JP2011101900A - 変形推定方法、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 逆ひずみを与えた場合の溶接変形を推定することができる変形推定方法を提供する。
【解決手段】 ステップS7では、固有歪データベースに記憶されている実験等で求めた逆ひずみを与えた場合の固有ひずみの情報に基づいて、ステップS2で指定された板厚hと継手形式と溶接長L、ステップS3で指定された溶接法と溶接入熱Qと材質、および曲げ縁応力σによって決まる横曲がり角変形固有歪θが求められる。ステップS8では、逆ひずみを与えた状態をモデル化して弾性有限要素解析を行う。このとき、ステップS9では、ステップS4で求められた縦収縮固有歪g、横収縮固有歪g、縦曲がり変形固有歪θ、およびステップS7で求められた横曲がり角変形固有歪θに基づいて、溶接変形解析を行う。このようにして、逆ひずみを与えた場合の溶接構造物の溶接変形を推定することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、熱加工による変形、特に溶接によって生じる変形を推定する方法に関する。
溶接などの熱加工によって生じる変形は、製品の外観および見栄えに影響するばかりでなく、製品を製作する際の組立工数および溶接工数にも影響し、さらに製品の機能および性能にも影響を及ぼすため、変形を制御および抑制することは、工業的に重要な課題である。
変形を推定する目的は、加工後の部材または構造物を所要の寸法精度に収めることにある。たとえば、溶接によって生じる変形である溶接変形を推定することに主眼があるのではなく、溶接変形を推定することによって、
(1)溶接手順を変更して溶接によって生じる変形量を低減すること
(2)部材の変形を拘束するための治具である拘束治具などを用いて変形を抑制すること
(3)溶接前に溶接変形と逆方向の変位または歪を与えておいて溶接変形を相殺すること
(4)溶接前に溶接変形を考慮して、部材の寸法または形状を変更すること
などを可能にし、溶接後のひずみ取作業を軽減もしくはなくし、所要の寸法精度の構造物を製作することにある。
溶接変形を推定する手法は、溶接現象をそのままシミュレーションする熱弾塑性解析による方法と、固有ひずみ、固有変形、または固有応力などの概念を用いて弾性解析よって近似的に求める方法とに大別される。近年のコンピュータの計算能力の画期的な進歩によって、有限要素法を用いた熱弾塑性解析が可能になっている。しかし、溶接現象は、金属が溶融している高温域から室温まで冷却する間の現象であり、この溶融現象の解析は、溶接構造物の種々の物性値の温度依存性を考慮しなければならない非線形解析である。特に高温域では降伏曲面が非常に小さくなること、溶融すると塑性ひずみがキャンセルされてしまうことなどを考慮する必要があり、コンピュータの計算能力が向上したとはいえ、大型の構造物をそのまま解析することは実質上不可能といっても過言ではない。
したがって、固有ひずみの概念を用いた解析方法が、工業的に利用することができる唯一の溶接変形推定手法である。固有ひずみなどの概念は、溶接によって溶接部近傍に発生した塑性ひずみが、溶接変形を生じさせる原因である食違い、つまり、その部位を切り出したと仮定した場合に、周囲は元の状態を保った弾性状態であるが、塑性ひずみを生じた部位は、その周囲と隙間がある、あるいは重なってしまう形状をもつと考えるものである。固有ひずみ、固有変形、または固有応力は、それぞれ、その大きさは溶接線に沿って一様であるとして、溶接線に沿って一様なひずみ、つまり、固有ひずみがある、溶接線に沿って一様な変位、つまり、固有変位がある、あるいは一様な外力、つまり、固有応力が溶接線に働くと見なすもので、扱い方が異なるだけで3つの考え方は同じである。
固有ひずみの考え方は、まず、周辺自由の部材、つまり、拘束のない部材に対してビード溶接を行うことによって求めた溶接変形データに基づいて、突合せ溶接またはすみ肉溶接などの基本的な継手形式についての変形予測式あるいは固有ひずみデータを事前に蓄積しておく。次に、有限要素法による弾性解析を行う際に、実際の継手で該当する形式についての固有ひずみを、実際に適用する構造物である実構造の有限要素モデルに付与して、変形を推定するものである。したがって、基本的には、自由変形、つまり、拘束のない状態で溶接を行ったときの溶接変形を想定した解析である。
図11は、従来の固有ひずみを用いて溶接変形を推定する際の流れを示す図である。ステップS21では、溶接を行う構造物の構造である対象構造、部材の接合形式を示す継手形式、部材の材質、および部材の板厚が指定される。ステップS22では、溶接法と、溶接時に与える熱量を示す溶接入熱Qなどの溶接条件とが指定される。ステップS23では、実験で求めた固有ひずみの情報を記憶する固有歪データベースの情報に基づいて、ステップS21で指定された板厚hと溶接長Lと材質、およびステップS22で指定された溶接法と溶接入熱Qとによって決まる固有ひずみが求められる。この固有歪データベースには、固有ひずみを決めるパラメータと、そのパラメータによって求められる固有ひずみとの関係を示す情報が記憶されている。固有ひずみを決めるためのパラメータとしては、溶接入熱Q、板厚h、溶接長Lおよび材質が含まれる。
ステップS24では、ステップS23で求められた固有ひずみを溶接部に付与して、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた弾性解析を行う弾性有限要素解析
