JP2004118082A - 色素形成カプラー及びハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーまたは該カプラーを含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】
式中、Qは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。R1、R2は各々独立に置換基を表し、R4は2級あるいは3級のアルキル基を表わす。mは0以上4以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料、更に詳細には色再現性、画像保存性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
減色法によるハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある。)においては、イエロー、マゼンタおよびシアンの3原色の色素によって色画像が形成される。現行のp−フェニレンジアミン系カラー現像主薬を使用するカラー写真法においては、イエローカプラーとして、アシル酢酸アニリド系化合物が使用されている。しかし、これらのカプラーから得られるイエロー色素の色相は、吸収の長波側すそ切れが悪いため赤味を帯び、純度の高いイエローの色相を得るのが困難であり、また、該色素の分子吸光係数が小さく、所望の発色濃度を得るために多量のカプラーやハロゲン化銀を必要とし、感光材料の膜厚が厚くなって得られる色像の鮮鋭性が低下する場合があるといった問題を有していた。さらに、前記色素は高温高湿条件下、あるいは光照射条件下で分解し易く、現像処理後の画像保存性に問題があり改良が望まれている。
【0003】
これらの問題を解決するためにアシル基およびアニリド基の改良が行われ、最近になって、従来のアシル酢酸アニリド系を改良したカプラーとして、1−アルキルシクロプロパンカルボニル酢酸アニリド系化合物(例えば、特許文献1参照。)や環状マロンジアミド型カプラー(例えば、特許文献2参照。)、ピロール−2または3−イルもしくはインドール−2または3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー(例えば、特許文献3〜4参照。)等が提案された。これらのカプラーから生成する色素は、従来のものより色相、分子吸光係数において改良されたが、画像保存性の点で未だ十分ではなく、また、構造が複雑になった分、合成ルートが長く、カプラーコストが高くなり、実用的には問題があった。また他に1,2,4−ベンゾチアジアジン−1,1−ジオキシドが結合した酢酸エステル系および酢酸アニリド系カプラー(例えば、特許文献5〜7参照。)が提案されているが、発色性が低く、吸収の長波側すそ切れも悪くこれらの改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−218042号公報
【特許文献2】
特開平5−11416号公報
【特許文献3】
欧州特許出願公開第953870号明細書
【特許文献4】
欧州特許出願公開第953871号明細書
【特許文献5】
米国特許第3,841,880号明細書
【特許文献6】
特開昭52−82423号公報
【特許文献7】
特開平2−28645号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記問題点を克服し、色相、保存安定性が良好な色素を与え、発色性の高い色素形成カプラーを提供すること、またこの色素形成カプラーを使用し、発色性に優れ、白地や色素画像が長期間変色、褪色せず、高度の保存性を有するハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。本発明の他の目的は、色相、発色性に優れ、かぶり、混色が少なく、色素画像が長期間変化せず、塗布後長期間保存しても発色性に変化の少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。本発明の他の目的は、色相、発色性に優れ、色素画像が長期間変色せず、現像処理安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記一般式(I)で表わされるイエロー色素形成カプラーにより前記課題が達成されることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、
(1)下記一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラー。
【0007】
【化2】
【0008】
式中、Qは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。R1、R2は各々独立に置換基を表し、R4は2級あるいは3級のアルキル基を表わす。mは0以上4以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【0009】
(2)支持体上の少なくとも1層に、前記(1)項記載の一般式(I)で表されるイエロー色素形成カプラーの少なくとも1種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(3)前記一般式(I)においてQが−C(−R11)=C(−R12)−SO2−もしくは−C(−R11)=C(−R12)−CO−で表わされる基(R11とR12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基)であることを特徴とする前記(2)項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
(4)前記一般式(I)で表わされるイエロー色素形成カプラーが、一般式(II)で表わされるイエロー色素形成カプラーであることを特徴とする前記(2)または(3)項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0010】
【化3】
【0011】
式中、R1、R2は各々独立に置換基を表し、 R4は2級あるいは3級のアルキル基を表わす。 mは0以上4以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R3は置換基を表す。nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書中における脂肪族とは、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖または環状で飽和であっても不飽和であっても良く、例えばアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を表し、これらは無置換であっても置換基を有していてもよい。また、アリールとは、単環であっても縮合環であっても良く、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、ヘテロ環とは、そのヘテロ環部位は環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよい。
本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基等を挙げることができる。
まず、本発明の一般式(I)で表される化合物(本明細書ではイエロー色素形成カプラーとも称す)を詳細に説明する。
【0013】
【化4】
【0014】
式中、R1は水素原子以外の置換基を表す。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0015】
なお、上述の置換基はさらに置換基で置換されていてもよく、該置換基としては上述の基が挙げられる。
【0016】
好ましくはR1は、置換もしくは無置換のアルキル基である。R1の総炭素数は1以上60以下が好ましく、4以上50以下がより好ましく、7以上40以下がさらに好ましい。R1が置換アルキル基である場合の置換基としては前述のR1の置換基として挙げた例が挙げられ、好ましくは、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられ、アルコキシ基である場合はより好ましい。
【0017】
一般式(I)においてQは−N=C−N(R1)−とともに5〜7員環を形成する非金属原子群を表す。好ましくは形成される5〜7員環は置換もしくは無置換、単環もしくは縮合環のヘテロ環であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される。さらに好ましくはQは−C(−R11)=C(−R12)−SO2−、もしくは−C(−R11)=C(−R12)−CO−で表される基を表す(本発明においてこれらの基の表記はこれらの基で表される基の結合の向きを制限するものではない。)。R11、R12は互いに結合して−C=C−とともに5〜7員環を形成する基、もしくはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。形成される5員〜7員の環は飽和または不飽和環であり、該環は脂環、芳香環、ヘテロ環であってもよく、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が挙げられ、これらの環は更に置換基を有していても良い。また置換基としては前述のR1の置換基として挙げた例が挙げられる。
【0018】
これらの各置換基や複数の置換基が互いに結合して形成した環は、更に置換基(前述のR1の置換基として例示した基が挙げられる)で置換されてもよい。
【0019】
一般式(I)において、R2は水素原子以外の置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくはR2はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、2―メトキシフェニルチオ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。
