JP2004117008A - 放射性物質収納用キャスク - Google Patents
放射性物質収納用キャスク Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004117008A JP2004117008A JP2002276560A JP2002276560A JP2004117008A JP 2004117008 A JP2004117008 A JP 2004117008A JP 2002276560 A JP2002276560 A JP 2002276560A JP 2002276560 A JP2002276560 A JP 2002276560A JP 2004117008 A JP2004117008 A JP 2004117008A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cask
- lid
- buffer
- attached
- flange
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E30/00—Energy generation of nuclear origin
- Y02E30/30—Nuclear fission reactors
Landscapes
- Packages (AREA)
Abstract
【課題】異常なシール部材が存在していても輸送時におけるシール性を確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加できる放射性物質収納用キャスクを提供することにある。
【解決手段】輸送貯蔵用キャスク14は、キャスク本体15及び一対の緩衝体6,16を備える。キャスク本体15の胴体1に形成された開口部は、一次シール9を挟んで一次蓋2が胴体1の一端部に取り付けられることによって塞がれる。一次蓋2を覆う二次蓋3が、二次シール10を挟んで胴体1の一端部に取り付けられる。緩衝体6は緩衝体フランジ7及び木材17を有する。緩衝体フランジ7は、弾性シール11を挟んで、胴体1に設置される環状の緩衝体取り付けフランジ8Aに取り付けられる。緩衝体フランジ7、緩衝体取り付けフランジ8A及び弾性シール11は、新たな密封境界を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】輸送貯蔵用キャスク14は、キャスク本体15及び一対の緩衝体6,16を備える。キャスク本体15の胴体1に形成された開口部は、一次シール9を挟んで一次蓋2が胴体1の一端部に取り付けられることによって塞がれる。一次蓋2を覆う二次蓋3が、二次シール10を挟んで胴体1の一端部に取り付けられる。緩衝体6は緩衝体フランジ7及び木材17を有する。緩衝体フランジ7は、弾性シール11を挟んで、胴体1に設置される環状の緩衝体取り付けフランジ8Aに取り付けられる。緩衝体フランジ7、緩衝体取り付けフランジ8A及び弾性シール11は、新たな密封境界を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質収納用キャスクに係り、特に使用済燃料集合体または放射性廃棄物固化体を収納して輸送し、貯蔵するのに好適な放射性物質収納用キャスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電施設の原子炉内で所定期間使用されて使用済となった使用済燃料集合体は、原子炉より取り出されて使用済燃料プールに一次保管され、冷却される。この冷却の所定期間が終了したのち、使用済燃料集合体は使用済燃料プール内で輸送用の放射性物質収納用キャスクに収納され、使用済燃料再処理施設もしくは使用済中間貯蔵施設などに輸送される。
【0003】
例えば、使用済燃料中間貯蔵施設で輸送用の放射性物質収納用キャスクから貯蔵用の放射性物質収納用キャスクへと使用済燃料集合体を詰め替えようとした場合には、使用済燃料中間貯蔵施設内に使用済燃料集合体を詰め替えるためのホットセル設備が必要となる。そこで、使用済燃料集合体を放射性物質収納用キャスクに収納したまま長期にわたって貯蔵を行うことができ、長期貯蔵時のシール材の劣化を考慮して密封設計がなされた輸送貯蔵用の放射性物質収納用キャスク
