JP2004122221A - 冷却路を有する部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工作精度が高く、使用環境の汚染を生じない高品質な冷却路を有する部品を、高い製造歩留りおよび低い製造コストで製造することが可能な冷却路を有する部品の製造方法を提供する。
【解決手段】冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と中実材とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記中実材とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と中実材とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記中実材とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却路を有する部品の製造方法に係り、特にビーム加速器に使用される加速器電極板や半導体用ヒートシンク板等の冷却路を有する部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビーム加速器に用いられる加速器電極板は、例えば、銅製の板にビーム孔部が穿設されて形成され、この加速器電極板に電位を付与することにより、ビーム孔部を通過する荷電粒子を加速するように構成される。
【0003】
この加速器電極板を使用する際、熱の発生により加速器電極板の温度が上昇する。そのため、加速器電極板には、種々の冷却手段が設けられて温度を一定に保持するように構成される。こうした冷却手段の種類としては、例えば、加速器電極板に冷却媒体を流通する冷却パイプを一体に接合するもの、あるいは、加速器電極板の内部に溝状の冷却路を設けて冷却媒体を流通させるもの等がある。
【0004】
一方、半導体用ヒートシンク板の場合も、加速器電極板と同様に冷却手段を必要とするため、冷却路を有する部品が採用される。また、加速器電極板、半導体用ヒートシンク以外にも、例えば、ジュール熱の発生により過熱される機械部品等は、部品本体に冷却手段を一体に設ける構成としたものが多い。
【0005】
一方、金属材料の接合手段として、近年、摩擦撹拌接合方法が一般的に採用されつつある。摩擦撹拌接合方法とは、金属部材と金属部材との接合線上に、回転させた摩擦撹拌工具を圧入して摩擦撹拌工具の先端部を陥入させ、金属部材同士を一体に接合する接合方法である。この摩擦撹拌接合方法は、溶接による金属部材の接合のように金属部材を溶解させないので、入熱による金属部材の変形等の不都合が生じない。また、ろう付けによる金属部材の接合のようにろう材を必要としないため、低コストで確実な金属部材の接合方法として応用が期待されている。
【0006】
例えば、特開2001−321969号公報(特許文献1参照)には、銅製のコの字状断面を有する部材同士を、開口部を互いに向き合わせて固定し、開口部の縦方向長さと略同一長さの保持材を挿入し、接合線を摩擦撹拌工具を備えた接合機により接合して、接合後、保持材を取り除いて矩形状の部材を得る銅チューブの製造方法が開示されている。
【0007】
また、特開2000−263251号公報(特許文献2参照)および特開2000−202654号公報(特許文献3参照)には、金属部材同士の突合せ部分を摩擦回転工具により接合し、金属構造物を製造する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−321969号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−263251号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−202654号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2001−313357号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図6に従来の冷却路を有する部品60の模式的な断面図を示す。冷却路を有する部品60は、ビーム孔部61を穿設した板材62に、冷却路63をろう材64によりろう付けして一体に接合した加速器電極板である。
【0013】
しかしながら、この冷却路を有する部品60において、冷却路63をろう付けする際に、冷却路63の接合部の周囲にもろう材が濡れ広がるため、ビーム孔部61内にろう材64が付着することがある。このビーム孔部61内に付着したろう材64が、加速器電極板を使用する際に真空中で蒸発し、使用環境を汚染することがあった。
【0014】
また、冷却路を有する部品の製造方法として、電子ビーム溶接による接合方法も従来から採用されている。しかしながら、電子ビーム溶接方法は、金属部材を接合する際に電子ビームにより金属部材が溶融する部分の幅(接合幅)が狭く、そのため、溶接作業中に電子ビーム溶接工具が接合線から逸脱する(目外れ)ことがあった。この場合、目外れした部分については、金属部材同士が未接合となるため、接合不良の原因となることがあった。さらに、電子ビーム溶接方法は、真空中で施工するので、部品および溶接装置を封入するための気密容器が必要である。そのため設備コストが高く、また設備の設置スペースの制約が大きいため、大型の部品の製造に適さないという欠点があった。
【0015】
上述のような不具合を解消するため、例えば、特開2001−313357号公報(特許文献4参照)には、ヒートシンク板の製作方法が開示されている。すなわちこの製作方法は、予め溝部を設けた板材に金属板を被覆するように設置し、回転工具により摩擦撹拌接合して冷却路を作製するものである。
【0016】
しかしながら、同公報に記載の冷却路を有する部品の製造方法によれば、板状部材に溝部を設ける工程が必要であり、また、板状部材と被覆材との接合部の構造が単純でなく、接合面積が広いため、接合不良部を生じ易い等の不都合があった。
