JP2004122222A - 溶接最適化システムおよび溶接最適化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接構造物の溶接変形および残留応力をシミュレーションで求め、その結果を用いて最適化を簡便に実施することを可能とし、溶接製造時の無駄を省き、製造プロセスの効率化を図る。
【解決手段】溶接構造物の残留応力または変形をシミュレーションによって求める解析手段と、この解析手段で求めた溶接構造物の残留応力または変形の入力に基づいて最適化すべき目的を選定するための溶接構造物の最適化目的選定手段と、選定された目的に対応する最適化手順を選定するための最適化手順選定手段と、目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するための最適化モジュール選定手段と、選定された最適化モジュールに基づいて最適化を実行する最適化実行手段と、最適化の実行結果について許容設定値との比較を行う判定手段とを備え、この判定手段による比較の結果が許容設定値内にない場合に許容値内まで最適化を繰り返す。
【選択図】 図1
【解決手段】溶接構造物の残留応力または変形をシミュレーションによって求める解析手段と、この解析手段で求めた溶接構造物の残留応力または変形の入力に基づいて最適化すべき目的を選定するための溶接構造物の最適化目的選定手段と、選定された目的に対応する最適化手順を選定するための最適化手順選定手段と、目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するための最適化モジュール選定手段と、選定された最適化モジュールに基づいて最適化を実行する最適化実行手段と、最適化の実行結果について許容設定値との比較を行う判定手段とを備え、この判定手段による比較の結果が許容設定値内にない場合に許容値内まで最適化を繰り返す。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接構造物の製造プロセスにおいて、溶接変形や残留応力の最小化および製造プロセスの最適化等を図った溶接最適化システムおよび溶接最適化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、大型の溶接構造物の製造プロセスにおいて、溶接変形または残留応力を低減させる手段として、シミュレーションによる解析が実施されている。しかしながら、従来のシミュレーションによる解析では、必ずしも溶接変形残留応力の最小化あるいは補強構造の最適化を図る高度の解析までは行われておらず、このような溶接変形残留応力の最小化あるいは補強構造の最適化については、解析によらずに現場作業者あるいは設計者の経験と勘に頼って行われる場合が多い。
【0003】
ところで、大型の補強構成を複数伴う溶接構造物では、溶接施工が製造工数のほぼすべてを占めている。これらの溶接作業としては、通常の溶接作業の他に、溶接時の変形防止のための補強治具設置等の事前準備が含まれており、さらに溶接後の熱処理、切削、成形加工等による溶接変形後の手直し工程も含まれている。
【0004】
また、これらの工程の検証試験においては、プロトタイプや縮小モデル作成によって対応しているが、製品競争力強化に伴う低価格化、納期短縮化を図るためには無駄が多い。したがって、このような非効率なプロセスを改善するためには、製造プロセス時での製造最適化を実施する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような溶接を主体とした最適化のポイントとしては、溶接変形防止のための施工および変形後の手直しの削減が最も重要と考えられる。一般的に溶接変形については、溶接入熱量を下げたり、溶接手順をバランスよく実施することにより、ある程度の抑制が可能である。例えば構造設計段階で前もって溶接変形を見込み、製品性能に影響を及ぼさないようにすることが最も容易であることから、溶接変形および変形拘束による残留応力の定量的結果を用いた最適化が重要である。
【0006】
本発明は、このような実情を考慮してなされたもので、溶接変形および残留応力をシミュレーションにより求め、その結果を用いて最適化を簡便に実施することができ、溶接時の無駄を省き、溶接構造物の製造プロセスの効率向上が図れる溶接最適化システムおよび溶接最適化方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明では、溶接構造物の残留応力または変形をシミュレーションによって求める解析手段と、この解析手段で求めた前記溶接構造物の残留応力または変形の入力に基づいて最適化すべき目的を選定するための溶接構造物の最適化目的選定手段と、選定された目的に対応する最適化手順を選定するための最適化手順選定手段と、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するための最適化モジュール選定手段と、選定された最適化モジュールに基づいて最適化を実行する最適化実行手段と、最適化の実行結果について許容設定値との比較を行う判定手段とを備え、この判定手段による比較の結果が前記許容設定値内にない場合に許容値内まで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0008】
本発明において、最適化目的の選定対象は、最適補強構造、最適補強位置、溶接順序、継手形状もしくは溶接製造条件またはこれらの2以上の組合せである。
【0009】
請求項2に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーションに熱弾塑性解析を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0010】
