JP2004117277A - 赤外線撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バイアス電流を流して信号を読み出す方式の赤外線イメージセンサ200を用いた赤外線撮像装置において、センサ200から出力されたフレームデータを少なくとも1フレーム期間保持する第1フレームメモリ201と、出力用フレームデータを保持する第2フレームメモリ205と、フレーム期間毎に、センサ200の出力である現フレームデータと第1フレームメモリ201に保持された前フレームデータとの差分を画素単位で基準電圧Soと比較する比較器203とを設け、差分が基準電圧Soより大きい場合は第2フレームメモリ205のデータを現フレームデータに書き換えて出力し、差分が基準電圧Soより小さい場合は第2フレームメモリ205のデータをそのまま保持して出力する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非冷却型の赤外線イメージセンサを用いた赤外線撮像装置に係わり、特に雑音低減化回路の改良をはかった赤外線撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
赤外線を利用した撮像装置は、昼夜に拘わらず撮像可能であると共に、可視光よりも煙や霧に対して透過性が高いという特長を有し、さらに被写体の温度情報をも得られるという特長を有する。このため、防衛分野をはじめ監視カメラや火災検知カメラとして広い応用範囲を有する。
【0003】
従来の主流素子である量子型赤外線固体撮像素子の最大の欠点は低温動作のための冷却機構を必要とすることであるが、近年このような冷却機構を必要としない非冷却型赤外線固体撮像素子の開発が盛んになってきている。非冷却型、即ち熱型の赤外線固体撮像素子においては、波長10μm程度の入射赤外線を吸収構造により熱に変換した上で、この微弱な熱により生じる感熱部の温度変化を何らかの熱電変換手段により電気的信号に変換し、この電気的信号を読み出すことで赤外線画像情報を得ている。
【0004】
非冷却型の赤外線固体撮像素子としては、一定の順方向電流により温度変化を電圧変化に変換するシリコンpn接合をSOI領域に形成したものが報告されている(非特許文献1)。SOI基板を用いたシリコンpn接合型の素子は、シリコンLSI製造工程のみによる製造が可能であるという特長があり、従って量産性に優れた素子である。また、シリコンpn接合型素子には、熱電変換手段であるpn接合が整流特性を利用した画素選択機能を有していることから、画素の内部構造を単純化できるという特長もある。
【0005】
ところで、非冷却型の赤外線固体撮像素子における画素部の温度変化は、赤外線吸収層の吸収率や光学系にもよるが、一般的には被写体の温度変化の5×10−3倍程度であり、被写体温度が1[K]変化すれば画素温度は5[mK]変化する。シリコンpn接合を8個直列接続した場合の、熱電変換効率は10[mV/K]程度であるので、被写体温度が1[K]変化した場合には画素部に50[μV]の信号電圧が発生する。実際には、被写体の温度変化として0.1[K]程度を識別することが要求されることが多いので、その場合に発生する5[μV]程度の信号電圧を読み出すことが必要となる。従って、この微弱な電気信号を認識するために、画素部の雑音電圧は上記の5[μV]程度に抑圧することが必要である。
【0006】
このような非常に微弱な信号電圧を読み出す方法として、画素部で発生した信号電圧を増幅トランジスタのゲート電圧として電流増幅し、増幅された信号電流を蓄積容量で時間積分するという回路構成が知られている。この回路構成は、ゲート変調積分回路と呼ばれる回路であり、この回路構成を各列毎に配置して1行分の電流増幅を並列処理することで、信号帯域を制限しランダム雑音を低減できるという効果がある。
【0007】
しかしながら、この種の赤外線固体撮像素子(赤外線イメージセンサ)においては、CCDやCMOSセンサといった可視イメージセンサと異なる、赤外線撮像装置に固有であり除去することが困難な雑音がある。それは、画素部の温度情報を読み出すために必要不可欠なバイアス電流に起因する1/f雑音の低周波成分である。CCDやCMOSセンサといった可視イメージセンサにおいては、信号成分を含む出力と信号成分を含まない出力(暗時出力)との差分処理を行うことで1/f雑音の低周波成分を除去している。即ち、CCDにおいては出力アンプで発生する1/f雑音を相関二重サンプリング法により除去することが一般的であり、CMOSセンサにおいても画素部の増幅トランジスタで発生する1/f雑音をカラム毎に除去することが一般的である。
【0008】