【0017】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、工作精度が高く、使用環境の汚染を生じない高品質な冷却路を有する部品を、高い製造歩留りおよび低い製造コストで製造することが可能な冷却路を有する部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項1に記載したように、冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と中実材とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記中実材とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0019】
また、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項3に記載したように、冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と、天板および底板のうち少なくとも一方とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記天板または前記底板とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0020】
さらに、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項5に記載したように、対向する一対の側壁材で形成される側壁部と天板および底板とから冷却媒体を流通する空間部を形成し、前記側壁部と前記天板との接触面および前記側壁部と前記底板との接触面を摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0021】
さらに、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項7に記載したように、金属部材を摩擦撹拌接合方法により接合する冷却路を有する部品の製造方法において、摩擦撹拌工具による金属部材の接合開始端および接合終了端に残存する凹部に開口部を穿設することを特徴とする製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の実施の形態について、添付図を参照して以下に詳細に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品10の作製方法を示す説明図である。この冷却路を有する部品10は、中実材としての矩形材1と素形材としての矩形パイプ2とを交互に組み合わせて、摩擦撹拌接合方法により接合したものである。
【0024】
矩形材1は、無垢の金属材料で構成された部材である。一方、矩形パイプ2は、押出成形方法等の成形方法により成形された金属製のパイプであり、この矩形パイプの空間部3が、冷却媒体の流路(冷却路)として使用される。矩形材1および矩形パイプ2の材料としては、熱伝導性に優れた純銅製のものが好適に用いられる。
【0025】
一方、被接合部材(矩形材1および矩形パイプ2)の天面側に配置される第1の摩擦撹拌工具(摩擦撹拌工具4)は、矩形材1および矩形パイプ2より高い硬度を有する金属材料で構成された略円柱状の部材であり、回転機器に取付けられて円柱の中心軸回りに回転される。摩擦撹拌工具4の先端部には、矩形材1と矩形パイプ2との接合線に陥入させて撹拌し、両者を一体に接合するための先端凸部4Aが設けられる。なお図1において被接合部材の表面に表示された矢印は、摩擦撹拌工具4による接合経路を示している。
【0026】
また、被接合部材の底面側には、第2の摩擦撹拌工具(摩擦撹拌工具5)が配置される。摩擦撹拌工具5は摩擦撹拌工具4と同一の構成を有する部材であり、摩擦撹拌工具5の先端には先端凸部5Aが設けられる。
【0027】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず矩形材1と矩形パイプ2とを交互に配置し、図示しない固定具を用いて矩形材1と矩形パイプ2の側面同士を密着させて固定する。この際、矩形材1と矩形パイプ2とは、特に大きなプレス力で密着させる必要はなく、矩形材1と矩形パイプ2とが位置決めされて、接合作業中にずれを生じない程度に固定されれば良い。
【0028】
次に、被接合部材(矩形材1および矩形パイプ2)を図示しない接合台に設置し、矩形材1と矩形パイプ2との接合線上の接合開始端に、回転させた摩擦撹拌工具4を適当な加圧力により圧入し、接合線に沿って、図1の被接合部材表面に矢印で示すように移動させる。あるいは、製造する部品の大きさにより、摩擦撹拌工具4を固定して被接合部材を移動させて接合する方法としても良い。
【0029】
この冷却路を有する部品の製造方法においては、被接合部材の天面側および底面側の両面から2本の摩擦撹拌工具4および摩擦撹拌工具5を同時に圧入して矩形材1と矩形パイプ2とを接合する。すなわち、矩形材1と矩形パイプ2との接合線の天面側を第1の摩擦撹拌工具4で接合する一方、接合線の底面側を第2の摩擦撹拌工具5で接合する。
【0030】
摩擦回転工具4の先端凸部4Aおよび摩擦撹拌工具5の先端凸部5Aの長さは、被接合部材である矩形材1および矩形パイプ2の厚さの略半分に設けられており、摩擦回転工具4および摩擦回転工具5を表裏から同時に圧入することにより、被接合部材(矩形材1、矩形パイプ2)の全厚に渡って接合することが可能である。あるいは、摩擦撹拌工具4のみを使用して、被接合部材の天面側を接合した後、被接合部材を裏返して底面側を接合する接合方法としてもよいし、摩擦撹拌工具4の先端凸部4Aの長さを被接合部材の厚さと略同一として天面側もしくは底面側から摩擦撹拌工具4を圧入して接合しても良い。
【0031】
冷却路を有する部品10を加速器電極板として使用する場合は、図1のように矩形材1を表裏に貫通するビーム孔部6を穿設する。このビーム孔部6は、矩形材1と矩形パイプ2とを接合する前に予め矩形材1に設けても良いし、あるいは、矩形材1と矩形パイプ2とを接合した後に行うことも可能である。また、矩形材1と矩形パイプ2との接合後にビーム孔部6を設ける場合は、ビーム孔部6が矩形パイプ2の空間部3と連通することがなく、さらに部品に強度上の問題を生じないならば、接合線上にビーム孔部6を穿設してもよい。
【0032】
なお、図1に示す冷却路を有する部品10は、矩形材1と矩形パイプ2とを交互に接合する構成としたが、矩形材1と矩形パイプ2とは任意に組合せて良く、冷却路を有する部品に必要とされる冷却性能により構成を変化させることも可能である。例えば、冷却性能を向上するために、1本の矩形材1に対して矩形パイプ2を2本並列に接合する構成としても良い。また半導体用ヒートシンク等の部品を製造する場合は、矩形パイプ2のみを連続的に接合して冷却路を有する部品10を構成することも可能である。