が行われる。このようにして、ステップS25では、溶接構造物の溶接変形が推定される。この場合の溶接変形は、自由変形、つまり、拘束のない状態での溶接による溶接変形である。
拘束治具を用いた場合をモデル化して図11に示した弾性有限要素解析を行った場合、近似的に拘束下のままでの変形を求めることができる。しかし、部材をさらに大きなブロックに組立てる場合、溶接した部材を拘束治具から解放する必要があり、治具から解放したときの変形量を推定できない。
固有ひずみおよび固有変形を用いて変形を推定する第1の従来技術として、溶接構造物を基本的な形状の溶接継手の集合体とし、それぞれの溶接継手について測定あるいは計算した固有ひずみおよび固有変形を、溶接する順序でその時点の構造物に与えることによって、溶接構造物全体の残留応力および変形を予測する残留応力と変形の予測法がある(たとえば、特許文献1参照)。
固有ひずみを用いて残留応力を推定する第2の従来技術として、熱による応力を解析する熱応力解析機能を有し、かつ有限要素法によって構造物に発生する応力を計算する汎用解析コードを用いる残留応力予測方法がある。この方法は、汎用解析コードの計算に必要なパラメータである温度データと温度データに関連する物性値を、節点に対応する位置の固有ひずみのデータで置き換えて解析することによって、残留応力分布を求めるものである(たとえば、特許文献2参照)。
溶接変形を推定する第3の従来技術として、まず、有限要素法を適用するために、CADデータに基づいて、構造物を構成する部材を要素と節点をもつメッシュに分割し、部材情報、溶接線情報、および溶接条件情報を作成するとともに、多点拘束を適用するために必要な節点を割り付ける。次に、溶接線が特定されると、溶接線に接している各要素および各節点での溶接による変形量を求める。求めた変形量、自重による荷重、および実測によるずれを矯正するための荷重である強制変位荷重に基づいて、荷重境界条件を設定し、設定された荷重境界条件で有限要素法による解析を実行して溶接変形を推定する溶接変形推定方法がある。溶接変形を推定するために必要な条件の手作業による入力作業を軽減し、強制変位荷重の影響を考慮した推定が可能になる(たとえば、特許文献3参照)。
溶接手順に従って解析する場合、溶接済みの部材を用いて組立てが行われるので、溶接を行う前の初期位置が変化すること、および剛性が変化することを考慮することができる大変形解析を行えば、上述した(1)溶接手順を変更して溶接によって生じる変形量を低減すること、(3)溶接前に溶接変形と逆方向の変位または歪を与えておいて溶接変形を相殺すること、および(4)溶接前に溶接変形を考慮して、部材の寸法または形状を変更することを可能にすることができる。上述した(2)部材の変形を拘束するための治具である拘束治具などを用いて変形を抑制することについては、拘束の影響を考慮することができる場合と、考慮することができない場合がある。たとえば、仮付け溶接などのように、構造物を構成する部材への事前溶接による拘束によって、溶接変形を抑制する場合は、溶接後もその状態が保持されるので、構造モデルを構築することができ、有限要素法による弾性解析で変形を推定することが可能である。
特開平6−180271号公報 特開2003−121273号公報 特開2003−80393号公報
しかしながら、大型の構造物を製作する場合、部材を拘束治具で押さえ込んで溶接した後、溶接した構造物を拘束治具から解放して、別の部材と溶接しさらに大きな構造物を製作する手順を採ることが一般的である。この場合、溶接後の構造物を拘束治具から解放すると、スプリングバックともいえるひずみを生じるが、従来の解析方法ではこれを評価できない。従来の解析方法の場合、解析のために部材に与える固有ひずみは、自由変形時の値であるため、拘束治具を用いないときの変形量となってしまい、拘束治具を用いた場合の変形量を評価できない。拘束治具を用いた場合の評価を行うためには、拘束治具による拘束下での固有ひずみを把握することが必要である。
すなわち、上述した従来技術は、自由変形、つまり、拘束のない状態で溶接を行ったときの溶接変形について推定することは可能であるが、推定を行う際に部材に与える条件である固有ひずみが自由変形時のものであるので、拘束下、つまり、治具などを用いて溶接継手を拘束した状態で溶接を行った後、拘束治具を解放したときの溶接変形について推定することができないという課題がある。
本発明の目的は、拘束下の溶接変形を推定することができる変形推定方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
本発明は、部材に付与する逆ひずみの量を変化させて、溶接を行う前の部材の形状から溶接を行った後の部材の形状への変形量を求める準備工程と、
前記準備工程で求められた変形量から、逆ひずみを付与したときに生じる固有ひずみを算出する算出工程と、
前記付与した逆ひずみと前記算出された固有ひずみとの関係を示す情報をデータベースに記憶する記憶工程と、
前記データベースに記憶された逆ひずみと固有ひずみとの関係を示す情報に基づいて、逆ひずみに対応する溶接部の固有ひずみを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された固有ひずみを用いて溶接による変形情報を生成する生成工程とを含むことを特徴とする変形推定方法である。
本発明に従えば、逆ひずみと固有ひずみとの関係を示す情報をデータベースに記憶しているので、推定対象である実構造についての逆ひずみを与えれば、データベースの情報から固有ひずみを特定でき、逆ひずみを付与した場合の溶接変形を推定することができる。