ところが、バイアス電流を流して信号を読み出す方式の赤外線撮像装置においては、暗時出力に相当するものがなく、バイアス電流を流すことにより発生する1/f雑音を除去することができなかった。1/f雑音の周波数分布はその名のとおり1/fに比例するために、特にその低周波成分の強度が高く、問題となっていた。また、フレーム相関の弱いランダム雑音を除去するために、複数のフレームデータを加算する方法が知られているが、低周波成分の強度が強い1/f雑音の場合は、フレーム相関が強いために複数のフレームデータを加算することで除去することはできなかった。
【0009】
【非特許文献1】
Tomohiro Ishikawa, et al.,Proc.SPIE Vol.3698, p.556,1999
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の非冷却型の赤外線イメージセンサを用いた赤外線撮像装置においては、CCDやCMOSセンサといった可視イメージセンサとは異なり、バイアス電流を流すことにより発生する1/f雑音の影響を低減することが困難であった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮して成されたもので、その目的とするところは、1/f雑音を効果的に低減することができ、低雑音・高感度化をはかり得る非冷却型の赤外線撮像装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(構成)
上記課題を解決するために本発明は、次のような構成を採用している。
【0013】
即ち本発明は、半導体基板上に、電流を流して信号を読み出すタイプの赤外線検出画素が二次元的に配列された赤外線イメージセンサを用いた赤外線撮像装置において、前記赤外線イメージセンサから出力されたフレームデータを少なくとも1フレーム期間保持するための第1フレームメモリと、フレーム期間毎に、前記赤外線イメージセンサから読み出されている現フレームデータと第1フレームメモリに保持された直前フレーム期間における前フレームデータとを画素単位で比較する比較器と、この比較器による比較結果に応じた出力用フレームデータを保持するための第2フレームメモリと、前記比較器に対して所定の基準電圧を設定するための基準電圧設定手段と、前記赤外線イメージセンサへの入射赤外線を遮断するシャッター機構と、このシャッター機構によりシャッターが閉じられた際に第2フレームメモリ内部の出力用フレームデータを所望の初期データ値に設定する初期化手段とを具備してなり、前記比較器は、画素毎のデータに対して、現フレームデータと前フレームデータとの差分と前記基準電圧とを比較し、前記差分が前記基準電圧より大きい場合には第2フレームメモリ内部の画素データを現フレームデータの画素データに書き換え、前記差分が前記基準電圧より小さい場合には第2フレームメモリ内部の画素データを保持させることを特徴とする。
【0014】
ここで、本発明の望ましい実施態様としては次のものが挙げられる。
【0015】
(1) 赤外線検出画素は、入射赤外線光を吸収して熱に変換する赤外線吸収構造部と、この赤外線吸収構造部で発生した熱による温度変化を電気信号に変換する熱電変換素子とを有していると。
【0016】
(2) 熱電変換素子は、熱による温度変化を抵抗体の抵抗変化として検出するボロメータであること。
【0017】
(3) 熱伝変換素子は、熱による温度変化を順方向電流若しくは電圧の変化として検出するpn接合ダイオードであること。
【0018】
(4) シャッター機構は任意の間隔でシャッターを閉動作するものであること。
【0019】
(5) 初期化手段は、第2フレームメモリに任意の初期値を書き込むものであること。
【0020】
(6) 初期値は、シャッターが閉動作されたときの該シャッターからの赤外線輻射に相当する信号レベルであること。
【0021】
(7) 基準電圧は、赤外線イメージセンサの画素において発生する画素固有の1/f雑音に相当するレベルであること。
【0022】
(作用)
本発明によれば、赤外線イメージセンサの各画素において独立に発生する1/f雑音がフレーム間で強い相関を持つことに注目して、赤外線イメージセンサからのフレームデータを少なくとも1フレーム期間以上保持する第1フレームメモリを具備し、比較器により現フレームデータと前フレームデータとの差分を、任意に設定可能な基準電圧と比較し、その差分が基準電圧よりも小さければフレームデータの変化を雑音として認識し、前フレームにおける出力データを保持している第2フレームメモリのフレームデータをそのまま出力する。また、その差分が基準電圧よりも大きければフレームデータの変化が雑音ではないと認識して、現フレームデータを第2フレームメモリ内部に書き込み出力する。
【0023】
その結果、フレーム相関の強い画素部の1/f雑音の低周波成分は除去されるので、高感度な赤外線撮像装置を得ることができる。これにより、1/f雑音を効果的に低減することができ、低雑音・高感度化をはかることが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0025】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係わる赤外線撮像装置に使用した非冷却赤外線イメージセンサの構成を示す回路図である。図では、説明を簡単にするために3行3列の3×3画素構成のみを示しているが、より多数行,多数列のm×n画素構成に適用できるのは勿論のことである。
