JP2004119269A - 燃料電池用電解質膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池用電解質膜を安くかつ簡易に提供する。
【解決手段】この電解質膜は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3と、マイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体4とからなる膜本体部5を備えている。プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいないため、材料費が安くなる。また、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3が超臨界発泡成形により形成されているため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】この電解質膜は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3と、マイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体4とからなる膜本体部5を備えている。プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいないため、材料費が安くなる。また、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3が超臨界発泡成形により形成されているため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池用電解質膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境に優しく、また省資源化を図れる発電装置として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、電解質の種類によって、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型や固体高分子型等に分類される。これらのうち固体高分子型燃料電池は、近年の研究により小型かつ高密度・高出力が可能となりつつあり、また低温運転可能であることから、車載用等の移動型電源に適用することが期待されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、一般に、プロトン伝導性をもつ固体高分子よりなる電解質膜と、この電解質膜の両面に接合された一対の電極触媒層と、各電極触媒層の表面にそれぞれ接合された一対のガス拡散層と、これら電解質膜、各電極触媒層及び各ガス拡散層の一体物を挟むように配設され電解質膜に接着剤により接合された一対のセパレータとから構成されている。なお、セパレータの所定部位にはシール用ビードが一体的に形成されており、このシール用ビードにより各セパレータ間における気密性を確保している。また、電解質膜の一方の面に配設された一方の電極触媒層及びガス拡散層によりアノード極としての燃料極が構成され、電解質膜の他方の面に配設された他方の電極触媒層及びガス拡散層によりカソード極としての酸素極が構成される。
【0004】
この固体高分子型燃料電池においては、燃料極に水素等の燃料ガスが供給されるとともに、酸素極に空気等の酸化ガスが供給されることにより、各電極で下記(1)式及び(2)式に示す電極反応がそれぞれ起こり、その結果燃料極で発生した水素イオン(プロトン)が水和状態で電解質膜を介して酸素極へ移動し、この酸素極で水(H2 O)が生成されるとともに電気エネルギーが得られる。このように、固体高分子型燃料電池では、電気化学的反応を利用して、燃料ガスの化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すことができる。
【0005】
アノード反応(燃料極):H2 →2H+ +2e− …(1)
カソード反応(酸素極):2H+ +2e−+(1/2)O2 →H2 O …(2)
ここに、上記プロトン伝導性をもつ固体高分子よりなる電解質膜として、一般に、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)等のパーフルオロスルホン酸系ポリマーや、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸ポリマー等が用いられている。
【0006】
しかし、これら「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等はコストが高いという欠点がある。
【0007】
そこで、「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等よりもコストの安い燃料電池用電解質膜として、ポリカーボネート(PC)等の樹脂母材と、この樹脂母材中に分散保持されたシリカ(SiO2 )粉末等のナノサイズのセラミックス粉末と、樹脂母材とセラミックス粉末との間に形成されるナノサイズ(1.5〜3nm以下)の空隙内に充填された酸とからなる燃料電池用電解質膜が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
この燃料電池用電解質膜では、ナノサイズのセラミックス粉末を樹脂母材に分散保持させることにより樹脂母材とセラミックス粉末との間にナノサイズの空隙を形成し、この空隙内にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体としての酸を充填することにより、樹脂母材にプロトン伝導性を付与している。
【0009】
一方、「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等からなる電解質膜は、例えば、キャスト法等により、パーフルオロスルホン酸系ポリマー等の溶液から所定厚さのフィルム膜を連続成形し、このフィルム膜を所定形状に切り抜くことにより製造される。こうして電解質膜を得た後は、例えば、以下のようにして燃料電池を完成する。
【0010】
すなわち、ペースト状の触媒材料よりなるインクをスクリーン印刷等したり、あるいは別途成形した触媒フィルムをホットプレス等したりすることにより、電解質膜の両面に一対の電極触媒層を接合する。その後、カーボンクロス等から別途成形した一対のガス拡散層を各電極触媒層の表面にホットプレス等によりそれぞれ接合する。一方、樹脂の射出成形又は金属のプレス成形等により一対のセパレータを成形した後、RIM成形等によりシリコーンゴム等よりなるシール用ビードを成形するとともにセパレータの所定部位に接合する。そして、電解質膜、各電極触媒層及び各ガス拡散層の一体物を挟むように一対のセパレータを配設し、各セパレータと電解質膜とを接着剤により接合して、燃料電池を完成する。
【0011】
【非特許文献1】
E.Peled,T.Duvdevani,A.Melman著、「A Novel Proton−Conducting Membrane」、Electrochemical and Solid−State Letters,1(5)、The Electrochemical Society.Inc.、1998年、p.210−211
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の電解質膜では、プロトン伝導性を付与すべく、わざわざセラミックス粉末を添加することで、セラミックス粉末と樹脂母材との間に空隙を形成し、この空隙内にプロトン伝導性液体を充填している。すなわち、上記従来の電解質膜では、プロトン伝導性を付与するために、セラミックス粉末を特別に添加する必要がある。このため、セラミックス粉末の分だけ材料費が高くなるという欠点がある。
【0013】
一方、キャスト法等によりフィルム膜を連続成形する上記従来の電解質膜の製造方法では、フィルム膜を成形した後に所定形状に切り取る必要があることから、製造工程が煩雑になるとともに、材料歩留りが低下するという欠点がある。
【0014】
なお、こうして得られた電解質膜に対して別途成形した電極触媒層をホットプレス等により接合する場合には、電解質膜に対する電極触媒層の位置精度が低下したり、あるいはゴミ等の環境による影響を受けたりすることにより、品質が低下するおそれがある。また、セパレータの所定部位にRIM成形等によりシール用ビードを別途成形、接合する場合には、セパレータに対するシール用ビードの位置精度が低下したり、あるいは接着不良が発生したりすることにより、品質が低下するおそれがある。
【0015】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池用電解質膜を安くかつ簡易に提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の燃料電池用電解質膜は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の燃料電池用電解質膜は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位に一体に形成されたシール用ビード部を備えている。
【0018】
好適な態様において、前記シール用ビード部は、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材に一体に形成され、内部空間をもつとともに該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中空状膨出部と、該内部空間内に充填され、該シール用ビード部のクリープを抑えるための耐クリープ材とからなる。
【0019】
本発明の燃料電池用電解質膜は、好適な態様において、前記膜本体部の両面に一体的に接合された一対の電極触媒層を備えている。
【0020】
上記課題を解決する本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を形成する膜本体部形成工程を備え、上記膜本体部形成工程は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填する射出工程と、該成形型内の圧力を低下させて上記熱可塑性樹脂を発泡成形し、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成する発泡成形工程と、該マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する充填工程とからなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位にシール用ビード部を一体に形成するビード部形成工程を備え、上記ビード部形成工程は、前記成形型を用いて、上記樹脂母材の所定部位で該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中実状膨出部を該樹脂母材と共に一体に成形する膨出部成形工程と、該成形型内で該中実状膨出部にガスインジェクションを行って、内部空間をもつ中空状膨出部を形成するガスインジェクション工程と、上記シール用ビード部のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材を該内部空間内に封入、充填する封入工程とからなる。
【0022】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層を一体的に形成する触媒層形成工程を備え、上記触媒層形成工程は、前記成形型を所定量型開きして該成形型と上記樹脂母材の両面との間に触媒層成形用空隙をそれぞれ形成する型開き工程と、各該触媒層成形用空隙内に触媒材料を充填して上記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層をそれぞれ一体的に形成する触媒材料充填工程とからなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池用電解質膜は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を備えている。この電解質膜の膜本体部は、マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性液体により、良好なプロトン伝導性を示す。
【0024】
この燃料電池用電解質膜では、膜本体部が、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とから構成されている。すなわち、この電解質膜の膜本体部は、プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいない。したがって、この電解質膜は、セラミックス粉末を含んでいない分だけ材料費が安くなる。
【0025】
また、この電解質膜では、膜本体部を構成するマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材が超臨界発泡成形により形成されている。このため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0026】