また本発明は、コンピュータに前記変形推定方法を実行させるためのプログラムである。
本発明に従えば、前記変形推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することができる。
また本発明は、逆ひずみを初期値として設定して有限要素法による弾性解析を行うことによって溶接による変形情報を生成する変形推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
部材に付与する逆ひずみ量を変化させて、溶接を行った後の部材の形状が逆ひずみを付与する前の形状になる逆ひずみ量を算出することを特徴とするプログラムである。
本発明に従えば、逆ひずみ量を変化させて、溶接後の形状が逆ひずみを付与する前の形状になる逆ひずみ量を算出するので、溶接時に、溶接後の形状が変形のない形状になる逆ひずみ量で部材を拘束することができる。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
本発明に従えば、前記変形推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読取り可能な記録媒体として提供することができる。
本発明によれば、変形を推定することによって、変形の制御および抑制が可能になり、ブロック組立て時に開先間隙および目違いをなくすことによる組立工数および溶接工数の最小化、つまり、各工程での変形矯正作業をなくすこと、および所要寸法精度の製品を提供することによる性能保証が可能になる。
溶接変形の種類を説明するための図である。 溶接による変形を抑制するために用いられる拘束治具を説明するための図である。 本発明の実施の一形態である曲げ拘束度を用いた変形推定方法によって溶接変形を推定する際の流れを示す図である。 固有ひずみを求めるための関係図の例を示した図である。 本発明による変形推定方法を適用するときの手順を模式的に表した図である。 逆ひずみ法を用いて溶接後の変形の防止を説明するための図である。 本発明による変形推定方法を適用する船舶ブロック単板工法を説明するための図である。 局部加熱による薄板パネルの溶接変形の矯正を説明するための図である。 ボイラヘッダの構造を示す図である。 逆ひずみ法による溶接変形推定方法を適用する例を説明するための図である。 従来の固有ひずみを用いて溶接変形を推定する際の流れを示す図である。
図1は、溶接変形の種類を説明するための図である。図1(a)は、横収縮を説明するための図であり、部材100aと100bとが、溶接線101で接合される突合せ継手の場合を示している。横収縮は、溶接線101に対して直角方向の収縮である。この場合、横収縮長は、それぞれの部材100a、100bともS/2ずつ縮んでいる。図1(b)は、縦収縮を説明するための図であり、この場合も部材100aと100bとが、溶接線101で接合されている。縦収縮は、溶接線101方向の収縮であり、縦収縮長は、両端でそれぞれΔL/2ずつ縮んでいる。図1(c)、(d)は、横曲がり変形(以下、横曲がり角変形ともいう)を説明するための図であり、横曲がり角変形は、板厚内の横収縮量の差によって生じる変形である。図1(c)は、部材100aと100bとの突合せ継手の場合の横曲がり角変形であり、図1(d)は、部材102と103とのすみ肉継手の場合の横曲がり角変形を示している。図1(c)および図1(d)に示したいずれの継手形式でも、横曲がり角変形の値は、θである。図1(e)は、縦曲がり変形を説明するための図であり、部材102と103とのすみ肉継手の場合の縦曲がり変形(以下、縦曲がり角変形ともいう)を示している。縦曲がり角変形は、溶接線が断面の中立軸と異なるために生じる曲がり変形である。
これらの溶接変形は、面内変形である横収縮と縦収縮、および面外変形である横曲がり角変形と縦曲がり角変形に大別され、これを分類すると表1のようになる。横収縮、縦収縮、縦収縮に起因する縦曲がり角変形は、大きな収縮力に起因するので、大型の構造物になると治具を用いて拘束しても変形を抑えることができない。横曲がり角変形は、溶接部が高温になったときの板厚方向の温度分布に起因して生じるので、変形を拘束するための拘束治具を用いることによって、変形を低減することが可能である。すなわち、横曲がり角変形に相当する固有ひずみのみが溶接する部材を拘束する拘束条件に依存するとして溶接変形を推定することができる。
Figure 2011101900
固有ひずみの種類には、縦収縮固有歪g、横収縮固有歪g、縦曲がり角変形固有歪θ、および横曲がり角変形固有歪θがあり、それぞれ、横収縮、縦収縮、横曲がり角変形、および縦曲がり角変形の固有ひずみである。これらの固有ひずみは、表1に示したそれぞれの関数で求まる。これらの関数については後述する。
図2は、溶接による変形を抑制するために用いられる拘束治具を説明するための図である。上述したように横曲がり角変形は、変形を拘束するための拘束治具を用いることによって、変形を低減することが可能であり、図2(a)〜(g)はそのための治具の例を示すものである。図2(a)〜(d)は、突合せ継手の場合に横曲がり角変形を抑制するために用いられる拘束治具であり、図2(a)は、部材110aと110bをストロングバック111、つまり、部材同士を機械的に仮接合する溶接治具111で拘束した状態を示している。