【0033】
上記に説明したように、第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法によれば、矩形材1と矩形パイプ2とを一体に接合して冷却路を有する部品10を構成するので、従来の冷却路を有する部品を製造する際に必要であった溝加工の必要がない。そのため製造工程が簡略化されるので、製造コストが低減される。また、溶接方法により金属部材を接合して冷却路を有する部品を製造する場合と比較して、入熱による金属部材の変形が防止されるため、より工作精度が高い冷却路を有する部品の製造が可能である。
【0034】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、矩形材1と矩形パイプ2とを構成材料とするので、従来の冷却路を有する部品のように板状部材に溝部を設け、被覆材により被覆する方法に比較して設計の自由度が高く、接合部の構造が単純である。従って、未接合部等の施工不良の発生率が極めて低く、冷却路を有する部品の製造歩留りが向上する。
【0035】
さらに、この冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌接合方法により金属部材を接合するので、摩擦撹拌工具により矩形材1と矩形パイプ2とを撹拌して一体に接合する部分の幅(接合幅)を、電子ビーム溶接方法において溶接工具により金属部材を溶融して接合する接合幅に比較して広く施工することが可能である。そのため、電子ビーム溶接による金属部材の接合と比較して、接合線からの目外れが起きにくく、接合不良が効果的に防止されるため、冷却路を有する部品の製造歩留りが大幅に向上する。
【0036】
また、摩擦撹拌接合方法は、大気雰囲気下で施工することが可能であるため、電子ビーム溶接方法に比較して、設備コストおよび製造コストが少なく済み、従来の冷却路を有する部品の製造方法に比較して製造コストを大幅に削減することが可能である。また、製造設備を設置する上での制約が少なく、大型の部品の製造にも適している。
【0037】
また、接合材料としてろう材を使用しないので、冷却路を有する部品の構成材料に蒸発成分が含まれない。そのため、加速器電極板のように真空中で使用しても、蒸発成分の飛散による使用環境を汚染することがない。従って、より信頼性の高い冷却路を有する部品を提供することが可能である。
【0038】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第2の実施形態について図2を参照して説明する。
【0039】
図2は、第2の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品20を製造する方法を示す説明図である。この冷却路を有する部品20は、矩形パイプ21の対向する天面および底面に天板22と底板23をそれぞれ配置して、摩擦撹拌接合方法により一体に接合したものである。
【0040】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず、矩形パイプ21を天板22および底板23で挟まれる空間内に任意に配置して固定具で固定する。次に天板22の表面側から摩擦撹拌工具4を圧入し、摩擦回転工具4の先端凸部4Aが天板22の全厚を貫通して天板22と矩形パイプ21との接触面に到達し、さらに矩形パイプ21の一部に達するまで挿入し、矩形パイプ21の長手方向に沿って(図2の天板22上に矢印で示す接合経路で)摩擦撹拌接合を行う。なお、摩擦撹拌工具4を固定して被接合部材(矩形パイプ21、天板22および底板23の集合体)を移動させてもよい。
【0041】
一方、底板23の表面側からは、摩擦撹拌工具5を圧入して、摩擦回転工具5の先端凸部5Aが底板23の全厚を貫通して底板23と矩形パイプ21との接触面に到達し、さらに矩形パイプ21の一部に達するまで挿入し、矩形パイプ21の長手方向に沿って摩擦撹拌接合を行う。
【0042】
冷却路を有する部品20を加速器電極板として使用する場合には、天板22と底板23とで形成される空間内の矩形パイプ21との接合部分以外のスペース24に連通するように、天板22および底板23にビーム穴部をそれぞれ穿設することが可能である。
【0043】
この冷却路を有する部品の製造方法は、図2に示すように天板22および底板23を同時に摩擦撹拌工具4および摩擦撹拌工具5で接合する。このように天面側と底面側を同時に接合することにより、製造時間を短縮することが可能である。なお、図2は、矩形パイプ21の天面側および底面側の両面に天板22および底板23を接合したが、いずれか一方の板材のみを接合して冷却路を有する部品20を構成してもよい。
【0044】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、矩形パイプ21の配置や間隔を任意に設定することが可能であり、矩形パイプ21の流路を自在に設定することが可能である。さらに、図2に図示したような直線状の矩形パイプだけでなく、曲線状の矩形パイプを用いてもよい。従って、より複雑な冷却媒体流路を備えた冷却路を有する部品を製作することができ、冷却路を有する部品の冷却性能を向上することが可能である。
【0045】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第3の実施形態について、図3を参照して説明する。
【0046】
第3の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により製造された冷却路を有する部品30は、対向する一対の側壁材により構成された側壁部31と、この側壁部31の上端面および下端面に配置される天板32と底板33とで構成される。側壁部31と天板32と底板33とで構成された空間部34に冷却媒体を流通して冷却路とする。