【0026】
入射赤外線を電気信号に変換する赤外線検出画素1が半導体基板上に2次元的に配置されて撮像領域3を構成している。撮像領域3の内部には、複数本の行選択線4(4−1,4−2…)と複数本の垂直信号線5(5−1,5−2…)が配置されている。
【0027】
画素選択のために、行選択回路40と列選択回路70が撮像領域3の行方向と列方向に各々隣接配置され、行選択回路40には行選択線4が接続されている。列選択回路70と撮像領域3との間には、読み出し回路(カラムアンプ)回路9と列選択トランジスタ6(6−1,6−2…)が配置されている。
【0028】
各列の垂直信号線5の一端には、画素出力電圧を得るための定電流回路80として、負荷MOSトランジスタ8(8−1,8−2…)が接続されている。負荷MOSトランジスタ8のソースには基板電圧Vsが印加されている。垂直信号線5の他端にはカラムアンプ9が接続され、このカラムアンプ9に列選択回路70により選択される列選択トランジスタ6が接続されている。カラムアンプ9は、ゲート変調積分回路(GMI回路)と呼ばれるものであり、垂直信号線5に現れる検出信号を増幅するための増幅トランジスタ10,増幅された信号電荷を蓄積するための蓄積容量12,及び蓄積容量12の電荷をリセットするためのリセットトランジスタ14で構成されている。
【0029】
このような構成において、行選択回路40により選択された行選択線4には電源電圧Vdが印加され、行選択回路40により選択されない行選択線にはVsが印加される。図1は先頭の行が選択された状態であり、行選択回路40により行選択線4−1に電源電圧Vdが与えられ、その他の行選択線4−2他には基板電圧Vsが与えられている。
【0030】
その結果、選択された行の赤外線検出画素1内部のpn接合が順バイアスとなりバイアス電流が流れ、画素内部のpn接合の温度と順バイアス電流とにより動作点が決まり、各列の垂直信号線5に画素信号出力電圧が発生する。このとき、行選択回路40によって選択されない画素1のpn接合は逆バイアスとなる。即ち、画素内部のpn接合は画素選択の機能を持っている。
【0031】
垂直信号線5に発生する電圧は、極めて低電圧であり、この低電圧の信号電圧がカラムアンプ9により増幅される。行選択が完了すると、垂直信号線電位により変調された積分電圧が各カラムアンプ内部の蓄積容量12に保持される。信号電流を積分する蓄積時間は、行選択回路40により行選択線4に印加される行選択パルスにより決定される。そして、列選択回路70により列選択トランジスタ6を順次選択し、積分電圧が出力端子24に順次出力される。そして、列選択トランジスタ6による信号電圧の読み出しが完了した後に、リセットトランジスタ14により蓄積容量12の電圧をリセットするようになっている。
【0032】
なお、図1においては、出力端子24及びそれと接続されている読み出し配線の電位をリセットする構造は省略している。また、出力端子24の出力は入力インピーダンスが高い回路、例えばソースフォロア回路に入力して読み出すことが一般的であるが、ここでは省略している。
【0033】
図2は、本実施形態の赤外線イメージセンサにおける赤外線検出画素の平面構造(a)と断面構造(b)とを説明するための概略構成図である。熱電変換のためのpn接合を含むセンサ部101は、単結晶シリコン支持基板106の内部に形成された中空構造107の上に形成された、赤外線吸収層118,119と、熱電変換のために形成されたp型Si層114とn型Si層115とのpn接合部を支持している埋め込みシリコン酸化膜層108とから成る。ここで、赤外線吸収層として用いる118は例えばシリコン窒化膜、119はシリコン酸化膜である。
【0034】
また、このセンサ部101を中空構造107上に支持すると共にセンサ部101からの電気信号を出力するために支持部111が設けられている。そして、画素1のpn接合を形成するp型Si層114とn型Si層115は、支持部11に形成された支持脚配線117を介して行選択線4と垂直信号線5にそれぞれ接続されている。
【0035】
このように、センサ部101及び支持部111が中空構造107上に設けられることにより、入射赤外線によるセンサ部101の温度の変調を効率良く行う構造になっている。なお、図2では、画素1が単一のpn接合により構成されているが、必要に応じて複数個のpn接合を直列接続することが可能であり、電圧読み出し型の場合に高感度化に有効であることが知られている。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係わる赤外線撮像装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