図2(b)は、薄板112aと112bとを溶接線113で接合したときの横曲がり角変形を拘束するための薄板用ストロングバック114を示しており、ストロングバック114は、薄板112aと112bにそれぞれ115aと115bのように仮付けされている。図2(c)は、厚板116aと116bとを溶接線117で接合したときの横曲がり角変形を拘束するための厚板用ストロングバック118と119とを示しており、これらのストロングバック118と119は、120と121のように仮付けされている。ストロングバック119は、ストロングバック118を補強するためのものである。図2(d)は、部材122aと122bとを溶接線123で接合したときの横曲がり角変形および縦曲がり角変形を拘束するために、部材の端部を拘束して角変形を防止する治具124を示すものである。
図2(e)、(f)は、すみ肉継手の場合に横曲がり角変形を抑制するために用いられる拘束治具であり、図2(e)は、部材130と131とをすみ肉溶接するときに用いられるストロングバック132を示している。図2(f)は、H鋼140a〜cを製作する際に変形を相互干渉させて拘束する治具142a、142bを示している。拘束治具141a、141bは、図2(e)と同じ種類の拘束治具である。
図2(g)は、ボイラヘッダの場合の拘束治具であり、2本の母管150と151にそれぞれ小径管152a〜152iと153a〜153iの熱交換用の多数の配管が溶接される場合に、拘束治具154a、154b、および155によって、変形を相互干渉させて拘束する治具の例である。
横曲がり角変形に対する拘束治具の影響を考慮できれば、拘束治具で変形を抑えたときの溶接であっても、溶接変形を推定することができる。溶接時に生じる拘束応力を推定するためのパラメータとして用いられている曲げ拘束度を、横曲がり角変形の拘束状態を表すパラメータとして用いる。この曲げ拘束度は、開先位置での開先角度を単位角度、たとえば1radianの変形を生じさせるのに要する曲げモーメントの大きさで定義される。溶接の場合に、横曲がり角変形を生じさせる力は、継手形式、溶接入熱Q、板厚h、溶接長L、および材質によって、関数形G’(Q、h、L、材質)としてほぼ一義的に決まる。したがって、拘束を解放したときの実際の横曲げ角変形は、曲げ拘束度Kを含めた関数形G(Q、h、K、L、材質)で記述することができる。
拘束下での固有ひずみは、実験的に求めることも可能であるし、詳細な熱弾塑性解析を繰り返すことによって算出することも可能である。拘束の影響は、第1次近似として、横曲がり角変形だけを考慮すれば、工業的に十分な精度で、溶接変形を推定することが可能である。
図3は、本発明の実施の一形態である曲げ拘束度を用いた変形推定方法によって溶接変形を推定する際の流れを示す図である。ステップS1では、溶接を行う部材の構造である対象構造、部材の接合形式を示す継手形式、および部材の板厚hが指定される。ステップS2では、板厚h、継手形式、および溶接を行う長さである溶接長Lが指定される。ステップS3では、溶接法、溶接時に与える熱量を示す溶接入熱Qなどの溶接条件、および溶接を行う部材の材質が指定される。
ステップS4では、実験で求めた固有ひずみの値を記憶する固有歪データベースに基づいて、ステップS2で指定された板厚hと継手形式と溶接長L、およびステップS3で指定された溶接法と溶接入熱Qと材質とによって決まる固有ひずみ、具体的には、縦収縮固有歪g、横収縮固有歪g、および縦曲がり角変形固有歪θが求められる。
ステップS5では、溶接する溶接構造物だけでなく、拘束治具についてもモデル化して、ステップS1で指定された対象構造、継手形式、および板厚に基づいて、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた弾性解析を行う弾性有限要素解析が行われる。このとき、ステップS6では、溶接線に一様に与えられた曲げモーメントMを、その曲げモーメントによって変形した角変形量θで除することによって、継手各部位の曲げ拘束度Kが算出される。
ステップS7では、実験で求めた拘束下での固有ひずみの値が上述した固有歪データベースに記憶されており、その固有歪データベースに記憶された情報に基づいて、ステップS2で指定された板厚hと継手形式と溶接長L、ステップS3で指定された溶接法と溶接入熱Qと材質、およびステップS6で算出された曲げ拘束度Kによって決まる、拘束下での固有ひずみ、具体的には、横曲がり角変形固有歪θが求められる。
ステップS8では、拘束治具を解放した状態をモデル化して弾性有限要素解析または解析手法を用いた解析を行う。このとき、ステップS9では、ステップS4で求められた縦収縮固有歪g、横収縮固有歪g、縦曲がり角変形固有歪θ、およびステップS7で求められた横曲がり角変形固有歪θに基づいて、溶接変形解析を行う。つまり、溶接部に固有ひずみを外力として与えて、溶接構造物の変形量を求める。このようにして、ステップS10では、拘束の影響を考慮した溶接構造物の溶接変形を推定することができる。
上述した固有歪データベースは、固有ひずみを決めるためのパラメータと、そのパラメータによって固有ひずみを求めるための数式と関係図とを含んで記憶している。固有ひずみを決めるためのパラメータとしては、溶接条件である溶接電流A、溶接電圧V,溶接速度mm/sから算出される溶接入熱Q、単位がmmである板厚h、溶接法、継手形式、材質および単位がmmである溶接長Lが含まれる。横曲がり角変形を予測するための拘束下での固有歪データベースは、さらに曲げ拘束度Kを含む。
電気エネルギーから溶接部に与えられる熱エネルギーへの変換効率ηは、溶接法によって異なる。固有ひずみは、溶接部の熱履歴によって異なるが、たとえば、突合せ継手は2方向、Tすみ肉継手は3方向に熱伝導するので、継手形式によって冷却速度が異なり、したがって継手形式によって固有ひずみが異なる。溶接入熱Q、溶接法、および継手形式から、実行入熱量Qnetが求まり、この実行入熱量Qnetと板厚hから、熱履歴が求まる。
