〜6の艶消しクリヤー塗膜(補修部7’および非補修部4)について、艶感および密着性を以下のようにして評価した。艶消しクリヤー塗膜の艶はJIS K 5600−4−7に記載の方法にて光沢計を用いて60度光沢値で評価し、艶消しクリヤー塗膜の密着性はJIS K 5600−5−6に記載の方法にて碁盤目試験により行い、塗膜の残存する基盤目の数で表した。また、艶消しクリヤー塗膜の補修部と非補修部との艶感の差は目視評価を実施した。その結果を表1、2に示す。なお、艶消しクリヤー塗膜の艶感は、非補修部につき評価した。また、艶消しクリヤー塗膜の密着性は、補修部につき評価した。
【0068】
艶消しクリヤー塗膜の非補修部4の艶感の評価は、下記に従った。
【0069】
◎:光沢値30未満
○:光沢値30以上60未満
△:光沢値60以上80未満
×:光沢値80以上
艶消しクリヤー塗膜の補修部7’と非補修部4との艶感の差の評価は、下記に従った。
【0070】
○:艶感に全く差なし
△:艶感に殆ど差なし
×:艶感に差あり
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
注1)上記表2中の比較例6の補修部と非補修部の艶感の差においては、さらに使用過程の引っかき等により艶消し材が剥がれて艶があがり易い傾向がみられた。
【0074】
上記表1及び表2の艶消し材の含有量(質量%)は、上記樹脂固形分{アクリルポリオール樹脂(A)+艶消し材(B)}に対する艶消し材(B)の含有量(質量%)を示す。実施例1を例にとれば、上記{(A)+(B)}の樹脂固形分中に、艶消し材(B)を20質量%含むものである。
【0075】
上記表1及び表2の艶消し材の粒径は、艶消し材である粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値を表わすものである。かかる粒子状樹脂の最長部の長さ(粒径)の平均値は、レーザー粒度分布計(シマズ社製 CAPA500)を使用し、水(粒子状樹脂の粒子が変質しない液体ならば任意に適用し得る。)中に、艶消し材であるアクリル樹脂製粒子を入れて測定した。
【0076】
上記表1及び表2の艶消し材のガラス転移温度Tgpは、艶消し材である粒子状樹脂を構成する各樹脂の原料モノマーMiの理論値もしくは文献値Tgiと、その配合質量比率miとから次式(1)によって算出した。
【0077】
【数1】
【0078】
表1、2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の艶消しクリヤー塗膜は、艶、密着性および補修部と非補修部との艶感の差において良好な結果を示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施形態の艶消し補修方法の工程概略図であって、図1(a)は、補修前の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(b)は、補修工程(▲1▼)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(c)は、補修工程(▲2▼)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図1(d)は、補修工程(▲3▼)後(補修終了)の状態を模式的に表わした断面概略図である。
【図2】本発明に従う他の一実施形態の艶消し補修方法の工程概略図であって、図2(a)は、補修前の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(b)は、補修工程(▲1▼’)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(c)は、補修工程(▲3▼’)後の状態を模式的に表わした断面概略図であり、図2(d)は、補修工程(▲4▼’)後(補修終了)の状態を模式的に表わした断面概略図である。
【符号の説明】
1…下塗り塗膜層、 2…中塗り塗膜層、
3…ベースコート層、 4…艶消しクリヤー塗膜、
5、5’…ブツなどの不具合部、 6、6’…研ぎあと部、
7…艶消し補修塗料(塗装部)、 7’…艶消し補修塗膜部、
8…ベースコート補修塗料(塗装部)、 8’…ベースコート補修塗膜部。
Claims (8)
- 樹脂固形分中に、最長部の長さ(粒径)の平均値が100nm以上500nm未満、ガラス転移温度が50〜140℃の粒子状樹脂からなる艶消し材を5〜30質量%含むことを特徴とする艶消し塗料。
- 請求項1に記載の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を塗装して得た艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、
補修部に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、
塗装された艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。 - 請求項1に記載の艶消し塗料からなる艶消しクリヤー塗料を、先に塗装されたベースコート塗料の上に塗装して得た艶消しクリヤー塗膜の補修部を研ぐ工程と、
補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、
塗装された前記ベースコート塗料の上に前記艶消しクリヤー塗料と実質的に同一種類の艶消しクリヤー塗料を塗装する工程と、
塗装された前記ベースコート塗料および艶消しクリヤー塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。 - 請求項1に記載の艶消し塗料からなる艶消し塗料を塗装して得た艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、
補修部に前記艶消し塗料と実質的に同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、
塗装された艶消し塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。 - 請求項1に記載の艶消し塗料からなる艶消し塗料を、先に塗装されたベースコート塗料の上に塗装して得た艶消し塗膜の補修部を研ぐ工程と、
補修部に前記ベースコート塗料を塗装する工程と、
塗装された前記ベースコート塗料の上に前記艶消し塗料と実質的に同一種類の艶消し塗料を塗装する工程と、
塗装された前記ベースコート塗料および艶消し塗料を焼き付ける工程とを、順に行うことを特徴とする艶消し塗装補修方法。 - 前記ベースコート塗料又は前記艶消し塗料が、着色顔料および/または光輝材を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の艶消し塗装補修方法。
- 前記焼き付ける工程において、前記補修部と補修されていない部分との境界部に溶剤を塗布した後に、焼き付けを行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の艶消し塗装補修方法。
- 請求項1に記載の艶消し塗料を塗装してなることを特徴とする艶消し塗膜。
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