(単に、輸送貯蔵用キャスクという)が用いられる。輸送貯蔵用キャスクは、収納した使用済燃料集合体を輸送し、これを貯蔵するのに適する。この輸送貯蔵用キャスクは、使用済燃料中間貯蔵施設での長期貯蔵の後、使用済燃料再処理施設に再運搬する際にも密封機能を保持していることが求められる。
【0004】
輸送貯蔵用キャスクの一例が、特開平11−287893号公報に記載されている。この輸送貯蔵用キャスクは、上記公開公報の図1,図2に示されているように、胴体に一次蓋を取り付け、一次蓋を覆う二次蓋,二次蓋を覆う三次蓋をそれぞれ胴体に取り付けている。このように、上記公開公報では、胴体を密封する蓋を三重蓋構造にして、輸送貯蔵用キャスクの運搬時における多重の気密性を確保している。すなわち、一次蓋及び二次蓋のシール性が万が一損なわれても三次蓋のシール性で、輸送貯蔵用キャスクのシール性を確保することができる。
【0005】
輸送貯蔵用キャスクを輸送する際に、このキャスクの両端部にそれぞれ緩衝体を設置することが特開2001−83291号公報に記載されている。また、輸送用の放射性物質収納用キャスクを輸送する際にも、このキャスクの両端部にそれぞれ緩衝体を設置することが特許第3032810号公報に記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−287893号公報,2頁〜3頁,図1及び図2
【特許文献2】
特開2001−83291号公報,3頁,5頁〜6頁,図1,図2及び図8
【特許文献3】
特許第3032810号公報,3頁〜6頁,第1図〜第5図
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクは、3つの蓋を胴体の一端部にボルトによりそれぞれ取り付けている関係上、3つの蓋が取り付けられる胴体部分の肉厚は少なくとも厚くする必要がある。このため、輸送貯蔵用キャスクの重量が増加し、結果として、輸送上の重量制限から胴体内に装荷できる燃料集合体の体数が減少することになる。
【0008】
本発明の目的は、異常なシール部材が存在していても輸送時におけるシール性を確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加できる放射性物質収納用キャスクを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、内部に放射性物質を収納する開口部を有する胴体と、前記開口部を覆い、第1シール部材を挟んで前記胴体の一端部に取り付けられた第1蓋と、前記第1蓋を覆い、第2シール部材を挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第2蓋と、前記2蓋を覆い、前記胴体の前記一端部の外周に沿って設置されたフランジ部材に第3シール部材を挟んで取り付けられた第1緩衝体とを備えることにある。
【0010】
本発明によれば、二次蓋を覆う第1緩衝体を、第3シール部材を挟んで、胴体の一端部に取り付けられたフランジ部材に取り付けてることによって、新たな密封境界を形成できる。このため、一次シール部材または二次シール部材が損傷した場合にも、第1緩衝体を取り付けることによって、放射性物質収納用キャスクの輸送時においても、放射性物質収納用キャスクのシール性を確保することができる。また、新たな密封境界を形成する第1緩衝体の取り付けによって、第1蓋及び第2蓋を取り付ける胴体の肉厚を薄くでき、放射性物質収納用キャスクの総重量を軽減できる。このため、放射性物質収納用キャスク内に収納する放射性物質の量を増加できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な一実施例である放射性物質収納キャスクを、図1及び図2を用いて以下に説明する。本実施例の放射性物質収納キャスクは、金属キャスクであり、かつ輸送貯蔵用キャスクである。輸送貯蔵用キャスクは、放射性物質(例えば、使用済燃料集合体または放射性廃棄物固化体)の輸送及び貯蔵を兼用するキャスクである。本実施例では、使用済燃料集合体を内部に収納する輸送貯蔵用キャスク14について説明する。
【0012】