線膨張係数、弾性係数、および熱伝導度は、材質によって決まり、線膨張係数が大きいほど変形量が大きく、弾性係数および熱伝導度も変形量に影響する。たとえばアルミニウム合金またはステンレス鋼は、軟鋼の2倍近い変形を生じる。変形量は、溶接長Lが短い範囲では、溶接長Lに応じて変形量が漸増し、溶接長Lが数百mmより長くなると、変形量は一定値になる。横曲がり角変形は、拘束、特に曲げ拘束の影響を大きく受ける。
縦収縮固有歪gは、関数F(Qnet、h、L:材質)によって決まるが、材質毎にQnetと、g*hとの関係を示す数式と関係図を用い、溶接長Lに応じて補正することによって求める。横収縮固有歪gは、関数F(Qnet、h、L:材質)によって決まるが、材質毎にQnet/hとgとの関係を示す数式と関係図を用い、溶接長Lに応じて補正することによって求める。縦曲がり角変形固有歪θは、関数F(Qnet、h、L:材質)によって決まるが、材質毎にQnetと、θ*hとの関係を示す数式と関係図を用い、溶接長Lに応じて補正することによって求める。横曲がり角変形固有歪θは、関数G(Qnet、h、K、L:材質)によって決まるが、材質毎にQnet/hと、θ、Kの関係を示す数式と関係図を用い、溶接長Lに応じて補正することによって求める。
図4は、固有ひずみを求めるための関係図の例を示した図である。図4(a)は、縦収縮に関係する図であり、図4(b)、(c)は、横収縮に関係する図であり、図4(d)、(e)は、横曲がり角変形に関係する図である。
図4(a)は、溶接入熱Qnetと、縦収縮を拘束したときに生じる拘束力であるTendon Forceとの関係を示す図の一例である。縦収縮は、溶接線方向の固有歪、つまり、縦収縮固有歪gによって生じるので、固有ひずみを応力に変換したTendon Forceを使用して取り扱う。縦軸がTendon Force F(N)、横軸が溶接入熱Qnet(J/mm)であり、Tendon Force Fは、溶接入熱Qnetにほぼ比例していることが分かる。
図4(b)は、溶接入熱Qnetと横収縮Sとの関係を示す図の一例である。縦軸が横収縮Sを板厚hで除した値、横軸が溶接入熱Qnetを板厚hの二乗で除した値(J/mm)であり、S/hは、Qnet/hにほぼ比例していることが分かる。図4(c)は、溶接長Lと横収縮Sとの関係を示す図の一例である。縦軸が溶接長Lを無限大としたときの横収縮Sで横収縮Sを除した値、横軸が溶接長L(mm)であり、横収縮の比S/Sは、溶接長Lが短い範囲では、溶接長Lに応じて変形量が増加し、溶接長Lが数百mmより長くなると、変形量はほぼ一定値になる。
図4(d)は、溶接入熱Qnetと横曲がり角変形θとの関係を示す図の一例である。縦軸が横曲がり角変形θ(radian)、横軸が溶接入熱Qnetを板厚hの二乗で除した値(J/mm)であり、Qnet/hが10J/mm付近で最大の値0.012radianを示している。図4(e)は、溶接長Lと横曲がり角変形θとの関係を示す図の一例である。縦軸が溶接長Lを無限大としたときの横曲がり角変形θで横曲がり角変形θを除した値、横軸が溶接長L(mm)であり、角変形の比θ/θは、溶接長Lが短い範囲では、溶接長Lに応じて変形量が増加し、溶接長Lが数百mmより長くなると、変形量はほぼ一定値になる。
図5は、本発明による変形推定方法を適用するときの手順を模式的に表した図である。実構造20は、すみ肉継手で溶接を行う部材21の四隅を拘束治具23a〜23dによって局部拘束して、溶接線22に沿って溶接する場合を示している。上側の図は、部材21に対して上方から見た図であり、下側の図は、部材21に対して横方向から見た図である。曲げ拘束度算定解析30では、実構造20での状態で一様なモーメントを負荷したときについて、開先角度を単位角度、たとえば、1radian曲げるのに必要な曲げモーメントを解析して溶接線22の各位置について算出する。参照符40では、この曲げモーメントから実構造における溶接線各部位での曲げ拘束度Kを求める。
小型試験板による溶接実験50では、小型試験板51を用いて溶接実験を行い、拘束下の固有ひずみを求める。この場合、小型試験板51は、拘束治具53aと53bによって一様に曲げ拘束を行った状態で、溶接棒54を用いて溶接線52に沿って溶接し、溶接入熱量Q、部材板厚h、曲げ拘束度Kをパラメータにして、拘束を解放したときの横曲がり角変形量θを測定する。曲げ拘束度Kの値は、部材の幅Wを変化することによって変えることができ、部材の幅Wを小さくすると曲げ拘束度Kは大きくなる。
拘束下固有ひずみデータベース60は、小型試験板による溶接実験50で測定された測定結果をグラフとして記憶する。このグラフは、溶接入熱量Qと横曲がり角変形量θの関係を、曲げ拘束度Kをパラメータとして表したグラフである。横曲がり角変形量θは、溶接入熱量Qの値によって最大値を有し、さらに曲げ拘束度Kを大きくすると小さくなる。
参照符70では、実構造20における溶接入熱量Q、板厚h、および曲げ拘束度Kを決めれば、拘束下固有ひずみデータベース60に記憶されたグラフから角変形量、つまり、固有ひずみが求められ、この固有ひずみを実構造20の拘束を解放したモデルの溶接線に付与して、溶接変形解析を行うことによって溶接構造物の変形量を推定する。
