JP2004117404A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】二つの画面を同時に更新するときの消費電力の増大、環境温度の上昇に伴う表皮電力の増大を極力抑え、電流供給能力の小さな電池の使用が可能な液晶表示装置を得る。
【解決手段】表示媒体として液晶を利用した第1及び第2表示パネルと、各パネルのマトリクス状に配置された画素を1ラインずつ走査する駆動回路と、該駆動回路を制御するコントローラとを備えた液晶表示装置。コントローラは順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間Tdの走査期間Tssに対する割合を環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで遅延期間Tdの走査期間Tssに対する割合の変化の仕方を異ならせる。
【選択図】  図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置、詳しくは、表示媒体として液晶を利用した二つの表示パネルを備えた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
近年、デジタル情報を可視情報に再生する媒体として、室温でコレステリック相を示す液晶(主として、カイラルネマチック液晶)を用いた反射型の液晶表示素子が、電圧無印加状態で表示を維持し得ることから電力消費が少なく、また、安価に製作できる利点に着目して種々開発、研究されている。
【0003】
そして、この種の液晶表示パネルに画像を表示するのに、前記液晶をホメオトロピック状態にリセットするリセット期間と、液晶を所望の状態に選択するための選択期間と、液晶を選択された状態に確立するための維持期間とを含む駆動方法が提案されている。
【0004】
ところで、カイラルネマチック液晶は印加電圧に対する応答速度が環境温度の上昇に伴って速くなるため、基本クロックを変化させて駆動パルスの周波数を高める必要がある。しかしながら、駆動パルスの周波数を高めると、それに伴って電源での消費電力が増大するという問題点を有している。
【0005】
また、二つの表示パネルを備えた電子書籍形態の液晶表示装置にあっては、二つの画面を同時に更新する場合にはピーク電流が過度に増大するおそれがあり、その回避対策が必要となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、二つの画面を同時に更新するときの消費電力の増大、環境温度の上昇に伴う消費電力の増大を極力抑え、電流供給能力の小さな電池の使用が可能な液晶表示装置を提供することにある。
【0007】
【発明の構成、作用及び効果】
以上の目的を達成するため、第1の発明に係る液晶表示装置は、表示媒体として液晶を利用した第1表示パネル及び第2表示パネルと、該第1及び第2表示パネルを駆動するための駆動回路と、該駆動回路を制御するためのコントローラと、前記第1及び第2表示パネルの周囲の環境温度を測定するための温度センサとを備え、前記第1及び第2表示パネルはそれぞれマトリクス状に配置された複数の画素からなる画面を備えており、前記駆動回路は第1及び第2表示パネルの各画素を1走査ラインごとに走査して駆動し、前記コントローラは、前記駆動回路が第1及び第2表示パネルのいずれか一方の画面を更新する片面更新モードと、第1及び第2表示パネルの両方の画面を同時に更新する両面更新モードとを選択可能であり、さらに、前記コントローラは、順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間の走査期間に対する割合を環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで前記遅延期間の走査期間に対する割合の変化の仕方を異ならせることを特徴とする。
【0008】
第1の発明に係る前記液晶表示装置にあっては、順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に遅延期間を挿入するというディレイドスキャン方式を採用することにより、駆動周波数を低下させることができる。即ち、環境温度が上昇した場合であっても駆動パルスの周波数が高くなることが抑えられ、電源の消費電力の増大を防止することができる。さらに、前記遅延期間の走査期間に対する割合を環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで遅延期間の走査期間に対する割合の変化の仕方を異ならせることにより、特に両面更新モードでのピーク電流が過度に増大したり、駆動パルスのパルス幅が小さくなりすぎて駆動回路の限界を超えたりするなどの問題を回避し、適正な駆動条件で表示パネルを駆動できる。
【0009】
第1の発明に係る前記液晶表示装置において、前記第1及び第2表示パネルはコレステリック液晶相の選択反射を利用して表示を行うものであり、前記駆動回路によって液晶に駆動パルスを印加する期間には、液晶をホメオトロピック状態にリセットするリセット期間、液晶を所望の状態に選択するための選択期間、液晶を選択された状態に確立するための維持期間を有し、前記コントローラは、前記選択期間において走査ライン上の画素に選択パルスが印加される期間である選択パルス印加期間の長さTspと選択期間の長さTsとの比であるTsp/Tsを環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとでTsp/Tsの変化の仕方を異ならせることが好ましい。
【0010】
前記Tsp/Tsを環境温度に応じて変化させ、かつ、片面更新モードと両面更新モードとでTsp/Tsの変化の仕方を異ならせることにより、駆動パルスの周波数が高くなったり、ピーク電流が過度に増大したりすることが抑えられ、適正な駆動条件で表示パネルを駆動できる。
【0011】
さらに、前記コントローラは、第1の温度範囲内では前記Tsp/Tsを一定として前記遅延期間の走査期間に対する割合を変化させ、第1の温度範囲とは異なる第2の温度範囲内ではTsp/Tsを第1の温度範囲とは異なる値で一定とすると共に遅延期間の走査期間に対する割合を変化させることが好ましい。表示パネルを駆動する際の制御が容易になる。さらに、コントローラは、所定の温度範囲内では駆動パルスの幅の比及び前記Tsp/Tsを一定に保ち、駆動パルス群全体の長さを変化させることが好ましい。同様に、表示パネルを駆動する際の制御が容易になる。
【0012】
さらに、前記コントローラは、選択パルスの幅が所定値よりも小さくならないように前記Tsp/Tsを変化させてもよい。あるいは、コントローラは、画面の更新所要時間が所定時間よりも長くならないように前記Tsp/Tsを変化させてもよい。このように制御すれば、更新時間が長くなりすぎて操作性が低下するのを防止することができる。
【0013】
さらに、コントローラは、両面更新モードにおける更新所要時間の下限値が、片面更新モードにおける更新所要時間の下限値よりも大きくなるように、前記遅延期間を各更新モードで異ならせてもよい。両面更新モードでピーク電流が過度に増大することをより効果的に防止できる。特に、前記コントローラは、両面更新モードにおける更新所要時間の下限値が、片面更新モードにおける更新所要時間の下限値の2倍よりも大きくなるように、前記遅延期間を各更新モードで異ならせることが好ましい。両面更新モードでピーク電流が過度に増大することをさらに確実に防止できる。
【0014】
第2の発明に係る液晶表示装置は、表示媒体として液晶を利用した第1表示パネル及び第2表示パネルと、該第1及び第2表示パネルを複数の駆動パルス群からなる駆動パルスによって駆動するための駆動回路と、該駆動回路を制御するためのコントローラと、前記第1及び第2表示パネルの周囲の環境温度を測定するための温度センサとを備え、前記第1及び第2表示パネルはそれぞれマトリクス状に配置された複数の画素からなる画面を備えており、前記駆動回路は第1及び第2表示パネルの各画素を1走査ラインごとに走査して駆動し、前記コントローラは、前記駆動回路が第1及び第2表示パネルのいずれか一方の画面を更新する片面更新モードと、第1及び第2表示パネルの両方の画面を同時に更新する両面更新モードとを選択可能であり、さらに、前記コントローラは、(a)順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間の走査期間に対する割合、(b)駆動パルス群の互いのパルス幅の比、(c)駆動パルス群の互いのパルス幅の比固定での駆動パルス群全体の長さ、の少なくとも一つを環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで前記(a),(b),(c)の変化の仕方を異ならせることを特徴とする。
【0015】