【0047】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず天板32と底板33に挟まれた空間内に側壁部31を任意に配置して冷却路を設置し、図示しない固定具を用いて固定する。次に、天板32の表面側から摩擦撹拌工具4を圧入しつつ、底板33の表面側から摩擦撹拌工具5を圧入して、矢印で示す接合経路に沿って側壁部31と天板32および底板33とを一体に接合する。摩擦撹拌工具4の先端凸部4Aおよび摩擦撹拌工具5の先端凸部5Aは、天板32および底板33の厚さより長く構成され、先端凸部4Aおよび先端凸部5Aが天板32および底板33をそれぞれ貫通して側壁部31と天板32との接触面および側壁部31と底板33との接触面に到達し、側壁部31と天板32および側壁部31と底板33とが一体に接合される。
【0048】
この冷却路を有する部品の製造方法によれば、冷却路を形成する側壁部31を設計自由度の高い板材で構成するので、側壁部31を任意の形状に設定することにより冷却路をさらに自由に設計することが可能である。例えば、図3に示すように直線状の側壁部31により冷却路を形成するほか、任意の曲率の側壁材を用いて曲線形状の冷却路を構成しても良い。あるいは、渦巻き状の側壁材を用いて冷却路を構成することも可能である。
【0049】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、側壁材を矩形パイプより安価な板材により構成するので、製造コストが低減される。また、板材は矩形パイプより設計の自由度が高く、曲げ性に優れるので、より複雑な形状の冷却路を有する部品が製作できるため、冷却路を有する部品の冷却性能を向上するだけでなく、冷却路を有する部品を様々な形状に成形することが可能である。
【0050】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第4の実施形態について、図4および図5を参照して説明する。
【0051】
第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌接合方法において、摩擦撹拌工具による金属部材の接合開始端および接合終了端に残される凹部に開口部を穿設して利用することにより、製造コストを低減するものである。
【0052】
従来の冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌工具による接合開始端および接合終了端に、製品に不必要な凹部が残存してしまう問題があった。この凹部の生成を防止するため、従来、冷却路を有する部品を製造する際には、タブ板を設置して接合線を延長し、タブ板を接合開始端および接合終了端とする等の手段が講じられていた。そのため、タブ板の材料コストおよび設置・除去コストが増大していた。
【0053】
図4に示す冷却路を有する部品の製造方法においては、矩形材41と矩形パイプ42とを矢印で示す接合経路に沿って接合する際に接合開始端および接合終了端に発生する凹部43に開口部を設け、冷却路を有する部品40を使用する際の固定手段(ねじ等)を設置する孔部として使用する。すなわち、この凹部43部分を加工して貫通孔を設け、固定手段を設置する孔部とする。従って、従来の冷却路を有する部品の製造方法において使用されていたタブ板の設置の必要がなく、製造コストの低減が可能となる。
【0054】
一方、図5に示す冷却路を有する部品の製造方法は、矩形材51と矩形パイプ52とを摩擦撹拌工具4により矢印で示す接合経路に沿って接合して冷却路を有する部品50を製造する際に、矩形材51と矩形パイプ52との接合後にビーム孔部53を穿設する箇所を摩擦撹拌工具の接合開始端とし、同様に接合後にビーム孔部53を穿設する箇所を摩擦撹拌工具の接合終了端とする製造方法である。この製造方法により冷却路を有する部品50を製造する場合、一部に非接合線部分の母材を通過する通過部54が存在するが、摩擦攪拌接合は、非接合線部分に対して行っても、強度の低下や欠陥発生の問題を生じないため、冷却路を有する部品の品質および性能に影響を及ぼすことがない。
【0055】
この冷却路を有する部品の製造方法によれば、部品最終形状で開口部とする部分を接合開始端と接合終了端としたので、摩擦攪拌接合の際に発生する孔が部品に残存しない。従って、部品にタブ板を延設させて接合開始端および接合終了端とする方法と比較して、タブ板の設置および除去工程が必要なく、製造コストが大幅に低減される。
【0056】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明の冷却路を有する部品の製造方法によれば、高品質で工作精度が高い冷却路を有する部品を、低い製造コストおよび高い製造歩留りで製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図2】第2の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図3】第3の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図4】第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図5】第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図6】従来の冷却路を有する部品を示す構成図。
【符号の説明】
1…矩形材、2…矩形パイプ、3…空間部、4,5…摩擦撹拌工具、4A,5A…先端凸部、6…ビーム孔部、10…冷却路を有する部品、20…冷却路を有する部品、21…矩形パイプ、22…天板、23…底板、24…スペース、30…冷却路を有する部品、31…側壁材、32…天板、33…底板、40…冷却路を有する部品、41…矩形パイプ、42…矩形材、50…冷却路を有する部品、51…矩形パイプ、52…矩形材、53…ビーム孔部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却路を有する部品の製造方法に係り、特にビーム加速器に使用される加速器電極板や半導体用ヒートシンク板等の冷却路を有する部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビーム加速器に用いられる加速器電極板は、例えば、銅製の板にビーム孔部が穿設されて形成され、この加速器電極板に電位を付与することにより、ビーム孔部を通過する荷電粒子を加速するように構成される。
【0003】
この加速器電極板を使用する際、熱の発生により加速器電極板の温度が上昇する。そのため、加速器電極板には、種々の冷却手段が設けられて温度を一定に保持するように構成される。こうした冷却手段の種類としては、例えば、加速器電極板に冷却媒体を流通する冷却パイプを一体に接合するもの、あるいは、加速器電極板の内部に溝状の冷却路を設けて冷却媒体を流通させるもの等がある。