輸送貯蔵用キャスク14は、キャスク本体15及び一対の緩衝体6,16を備える。キャスク本体15は、胴体1,一次蓋2,二次蓋3,中性子遮蔽体4及び外筒5を有する。胴体1は、一端部に開口が形成され、他端部に底が形成されている。一次蓋2は、その開口を塞ぐように、胴体1の一端部に形成された凹部内に配置され、ボルト2aによって胴体1の一端部に取り付けられる。胴体1の一端部と一次蓋2との間には、リング上の一次シール9が配置されている。一次蓋2を覆って二次蓋3がボルト3aにより胴体1の一端部に取り付けられる。胴体1の一端部と二次蓋3との間には、リング状の二次シール10が配置されている。一次シール9及び二次シール10は、長期貯蔵中の劣化を考慮して金属ガスケットが用いられる。胴体1,一次蓋2及び一次シール9によって一次密封境界が形成される。二次密封境界は、胴体1,二次蓋3及び二次シール10によって形成される。二次密封境界は、一次密封境界に万が一異常が発生しても胴体1内の放射性物質を外部に放出しないように多重防護の考え方で設置されている。
【0013】
環状の緩衝体取付フランジ8A,8Bが、胴体1の一端部及び他端部で胴体1の外面に、胴体1の外面との間に隙間が形成されないように全周にわたって溶接にてそれぞれ取り付けられる。中性子遮蔽体4が、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体取付フランジ8Bとの間で胴体1を取り囲んで配置される。外筒5は、中性子遮蔽体4の周囲を取り囲み、緩衝体取付フランジ8A及び8Bにそれぞれ取り付けられる。外筒5は胴体1を取り囲む。緩衝体取付フランジ8A,8Bの外径は、外筒5の外径よりも大きくなっている。緩衝体取付フランジ8A,8Bは、それぞれ外筒5を胴体1に取り付ける支持部材でもあり、外筒5と共に中性子遮蔽体4を保持する中性子遮蔽材保持部材でもある。
【0014】
1つの緩衝体6が、二次蓋3を覆って、キャスク本体15の緩衝体取付フランジ8Aにボルト6aにより取り付けられる。他の緩衝体16が、キャスク本体
15の底部を覆って緩衝体取付フランジ8Bにボルト16aにより取り付けられる。緩衝体6,16は、輸送貯蔵用キャスク14が輸送中に落下したとき、キャスク本体15の密封性能、未臨界性能、遮へい性能及び除熱性能などが損なわれないようにその落下衝撃を吸収するために設置される。緩衝体6は、内部に衝撃吸収性能の高い材質である木材(衝撃力吸収部材)17,緩衝体フランジ7及びステンレス鋼,炭素鋼などの剛性の高い金属で構成された外側缶体7aを備える。緩衝体フランジ7は、二次蓋3,二次蓋3から緩衝体取付フランジ8Aに至る胴体1の外面及び緩衝体取付フランジ8Aに面し、これらに沿って配置される。すなわち、緩衝体フランジ7は、緩衝体取付フランジ8Aから二次蓋3までのキャスク本体15の部分を挿入する凹部18(図2参照)を形成している。木材
17は、緩衝体フランジ7に接触しており、更に、緩衝体フランジ7に取り付けられる外側缶体7aで覆われている。具体的に言えば、木材17は、緩衝体フランジ7及び外側缶体7aによって取り囲まれている。緩衝体フランジ7の外径は、緩衝体取付フランジ8A,8Bの外径に等しいか、この外径よりも若干大きくなっている。
【0015】
緩衝体フランジ7は、輸送貯蔵用キャスク14の輸送時及び落下時において、緩衝体6がキャスク本体15と連動して運動するように、剛性の高い、すなわち、肉厚の厚い金属で構成される。フランジ8A,8Bも同様の理由で肉厚の厚い金属で構成される。キャスク本体15に面していない外側缶体7aが、剛性の高い、すなわち厚肉の金属板によって構成された場合には、その金属がキャスク本体15に衝撃力をよく伝えてしまい、衝撃力吸収性能の高い木材を設置する効果が薄れる。このため、外側缶体7aは、輸送時や通常の取り扱いで必要な強度を備えた上で、極力薄めの金属板で構成される。
【0016】
緩衝体フランジ7の緩衝体取付フランジ8Aに面する部分には、胴体1を取り囲む環状溝が形成される。リング状の弾性シール11がその環状溝内に装填されている。ボルト6aが外筒5の外面よりも外側で緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7を結合しているので、緩衝体6がキャスク本体15に取り付けられる。弾性シール11は、胴体1の外面とボルト6aとの間に位置する。弾性シールの使用は、緩衝体6,16が施設外でのキャスク本体15の輸送時のみに使用されるため、キャスク本体15の使用済燃料中間貯蔵施設等の貯蔵施設内での長期貯蔵による弾性シールの劣化を考慮する必要がないためである。この弾性シールの替りに金属性のシールを用いることも可能である。