R2の総炭素数は0以上60以下が好ましく、0以上50以下がより好ましく、0以上40以下がさらに好ましい。
【0020】
一般式(I)において、mは0以上4以下の整数を表す。mが2以上のとき複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。本発明の効果の点で好ましくはmは0または1である。
一般式(I)においてR4は2級あるいは3級のアルキル基を表わし、置換基を有していても良い。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。例えば、i−プロピル、s−ブチル、t−ブチル、t−アミル、t−ヘキシル、t−オクチル、t−ドデシル等である。好ましい炭素数としては3以上30以下であり、より好ましくは3以上20以下である。本発明の効果の点で2級アルキル基より3級アルキル基が好ましい。
【0021】
一般式(I)においてXは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基を表す。Xが現像主薬酸化体とのカップリング反応により離脱可能な基である場合の例としては窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子)などが挙げられる。
窒素原子で離脱する基としては、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、アリール(本願では4n+2個の環状共役電子を有するものを意味する)もしくは非アリール、単環もしくは縮合環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有する5もしくは6員のヘテロ環基であり、例えばスクシンイミド、マレインイミド、フタルイミド、ジグリコールイミド、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、インドール、ベンゾピラゾール、ベンツイミダゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン−2,4−ジオン、オキサゾリジン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2−オン、ベンツイミダゾリン−2−オン、ベンゾオキサゾリン−2−オン、ベンゾチアゾリン−2−オン、2−ピロリン−5−オン、2−イミダゾリン−5−オン、インドリン−2,3−ジオン、2,6−ジオキシプリンパラバン酸、1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、2−ピリドン、4−ピリドン、2−ピリミドン、6−ピリダゾン、2−ピラゾン、2−アミノ−1,3,4−チアゾリジン−4−オン)、カルボナミド基(例えばアセタミド、トリフルオロアセタミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アリールアゾ基(例えばフェニルアゾ、ナフチルアゾ)、カルバモイルアミノ基(例えばN−メチルカルバモイルアミノ)などが挙げられる。
【0022】
窒素原子で離脱する基のうち、好ましいものはヘテロ環基であり、さらに好ましいものは、環構成原子として窒素原子を1、2、3または4個有するアリールヘテロ環基、または下記一般式(L)で表されるヘテロ環基である。
【0023】
【化5】
【0024】
式中、Lは−NC(=O)−と共に5〜6員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基を表す。
これらの例示は上記ヘテロ環基の説明の中で挙げており、これらが更に好ましい。
なかでも、Lは5員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基が好ましい。
【0025】
酸素原子で離脱する基としては、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(例えばピリジルオキシ、ピラゾリルオキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシ基(例えばメトキシ、ドデシルオキシ)、カルバモイルオキシ基(例えばN,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルバモイルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)などが挙げられる。
酸素原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基である。
【0026】
イオウ原子で離脱する基としては、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、ナフチルチオ)、ヘテロ環チオ基(例えばテトラゾリルチオ、1,3,4−チアジアゾリルチオ、1,3,4−オキサゾリルチオ、ベンツイミダゾリルチオ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、オクチルチオ、ヘキサデシルチオ)、アルキルスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばベンゼンスルフィニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)などが挙げられる。
イオウ原子で離脱する基のうち、好ましいものはアリールチオ基、ヘテロ環チオ基であり、ヘテロ環チオ基がより好ましい。
【0027】
Xは置換基により置換されていてもよく、Xを置換する置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
Xは、好ましくは窒素原子で離脱する基、酸素原子で離脱する基、イオウ原子で離脱する基であり、より好ましくは窒素原子で離脱する基であり、更に好ましくは、窒素原子で離脱する基で述べた好ましい基の順に好ましい。
【0028】
またXは写真性有用基であってもよい。この写真性有用基としては、現像抑制剤、脱銀促進剤、レドックス化合物、色素、カプラー等、あるいはこれらの前駆体が挙げられる。
【0029】
カプラーを感光材料中で不動化するために、Q、R1、X、あるいはR2の少なくとも1つは置換基を含めた総炭素数が8以上60以下であることが好ましく、より好ましくは総炭素数が8以上50以下である。
【0030】
本発明の効果の点で、一般式(I)で表わされる化合物(本願ではイエロー色素形成カプラーとも称す)は次の一般式(II)で表される化合物(本願ではイエロー色素形成カプラーとも称す)であることが好ましい。以下に一般式(II)で表される化合物を詳細に説明する。
【0031】
【化6】
【0032】
一般式(II)において、R1、R2、R4、m、Xは一般式(I)において述べたものと同じものを表し、好ましい範囲も同様である。
【0033】
一般式(II)において、R3は置換基を表す。この置換基の例としては前述のR1の置換基の例として挙げたものが挙げられる。好ましくはR3はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(例えばメチル、イソプロピル)、アリール基(たとえばフェニル、ナフチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロピルオキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ)、アミノ基(例えばジメチルアミノ、モルホリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基である。
nは0以上4以下の整数を表す。nが2以上のとき複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
以下に本発明の一般式(I)もしくは一般式(II)で表されるカプラーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、カップリング位の水素原子が、カップリング位に結合したC=N部の窒素上に移動した互変異性体も本発明に含まれることとする。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
なお、以降の説明において、以上に示された例示化合物を引用する場合、それぞれの例示化合物に付された括弧書きの番号(x)を用いて、「(x)」と表示することとする。
【0043】
以下に上記一般式(I)もしくは一般式(II)で表される化合物の具体的な合成例を示す。
【0044】
合成例1:カプラー(4)の合成
カプラー(4)は、下記に示すルートにより合成した。
【0045】
【化15】
【0046】
3−ブトキシプロピルアミン150g、トリエチルアミン192mL、アセトニトリル600mLの溶液を氷冷攪拌下に、オルトニトロベンゼンスルホニルクロライド253gを少量づつ添加した。反応系の温度を室温まで昇温し、さらに1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(A−1)の粘調油状物362gを得た。
【0047】
還元鉄300.0g、塩化アンモニウム30.0gをイソプロパノール1540mL、水240mLに分散し、加熱還流下、1時間攪拌した。これに、化合物(A−1)119gを少量づつ添加した。さらに2時間加熱還流下、攪拌した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(A−2)の油状物327gを得た。
【0048】