ここに、プロトン伝導性液体の種類としては、プロトン伝導性官能基をもつものであれば特に限定されない。例えば、プロトン伝導性官能基としてのスルホン酸基(−SO3 H)をもつ硫酸、ビニルスルホン酸やアクリルスルホン酸を好適に用いることができる。
【0027】
上記樹脂母材を構成する樹脂の種類としては、電解質膜として必要な耐熱性と強度を備えたものであれば特に限定されない。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン(PO)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
この樹脂母材の膜厚、すなわち電解質膜の膜本体部の膜厚は30〜60μm程度とすることができる。膜本体部の膜厚が30μmよりも薄いと、燃料電池用電解質膜として必要な強度を確保することが困難となる。一方、膜本体部の膜厚が60μmよりも厚いと、膜抵抗の増大により必要なプロトン伝導性を確保することが困難となる。
【0029】
熱可塑性樹脂の超臨界発泡成形により形成された上記マイクロセルは、それぞれが樹脂母材中に独立して存在する独立セル(独立気泡)であり、各マイクロセルが互いに連通するように連続した連続セル(連続気泡、貫通孔)となっているわけではない。
【0030】
上記マイクロセルの平均セル径、マイクロセル同士のセル間距離及び上記膜本体部の発泡密度は、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度及びプロトン伝導性を確保しうる範囲内で適宜設定することができる。
【0031】
マイクロセルの平均セル径は特に限定されないが、その上限を10μm程度とすることが好ましく、4μm程度とすることがより好ましい。マイクロセルの平均セル径が10μmを超えると、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度を確保することが困難となる。また、マイクロセルの平均セル径が4μm以下であれば、空隙率との兼ね合いもあるため一概には言えないが、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保しうる空隙率の範囲内で、未発泡状態の樹脂と同等の引張強度を保持することができる。一方、マイクロセルの平均セル径が極端に小さくなるとマイクロセル中にプロトン伝導性液体を充填することが困難になる。このため、マイクロセルの平均セル径の下限は、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保しうるように、超臨界発泡成形により発泡セル径を微細化しうる範囲内で適宜設定することができる。
【0032】
また、各マイクロセル同士のセル間距離が大きすぎると、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保することが困難になるため、セル間距離の上限は10μm程度とすることが好ましく、5μm程度とすることがより好ましい。一方、このセル間距離が小さすぎると膜強度が不足する。
【0033】
また、膜本体部の発泡密度が高すぎると、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度を確保することが困難となる。一方、膜本体部の発泡密度が低すぎると、マイクロセル中に充填されるプロトン伝導性液体の量が不十分となって燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保することが困難となる。
【0034】
なお、上記マイクロセルの平均セル径、セル間距離や発泡密度の調整は、超臨界発泡成形する際の樹脂温度、射出・充填速度や超臨界流体の圧力等を適宜設定することにより、行うことができる。
【0035】
上記膜本体部は、好適には、該膜本体部を構成する樹脂母材の所定部位に一体に形成されたシール用ビード部を備えている。このシール用ビード部は、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部と共にその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの対向面に圧接される。これにより、各セパレータ間で気密性(シール性)を確保したり、所定のガス通路を形成したりすることができる。このような気密性確保等のためのシール用ビード部が膜本体部を構成する樹脂母材の所定部位に一体に形成されているので、RIM成形等によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0036】
このシール用ビード部は、膜本体部の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに膜本体部の周縁端部で周方向に連続して延設された全周シール用ビード部とすることが好ましい。
【0037】
こうすれば、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部及びその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの各対向面のそれぞれに全周シール用ビード部を圧接させることにより、各セパレータ間における気密性を確保することが可能となる。
【0038】
また、上記膜本体部は、該膜本体部の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに該膜本体部の周縁端部で周方向に連続して延設された全周シール用ビード部と、該全周シール用ビード部の内側の所定部位に隣接して貫設された複数のガス通路用貫通部と、該膜本体部の一表面から一方の厚さ方向に膨出するとともに少なくとも一つの該ガス通路用貫通部を該全周シール用ビード部と共に囲むように略コの字状に延設された少なくとも一つの第1コの字状シール用ビード部と、該膜本体部の他表面から他方の厚さ方向に膨出するとともに他の該ガス通路用貫通部を該全周シール用ビード部とともに囲むように略コの字状に延設された少なくとも一つの第2コの字状シール用ビード部とを備えていることが好ましい。
【0039】
こうすれば、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部及びその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの各対向面のそれぞれに全周シール用ビード部を圧接させることにより、各セパレータ間における気密性を確保するとともに、一方のセパレータの対向面に第1コの字状シール用ビード部を圧接させかつ他方のセパレータの対向面に第2コの字状シール用ビード部を圧接させることにより、膜本体部の他表面側のみにガスを供給可能な第1ガス通路(第1コの字状シール用ビード部と全周シール用ビード部とで囲まれたガス通路用貫通部により形成される)と、膜本体部の一表面側のみにガスを供給可能な第2ガス通路(第2コの字状シール用ビード部と全周シール用ビード部とで囲まれたガス通路用貫通部により形成される)とを容易に形成することができる。また、従来の燃料電池では、電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させることにより、ガス通路を形成するとともにシール性を確保していたことから、接着剤不足によりシール性が不十分となったり、余分な接着剤によりガス通路が塞がれたりする等、接着剤による不良が発生するおそれがあった。また、接着剤の塗布等を行う接着工程は面倒であり、その分生産性も低下していた。この点、本態様の燃料電池では、上記のように膜本体部に一体に形成された第1及び第2コの字状シール用ビード部により第1及び第2ガス通路を形成することができることから、ガス通路を形成するとともにシール性を確保すべく電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させる必要がなくなり、品質及び生産性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
そして、上記シール用ビード部(上記全周シール用ビード部、上記第1コの字状シール用ビード部及び上記第2コの字状シール用ビード部)は、膜本体部を構成する樹脂母材に一体に形成され、内部空間をもつとともに該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中空状膨出部と、該内部空間内に充填され、該シール用ビード部のクリープを抑えるための耐クリープ材とから構成することが好ましい。こうすれば、中空状膨出部の内部空間内に充填された耐クリープ材により、シール用ビード部のクリープを抑えることができるので、シール用ビード部における気密性確保等の性能の信頼性を高めることが可能となる。
【0041】
上記耐クリープ材としては、シール用ビード部のクリープ変形を抑えることができるものであれば特に限定されず、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムやニトリルゴムを用いることができる。
【0042】
また、本発明の燃料電池用電解質膜は、上記膜本体部の両面に一体的に接合された一対の電極触媒層を備えていることが好ましい。各電極触媒層の厚さは5〜10μm程度とすることができる。
【0043】
この電極触媒層は、ペースト状の触媒材料よりなるインクを上記膜本体部の両面にスクリーン印刷等したり、あるいは別途成形した触媒フィルムをホットプレス等したりすることにより、上記膜本体部の両面に一体的に接合させることも可能であるが、後述するように、樹脂母材を発泡成形した同じ成形型内で電極触媒層を連続的に形成するという型内塗装成形により一体的に接合することが好ましい。
【0044】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を形成する膜本体部形成工程を備えている。そして、この膜本体部形成工程は、射出工程と、発泡成形工程と、充填工程とからなる。
【0045】
上記射出工程では、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填する。なお、成形型は、成形しようとする樹脂母材の形状に応じた所定形状のキャビティを有している。
【0046】
上記超臨界流体とは、温度及び圧力が臨界点を超えて超臨界状態に保持された流体をいう。この超臨界流体の種類としては、二酸化炭素や窒素等を採用することができる。
【0047】
この射出工程では、成形型内にガスを予め供給しておくこと等により熱可塑性樹脂が発泡しない程度の圧力に該成形型内を維持して、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂の発泡を抑制しつつ、該成形型内に超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を充填することが好ましい。
【0048】
なお、超臨界流体の熱可塑性樹脂への混入は、熱可塑性樹脂の溶融樹脂を成形型内に射出、充填する射出成形機の射出バレル内で行うことができる。すなわち、射出成形機の射出バレル内において、熱可塑性樹脂の溶融樹脂に超臨界流体を供給したり、あるいは熱可塑性樹脂の溶融樹脂に気体又は液体として流体を供給した後にその流体が超臨界状態となる温度及び圧力にしたりすることにより、熱可塑性樹脂の溶融樹脂に超臨界流体を混入、溶解させることができる。
【0049】
また、熱可塑性樹脂への超臨界流体の混入量は、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材のマイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度に影響を及ぼすことから、マイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度が所定範囲となるように適宜調整することができる。
【0050】
上記発泡成形工程では、上記成形型内の圧力を低下させて上記熱可塑性樹脂を発泡成形し、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成する。
【0051】
上記成形型内の圧力低下は、超臨界発泡成形後の樹脂母材が所定の発泡倍率となるように所定量微小(数μm〜数十μm程度)に型開き等することにより行うことができる。この成形型内の圧力低下により熱可塑性樹脂を発泡させる際の熱可塑性樹脂の樹脂温度は、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材のマイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度に影響を及ぼすことから、マイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度が所定範囲となるように適宜調整することができ、例えば、(樹脂母材の溶融温度+50)℃程度とすることができる。
【0052】
上記充填工程では、上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する。この充填工程は、上記射出工程及び上記発泡成形工程を経て得られたマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を上記成形型から脱型してから、この樹脂母材にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を含浸させること等により行うことができる。