本発明において、溶接構造物としては、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、はんだ付け、ろう付けを用いた構造物等が適用される。
【0011】
請求項3に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーション方法を固有歪および固有変形を用いた解析を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0012】
請求項4に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化モジュール選定手段では、感度解析モジュール、形状最適化モジュール、実験計画法と応答曲面法との組合せモジュール、遺伝的アルゴリズムモジュール、ニュラールネットワークモジュールおよび田口メソッドモジュールから一以上のモジュールを選定することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0013】
本発明において、感度解析モジュールとは、対象物の応力または変位等の値と変数(板厚、形状)との感度を求める方法をいう。また、形状最適化モジュールとは、対象物の形状を変化させて最適化を行う方法をいう。また、実験計画法とは数値解析または実験データに基づいて統計的に処理を行う方法である。この実験計画法と応答曲面法との組合せモジュールとは、実験計画法により求めた統計データを用いて設計要因による特性値の応答を表す推定式(応答曲面近似式)を求める方法であり、大きくは感度解析に含まれる。
【0014】
さらに、遺伝的アルゴリズムモジュールとは、生物の遺伝や進化の過程である「適者生存の法則」を模擬した再生・交差・突然変異を繰り返し行い、設計空間内の多数の点からの同時探索によって大局的最適点を求める方法をいう。さらにまた、ニュラールネットワークモジュールとは、多数の基本問題に対する解から学習し、これに類似した条件の問題に対する近似的な解を求める方法をいう。また、田口メソッドモジュールとは、制御できない要因によるノイズやばらつきに対して、特性値が影響を受けにくいような、ロバスト性の高い設計要因の水準の組合せを決定することを目的とした手段である。
【0015】
請求項5に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化目的選定手段では、溶接構造物の残留応力または変形のシミュレーションによる解析結果と最適化目的との影響度を求め、その結果を用いて残留応力または溶接変形が最小または設計許容値以下になる最適目的を求めることを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0016】
請求項6に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段では、最小または許容値以下の溶接残留応力または変形を求める手法として、シミュレーションにより求めた溶接残留応力または溶接変形の結果を用いて溶接施工前の初期溶接構造形状の状態に戻す逆解析手法を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0017】
請求項7に係る発明では、溶接構造物の残留応力または溶接変形をシミュレーションにより解析するステップと、前記シミュレーションによる解析結果に基づいて最適化すべき目的を選定するステップと、選定された目的に対応する最適化手順を選定するステップと、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するステップと、最適化を実行するステップと、最適化実行結果について許容設計値との比較を行うステップとを備え、前記比較により最適化の実行結果が前記許容設計値内となるまで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、溶接構造物の最適化を主体になされたシステムであり、これら構造物としては、広く電気機器、建築構造、運搬機械、船舶構造、産業機械等の接合機械、構造物を対象とするものである。そして、本実施形態では、溶接構造物の施工法として、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、はんだ付け、ろう付け等を適用する場合に、これらの施工法による構造物の残留応力、変形を求め、製造プロセス、構造物の最適化を図るシステムについて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る溶接最適化方法を実施するための基本的な手順を示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態においては、まず溶接構造物の残留応力または溶接変形をシミュレーションにより求める(S101)。このステップS101のシミュレーションとしては、第1の例として、溶接時の温度変化を有限要素法の熱伝導解析で求めた後、各温度変化時における応力計算を弾塑性解析により実施する。また、このシミュレーションの第2の例としては、溶接継手レベルでの熱弾塑性解析を行った後、各方向の塑性歪を求め、その歪を全体モデルに入力し、弾性解析により溶接変形および残留応力を求める固有歪法を用いる。この方法は弾性解析であるため、全体モデルの計算が簡便かつ短時間で実施可能であり、数十種類の組合せを実行するような溶接順序の最適化問題または、繰り返し計算との組合せ問題に適する。
【0021】
次に、シミュレーション解析結果として得られた溶接物の変形および応力分布状態を、ポスト処理プログラムにより表示する(S102)。これにより、解析結果の状況把握を行うとともに、システム画面表示の最適化したい目的を選定する(S103)。この最適化目的の選定ステップS103では、例えば(1)最適補強構造、(2)最適補強位置、(3)最適溶接順序、(4)最適溶接継手形状、(5)最適溶接製造条件等が挙げられる。