【0017】
緩衝体16は、環状溝及び弾性シール11が設けられていない以外は、緩衝体6と同じ構成を有する。ボルト16aが外筒5の外面よりも外側で緩衝体取付フランジ8Bと緩衝体16の緩衝体フランジ7を結合しているので、緩衝体16がキャスク本体15に取り付けられる。緩衝体16の凹部19内に、胴体1の底部側の端部が挿入されている。
【0018】
緩衝体6のキャスク本体15への取り付けによって、緩衝体6の緩衝体フランジ7は、前述の特開平11−287893号公報に記載された三次蓋と同様な機能を発揮する。緩衝体6,16のキャスク本体15への取り付けについて説明する。緩衝体16を床に置き、吊り上げられたキャスク本体15を吊り下ろしながら、キャスク本体15の底部側端部を緩衝体16に設けられた凹部19内に挿入する。キャスク本体15の胴体1内には複数の使用済燃料集合体が装荷されている。キャスク本体15が凹部19内に挿入された後、緩衝体取付フランジ8Bと緩衝体16の緩衝体フランジ7をボルト16aにより結合する。そして、図2に示すように、凹部18が下向きになるように緩衝体6を吊り上げてその緩衝体6を吊り下ろしながら、凹部18内にキャスク本体15の二次蓋側端部を挿入する。挿入終了後に、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7とをボルト6aによって結合する。緩衝体6の緩衝体フランジ7に設けられた弾性シール11がボルト6aによる両フランジの締め付けによって弾性変形するため、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7との間の気密性が確保される。
【0019】
なお、キャスク本体15への緩衝体6,16の取り付けは、以下のように行ってもよい。キャスク本体15を横にして支持し、該当する端部に水平方向から緩衝体6,16を嵌め込み、緩衝体6,16を上記したようにキャスク本体15にそれぞれ取り付ける。
【0020】
内部に使用済燃料集合体が装荷された輸送貯蔵用キャスク14は、クレーン
(図示せず)によって横転され、水平状態で運搬用のトレーラに載置され、原子力発電施設から所定の場所(例えば、使用済燃料中間貯蔵施設)まで運搬される。使用済燃料中間貯蔵施設内の貯蔵建屋内において輸送貯蔵用キャスク14から緩衝体6,16を取り外し、キャスク本体15はその底部を貯蔵建屋の床上に置いて垂直状態で保管される。
【0021】
輸送貯蔵用キャスク14の貯蔵時においては、多重防護の考え方により一次蓋,二次蓋それぞれに取り付けられた密封シールで放射性物質を閉じ込めておくという方法が取られる。一次蓋2と二次蓋3との間に形成される空間は大気圧以上に加圧されている。貯蔵建屋内にキャスク本体15が貯蔵されている間、二次蓋3に設置された圧力センサ12が、一次蓋2と二次蓋3の間に形成される空間の圧力をモニターする。これによって、一次シール9または二次シール10に異常が生じたことを検知することができる。どちらかのシールに異常が生じた場合には、一次蓋2と二次蓋3の間の空間内の流体が胴体1内または胴体1外に漏れ、その空間内の圧力が低下する。このため、圧力センサ12が検出したその空間内の圧力が設定圧力よりも低下したとき、一次シール9または二次シール10が異常な状態にある。
【0022】
輸送貯蔵用キャスク14は、輸送時において緩衝体6,16を備えており、二次蓋3を、緩衝体6、具体的には緩衝体6の緩衝体フランジ7によって覆っている。このため、輸送貯蔵用キャスク14は、輸送中において、一次蓋2,二次蓋3及び緩衝体6によって気密性が保たれる。
【0023】