【0053】
このように本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法では、超臨界発泡成形を利用してマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成した後、この樹脂母材のマイクロセル中にプロトン伝導性液体を含浸等により充填する。このため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0054】
また、超臨界発泡成形によれば、超臨界流体における液体に近い優れた溶解性と気体に近い優れた拡散性を利用しつつ、マイクロセルをもつ樹脂母材を成形することができる。
【0055】
具体的には、高い溶解性をもつ超臨界流体の溶媒としての作用により、超臨界流体が混入、溶解された熱可塑性樹脂は流動性や型転写性が向上する。このため、電解質膜のように薄い膜状に成形する場合であっても良好に成形することができ、また、効率的な成形も可能となって成形サイクルの短縮化を図ることもできる。また、超臨界流体の高い拡散性により、マイクロセルの平均セル径を微細化したり発泡密度を高めたりすることが容易となり、ミクロンオーダー(ミクロンサイズ)のマイクロセルをもつ樹脂母材を容易に成形することができる。
【0056】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位にシール用ビード部を一体に形成するビード部形成工程を備えている。そして、このビード部形成工程は、膨出部成形工程と、ガスインジェクション工程と、封入工程とからなる。
【0057】
上記膨出部成形工程では、上記成形型を用いて、上記樹脂母材の所定部位で該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中実状膨出部を該樹脂母材と共に一体に成形する。すなわち、成形しようとする樹脂母材及びこの樹脂母材の所定部位に一体に形成される中実状膨出部の形状に応じた所定形状のキャビティを有する成形型を用いて、上記膜本体部形成工程において樹脂母材を成形する際に、該樹脂母材と共に中実状膨出部を一体に成形する。
【0058】
上記ガスインジェクション工程では、上記成形型内で上記中実状膨出部にガスインジェクションを行って、内部空間をもつ中空状膨出部を形成する。このガスインジェクション工程は、中実状膨出部にある熱可塑性樹脂の溶融樹脂が固化していない溶融状態又は半溶融状態にあるときに行う必要がある。このため、上記膜本体部形成工程において、射出工程で超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填した後、発泡成形工程で成形型内の圧力を低下させて熱可塑性樹脂を発泡させるべく成形型を微小に型開きするのとほぼ同時(又は微小に型開きした直後)にガスインジェクションを行うことが好ましい。
【0059】
上記封入工程では、上記シール用ビード部のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材を上記中空状膨出部の上記内部空間内に封入、充填する。この封入工程は、上記成形型内で行ってもよいし、あるいは上記成形型から脱型した状態で行ってもよい。
【0060】
なお、ビード部形成工程を行う場合であって上記ガスインジェクション工程終了後に脱型してから上記封入工程(上記中空状膨出部の内部空間内に耐クリープ材を封入、充填する工程)を行う場合には、上記膜本体部形成工程における上記充填工程(上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する工程)は、この封入工程終了後に行うことが好ましい。脱型後、上記充填工程を行ってから上記封入工程を行おうとすると、中空状膨出部の内部空間内にプロトン伝導性液体が含浸してしまい、プロトン伝導性液体が充填された中空状膨出部の内部空間内に耐クリープ材を封入、充填することは困難だからである。
【0061】
このように所定形状のキャビティをもつ成形型内で樹脂母材を成形するとともにこの樹脂母材と一体に中実状膨出部を成形し、この成形型内で連続的にガスインジェクションを行って中空状膨出部を樹脂母材に一体に形成することにより、例えばRIM成形によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0062】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層を一体的に形成する触媒層形成工程を備えている。そして、この触媒層形成工程は、型開き工程と、触媒材料充填工程とからなる。
【0063】
上記触媒層形成工程では、前記成形型を所定量型開きして該成形型と上記樹脂母材の両面との間に触媒層成形用空隙をそれぞれ形成する。このときの型開き量は、形成しようとする電極触媒層の厚さに応じて適宜設定される。
【0064】
上記触媒材料充填工程では、各上記触媒層成形用空隙内に触媒材料を充填して上記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層をそれぞれ一体的に形成する。
【0065】
上記触媒層形成工程は、上記シール用ビード部形成工程を行う場合には、シール用ビード部形成工程における上記ガスインジェクション工程を行った後でかつ上記封入工程を行う前に行ってもよいし(シール用ビード部形成工程における封入工程を上記成形型内で行う場合及び該封入工程を該成形型から脱型した状態で行う場合のいずれの場合であっても)、あるいは上記成形型内で上記ガスインジェクション工程及び上記封入工程を行った後に行ってもよい。一方、上記シール用ビード部形成工程を行わない場合には、上記膜本体部形成における発泡成形工程を行った後に行うことができる。
【0066】
なお、触媒層形成工程を行う場合には、上記膜本体部形成工程における上記充填工程(上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する工程)はこの触媒層形成工程終了後に行われる。
【0067】
このように樹脂母材を発泡成形した同じ成形型内で電極触媒層を連続的に形成するという型内塗装成形により、例えば別途成形した電極触媒層をホットプレス等で接合する場合のように位置精度が低下したりあるいはゴミ等の環境による影響を受けたりするおそれが少なく、品質の向上を図ることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0069】
本実施例の燃料電池用電解質膜1は、図1〜図3に示されるように、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3と、マイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性液体4とからなる膜本体部5を備えている。そして、この膜本体部5の両面には一対の電極触媒層(厚さ10μm)6、6が一体的に接合されている。
【0070】
なお、図1は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の平面図、図2は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の要部断面図であり、図1のA−A線矢視断面図、図3は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0071】
上記マイクロセル2はそれぞれが樹脂母材3中に独立して存在する独立セルである。このマイクロセル2の平均セル径は4μmとされ、また、各マイクロセル2同士のセル間距離は平均で5μm、最大で10μmとされている。なお、樹脂母材3(膜本体部5)の発泡密度(空隙率)は80%程度とされている。
【0072】
上記樹脂母材3は、後述するように、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたもので、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる。
【0073】
上記プロトン伝導性液体4は、プロトン伝導性官能基としてのスルホン酸基をもつ硫酸よりなる。
【0074】
上記膜本体部5は、後述するセパレータ19、20と略同等の外形寸法(縦及び横の長さ)を有する縦15cm×横20cmの長方形状をなし、厚さが30μmとされている。そして、この膜本体部5は、上記電極触媒層6が一体的に接合された中央部5aと、この中央部5aを囲むように周方向に連続して延び、後述する全周シール用ビード部等が設けられている帯枠状の周縁端部5bとを有している。
【0075】
また、上記膜本体部5は、全周シール用ビード部7と、左右一対(図1の左右一対。以下、同様。)の第1ガス(水素ガス)通路用貫通部8、8と、上下一対(図1の上下一対。以下、同様)の第2ガス(酸素ガス)通路用貫通部9、9と、左右一対の第1ガス(水素ガス)通路10、10を形成するための左右一対の第1コの字状シール用ビード部11、11と、上下一対の第2ガス(酸素ガス)通路12、12を形成するための上下一対の第2コの字状シール用ビード部13、13とを周縁端部5bに備えている。
【0076】
上記全周シール用ビード部7は、膜本体部5の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに該膜本体部5の周縁端部5bで周方向に連続して長方形状に延設されている。
【0077】
左右一対の上記第1ガス通路用貫通部8、8は、上記全周シール用ビード部7の左右両側(短辺側)の内側に隣接して貫設されている。また、上下一対の上記第2ガス通路用貫通部9、9は、上記全周シール用ビード部7の上下両側(長辺側)の内側に隣接して貫設されている。
【0078】
左右一対の上記第1コの字状シール用ビード部11、11は、膜本体部5の一表面(図1の裏側)から一方の厚さ方向に膨出するとともに左右一対の上記第1ガス通路用貫通部8、8を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略コの字状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。また、上下一対の上記第2コの字状シール用ビード部13、13は、膜本体部5の他表面(図1の表側)から他方の厚さ方向に膨出するとともに上下一対の上記第2ガス通路用貫通部9、9を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略コの字状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。
【0079】
さらに、上記膜本体部5は、4個の水路形成用貫通部14、14、14、14と、4個の冷却水路を形成するための4個の水路形成用ビード部15、15、15、15とを周縁端部5bに備えている。
【0080】
各水路形成用貫通部14は、上記全周シール用ビード部7の四隅の内側に隣接して貫設されている。また、各水路形成用ビード部15は、膜本体部5の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに各水路形成用貫通部14を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略円弧状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。
【0081】
そして、シール用ビード部(上記全周シール用ビード部7、各上記第1コの字状シール用ビード部11、11及び各上記第2コの字状シール用ビード部13、13。以下、同様。)及び各上記水路形成用ビード部15は、上記膜本体部5を構成する上記樹脂母材3に一体に形成され、内部空間16aをもつとともに該樹脂母材3の厚さ方向に膨出する中空状膨出部16と、この内部空間16a内に充填され、上記シール用ビード部及び各水路形成用ビード部15のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材17とから構成されている。なお、この耐クリープ材17はシリコーンゴムよりなる。
【0082】
このように膜本体部5の両面に一対の電極触媒層6、6が一体的に接合された本実施例の燃料電池用電解質膜1は、図4に示されるように、カーボンクロス等から別途成形した一対のガス拡散層18、18を各電極触媒層6、6の表面にホットプレス等によりそれぞれ接合するとともに、電解質膜1、各電極触媒層6、6及び各ガス拡散層18、18の一体物を挟むように一対のセパレータ19、20を配設して、燃料電池とすることができる。このとき、各セパレータ19、20の周縁端部における対向面が膜本体部5の上記シール用ビード部及び各上記水路形成用ビード部15に圧接される。これにより、各セパレータ19、20間で気密性(シール性)を確保したり、所定のガス通路を形成したりすることができる。
【0083】
なお、各セパレータ19、20は、樹脂の射出成形(又は金属のプレス成形)により所定形状に成形したもので、膜本体部5の第1ガス(水素ガス)通路10、10に通じる水素ガス通路21と、膜本体部5の第2ガス(酸素ガス)通路12、12に通じる酸素ガス通路22とが形成されている。
【0084】