【0022】
まず、最適化目的を(1)の最適補強構造とする場合について説明する。溶接構造における最適化においては、溶接残留応力、溶接変形を最小化することが主な目的となる。このためには、補強を設置して変形を防止する方法が一般的であり、またその構造は作業効率から簡便な構造が望まれる。したがって、本例の場合には、最適化によって補強構造を簡便化し、これによって補強設置作業の簡略化を図り、製造プロセスの効率化を図ることが可能となる。
【0023】
最適化目的を(2)の最適補強位置とする場合について説明する。溶接残留応力、溶接変形を最小化するためには、補強を設置して変形を防止することが一般的である。但し、構造物によっては補強設置の位置が変形抑制に大きく影響する。したがって、効率良く溶接変形を最小化させるためには、変形抑制に最も効果のある位置に補強を設置することが重要となる。すなわち、溶接変形抑制に最も効果のある位置に補強を設置することにより、製造プロセスの効率化を図ることが可能となる。
【0024】
最適化目的を(3)の溶接順序とする場合について説明する。溶接残留応力、溶接変形を最小化するためには、補強を設置して変形を防止する方法が一般的であるが、補強が設置できない構造もしくは補強のみでは溶接変形を許容値内に収められない場合、また溶接順序が複数考えられる構造物の場合には、その順序により、溶接変形または残留応力が大きく影響を受ける。したがってこのような場合には、溶接順序、方向等を最適化の目的として選定する必要がある。
【0025】
図2(A−1),(A−2),(B1−1),(B−2)は、複数のブロック1a,1bを接合してそれぞれユニット2a,2bを構成する場合における溶接の接合順序の違いによる溶接変形の相違について例示したものである。図2(A−1),(A−2)に示したように、溶接順序を矢印a1〜a11の如く、右下から左上に向くような順序で右列側から左列側に溶接を施す場合と、図2(B1−1),(B−2)に示したように、溶接順序を矢印b1〜b4の如く上から下に向くような順序で右列側から左列側に溶接を施す場合とでは、溶接変形値(例えば上逆り長さ)l1,l2に差が生じる。
【0026】
このように、溶接順序が異なることにより、全体の溶接変形値が相違することが理解できる。このような溶接順序または方向が複数の組合せとなる場合には、例えば実験計画法によって組合せ条件を決定し、統計的に処理することによって溶接変形抑制に最も効果のある溶接順序および方向が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0027】
最適化目的を(4)の溶接継手形状とする場合について説明する。溶接時の変形または残留応力は、溶接継手形状の相違によって影響を受ける。また、固有歪法を用いたシミュレーションにおいては継手レベルでの熱弾塑性解析が基本となり、この場合の塑性歪は継手形状(継手形式、板厚等)に左右される。したがって、これら複数のパラメータを設計変数とし、実験計画法等により統計的に処理を行う。このように、溶接継手形状を最適化目的とすることによって、溶接変形、残留応力を軽減させる継手形状が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0028】
最適化目的を(5)の溶接製造条件とする場合について説明する。溶接時の変形または残留応力は溶接時の入熱量、溶接スピード、溶接後の熱処理等の溶接製造条件に影響される。したがってこれら複数のパラメータを設計変数とし、実験計画法等により統計的に処理する。このように、溶接製造条件を最適化目的とすることによって、溶接変形、残留応力を軽減させる溶接製造条件が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0029】
次に、選定した目的に対応した最適化手順を選定する(S104)。このステップは、シミュレーションによって求められた残留応力、変形を用い、その結果と最適化目的および設計変数との影響度を求めるとともに、その結果を用いて残留応力または溶接変形が最小または許容値以下になるような最適化目的を求めるものである。
【0030】
図3は、この最適化手順の具体例を示したサブルーチンである。まず、溶接変形および残留応力をシミュレーションによって求めた後(S201)、その結果を用いて設計変数(例えば溶接順序、板厚等)と最適化目的との影響度を調査する(S202)。そして、この調査に基づいて、影響度の大小による設計変数の選別を行って影響度の大きいものを選び(S203)、この後、関係図、設計感度式を用いて最適化を検討する(S204)。これによって残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物(例えば板厚、入熱等)を得るようにするものである。
【0031】
具体的には、溶接構造物は複雑な補強等により構成されているものが多く、このような場合、まず影響度調査を実施して、影響度の少ない部分を設計変数から省略し、影響度の高い部分を設計変数に選定する。ここで影響度調査の結果として設計変数と最適化目的との関係図または実験計画法等による手法であれば設計感度式が得られる。したがって、これらのグラフまたは設計式を利用し、残留応力または溶接変形が最小となる設計変数の組合せを得ることが可能となる。
【0032】
次に、メインフローに戻り、目的および手順に応じた最適化モジュールを選定する(S105)。最適化モジュールとしては、感度解析モジュール、形状最適化モジュール、実験計画法と応答曲面法との組合せモジュール、および遺伝的アルゴリズムモジュール、ニューラルネットワークモジュール、田口メソッドモジュールの各手法の一つ以上を含んだモジュールが選定される。すなわち、溶接構造物における最適化目的は溶接変形防止のための最適補強構造、溶接の最適順序、施工方法が主となるため、これらの対応策として前記モジュールを選定するものである。例えば感度解析モジュールは、各特性値と変数との関係を求める場合に適し、形状最適化モジュールは、変数の最適な形状を求める場合に適する。実験計画法と応答曲面法との組合せモジュールは、数種類の条件を計算し、その結果を統計的に処理して、特性値と変数との近似推定式を求めるのに有効である。遺伝的アルゴリズムモジュールおよび田口メソッドモジュールでは、繰り返し計算により最適値を求めるのに有効である。これらモジュールの適用により、最適構造および最適製造プロセスが可能となる。