本装置は、図1及び図2に示した赤外線イメージセンサ200の出力をフレーム単位で蓄積するフレームメモリ(第1フレームメモリ)201と、赤外線イメージセンサ200の出力と第1フレームメモリ201のデータを比較する比較器203と、比較器203による比較結果に応じて出力用フレームデータを格納する出力用フレームメモリ(第2フレームメモリ)205と、赤外線イメージセンサ200への赤外線の入射を遮断するシャッター207と、シャッター207を開閉駆動するシャッター制御部209とを備えている。
【0038】
第1フレームメモリ201は、赤外線イメージセンサ200において1フレーム期間毎に得られる画像データであるフレームデータを順次記憶すると共に、各フレームデータを少なくとも1フレーム期間保持するものである。具体的には、例えば赤外線イメージセンサ200のm×n画素に対応するメモリを2組備え、一方に書き込みするときに他方を読み出しするように構成し、フレーム単位で書き込みと読み出しを切り換えるようにすればよい。また、データの書き込みと読み出しを工夫すれば、1組のメモリで構成することも可能である。
【0039】
比較器203は、赤外線イメージセンサ200で得られる現在のフレームデータである現フレームデータと、第1フレームメモリ201に記憶された1フレーム前のデータである前フレームデータとを画素単位で比較し、比較結果に応じて現フレームデータと前フレームデータを選択するものである。具体的には、基準信号Soを入力するための基準信号入力端子204が比較器203に設けられており、比較器203は現フレームデータと前フレームデータの差分が基準信号Soよりも大きい場合は現フレームデータを出力し、小さい場合は前フレームデータを出力するようになっている。
【0040】
第2フレームメモリ205は、赤外線イメージセンサ200のm×n画素に対応するメモリを有する出力用フレームメモリであり、比較器203による比較結果に応じてデータが書き換えられる。具体的には、現フレームデータと前フレームデータの差分が基準信号Soよりも大きい場合はデータが書き換えられ、小さい場合はデータが保持される。そして、この第2フレームメモリに記憶されたデータが赤外線検出画像信号として出力されるようになっている。
【0041】
シャッター207は、赤外線イメージセンサ200への赤外線の入射を必要に応じて遮断するものであり、シャッター制御部209によって駆動される。また、シャッター制御部209は、シャッター207を閉じたときに、第2フレームメモリ205のデータを初期化する初期化回路の機能を有するものとなっている。ここで、初期化データは、シャッター207を閉じたときの赤外線イメージセンサ200の出力画像、つまりシャッター207からの赤外線輻射に相当する信号レベルである。
【0042】
このような構成において、赤外線イメージセンサ200の出力は、第1フレームメモリ201と比較器203に入力される。第1フレームメモリ201には、赤外線イメージセンサ200から出力されるフレームデータが少なくとも1フレーム期間蓄積される。
【0043】
比較器203では、赤外線イメージセンサ200から入力される現在のフレームデータSij(t) と、第1フレームメモリ201から入力される前フレームのフレームデータSij(t−1) との差が求められる。そして、この差が基準信号Soよりも小さいときには、出力用の第2フレームメモリ205の出力用フレームデータOij(t) を書き換えないで、前フレームの出力用フレームデータOij(t−1) を継続して保持する。つまり、1/f雑音のように1フレーム期間における変化量の少ない画素に対しては、この画素のデータは書き換えないで前のデータを保持することになる。
【0044】
逆に、赤外線イメージセンサ200から入力される現在のフレームデータSij(t) と、第1フレームメモリ201から入力される前フレームのフレームデータSij(t−1) との差が基準信号Soよりも大きいときには、出力用の第2フレームメモリ205の出力用フレームデータOij(t) を現在のフレームデータSij(t) に書き換える。つまり、動きのある被写体の場合のように、1フレーム期間における変化量の多い画素に対しては、この画素のデータを書き換えて現在のデータに更新することになる。
【0045】
即ち、1フレーム期間が経過した時点でのフレームデータの変化量が、任意に設定可能な基準信号Soと比較して小さい場合には、これを雑音と判断して変化を無視して前フレームのデータを継続保持し、第2フレームメモリ205から出力し、逆に大きい場合には有意な変化と判断して新しいデータに書き換え、新たなデータを第2フレームメモリ205から出力する。
【0046】
これは、除去する対象となる雑音として画素内部で発生する1/f雑音を想定し、その1/f雑音がフレーム間で強い相関を持つことに注目し、これを除去するという方法である。従って、赤外線イメージセンサ200の種類や特性に応じて、基準信号Soの値を任意に設定し、最適化することになる。