こうして得られた燃料電池では、膜本体部5を構成する樹脂母材3のマイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性液体4により、良好なプロトン伝導性を示す。そして、この本実施例の電解質膜1の膜本体部5は、プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいない。したがって、この電解質膜1は、セラミックス粉末を含んでいない分だけ材料費が安くなる。
【0085】
また、この電解質膜1では、膜本体部5を構成するマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3が超臨界発泡成形により形成されている。このため、キャスト法等によりフィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0086】
例えば、キャスト成形による連続成形の場合、1分当たりに成形できるフィルム膜の長さは2m(幅750cm)で、このフィルム膜から電解質膜を切り取るには1枚当たり1秒かかり、1分当たり20枚の電解質膜しか得ることができない。これに対し、後述する超臨界発泡成形によれば、1分当たり24枚の電解質膜を得ることが可能となる。
【0087】
また、上記キャスト法により電解質膜を得る場合は材料歩留り(成形品に必要な材料/成形に要した材料)が80%程度となるが、超臨界発泡成形の場合は無駄になる材料がほとんど無く、材料歩留りが99%となる。
【0088】
さらに、本実施例に係る電解質膜1では、各セパレータ間で気密性を確保したり、所定のガス通路を形成したりするための上記シール用ビード部が、膜本体部5を構成する樹脂母材3の所定部位に一体に形成されている。このため、RIM成形等によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0089】
また、この電解質膜1では、各セパレータ19、20の対向面のそれぞれに全周シール用ビード部7を圧接させることにより、各セパレータ19、20間における気密性を確保するとともに、一方のセパレータ19の対向面に第1コの字状シール用ビード部11を圧接させかつ他方のセパレータ20の対向面に第2コの字状シール用ビード部13を圧接させることにより、膜本体部5の他表面側のみにガスを供給可能な第1ガス通路10(第1コの字状シール用ビード部11と全周シール用ビード部7とで囲まれた第1ガス通路用貫通部8により形成される)と、膜本体部5の一表面側のみにガスを供給可能な第2ガス通路12(第2コの字状シール用ビード部13と全周シール用ビード部7とで囲まれた第2ガス通路用貫通部9により形成される)とを容易に形成することができる。
【0090】
さらに、従来の燃料電池では、電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させることにより、ガス通路を形成するとともにシール性を確保していたことから、接着剤不足によりシール性が不十分となったり、余分な接着剤によりガス通路が塞がれたりする等、接着剤による不良が10%程度の割合で発生しており、不良品は廃棄するしかなかった。また、接着剤の塗布等を行う接着工程は面倒であり、その分生産性も低下していた。この点、本実施例に係る燃料電池では、上記のように膜本体部5に一体に形成された第1及び第2コの字状シール用ビード部11及び13により第1及び第2ガス通路10及び12を形成することができることから、ガス通路を形成するとともにシール性を確保すべく膜本体部5とセパレータ19、20との間に接着剤等のシール剤を介在させる必要がなくなり、品質及び生産性の向上を図ることが可能となる。
【0091】
そして、上記シール用ビード部(上記全周シール用ビード部7、上記第1コの字状シール用ビード部11及び上記第2コの字状シール用ビード部13)及び上記水路形成用ビード部15は、中空状膨出部16の内部空間16a内に充填された耐クリープ材17により、クリープ変形が抑えられるので、シール用ビード部における気密性確保等の性能の信頼性を高めることが可能となる。
【0092】
以下、上記構成を有する本実施例の燃料電池用電解質膜の製造方法について説明する。
【0093】
この燃料電池用電解質膜の製造方法では、図5に示される製造装置を用いる。この製造装置は、所定のキャビティ形状を有する成形型30及びこの成形型30のキャビティ内に溶融樹脂を供給する射出バレル31をもつ射出プレス成形機32と、超臨界流体用ボンベ33をもち射出バレル31内に超臨界流体を供給する超臨界流体発生装置(SCS装置)34と、ガスインジェクション用ボンベ35をもち成形型30のキャビティ内の所定部位にガスインジェクション可能なガスインジェクション装置36と、成形型30のキャビティ内の所定部位に触媒材料を注入する触媒材料注入装置37と、成形型30のキャビティ内の所定部位に耐クリープ材を注入する耐クリープ材封入装置38とを備えている。
【0094】
ここに、上記成形型30は、成形しようとする樹脂母材及びこの樹脂母材の所定部位に一体に形成される中実状膨出部の形状に応じた所定形状のキャビティを有している。また、上記成形型30は、図示しない制御装置により高精度に型開き制御可能なボールネジ構造を採用する電動成形型よりなる。
【0095】
上記構成の製造装置を用い、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)を採用するとともに超臨界流体として二酸化炭素を採用して、以下のとおり電解質膜の製造を行った。
【0096】
<膜本体部形成工程における射出工程>
射出プレス成形機32の射出バレル31にPPSを供給して溶融樹脂とするとともに、この射出バレル31内に超臨界流体発生装置34から超臨界流体としての二酸化炭素を供給し、溶融樹脂に二酸化炭素を十分に混練、溶解させた。このときの射出バレル31内の圧力は7MPaとし、射出バレル31内の樹脂温度は320℃とした。
【0097】
そして、型閉めされた状態の成形型30のキャビティ内に射出バレル31から上記超臨界流体が溶解された溶融樹脂を70MPaの射出圧で射出、充填した。
【0098】
なお、この成形型30の型温は80℃とした。
【0099】
<成形工程(発泡成形工程、膨出部成形工程)>
この成形工程は、膜本体部形成工程における発泡成形工程をなすとともに、シール用ビード部形成工程における膨出部成形工程をなす。
【0100】
上記射出工程の終了直後に、所定の発泡倍率となるように成形型30を所定量微小(数十μm程度)に型開きした。この型開きにより、キャビテイ内圧力を所定量低下させ、キャビティ内の樹脂を発泡させた。
【0101】
これにより、図6及び図7に示されるように、所定部位(上記シール用ビード部及び水路形成用ビード部15に対応する全ての部位)で厚さ方向に膨出する中実状膨出部23が一体に形成されるとともに、左右一対の第1ガス通路用貫通部8、8、上下一対の第2ガス通路用貫通部9、9及び4個の水路形成用貫通部14が所定部位に形成され、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3を成形した。
【0102】
<シール用ビード部形成工程におけるガスインジェクション工程>
上記射出工程の終了直後であって、上記成形工程で成形型30を微小に型開きするのととほぼ同時か、あるいは微小型開きした直後に、該成形型30内で、ガスインジェクション装置36から上記中実状膨出部23にガスインジェクションを行って、内部空間16aをもつ中空状膨出部16とした。
【0103】
<シール用ビード部形成工程における耐クリープ材封入工程>
耐クリープ材封入装置38から上記ガスインジェクション工程で得られた中空状膨出部16の内部空間16a内に、耐クリープ材17としてのシリコーンゴムを封入、充填した。耐クリープ材封入装置38から注入されるシリコーンゴムは、注入時には流動性があり、封入、充填後に橋かけによりゴム状弾性体となる。
【0104】
<触媒層形成工程における型開き工程>
上記耐クリープ材封入工程終了後に、上記成形型30を所定量型開きして、成形型30の型面と上記樹脂母材3の上記膜本体部5の中央部5aに相当する部分との間に10μmの触媒層成形用空隙をそれぞれ形成した。
【0105】
<触媒層形成工程における触媒材料充填工程>
そして、触媒材料注入装置37から各上記触媒層成形用空隙内に触媒材料を注入、充填して、上記樹脂母材3の両面に一対の電極触媒層6、6を一体的に形成した。
【0106】
<膜本体部形成工程における充填工程>
上記成形型30を大きく型開きして樹脂母材3を脱型してから、この樹脂母材3にプロトン伝導性液体4としての硫酸を含浸させることにより、樹脂母材3のマイクロセル2中にプロトン伝導性液体4を充填した。
【0107】
こうして、膜本体部5の中央部5a両面に一対の電極触媒層6、6が一体的に接合された本実施例に係る燃料電池用電解質膜1を製造した。
【0108】
このように本実施例に係る燃料電池用電解質膜1の製造方法では、超臨界発泡成形を利用してマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3を形成した後、この樹脂母材3のマイクロセル2中にプロトン伝導性液体4を含浸により充填するという簡易な方法により、材料歩留り高く電解質膜1を得ることができる。
【0109】
また、超臨界発泡成形の利用により、電解質膜のように薄い膜状に成形する場合であっても良好に成形することができ、また、効率的な成形も可能となって成形サイクルの短縮化を図ることもできる。
【0110】
さらに、本実施例に係る電解質膜1の製造方法では、樹脂母材3の発泡成形、上記シール用ビード部等の形成及び電極触媒層6の形成を全て同じ成形型30内で行っていることから、位置精度の低下やゴミ等の影響を受けるおそれがなく、品質の向上を図ることができるとともに、生産性の向上を図ることも可能となる。
【0111】
(マイクロセルの平均セル径と樹脂母材の強度との関係)
超臨界発泡成形における成形条件(樹脂温度や型温等)を適宜変化させることにより、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材の引張強度と、樹脂母材のマイクロセルの平均セル径との関係を調べた。その結果を図8に示す。
【0112】
なお、図8の縦軸は、平均セル径が0μm、すなわち未発泡状態で成形した樹脂母材の引張強度を100%としたときの引張強度保持率である。
【0113】
図8から明らかなように、マイクロセルの平均セル径が4μm以下であれば、未発泡状態の樹脂母材と同等の引張強度を確保することができる。
【0114】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の燃料電池用電解質膜及びその製造方法によれば、超臨界発泡成形によりマイクロセルをもつ樹脂母材を形成し、このマイクロセル中にプロトン伝導性液体を充填するという簡易な方法により、燃料電池用電解質膜を安く提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の平面図である。
【図2】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の要部断面図であり、図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図4】本実施例に係る燃料電池用電解質膜を用いて作製した燃料電池の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図5】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の製造装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図6】本実施例に係り、成形工程終了後における樹脂母材の平面図である。
【図7】本実施例に係り、成形工程終了後における樹脂母材の要部断面図であり、図6のB−B線矢視断面図である。
【図8】超臨界発泡成形により得られる樹脂母材の引張強度と、樹脂母材のマイクロセルの平均セル径との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…電解質膜 2…マイクロセル
3…樹脂母材 4…プロトン伝導性液体
5…膜本体部 6…電極触媒層
7…全周シール用ビード部 11…第1コの字状シール用ビード部
13…第2コの字状シール用ビード部 16…中空状膨出部
17…耐クリープ材 23…中実状膨出部
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池用電解質膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境に優しく、また省資源化を図れる発電装置として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、電解質の種類によって、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型や固体高分子型等に分類される。これらのうち固体高分子型燃料電池は、近年の研究により小型かつ高密度・高出力が可能となりつつあり、また低温運転可能であることから、車載用等の移動型電源に適用することが期待されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、一般に、プロトン伝導性をもつ固体高分子よりなる電解質膜と、この電解質膜の両面に接合された一対の電極触媒層と、各電極触媒層の表面にそれぞれ接合された一対のガス拡散層と、これら電解質膜、各電極触媒層及び各ガス拡散層の一体物を挟むように配設され電解質膜に接着剤により接合された一対のセパレータとから構成されている。なお、セパレータの所定部位にはシール用ビードが一体的に形成されており、このシール用ビードにより各セパレータ間における気密性を確保している。また、電解質膜の一方の面に配設された一方の電極触媒層及びガス拡散層によりアノード極としての燃料極が構成され、電解質膜の他方の面に配設された他方の電極触媒層及びガス拡散層によりカソード極としての酸素極が構成される。