化合物(A−2)327g、イミノエーテル(A−0)の塩酸塩268.4g、エチルアルコール450mLの溶液を加熱還流下、1時間撹拌した。冷却後吸引濾過し、濾液にp−キシレン500mLを加え、エタノールを留去しながら4時間加熱還流した。反応液を氷水1000mLに注ぎ、酢酸エチル500mLを加え、抽出した。有機溶媒層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧下に酢酸エチル、キシレンを留去した。得られた油状物にn−ヘキサン1000mLから晶析して370.1gの化合物(A−3)を得た。
【0049】
(t)オクタンチオール146gにジメチルフォルムアミド500mL、炭酸カリウム138gを加え、窒素雰囲気下80℃で攪拌下に、オルトフルオロニトロベンゼン141gを30分間で滴下した。反応液を更に1時間80℃で過熱攪拌をした後、氷水1000mLに注ぎ酢酸エチル700mLで抽出した。有機溶媒層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去し、化合物(A−4)の油状物267gを得た。
【0050】
還元鉄300.0g、塩化アンモニウム30.0gをイソプロパノール1540mL、水240mLに分散し、加熱還流下、1時間攪拌した。これに、化合物(A−4)267gを少量づつ添加した。さらに2時間加熱還流下、攪拌した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、メタノール、水の混合溶媒から晶析して化合物(A−5)198gを得た。
【0051】
化合物(A−3)20g、化合物(A−5)13.7g、145〜150℃で6時間加熱撹拌し、化合物(A−6)の粗製物を得た。この反応粗製物に酢酸エチル100mLを加えて氷冷攪拌下に、N−クロロサクシンイミド7.1gを5分で添加した。氷冷下30分撹拌した後、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(A−7)の粗製物を得た。
【0052】
5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン15.5g、トリエチルアミン16.8mLをN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解し、室温攪拌下に、先に合成した化合物(A−7)の粗製物すべてをアセトニトリル30mLに溶解したものを10分間で滴下し、その後80℃まで昇温して3時間撹拌した。酢酸エチル、氷水を加えて分液し、有機溶媒層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、メタノール60mLから晶析、更にメタノール80mLから再結晶してカプラー(4)23.4gを得た(融点 127℃)。
【0053】
合成例2:カプラー(8)の合成
カプラー(8)は、下記に示すルートにより合成した。
【0054】
【化16】
【0055】
3−ドデシルオキシプロピルアミン139g、トリエチルアミン96mL、アセトニトリル500mLの溶液を氷冷攪拌下に、オルトニトロベンゼンスルホニルクロライド126gを少量づつ添加した。系の温度を室温まで昇温し、さらに1時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(B−1)の粘調油状物244gを得た。
【0056】
還元鉄150.0g、塩化アンモニウム15.0gをイソプロパノール1000mL、水120mLに分散し、加熱還流下、1時間攪拌した。これに、化合物(B−1)244gを少量づつ添加した。さらに2時間加熱還流下、攪拌した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(B−2)の油状物227gを得た。
【0057】
化合物(B−2)227g、イミノエーテル(A−0)の塩酸塩134.2g、エチルアルコール300mLの溶液を加熱還流下、1時間撹拌した。冷却後吸引濾過し、濾液にp−キシレン300mLを加え、エタノールを留去しながら4時間加熱還流した。反応液を氷水800mLに注ぎ、酢酸エチル300mLを加え、抽出した。有機溶媒層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧下に酢酸エチル、キシレンを留去した。得られた油状物を酢酸エチル、メタノールから晶析して181.9gの化合物(B−3)を得た。
【0058】
氷水80mLに濃硫酸102mLを加え、0〜2℃で攪拌下に(t)ブタノール25.8gを30分間で滴下した。次に0〜5℃で2−アミノチオフェノール30gを30分間で滴下した。その後、20〜25℃まで昇温し、8時間攪拌した。水酸化ナトリウム150gを溶解した1000mL水溶液に、前記反応液を40℃以下で添加中和し、酢酸エチル500mLで抽出した。有機溶媒層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで酢酸エチル、n−ヘキサンを溶離液として精製し、化合物(B−4)の油状物40.8gを得た。
【0059】
化合物(B−3)25g、化合物(B−4)11.0gを145〜150℃で6時間加熱撹拌し、化合物(B−5)の粗製物を得た。この反応粗製物に酢酸エチル100mLを加えて氷冷攪拌下に、N−クロロサクシンイミド6.8gを5分で添加した。氷冷下30分撹拌した後、水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(B−6)の粗製物を得た。
【0060】
5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン15.5g、トリエチルアミン16.8mLをN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(B−6)の粗製物すべてをアセトニトリル30mLに溶解したものを10分間で滴下し、その後80℃まで昇温して3時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、メタノール50mLから晶析、更にメタノール60mLから再結晶してカプラー(8)25.3gを得た(融点 87〜88℃)。
【0061】
合成例3:カプラー(22)の合成
カプラー(22)は、下記に示すルートにより合成した。
【0062】
【化17】
【0063】
(t)オクタンチオール41.2gにジメチルフォルムアミド120mL、炭酸カリウム38gを加え、窒素雰囲気下80℃で攪拌下に、4−クロロ−3−ニトロトルエン50gを30分間で滴下した。反応液を更に1時間80℃で加熱攪拌をした後、氷水400mLに注ぎ酢酸エチル300mLで抽出した。有機溶媒層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去し、化合物(C−1)の油状物79.3gを得た。
【0064】
還元鉄100.0g、塩化アンモニウム10.0gをイソプロパノール540mL、水80mLに分散し、加熱還流下、1時間攪拌した。これに、化合物(C−1)79.3gを少量づつ添加した。さらに2時間加熱還流下、攪拌した後、セライトを通して吸引ろ過した。濾液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで酢酸エチル、n−ヘキサンを溶離液として精製し、化合物(C−2)の油状物67.5gを得た。
【0065】
化合物(A−3)61g、化合物(C−2)40g、145〜150℃で6時間加熱撹拌し、化合物(C−3)の粗製物を得た。この粗製物に酢酸エチル200mLを加えて氷冷攪拌下に、N−クロロサクシンイミド21.7gを25分で添加した。氷冷下30分撹拌した後、水を加えて分液し、有機溶媒層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物(C−4)の粗製物を得た。
【0066】
5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン38g、トリエチルアミン41.2mLをN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解し、これに室温下、先に合成した化合物(C−4)の粗製物すべてをアセトニトリル30mLに溶解したものを10分間で滴下し、80℃まで昇温して3時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を0.1規定水酸化カリウム水溶液、希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、メタノール100mLから晶析、更にメタノール150mLから再結晶してカプラー(22)71.4gを得た(融点 148〜150℃)。
【0067】
本発明においてハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料が好ましく用いられる。
【0068】
本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。該イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0069】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0070】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料において、本発明の前記イエロー色素形成カプラーは、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル添加するのが好ましく、2×10−3〜3×10−1モル添加するのがより好ましい。
【0071】
本発明に好ましく用いられるハロゲン化銀感光材料に関して以下に詳細に述べる。
