JP2004119587A - 配線基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】内層配線導体層となる金属箔およびガラスセラミックグリーンシートを同時焼成した際、配線基板内部の層間にデラミネーションの発生がなく、また金属箔に形成された貫通孔の部位に変形やクラック等が発生しないようにし、さらに内層配線導体層の電気抵抗が低くなって電気的特性に優れた配線基板を提供すること。
【解決手段】複数のガラスセラミック層10a〜10dが積層されて成る絶縁基体10の内部に、複数の貫通孔11が形成された金属箔および貫通孔11に充填されたメタライズ部から成る内層配線導体層6が形成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品搭載用基板や半導体素子収納用パッケージなどに適した配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子収納用パッケージ等に使用される配線基板として、比較的高密度の配線が可能な多層セラミック配線基板が多用されている。この多層セラミック配線基板は、アルミナセラミックスやガラスセラミックなどの絶縁層を複数積層した絶縁基体と、その表面に形成された、タングステン(W),モリブデン(Mo),銅(Cu),銀(Ag)等の金属からなる配線導体とから構成されるものであり、例えば絶縁基体の上面に形成されたキャビティ内に半導体素子が収容され、絶縁基体の上面のキャビティの周囲に接合された蓋体によってキャビティが気密に封止されるものである。
【0003】
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線導体として銅等の低抵抗金属を用いることができることから、焼成温度が1000℃以下のいわゆるガラスセラミックから成る配線基板が注目されている。
【0004】
このガラスセラミックから成る配線基板において、配線導体を形成する手法としてCu,Ag等の金属からなる配線導体を主成分とするメタライズペーストをスクリーン印刷法等によって絶縁基体上に印刷する手法が用いられている。しかしながら、この手法を用いた場合、配線幅100μm以下の配線導体を形成するのが難しく、その結果、さらなる高密度化、小型軽量化の達成することは困難であった。また、電気抵抗についてもメタライズペーストで配線導体を形成するため、配線導体内に空隙が多く存在することとなり、低抵抗化が困難になるという問題点があった。
【0005】
この問題を解決する構成として、ガラスセラミックグリーンシートにエッチング加工した金属箔から成る配線導体を形成した構成が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0006】
配線導体を金属箔により形成することで電気抵抗を従来の印刷法を用いた場合と比較して約60〜70%に低下させることができ、また金属箔をエッチング加工することで配線幅を100μm以下にすることも可能となる。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−99596号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、配線基板中の内層接地導体層のような大面積の内層配線導体層を金属箔によって形成する場合、ガラスセラミックグリーンシートから成る絶縁層の焼成時に発生するバインダーの分解ガスが外に抜けにくくなるため、絶縁層の層間や内層配線導体層と絶縁層との間でデラミネーション(層間剥離)やクラックが発生し、歩留まりが低下するという問題点があった。
【0009】
その対策として、内層接地導体層等の大面積の内層配線導体層をメッシュ状(格子状)として複数の貫通孔を形成した構成が一般に採られている。
【0010】
しかしながら、内層配線導体層をメッシュ状として多数の貫通孔を形成すると、複数のセラミックグリーンシートを積層して生セラミック成形体を作製する際に、貫通孔の部位には十分な加圧ができない。そのため、生セラミック成形体を内層配線導体層と同時焼成した際、絶縁基体の絶縁層の層間や内層配線導体層と絶縁層との間でデラミネーションが発生してしまう。また、デラミネーションを防ぐために、複数のセラミックグリーンシートを十分に加圧して積層すると、加圧の圧力により貫通孔の部位に変形やクラック等が発生してしまうという問題点があった。さらに、貫通孔の数が増えると内層配線導体層の電気抵抗が高くなり、高周波信号の伝送特性の劣化、電源電流の損失、接地電位の不安定化や低下といった配線基板の電気的特性に悪影響を及ぼすという問題点もあった。