緩衝体6によって気密性が保たれる理由について説明する。緩衝体6の緩衝体フランジ7は、緩衝体6をキャスク本体15に装着したときに二次密封境界、具体的には二次蓋3を完全に覆うように、また、二次蓋3,胴体1の外側の側面及び緩衝体取付フランジ8Aに面する側から木材17側に向かう間隙が形成されないように製作されている。緩衝体取付けフランジ8Aも胴体1との間に開口が形成されないように胴体1に溶接されている。更に、弾性シール11が結合された緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7に圧着されている。弾性シール11,緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7は、緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7が結合された状態で緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7との間に形成される隙間と外部の環境との連通を阻止する気密保持部材となっている。このため、二次蓋3,胴体1の外側の側面,緩衝体取付フランジ8A,緩衝体6の緩衝体フランジ7及び弾性シール11によって、三次密封境界が形成される。
【0024】
キャスク本体15が使用済燃料中間貯蔵施設内の貯蔵建屋内に貯蔵されている間に、圧力センサ12の測定値が設定値よりも万が一低くなったときには、一次シール9または二次シール10が異常状態になっている。二次シール10の検査は二次蓋3を開放しなくても外部から行える。このため、まずは、二次シール
10の気密性を検査して一次シール9及び二次シール10のどちらに異常があるかを確認する。このとき、二次シール10に異常があった場合には、一次シール9は健全であるとして二次蓋3を開放し二次シール10を交換する。また、二次シール10が健全である、すなわち一次シール9に問題があるとの検査結果が出た場合、多重防護の状態で輸送貯蔵用キャスク14の貯蔵を続けることができなくなる。したがって、一次シール9を交換しなければならず、一次シール9を交換するためには一次蓋2を開放する必要がある。しかしながら、ホットセル施設を持たない使用済燃料中間貯蔵施設内では、放射性物質を外部に開放してしまうのでキャスク本体15に取り付けられている一次蓋2を開放することができない。一次シール9を交換するためには、ホットセル施設を備えた原子力発電施設まで、そのキャスク本体15を搬送しなければならない。そこで、使用済燃料中間貯蔵施設内にある貯蔵建屋内で、キャスク本体15に緩衝体6,16を図1のように取り付ける。緩衝体6を取り付けることによって、緩衝体6の緩衝体フランジ7が二次蓋3を覆うので、前述した三次密封境界が形成される。なお、二次シール10に異常があった場合でも、かならずしも使用済燃料中間貯蔵施設で交換する必要はない。一次シール9または二次シール10が異常となって一次密封境界または二次密封境界が損なわれているため、その三次密封境界が実質的には二次密封境界となる。すなわち、1つの密封境界が損なわれても、緩衝体6をキャスク本体15に取り付けることによって、多重の密封境界が形成される。キャスク本体15に緩衝体6,16が取り付けられた輸送貯蔵用キャスク14は、一次シール9または二次シール10の交換のために、トレーラにより原子力発電施設内のホットセル施設まで容易に搬送できる。そのホットセル施設内で、緩衝体6,16がキャスク本体15から取り外され、更に二次蓋3が胴体1から取り外される。二次シール10に異常のない場合には、更に一次蓋2を取り外す。異常状態の一次シール9を新しい一次シール9と交換する。一次蓋2及び二次蓋3を、順次、胴体1に取り付ける。これにより異常シールの交換が終了する。異常状態の一次シール9を交換する際に、二次シール10も新しい二次シール10に交換してもよい。
【0025】
本実施例は、二次蓋3を覆う緩衝体6の設置によって新たな密封境界を形成できるので、貯蔵中に一次シール9または二次シール10が損傷しても、使用済燃料集合体を収納したキャスク本体15を、ホット施設を有する原子力発電施設まで容易に輸送することができる。また、キャスク本体15の輸送中は、安全性が確保できる。本実施例は、落下時におけるキャスク本体15への衝撃力を吸収する機能を有する緩衝体6によって新たな密封境界を形成しているのである。緩衝体6は胴体1の外側に設けられた緩衝体取付フランジ8Aに取り付けられるので、本実施例は、胴体1の端部に一次蓋2及び二次蓋3の2つの蓋を取り付ければよい。