本発明に好ましく用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料は、カプラーを使用する方式の感光材料に適用される。特に、一般用もしくは映画用のカラーネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フイルム、カラーペーパー(印画紙)、一般用もしくは映画用カラーポジフィルム、ディスプレイ用感光材料、カラー反転ペーパー、走査露光もしくは面露光用のカラープルーフのような種々のカラー感光材料やカプラーを使用する白黒感光材料に適用することができる。また、カラーネガフイルムにおいては、特公平2−32615号、実公平3−39784号に記載されているレンズ付きフイルムユニット用に好適である。
これらのうち、観察者が直接観察するハロゲン化銀カラー写真感光材料、例えば、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フイルム、カラーペーパー(印画紙)、一般用もしくは映画用カラーポジフィルム、ディスプレイ用感光材料、カラー反転ペーパー、走査露光もしくは面露光用のカラープルーフが好ましく、カラーペーパー(印画紙)、一般用もしくは映画用カラーポジフィルム、ディスプレイ用感光材料、カラー反転ペーパー、走査露光もしくは面露光用のカラープルーフがさらに好ましく、カラーペーパー(印画紙)、ディスプレイ用感光材料、走査露光用カラープルーフが好ましい。
【0072】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子は、好ましくは実質的に{100}面を持つ立方体または14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)または8面体の結晶粒子、または全投影面積の50%以上が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体または{100}面を主平面とする平板状粒子または{111}面を主平面とする平板状粒子が好ましく適用される。
【0073】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤としては、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩(沃)臭化銀乳剤等が用いられるが、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率が90モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましく、更に塩化銀含有率が98モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましい。このようなハロゲン化銀乳剤の中でも、ハロゲン化銀粒子のシェル部分に、全銀モルあたり0.01〜0.50モル%、より好ましくは0.05〜0.40モル%の沃塩化銀相を有するものも高感度が得られ、高照度露光適性に優れるため好ましい。また、ハロゲン化銀粒子の表面に全銀モルあたり0.2〜5モル%、より好ましくは0.5〜3モル%の臭化銀局在相を有するものが、高感度が得られ、しかも写真性能の安定化が図れることから特に好ましい。
【0074】
本発明の乳剤は、沃化銀を含有することが好ましい。沃化物イオンの導入は、沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて沃化物塩溶液を添加しても良い。後者の場合は、沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、またはヨウ化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加しても良い。沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から沃化物イオンを開裂させることで沃化物を導入することもできる。また別の沃化物イオン源として、微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0075】
沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行っても良く、またある一定期間かけて行っても良い。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは80%より外側から行うのが良い。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのが良い。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
【0076】
粒子内の深さ方向への沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhiEvans社製TRIFTII型TOF−SIMS(商品名)を用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましい。
【0077】
本発明の感光材料中の乳剤は、臭化銀局在層を有することが好ましい。
本発明の乳剤が臭化銀局在相を含有する場合、臭化銀含有率が少なくとも10モル%以上の臭化銀局在相を粒子表面にエピタキシャル成長させてつくることが好ましい。また、表層近傍に臭化銀含有率1モル%以上の最外層シェル部を有することが好ましい。
臭化銀局在相の臭化銀含有率は、1〜80モル%の範囲が好ましく、5〜70モル%の範囲が最も好ましい。臭化銀局在相は、本発明におけるハロゲン化銀粒子を構成する全銀量の0.1〜30モル%の銀から構成されていることが好ましく、0.3〜20モル%の銀から構成されていることが更に好ましい。臭化銀局在相中には、イリジウムイオン等のVIII族金属錯イオンを含有させることが好ましい。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10−9〜10−2モルが好ましい。
【0078】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子を形成及び/または成長させる過程で遷移金属イオンを添加し、ハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面に金属イオンを組み込むことがことが好ましい。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。
この中で本発明のハロゲン化銀乳剤には、高照度相反則不軌改良の目的で、少なくとも一つの有機配位子を持つイリジウムイオンを持つことが特に好ましい。
【0079】
配位子として有機化合物を用いる場合、他の遷移金属の場合にも共通であるが、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、りん原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、最も好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
特にこれらの中で、イリジウムイオンに好ましい配位子は、チアゾール配意子の中でも5メチルチアゾールが特に好ましく用いられる。
【0080】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせが挙げられる。これらの化合物においてシアン化物イオンは中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10−8モルから1×10−2モル添加することが好ましく、1×10−6モルから5×10−4モル添加することが最も好ましい。
【0081】
またイリジウムイオンは、有機配位子だけでなく、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、中でも塩化物イオンまたは臭化物イオンを用いることが好ましい。イリジウム錯体としては、前述の有機配位子をもつもの以外に、以下の具体的化合物を用いることが出来る。
[IrCl6]3−、[IrCl6]2−、[IrCl5(H2O)]2−、[IrCl5(H2O)]−、[IrCl4(H2O)2]−、[IrCl4(H2O)2]0、[IrCl3(H2O)3]0、[IrCl3(H2O)3]+、[IrBr6]3−、[IrBr6]2−、[IrBr5(H2O)]2−、[IrBr5(H2O)]−、[IrBr4(H2O)2]−、[IrBr4(H2O)2]0、[IrBr3(H2O)3]0、および[IrBr3(H2O)3]+ である。
【0082】
これらのイリジウム錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−3モル添加することが好ましく、1×10−8モルから1×10−5モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モルから1×10−6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10−9モルから1×10−6モル添加することである。
【0083】
本発明において上記の錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むが好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることも好ましい。
【0084】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも好ましいが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることも出来、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はなく、塩化銀層、塩臭化銀層、臭化銀層、沃塩化銀層、沃臭化銀層に何れに錯体を含有させることも好ましい。