【0004】
一方、半導体用ヒートシンク板の場合も、加速器電極板と同様に冷却手段を必要とするため、冷却路を有する部品が採用される。また、加速器電極板、半導体用ヒートシンク以外にも、例えば、ジュール熱の発生により過熱される機械部品等は、部品本体に冷却手段を一体に設ける構成としたものが多い。
【0005】
一方、金属材料の接合手段として、近年、摩擦撹拌接合方法が一般的に採用されつつある。摩擦撹拌接合方法とは、金属部材と金属部材との接合線上に、回転させた摩擦撹拌工具を圧入して摩擦撹拌工具の先端部を陥入させ、金属部材同士を一体に接合する接合方法である。この摩擦撹拌接合方法は、溶接による金属部材の接合のように金属部材を溶解させないので、入熱による金属部材の変形等の不都合が生じない。また、ろう付けによる金属部材の接合のようにろう材を必要としないため、低コストで確実な金属部材の接合方法として応用が期待されている。
【0006】
例えば、特開2001−321969号公報(特許文献1参照)には、銅製のコの字状断面を有する部材同士を、開口部を互いに向き合わせて固定し、開口部の縦方向長さと略同一長さの保持材を挿入し、接合線を摩擦撹拌工具を備えた接合機により接合して、接合後、保持材を取り除いて矩形状の部材を得る銅チューブの製造方法が開示されている。
【0007】
また、特開2000−263251号公報(特許文献2参照)および特開2000−202654号公報(特許文献3参照)には、金属部材同士の突合せ部分を摩擦回転工具により接合し、金属構造物を製造する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−321969号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−263251号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−202654号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2001−313357号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図6に従来の冷却路を有する部品60の模式的な断面図を示す。冷却路を有する部品60は、ビーム孔部61を穿設した板材62に、冷却路63をろう材64によりろう付けして一体に接合した加速器電極板である。
【0013】
しかしながら、この冷却路を有する部品60において、冷却路63をろう付けする際に、冷却路63の接合部の周囲にもろう材が濡れ広がるため、ビーム孔部61内にろう材64が付着することがある。このビーム孔部61内に付着したろう材64が、加速器電極板を使用する際に真空中で蒸発し、使用環境を汚染することがあった。
【0014】
また、冷却路を有する部品の製造方法として、電子ビーム溶接による接合方法も従来から採用されている。しかしながら、電子ビーム溶接方法は、金属部材を接合する際に電子ビームにより金属部材が溶融する部分の幅(接合幅)が狭く、そのため、溶接作業中に電子ビーム溶接工具が接合線から逸脱する(目外れ)ことがあった。この場合、目外れした部分については、金属部材同士が未接合となるため、接合不良の原因となることがあった。さらに、電子ビーム溶接方法は、真空中で施工するので、部品および溶接装置を封入するための気密容器が必要である。そのため設備コストが高く、また設備の設置スペースの制約が大きいため、大型の部品の製造に適さないという欠点があった。
【0015】
上述のような不具合を解消するため、例えば、特開2001−313357号公報(特許文献4参照)には、ヒートシンク板の製作方法が開示されている。すなわちこの製作方法は、予め溝部を設けた板材に金属板を被覆するように設置し、回転工具により摩擦撹拌接合して冷却路を作製するものである。
【0016】
しかしながら、同公報に記載の冷却路を有する部品の製造方法によれば、板状部材に溝部を設ける工程が必要であり、また、板状部材と被覆材との接合部の構造が単純でなく、接合面積が広いため、接合不良部を生じ易い等の不都合があった。
【0017】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、工作精度が高く、使用環境の汚染を生じない高品質な冷却路を有する部品を、高い製造歩留りおよび低い製造コストで製造することが可能な冷却路を有する部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項1に記載したように、冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と中実材とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記中実材とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0019】
また、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項3に記載したように、冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と、天板および底板のうち少なくとも一方とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記天板または前記底板とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0020】
さらに、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項5に記載したように、対向する一対の側壁材で形成される側壁部と天板および底板とから冷却媒体を流通する空間部を形成し、前記側壁部と前記天板との接触面および前記側壁部と前記底板との接触面を摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする製造方法である。
【0021】