第2の発明に係る前記液晶表示装置にあっては、(a)順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間の走査期間に対する割合、(b)駆動パルス群の互いのパルス幅の比、(c)駆動パルス群の互いのパルス幅の比を固定したときの駆動パルス群全体の長さ、の少なくとも一つを環境温度に応じて変化させることにより、環境温度が上昇した場合であっても駆動パルスの周波数が高くなることが抑えられ、電源の消費電力の増大を防止することができる。さらに、片面更新モードと両面更新モードとで前記(a),(b),(c)の変化の仕方を異ならせることにより、特に両面更新モードでのピーク電流が過度に増大したり、駆動パルスのパルス幅が小さくなりすぎて駆動回路の限界を超えたりするなどの問題を回避し、適正な駆動条件で表示パネルを駆動できる。
【0016】
第2の発明に係る前記液晶表示装置において、前記コントローラは、所定の温度範囲内では前記(a),(b)を一定に保つと共に前記(c)を変化させることが好ましい。表示パネルを駆動する際の制御が容易になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る液晶表示装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
(液晶表示装置の全体構成、図1参照)
本発明に係る液晶表示装置の一実施形態として、図1に示す、見開き状態にできる2画面を備えた電子書籍タイプの液晶表示装置10について説明する。
【0019】
この液晶表示装置10は、右ページを構成する液晶表示パネル11Rと左ページを構成する液晶表示パネル11Lとからなり、各パネル11R,11Lには筐体12R,12Lに以下に説明するフルカラーの液晶表示素子100R,100Lが収容されている。筐体12R,12Lは中央部でヒンジ13によって連結されており、二つの画面が重なった閉状態と、二つの画面が並んだ開状態とに開閉可能である。
【0020】
筐体12R,12Lの下段は操作パネル20R,20Lとして構成され、主電源をオン/オフするための電源キー21、メニュー表示を実行するためのメニューキー22、コマンドの決定を指示するための決定キー23、カーソル移動キー24R,24L、右面のみを更新するモードを選択するためのキー25、左面のみを更新するモードを選択するためのキー26、両面を同時に更新するモードを選択するためのキー27が設けられている。
【0021】
また、筐体12R,12Lには液晶表示素子100R,100Lの環境温度を測定するための温度センサ31R,31L及びスピーカ32R,32Lが内蔵されている。筐体12Rには通信用電波を送受信するためのアンテナ33が設けられている。筐体12Lには記録媒体35を装着するためのスロット34が設けられている。記録媒体35はこの表示パネル11R,11Lに表示すべき書籍データを記憶したもので、半導体メモリ、光ディスク、リムーバブルハードディスク等が使用される。なお、表示すべきデータはアンテナ33を通じても本液晶表示装置10に入力される。さらに、液晶表示素子100R,100Lを駆動するための駆動回路を含む制御部50(以下に説明する)が筐体12R,12Lの内部に収納されている。
【0022】
(液晶表示素子、図2参照)
ここで、液晶表示素子100R,100Lについて説明する。この液晶表示素子100R,100Lは共に図2に示す構成からなり、コレステリック相を示す液晶を含む表示層111R,111G,111Bを積層した、単純マトリクス駆動方式による反射型のフルカラー液晶表示素子である。
【0023】
この液晶表示素子100R,100Lは、光吸収層121の上に、赤色の選択反射と透明状態の切換えにより表示を行う赤色表示層111Rを配し、その上に緑色の選択反射と透明状態の切換えにより表示を行う緑色表示層111Gを積層し、さらに、その上に青色の選択反射と透明状態の切換えにより表示を行う青色表示層111Bを積層したものである。
【0024】
各表示層111R,111G,111Bは、それぞれ透明電極113,114を形成した樹脂やガラス等からなる透明基板112間に液晶116及びスペーサ117を挟持し、両基板112を樹脂製柱状構造物115で接着したものである。透明電極113,114上には必要に応じて絶縁膜118、配向制御膜119が設けられる。また、基板112の外周部(表示領域外)には液晶116を封止するためのシール材120が設けられる。
【0025】
透明電極113,114はそれぞれ図3に示す走査駆動IC131R,131L、信号駆動IC132R,132Lに接続されており、透明電極113,114にそれぞれ所定のパルス電圧が印加される。この印加電圧に応答して、液晶116が可視光を透過する透明状態と特定波長の可視光を選択的に反射する選択反射状態との間で表示が切り換えられる。
【0026】
各表示層111R,111G,111Bに設けられている透明電極113,114は、それぞれ微細な間隔を保って平行に並べられた複数の帯状電極よりなり、その帯状電極の並ぶ向きが平面から見て互いに直角方向となるように対向させてある。これら上下の帯状電極に順次通電が行われる。即ち、各液晶116に対してマトリクス状に順次電圧が印加されて表示が行われる。これをマトリクス駆動と称し、電極113,114が交差する部分が各画素を構成することになる。このようなマトリクス駆動を各表示層ごとに行うことにより液晶表示素子100にフルカラー画像の表示を行う。
【0027】
詳しくは、2枚の基板間にコレステリック相を示す液晶を挟持した液晶表示素子では、液晶の状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態に切り換えて表示を行う。液晶がプレーナ状態の場合、コレステリック液晶の螺旋ピッチをP、液晶の平均屈折率をnとすると、波長λ=P・nの光が選択的に反射される。また、フォーカルコニック状態では、コレステリック液晶の選択反射波長が赤外光域にある場合には入射光を散乱し、それよりも短い場合には散乱が弱くなり実質的に可視光を透過する。そのため、選択反射波長を可視光域に設定し、素子の観察側と反対側に光吸収層を設けることにより、プレーナ状態で選択反射色の表示が、フォーカルコニック状態で黒色の表示が可能になる。また、選択反射波長を赤外光域に設定し、素子の観察側と反対側に光吸収層を設けることにより、プレーナ状態では赤外光域の波長の光を反射するが可視光域の波長の光は透過するので黒色の表示が、フォーカルコニック状態で散乱による白色の表示が可能になる。
【0028】
各表示層111R,111G,111Bを積層した液晶表示素子100R,100Lは、青色表示層111B及び緑色表示層111Gを液晶がフォーカルコニック配列となった透明状態とし、赤色表示層111Rを液晶がプレーナ配列となった選択反射状態とすることにより、赤色表示を行うことができる。また、青色表示層111Bを液晶がフォーカルコニック配列となった透明状態とし、緑色表示層111G及び赤色表示層111Rを液晶がプレーナ配列となった選択反射状態とすることにより、イエローの表示を行うことができる。同様に、各表示層の状態を透明状態と選択反射状態とを適宜選択することにより赤色、緑色、青色、白色、シアン、マゼンタ、イエロー、黒色の表示が可能である。さらに、各表示層111R,111G,111Bの状態として中間の選択反射状態を選択することにより中間色の表示が可能となり、フルカラー表示素子として利用できる。
【0029】
液晶116としては、室温でコレステリック液晶相を示すものが好ましく、特に、ネマチック液晶にコレステリック液晶相を示すのに十分な量のカイラル材を添加することによって得られるカイラルネマチック液晶が好適である。
【0030】
カイラル材は、ネマチック液晶に添加された場合にネマチック液晶の分子を捩る作用を有する添加剤である。カイラル材をネマチック液晶に添加することにより、所定の捩れ間隔を有する液晶分子の螺旋構造が生じ、これによりコレステリック液晶相を示す。
【0031】
また、この種のカイラルネマチック液晶を表示媒体として利用することにより、電圧無印加状態で表示状態を半永久的に保つことができる、いわゆるメモリ性を有する液晶表示パネルを得ることができる。従って、制御部50のCPUがスリープモードにある間も画像を表示し続けることができる。
【0032】
なお、液晶表示層は必ずしもこの構成に限定されるわけではなく、樹脂製構造物が堰状になったものや、樹脂製構造物を省略したものであってもよい。また、従来公知の高分子の3次元網目構造のなかに液晶が分散された、あるいは、液晶中に高分子の3次元網目構造が形成された、いわゆる高分子分散型の液晶複合膜として液晶表示層を構成することも可能である。
【0033】
(制御部及び駆動回路、図3、図4参照)
前記液晶表示素子100R,100Lの画素構成は、図3に示すように、それぞれ複数本の走査電極R1,R2〜Rmと信号電極C1,C2〜Cn(m,nは自然数)とのマトリクスで表される。走査電極R1,R2〜Rmは走査駆動IC131R,131Lの出力端子に接続され、信号電極C1,C2〜Cnは信号駆動IC132R,132Lの出力端子に接続されている。