【0004】
この固体高分子型燃料電池においては、燃料極に水素等の燃料ガスが供給されるとともに、酸素極に空気等の酸化ガスが供給されることにより、各電極で下記(1)式及び(2)式に示す電極反応がそれぞれ起こり、その結果燃料極で発生した水素イオン(プロトン)が水和状態で電解質膜を介して酸素極へ移動し、この酸素極で水(H2 O)が生成されるとともに電気エネルギーが得られる。このように、固体高分子型燃料電池では、電気化学的反応を利用して、燃料ガスの化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すことができる。
【0005】
アノード反応(燃料極):H2 →2H+ +2e− …(1)
カソード反応(酸素極):2H+ +2e−+(1/2)O2 →H2 O …(2)
ここに、上記プロトン伝導性をもつ固体高分子よりなる電解質膜として、一般に、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)等のパーフルオロスルホン酸系ポリマーや、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸ポリマー等が用いられている。
【0006】
しかし、これら「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等はコストが高いという欠点がある。
【0007】
そこで、「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等よりもコストの安い燃料電池用電解質膜として、ポリカーボネート(PC)等の樹脂母材と、この樹脂母材中に分散保持されたシリカ(SiO2 )粉末等のナノサイズのセラミックス粉末と、樹脂母材とセラミックス粉末との間に形成されるナノサイズ(1.5〜3nm以下)の空隙内に充填された酸とからなる燃料電池用電解質膜が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
この燃料電池用電解質膜では、ナノサイズのセラミックス粉末を樹脂母材に分散保持させることにより樹脂母材とセラミックス粉末との間にナノサイズの空隙を形成し、この空隙内にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体としての酸を充填することにより、樹脂母材にプロトン伝導性を付与している。
【0009】
一方、「Nafion」等のパーフルオロスルホン酸系ポリマー等からなる電解質膜は、例えば、キャスト法等により、パーフルオロスルホン酸系ポリマー等の溶液から所定厚さのフィルム膜を連続成形し、このフィルム膜を所定形状に切り抜くことにより製造される。こうして電解質膜を得た後は、例えば、以下のようにして燃料電池を完成する。
【0010】
すなわち、ペースト状の触媒材料よりなるインクをスクリーン印刷等したり、あるいは別途成形した触媒フィルムをホットプレス等したりすることにより、電解質膜の両面に一対の電極触媒層を接合する。その後、カーボンクロス等から別途成形した一対のガス拡散層を各電極触媒層の表面にホットプレス等によりそれぞれ接合する。一方、樹脂の射出成形又は金属のプレス成形等により一対のセパレータを成形した後、RIM成形等によりシリコーンゴム等よりなるシール用ビードを成形するとともにセパレータの所定部位に接合する。そして、電解質膜、各電極触媒層及び各ガス拡散層の一体物を挟むように一対のセパレータを配設し、各セパレータと電解質膜とを接着剤により接合して、燃料電池を完成する。
【0011】
【非特許文献1】
E.Peled,T.Duvdevani,A.Melman著、「A Novel Proton−Conducting Membrane」、Electrochemical and Solid−State Letters,1(5)、The Electrochemical Society.Inc.、1998年、p.210−211
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の電解質膜では、プロトン伝導性を付与すべく、わざわざセラミックス粉末を添加することで、セラミックス粉末と樹脂母材との間に空隙を形成し、この空隙内にプロトン伝導性液体を充填している。すなわち、上記従来の電解質膜では、プロトン伝導性を付与するために、セラミックス粉末を特別に添加する必要がある。このため、セラミックス粉末の分だけ材料費が高くなるという欠点がある。
【0013】
一方、キャスト法等によりフィルム膜を連続成形する上記従来の電解質膜の製造方法では、フィルム膜を成形した後に所定形状に切り取る必要があることから、製造工程が煩雑になるとともに、材料歩留りが低下するという欠点がある。
【0014】
なお、こうして得られた電解質膜に対して別途成形した電極触媒層をホットプレス等により接合する場合には、電解質膜に対する電極触媒層の位置精度が低下したり、あるいはゴミ等の環境による影響を受けたりすることにより、品質が低下するおそれがある。また、セパレータの所定部位にRIM成形等によりシール用ビードを別途成形、接合する場合には、セパレータに対するシール用ビードの位置精度が低下したり、あるいは接着不良が発生したりすることにより、品質が低下するおそれがある。
【0015】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池用電解質膜を安くかつ簡易に提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の燃料電池用電解質膜は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の燃料電池用電解質膜は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位に一体に形成されたシール用ビード部を備えている。
【0018】
好適な態様において、前記シール用ビード部は、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材に一体に形成され、内部空間をもつとともに該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中空状膨出部と、該内部空間内に充填され、該シール用ビード部のクリープを抑えるための耐クリープ材とからなる。
【0019】
本発明の燃料電池用電解質膜は、好適な態様において、前記膜本体部の両面に一体的に接合された一対の電極触媒層を備えている。
【0020】
上記課題を解決する本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を形成する膜本体部形成工程を備え、上記膜本体部形成工程は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填する射出工程と、該成形型内の圧力を低下させて上記熱可塑性樹脂を発泡成形し、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成する発泡成形工程と、該マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する充填工程とからなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位にシール用ビード部を一体に形成するビード部形成工程を備え、上記ビード部形成工程は、前記成形型を用いて、上記樹脂母材の所定部位で該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中実状膨出部を該樹脂母材と共に一体に成形する膨出部成形工程と、該成形型内で該中実状膨出部にガスインジェクションを行って、内部空間をもつ中空状膨出部を形成するガスインジェクション工程と、上記シール用ビード部のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材を該内部空間内に封入、充填する封入工程とからなる。
【0022】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層を一体的に形成する触媒層形成工程を備え、上記触媒層形成工程は、前記成形型を所定量型開きして該成形型と上記樹脂母材の両面との間に触媒層成形用空隙をそれぞれ形成する型開き工程と、各該触媒層成形用空隙内に触媒材料を充填して上記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層をそれぞれ一体的に形成する触媒材料充填工程とからなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池用電解質膜は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を備えている。この電解質膜の膜本体部は、マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性液体により、良好なプロトン伝導性を示す。
【0024】
この燃料電池用電解質膜では、膜本体部が、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、このマイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とから構成されている。すなわち、この電解質膜の膜本体部は、プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいない。したがって、この電解質膜は、セラミックス粉末を含んでいない分だけ材料費が安くなる。
【0025】
また、この電解質膜では、膜本体部を構成するマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材が超臨界発泡成形により形成されている。このため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0026】
ここに、プロトン伝導性液体の種類としては、プロトン伝導性官能基をもつものであれば特に限定されない。例えば、プロトン伝導性官能基としてのスルホン酸基(−SO3 H)をもつ硫酸、ビニルスルホン酸やアクリルスルホン酸を好適に用いることができる。
【0027】
上記樹脂母材を構成する樹脂の種類としては、電解質膜として必要な耐熱性と強度を備えたものであれば特に限定されない。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン(PO)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
この樹脂母材の膜厚、すなわち電解質膜の膜本体部の膜厚は30〜60μm程度とすることができる。膜本体部の膜厚が30μmよりも薄いと、燃料電池用電解質膜として必要な強度を確保することが困難となる。一方、膜本体部の膜厚が60μmよりも厚いと、膜抵抗の増大により必要なプロトン伝導性を確保することが困難となる。
【0029】
熱可塑性樹脂の超臨界発泡成形により形成された上記マイクロセルは、それぞれが樹脂母材中に独立して存在する独立セル(独立気泡)であり、各マイクロセルが互いに連通するように連続した連続セル(連続気泡、貫通孔)となっているわけではない。
【0030】
上記マイクロセルの平均セル径、マイクロセル同士のセル間距離及び上記膜本体部の発泡密度は、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度及びプロトン伝導性を確保しうる範囲内で適宜設定することができる。
【0031】
マイクロセルの平均セル径は特に限定されないが、その上限を10μm程度とすることが好ましく、4μm程度とすることがより好ましい。マイクロセルの平均セル径が10μmを超えると、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度を確保することが困難となる。また、マイクロセルの平均セル径が4μm以下であれば、空隙率との兼ね合いもあるため一概には言えないが、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保しうる空隙率の範囲内で、未発泡状態の樹脂と同等の引張強度を保持することができる。一方、マイクロセルの平均セル径が極端に小さくなるとマイクロセル中にプロトン伝導性液体を充填することが困難になる。このため、マイクロセルの平均セル径の下限は、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保しうるように、超臨界発泡成形により発泡セル径を微細化しうる範囲内で適宜設定することができる。
【0032】