【0011】
したがって、本発明は上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、内層配線導体層となる金属箔およびガラスセラミックグリーンシートを同時焼成した際、配線基板内部の絶縁層の層間や内層配線導体層と絶縁層との間でデラミネーションの発生がなく、また金属箔に形成された貫通孔の部位に変形やクラック等が発生することがないものとすることである。さらに、内層配線導体層の電気抵抗が低くなり、高周波信号の伝送特性の向上、電源電流の低損失化、接地電位の安定化といった電気的特性に優れた配線基板を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、複数のガラスセラミック層が積層されて成る絶縁基体の内部に、複数の貫通孔が形成された金属箔および前記貫通孔に充填されたメタライズ部から成る内層配線導体層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の配線基板は、複数のガラスセラミック層が積層されて成る絶縁基体の内部に、複数の貫通孔が形成された金属箔および貫通孔に充填されたメタライズ部から成る内層配線導体層が形成されていることにより、絶縁基体となる生セラミック成形体を積層し加圧する際に、金属箔の貫通孔にはメタライズ部となる導体ペーストが充填されていることから、加圧の圧力が貫通孔の部位にも均一に加わることとなり、これにより内層配線導体層のメタライズ部となる導体ペーストとセラミックグリーンシートを同時焼成した際に絶縁基板内部の絶縁層の層間や内層配線導体層と絶縁層との間でデラミネーションが発生することがなくなる。また、金属箔の貫通孔に充填された導体ペーストが補強部材として機能し、貫通孔の部位に変形やクラック等が発生することがなくなる。さらに、メタライズ部は金属箔と一体化されていることから、内層配線導体層が低抵抗化され、電気的特性に優れた配線基板が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板について以下に詳細に説明する。図1は本発明の配線基板Aの断面図であり、図1において、絶縁基体10は、厚み50〜250μmのガラスセラミック絶縁層10a〜10dを複数積層してなる積層体から成り、絶縁層10a〜10dの層間には厚みが3〜25μm程度の内層接地導体層等としての内層配線導体層6が形成され、また絶縁基体10表面には厚みが3〜25μm程度の配線導体層3が形成されている。
【0015】
また、各ガラスセラミック層10a〜10dの厚み方向を貫くようにして直径50〜200μmの貫通導体2が形成されており、これにより、配線導体層3と内層配線導体層6との間等を電気的に接続し、所定の電気回路が構成される。また、配線導体層3の一部(電極パッド部)の上面には、IC,LSI等の半導体素子等からなる電子部品Bが半田や導電性樹脂接着剤等を介して接合されて搭載される。即ち、配線導体層3の一部は、ICチップなどの各種電子部品Bを搭載するための電極パッドとして、またはシールド用導体層として、または外部電気回路に電気的に接続される端子電極として用いられ、例えば電子部品Bが配線導体層3の一部に半田や導電性樹脂接着剤などを介して接合される。
【0016】
さらに、配線基板Aの表面には、珪化タンタル、珪化モリブデンなどの厚膜抵抗体膜や配線保護膜などを形成しても構わない。
【0017】
本発明において、内層配線導体層6のうち、それが形成された絶縁層の主面に対する面積比率が50%以上のものが金属箔およびメタライズ部から成ることが好ましい。50%以上となると、焼成時の脱バインダーの際に発生する有機成分の分解ガスが外へ抜けにくくなるため分解ガスの内圧によりデラミネーションやクラックが発生し易いからである。
【0018】