【0085】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(粒子の投影面積と等価な円の直径を以て粒子サイズとし、その数平均をとったもの)は、0.01μm〜2μmが好ましい。
また、それらの粒子サイズ分布は変動係数(粒子サイズ分布の標準偏差を平均粒子サイズで除したもの)20%以下、望ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下の所謂単分散なものが好ましい。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0086】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は前出の特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0087】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、特開平11−102045号の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0088】
分光増感は、本発明の感光材料における各層の乳剤に対して所望の光波長域に分光感度を付与する目的で行われる。
本発明の感光材料において、青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes andrelated compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0089】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モルあたり0.5×10−6モル〜1.0×10−2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10−6モル〜5.0×10−3モルの範囲である。
【0090】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。このうち、特に、金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。
【0091】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることが好ましい。
【0092】
有機配位子を有する金(I)化合物としては、特開平4−267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えば四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)、特開平11−218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1−[3−(2−スルホナートベンズアミド)フェニル]−5−メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4−268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1−メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8−69074号、特開平8−69075号、特開平9−269554号に記載の金化合物、米国特許第5,620,841号、同第5,912,112号、同第5,620,841号、同第5,939,245号、同第5,912,111号に記載の化合物も用いることができる。
これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0093】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、粒径50nm以下のものも用いることができる。添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
【0094】
本発明に係わる感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0095】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0096】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同第3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0097】
本発明をカラー印画紙に適用する場合は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0098】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
本発明の感光材料において、イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0099】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0100】
特に、本発明においては、反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO98/33760号の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0103】
本発明に使用可能なシアン色素形成カプラー(単に、「シアンカプラー」という場合がある)としては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号の一般式(I)又は(II)で表されるカプラー及び特開平6−347960号の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号、同第4,916,051号に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号、同8−311360号、同8−339060号に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0104】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0105】
尚、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該公報の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本願にそのまま適用され、本願の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0106】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号や同第294,785A号に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0107】
また、本発明のイエロー色素形成カプラーは単独で使用しても、また他のイエロー色素形成カプラーと併用してもよい。併用してもよいイエロー色素形成カプラー(本明細書において、単に「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号、同第953871A1号、同第953872A1号、同第953873A1号、同第953874A1号、同第953875A1号等に記載のピロール−2又は3−イルもしくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。
【0108】
本発明に使用するカプラーは、本発明のイエロー色素形成カプラーを含め、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0109】
水中油滴分散法に用いることのできる高沸点有機溶媒としては、フタル酸エステル類(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等)、リン酸またはホスホン酸エステル類(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル等)、脂肪酸エステル類(コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、クエン酸トリブチル等)、安息香酸エステル類(安息香酸2−エチルヘキシル、安息香酸ドデシル等)、アミド類(N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジメチルオレインアミド等)、アルコールまたはフェノール類(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノール等)、アニリン類(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリン等)、塩素化パラフィン類、炭化水素類(ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等)、カルボン酸類(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)酪酸等などが挙げられる。また、補助溶媒として沸点が30℃以上160℃以下の有機溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド等)を併用してもよい。高沸点有機溶媒はカプラーに対して、質量比で0〜10倍量、好ましくは0〜4倍量、用いるのが好ましい。
【0110】
また、乳化分散物状態での保存時の経時安定性改良、乳剤と混合した塗布用最終組成物での写真性能変化抑制・経時安定性改良等の観点から必要に応じて乳化分散物から、減圧蒸留、ヌードル水洗あるいは限外ろ過などの方法により補助溶媒の全て又は一部を除去することができる。