また、各マイクロセル同士のセル間距離が大きすぎると、燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保することが困難になるため、セル間距離の上限は10μm程度とすることが好ましく、5μm程度とすることがより好ましい。一方、このセル間距離が小さすぎると膜強度が不足する。
【0033】
また、膜本体部の発泡密度が高すぎると、燃料電池用電解質膜として必要な膜強度を確保することが困難となる。一方、膜本体部の発泡密度が低すぎると、マイクロセル中に充填されるプロトン伝導性液体の量が不十分となって燃料電池用電解質膜として必要なプロトン伝導性を確保することが困難となる。
【0034】
なお、上記マイクロセルの平均セル径、セル間距離や発泡密度の調整は、超臨界発泡成形する際の樹脂温度、射出・充填速度や超臨界流体の圧力等を適宜設定することにより、行うことができる。
【0035】
上記膜本体部は、好適には、該膜本体部を構成する樹脂母材の所定部位に一体に形成されたシール用ビード部を備えている。このシール用ビード部は、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部と共にその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの対向面に圧接される。これにより、各セパレータ間で気密性(シール性)を確保したり、所定のガス通路を形成したりすることができる。このような気密性確保等のためのシール用ビード部が膜本体部を構成する樹脂母材の所定部位に一体に形成されているので、RIM成形等によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0036】
このシール用ビード部は、膜本体部の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに膜本体部の周縁端部で周方向に連続して延設された全周シール用ビード部とすることが好ましい。
【0037】
こうすれば、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部及びその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの各対向面のそれぞれに全周シール用ビード部を圧接させることにより、各セパレータ間における気密性を確保することが可能となる。
【0038】
また、上記膜本体部は、該膜本体部の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに該膜本体部の周縁端部で周方向に連続して延設された全周シール用ビード部と、該全周シール用ビード部の内側の所定部位に隣接して貫設された複数のガス通路用貫通部と、該膜本体部の一表面から一方の厚さ方向に膨出するとともに少なくとも一つの該ガス通路用貫通部を該全周シール用ビード部と共に囲むように略コの字状に延設された少なくとも一つの第1コの字状シール用ビード部と、該膜本体部の他表面から他方の厚さ方向に膨出するとともに他の該ガス通路用貫通部を該全周シール用ビード部とともに囲むように略コの字状に延設された少なくとも一つの第2コの字状シール用ビード部とを備えていることが好ましい。
【0039】
こうすれば、本発明の燃料電池用電解質を用いて燃料電池を作製する際に、膜本体部及びその両面に接合された一対の電極触媒層及び一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータの各対向面のそれぞれに全周シール用ビード部を圧接させることにより、各セパレータ間における気密性を確保するとともに、一方のセパレータの対向面に第1コの字状シール用ビード部を圧接させかつ他方のセパレータの対向面に第2コの字状シール用ビード部を圧接させることにより、膜本体部の他表面側のみにガスを供給可能な第1ガス通路(第1コの字状シール用ビード部と全周シール用ビード部とで囲まれたガス通路用貫通部により形成される)と、膜本体部の一表面側のみにガスを供給可能な第2ガス通路(第2コの字状シール用ビード部と全周シール用ビード部とで囲まれたガス通路用貫通部により形成される)とを容易に形成することができる。また、従来の燃料電池では、電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させることにより、ガス通路を形成するとともにシール性を確保していたことから、接着剤不足によりシール性が不十分となったり、余分な接着剤によりガス通路が塞がれたりする等、接着剤による不良が発生するおそれがあった。また、接着剤の塗布等を行う接着工程は面倒であり、その分生産性も低下していた。この点、本態様の燃料電池では、上記のように膜本体部に一体に形成された第1及び第2コの字状シール用ビード部により第1及び第2ガス通路を形成することができることから、ガス通路を形成するとともにシール性を確保すべく電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させる必要がなくなり、品質及び生産性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
そして、上記シール用ビード部(上記全周シール用ビード部、上記第1コの字状シール用ビード部及び上記第2コの字状シール用ビード部)は、膜本体部を構成する樹脂母材に一体に形成され、内部空間をもつとともに該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中空状膨出部と、該内部空間内に充填され、該シール用ビード部のクリープを抑えるための耐クリープ材とから構成することが好ましい。こうすれば、中空状膨出部の内部空間内に充填された耐クリープ材により、シール用ビード部のクリープを抑えることができるので、シール用ビード部における気密性確保等の性能の信頼性を高めることが可能となる。
【0041】
上記耐クリープ材としては、シール用ビード部のクリープ変形を抑えることができるものであれば特に限定されず、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムやニトリルゴムを用いることができる。
【0042】
また、本発明の燃料電池用電解質膜は、上記膜本体部の両面に一体的に接合された一対の電極触媒層を備えていることが好ましい。各電極触媒層の厚さは5〜10μm程度とすることができる。
【0043】
この電極触媒層は、ペースト状の触媒材料よりなるインクを上記膜本体部の両面にスクリーン印刷等したり、あるいは別途成形した触媒フィルムをホットプレス等したりすることにより、上記膜本体部の両面に一体的に接合させることも可能であるが、後述するように、樹脂母材を発泡成形した同じ成形型内で電極触媒層を連続的に形成するという型内塗装成形により一体的に接合することが好ましい。
【0044】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を形成する膜本体部形成工程を備えている。そして、この膜本体部形成工程は、射出工程と、発泡成形工程と、充填工程とからなる。
【0045】
上記射出工程では、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填する。なお、成形型は、成形しようとする樹脂母材の形状に応じた所定形状のキャビティを有している。
【0046】
上記超臨界流体とは、温度及び圧力が臨界点を超えて超臨界状態に保持された流体をいう。この超臨界流体の種類としては、二酸化炭素や窒素等を採用することができる。
【0047】
この射出工程では、成形型内にガスを予め供給しておくこと等により熱可塑性樹脂が発泡しない程度の圧力に該成形型内を維持して、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂の発泡を抑制しつつ、該成形型内に超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を充填することが好ましい。
【0048】
なお、超臨界流体の熱可塑性樹脂への混入は、熱可塑性樹脂の溶融樹脂を成形型内に射出、充填する射出成形機の射出バレル内で行うことができる。すなわち、射出成形機の射出バレル内において、熱可塑性樹脂の溶融樹脂に超臨界流体を供給したり、あるいは熱可塑性樹脂の溶融樹脂に気体又は液体として流体を供給した後にその流体が超臨界状態となる温度及び圧力にしたりすることにより、熱可塑性樹脂の溶融樹脂に超臨界流体を混入、溶解させることができる。
【0049】
また、熱可塑性樹脂への超臨界流体の混入量は、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材のマイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度に影響を及ぼすことから、マイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度が所定範囲となるように適宜調整することができる。
【0050】
上記発泡成形工程では、上記成形型内の圧力を低下させて上記熱可塑性樹脂を発泡成形し、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成する。
【0051】
上記成形型内の圧力低下は、超臨界発泡成形後の樹脂母材が所定の発泡倍率となるように所定量微小(数μm〜数十μm程度)に型開き等することにより行うことができる。この成形型内の圧力低下により熱可塑性樹脂を発泡させる際の熱可塑性樹脂の樹脂温度は、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材のマイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度に影響を及ぼすことから、マイクロセルの平均セル径、セル間距離及び発泡密度が所定範囲となるように適宜調整することができ、例えば、(樹脂母材の溶融温度+50)℃程度とすることができる。
【0052】
上記充填工程では、上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する。この充填工程は、上記射出工程及び上記発泡成形工程を経て得られたマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を上記成形型から脱型してから、この樹脂母材にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を含浸させること等により行うことができる。
【0053】
このように本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法では、超臨界発泡成形を利用してマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成した後、この樹脂母材のマイクロセル中にプロトン伝導性液体を含浸等により充填する。このため、フィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0054】
また、超臨界発泡成形によれば、超臨界流体における液体に近い優れた溶解性と気体に近い優れた拡散性を利用しつつ、マイクロセルをもつ樹脂母材を成形することができる。
【0055】
具体的には、高い溶解性をもつ超臨界流体の溶媒としての作用により、超臨界流体が混入、溶解された熱可塑性樹脂は流動性や型転写性が向上する。このため、電解質膜のように薄い膜状に成形する場合であっても良好に成形することができ、また、効率的な成形も可能となって成形サイクルの短縮化を図ることもできる。また、超臨界流体の高い拡散性により、マイクロセルの平均セル径を微細化したり発泡密度を高めたりすることが容易となり、ミクロンオーダー(ミクロンサイズ)のマイクロセルをもつ樹脂母材を容易に成形することができる。
【0056】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位にシール用ビード部を一体に形成するビード部形成工程を備えている。そして、このビード部形成工程は、膨出部成形工程と、ガスインジェクション工程と、封入工程とからなる。
【0057】
上記膨出部成形工程では、上記成形型を用いて、上記樹脂母材の所定部位で該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中実状膨出部を該樹脂母材と共に一体に成形する。すなわち、成形しようとする樹脂母材及びこの樹脂母材の所定部位に一体に形成される中実状膨出部の形状に応じた所定形状のキャビティを有する成形型を用いて、上記膜本体部形成工程において樹脂母材を成形する際に、該樹脂母材と共に中実状膨出部を一体に成形する。
【0058】
上記ガスインジェクション工程では、上記成形型内で上記中実状膨出部にガスインジェクションを行って、内部空間をもつ中空状膨出部を形成する。このガスインジェクション工程は、中実状膨出部にある熱可塑性樹脂の溶融樹脂が固化していない溶融状態又は半溶融状態にあるときに行う必要がある。このため、上記膜本体部形成工程において、射出工程で超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填した後、発泡成形工程で成形型内の圧力を低下させて熱可塑性樹脂を発泡させるべく成形型を微小に型開きするのとほぼ同時(又は微小に型開きした直後)にガスインジェクションを行うことが好ましい。