さらに、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法は、請求項7に記載したように、金属部材を摩擦撹拌接合方法により接合する冷却路を有する部品の製造方法において、摩擦撹拌工具による金属部材の接合開始端および接合終了端に残存する凹部に開口部を穿設することを特徴とする製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の実施の形態について、添付図を参照して以下に詳細に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品10の作製方法を示す説明図である。この冷却路を有する部品10は、中実材としての矩形材1と素形材としての矩形パイプ2とを交互に組み合わせて、摩擦撹拌接合方法により接合したものである。
【0024】
矩形材1は、無垢の金属材料で構成された部材である。一方、矩形パイプ2は、押出成形方法等の成形方法により成形された金属製のパイプであり、この矩形パイプの空間部3が、冷却媒体の流路(冷却路)として使用される。矩形材1および矩形パイプ2の材料としては、熱伝導性に優れた純銅製のものが好適に用いられる。
【0025】
一方、被接合部材(矩形材1および矩形パイプ2)の天面側に配置される第1の摩擦撹拌工具(摩擦撹拌工具4)は、矩形材1および矩形パイプ2より高い硬度を有する金属材料で構成された略円柱状の部材であり、回転機器に取付けられて円柱の中心軸回りに回転される。摩擦撹拌工具4の先端部には、矩形材1と矩形パイプ2との接合線に陥入させて撹拌し、両者を一体に接合するための先端凸部4Aが設けられる。なお図1において被接合部材の表面に表示された矢印は、摩擦撹拌工具4による接合経路を示している。
【0026】
また、被接合部材の底面側には、第2の摩擦撹拌工具(摩擦撹拌工具5)が配置される。摩擦撹拌工具5は摩擦撹拌工具4と同一の構成を有する部材であり、摩擦撹拌工具5の先端には先端凸部5Aが設けられる。
【0027】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず矩形材1と矩形パイプ2とを交互に配置し、図示しない固定具を用いて矩形材1と矩形パイプ2の側面同士を密着させて固定する。この際、矩形材1と矩形パイプ2とは、特に大きなプレス力で密着させる必要はなく、矩形材1と矩形パイプ2とが位置決めされて、接合作業中にずれを生じない程度に固定されれば良い。
【0028】
次に、被接合部材(矩形材1および矩形パイプ2)を図示しない接合台に設置し、矩形材1と矩形パイプ2との接合線上の接合開始端に、回転させた摩擦撹拌工具4を適当な加圧力により圧入し、接合線に沿って、図1の被接合部材表面に矢印で示すように移動させる。あるいは、製造する部品の大きさにより、摩擦撹拌工具4を固定して被接合部材を移動させて接合する方法としても良い。
【0029】
この冷却路を有する部品の製造方法においては、被接合部材の天面側および底面側の両面から2本の摩擦撹拌工具4および摩擦撹拌工具5を同時に圧入して矩形材1と矩形パイプ2とを接合する。すなわち、矩形材1と矩形パイプ2との接合線の天面側を第1の摩擦撹拌工具4で接合する一方、接合線の底面側を第2の摩擦撹拌工具5で接合する。
【0030】
摩擦回転工具4の先端凸部4Aおよび摩擦撹拌工具5の先端凸部5Aの長さは、被接合部材である矩形材1および矩形パイプ2の厚さの略半分に設けられており、摩擦回転工具4および摩擦回転工具5を表裏から同時に圧入することにより、被接合部材(矩形材1、矩形パイプ2)の全厚に渡って接合することが可能である。あるいは、摩擦撹拌工具4のみを使用して、被接合部材の天面側を接合した後、被接合部材を裏返して底面側を接合する接合方法としてもよいし、摩擦撹拌工具4の先端凸部4Aの長さを被接合部材の厚さと略同一として天面側もしくは底面側から摩擦撹拌工具4を圧入して接合しても良い。
【0031】
冷却路を有する部品10を加速器電極板として使用する場合は、図1のように矩形材1を表裏に貫通するビーム孔部6を穿設する。このビーム孔部6は、矩形材1と矩形パイプ2とを接合する前に予め矩形材1に設けても良いし、あるいは、矩形材1と矩形パイプ2とを接合した後に行うことも可能である。また、矩形材1と矩形パイプ2との接合後にビーム孔部6を設ける場合は、ビーム孔部6が矩形パイプ2の空間部3と連通することがなく、さらに部品に強度上の問題を生じないならば、接合線上にビーム孔部6を穿設してもよい。
【0032】
なお、図1に示す冷却路を有する部品10は、矩形材1と矩形パイプ2とを交互に接合する構成としたが、矩形材1と矩形パイプ2とは任意に組合せて良く、冷却路を有する部品に必要とされる冷却性能により構成を変化させることも可能である。例えば、冷却性能を向上するために、1本の矩形材1に対して矩形パイプ2を2本並列に接合する構成としても良い。また半導体用ヒートシンク等の部品を製造する場合は、矩形パイプ2のみを連続的に接合して冷却路を有する部品10を構成することも可能である。
【0033】
上記に説明したように、第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法によれば、矩形材1と矩形パイプ2とを一体に接合して冷却路を有する部品10を構成するので、従来の冷却路を有する部品を製造する際に必要であった溝加工の必要がない。そのため製造工程が簡略化されるので、製造コストが低減される。また、溶接方法により金属部材を接合して冷却路を有する部品を製造する場合と比較して、入熱による金属部材の変形が防止されるため、より工作精度が高い冷却路を有する部品の製造が可能である。
【0034】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、矩形材1と矩形パイプ2とを構成材料とするので、従来の冷却路を有する部品のように板状部材に溝部を設け、被覆材により被覆する方法に比較して設計の自由度が高く、接合部の構造が単純である。従って、未接合部等の施工不良の発生率が極めて低く、冷却路を有する部品の製造歩留りが向上する。
【0035】
さらに、この冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌接合方法により金属部材を接合するので、摩擦撹拌工具により矩形材1と矩形パイプ2とを撹拌して一体に接合する部分の幅(接合幅)を、電子ビーム溶接方法において溶接工具により金属部材を溶融して接合する接合幅に比較して広く施工することが可能である。そのため、電子ビーム溶接による金属部材の接合と比較して、接合線からの目外れが起きにくく、接合不良が効果的に防止されるため、冷却路を有する部品の製造歩留りが大幅に向上する。