本発明による内層配線導体層6は、図2に示すように、金属箔に複数の貫通孔11が形成されており、生セラミック成形体の焼成前には貫通孔11に導体ペーストが充填されている。これにより、絶縁基体10となる生セラミック成形体を積層し加圧する際に、金属箔の貫通孔11にはメタライズ部となる導体ペーストが充填されていることから、加圧の圧力が貫通孔11の部位にも均一に加わることとなり、これにより内層配線導体層6のメタライズ部となる導体ペーストとセラミックグリーンシートを同時焼成した際に絶縁基板10内部の絶縁層の層間や内層配線導体層6と絶縁層との間でデラミネーションが発生することがなくなる。また、金属箔の貫通孔11に充填された導体ペーストが補強部材として機能し、貫通孔11の部位に変形やクラック等が発生することがなくなる。さらに、メタライズ部は金属箔と一体化されていることから、内層配線導体層6が低抵抗化され、電気的特性に優れた配線基板Aが得られる。
【0019】
本発明において、複数の貫通孔11間の距離(中心間距離)は平均して0.1〜2.0mmであることが好ましい。0.1mm未満の場合、貫通孔11の数が多くなり、貫通孔11に充填された導体ペーストの内層配線導体層6に占める面積比率が大きくなり、内層配線導体層6の電気抵抗が大きくなるため配線基板Aの電気的特性が劣化し易くなる。即ち、導体ペーストは、銅(Cu)粉末にアクリル樹脂等の有機バインダおよびトルエン,イソプロビルアルコール,アセトン等の有機溶剤を添加混合して適当な粘度に調整されたものであるため、導体ペースト中には空隙が多く、銅等の金属箔に比べて電気抵抗が高く、従って金属箔と導体ペーストが一体化された内層配線導体層6の電気抵抗が大きくなる。2.0mmを超える場合、貫通孔11の数が少なくなり、焼成時の脱バインダーの際に発生する有機成分の分解ガスが貫通孔11に充填された導体ペーストを通って外へ抜けにくくなるため、分解ガスの内圧によりデラミネーションやクラックが発生する。さらに、貫通孔11形成の容易性の点から上記距離は0.3〜1.0mmがより好ましい。
【0020】
また、貫通孔11の径は平均して0.05〜0.4mmであることが好ましい。0.05mm未満では、貫通孔11に充填された導体ペーストを通って外へ脱バインダー時の分解ガスが通過する経路としての役割を十分果たすことができない。0.4mmを超えると、貫通孔11に充填された導体ペーストの内層配線導体層6に占める面積比率が大きくなり、内層配線導体層6の抵抗が大きくなり易い。より好ましくは、貫通孔11の径は0.08〜0.2mmがよい。
【0021】
なお、貫通孔11の径とは最大径であり、貫通孔11の断面形状が円形の場合は直径に相当し、貫通孔11の断面形状が楕円形の場合は長径に相当し、貫通孔11の断面形状が四角形の場合には対角線の長さに相当する。従って、貫通孔11の径の平均とは、各貫通孔11の径(最大径)の和を貫通孔11の数で割ったものである。
【0022】
また、貫通孔11の平均の距離と平均の径の関係について、それらの比(距離/径)が1.2より小さいと導通抵抗が大きくなることから、上記比は1.2以上であることが好ましい。
【0023】
平均の距離の算出方法は、図2に示すように、例えば内層配線導体層6内部にある貫通孔aに関しては、隣接する全ての貫通孔a1〜a9との距離の平均値を算出することによって行なう。また、内層配線導体層6の最外周部に存在する貫通孔bに関しては、隣接する全ての貫通孔b1〜b4,b6に加え、内層配線導体層6の辺b5も貫通孔の開口とみなし、貫通孔bと貫通孔b1〜b6との距離の平均値を算出することによって算出した。
【0024】
次に、本発明の配線基板Aの製造方法を、図1の配線基板Aについて図3の工程図を基に説明する。
【0025】
絶縁基体10はガラスセラミックスからなり、その材料として先ず平均粒径0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmのガラス粉末と、平均粒径0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmのセラミックフィラー粉末とを準備する。ガラス粉末の平均粒径が0.5μm未満では、グリーンシート化する際に粉末の比表面積が大きくなって有機成分比が高くなるため、グリーンシート1の収縮ばらつきが大きくなる。10μmを超えると、スラリーをグリーンシート化した際にそのグリーンシート1表面に粉末の粗大粒による突起などの欠陥が生じやすくなる。セラミックフィラー粉末の平均粒径が0.5μm未満では、粉末の比表面積が大きくなり、凝集粒が生じやすくなるため、スラリーへの分散性が劣化してスラリーの粘度等が不安定となる。10μmを超えると、グリーンシート化した際に、そのグリーンシート1表面に粉末の粗大粒による突起などの欠陥が生じ、その突起はグリーンシート1の焼成時に破壊起点となりやすく機械的強度のばらつきの要因となる。