【0059】
上記封入工程では、上記シール用ビード部のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材を上記中空状膨出部の上記内部空間内に封入、充填する。この封入工程は、上記成形型内で行ってもよいし、あるいは上記成形型から脱型した状態で行ってもよい。
【0060】
なお、ビード部形成工程を行う場合であって上記ガスインジェクション工程終了後に脱型してから上記封入工程(上記中空状膨出部の内部空間内に耐クリープ材を封入、充填する工程)を行う場合には、上記膜本体部形成工程における上記充填工程(上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する工程)は、この封入工程終了後に行うことが好ましい。脱型後、上記充填工程を行ってから上記封入工程を行おうとすると、中空状膨出部の内部空間内にプロトン伝導性液体が含浸してしまい、プロトン伝導性液体が充填された中空状膨出部の内部空間内に耐クリープ材を封入、充填することは困難だからである。
【0061】
このように所定形状のキャビティをもつ成形型内で樹脂母材を成形するとともにこの樹脂母材と一体に中実状膨出部を成形し、この成形型内で連続的にガスインジェクションを行って中空状膨出部を樹脂母材に一体に形成することにより、例えばRIM成形によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0062】
本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、好適な態様において、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層を一体的に形成する触媒層形成工程を備えている。そして、この触媒層形成工程は、型開き工程と、触媒材料充填工程とからなる。
【0063】
上記触媒層形成工程では、前記成形型を所定量型開きして該成形型と上記樹脂母材の両面との間に触媒層成形用空隙をそれぞれ形成する。このときの型開き量は、形成しようとする電極触媒層の厚さに応じて適宜設定される。
【0064】
上記触媒材料充填工程では、各上記触媒層成形用空隙内に触媒材料を充填して上記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層をそれぞれ一体的に形成する。
【0065】
上記触媒層形成工程は、上記シール用ビード部形成工程を行う場合には、シール用ビード部形成工程における上記ガスインジェクション工程を行った後でかつ上記封入工程を行う前に行ってもよいし(シール用ビード部形成工程における封入工程を上記成形型内で行う場合及び該封入工程を該成形型から脱型した状態で行う場合のいずれの場合であっても)、あるいは上記成形型内で上記ガスインジェクション工程及び上記封入工程を行った後に行ってもよい。一方、上記シール用ビード部形成工程を行わない場合には、上記膜本体部形成における発泡成形工程を行った後に行うことができる。
【0066】
なお、触媒層形成工程を行う場合には、上記膜本体部形成工程における上記充填工程(上記マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する工程)はこの触媒層形成工程終了後に行われる。
【0067】
このように樹脂母材を発泡成形した同じ成形型内で電極触媒層を連続的に形成するという型内塗装成形により、例えば別途成形した電極触媒層をホットプレス等で接合する場合のように位置精度が低下したりあるいはゴミ等の環境による影響を受けたりするおそれが少なく、品質の向上を図ることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0069】
本実施例の燃料電池用電解質膜1は、図1〜図3に示されるように、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3と、マイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性液体4とからなる膜本体部5を備えている。そして、この膜本体部5の両面には一対の電極触媒層(厚さ10μm)6、6が一体的に接合されている。
【0070】
なお、図1は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の平面図、図2は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の要部断面図であり、図1のA−A線矢視断面図、図3は各電極触媒層6、6が一体的に接合された燃料電池用電解質膜1の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0071】
上記マイクロセル2はそれぞれが樹脂母材3中に独立して存在する独立セルである。このマイクロセル2の平均セル径は4μmとされ、また、各マイクロセル2同士のセル間距離は平均で5μm、最大で10μmとされている。なお、樹脂母材3(膜本体部5)の発泡密度(空隙率)は80%程度とされている。
【0072】
上記樹脂母材3は、後述するように、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたもので、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる。
【0073】
上記プロトン伝導性液体4は、プロトン伝導性官能基としてのスルホン酸基をもつ硫酸よりなる。
【0074】
上記膜本体部5は、後述するセパレータ19、20と略同等の外形寸法(縦及び横の長さ)を有する縦15cm×横20cmの長方形状をなし、厚さが30μmとされている。そして、この膜本体部5は、上記電極触媒層6が一体的に接合された中央部5aと、この中央部5aを囲むように周方向に連続して延び、後述する全周シール用ビード部等が設けられている帯枠状の周縁端部5bとを有している。
【0075】
また、上記膜本体部5は、全周シール用ビード部7と、左右一対(図1の左右一対。以下、同様。)の第1ガス(水素ガス)通路用貫通部8、8と、上下一対(図1の上下一対。以下、同様)の第2ガス(酸素ガス)通路用貫通部9、9と、左右一対の第1ガス(水素ガス)通路10、10を形成するための左右一対の第1コの字状シール用ビード部11、11と、上下一対の第2ガス(酸素ガス)通路12、12を形成するための上下一対の第2コの字状シール用ビード部13、13とを周縁端部5bに備えている。
【0076】
上記全周シール用ビード部7は、膜本体部5の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに該膜本体部5の周縁端部5bで周方向に連続して長方形状に延設されている。
【0077】
左右一対の上記第1ガス通路用貫通部8、8は、上記全周シール用ビード部7の左右両側(短辺側)の内側に隣接して貫設されている。また、上下一対の上記第2ガス通路用貫通部9、9は、上記全周シール用ビード部7の上下両側(長辺側)の内側に隣接して貫設されている。
【0078】
左右一対の上記第1コの字状シール用ビード部11、11は、膜本体部5の一表面(図1の裏側)から一方の厚さ方向に膨出するとともに左右一対の上記第1ガス通路用貫通部8、8を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略コの字状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。また、上下一対の上記第2コの字状シール用ビード部13、13は、膜本体部5の他表面(図1の表側)から他方の厚さ方向に膨出するとともに上下一対の上記第2ガス通路用貫通部9、9を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略コの字状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。
【0079】
さらに、上記膜本体部5は、4個の水路形成用貫通部14、14、14、14と、4個の冷却水路を形成するための4個の水路形成用ビード部15、15、15、15とを周縁端部5bに備えている。
【0080】
各水路形成用貫通部14は、上記全周シール用ビード部7の四隅の内側に隣接して貫設されている。また、各水路形成用ビード部15は、膜本体部5の両面からそれぞれ厚さ方向に膨出するとともに各水路形成用貫通部14を上記全周シール用ビード部7と共にそれぞれ囲むように略円弧状に延設されており、該全周シール用ビード部7と一体に形成されている。
【0081】
そして、シール用ビード部(上記全周シール用ビード部7、各上記第1コの字状シール用ビード部11、11及び各上記第2コの字状シール用ビード部13、13。以下、同様。)及び各上記水路形成用ビード部15は、上記膜本体部5を構成する上記樹脂母材3に一体に形成され、内部空間16aをもつとともに該樹脂母材3の厚さ方向に膨出する中空状膨出部16と、この内部空間16a内に充填され、上記シール用ビード部及び各水路形成用ビード部15のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材17とから構成されている。なお、この耐クリープ材17はシリコーンゴムよりなる。
【0082】
このように膜本体部5の両面に一対の電極触媒層6、6が一体的に接合された本実施例の燃料電池用電解質膜1は、図4に示されるように、カーボンクロス等から別途成形した一対のガス拡散層18、18を各電極触媒層6、6の表面にホットプレス等によりそれぞれ接合するとともに、電解質膜1、各電極触媒層6、6及び各ガス拡散層18、18の一体物を挟むように一対のセパレータ19、20を配設して、燃料電池とすることができる。このとき、各セパレータ19、20の周縁端部における対向面が膜本体部5の上記シール用ビード部及び各上記水路形成用ビード部15に圧接される。これにより、各セパレータ19、20間で気密性(シール性)を確保したり、所定のガス通路を形成したりすることができる。
【0083】
なお、各セパレータ19、20は、樹脂の射出成形(又は金属のプレス成形)により所定形状に成形したもので、膜本体部5の第1ガス(水素ガス)通路10、10に通じる水素ガス通路21と、膜本体部5の第2ガス(酸素ガス)通路12、12に通じる酸素ガス通路22とが形成されている。
【0084】
こうして得られた燃料電池では、膜本体部5を構成する樹脂母材3のマイクロセル2中に充填されたプロトン伝導性液体4により、良好なプロトン伝導性を示す。そして、この本実施例の電解質膜1の膜本体部5は、プロトン伝導性液体充填用の空隙を形成するためのセラミックス粉末を構成要素として含んでいない。したがって、この電解質膜1は、セラミックス粉末を含んでいない分だけ材料費が安くなる。
【0085】
また、この電解質膜1では、膜本体部5を構成するマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3が超臨界発泡成形により形成されている。このため、キャスト法等によりフィルム膜を連続成形した後に所定形状に切り取って電解質膜を得る場合と比較して、簡易に電解質膜を得ることができるとともに、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0086】
例えば、キャスト成形による連続成形の場合、1分当たりに成形できるフィルム膜の長さは2m(幅750cm)で、このフィルム膜から電解質膜を切り取るには1枚当たり1秒かかり、1分当たり20枚の電解質膜しか得ることができない。これに対し、後述する超臨界発泡成形によれば、1分当たり24枚の電解質膜を得ることが可能となる。
【0087】
また、上記キャスト法により電解質膜を得る場合は材料歩留り(成形品に必要な材料/成形に要した材料)が80%程度となるが、超臨界発泡成形の場合は無駄になる材料がほとんど無く、材料歩留りが99%となる。
【0088】
さらに、本実施例に係る電解質膜1では、各セパレータ間で気密性を確保したり、所定のガス通路を形成したりするための上記シール用ビード部が、膜本体部5を構成する樹脂母材3の所定部位に一体に形成されている。このため、RIM成形等によりセパレータの所定部位にシール用ビードを別途成形、接合する場合のように位置精度が低下したりあるいは接着不良が発生したりするおそれがなく、品質の向上を図ることができる。
【0089】
また、この電解質膜1では、各セパレータ19、20の対向面のそれぞれに全周シール用ビード部7を圧接させることにより、各セパレータ19、20間における気密性を確保するとともに、一方のセパレータ19の対向面に第1コの字状シール用ビード部11を圧接させかつ他方のセパレータ20の対向面に第2コの字状シール用ビード部13を圧接させることにより、膜本体部5の他表面側のみにガスを供給可能な第1ガス通路10(第1コの字状シール用ビード部11と全周シール用ビード部7とで囲まれた第1ガス通路用貫通部8により形成される)と、膜本体部5の一表面側のみにガスを供給可能な第2ガス通路12(第2コの字状シール用ビード部13と全周シール用ビード部7とで囲まれた第2ガス通路用貫通部9により形成される)とを容易に形成することができる。
【0090】