【0036】
また、摩擦撹拌接合方法は、大気雰囲気下で施工することが可能であるため、電子ビーム溶接方法に比較して、設備コストおよび製造コストが少なく済み、従来の冷却路を有する部品の製造方法に比較して製造コストを大幅に削減することが可能である。また、製造設備を設置する上での制約が少なく、大型の部品の製造にも適している。
【0037】
また、接合材料としてろう材を使用しないので、冷却路を有する部品の構成材料に蒸発成分が含まれない。そのため、加速器電極板のように真空中で使用しても、蒸発成分の飛散による使用環境を汚染することがない。従って、より信頼性の高い冷却路を有する部品を提供することが可能である。
【0038】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第2の実施形態について図2を参照して説明する。
【0039】
図2は、第2の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品20を製造する方法を示す説明図である。この冷却路を有する部品20は、矩形パイプ21の対向する天面および底面に天板22と底板23をそれぞれ配置して、摩擦撹拌接合方法により一体に接合したものである。
【0040】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず、矩形パイプ21を天板22および底板23で挟まれる空間内に任意に配置して固定具で固定する。次に天板22の表面側から摩擦撹拌工具4を圧入し、摩擦回転工具4の先端凸部4Aが天板22の全厚を貫通して天板22と矩形パイプ21との接触面に到達し、さらに矩形パイプ21の一部に達するまで挿入し、矩形パイプ21の長手方向に沿って(図2の天板22上に矢印で示す接合経路で)摩擦撹拌接合を行う。なお、摩擦撹拌工具4を固定して被接合部材(矩形パイプ21、天板22および底板23の集合体)を移動させてもよい。
【0041】
一方、底板23の表面側からは、摩擦撹拌工具5を圧入して、摩擦回転工具5の先端凸部5Aが底板23の全厚を貫通して底板23と矩形パイプ21との接触面に到達し、さらに矩形パイプ21の一部に達するまで挿入し、矩形パイプ21の長手方向に沿って摩擦撹拌接合を行う。
【0042】
冷却路を有する部品20を加速器電極板として使用する場合には、天板22と底板23とで形成される空間内の矩形パイプ21との接合部分以外のスペース24に連通するように、天板22および底板23にビーム穴部をそれぞれ穿設することが可能である。
【0043】
この冷却路を有する部品の製造方法は、図2に示すように天板22および底板23を同時に摩擦撹拌工具4および摩擦撹拌工具5で接合する。このように天面側と底面側を同時に接合することにより、製造時間を短縮することが可能である。なお、図2は、矩形パイプ21の天面側および底面側の両面に天板22および底板23を接合したが、いずれか一方の板材のみを接合して冷却路を有する部品20を構成してもよい。
【0044】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、矩形パイプ21の配置や間隔を任意に設定することが可能であり、矩形パイプ21の流路を自在に設定することが可能である。さらに、図2に図示したような直線状の矩形パイプだけでなく、曲線状の矩形パイプを用いてもよい。従って、より複雑な冷却媒体流路を備えた冷却路を有する部品を製作することができ、冷却路を有する部品の冷却性能を向上することが可能である。
【0045】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第3の実施形態について、図3を参照して説明する。
【0046】
第3の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により製造された冷却路を有する部品30は、対向する一対の側壁材により構成された側壁部31と、この側壁部31の上端面および下端面に配置される天板32と底板33とで構成される。側壁部31と天板32と底板33とで構成された空間部34に冷却媒体を流通して冷却路とする。
【0047】
この冷却路を有する部品の製造方法は、まず天板32と底板33に挟まれた空間内に側壁部31を任意に配置して冷却路を設置し、図示しない固定具を用いて固定する。次に、天板32の表面側から摩擦撹拌工具4を圧入しつつ、底板33の表面側から摩擦撹拌工具5を圧入して、矢印で示す接合経路に沿って側壁部31と天板32および底板33とを一体に接合する。摩擦撹拌工具4の先端凸部4Aおよび摩擦撹拌工具5の先端凸部5Aは、天板32および底板33の厚さより長く構成され、先端凸部4Aおよび先端凸部5Aが天板32および底板33をそれぞれ貫通して側壁部31と天板32との接触面および側壁部31と底板33との接触面に到達し、側壁部31と天板32および側壁部31と底板33とが一体に接合される。
【0048】
この冷却路を有する部品の製造方法によれば、冷却路を形成する側壁部31を設計自由度の高い板材で構成するので、側壁部31を任意の形状に設定することにより冷却路をさらに自由に設計することが可能である。例えば、図3に示すように直線状の側壁部31により冷却路を形成するほか、任意の曲率の側壁材を用いて曲線形状の冷却路を構成しても良い。あるいは、渦巻き状の側壁材を用いて冷却路を構成することも可能である。
【0049】
また、この冷却路を有する部品の製造方法は、側壁材を矩形パイプより安価な板材により構成するので、製造コストが低減される。また、板材は矩形パイプより設計の自由度が高く、曲げ性に優れるので、より複雑な形状の冷却路を有する部品が製作できるため、冷却路を有する部品の冷却性能を向上するだけでなく、冷却路を有する部品を様々な形状に成形することが可能である。
【0050】
次に、本発明に係る冷却路を有する部品の製造方法の第4の実施形態について、図4および図5を参照して説明する。
【0051】
第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌接合方法において、摩擦撹拌工具による金属部材の接合開始端および接合終了端に残される凹部に開口部を穿設して利用することにより、製造コストを低減するものである。