【0034】
走査駆動IC131R,131Lは、走査電極R1,R2〜Rmのうち所定のものに選択信号を出力して選択状態とする一方、その他の電極には非選択信号を出力して非選択状態とする。走査駆動IC131R,131Lは、所定の時間間隔で電極を切り換えながら順次各走査電極R1,R2〜Rmに選択信号を印加してゆく。一方、信号駆動IC132R,132Lは、選択状態にある走査電極R1,R2〜Rm上の各画素を書き換えるべく、画像データに応じた信号を各信号電極C1,C2〜Cnに同時に出力する。例えば、走査電極Raが選択されると(aはa≦mを満たす自然数)、この走査電極Raと各信号電極C1,C2〜Cnとの交差部分の画素LRa−C1〜LRa−Cnが同時に書き換えられる。これにより、各画素における走査電極と信号電極との電圧差が画素の書換え電圧となり、各画素がこの書換え電圧に応じて書き換えられる。
【0035】
画像の書換えは全ての走査ラインを順次選択して行う。部分的に書換える場合は、書き換えたい部分を含むように特定の走査ラインのみを順次選択するようにすればよい。これにより、必要な部分のみを短時間で書き換えることができる。
【0036】
制御部50は、全体の制御を行う中央処理装置(CPU)51、前記駆動ICを制御するLCDコントローラ52、画像データに各種の処理を施す画像処理装置53、画像データを記憶する画像メモリ54、制御プログラムや各種データを記憶したROM55、各種データを記憶するためのRAM56によって構成されている。
【0037】
また、CPU51には、操作パネル20R,20L、温度センサ31R,31L、スピーカ32R,32L、通信ユニット61、記録媒体35のリーダ/ライタ62、タッチパネル63、フロントライト64R,64Lが接続されている。これらの各デバイスはCPU51と必要な信号を送受し、CPU51によって制御される。
【0038】
駆動IC131R,131L,132R,132Lへは電源部70から電力が供給される。画像メモリ54に記憶された画像データに基づいてLCDコントローラ52が駆動IC131R,131L,132R,132Lを制御し、液晶表示素子100R,100Lの各走査電極及び信号電極間に順次電圧を印加し、画像を書き込む。また、CPU51は温度センサ31R,31Lから環境温度情報を取得してRAM56に一時的に記憶させる。ROM55には、環境温度に応じて以下に説明する選択パルス印加期間Tspや選択期間Tsをどのように設定するかを決定するための情報が記憶されている。
【0039】
CPU51はスリープモードを有しており、画面の更新、外部との通信、記録媒体35へのアクセス等の必要な処理が終了するとスリープモードに移行する。スリープモードでは、操作パネル20R,20Lの操作検出など必要最低限の機能のみを実行し、他の機能を停止してエネルギー消費の低減を図っている。
【0040】
図4に示すように、走査駆動IC131R,131Lは各表示層に共通して設けられ、信号駆動IC132R,132Lは各表示層ごとに設けられている。各表示層の駆動電圧がほぼ等しければ、走査駆動IC131R,131Lを共通化することができ、コスト的に有利である。勿論、走査駆動IC131R,131Lを各表示層ごとに設けてもよく、あるいは、信号駆動IC132R,132Lを各表示層に共通して設けてもよい。
【0041】
なお、以下に記述する駆動方法は、一つの表示層の駆動に関するものであるが、各表示層に対して同様の駆動方法が適用されることはいうまでもない。
【0042】
(駆動原理及び基本駆動波形、図5参照)
まず、前記液晶表示素子の駆動方法の基本原理について説明する。なお、ここで示す基本駆動波形は、正極性のパルス波形を用いて説明するが、負極性であってもよく、あるいは交流化されたパルス波形を用いてもよい。
【0043】
図5は走査駆動IC131R,131Lから各走査電極に出力される基本駆動波形を示す。この駆動方法では、大きく分けて、リセット期間Trsと選択期間Tsと維持期間Trtと表示期間Ti(クロストーク期間とも称する)とから構成されている。選択期間Tsは、さらに、選択パルス印加期間Tspと、前選択期間Tsz及び後選択期間Tsz’とを含み、Ts−(Tsz+Tsz’)が走査期間Tssとなる。
【0044】
基本駆動波形において、リセット期間Trsでは+V1のリセットパルスが印加される。選択期間Tsにおいては、選択パルス印加期間Tspで+V2の選択パルスが印加される。前選択期間Tsz及び後選択期間Tsz’は電圧ゼロの期間である。さらに、維持期間では+V3の維持パルスが印加される。
【0045】
液晶の動作は以下のとおりである。まず、リセット期間Trsで+V1のリセットパルスが印加されると、液晶はホメオトロピック状態にリセットされる。次に、前選択期間Tszを経て(液晶は捩れが少しだけ戻る)選択パルス印加期間Tspに到る。ここで印加される選択パルスの波形を変化させることにより、各画素において液晶を最終的にプレーナ状態とフォーカルコニック状態と両者の混在状態(中間調表示)のいずれかを選択することができる。
【0046】
まず、プレーナ状態を選択する場合を説明する。この場合には、選択パルス印加期間Tspで所定エネルギーの選択パルスを印加し、再び液晶をホメオトロピック状態にする。その後、後選択期間Tsz’で液晶は捩れが少しだけ戻った状態になる。その後、維持期間Trtで+V3の維持パルスを印加すると、先の後選択期間Tsz’で捩れが少しだけ戻った状態になった液晶は、維持パルスが印加されることにより再び捩れが解け、ホメオトロピック状態になる。ここで、ホメオトロピック状態の液晶は電圧をゼロにすることによりプレーナ状態となり、プレーナ状態のまま固定される。
【0047】
一方、最終的にフォーカルコニック状態を選択する場合には、選択パルス印加期間Tspで前記プレーナ状態を選択する場合よりも小さいエネルギーの選択パルスを印加する。そして、後選択期間Tsz’では、液晶は捩れが戻ってヘリカルピッチが2倍程度に広がった状態になる。
【0048】
その後、維持期間Trtで+V3の維持パルスを印加する。後選択期間Tsz’で捩れが戻ってきた液晶は、この維持パルスを印加することにより、フォーカルコニック状態へと遷移する。ここで、フォーカルコニック状態の液晶は電圧をゼロにしても、フォーカルコニック状態のまま固定される。
【0049】
前述のように、選択パルス印加期間Tspに印加する選択パルスのエネルギーに基づいて最終的な液晶の表示状態が選択できる。また、この選択パルスの電圧値やパルス幅を調整することにより中間調の表示が可能である。
【0050】
(駆動例、図6〜図10参照)
図6及び図7は、走査駆動IC131R,131Lから各走査電極(ロウ1,2〜28で示す)に出力されるパルス波形、信号駆動IC132R,132Lから一の信号電極(カラムbで示す)に出力されるパルス波形、及び、これらのパルス波形が重畳されて各画素(LCD1,LCD2〜LCD28で示す)の液晶に印加されるパルス波形を示す。
【0051】
この駆動例では、画像の1フレームを更新するごとに印加するパルス波形の極性を変えており、図6にはプラス極性を印加する奇数フレームの駆動波形を、図7にはマイナス極性を印加する偶数フレームの駆動波形を示している。
【0052】
走査駆動IC131R,131Lは、電源部70から供給される複数の電圧、ここでは、リセット電圧(+V1,−V1)、選択電圧(+V2,−V2)、維持電圧(+V3,−V3)を走査電極R1,R2…Rmに印加する。リセットパルスの電圧は例えば+40V又は−40Vであり、選択パルスの電圧は例えば+15V又は−15Vであり、維持パルスの電圧は例えば+25V又は−25Vである。
【0053】
信号駆動IC132R,132Lは、電源部70から供給される書換え信号電圧±V4を信号電極C1,C2〜Cnに印加する。書換え信号パルスの電圧は例えば+3V又は−3Vである。
【0054】
図6及び図7では、複数の走査電極(ロウ1,2〜ロウ28)に順次選択パルスを印加し、複数の信号電極のうちの一の電極(カラムb)に書換え信号パルスを印加することを示している。
【0055】
カラムbに印加される信号パルス波形は、ここでは図示を容易にするため、いずれの走査期間Tssにおいても液晶の選択反射状態を選択するためのエネルギーを持つパルスが順次印加されるように示している。実際の画面更新時において、書換え信号パルスの波形は画像データに応じて変化し、各走査期間Tssにおいて液晶の透明状態、選択反射状態又は両者の混在状態のそれぞれを選択する波形のパルスが印加される。
【0056】