上述した実施の形態では、曲げ拘束度を用いた変形推定方法について説明したが、溶接を行う板または管に逆ひずみを与えた場合、つまり、溶接を行う側の表面に引張り応力が作用する場合にも適用することができる。逆ひずみの場合は、拘束がないので、溶接後の変形量を計算で求めることができる。この場合、逆ひずみ量を変化させて、溶接後の形状が変形のない形状、つまり、逆ひずみを付与しない形状になる逆ひずみ量を算出することができる。
図6は、逆ひずみ法を用いて溶接後の変形の防止を説明するための図である。図6(a)は、突合せ継手の場合を示しており、溶接後に溶接構造物が平坦になる横曲がり角変形量を推定し、部材80aと80bを推定した変形量に応じた角度に設定して、つまり、逆ひずみを与えて、溶接を行う。溶接後、部材80aと80bとは、溶接部81の左右で平行に接合されている。図6(b)は、すみ肉継手の場合を示しており、図6(a)と同様に、溶接後に下側の部材82aが平坦になる横曲がり角変形量を推定し、部材82aを推定した変形量に応じた角度に変形して、つまり、逆ひずみを与えて、溶接を行う。部材82bを溶接して接合した後、部材82aの変形がなくなっている。
逆ひずみを与えた場合の溶接による変形量を予測するために、小型試験板を用いて溶接実験を行い、逆ひずみを与えた場合の固有ひずみを求めて、データベース化しておくことによって、溶接変形を制御または抑制する対策を講じた場合の効果を考慮した推定が可能になる。拘束下の溶接変形を推定する場合は、曲げ拘束度Kをパラメータとして用いたが、逆ひずみの場合は、曲げ縁応力σを用いることによって実現することができる。この場合、溶接変形を推定する際の流れは、ステップS7を除いて図3に示した流れと同じである。逆ひずみを与えた場合については、ステップS7で、関数としてG”(Qnet、h、σ、L:材質)を用いる。
上述したいずれの変形推定方法も、それぞれの変形推定方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現可能である。コンピュータは、種々の制御を行う図示していないCPU(Central Processing Unit)と、CPUで処理が行われるために用いられる図示していないメモリ、たとえば、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random
Access Memory)を含んで構成され、変形推定方法をコンピュータに実行させるプログラムは、このメモリに格納される。
変形推定方法をコンピュータに実行させるプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に格納されておればよく、上述した実施の形態では、記録媒体として、メモリを用いたが、外部記憶装置としてプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能となるような記録媒体であってもよい。記録媒体に格納されているプログラムは、CPUがアクセスして実行可能な構成であればよい。あるいは、プログラムを読出し、読出したプログラムを図示されていないプログラム記録エリアにダウンロードして、プログラムを実行する構成であればよい。このダウンロード用のプログラムは、予めROMに格納しておく。
記録媒体がコンピュータと分離可能に構成される場合、記録媒体は、磁気テープ/カセットテープなどのテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクまたはCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)/MO(Magneto Optical Disk)/MD(Mini Disk)/DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクのディスク系、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどによる半導体メモリを含め、固定的にプログラムを保持する記録媒体であればよい。
溶接変形は、製品の外観および見栄えに影響するばかりでなく、製品を製作する組立工数および溶接工数にも影響し、さらに製品の機能および性能にも影響を及ぼすため、変形を制御および抑制することは、工業的に重要な課題である。溶接変形を推定する目的は、変形を制御および抑制することによって、たとえば、ブロック組立て時に開先間隙および目違いをなくして、つまり、各工程での変形矯正作業をなくして、組立工数および溶接工数を最小化すること、および所要寸法精度の製品を提供することによる性能保証にある。
従来の固有ひずみ等を用いた簡易解析方法は、大型構造物の大まかな変形量の予測を行うことができ、目的によっては有効であるが、溶接変形を抑制するためのシミュレーションには不十分である。溶接変形を抑制するには、溶接入熱、つまり、溶接時に与える熱量の最適化、たとえば、溶接入熱の最小化、および板厚の変更が有効であり、これらについては、従来の解析方法でも検討可能である。しかし、板厚を増加することは、製品の重量が増加しさらに材料コストおよび製造コストも増加するので、適用は難しい。溶接入熱を制御することは、生産性、製造コスト、および設備の制約などから、入熱量を変更することができる範囲が限られており、実用的ではない。継手形式の変更の検討のみが、従来の解析方法で検討可能な方法である。
実用的な変形制御の手法は、(1)組立および溶接手順の変更、(2)拘束治具による変形制御、(3)逆ひずみ法の適用、(4)部材寸法および形状の変更、たとえば、伸ばし、R変更などである。本発明による変形推定方法は、溶接変形抑制効果が大きい(2)および(3)について、その効果を発揮するものである。