この様にして得られる親油性微粒子分散物の平均粒子サイズは、0.04〜0.50μmが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.30μmであり、最も好ましくは0.08〜0.20μmである。平均粒子サイズは、コールターサブミクロン粒子アナライザーmodelN4(コールターエレクトロニクス社)等を用いて測定できる。
【0111】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号及び独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許第19806846A1号及び仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0112】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号等に記載されている化合物を使用できる。
【0113】
本発明に係わる感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0114】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0115】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用してもかまわないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10−5〜1g/m2、好ましくは1×10−4〜1×10−1g/m2、更に好ましくは1×10−3〜1×10−2g/m2である。
【0116】
本発明において写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0117】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感光材料の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白材である。使用量は、特に限定されていが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。
また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0118】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有していることが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mLであることが好ましく、0.50〜0.70g/mLがより好ましい。また、紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましい。また、上記、紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mLであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、特開平10−333278号、特開平11−52513号、特開平11−65024号、EP0880065号、およびEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0119】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。
本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0120】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0121】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0122】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10−4秒以下、更に好ましくは10−6秒以下である。
【0123】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号並びに特開平10−202950号に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特願平10−159187号に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0124】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
【0125】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1や同EP0789480A1号に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0126】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0127】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料にも好ましく適用される。迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは150秒以下、更に好ましくは130秒以下6秒以上である。
尚、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ、次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0128】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号、同9−152686号、同9−152693号、同9−211814号、同9−160193号に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0129】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号、同9−152695号に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0130】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号に記載されたものを用いることができる。
【0131】
本発明の構成をカラーリバーサルに適用する場合においては、特開2001−142181号の明細書に記載の内容が本発明の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0132】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
【0133】
(青感層乳剤Aの調製)
塩化銀98.9モル% 臭化銀1モル% 沃化銀0.1モル%のハロゲン組成からなる、平均辺長0.65μm、辺長の変動係数8%のハロゲン化銀立方体粒子を形成した。分光増感色素−1および2をそれぞれ2.5×10−4モル/Agモルと2.0×10−4モル/Agモル添加した。
粒子形成に際しては、K3IrCl5(H2O)、K4Ru(CN)6、K4Fe(CN)6、チオスルフォン酸化合物−1、チオ硫酸ナトリウム、金増感剤−1、及びメルカプト化合物−1、2を最適量用いた。このようにして高感側乳剤A−1を作製した。
同様にして、平均辺長0.50μm、辺長の変動係数9%の立方体粒子を形成した。
分光増感ならびに化学増感は、比表面積を合わせる補正(辺長比0.65/0.50=1.3倍)を行なった量で実施し、低感度側乳剤A−2を作成した。
【0134】
【化18】
【0135】
(緑感層用乳剤Cの調製)
本発明の乳剤A−1と粒子形成時の温度を下げ並びに増感色素の種類を下記のごとく変える以外は、乳剤A−1、2の調製条件と同様にして緑感性乳剤用高感側乳剤C−1、低感側乳剤C−2を作成した。
【0136】
【化19】
【0137】
粒子サイズは高感側が平均辺長0.40μm、低感側が平均辺長0.30μmである。その変動係数は、いずれも8%であった。
増感色素Dをハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては3.0×10−4モル、小サイズ乳剤に対しては3.6×10−4モル、また、増感色素Eをハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては4.0×10−5モル、小サイズ乳剤に対しては7.0×10−5モル添加した。
【0138】
(赤感層用乳剤Eの調製)
前記乳剤A−1と粒子形成時の温度を下げ並びに増感色素の種類を下記のごとく変える以外は、乳剤A−1、2の調製条件と同様にして赤感性乳剤用高感側乳剤E−1、低感側乳剤E−2を作成した。
【0139】
【化20】
【0140】
粒子サイズは高感側が平均辺長0.38μm、低感側が平均辺長0.32μmであり、辺長の変動係数は、各々9%と10%であった。
増感色素GおよびHをそれぞれ、ハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては8.0×10−5モル、小サイズ乳剤に対しては10.7×10−5モル添加した。
さらに、以下の化合物Iを赤感性乳剤層にハロゲン化銀1モル当たり3.0×10−3モル添加した。
【0141】
【化21】