【0033】
以上の結果をもとに、最適化ソフトを使用して最適化を実行する(S106)。そして、最適化を実行した結果については設計許容値との比較を行い(S107)、許容値を満足すれば(YES)、最適化は終了する。一方、ステップS107において、最適化の実行結果が許容値を超える場合(NO)には、最適化の目的選定(S103)に戻り、再度選定を行う。ここで許容値を満足しない場合、最適化目的の選定ステップS103に戻るのは、許容値を満足させるためには単数の最適化目的のみでは不充分の場合があり、その場合には複数の最適化目的を実行することによって設計許容値を満足させるためである。
【0034】
以上の手順は、選定した項目に連動しており、画面表示の項目を順次選定していくことによって、自動的に最適化への手順を求めてくれるものである。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、溶接変形および残留応力をシミュレーションで求め、その結果を用いての最適化が簡便に実施可能で、溶接製造時の無駄を省き、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【0036】
図4〜図6は本実施形態において、さらに具体的な例を示したものである。
【0037】
図4(A)は溶接構造物を例示したものであり、円筒構造物3の対向する両側位置の周壁外面に、当て板4がそれぞれ溶接された状態を示している。このような構造の場合、一般的には図4(B)に示すように、円筒構造物3の内側にリング状の補強治具5を設置して溶接熱による変形防止が図られる。しかしながら、この補強治具5は円筒構造物3の周方向全体に亘って内側から支持する構成であり、過度に剛な構造となって治具設置のための作業に多大な時間を必要とする。したがって製造プロセスの効率化のためには、簡便・軽量な補強治具が必要となる。
【0038】
そこで、本実施形態では、影響度調査または最小および許容値以下の溶接残留応力または変形をシミュレーションにより求め、この求めた溶接残留応力または溶接変形の結果をもとに、溶接施工前の初期溶接構造形状の状態に戻す逆解析手法を採用する。例えば、図4(A)に示した円筒構造3の外壁に当て板4を溶接した場合のシミュレーションによる溶接変形は、図5に仮想線6で示すように、当て板4の溶接位置に対応する両側部分のみが大きく内径側に落ち込む変形となる。したがって、この構造物の場合には、図6に矢印7で示したように、外向きの強制変位を与える補強および最低限必要な剛性を求め、その剛性に基づいて補強形状を決定すればよい。
【0039】
すなわち、図6に示すように、まず、シミュレーションにより円筒構造3の変形部分(仮想線6)を求め(S301)、この求めた変形部分を許容変形以内に収めるべく、強制変位を入力する(S302)。そして、強制変位を入力することにより反力を算定し(S303)、反力Fおよび変位δから必要最小限の剛性を求め、補強断面を決定する(S304)。これに基づき補強を作成し、補強を設置する(S304)。具体的には、本例の場合、変形が部分的であり、また変形状態が比較的単純であるため、変形防止用の補強治具は、変形部分のみに対応する例えば水平方向の補強を主とする比較的簡単な形状とし、簡便・軽量な補強治具によって変形を許容値内に収めることが可能となる。
【0040】
このように、強制変位の反力Fにより補強に最低限必要な剛性Iを求め、その剛性にもとづいて形状を決定することにより、円筒構造について本システムを適用した場合は最適化を容易に進めることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明によれば、溶接構造物の溶接変形および残留応力をシミュレーションで求め、その結果を用いて最適化を簡便に実施することが可能となり、溶接製造時の無駄を省き、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による方法の手順を示すにフローチャート。
【図2】(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)は本発明の一実施形態による溶接方法を説明する模式図。
【図3】本発明の一実施形態による具体的な手順を示すフローチャート。
【図4】(A)は本発明の一実施形態による具体例を示す構造図、(B)は補強治具を示す構造図。
【図5】図4に示した具体例の変形状況を示す説明図。
【図6】図4に示した具体例に対応する方法の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1a,1b…ブロック、2a,2b…ユニット、3…円筒構造物、4…当て板、5…補強治具。
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接構造物の製造プロセスにおいて、溶接変形や残留応力の最小化および製造プロセスの最適化等を図った溶接最適化システムおよび溶接最適化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、大型の溶接構造物の製造プロセスにおいて、溶接変形または残留応力を低減させる手段として、シミュレーションによる解析が実施されている。しかしながら、従来のシミュレーションによる解析では、必ずしも溶接変形残留応力の最小化あるいは補強構造の最適化を図る高度の解析までは行われておらず、このような溶接変形残留応力の最小化あるいは補強構造の最適化については、解析によらずに現場作業者あるいは設計者の経験と勘に頼って行われる場合が多い。