本発明による変形推定方法は、以下に示すような事例に適用することができる。第1の適用事例は、拘束治具を用いて船舶に用いる単板を専用ラインで製作し、つぎに数枚の単板を組立てて小ブロックを製作し、さらに小ブロックを組立てて立体ブロックを製作する場合である。
図7は、本発明による変形推定方法を適用する船舶ブロック単板工法を説明するための図である。この船舶ブロック単板工法は、第1工程で皮板90を切断装置91によって切断し、第2工程で組立装置94によって皮板90とロンジ材92から単板93を組立て、第3工程で溶接装置95によってロンジ材92を溶接する。第1〜3工程の専用ラインでは、標準寸法の単板93を連続して製作する。このとき、専用治具を用いて単板93の横曲がり角変形を拘束する。第4工程で溶接装置96によって複数枚の単板93a〜94dを溶接接合して小ブロック98を製作し、第5工程で小ブロック98にトランス材97を差し込み、第6工程で溶接装置99によってトランス材97を溶接する。
たとえば、長さ10m幅2mのスキン材、つまり、皮板90に3本のロンジ材92によるすみ肉溶接を行って単板93を製作し、その3枚の単板93を用いて長さ10m幅6mの小ブロックを製作するときに、単板93を載せる加工台である定磐に逆ひずみを付与しておいて溶接を行うことによって溶接変形を低減することができる。寸法精度の良好な小ブロックを製作することができれば、立体ブロックを組立てる際に、組立ギャップと目違いが小さくなり、組立工数を少なくかつ溶接自動化が容易になる。単板の溶接変形の推定および逆ひずみを付与して製作した小ブロックの溶接変形推定には、拘束下での溶接変形を考慮することができる本発明に係る変形推定方法によるシミュレーションが必須である。
第2の適用事例として、鉄道車両構体、あるいは船舶の客室および居室部などの上部構造を製作する場合がある。鉄道車両構体は、アルミニウムまたはステンレスの薄板構造、たとえば、板厚が1.5〜3mmの薄板構造である。この鉄道車両構体については、車両限界寸法に収めることのみならず、性能には直接関係がないが、乗客から凹凸のない綺麗な見栄えが要求される。船舶の上部構造も薄板構造、たとえば、板厚が4.5〜6mmの薄板構造であり、車両構体と同様の課題がある。具体的には、薄板構造では、骨材との接合部に馬の背状の外板の変形が発生するので、溶接入熱の低減、断続溶接化、あるいはスポット溶接化によって変形を低減している。
図8は、局部加熱による薄板パネルの溶接変形の矯正を説明するための図である。図8(a)は、薄板パネル200を溶接線203で骨材201と202に溶接したことによって、薄板パネル200がたわんだときに、点焼きで矯正、つまり、バーナ205で加熱点204を過熱して矯正を行うところを示している。図8(b)は、たわみδとたわみδがともに同じ方向にたわんだとき、背焼きによってたわみを矯正するときの、背焼きの位置と加熱順序を示したものである。δがδより大きいとき、たわみの大きい方から付された番号の順序で背焼きが行われる。図8(c)は、隣り合うたわみが逆方向のとき、松葉焼きと背焼きとによってたわみを矯正するときの、位置と加熱順序を示したものである。
たわみを減少させるために、溶接入熱の低減、断続溶接化、またはスポット溶接化などが行われているが、変形を許容レベル以下に低減させることが困難であり、溶接後のひずみ取り作業が不可欠の状況である。ひずみ取り作業を無くすには、拘束治具を用いて横曲がり角変形を抑制することが有効であり、これを考慮することができる本発明に係る変形推定方法によるシミュレーションが必須である。
第3の適用事例として、鉄道車両の台車を製作する場合がある。鉄道車両台車は、疲労強度が要求される重要構造であり、厳しい寸法精度が要求される。この台車は、板の溶接組立構造あるいはパイプ構造であり、溶接組立の各段階で線上加熱および焼き曲げなどによって、形状の矯正を行っている。しかしながら、船殻ブロックに比べて厚板構造であるため、変形を拘束するためには大きな荷重を要し、変形を拘束するため拘束治具の設計が大きな課題となる。本発明による変形推定方法を用いれば、拘束下での溶接変形シミュレーションによって、許容寸法精度内となる曲げ拘束度が明らかとなり、この曲げ拘束度に応じて拘束治具の容量、たとえば、油圧ジャッキの能力あるいは拘束治具の剛性を決定することができる。
第4の適用事例として、ボイラ管などの溶接の場合がある。ボイラ管寄せ構造では、比較的太径の母管に小径の熱交換用の多数の配管が溶接される。ボイラの構造上、母管は端部に位置するため、小径管は母管の一定の方向にかつ一定の範囲内に多数溶接によって取り付けられる。そのため、母管は、変形して反りかえることとなる。
図9は、ボイラヘッダの構造を示す図である。母管210に複数の小径管211がほぼ同一方向にかつ短い間隔で溶接によって接合されている。このような場合、母管210が溶接した側に曲がる変形が生じる。母管210に変形が生じると、たとえば、狭隘なボイラ内に設置できなくなるため、ひずみ矯正が必須となる。これを低減させる工法として、図2(g)に示した拘束治具を用いて、2本の母管を背中合わせにして拘束下で溶接することによって、変形をお互いに拘束することが可能である。この工法も一種の逆ひずみ法、あるいは、荷重負荷法であり、本発明による変形推定方法を用いて、変形量を推定することが可能になる。