以上の駆動パルスを印加することにより、各画素LCD1,LCD2〜LCD28には図6、図7に示す波形のパルス電圧が印加されることになる。なお、各画素には信号電極から書換え信号パルスがクロストークパルスとして印加される。図6、図7において、クロストークパルスが印加される領域は太線で示している。但し、このクロストークパルスは電圧値が低く、液晶の状態に実質的な影響を与えない。従って、1フレーム内では液晶に対して実質的に単一極性の駆動パルスが印加されるといえる。
【0057】
リセット期間Trsではリセットパルス(奇数フレームでは+V1、偶数フレームでは−V1)が印加される。選択期間Tsにおいて選択パルス印加期間Tspでは選択パルス(奇数フレームでは+V2、偶数フレームでは−V2)が印加される。さらに、期間Tspでは信号駆動IC132R,132Lから書換え信号パルス±V4が重畳される。この信号パルス±V4は画像データに基づいて設定される電圧である。ここでは、信号パルス印加期間Twにおけるデューティ比が50%で正負電圧の絶対値が同じである矩形パルスである。
【0058】
前選択期間Tsz及び後選択期間Tsz’では電圧はゼロである。さらに、維持期間Trtでは維持パルス(奇数フレームでは+V3、偶数フレームでは−V3)が印加される。
【0059】
この駆動例では、各走査電極の選択は走査期間Tssの長さを基準にして行われ、前の走査電極における走査期間Tssが終了したときに次の走査電極の選択パルス印加期間Tspが開始される。
【0060】
また、この駆動例では、走査電極へ印加する駆動パルスの極性を、奇数フレームと偶数フレームにおいて単一極性とし、各フレームを描画するごとに反転させている。このように、各フレームにおいて単一極性の電圧を印加するように制御すると、単一極性の状態が連続して続く時間を比較的長く設定できる。これにより、液晶に印加する電圧として、極性が極めて短時間で周期的に変化する交番電圧を印加する場合に比べて、印加電圧の実質的な繰り返し周波数を低下させることができると共に、走査電極へ印加する駆動パルスの電圧値を1/2にすることができる。従って、電源部70の消費電力が大幅に低下する。
【0061】
なお、この駆動例における走査方式は、1走査ラインごとに順次走査していくプログレッシブ走査、あるいは、1フレームの画像を複数のフィールドに分割して飛び越し走査していくインターレース走査のいずれであってもよい。インターレース走査であれば、リセットパルスの印加開始から維持パルスの印加終了まで液晶がほぼ透明状態であることに起因する黒帯の発生(背景の光吸収層121が黒く観察される)が抑圧され、画面更新時における視認性が向上する。
【0062】
次に、図8〜図10を参照して前記駆動例における駆動波形の詳細を説明する。図8〜図10には、いずれも奇数フレーム(プラスフレーム)における、ロウ1〜28のうちの一つであるロウaに印加される選択パルスの波形、カラムbに印加される書換え信号パルスの波形、及びこれらのパルスが重畳して画素LCDxに印加される電圧波形をクロストークパルスも含めて示している。図8は液晶を最終的に最大の選択反射状態に選択する場合の波形を示し、図9は液晶を最終的に中間調表示状態に選択する場合の波形を示し、図10は液晶を最終的に透明状態に選択する場合の波形を示している。
【0063】
具体的には、±V4の信号パルスの位相を変化させることによって選択期間Tsにおいて画素LCDxに印加されるパルスの波形を変化させ、プレーナ状態、フォーカルコニック状態、両者の混在状態のいずれを選択するかを決定している。
【0064】
ここで、ロウaに印加される選択パルスは、その印加期間Tspを走査期間Tsの1/2の長さとし、カラムbに印加される信号パルスをその印加期間Twにおけるデューティ比が50%で、正負電圧の絶対値が同じである矩形パルスとしている。
【0065】
図6、図7に太線で示したように、全ての画素は信号電極に印加される信号パルスによるクロストークを受ける。しかし、本駆動例では、カラムbに印加される信号パルスを、デューティ比が50%で、正負電圧の絶対値が同じである矩形パルスとしているので、図8、図9、図10において、液晶への実際上の印加電圧は、リセット期間Trsでは実効電圧が√{[(V1+V4)2+(V1−V4)2]/2}、維持期間Trtでは実効電圧が√{[(V3+V4)2+(V3−V4)2]/2}と一定である。
【0066】
これにて、各画素の液晶に印加される電圧を、クロストークパルスの影響を受けつつも、実質的に一定にすることができ、クロストークパルスに起因して画像に通常生じるシャドーイングが抑制される。
【0067】
(電源部の詳細、図11、図12参照)
図3に示した電源部70の詳細を図11、図12に示す。この電源部70は、電源71と電源切換え回路75R,75Lと所定箇所に挿入されたコンデンサとで構成されている。電源71は走査駆動IC131R,131Lに所定の駆動パルスを出力するための9個の端子、即ち、+V1,+V2L,−V2L,−V1,−V3,GND,−V2R,+V2R,+V3を備えている。また、電源71は信号駆動IC132R,132Lに所定の信号パルスを出力するための3個の端子、即ち、+V4,GND,−V4を備えている。これらの端子から出力されるパルスの電圧値は所定の範囲内で微調整可能になっている。
【0068】
電源切換え回路75R,75Lは、4個のスイッチング素子SW1R〜SW4R,SW1L〜SW4Lを備えている。これらのスイッチング素子の一端は走査駆動IC131R,131Lの所定の端子に接続され、他端は電源71の前記端子にそれぞれ接続されている。
【0069】
端子±V1,±V3,GNDは、電源切換え回路75R,75Lのそれぞれに対して並列に接続されている。選択パルスを印加するための端子±V2R,±V2Lは各電源切換え回路75R,75Lに対して独立して接続されている。端子±V2R,±V2Lから出力される電圧値は、各液晶表示素子100R,100Lの予め測定された特性に基づいて、それらの特性差を除去するように設定される。出荷前の調整として電圧値の微調整を行ってもよいし、液晶表示装置の使用者が調整できるようにしてもよい。
【0070】
走査駆動IC131R,131Lには、端子GNDが0Vであるべきところ、電位が変化したときの補償のために該電位をシフトさせて0Vに戻す回路であるロジックレベルシフタが内蔵されている。
【0071】
走査電極に各駆動パルス電圧+V1,+V2,+V3,−V1,−V2,−V3を供給するための接続線の途中には、いずれもそれらの電圧に対応する端子GNDに接続された電圧安定化用のコンデンサが接続されている。さらに、信号電極に信号パルス電圧+V4,−V4を供給するための接続線の途中にも、いずれもそれらの電圧に対応する端子GNDに接続された電圧安定化用のコンデンサが接続されている。
【0072】
図11は左右の液晶表示素子100R,100Lへ供給する駆動パルスを正極性に設定した場合を示し、図12は負極性に設定した場合を示している。いずれの場合も電源切換え回路75R,75Lのスイッチング素子をCPU51で制御することによって行われる。
【0073】
即ち、各スイッチング素子SW1R〜SW4R,SW1L〜SW4Lは、CPU51からの指示の下に、正極性側(図11に示す接点1側)又は負極性側(図12に示す接点2側)に同時に切り換えられる。
【0074】
各スイッチング素子が接点1側に切り換えられているときは、右側の液晶表示素子100Rを駆動する走査駆動IC131Rに対して電源71から正極性の電圧+V1,+V2R,+V3を供給し、左側の液晶表示素子100Lを駆動する走査駆動IC131Lに対して電源71から正極性の電圧+V1,+V2L,+V3を供給する。
【0075】
各スイッチング素子が接点2側に切り換えられているときは、右側の液晶表示素子100Rを駆動する走査駆動IC131Rに対して電源71から負極性の電圧−V1,−V2R,−V3を供給し、左側の液晶表示素子100Lを駆動する走査駆動IC131Lに対して電源71から負極性の電圧−V1,−V2L,−V3を供給する。
【0076】
以上の構成からなる電源部70を備えた駆動回路において、制御部50は走査駆動IC131R,131Lに供給する電圧を1フレームを描画するごとに正極性及び負極性に切り換えることで、駆動パルスを各フレームにおいては単一極性とし、かつ、フレームごとに正負に反転させるように制御する。このような駆動回路及び制御方法によれば、簡単な回路構成で液晶の劣化などの悪影響を未然に防止できる駆動を実現できる。
【0077】
また、この駆動回路においては、電圧±V2を左右の液晶表示素子100R,100Lに対して独立した電源端子から供給するため、各表示素子100R,100Lでの特性の差異(液晶の層厚や組成のばらつき)を容易に補正できる。また、左右の液晶表示素子で環境温度が異なる場合(例えば、バッテリを片側の筐体のみに設けた時のバッテリの発熱による環境温度の不均衡など)に生じる両素子の表示特性の差異を容易に補正することができる。
【0078】