【0047】
ここで、基準信号Soが大きすぎると被写体の実際の変化を雑音として処理してしまうし、逆に小さすぎると1/f雑音の除去効果が低くなってしまう。このため、基準信号はSoは、赤外線イメージセンサ200の画素において発生する画素固有の1/f雑音に相当するレベルに設定するのが望ましい。また、出力用の第2フレームメモリ205内部のフレームデータOij(t)の初期化も重要である。
【0048】
そこで、図3に示したように、赤外線イメージセンサ200への赤外線入射を遮断するシャッター207とそれを制御するシャッター制御部209を設け、制御部209がシャッター207を閉にして赤外線イメージセンサ200への赤外線入射が無い状態を作り、そのときを暗時レベルとして出力用の第2フレームメモリ205に初期フレームデータOij(0) を書き込む。
【0049】
このとき、初期フレームデータOij(0) は、ゼロではなく任意の値を設定できるようにすることが望ましい。それは、可視光のイメージセンサにおける暗時レベルとは異なり、赤外線撮像装置においてシャッター207を閉じた状態というのは、ゼロレベルではなく、シャッター207からのカメラ温度の赤外線輻射が存在するためである。
【0050】
従って、初期フレームデータOij(0) をゼロにしてしまうと、上記のシャッター207からの赤外線輻射よりも低い赤外線入力、例えば低温の物体や、輻射率の低い物体を撮像した場合に、そのデータはゼロレベル以下になり出力されなくなってしまう。このようなことから、初期フレームデータOij(0) は、ゼロレベルではない任意の値であることが望ましい。具体的には、初期フレームデータOij(0) として、シャッター207が閉動作されたときの該シャッター207からの赤外線輻射に相当する信号レベルとすればよい。
【0051】
また、この初期化動作は、赤外線撮像装置の起動時だけでなく、任意の間隔で定期的にリフレッシュ動作として実施することも可能であり、より好ましいといえる。それは、1/f雑音の低周波成分と類似の被写体があった場合に、実際の赤外線データを雑音と誤認して除去してしまうことを防止するためである。
【0052】
例えば、静止した状態の被写体が、その温度を緩やかに変化させている場合は、その撮像データは画素起因の1/f雑音の低周波成分と同様に、フレーム間で強い相関を持ちながら緩やかに変化する撮像データを得ることになる。従って、このような被写体からの撮像データを1/f雑音と分離するために、定期的な初期化を行うことがより好ましい。
【0053】
この定期的な初期化動作の間隔は、赤外線撮像装置が撮像している被写体の種類により適当に設定することができる。即ち、被写体と赤外線撮像装置との相対的な位置関係の変化及び被写体の温度変化が緩やかな場合には、比較的短い間隔での初期化動作を行うことが好ましい。逆に、被写体と赤外線撮像装置との相対的な位置関係の変化および被写体の温度変化が急速な場合には、撮像データを1/f雑音と誤認する可能性が低いので、比較的長い間隔での初期化動作でよいことになる。
【0054】
このように本実施形態によれば、赤外線イメージセンサ200からのフレームデータを少なくとも1フレーム期間保持する第1フレームメモリ201と出力用の第2フレームメモリ205を設け、比較器203により現フレームデータSij(t) と前フレームデータSij(t−1) との差分を、任意に設定可能な基準電圧Soと比較し、その差分が基準電圧よりも小さければフレームデータの変化を雑音として認識し、前フレームにおける出力データを保持している第2フレームメモリ205のフレームデータをそのまま出力する。また、その差分が基準電圧Soよりも大きければフレームデータの変化が雑音ではないと認識して、現フレームデータを第2フレームメモリ205に書き込み出力する。
【0055】
従って、フレーム相関の強い画素部の1/f雑音の低周波成分を効果的に除去することができる。即ち、1/f雑音を効果的に低減することができ、低雑音・高感度化をはかることができる。また、赤外線イメージセンサ自体には何ら変更を要することなく、出力側に2つのフレームメモリと比較器を設けるのみの比較的簡易な構成で実現することができる利点もある。
【0056】
(変形例)
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。赤外線イメージセンサの画素構成は、実施形態に示したもの以外にm×nの各種の画素構成に適用できる。赤外線検出画素は図2の構造に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。具体的には、半導体基板上に入射赤外線を吸収し熱に変換するための赤外線吸収手段と、赤外線吸収手段で発生した熱による温度変化を電気信号に変換するための熱電変換手段と、熱電変換手段からの画素出力信号を読み出す画素を選択する画素選択手段と、画素選択手段により選択された赤外線検出画素からの画素出力信号を出力するための出力手段とを有するものであればよい。また、赤外線を直接電気信号に変換できる素子を使用することも可能である。