【0052】
従来の冷却路を有する部品の製造方法は、摩擦撹拌工具による接合開始端および接合終了端に、製品に不必要な凹部が残存してしまう問題があった。この凹部の生成を防止するため、従来、冷却路を有する部品を製造する際には、タブ板を設置して接合線を延長し、タブ板を接合開始端および接合終了端とする等の手段が講じられていた。そのため、タブ板の材料コストおよび設置・除去コストが増大していた。
【0053】
図4に示す冷却路を有する部品の製造方法においては、矩形材41と矩形パイプ42とを矢印で示す接合経路に沿って接合する際に接合開始端および接合終了端に発生する凹部43に開口部を設け、冷却路を有する部品40を使用する際の固定手段(ねじ等)を設置する孔部として使用する。すなわち、この凹部43部分を加工して貫通孔を設け、固定手段を設置する孔部とする。従って、従来の冷却路を有する部品の製造方法において使用されていたタブ板の設置の必要がなく、製造コストの低減が可能となる。
【0054】
一方、図5に示す冷却路を有する部品の製造方法は、矩形材51と矩形パイプ52とを摩擦撹拌工具4により矢印で示す接合経路に沿って接合して冷却路を有する部品50を製造する際に、矩形材51と矩形パイプ52との接合後にビーム孔部53を穿設する箇所を摩擦撹拌工具の接合開始端とし、同様に接合後にビーム孔部53を穿設する箇所を摩擦撹拌工具の接合終了端とする製造方法である。この製造方法により冷却路を有する部品50を製造する場合、一部に非接合線部分の母材を通過する通過部54が存在するが、摩擦攪拌接合は、非接合線部分に対して行っても、強度の低下や欠陥発生の問題を生じないため、冷却路を有する部品の品質および性能に影響を及ぼすことがない。
【0055】
この冷却路を有する部品の製造方法によれば、部品最終形状で開口部とする部分を接合開始端と接合終了端としたので、摩擦攪拌接合の際に発生する孔が部品に残存しない。従って、部品にタブ板を延設させて接合開始端および接合終了端とする方法と比較して、タブ板の設置および除去工程が必要なく、製造コストが大幅に低減される。
【0056】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明の冷却路を有する部品の製造方法によれば、高品質で工作精度が高い冷却路を有する部品を、低い製造コストおよび高い製造歩留りで製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図2】第2の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図3】第3の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図4】第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図5】第4の実施形態の冷却路を有する部品の製造方法により冷却路を有する部品を作製する説明図。
【図6】従来の冷却路を有する部品を示す構成図。
【符号の説明】
1…矩形材、2…矩形パイプ、3…空間部、4,5…摩擦撹拌工具、4A,5A…先端凸部、6…ビーム孔部、10…冷却路を有する部品、20…冷却路を有する部品、21…矩形パイプ、22…天板、23…底板、24…スペース、30…冷却路を有する部品、31…側壁材、32…天板、33…底板、40…冷却路を有する部品、41…矩形パイプ、42…矩形材、50…冷却路を有する部品、51…矩形パイプ、52…矩形材、53…ビーム孔部。
Claims (8)
- 冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と中実材とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記中実材とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
- 前記素形材と前記中実材との接合線の天面側に第1の摩擦撹拌工具を圧入し、第1の摩擦撹拌工具の先端凸部を陥入させて前記素形材と前記中実材とを一体に接合する一方、前記接合線の底面側に第2の摩擦撹拌工具を圧入し、第2の摩擦撹拌工具の先端凸部を陥入させて前記素形材と前記中実材とを一体に接合することを特徴とする請求項1記載の冷却路を有する部品の製造方法。
- 冷却媒体を流通するための空間部を備えた素形材と、天板および底板のうち少なくとも一方とを組合せて冷却路を有する部品を構成し、前記素形材と前記天板または前記底板とを摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
- 前記天板と前記素形材との接触面に第1の摩擦回転工具の先端凸部が陥入するように、前記天板の表面側から第1の摩擦撹拌工具を圧入して前記天板と前記素形材とを接合する一方、前記底板と前記素形材との接触面に第2の摩擦回転工具の先端凸部が陥入するように、前記底板の表面側から第2の摩擦撹拌工具を圧入して前記底板と前記素形材とを接合することを特徴とする請求項3記載の冷却路を有する部品の製造方法。
- 対向する一対の側壁材で形成される側壁部と天板および底板とから冷却媒体を流通する空間部を形成し、前記側壁部と前記天板との接触面および前記側壁部と前記底板との接触面を摩擦撹拌接合方法により一体に接合することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
- 前記天板と前記側壁部との接触面に第1の摩擦回転工具の先端凸部が陥入するように、前記天板の表面側から第1の摩擦撹拌工具を圧入して前記天板と前記側壁部とを接合すると同時に、前記底板と前記側壁部との接触面に第2の摩擦回転工具の先端凸部が陥入するように、前記底板の表面側から第2の摩擦撹拌工具を圧入して前記底板と前記側壁部とを接合することを特徴とする請求項5記載の冷却路を有する部品の製造方法。
- 金属部材を摩擦撹拌接合方法により接合する冷却路を有する部品の製造方法において、摩擦撹拌工具による金属部材の接合開始端および接合終了端に残存する凹部に開口部を穿設することを特徴とする冷却路を有する部品の製造方法。
- 前記開口部は、ビーム孔部または固定手段設置用の孔部であることを特徴とする請求項7記載の冷却路を有する部品の製造方法。
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