【0003】
ところで、大型の補強構成を複数伴う溶接構造物では、溶接施工が製造工数のほぼすべてを占めている。これらの溶接作業としては、通常の溶接作業の他に、溶接時の変形防止のための補強治具設置等の事前準備が含まれており、さらに溶接後の熱処理、切削、成形加工等による溶接変形後の手直し工程も含まれている。
【0004】
また、これらの工程の検証試験においては、プロトタイプや縮小モデル作成によって対応しているが、製品競争力強化に伴う低価格化、納期短縮化を図るためには無駄が多い。したがって、このような非効率なプロセスを改善するためには、製造プロセス時での製造最適化を実施する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような溶接を主体とした最適化のポイントとしては、溶接変形防止のための施工および変形後の手直しの削減が最も重要と考えられる。一般的に溶接変形については、溶接入熱量を下げたり、溶接手順をバランスよく実施することにより、ある程度の抑制が可能である。例えば構造設計段階で前もって溶接変形を見込み、製品性能に影響を及ぼさないようにすることが最も容易であることから、溶接変形および変形拘束による残留応力の定量的結果を用いた最適化が重要である。
【0006】
本発明は、このような実情を考慮してなされたもので、溶接変形および残留応力をシミュレーションにより求め、その結果を用いて最適化を簡便に実施することができ、溶接時の無駄を省き、溶接構造物の製造プロセスの効率向上が図れる溶接最適化システムおよび溶接最適化方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明では、溶接構造物の残留応力または変形をシミュレーションによって求める解析手段と、この解析手段で求めた前記溶接構造物の残留応力または変形の入力に基づいて最適化すべき目的を選定するための溶接構造物の最適化目的選定手段と、選定された目的に対応する最適化手順を選定するための最適化手順選定手段と、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するための最適化モジュール選定手段と、選定された最適化モジュールに基づいて最適化を実行する最適化実行手段と、最適化の実行結果について許容設定値との比較を行う判定手段とを備え、この判定手段による比較の結果が前記許容設定値内にない場合に許容値内まで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0008】
本発明において、最適化目的の選定対象は、最適補強構造、最適補強位置、溶接順序、継手形状もしくは溶接製造条件またはこれらの2以上の組合せである。
【0009】
請求項2に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーションに熱弾塑性解析を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0010】
本発明において、溶接構造物としては、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、はんだ付け、ろう付けを用いた構造物等が適用される。
【0011】
請求項3に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーション方法を固有歪および固有変形を用いた解析を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0012】
請求項4に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化モジュール選定手段では、感度解析モジュール、形状最適化モジュール、実験計画法と応答曲面法との組合せモジュール、遺伝的アルゴリズムモジュール、ニュラールネットワークモジュールおよび田口メソッドモジュールから一以上のモジュールを選定することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0013】
本発明において、感度解析モジュールとは、対象物の応力または変位等の値と変数(板厚、形状)との感度を求める方法をいう。また、形状最適化モジュールとは、対象物の形状を変化させて最適化を行う方法をいう。また、実験計画法とは数値解析または実験データに基づいて統計的に処理を行う方法である。この実験計画法と応答曲面法との組合せモジュールとは、実験計画法により求めた統計データを用いて設計要因による特性値の応答を表す推定式(応答曲面近似式)を求める方法であり、大きくは感度解析に含まれる。
【0014】
さらに、遺伝的アルゴリズムモジュールとは、生物の遺伝や進化の過程である「適者生存の法則」を模擬した再生・交差・突然変異を繰り返し行い、設計空間内の多数の点からの同時探索によって大局的最適点を求める方法をいう。さらにまた、ニュラールネットワークモジュールとは、多数の基本問題に対する解から学習し、これに類似した条件の問題に対する近似的な解を求める方法をいう。また、田口メソッドモジュールとは、制御できない要因によるノイズやばらつきに対して、特性値が影響を受けにくいような、ロバスト性の高い設計要因の水準の組合せを決定することを目的とした手段である。
【0015】
請求項5に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化目的選定手段では、溶接構造物の残留応力または変形のシミュレーションによる解析結果と最適化目的との影響度を求め、その結果を用いて残留応力または溶接変形が最小または設計許容値以下になる最適目的を求めることを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0016】