さらに、この駆動回路においては、走査駆動IC131R,131Lに供給される電圧は電源切換え回路75R,75Lを用いてその極性を切り換えるようにしているため、走査駆動IC131R,131Lとしては耐圧の低い4値の安価なものを使用することができる。
【0079】
なお、前記駆動例では駆動パルスの極性反転を1フレームの描画ごとに実行しているが、それ以外に種々の反転態様を採用してもよい。例えば、液晶が劣化しにくいものである場合や液晶の劣化がある程度許容できる場合は数フレームごとに反転させてもよい。あるいは、液晶の劣化を極力抑えたいのであれば、1走査ラインの走査中に反転させる、1走査ラインごとに反転させる、数走査ラインごとに反転させる、1フィールドごとに反転させる、数フィールドごとに反転させてもよい。
【0080】
(温度と駆動周波数との関係、図13参照)
前述の如く、カイラルネマチック液晶は温度の変化によって駆動パルスに対する応答性が異なる。即ち、該液晶の応答速度は低温域では遅く、高温域では速くなる。そこで、本実施形態では、温度センサ31R,31Lによって検出された環境温度に基づいて、所定の温度範囲ごとに、各液晶表示素子100R,100Lに印加する駆動パルス群の各パルス(リセットパルス、選択パルス、維持パルス、書換え信号パルス)のパルス幅の比を一定に保った状態で、駆動パルス群全体の長さを変化させるようにしている。
【0081】
即ち、液晶の応答速度は温度の上昇に伴って速くなるため、1ラインの走査時間に相当する走査期間Tssを温度の上昇に伴って短く設定する。それに伴い、リセット期間Trs、選択期間Ts、維持期間Trtも同じ割合で変化させる。このような変化は、例えばCPU51からの指示により、LCDコントローラ52等に内蔵された基本クロック生成手段が生成する基本クロック信号の周波数を変調すればよい。あるいは、クロック信号のカウント数や分周比を増減するようにしてもよい。
【0082】
環境温度の変化に基づく駆動パルス群の変化の態様は、図13に示すように、(K−20)℃からK℃の第1の温度範囲においては、温度の上昇に伴って、Tss/Ts=1/3(Tsp/Ts=1/6)を保ったままで駆動パルス群全体の長さを短くする。また、K℃を超えて(K+10)℃に達するまでの第2の温度範囲においては、温度の上昇に伴って、Tss/Ts=1/1(Tsp/Ts=1/2)を保ったままで駆動パルス群全体の長さを短くする。なお、ここでは0.1℃単位で温度変化を計測しているものとして図示している。
【0083】
このように、駆動パルス群全体の長さを変化させる場合、所定の温度範囲ごとに変化率を変化させる一方で、各温度範囲内では変化率を一定に設定してもよく、あるいは、各温度範囲内でも温度変化と共に変化率を連続的に変化させてもよい。前者の場合は制御が簡単になり、後者の場合は温度変化に対してより微細な制御が可能になる。
【0084】
(ディレイドスキャン方式による駆動例1、図14参照)
次に、プログレッシブ走査あるいはインターレース走査のいずれであっても、順に走査される1走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に遅延期間を挿入する、いわゆるディレイドスキャン方式による駆動例1について説明する。この駆動例1は図14に示すように、遅延期間Tdを2単位(走査期間Tssを1単位とする)に設定したものであり、ここでは1−2ディレイと称する。
【0085】
図14において(図15も同様である)、ロウ1〜ロウ4には各走査電極に印加される基本駆動波形を示し、カラムには信号電極に印加される信号波形を示す。また、LCD1〜LCD4には各画素の液晶に印加されるパルス波形を示している。
【0086】
この駆動例1は図5〜図10に示した駆動例と同様の原理で液晶を駆動するものであり、順に走査される1走査ラインごとに2単位の遅延期間Tdを挿入している。ここで、遅延期間Tdは、走査電極へのパルスの印加タイミングを2単位遅らせると共に、これに合わせて信号電極へのパルスの印加タイミングを遅らせ、パルスの印加を遅らせている間は両電極をゼロ電位に保つことで実現される。
【0087】
遅延期間Tdを2単位以上に設定すると、クロストークの影響を排除して画像劣化をより効果的に抑制することができる。即ち、駆動例1において、画素LCD3に注目すると、リセット期間の終端部分である期間A、前選択期間B、後選択期間D、及び、維持期間の先端部分である期間Eにクロストークが発生していない。本発明者らの検討によると、期間A,B,D,Eにクロストークが発生すると、最終的に表示される画像の濃度が、更新対象画素の濃度によって影響を受け、画像や文字などを表示した場合にゴーストとして視認されることが判明している。この現象は、クロストークの印加が、リセット期間の終端部分、又は、維持期間の前端部分の場合に顕著であり、さらに、リセット期間や維持期間よりも前選択期間や後選択期間の方が顕著であることも判明している。駆動例1では選択パルス印加期間Tspを1走査ラインごとに2単位ずつ遅延させることにより、全ての走査ラインについて、期間A,B,D,Eにおけるクロストークパルスの印加自体が回避される。この結果、期間A,B,D,Eにクロストークに起因するゴーストの発生がなくなる。
【0088】
(ディレイドスキャン方式による駆動例2、図15参照)
次に、ディレイドスキャン方式による駆動例2について説明する。この駆動例2は図15に示すように、遅延期間Tdを3単位(走査期間Tssを1単位とする)に設定したものであり、ここでは1−3ディレイと称する。
【0089】
この駆動例2においても、画素LCD3に注目すると、期間A,B,D,Eにクロストークが発生していないことがわかる。
【0090】
(遅延期間及びTss/Tsの温度に基づく変化、図16参照)
ここで、前記遅延期間Tdの長さと図13にて説明したTss/Tsの比を環境温度に基づいて変化させる制御について説明する。
【0091】
予め、一定の電圧値の駆動パルス群(リセットパルス、選択パルス、維持パルス)を用いて、かつ、各駆動パルスのパルス幅の比を固定し、種々の環境温度に対して適正な表示濃度を示すパルス群全体の長さを測定する。これに基づいて、種々の環境温度に対する適正なパルス群全体の長さを示す特性曲線を作成する。このとき、遅延期間Tdの長さとTss/Ts(Tsp/Ts)を種々に変更して複数の特性曲線を作成しておく。そして、所定の温度範囲ごとに使用する特性曲線を変えることにより、更新所要時間と駆動回路を流れるピーク電流を著しく増大させることなく画面の更新を行わせる。
【0092】
図16に、このようにして作成された制御の基礎となる特性曲線a〜iを示し、横軸は環境温度(横軸)、縦軸は画面の更新に要する時間であり、ここでは、先頭の走査ラインへの選択パルス印加から最終走査ラインへの選択パルス印加終了までの時間で表している。各特性曲線a〜iは以下の表1に示すスペックのものである。ちなみに、図16に示す特性曲線は、25℃において、リセット期間Trsが48ms、選択期間Tsが0.6ms、維持期間Trtが48msであり、走査ライン数を1024本として作成されたものである。
【0093】
【表1】
Figure 2004117404
【0094】
本液晶表示装置10にあっては、二つの液晶表示パネル11R,11Lを備えていることから、片面のみを更新する場合(曲線j参照)と、両面を同時に更新する場合(曲線k参照)とで環境温度の変化に応じて採用する特性曲線を変えるようにしている。
【0095】
採用する特性曲線を変えるに当たっては、電源部の消費電力が過度に上昇したりピーク電流が過度に増大したりすることを防止するため、画面の更新所要時間が過度に短くならないように、また、駆動回路の性能が十分発揮できなくなるのを防止するため、選択パルスの幅が過度に小さくならないように特性曲線を選択する。さらに、両面更新時の更新所要時間の下限値が、片面更新時の更新所要時間の下限値よりも大きく、通常は、2倍よりも大きくなるように選択することが好ましい。さらにまた、画面の更新所要時間が必要以上に長くならないように選択することが好ましい。
【0096】
即ち、片面のみを更新する場合は、画面の更新所要時間の下限値を200msに設定し、これを下回ることのないように、また、画面の更新所要時間が長くなりすぎないように上限値を約600msに設定し、これを上回ることのないように、温度変化に合わせて採用する曲線を変更する。具体的には、曲線jに示すように、低温域から29℃までは特性曲線aを採用し、29℃を超えて38℃までは特性曲線cを採用し、38℃を超えると特性曲線fを採用する。なお、採用する特性曲線を切り換えるにあたっては、その特性曲線を採用した場合の選択パルス幅が小さくなりすぎないように考慮する。例えば、29℃において特性曲線aから特性曲線bに移すこともできるが、ここでは特性曲線bに移ると選択パルスの幅が小さくなりすぎるため、これを避ける意味で特性曲線cに移行させるようにしている。
【0097】