【0057】
熱電変換手段として定電流源により順バイアスしたpn接合を用いたが、定電圧バイアスしたpn接合からの電流を読み出す場合にも同様に適用することができる。さらに、熱電変換手段として、抵抗体における抵抗値の温度変化を利用した、いわゆるボロメータを用いた場合にも適用可能である。
【0058】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、非冷却型の赤外線イメージセンサを用いた赤外線撮像装置において、赤外線イメージセンサから読み出されている現フレームデータと第1フレームメモリに保持された前フレームデータとを、フレーム期間毎に画素単位で比較し、その比較結果に応じて第2フレームデータの内容を書き換える構成とすることにより、1/f雑音の低減を効果的に低減することができ、低雑音・高感度化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる赤外線撮像装置に使用した非冷却型赤外線イメージセンサを示す回路構成図。
【図2】図1の非冷却型赤外線イメージセンサの画素部構成を示す平面図と断面図。
【図3】本発明の一実施例に係わる赤外線撮像装置の全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1…赤外線検出画素
3…撮像領域
4…水平選択線
5…垂直信号線
6…列選択トランジスタ
8…負荷MOSトランジスタ
9…カラムアンプ
10…増幅トランジスタ
12…蓄積容量
14…リセットトランジスタ
24…センサ出力端子
40…行選択回路
70…列選択回路
80…定電流回路
101…センサ部
106…単結晶シリコン支持基板
107…中空構造
108…埋め込みシリコン酸化膜層
111…支持脚
114…p型Si層
115…n型Si層
117…支持脚配線
118…シリコン窒化膜
119…シリコン酸化膜
200…赤外線イメージセンサ
201…第1フレームメモリ
203…比較器
204…基準信号入力端子
205…第2フレームメモリ
207…シャッター
209…シャッター制御部(初期化回路)
Claims (6)
- 半導体基板上に、バイアス電流を流して信号を読み出す方式の赤外線検出画素が二次元的に配列された赤外線イメージセンサと、
この赤外線イメージセンサから出力されたフレームデータを少なくとも1フレーム期間保持するための第1フレームメモリと、
フレーム期間毎に、前記赤外線イメージセンサから読み出されている現フレームデータと第1フレームメモリに保持された直前フレーム期間における前フレームデータとを画素単位で比較する比較器と、
この比較器による比較結果に応じた出力用フレームデータを保持するための第2フレームメモリと、
前記比較器に対して所定の基準電圧を設定するための基準電圧設定手段と、
前記赤外線イメージセンサへの入射赤外線を遮断するシャッター機構と、
このシャッター機構によりシャッターが閉じられた際に第2フレームメモリ内部の出力用フレームデータを所望の初期データ値に設定する初期化手段とを具備してなり、
前記比較器は、画素毎のデータに対して、現フレームデータと前フレームデータとの差分と前記基準電圧とを比較し、前記差分が前記基準電圧より大きい場合には第2フレームメモリ内部の画素データを現フレームデータの画素データに書き換え、前記差分が前記基準電圧より小さい場合には第2フレームメモリ内部の画素データを保持させることを特徴とする赤外線撮像装置。 - 前記赤外線検出画素は、入射赤外線光を吸収して熱に変換する赤外線吸収構造部と、この赤外線吸収構造部で発生した熱による温度変化を電気信号に変換する熱電変換素子と、を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線撮像装置。
- 前記熱電変換素子は、熱による温度変化を抵抗体の抵抗変化として検出するボロメータ、又は順方向電流若しくは電圧の変化として検出するpn接合ダイオードであることを特徴とする請求項2記載の赤外線撮像装置。
- 前記シャッター機構は任意の間隔で前記シャッターを閉動作するものであり、前記初期化手段は第2フレームメモリに任意の初期値を書き込むものであることを特徴とする請求項1記載の赤外線撮像装置。
- 前記初期値は、前記シャッターが閉動作されたときの該シャッターからの赤外線輻射に相当する信号レベルであることを特徴とする請求項4記載の赤外線撮像装置。
- 前記基準電圧は、前記赤外線イメージセンサの画素において発生する画素固有の1/f雑音に相当するレベルであることを特徴とする請求項1記載の赤外線撮像装置。
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