請求項6に係る発明では、請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段では、最小または許容値以下の溶接残留応力または変形を求める手法として、シミュレーションにより求めた溶接残留応力または溶接変形の結果を用いて溶接施工前の初期溶接構造形状の状態に戻す逆解析手法を適用することを特徴とする溶接最適化システムを提供する。
【0017】
請求項7に係る発明では、溶接構造物の残留応力または溶接変形をシミュレーションにより解析するステップと、前記シミュレーションによる解析結果に基づいて最適化すべき目的を選定するステップと、選定された目的に対応する最適化手順を選定するステップと、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するステップと、最適化を実行するステップと、最適化実行結果について許容設計値との比較を行うステップとを備え、前記比較により最適化の実行結果が前記許容設計値内となるまで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、溶接構造物の最適化を主体になされたシステムであり、これら構造物としては、広く電気機器、建築構造、運搬機械、船舶構造、産業機械等の接合機械、構造物を対象とするものである。そして、本実施形態では、溶接構造物の施工法として、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、はんだ付け、ろう付け等を適用する場合に、これらの施工法による構造物の残留応力、変形を求め、製造プロセス、構造物の最適化を図るシステムについて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る溶接最適化方法を実施するための基本的な手順を示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態においては、まず溶接構造物の残留応力または溶接変形をシミュレーションにより求める(S101)。このステップS101のシミュレーションとしては、第1の例として、溶接時の温度変化を有限要素法の熱伝導解析で求めた後、各温度変化時における応力計算を弾塑性解析により実施する。また、このシミュレーションの第2の例としては、溶接継手レベルでの熱弾塑性解析を行った後、各方向の塑性歪を求め、その歪を全体モデルに入力し、弾性解析により溶接変形および残留応力を求める固有歪法を用いる。この方法は弾性解析であるため、全体モデルの計算が簡便かつ短時間で実施可能であり、数十種類の組合せを実行するような溶接順序の最適化問題または、繰り返し計算との組合せ問題に適する。
【0021】
次に、シミュレーション解析結果として得られた溶接物の変形および応力分布状態を、ポスト処理プログラムにより表示する(S102)。これにより、解析結果の状況把握を行うとともに、システム画面表示の最適化したい目的を選定する(S103)。この最適化目的の選定ステップS103では、例えば(1)最適補強構造、(2)最適補強位置、(3)最適溶接順序、(4)最適溶接継手形状、(5)最適溶接製造条件等が挙げられる。
【0022】
まず、最適化目的を(1)の最適補強構造とする場合について説明する。溶接構造における最適化においては、溶接残留応力、溶接変形を最小化することが主な目的となる。このためには、補強を設置して変形を防止する方法が一般的であり、またその構造は作業効率から簡便な構造が望まれる。したがって、本例の場合には、最適化によって補強構造を簡便化し、これによって補強設置作業の簡略化を図り、製造プロセスの効率化を図ることが可能となる。
【0023】
最適化目的を(2)の最適補強位置とする場合について説明する。溶接残留応力、溶接変形を最小化するためには、補強を設置して変形を防止することが一般的である。但し、構造物によっては補強設置の位置が変形抑制に大きく影響する。したがって、効率良く溶接変形を最小化させるためには、変形抑制に最も効果のある位置に補強を設置することが重要となる。すなわち、溶接変形抑制に最も効果のある位置に補強を設置することにより、製造プロセスの効率化を図ることが可能となる。
【0024】
最適化目的を(3)の溶接順序とする場合について説明する。溶接残留応力、溶接変形を最小化するためには、補強を設置して変形を防止する方法が一般的であるが、補強が設置できない構造もしくは補強のみでは溶接変形を許容値内に収められない場合、また溶接順序が複数考えられる構造物の場合には、その順序により、溶接変形または残留応力が大きく影響を受ける。したがってこのような場合には、溶接順序、方向等を最適化の目的として選定する必要がある。
【0025】
図2(A−1),(A−2),(B1−1),(B−2)は、複数のブロック1a,1bを接合してそれぞれユニット2a,2bを構成する場合における溶接の接合順序の違いによる溶接変形の相違について例示したものである。図2(A−1),(A−2)に示したように、溶接順序を矢印a1〜a11の如く、右下から左上に向くような順序で右列側から左列側に溶接を施す場合と、図2(B1−1),(B−2)に示したように、溶接順序を矢印b1〜b4の如く上から下に向くような順序で右列側から左列側に溶接を施す場合とでは、溶接変形値(例えば上逆り長さ)l1,l2に差が生じる。
【0026】
このように、溶接順序が異なることにより、全体の溶接変形値が相違することが理解できる。このような溶接順序または方向が複数の組合せとなる場合には、例えば実験計画法によって組合せ条件を決定し、統計的に処理することによって溶接変形抑制に最も効果のある溶接順序および方向が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0027】