一方、両面を同時に更新する場合は、画面の更新所要時間の下限値を600msに設定し、これを下回ることのないように、また、画面の更新所要時間が長くなりすぎないように上限値を約1200msに設定し、これを上回ることのないように、温度変化に合わせて採用する曲線を変更する。具体的には、曲線kに示すように、低温域から11℃までは特性曲線aを採用し、11℃を超えて22.5℃までは特性曲線bを採用し、22.5℃を超えて26℃までは特性曲線cを採用し、26℃を超えて32.5℃までは特性曲線dを採用し、32.5℃を超えて37℃までは特性曲線eを採用し、37℃を超えて39℃までは特性曲線fを採用し、39℃を超えて48℃までは特性曲線gを採用し、48℃を超えて58℃までは特性曲線hを採用し、58℃を超えると特性曲線iを採用する。
【0098】
このように、片面更新モードと両面更新モードとで、特性曲線の採用の仕方を異ならせることによって、(a)遅延期間の長さ(本例では、環境温度によってパルス群全体の長さが増減するので、正確には遅延期間の走査期間に対する割合)、(b)駆動パルス群の互いのパルス幅の比(本例では、Tsp/Ts(あるいはTss/Ts))、(c)駆動パルス群の互いのパルス幅の比固定での駆動パルス群全体の長さ、の少なくとも一つの変化の仕方が異なることとなる。
【0099】
さらに詳細には、所定温度範囲内でTsp/Tsが一定で、遅延期間の長さ(本例では、正確には遅延期間の走査期間に対する割合)が、環境温度が高くなるに従って大きくなるように変化させる。また、次の特性曲線に移るまでの所定温度範囲内では、駆動パルスの幅の比及びTsp/Ts(あるいはTss/Ts)を一定に保ち、駆動パルス群全体の長さを変化させることとなる。
【0100】
前記制御においては、環境温度が高温になるほど、駆動パルス群全体の長さを短くすると共に、Tsp/Ts(あるいはTss/Ts)が同じ値に保たれている温度範囲においては、環境温度が高温になるほど、遅延期間Td(本例では、正確には遅延期間の走査期間に対する割合)を長く設定する。また、Tsp/Ts(あるいはTss/Ts)が同じ値に保たれる各温度範囲について高温の温度範囲ほどTsp/Ts(あるいはTss/Ts)を大きい値に設定する。そして、環境温度に応じていずれの特性曲線を採用するかは、予めROM55に記憶させておき、温度センサ31R,31Lから取得される温度情報に基づいて所定の特性曲線を選択するように制御する。
【0101】
このように制御することで、複数の画面を同時に更新した場合でもピーク電流が過度に上昇することが抑制され、装置の損傷等の不具合を回避できる。
【0102】
(画面の更新例、図17〜図19参照)
ここで、左右の液晶表示パネル11R,11Lにおける画面の更新の様子を例示的に示す。図17には両面更新モードにおけるページ送りの様子を示す。ここでは、3ページ及び4ページの表示から5ページ及び6ページの表示に更新されている。図18には片面更新モードで右パネル11Rのみを3ページの表示から4ページの表示へ更新する様子を示す。また、図19には一の表示画面における部分更新モードの様子を示す。ここでは、色味調整のメニュー選択を実行する様子を示している。
【0103】
(制御手順、図20〜図31参照)
以下に、CPU51による本液晶表示装置10の制御手順についてその主要な部分を説明する。
【0104】
図20は制御のメインルーチンを示し、電源のオンによる起動時には、ステップS1で各種デバイスの状態やRAM56に記憶されている各種パラメータ等を初期設定し、その後、ステップS2〜S9の処理を順次実行する。スリープ状態からの起床時にはステップS2から処理を開始する。
【0105】
なお、各種パラメータについては後述するが、これらのパラメータを記憶するメモリが不揮発性のものであれば起動時に初期設定することは不要である。
【0106】
ステップS2の入力処理では、操作パネルやタッチパネルの操作状況を把握する。ステップS3のモード判定処理では、入力された動作モード(片面更新モード、両面更新モード等)を判定する。ステップS4の描画極性決定処理では、これから描画する際の駆動パルスの極性を決定する(そのサブルーチンは以下に詳述する)。ステップS5の温度補償処理では、環境温度に応じた駆動パルスの補正を行う。ステップS6の描画処理では、所定の画像を液晶表示パネル上に表示する。ステップS7の通信処理では、通信ユニットを用いて外部機器との通信を行う。ステップS4の描画極性決定処理では、後述するように、決定した駆動パルスの極性データを複数のパラメータとしてメモリに記憶させる。そして、ステップS6の描画処理では、これらのパラメータが示す極性で画面の更新を行う。
【0107】
その後、ステップS8でスリープモードに入るか否かを判定し、YESであればステップS9でスリープ処理を実行し、NOであればステップS2へ戻る。
【0108】
図21〜図23はステップS4で実行される描画極性決定処理の第1例を示す。このサブルーチンで使用されるパラメータは以下のとおりである。
PR1:右パネルの前々回の描画極性を示す
PR2:右パネルの前回の描画極性を示す
PL1:左パネルの前々回の描画極性を示す
PL2:左パネルの前回の描画極性を示す
PX:これから更新しようとする描画極性を示す
PX1:部分更新モードでの1回目の描画極性を示す
PX2:部分更新モードでの2回目の描画極性を示す
NR:右パネルの部分更新回数を示す
NL:左パネルの部分更新回数を示す
【0109】
この第1例では、まず、ステップS11で両面更新モードか否かを判定し、両面更新モードであれば、ステップS12〜S16でパラメータPR1,PR2が正極性か負極性かを判定する。PR1及びPR2が正極性であれば(ステップS12でYES)、ステップS17でこれから更新しようとする描画極性を示すパラメータPXを負極性に設定する。PR1及びPR2が負極性であれば(ステップS13でYES)、ステップS18でパラメータPXを正極性に設定する。また、PL1及びPL2が正極性であれば(ステップS14でYES)、ステップS19でパラメータPXを負極性に設定する。PL1及びPL2が負極性であれば(ステップS15でYES)、ステップS20でパラメータPXを正極性に設定する。
【0110】
また、PR1,PR2,PL1,PL2が前記いずれの極性でもなければ(ステップS15でNO)、ステップS16で前回の描画極性を示すパラメータPR2の極性を判定し、正極性であればステップS21でパラメータPXを負極性に設定し、負極性であればステップS22でパラメータPXを正極性に設定する。
【0111】
次に、ステップS23でパラメータPR1をパラメータPR2の内容に変更し、パラメータPL1をパラメータPL2の内容に変更し、かつ、パラメータPR2,PL2をパラメータPXの内容に変更する。続いて、ステップS24でパラメータNR,NLを0にリセットする。パラメータNR,NLは、部分更新時のクロストークによる画面濃度低下を防止する等の目的で左右のパネルの部分更新が所定回数に達したときに各パネルを全面更新するために使用されるが、その制御の詳細は省略する。
【0112】
片面更新モードが選択されている場合は(ステップS11でNO)、更新が選択されたパネルが右パネルか否かをステップS25にて判定する。右パネルであれば、さらに、ステップS26で部分更新モードか否かを判定し、部分更新モードであれば、ステップS27でパラメータPR2の極性を判定する。PR2が正極性であれば、ステップS28でパラメータPX1を負極性に設定すると共にパラメータPX2を正極性に設定する。一方、PR2が負極性であれば、ステップS29でパラメータPX1を正極性に設定すると共にパラメータPX2を負極性に設定する。本第1例にあっては、部分更新モードの場合、同じ部分更新領域を極性を変えて2回描画することにしている。次に、ステップS30でパラメータNRに1を加算する。
【0113】
右パネルのみの全面更新モードであれば(ステップS26でNO)、ステップS31でパラメータPR2の極性を判定し、正極性であればステップS32でパラメータPXを負極性に設定し、負極性であればステップS33でPXを正極性に設定する。次に、ステップS34でパラメータPR1をパラメータPR2の内容に変更し、かつ、パラメータPR2をパラメータPXの内容に変更する。さらに、ステップS35でパラメータNRを0にリセットする。
【0114】
一方、更新が選択されたパネルが左パネルであれば(ステップS25でNO)、ステップS36で部分更新モードか否かを判定し、部分更新モードであれば、ステップS37でパラメータPL2の極性を判定する。PL2が正極性であれば、ステップS38でパラメータPX1を負極性に設定すると共にパラメータPX2を正極性に設定する。一方、PL2が負極性であれば、ステップS39でパラメータPX1を正極性に設定すると共にパラメータPX2を負極性に設定する。部分更新モードの場合、同じ部分更新領域を極性を変えて2回描画するためである。次に、ステップS40でパラメータNLに1を加算する。
【0115】