図10は、逆ひずみ法による溶接変形推定方法を適用する例を説明するための図である。第5の適用事例として、管に溶接する場合に逆ひずみ法を適用する事例を示したものである。管220を溶接線221に沿って溶接すると、管220は変形する。この変形を拘束するために、2つの油圧ジャッキ222a、222bによって管220を押し上げている。この場合にも、本発明による逆ひずみを付与する変形推定方法を用いて変形量を推定することによって、油圧ジャッキによってどれぐらいの拘束を付与する必要があるかを算出することが可能になる。
本発明は、以下の実施形態が可能である。
(1)部材を拘束する拘束条件を変化させて、熱加工を行う前の部材の形状から熱加工を行った後に拘束条件をなくしたときの部材の形状への変化量を求める準備工程と、
前記準備工程で求められた変化量から、熱加工部の固有ひずみを算出する算出工程と、
拘束条件に対応する熱加工部の固有ひずみを前記算出工程で算出された固有ひずみから抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された固有ひずみを用いて熱加工による変形情報を生成する生成工程とを含むことを特徴とする変形推定方法。
部材を拘束する拘束条件を変化させて熱加工したときの熱加工部の固有ひずみを算出しているので、拘束条件が与えられれば、その拘束条件での固有ひずみを特定でき、拘束下の変形を推定することができる。
(2)部材に付与する拘束の度合いを示す曲げ拘束度を変化させて、溶接を行う前の部材の形状から溶接を行った後に拘束を解放したときの部材の形状への変形量を求める準備工程と、
前記準備工程で求められた変形量から、溶接部の固有ひずみを算出する算出工程と、
前記付与された曲げ拘束度と前記算出された固有ひずみとの関係を示す情報をデータベースに記憶する記憶工程と、
前記データベースに記憶された曲げ拘束度と固有ひずみとの関係を示す情報に基づいて、曲げ拘束度に対応する溶接部の固有ひずみを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された固有ひずみを用いて溶接による変形情報を生成する生成工程とを含むことを特徴とする変形推定方法。
曲げ拘束度と固有ひずみとの関係を示す情報をデータベースに記憶しているので、推定対象である実構造についての曲げ拘束度を与えればデータベースの情報から固有ひずみを特定でき、拘束下の溶接変形を推定することができる。
(3)横曲がり変形を生じさせる方向に一様に曲げモーメントを負荷したときの溶接部の各位置における横曲がり変形量から、それぞれの位置についての曲げ拘束度を算出する曲げ拘束度算出工程を含み、
前記抽出工程は、前記データベースに記憶した曲げ拘束度と固有ひずみとの関係を示す情報に基づいて、前記曲げ拘束度算出工程で算出した曲げ拘束度に対応する溶接部の固有ひずみを抽出し、
前記生成工程は、前記抽出工程で抽出された固有ひずみを溶接部の各位置に付与して有限要素法による弾性解析を行うことによって、拘束を解放したときの溶接による変形情報を生成することを特徴とする変形推定方法。
曲げ拘束度を算出することによってデータベースに記憶した曲げ拘束度と固有ひずみとの関係に基づいて、算出した曲げ拘束度に対応する固有ひずみを求めることができるので、求めた固有ひずみを用いて弾性解析を行って、拘束下の溶接変形を推定することができる。
21,80,82 部材
22,52 溶接線
23,53 拘束治具
51 小型試験版
54 溶接棒
81,83 溶接部
90 皮板
91 切断装置
92 ロンジ材
93 単板
94 組立装置
95,96,99 溶接装置
97 トランス材
98 小ブロック
100,102,103,110,122,130,131 部材
101,113,117,123 溶接線
111,114,118,119,132 ストロングバック
112 薄板
116 厚板
124,141,142,154,155 拘束治具
150,151 母管
152,153 小径管
200 薄板パネル
201,202 骨材
203,221 溶接線
204 加熱点
205 バーナ
206 水ホース
210 母管
211 小径管
212 端板
220 管
222 油圧ジャッキ

Claims (4)

  1. 部材に付与する逆ひずみの量を変化させて、溶接を行う前の部材の形状から溶接を行った後の部材の形状への変形量を求める準備工程と、
    前記準備工程で求められた変形量から、逆ひずみを付与したときに生じる固有ひずみを算出する算出工程と、
    前記付与した逆ひずみと前記算出された固有ひずみとの関係を示す情報をデータベースに記憶する記憶工程と、
    前記データベースに記憶された逆ひずみと固有ひずみとの関係を示す情報に基づいて、逆ひずみに対応する溶接部の固有ひずみを抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で抽出された固有ひずみを用いて溶接による変形情報を生成する生成工程とを含むことを特徴とする変形推定方法。
  2. コンピュータに請求項1に記載の変形推定方法を実行させるためのプログラム。
  3. 逆ひずみを初期値として設定して有限要素法による弾性解析を行うことによって溶接による変形情報を生成する変形推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
    部材に付与する逆ひずみ量を変化させて、溶接を行った後の部材の形状が逆ひずみを付与する前の形状になる逆ひずみ量を算出することを特徴とするプログラム。
  4. 請求項2または3に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
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