最適化目的を(4)の溶接継手形状とする場合について説明する。溶接時の変形または残留応力は、溶接継手形状の相違によって影響を受ける。また、固有歪法を用いたシミュレーションにおいては継手レベルでの熱弾塑性解析が基本となり、この場合の塑性歪は継手形状(継手形式、板厚等)に左右される。したがって、これら複数のパラメータを設計変数とし、実験計画法等により統計的に処理を行う。このように、溶接継手形状を最適化目的とすることによって、溶接変形、残留応力を軽減させる継手形状が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0028】
最適化目的を(5)の溶接製造条件とする場合について説明する。溶接時の変形または残留応力は溶接時の入熱量、溶接スピード、溶接後の熱処理等の溶接製造条件に影響される。したがってこれら複数のパラメータを設計変数とし、実験計画法等により統計的に処理する。このように、溶接製造条件を最適化目的とすることによって、溶接変形、残留応力を軽減させる溶接製造条件が決定され、残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物を得ることが可能となる。
【0029】
次に、選定した目的に対応した最適化手順を選定する(S104)。このステップは、シミュレーションによって求められた残留応力、変形を用い、その結果と最適化目的および設計変数との影響度を求めるとともに、その結果を用いて残留応力または溶接変形が最小または許容値以下になるような最適化目的を求めるものである。
【0030】
図3は、この最適化手順の具体例を示したサブルーチンである。まず、溶接変形および残留応力をシミュレーションによって求めた後(S201)、その結果を用いて設計変数(例えば溶接順序、板厚等)と最適化目的との影響度を調査する(S202)。そして、この調査に基づいて、影響度の大小による設計変数の選別を行って影響度の大きいものを選び(S203)、この後、関係図、設計感度式を用いて最適化を検討する(S204)。これによって残留応力・溶接変形が最小となる溶接構造物(例えば板厚、入熱等)を得るようにするものである。
【0031】
具体的には、溶接構造物は複雑な補強等により構成されているものが多く、このような場合、まず影響度調査を実施して、影響度の少ない部分を設計変数から省略し、影響度の高い部分を設計変数に選定する。ここで影響度調査の結果として設計変数と最適化目的との関係図または実験計画法等による手法であれば設計感度式が得られる。したがって、これらのグラフまたは設計式を利用し、残留応力または溶接変形が最小となる設計変数の組合せを得ることが可能となる。
【0032】
次に、メインフローに戻り、目的および手順に応じた最適化モジュールを選定する(S105)。最適化モジュールとしては、感度解析モジュール、形状最適化モジュール、実験計画法と応答曲面法との組合せモジュール、および遺伝的アルゴリズムモジュール、ニューラルネットワークモジュール、田口メソッドモジュールの各手法の一つ以上を含んだモジュールが選定される。すなわち、溶接構造物における最適化目的は溶接変形防止のための最適補強構造、溶接の最適順序、施工方法が主となるため、これらの対応策として前記モジュールを選定するものである。例えば感度解析モジュールは、各特性値と変数との関係を求める場合に適し、形状最適化モジュールは、変数の最適な形状を求める場合に適する。実験計画法と応答曲面法との組合せモジュールは、数種類の条件を計算し、その結果を統計的に処理して、特性値と変数との近似推定式を求めるのに有効である。遺伝的アルゴリズムモジュールおよび田口メソッドモジュールでは、繰り返し計算により最適値を求めるのに有効である。これらモジュールの適用により、最適構造および最適製造プロセスが可能となる。
【0033】
以上の結果をもとに、最適化ソフトを使用して最適化を実行する(S106)。そして、最適化を実行した結果については設計許容値との比較を行い(S107)、許容値を満足すれば(YES)、最適化は終了する。一方、ステップS107において、最適化の実行結果が許容値を超える場合(NO)には、最適化の目的選定(S103)に戻り、再度選定を行う。ここで許容値を満足しない場合、最適化目的の選定ステップS103に戻るのは、許容値を満足させるためには単数の最適化目的のみでは不充分の場合があり、その場合には複数の最適化目的を実行することによって設計許容値を満足させるためである。
【0034】
以上の手順は、選定した項目に連動しており、画面表示の項目を順次選定していくことによって、自動的に最適化への手順を求めてくれるものである。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、溶接変形および残留応力をシミュレーションで求め、その結果を用いての最適化が簡便に実施可能で、溶接製造時の無駄を省き、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【0036】
図4〜図6は本実施形態において、さらに具体的な例を示したものである。
【0037】
図4(A)は溶接構造物を例示したものであり、円筒構造物3の対向する両側位置の周壁外面に、当て板4がそれぞれ溶接された状態を示している。このような構造の場合、一般的には図4(B)に示すように、円筒構造物3の内側にリング状の補強治具5を設置して溶接熱による変形防止が図られる。しかしながら、この補強治具5は円筒構造物3の周方向全体に亘って内側から支持する構成であり、過度に剛な構造となって治具設置のための作業に多大な時間を必要とする。したがって製造プロセスの効率化のためには、簡便・軽量な補強治具が必要となる。
【0038】