【0026】
ガラス粉末のガラス成分としては、少なくともSiOを含み、Al,B,ZnO,PbO,アルカリ土類金属酸化物,アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えばSiO−B系、SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnである)等のホウケイ酸ガラス,アルカリ珪酸ガラス,Ba系ガラス,Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0027】
これらのガラスは、焼成処理することによって非晶質ガラスとなるもの、また焼成処理によって、アルカリ金属シリケート,クォーツ,クリストバライト,コージェライト,ムライト,エンスタタイト,アノーサイト,セルジアン,スピネル,ガーナイト,ディオプサイド,イルメナイト,ウイレマイト,ドロマイト,ペタライトやその置換誘導体の結晶の少なくとも1種を析出するものが用いられる。
【0028】
セラミックフィラー粉末としては、クォーツ,クリストバライト等のSiOや、アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO),ムライト,フォルステライト,エンスタタイト,スピネル,マグネシアの群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0029】
上記ガラス粉末とセラミックフィラー粉末とを、ガラス成分10〜90重量%、特に好ましくは50〜80重量%と、セラミックフィラー成分10〜90重量%、特に好ましくは20〜50重量%の割合で混合する。その混合物に有機バインダー等を加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形して厚さ約50〜500μmのガラスセラミックスのグリーンシート1を作製する。
【0030】
次に、このグリーンシート1に、レーザ光照射、マイクロドリル、パンチングなどの方法により直径50〜200μmの貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填して貫通導体2を形成する(図3(a))。
【0031】
導体ペーストは、Cu,Ag,Au等の金属成分と、アクリル樹脂などの有機バインダー,トルエン,イソプロピルアルコール,アセトンなどの有機溶剤とを混合して形成される。有機バインダーは金属成分100重量部に対して0.5〜15重量部、有機溶剤は固形成分および有機バインダー100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることがよい。有機バインダーが金属成分100重量部に対して0.5重量部未満では、導体ペーストの粘性が不足し安定した印刷性が確保できない。15重量部を超えると、導体ペースト中の金属成分比率が低下して、焼結後の電気抵抗の値が高くなる。有機溶剤が固形成分および有機バインダー100重量部に対して5重量部未満では、印刷した際にグリーンシート1への溶剤の浸透が不足し、十分な密着性が得られない。100重量部を超えると、印刷した際にグリーンシート1への溶剤の浸透が過多となり、グリーンシート1の延びや変形などの不具合が生じ易くなる。
【0032】
なお、導体ペースト中にはガラスセラミック材料との焼成収縮を合わせるため、若干のホウケイ酸ガラス等のガラス成分やアルミナ等の無機粉末等を添加してもよい。
【0033】
また、内層配線導体層6の貫通孔11に充填される導体ペーストは、貫通孔11の内部を完全に充填してもよいし、貫通孔11の内部を50体積%程度以上占めるように充填してもよい。導体ペーストが完全に充填されていない場合、脱バインダー時の分解ガスが効率的に外部に抜け易くなり、好ましい。導体ペーストの充填率が50体積%未満では、製造が困難になる。これは、貫通孔11の径は平均で0.05〜0.4mm程度であるため、導体ペーストを充填することは容易にできるが、不完全な充填を行なうには貫通孔11に導体ペーストを上側から垂れ込ませて下側から吸引する方法等で行なう必要があり、貫通孔11における導体ペーストの量を制御するのが難しくなり、非常に製造が難しくなるからである。