さらに、従来の燃料電池では、電解質膜とセパレータとの間に接着剤等のシール剤を介在させることにより、ガス通路を形成するとともにシール性を確保していたことから、接着剤不足によりシール性が不十分となったり、余分な接着剤によりガス通路が塞がれたりする等、接着剤による不良が10%程度の割合で発生しており、不良品は廃棄するしかなかった。また、接着剤の塗布等を行う接着工程は面倒であり、その分生産性も低下していた。この点、本実施例に係る燃料電池では、上記のように膜本体部5に一体に形成された第1及び第2コの字状シール用ビード部11及び13により第1及び第2ガス通路10及び12を形成することができることから、ガス通路を形成するとともにシール性を確保すべく膜本体部5とセパレータ19、20との間に接着剤等のシール剤を介在させる必要がなくなり、品質及び生産性の向上を図ることが可能となる。
【0091】
そして、上記シール用ビード部(上記全周シール用ビード部7、上記第1コの字状シール用ビード部11及び上記第2コの字状シール用ビード部13)及び上記水路形成用ビード部15は、中空状膨出部16の内部空間16a内に充填された耐クリープ材17により、クリープ変形が抑えられるので、シール用ビード部における気密性確保等の性能の信頼性を高めることが可能となる。
【0092】
以下、上記構成を有する本実施例の燃料電池用電解質膜の製造方法について説明する。
【0093】
この燃料電池用電解質膜の製造方法では、図5に示される製造装置を用いる。この製造装置は、所定のキャビティ形状を有する成形型30及びこの成形型30のキャビティ内に溶融樹脂を供給する射出バレル31をもつ射出プレス成形機32と、超臨界流体用ボンベ33をもち射出バレル31内に超臨界流体を供給する超臨界流体発生装置(SCS装置)34と、ガスインジェクション用ボンベ35をもち成形型30のキャビティ内の所定部位にガスインジェクション可能なガスインジェクション装置36と、成形型30のキャビティ内の所定部位に触媒材料を注入する触媒材料注入装置37と、成形型30のキャビティ内の所定部位に耐クリープ材を注入する耐クリープ材封入装置38とを備えている。
【0094】
ここに、上記成形型30は、成形しようとする樹脂母材及びこの樹脂母材の所定部位に一体に形成される中実状膨出部の形状に応じた所定形状のキャビティを有している。また、上記成形型30は、図示しない制御装置により高精度に型開き制御可能なボールネジ構造を採用する電動成形型よりなる。
【0095】
上記構成の製造装置を用い、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)を採用するとともに超臨界流体として二酸化炭素を採用して、以下のとおり電解質膜の製造を行った。
【0096】
<膜本体部形成工程における射出工程>
射出プレス成形機32の射出バレル31にPPSを供給して溶融樹脂とするとともに、この射出バレル31内に超臨界流体発生装置34から超臨界流体としての二酸化炭素を供給し、溶融樹脂に二酸化炭素を十分に混練、溶解させた。このときの射出バレル31内の圧力は7MPaとし、射出バレル31内の樹脂温度は320℃とした。
【0097】
そして、型閉めされた状態の成形型30のキャビティ内に射出バレル31から上記超臨界流体が溶解された溶融樹脂を70MPaの射出圧で射出、充填した。
【0098】
なお、この成形型30の型温は80℃とした。
【0099】
<成形工程(発泡成形工程、膨出部成形工程)>
この成形工程は、膜本体部形成工程における発泡成形工程をなすとともに、シール用ビード部形成工程における膨出部成形工程をなす。
【0100】
上記射出工程の終了直後に、所定の発泡倍率となるように成形型30を所定量微小(数十μm程度)に型開きした。この型開きにより、キャビテイ内圧力を所定量低下させ、キャビティ内の樹脂を発泡させた。
【0101】
これにより、図6及び図7に示されるように、所定部位(上記シール用ビード部及び水路形成用ビード部15に対応する全ての部位)で厚さ方向に膨出する中実状膨出部23が一体に形成されるとともに、左右一対の第1ガス通路用貫通部8、8、上下一対の第2ガス通路用貫通部9、9及び4個の水路形成用貫通部14が所定部位に形成され、マイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3を成形した。
【0102】
<シール用ビード部形成工程におけるガスインジェクション工程>
上記射出工程の終了直後であって、上記成形工程で成形型30を微小に型開きするのととほぼ同時か、あるいは微小型開きした直後に、該成形型30内で、ガスインジェクション装置36から上記中実状膨出部23にガスインジェクションを行って、内部空間16aをもつ中空状膨出部16とした。
【0103】
<シール用ビード部形成工程における耐クリープ材封入工程>
耐クリープ材封入装置38から上記ガスインジェクション工程で得られた中空状膨出部16の内部空間16a内に、耐クリープ材17としてのシリコーンゴムを封入、充填した。耐クリープ材封入装置38から注入されるシリコーンゴムは、注入時には流動性があり、封入、充填後に橋かけによりゴム状弾性体となる。
【0104】
<触媒層形成工程における型開き工程>
上記耐クリープ材封入工程終了後に、上記成形型30を所定量型開きして、成形型30の型面と上記樹脂母材3の上記膜本体部5の中央部5aに相当する部分との間に10μmの触媒層成形用空隙をそれぞれ形成した。
【0105】
<触媒層形成工程における触媒材料充填工程>
そして、触媒材料注入装置37から各上記触媒層成形用空隙内に触媒材料を注入、充填して、上記樹脂母材3の両面に一対の電極触媒層6、6を一体的に形成した。
【0106】
<膜本体部形成工程における充填工程>
上記成形型30を大きく型開きして樹脂母材3を脱型してから、この樹脂母材3にプロトン伝導性液体4としての硫酸を含浸させることにより、樹脂母材3のマイクロセル2中にプロトン伝導性液体4を充填した。
【0107】
こうして、膜本体部5の中央部5a両面に一対の電極触媒層6、6が一体的に接合された本実施例に係る燃料電池用電解質膜1を製造した。
【0108】
このように本実施例に係る燃料電池用電解質膜1の製造方法では、超臨界発泡成形を利用してマイクロセル2をもつ膜状の樹脂母材3を形成した後、この樹脂母材3のマイクロセル2中にプロトン伝導性液体4を含浸により充填するという簡易な方法により、材料歩留り高く電解質膜1を得ることができる。
【0109】
また、超臨界発泡成形の利用により、電解質膜のように薄い膜状に成形する場合であっても良好に成形することができ、また、効率的な成形も可能となって成形サイクルの短縮化を図ることもできる。
【0110】
さらに、本実施例に係る電解質膜1の製造方法では、樹脂母材3の発泡成形、上記シール用ビード部等の形成及び電極触媒層6の形成を全て同じ成形型30内で行っていることから、位置精度の低下やゴミ等の影響を受けるおそれがなく、品質の向上を図ることができるとともに、生産性の向上を図ることも可能となる。
【0111】
(マイクロセルの平均セル径と樹脂母材の強度との関係)
超臨界発泡成形における成形条件(樹脂温度や型温等)を適宜変化させることにより、超臨界発泡成形により得られる樹脂母材の引張強度と、樹脂母材のマイクロセルの平均セル径との関係を調べた。その結果を図8に示す。
【0112】
なお、図8の縦軸は、平均セル径が0μm、すなわち未発泡状態で成形した樹脂母材の引張強度を100%としたときの引張強度保持率である。
【0113】
図8から明らかなように、マイクロセルの平均セル径が4μm以下であれば、未発泡状態の樹脂母材と同等の引張強度を確保することができる。
【0114】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の燃料電池用電解質膜及びその製造方法によれば、超臨界発泡成形によりマイクロセルをもつ樹脂母材を形成し、このマイクロセル中にプロトン伝導性液体を充填するという簡易な方法により、燃料電池用電解質膜を安く提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の平面図である。
【図2】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の要部断面図であり、図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図4】本実施例に係る燃料電池用電解質膜を用いて作製した燃料電池の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図5】本実施例に係り、電極触媒層が一体的に接合された燃料電池用電解質膜の製造装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図6】本実施例に係り、成形工程終了後における樹脂母材の平面図である。
【図7】本実施例に係り、成形工程終了後における樹脂母材の要部断面図であり、図6のB−B線矢視断面図である。
【図8】超臨界発泡成形により得られる樹脂母材の引張強度と、樹脂母材のマイクロセルの平均セル径との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…電解質膜 2…マイクロセル
3…樹脂母材 4…プロトン伝導性液体
5…膜本体部 6…電極触媒層
7…全周シール用ビード部 11…第1コの字状シール用ビード部
13…第2コの字状シール用ビード部 16…中空状膨出部
17…耐クリープ材 23…中実状膨出部
Claims (7)
- 超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に充填するとともに該成形型内の圧力を低下させて該熱可塑性樹脂を発泡成形する超臨界発泡成形により形成されたマイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と、該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を備えていることを特徴とする燃料電池用電解質膜。
- 前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位に一体に形成されたシール用ビード部を備えていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電解質膜。
- 前記シール用ビード部は、前記膜本体部を構成する前記樹脂母材に一体に形成され、内部空間をもつとともに該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中空状膨出部と、該内部空間内に充填され、該シール用ビード部のクリープを抑えるための耐クリープ材とからなることを特徴とする請求項2記載の燃料電池用電解質膜。
- 前記膜本体部の両面に一体的に接合された一対の電極触媒層を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の燃料電池用電解質膜。
- マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材と該マイクロセル中に充填されたプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体とからなる膜本体部を形成する膜本体部形成工程を備え、
上記膜本体部形成工程は、超臨界流体が混入された熱可塑性樹脂を成形型内に射出、充填する射出工程と、該成形型内の圧力を低下させて上記熱可塑性樹脂を発泡成形し、マイクロセルをもつ膜状の樹脂母材を形成する発泡成形工程と、該マイクロセル中にプロトン伝導性官能基をもつプロトン伝導性液体を充填する充填工程とからなることを特徴とする燃料電池用電解質膜の製造方法。 - 前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の所定部位にシール用ビード部を一体に形成するビード部形成工程を備え、
上記ビード部形成工程は、前記成形型を用いて、上記樹脂母材の所定部位で該樹脂母材の厚さ方向に膨出する中実状膨出部を該樹脂母材と共に一体に成形する膨出部成形工程と、該成形型内で該中実状膨出部にガスインジェクションを行って、内部空間をもつ中空状膨出部を形成するガスインジェクション工程と、上記シール用ビード部のクリープ変形を抑えるための耐クリープ材を該内部空間内に封入、充填する封入工程とからなることを特徴とする請求項5記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。 - 前記膜本体部を構成する前記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層を一体的に形成する触媒層形成工程を備え、
上記触媒層形成工程は、前記成形型を所定量型開きして該成形型と上記樹脂母材の両面との間に触媒層成形用空隙をそれぞれ形成する型開き工程と、各該触媒層成形用空隙内に触媒材料を充填して上記樹脂母材の両面に一対の電極触媒層をそれぞれ一体的に形成する触媒材料充填工程とからなることを特徴とする請求項5又は6記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
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2002
- 2002-09-27 JP JP2002283235A patent/JP2004119269A/ja not_active Withdrawn
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