そこで、本実施形態では、影響度調査または最小および許容値以下の溶接残留応力または変形をシミュレーションにより求め、この求めた溶接残留応力または溶接変形の結果をもとに、溶接施工前の初期溶接構造形状の状態に戻す逆解析手法を採用する。例えば、図4(A)に示した円筒構造3の外壁に当て板4を溶接した場合のシミュレーションによる溶接変形は、図5に仮想線6で示すように、当て板4の溶接位置に対応する両側部分のみが大きく内径側に落ち込む変形となる。したがって、この構造物の場合には、図6に矢印7で示したように、外向きの強制変位を与える補強および最低限必要な剛性を求め、その剛性に基づいて補強形状を決定すればよい。
【0039】
すなわち、図6に示すように、まず、シミュレーションにより円筒構造3の変形部分(仮想線6)を求め(S301)、この求めた変形部分を許容変形以内に収めるべく、強制変位を入力する(S302)。そして、強制変位を入力することにより反力を算定し(S303)、反力Fおよび変位δから必要最小限の剛性を求め、補強断面を決定する(S304)。これに基づき補強を作成し、補強を設置する(S304)。具体的には、本例の場合、変形が部分的であり、また変形状態が比較的単純であるため、変形防止用の補強治具は、変形部分のみに対応する例えば水平方向の補強を主とする比較的簡単な形状とし、簡便・軽量な補強治具によって変形を許容値内に収めることが可能となる。
【0040】
このように、強制変位の反力Fにより補強に最低限必要な剛性Iを求め、その剛性にもとづいて形状を決定することにより、円筒構造について本システムを適用した場合は最適化を容易に進めることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明によれば、溶接構造物の溶接変形および残留応力をシミュレーションで求め、その結果を用いて最適化を簡便に実施することが可能となり、溶接製造時の無駄を省き、製造プロセスの効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による方法の手順を示すにフローチャート。
【図2】(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)は本発明の一実施形態による溶接方法を説明する模式図。
【図3】本発明の一実施形態による具体的な手順を示すフローチャート。
【図4】(A)は本発明の一実施形態による具体例を示す構造図、(B)は補強治具を示す構造図。
【図5】図4に示した具体例の変形状況を示す説明図。
【図6】図4に示した具体例に対応する方法の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1a,1b…ブロック、2a,2b…ユニット、3…円筒構造物、4…当て板、5…補強治具。
Claims (7)
- 溶接構造物の残留応力または変形をシミュレーションによって求める解析手段と、この解析手段で求めた前記溶接構造物の残留応力または変形の入力に基づいて最適化すべき目的を選定するための溶接構造物の最適化目的選定手段と、選定された目的に対応する最適化手順を選定するための最適化手順選定手段と、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するための最適化モジュール選定手段と、選定された最適化モジュールに基づいて最適化を実行する最適化実行手段と、最適化の実行結果について許容設定値との比較を行う判定手段とを備え、この判定手段による比較の結果が前記許容設定値内にない場合に許容値内まで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化システム。
- 請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーションに熱弾塑性解析を適用することを特徴とする溶接最適化システム。
- 請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段によって溶接構造物の溶接残留応力または変形を求めるシミュレーション方法を固有歪および固有変形を用いた解析を適用することを特徴とする溶接最適化システム。
- 請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化モジュール選定手段では、感度解析モジュール、形状最適化モジュール、実験計画法と応答曲面法との組合せモジュール、遺伝的アルゴリズムモジュール、ニュラールネットワークモジュールおよび田口メソッドモジュールから一以上のモジュールを選定することを特徴とする溶接最適化システム。
- 請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、最適化目的選定手段では、溶接構造物の残留応力または変形のシミュレーションによる解析結果と最適化目的との影響度を求め、その結果を用いて残留応力または溶接変形が最小または設計許容値以下になる最適目的を求めることを特徴とする溶接最適化システム。
- 請求項1記載の溶接最適化システムにおいて、解析手段では、最小または許容値以下の溶接残留応力または変形を求める手法として、シミュレーションにより求めた溶接残留応力または溶接変形の結果を用いて溶接施工前の初期溶接構造形状の状態に戻す逆解析手法を適用することを特徴とする溶接最適化システム。
- 溶接構造物の残留応力または溶接変形をシミュレーションにより解析するステップと、前記シミュレーションによる解析結果に基づいて最適化すべき目的を選定するステップと、選定された目的に対応する最適化手順を選定するステップと、前記目的および手順に応じた最適化モジュールを選定するステップと、最適化を実行するステップと、最適化実行結果について許容設計値との比較を行うステップとを備え、前記比較により最適化の実行結果が前記許容設計値内となるまで最適化を繰り返すことを特徴とする溶接最適化方法。
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