このため、γ線遮蔽体である胴体1のγ線遮蔽性能を考慮しても、特開平11−287893号公報に記載された、3つの蓋を胴体に取り付けた輸送貯蔵用キャスクに比べて、本実施例のキャスク本体15は、三次蓋を取り付けるために必要なボルト,ガスケットが不要であることから、少なくとも胴体1の、2つの蓋を取り付ける部分における肉厚を低減できる。これにより、本実施例における胴体1の重量が軽減できる。従って、キャスク本体15は、胴体1の重量が軽減される分、特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクに比べて、内部に装荷できる使用済燃料集合体の体数を増加できる。本実施例は、異常なシール部材(一次シール9又は二次シール10)が存在していても輸送時におけるシール性を緩衝体6によって確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加できることから輸送効率を高めることができる。
【0026】
本実施例は、元々、キャスク本体15の輸送時に用いられる緩衝体を利用して第三密封境界を形成しているため、特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクに比べて、三次蓋が不要になる分、キャスク本体15の構造を単純化できる。特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクは、図示していないが、胴体を取り囲んで中性子遮蔽体及び外筒を備えている。
【0027】
本実施例は、緩衝体取付フランジ8Aに環状溝を設け、この環状溝内に弾性シール11をはめ込むという簡単な構造で、緩衝体6によるシールを実現できる。また、その環状溝内に装着されるシール部材をシール面の変位に追随して密封性能を保持しやすい弾性シール材にしているので、キャスク本体15に対する密封機能の信頼性を向上できる。
【0028】
キャスク本体15を使用済燃料中間貯蔵施設内にある貯蔵建屋内に貯蔵しているときに、一次シール9又は二次シール10が損傷した場合、キャスク本体15を原子力発電施設への搬送のために貯蔵建屋から搬出するまでの間は、キャスク本体15は貯蔵建屋によって外部環境と隔離されている。
【0029】
以上述べた実施例では、弾性シール11を装着する環状溝を緩衝体6の緩衝体フランジ7に設けているが、図3に示すように、緩衝体取付フランジ8Aの緩衝体6の緩衝体フランジ7に面する部分に環状溝を形成して、この環状溝内に弾性シール11を装着してもよい。緩衝体6の緩衝体フランジ7と緩衝体取付フランジ8Aとをボルト6aにて結合することにより、図1に示す実施例と同様に、緩衝体6の緩衝体フランジ7、緩衝体取付フランジ8A及び弾性シール11により、本実施例においても三次密封境界が形成される。本実施例も、上記した実施例と同じ効果を生じる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、異常なシール部材が存在していても輸送時におけるシール性を確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性物質収納用キャスクの縦断面図である。
【図2】緩衝体の取り付け状態を示す、図1のII部の拡大図である。
【図3】本発明の他の実施例である放射性物質収納用キャスクの緩衝体取付フランジ8A付近の拡大図である。
【符号の説明】
1…胴体、2…一次蓋、3…二次蓋、4…中性子遮蔽体、5…外筒、6,16…緩衝体、7…緩衝体フランジ、7a…外側缶体、8A,8B…緩衝体取付フランジ、9…一次シール、10…ニ次シール、11…弾性シール、12…圧力センサ、14…輸送貯蔵用キャスク、15…キャスク本体、17…木材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質収納用キャスクに係り、特に使用済燃料集合体または放射性廃棄物固化体を収納して輸送し、貯蔵するのに好適な放射性物質収納用キャスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電施設の原子炉内で所定期間使用されて使用済となった使用済燃料集合体は、原子炉より取り出されて使用済燃料プールに一次保管され、冷却される。この冷却の所定期間が終了したのち、使用済燃料集合体は使用済燃料プール内で輸送用の放射性物質収納用キャスクに収納され、使用済燃料再処理施設もしくは使用済中間貯蔵施設などに輸送される。