【0034】
次に、グリーンシート1の表面に配線導体層3および内層配線導体層6を形成する。配線導体層3としては、配線導体層3の線幅が75μm以下がよく、特に50μm以下がよく、また配線導体層3間の距離が150μm以下であることが好ましい。配線導体層3の線幅が75μmを超えると、配線導体層3の高密度配線が難しくなるため配線基板が大型化し易くなる。配線導体層3間の距離が150μmを超えると、同様に高密度配線が難しくなるため配線基板が大型化し易くなる。
【0035】
上記のように配線導体層3の線幅を75μm以下に微細化するには、純度99.5重量%以上の高純度金属で形成することがよく、特に金属箔を用いると配線導体層3全体を容易に高純度金属で形成することができ、好ましい。金属箔の材料としては、低抵抗であることやマイグレーションを抑制しうることなどから銅(Cu),銀(Ag)等が好ましい。内層配線導体層6についても同様の理由から銅箔等で形成することが好ましい。
【0036】
このような金属箔からなる配線導体層3および内層配線導体層6は、グリーンシート1の表面に金属箔を接着した後に周知のフォトエッチング法等によって所望の回路を形成する方法が知られているが、かかる方法ではエッチング液によってグリーンシート1を変質させてしまうため、本発明では転写法で形成することが好ましい。
【0037】
転写法では、まず高分子材料からなる樹脂フィルム5(図3(b))の一主面に銅箔等の金属箔を熱可塑性樹脂からなる接着剤により接着する。次に、金属箔の表面にレジストを鏡像の配線パターン状に塗布するとともに貫通孔の形成部分に塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行うことによって、樹脂フィルム5の表面に配線導体層3や内層配線導体層6を形成する。
【0038】
次に、貫通導体2が形成されたグリーンシート1の表面に、樹脂フィルム5上の配線導体層3や内層配線導体層6を位置合わせして積層し圧着した後(図3(b))、樹脂フィルム5を剥がしてグリーンシート1の表面に配線導体層3や内層配線導体層6を転写する。そして、貫通導体2と接続された内層配線導体層6の貫通孔11の内部に貫通導体2と同じ材料の導体ペーストを充填して、配線導体層3および内層配線導体層6を有するグリーンシート1を形成する。
【0039】
その後、同様にして得られた複数のガラスセラミックのグリーンシート1a〜1dを積層し圧着して積層体を形成する(図3(c))。グリーンシート1a〜1dの積層は、積み重ねられたグリーンシート1a〜1dに熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる接着剤をグリーンシート1a〜1dの間に塗布して熱圧着する方法等により行なうことができる。
【0040】
次に、焼成時にグリーンシート1a〜1dの積層体の平面方向の収縮を抑制するため、積層体の焼成温度で難焼結性のセラミック材料を主成分とする拘束シート8を積層体の両主面または一主面に積層加圧して拘束シート付きの積層体を作製する(図3(d))。
【0041】
この拘束シート8は、難焼結性セラミック材料を主成分とする無機成分に、有機バインダー,可塑剤,溶剤等を加えたスラリーをシート状に成形して得られる。難焼結性セラミック材料は、具体的には1000℃以下の温度で緻密化しないようなセラミック組成物から成り、好ましくは平均粒径が1〜20μm、より好ましくは3〜10μmのAl,SiO,MgO,ZrO,BN,TiOの群から選ばれる少なくとも1種および/またはこれらの複合酸化物{フォルステライト(MgSiO),エンスタタイト(MgSiO)等}の粉末が挙げられる。
【0042】
上記平均粒径が1μm未満では、粉末の比表面積が大きくなるため有機成分比が高くなり焼成時に拘束性が不安定となる。20μmを超えると、グリーンシート化した際に、そのグリーンシート表面に粉末の粗大粒による突起などの欠陥が生じ易くなる。
【0043】