左パネルのみの全面更新モードであれば(ステップS36でNO)、ステップS41でパラメータPL2の極性を判定し、正極性であればステップS42でパラメータPXを負極性に設定し、負極性であればステップS43でPXを正極性に設定する。次に、ステップS44でパラメータPL1をパラメータPL2の内容に変更し、かつ、パラメータPL2をパラメータPXの内容に変更する。さらに、ステップS45でパラメータNLを0にリセットする。
【0116】
以上のフローチャートに従って各パラメータを設定することにより、両面更新や片面更新が混在しているにも拘わらず、メインルーチンにおける描画処理(ステップS6)の画面更新においては、同極性の駆動パルスでの更新が3回以上続くことが防止される。また、部分更新時には極性を変えて2回の描画が行われることとなり、全面更新と部分更新が混在していても同極性の駆動パルスでの更新が3回以上続くことが防止される。
【0117】
図24〜図26はステップS4で実行される描画極性決定処理の第2例を示す。このサブルーチンで新たに使用されるパラメータは以下のとおりである。
PRB:右パネルの前回の部分更新モードでの描画極性を示す
PLB:左パネルの前回の部分更新モードでの描画極性を示す
PXB:これから部分更新しようとする描画極性を示す
【0118】
この第2例は、左右パネルの部分更新モードでの駆動パルスの極性をメモリしておき、部分更新領域が連続して同じ極性で描画されることを防止するようにしたものである。
【0119】
即ち、この第2例において、ステップS11〜S22,S24は前記第1例で説明したステップS11〜S22,S24と同様の処理を行う。ステップS23aでは前記ステップS23と同じ処理に加えて、パラメータPRB,PLBをパラメータPXの内容に変更する。
【0120】
片面更新モードが選択され(ステップS11でNO)、それが右パネルであり(ステップS25でYES)、かつ、部分更新モードであれば(ステップS26でYES)、ステップS27aでパラメータPRBの極性を判定する。PRBが正極性であれば、ステップS28aでパラメータPXBを負極性に設定する。一方、PRBが負極性であれば、ステップS29aでパラメータPXBを正極性に設定する。そして、ステップS46でパラメータPRBをパラメータPXBの内容に変更する。本第2例にあっては、パラメータPRB,PLB,PXBを導入することにより、部分更新領域を連続して同じ極性で描画することを防止している。次に、ステップS30でパラメータNRに1を加算する。
【0121】
右パネルのみの全面更新モードの場合(ステップS26でNO)に実行されるステップS31,S32,S33,S35は前記第1例と同様である。但し、ステップS34aではパラメータPRBをパラメータPXの内容に変更する処理が追加されている。
【0122】
一方、更新が選択されたパネルが左パネルであり(ステップS25でNO)、かつ、部分更新モードであれば(ステップS36でYES)、ステップS37aでパラメータPLBの極性を判定する。PLBが正極性であれば、ステップS38aでパラメータPXBを負極性に設定する。一方、PLBが負極性であれば、ステップS39aでパラメータPXBを正極性に設定する。そして、ステップS47でパラメータPLBをパラメータPXBの内容に変更する。部分更新領域を連続して同じ極性で描画することを防止するためである。次に、ステップS40でパラメータNLに1を加算する。
【0123】
左パネルのみの全面更新モードの場合(ステップS36でNO)に実行されるステップS41,S42,S43,S45は前記第1例と同様である。但し、ステップS44aではパラメータPLBをパラメータPXの内容に変更する処理が追加されている。
【0124】
本第2例においては、部分更新時における駆動パルスの極性をメモリに記憶しておくことにより、第1例のように部分更新時に複数回の更新を行わなくても、部分更新領域が連続して同じ極性で描画されるのを防止でき、更新動作が簡便になる。
【0125】
図27〜図31はステップS4で実行される描画極性決定処理の第3例を示す。このサブルーチンで新たに使用されるパラメータは以下のとおりである。
PRB1:右パネルの前々回の部分更新モードでの描画極性を示す
PRB2:右パネルの前回の部分更新モードでの描画極性を示す
PLB1:左パネルの前々回の部分更新モードでの描画極性を示す
PLB2:左パネルの前回の部分更新モードでの描画極性を示す
【0126】
この第3例は、左右のパネルを同時に部分更新する場合をも考慮して駆動パルスの極性を決定するようにしている。また、両面のパネルを同時に部分更新する場合に同じ極性での描画が3回以上続かないように描画極性を決定している。
【0127】
即ち、この第3例において、まず、ステップS11で両面更新モードか否かを判定し、両面更新モードであれば、ステップS51で部分更新モードか否かを判定する。部分更新モードであれば、ステップS52〜S56でパラメータPRB1,PRB2が正極性か負極性かを判定する。PRB1及びPRB2が正極性であれば(ステップS52でYES)、ステップS57でこれから更新しようとする描画極性を示すパラメータPXBを負極性に設定する。PRB1及びPRB2が負極性であれば(ステップS53でYES)、ステップS58でパラメータPXBを正極性に設定する。また、PLB1及びPLB2が正極性であれば(ステップS54でYES)、ステップS59でパラメータPXBを負極性に設定する。PLB1及びPLB2が負極性であれば(ステップS55でYES)、ステップS60でパラメータPXBを正極性に設定する。
【0128】
また、PRB1,PRB2,PLB1,PLB2が前記いずれの極性でもなければ(ステップS55でNO)、ステップS56で前回の描画極性を示すパラメータPRB2の極性を判定し、正極性であればステップS61でパラメータPXBを負極性に設定し、負極性であればステップS62でパラメータPXBを正極性に設定する。
【0129】
次に、ステップS63でパラメータPRB1をパラメータPRB2の内容に変更し、パラメータPLB1をパラメータPLB2の内容に変更し、かつ、パラメータPRB2,PLB2をパラメータPXBの内容に変更する。続いて、ステップS64でパラメータNRに1を加算し、パラメータNLに1を加算する。
【0130】
両面での全面更新モードであれば(ステップS51でNO)、ステップS12〜S22を実行する。ここでの処理は前記第1例で説明したステップS12〜S22と同様であり、その処理が終了すると、ステップS65でパラメータPR1をパラメータPR2の内容に変更し、パラメータPL1をパラメータPL2の内容に変更し、かつ、パラメータPR2,PL2をパラメータPXの内容に変更する。同時に、パラメータPRB1をパラメータPRB2の内容に変更し、パラメータPLB1をパラメータPLB2の内容に変更し、かつ、パラメータPRB2,PLB2をパラメータPXBの内容に変更する。続いて、ステップS66でパラメータNR,NLを0にリセットする。
【0131】
片面更新モードが選択され(ステップS11でNO)、それが右パネルであり(ステップS25でYES)、かつ、部分更新モードであれば(ステップS26でYES)、ステップS27bでパラメータPRB2の極性を判定する。PRB2が正極性であれば、ステップS28bでパラメータPXBを負極性に設定する。一方、PRB2が負極性であれば、ステップS29bでパラメータPXBを正極性に設定する。そして、ステップS46bでパラメータPRB1をパラメータPRB2の内容に変更し、パラメータPRB2をパラメータPXBの内容に変更する。次に、ステップS30でパラメータNRに1を加算する。
【0132】
右パネルのみの全面更新モードの場合(ステップS26でNO)に実行されるステップS31,S32,S33,S35は前記第1例と同様である。但し、ステップS34bではパラメータPRB1をパラメータPRB2の内容に変更し、パラメータPRB2をパラメータPXの内容に変更する処理が追加されている。
【0133】
一方、更新が選択されたパネルが左パネルであり(ステップS25でNO)、かつ、部分更新モードであれば(ステップS36でYES)、ステップS37bでパラメータPLB2の極性を判定する。PLB2が正極性であれば、ステップS38bでパラメータPXBを負極性に設定する。一方、PLB2が負極性であれば、ステップS39bでパラメータPXBを正極性に設定する。そして、ステップS47bでパラメータPLB1をパラメータPLB2の内容に変更し、パラメータPLB2をパラメータPXBの内容に変更する。次に、ステップS40でパラメータNLに1を加算する。
【0134】
左パネルのみの全面更新モードの場合(ステップS36でNO)に実行されるステップS41,S42,S43,S45は前記第1例と同様である。但し、ステップS44bではパラメータPLB1をパラメータPLB2の内容に変更し、パラメータPLB2をパラメータPXの内容に変更する処理が追加されている。