【0003】
例えば、使用済燃料中間貯蔵施設で輸送用の放射性物質収納用キャスクから貯蔵用の放射性物質収納用キャスクへと使用済燃料集合体を詰め替えようとした場合には、使用済燃料中間貯蔵施設内に使用済燃料集合体を詰め替えるためのホットセル設備が必要となる。そこで、使用済燃料集合体を放射性物質収納用キャスクに収納したまま長期にわたって貯蔵を行うことができ、長期貯蔵時のシール材の劣化を考慮して密封設計がなされた輸送貯蔵用の放射性物質収納用キャスク
(単に、輸送貯蔵用キャスクという)が用いられる。輸送貯蔵用キャスクは、収納した使用済燃料集合体を輸送し、これを貯蔵するのに適する。この輸送貯蔵用キャスクは、使用済燃料中間貯蔵施設での長期貯蔵の後、使用済燃料再処理施設に再運搬する際にも密封機能を保持していることが求められる。
【0004】
輸送貯蔵用キャスクの一例が、特開平11−287893号公報に記載されている。この輸送貯蔵用キャスクは、上記公開公報の図1,図2に示されているように、胴体に一次蓋を取り付け、一次蓋を覆う二次蓋,二次蓋を覆う三次蓋をそれぞれ胴体に取り付けている。このように、上記公開公報では、胴体を密封する蓋を三重蓋構造にして、輸送貯蔵用キャスクの運搬時における多重の気密性を確保している。すなわち、一次蓋及び二次蓋のシール性が万が一損なわれても三次蓋のシール性で、輸送貯蔵用キャスクのシール性を確保することができる。
【0005】
輸送貯蔵用キャスクを輸送する際に、このキャスクの両端部にそれぞれ緩衝体を設置することが特開2001−83291号公報に記載されている。また、輸送用の放射性物質収納用キャスクを輸送する際にも、このキャスクの両端部にそれぞれ緩衝体を設置することが特許第3032810号公報に記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−287893号公報,2頁〜3頁,図1及び図2
【特許文献2】
特開2001−83291号公報,3頁,5頁〜6頁,図1,図2及び図8
【特許文献3】
特許第3032810号公報,3頁〜6頁,第1図〜第5図
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクは、3つの蓋を胴体の一端部にボルトによりそれぞれ取り付けている関係上、3つの蓋が取り付けられる胴体部分の肉厚は少なくとも厚くする必要がある。このため、輸送貯蔵用キャスクの重量が増加し、結果として、輸送上の重量制限から胴体内に装荷できる燃料集合体の体数が減少することになる。
【0008】
本発明の目的は、異常なシール部材が存在していても輸送時におけるシール性を確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加できる放射性物質収納用キャスクを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、内部に放射性物質を収納する開口部を有する胴体と、前記開口部を覆い、第1シール部材を挟んで前記胴体の一端部に取り付けられた第1蓋と、前記第1蓋を覆い、第2シール部材を挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第2蓋と、前記2蓋を覆い、前記胴体の前記一端部の外周に沿って設置されたフランジ部材に第3シール部材を挟んで取り付けられた第1緩衝体とを備えることにある。
【0010】
本発明によれば、二次蓋を覆う第1緩衝体を、第3シール部材を挟んで、胴体の一端部に取り付けられたフランジ部材に取り付けてることによって、新たな密封境界を形成できる。このため、一次シール部材または二次シール部材が損傷した場合にも、第1緩衝体を取り付けることによって、放射性物質収納用キャスクの輸送時においても、放射性物質収納用キャスクのシール性を確保することができる。また、新たな密封境界を形成する第1緩衝体の取り付けによって、第1蓋及び第2蓋を取り付ける胴体の肉厚を薄くでき、放射性物質収納用キャスクの総重量を軽減できる。このため、放射性物質収納用キャスク内に収納する放射性物質の量を増加できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な一実施例である放射性物質収納キャスクを、図1及び図2を用いて以下に説明する。本実施例の放射性物質収納キャスクは、金属キャスクであり、かつ輸送貯蔵用キャスクである。輸送貯蔵用キャスクは、放射性物質(例えば、使用済燃料集合体または放射性廃棄物固化体)の輸送及び貯蔵を兼用するキャスクである。本実施例では、使用済燃料集合体を内部に収納する輸送貯蔵用キャスク14について説明する。