【0142】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mLに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと前記乳剤A−1、A−2を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0143】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2、5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0144】
【化22】
【0145】
【化23】
【0146】
また、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、第二層、第四層、第六層および第七層に、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2、0.6mg/m2、0.1mg/m2となるように添加した。
また、青感性乳剤層および緑感性乳剤層に対し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10−4モル、2×10−4モル添加した。
また、赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2を添加した。
また第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2、18mg/m2となるように添加した。
また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0147】
【化24】
【0148】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青、含有率0.33質量%)を含む。ポリエチレン樹脂の量は29.2g/m2]
【0149】
【0150】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 1.15
混色防止剤(Cpd−4) 0.10
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.07
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.12
溶媒(Solv−5) 0.11
【0151】
【0152】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.68
混色防止剤(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.011
色像安定剤(Cpd−6) 0.08
色像安定剤(Cpd−7) 0.04
溶媒(Solv−1) 0.02
溶媒(Solv−2) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.065
【0153】
【0154】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.35
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.18
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.4
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.02
【0155】
【化25】
【0156】
【化26】
【0157】
【化27】
【0158】
【化28】
【0159】
【化29】
【0160】
【化30】
【0161】
【化31】
【0162】
【化32】
【0163】
【化33】
【0164】
【化34】
【0165】
以上のようにして作成した試料001に対して第一層の組成を以下の様に変更した試料101〜115を作製した。
【0166】
第一層 青感光性乳剤層の組成変更内容
【0167】
試料102は試料101に対してイエローカプラーを等モルの比較用カプラーY2に変更した。イエローカプラーと色像安定剤と溶媒の総和が一定になるように溶媒の量を調節した。そのとき3種の溶媒の組成は変えないようにした。
【0168】
上記試料103は試料101に対してハロゲン化銀乳剤塗布量が75%に、イエローカプラー塗布量が67モル%に低減し、イエローカプラーと色像安定剤と溶媒の総和が一定になるように溶媒の量を調節した。
試料104〜試料115は試料103に対してイエローカプラーを等モルの本発明のイエローカプラーに変更した。分子量によりカプラー量が変わるときには、イエローカプラーと色像安定剤と溶媒の総和が一定になるように溶媒の量を調節した。そのとき3種の溶媒の組成は変えないようにした。
【0169】
上記の感光材料各々(101〜115)を127mm幅のロール状に加工し、デジタルミニラボ フロンティア330(商品名、富士写真フイルム社製)を用いて感光材料に標準的な写真画像を露光した。その後下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。処理液組成と工程時間の異なる以下の2つの処理を行い感光材料を評価した。
【0170】
処理工程A
以下のランニング処理液を用いた処理を処理Aとした。
【0171】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 38.5℃ 45秒 45mL
漂白定着 38.0℃ 45秒 35mL
リンス1** 38.0℃ 20秒 −
リンス2** 38.0℃ 20秒 −
リンス3** 38.0℃ 20秒 −
リンス4** 38.0℃ 20秒 121mL
乾燥 80℃
(注)
* 感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50D(商品名)をリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス4に供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスはリンス1から4への4タンク向流方式とした。
【0172】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] 〔補充液〕
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−1) 2.2g 5.1g
蛍光増白剤(FL−2) 0.35g 1.75g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
ポリエチレングリコール平均分子量300 10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.20g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 4.8g 14.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.15
【0173】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 600mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL 214mL
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 8.3g 16.5g
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)アンモニウム 47.0g 94.0
g
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 2.8g
硝酸(67%) 16.5g 33.0g
イミダゾール 14.6g 29.2g
亜硫酸アンモニウム 16.0g 32.0g
メタ重亜硫酸カリウム 23.1g 46.2g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整) 6.5 6.5
【0174】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0175】
処理工程B
試料(101〜115)を、各々127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP350を改造した実験処理装置用いて感光材料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング処理液を用いた処理を処理Bとした。
【0176】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 17秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 17秒 35mL
リンス1** 40.0℃ 8秒 −
リンス2** 40.0℃ 8秒 −
リンス3** 40.0℃ 8秒 −
リンス4** 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス4に供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスはリンス1から4への4タンク向流方式とした。
【0177】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] 〔補充液〕
水 800mL 800mL
蛍光増白剤(FL−3) 4.0g 8.0g
残色低減剤(SR−1) 3.0g 5.5g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム 10.0g 10.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.10g
塩化カリウム 10.0g ―