また、拘束シート8中の有機バインダー、可塑剤および溶剤としては、ガラスセラミックスのグリーンシート1を形成するものと同じ材料、具体的にはアクリル系樹脂,DBP(フタル酸ジブチル)等の可塑剤,IPA(イソプロピルアルコール),アセトン,トルエン等の溶剤等が好適に使用できる。また、拘束シート8中にはガラス成分、換言すれば非晶質成分を0.5〜15重量%、特に1〜12重量%含有していることが好ましく、これにより焼成収縮に対する拘束力を高め、また、拘束シート8と接する部分でのガラス成分の移動を抑制して焼結不良などの発生を防ぐことができる。このガラス成分は、グリーンシート1中に含まれるガラス成分と異なるものでも良いが、グリーンシート1中のガラスの拡散を防止するうえで同じガラス成分を用いることがよい。
【0044】
次に、上記拘束シート付きの積層体を、好ましくは100〜850℃、より好ましくは400〜750℃の温度で、酸化性または弱酸化性雰囲気中で加熱処理して、グリーンシート1a〜1d内や貫通導体2中の有機成分を分解除去する。このとき、グリーンシート1a〜1d中の有機成分を除去するとともに、配線導体層3および内層配線導体層6を転写形成する際にそれらの表面に形成された接着層をも分解除去できるように温度等の条件を設定する。即ち、有機成分および接着層として熱分解性に優れたアクリル系樹脂を用いた場合、500〜800℃、Nの雰囲気中で、0.5〜2時間程度温度を保持することによって、炭素の残存をほとんど皆無とすることができる。その後、800〜1050℃のN雰囲気中で同時焼成する。
【0045】
焼成後は、拘束シート8を、Al,SiO,MgO,ZrO,BN,TiO等から選ばれる少なくとも1種を含む砥粒を空気と共に0.05〜0.5MPa(メガパスカル)の圧力で吹き付けて除去することによって、本発明の配線基板Aを作製する。
【0046】
上記拘束シート8を用いて焼成することによって、焼成時の収縮が拘束シート8によって厚さ方向だけとなるように積層体が拘束されているので、例えば積層体が略直方体状の場合には一辺の長さの収縮率が0.5%以下となるように抑えることができる。しかも、グリーンシート1a〜1dは拘束シート8によって全面にわたって均一にかつ確実に結合されているので、拘束シート8の剥離によって反りや変形が起こるのを防止することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0048】
【発明の効果】
本発明の配線基板は、複数のガラスセラミック層が積層されて成る絶縁基体の内部に、複数の貫通孔が形成された金属箔および貫通孔に充填されたメタライズ部から成る内層配線導体層が形成されていることにより、絶縁基体となる生セラミック成形体を積層し加圧する際に、金属箔の貫通孔にはメタライズ部となる導体ペーストが充填されていることから、加圧の圧力が貫通孔の部位にも均一に加わることとなり、これにより内層配線導体層のメタライズ部となる導体ペーストとセラミックグリーンシートを同時焼成した際に絶縁基板内部の絶縁層の層間や内層配線導体層と絶縁層との間でデラミネーションが発生することがなくなる。また、金属箔の貫通孔に充填された導体ペーストが補強部材として機能し、貫通孔の部位に変形やクラック等が発生することがなくなる。さらに、メタライズ部は金属箔と一体化されていることから、内層配線導体層が低抵抗化され、電気的特性に優れた配線基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板について実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の配線基板における内層配線導体層の平面図である。
【図3】(a)〜(e)は本発明の配線基板の各製造工程における断面図である。
【符号の説明】
1:ガラスセラミックスのグリーンシート
2:貫通導体
3:配線導体層
5:樹脂フィルム
6:内層配線導体層
10:絶縁基体
10a〜10d:ガラスセラミック層
11:貫通孔
A:配線基板
B:電子部品

Claims (1)

  1. 複数のガラスセラミック層が積層されて成る絶縁基体の内部に、複数の貫通孔が形成された金属箔および前記貫通孔に充填されたメタライズ部から成る内層配線導体層が形成されていることを特徴とする配線基板。
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