【0135】
(他の実施形態)
なお、本発明に係る液晶表示装置は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0136】
例えば、図2に示した液晶表示素子の構成、材料、製造方法等は任意であり、図20〜図31に示した制御手順の詳細も任意である。また、液晶表示素子は単層のものであってもよいし、2層や4層以上の液晶表示層が積層されたものであってもよい。
【0137】
特に、図16のグラフに示した片面更新モード及び全面更新モードでの特性曲線j,kは一例である。また、Tss/Tsを特定の温度範囲ごとにステップ的に変化させることなく、全温度範囲において所定の曲線を描くように滑らかな特性で変化させてもよい。
【0138】
また、前記実施形態においては2画面の液晶表示装置について説明したが、本発明は三つ以上の画面を持つ液晶表示装置にも適用することが可能である。3画面以上を有する液晶表示装置の場合も、個々のパネルについて所定回数の駆動パルスの極性を記憶しこれに基づいて極性を決定すればよい。但し、3画面以上を有する液晶表示装置の場合、全数より少ない複数の画面を同時に更新することもあり得るため、2画面の液晶表示装置よりも各パネルの極性の履歴がばらつきやすくなる。従って、前々回よりもさらに遡って駆動パルスの極性を記憶させておくことが好ましい。部分更新については、前記実施形態と2画面構成の液晶表示装置と同様の制御を行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液晶表示装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】前記液晶表示装置を構成する液晶表示素子の一例を示す断面図。
【図3】前記液晶表示素子の制御部を示すブロック図。
【図4】3層の液晶表示層を駆動するICの配置を示すブロック図。
【図5】前記液晶表示素子に対する基本的な駆動波形を示すチャート図。
【図6】前記液晶表示素子の各画素に印加される駆動波形(奇数フレーム)を示すチャート図。
【図7】前記液晶表示素子の各画素に印加される駆動波形(偶数フレーム)を示すチャート図。
【図8】図6、図7に示した駆動波形(液晶を選択反射状態とする)の詳細を示すチャート図。
【図9】図6、図7に示した駆動波形(液晶を中間調表示状態とする)の詳細を示すチャート図。
【図10】図6、図7に示した駆動波形(液晶を光透過状態とする)の詳細を示すチャート図。
【図11】電源部の詳細(液晶を正極性で駆動する場合)を示すブロック図。
【図12】電源部の詳細(液晶を負極性で駆動する場合)を示すブロック図。
【図13】環境温度が変化した場合に走査電極へ印加される駆動波形を示すチャート図。
【図14】ディレイドスキャン方式による駆動例1の駆動波形を示すチャート図。
【図15】ディレイドスキャン方式による駆動例2の駆動波形を示すチャート図。
【図16】遅延期間及びTss/Tsの各種設定値に関して、環境温度と走査時間との関係を示すグラフ。
【図17】画面更新例(両面更新モード)の説明図。
【図18】画面更新例(片面更新モード)の説明図。
【図19】画面更新例(部分更新モード)の説明図。
【図20】前記液晶表示装置の制御手順(メインルーチン)を示すフローチャート図。
【図21】描画極性決定処理の第1例を示すフローチャート図。
【図22】描画極性決定処理の第1例を示すフローチャート図、図21の続き。
【図23】描画極性決定処理の第1例を示すフローチャート図、図22の続き。
【図24】描画極性決定処理の第2例を示すフローチャート図。
【図25】描画極性決定処理の第2例を示すフローチャート図、図24の続き。
【図26】描画極性決定処理の第2例を示すフローチャート図、図25の続き。
【図27】描画極性決定処理の第3例を示すフローチャート図。
【図28】描画極性決定処理の第3例を示すフローチャート図、図27の続き。
【図29】描画極性決定処理の第3例を示すフローチャート図、図28の続き。
【図30】描画極性決定処理の第3例を示すフローチャート図、図27の続き。
【図31】描画極性決定処理の第3例を示すフローチャート図、図30の続き。
【符号の説明】
10…液晶表示装置
11R,11L…液晶表示パネル
31R,31L…温度センサ
51…中央処理装置(CPU)
52…LCDコントローラ
70…電源部
100R,100L…液晶表示素子
113,114…電極
116…カイラルネマチック液晶
131R,131L…走査駆動IC
132R,132L…信号駆動IC
Ts…選択期間
Tsp…選択パルス印加期間
Td…遅延期間
Tss…走査期間

Claims (5)

  1. 表示媒体として液晶を利用した第1表示パネル及び第2表示パネルと、該第1及び第2表示パネルを駆動するための駆動回路と、該駆動回路を制御するためのコントローラと、前記第1及び第2表示パネルの周囲の環境温度を測定するための温度センサとを備え、
    前記第1及び第2表示パネルはそれぞれマトリクス状に配置された複数の画素からなる画面を備えており、
    前記駆動回路は第1及び第2表示パネルの各画素を1走査ラインごとに走査して駆動し、
    前記コントローラは、前記駆動回路が第1及び第2表示パネルのいずれか一方の画面を更新する片面更新モードと、第1及び第2表示パネルの両方の画面を同時に更新する両面更新モードとを選択可能であり、
    さらに、前記コントローラは、順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間の走査期間に対する割合を環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで前記遅延期間の走査期間に対する割合の変化の仕方を異ならせること、
    を特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記第1及び第2表示パネルはコレステリック液晶相の選択反射を利用して表示を行うものであり、
    前記駆動回路によって液晶に駆動パルスを印加する期間には、液晶をホメオトロピック状態にリセットするリセット期間、液晶を所望の状態に選択するための選択期間、液晶を選択された状態に確立するための維持期間を有し、
    前記コントローラは、前記選択期間において走査ライン上の画素に選択パルスが印加される期間である選択パルス印加期間の長さTspと選択期間の長さTsとの比であるTsp/Tsを環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとでTsp/Tsの変化の仕方を異ならせること、
    を特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
  3. 前記コントローラは、第1の温度範囲内では前記Tsp/Tsを一定として前記遅延期間の走査期間に対する割合を変化させ、第1の温度範囲とは異なる第2の温度範囲内ではTsp/Tsを第1の温度範囲とは異なる値で一定とすると共に遅延期間の走査期間に対する割合を変化させることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置。
  4. 表示媒体として液晶を利用した第1表示パネル及び第2表示パネルと、該第1及び第2表示パネルを複数の駆動パルス群からなる駆動パルスによって駆動するための駆動回路と、該駆動回路を制御するためのコントローラと、前記第1及び第2表示パネルの周囲の環境温度を測定するための温度センサとを備え、
    前記第1及び第2表示パネルはそれぞれマトリクス状に配置された複数の画素からなる画面を備えており、
    前記駆動回路は第1及び第2表示パネルの各画素を1走査ラインごとに走査して駆動し、
    前記コントローラは、前記駆動回路が第1及び第2表示パネルのいずれか一方の画面を更新する片面更新モードと、第1及び第2表示パネルの両方の画面を同時に更新する両面更新モードとを選択可能であり、
    さらに、前記コントローラは、(a)順に走査される各走査ラインについて時間的に隣り合う走査ラインの間に挿入される遅延期間の走査期間に対する割合、(b)駆動パルス群の互いのパルス幅の比、(c)駆動パルス群の互いのパルス幅の比固定での駆動パルス群全体の長さ、の少なくとも一つを環境温度に応じて変化させると共に、片面更新モードと両面更新モードとで前記(a),(b),(c)の変化の仕方を異ならせること、
    を特徴とする液晶表示装置。
  5. 前記コントローラは、所定の温度範囲内では前記(a),(b)を一定に保つと共に前記(c)を変化させることを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置。
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