4,5−ジヒドロキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.0g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 7.0g 19.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.25 12.6
【0178】
[漂白定着液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 600mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/L) 107mL 214mL
コハク酸 29.5g 59.0g
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)アンモニウム 47.0g 94.0g
エチレンジアミン4酢酸 1.4g 2.8g
硝酸(67%) 17.5g 35.0g
イミダゾール 14.6g 29.2g
亜硫酸アンモニウム 16.0g 32.0g
メタ重亜硫酸カリウム 23.1g 46.2g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硝酸とアンモニア水で調整) 6.00 6.00
【0179】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0180】
【化35】
【0181】
試料101〜115は各写真構成層塗布液を塗布し、感光材料とした後25℃相対湿度55%の条件に10日保存の後に以下の評価を行った。
【0182】
(評価1 色にごり)
各試料に対して3色分解の露光を与え、上記処理工程Aで発色現像処理を行い、イエロー、マゼンタ、及びシアンのそれぞれ単色発色試料を得た。
光源としては半導体レーザー光を用い688nmの光源(R光)、半導体レーザーにSHGを組み合わせることで532nmの光源(G光)、473nmの光源(B光)を得た。R光の光量を外部変調器を用いて変調し、回転多面体に反射させて、走査方向に対して直行して移動する試料に走査露光した。この走査露光は400dpiで行い、1画素当たりの平均露光時間は8×10−8秒であった。半導体レーザーは温度による光量変化を抑えるために、ペルチェ素子を用いて温度を一定にした。
得られた試料を用いイエロー発色部の濃度を測定した。イエロー濃度1.6を与える点でのシアン濃度を測定し色にごりを評価した。測定はX−rite 310(X−rite社製)を用いステータスAで行った。
【0183】
(評価2 光堅牢性)
評価1で作製した試料を用い、10万ルクスXe光に14日間暴露前後での濃度測定を行った。イエロー発色部の初期濃度0.5での保存後の相対残存率を算出した。
【0184】
(評価3 湿熱堅牢性)
評価1で作製した試料を用い、80℃相対湿度70%下に21日保存した前後での濃度測定を行った。イエロー発色部の初期濃度1.5での保存後の相対残存率を算出した。
【0185】
(評価4 迅速処理時の処理安定性)
各試料に評価1の露光装置を用い、処理工程Bにおいてグレイの階調を与える様に露光条件を決定した。処理工程Bにおいて感光材料の搬送速度を15%上下させて処理を行った。処理工程Bの標準時間の処理で濃度2.0を与える露光部の濃度変動を測定した。処理安定性として(濃度変動幅)/(初期濃度2.0)×100を算出し評価した。
評価結果を表2に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
本発明の試料103〜115は試料101に対してモル比で、イエローカプラーを67モル%に減らしているが比較用イエローカプラーと同等の発色濃度が得られた。また、本発明のイエローカプラーを用いるとイエロー中の色にごりが低減され、イエロー色素画像の低濃度部の光堅牢性と湿熱堅牢性に優れることが分かった。更に迅速処理時の濃度安定性に優れる感光材料が得られた。
【0188】
[実施例2]
実施例1の試料101〜115において第一層と第五層の配置を逆転した試料201〜215を作製した。実施例1に準じての評価を行った結果、特にグレイの画像において実施例1の試料に比較してイエローとマゼンタの濃度向上が認められた。また、本発明のカプラーを用いると色にごりが少なく、光堅牢性と湿熱堅牢性に優れ、処理安定性に優れる感光材料が得られた。
【0189】
[実施例3]
実施例1〜2の試料において、赤感光性乳剤層の組成を以下の様に変更した試料を作成し、実施例1〜2に準じた評価を行った結果、本発明の構成では迅速処理性、色再現性及び画像堅牢性に優れることが再現された。
【0190】
【0191】
[実施例4]
実施例1〜3においてハロゲン化銀乳剤を以下の様に変更した試料を作成し、実施例1に準じた評価を行った。その結果、本発明に従えば色再現性と迅速処理性に優れるハロゲン化銀カラー写真感光材料が得られることが分かった。
第一層:(乳剤B−H)と(乳剤B−L)の4対6の混合物(銀モル比)
第三層:(乳剤G−H)と(乳剤G−L)の5対5の混合物(銀モル比)
第五層:(乳剤R−H)と(乳剤R−L)の6対4の混合物(銀モル比)
【0192】
(乳剤B−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.55μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり3モル%)およびK4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.3モル%)を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]およびK2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にチオスルフォン酸ナトリウムと下記増感色素Aおよび増感色素Bを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールおよび1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤B−Hとした。
(乳剤B−Lの調製)
乳剤B−Hとは、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加速度のみを変えて、球相当径0.45μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。得られた乳剤を、乳剤B−Lとした。
【0193】
【化36】
【0194】
(乳剤G−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.2モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に下記増感色素D、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−Hとした。
(乳剤G−Lの調製)
乳剤G−Hとは、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加速度のみを変えて、球相当径0.28μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。得られた乳剤を、乳剤G−Lとした。
【0195】
【化37】
【0196】
(乳剤R−Hの調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.15モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に下記増感色素H、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、下記化合物Iおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−Hとした。
(乳剤R−Lの調製)
乳剤R−Hとは、硝酸銀と塩化ナトリウムの添加速度のみを変えて、球相当径0.28μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。得られた乳剤を、乳剤R−Lとした。
【0197】
【化38】
【0198】
[実施例5]
実施例1〜4で作製した試料を以下に示す装置を用いて走査露光を与え、実施例1〜4に準じた評価を行ったところ、本発明の構成の試料を用いると色再現性及び迅速処理性に優れるという本発明の効果が特に顕著に得られることが分かった。
デジタルミニラボ フロンティア330(商品名、富士写真フイルム社製)、Lambda 130(商品名、Durst社製)、 LIGHTJET 5000(商品名、Gretag社製)。
【0199】
[実施例6]
実施例1の試料に対して以下のように塗設量(各層における塗布量の合計)変更をした試料を作製した。
青色感光性ハロゲン化銀乳剤層の塗設量 240%
緑色感光性ハロゲン化銀乳剤層の塗設量 250%
赤色感光性ハロゲン化銀乳剤層の塗設量 260%
支持体:180μm厚みのポリエチレンテレフタレート透明支持体
これら試料を、実施例1の処理工程Bにおいてそれぞれの処理工程を2.7倍に延長した処理を行った。実施例1に準じての評価を行った結果、本発明のイエローカプラーを用いると色にごりが少なく、画像堅牢性に優れた感光材料が得られた。
【0200】
【発明の効果】
本発明によれば、色相、発色性に優れ、白地や色素画像が長期間変色、褪色せず、高度の保存性を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料を低コストで提供することができる。本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カブリや混色が少なく、塗布後長期間生保存しても発色濃度の低下が少なく、且つ、現像処理安定性に優れる。
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