【0012】
輸送貯蔵用キャスク14は、キャスク本体15及び一対の緩衝体6,16を備える。キャスク本体15は、胴体1,一次蓋2,二次蓋3,中性子遮蔽体4及び外筒5を有する。胴体1は、一端部に開口が形成され、他端部に底が形成されている。一次蓋2は、その開口を塞ぐように、胴体1の一端部に形成された凹部内に配置され、ボルト2aによって胴体1の一端部に取り付けられる。胴体1の一端部と一次蓋2との間には、リング上の一次シール9が配置されている。一次蓋2を覆って二次蓋3がボルト3aにより胴体1の一端部に取り付けられる。胴体1の一端部と二次蓋3との間には、リング状の二次シール10が配置されている。一次シール9及び二次シール10は、長期貯蔵中の劣化を考慮して金属ガスケットが用いられる。胴体1,一次蓋2及び一次シール9によって一次密封境界が形成される。二次密封境界は、胴体1,二次蓋3及び二次シール10によって形成される。二次密封境界は、一次密封境界に万が一異常が発生しても胴体1内の放射性物質を外部に放出しないように多重防護の考え方で設置されている。
【0013】
環状の緩衝体取付フランジ8A,8Bが、胴体1の一端部及び他端部で胴体1の外面に、胴体1の外面との間に隙間が形成されないように全周にわたって溶接にてそれぞれ取り付けられる。中性子遮蔽体4が、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体取付フランジ8Bとの間で胴体1を取り囲んで配置される。外筒5は、中性子遮蔽体4の周囲を取り囲み、緩衝体取付フランジ8A及び8Bにそれぞれ取り付けられる。外筒5は胴体1を取り囲む。緩衝体取付フランジ8A,8Bの外径は、外筒5の外径よりも大きくなっている。緩衝体取付フランジ8A,8Bは、それぞれ外筒5を胴体1に取り付ける支持部材でもあり、外筒5と共に中性子遮蔽体4を保持する中性子遮蔽材保持部材でもある。
【0014】
1つの緩衝体6が、二次蓋3を覆って、キャスク本体15の緩衝体取付フランジ8Aにボルト6aにより取り付けられる。他の緩衝体16が、キャスク本体
15の底部を覆って緩衝体取付フランジ8Bにボルト16aにより取り付けられる。緩衝体6,16は、輸送貯蔵用キャスク14が輸送中に落下したとき、キャスク本体15の密封性能、未臨界性能、遮へい性能及び除熱性能などが損なわれないようにその落下衝撃を吸収するために設置される。緩衝体6は、内部に衝撃吸収性能の高い材質である木材(衝撃力吸収部材)17,緩衝体フランジ7及びステンレス鋼,炭素鋼などの剛性の高い金属で構成された外側缶体7aを備える。緩衝体フランジ7は、二次蓋3,二次蓋3から緩衝体取付フランジ8Aに至る胴体1の外面及び緩衝体取付フランジ8Aに面し、これらに沿って配置される。すなわち、緩衝体フランジ7は、緩衝体取付フランジ8Aから二次蓋3までのキャスク本体15の部分を挿入する凹部18(図2参照)を形成している。木材
17は、緩衝体フランジ7に接触しており、更に、緩衝体フランジ7に取り付けられる外側缶体7aで覆われている。具体的に言えば、木材17は、緩衝体フランジ7及び外側缶体7aによって取り囲まれている。緩衝体フランジ7の外径は、緩衝体取付フランジ8A,8Bの外径に等しいか、この外径よりも若干大きくなっている。
【0015】
緩衝体フランジ7は、輸送貯蔵用キャスク14の輸送時及び落下時において、緩衝体6がキャスク本体15と連動して運動するように、剛性の高い、すなわち、肉厚の厚い金属で構成される。フランジ8A,8Bも同様の理由で肉厚の厚い金属で構成される。キャスク本体15に面していない外側缶体7aが、剛性の高い、すなわち厚肉の金属板によって構成された場合には、その金属がキャスク本体15に衝撃力をよく伝えてしまい、衝撃力吸収性能の高い木材を設置する効果が薄れる。このため、外側缶体7aは、輸送時や通常の取り扱いで必要な強度を備えた上で、極力薄めの金属板で構成される。
【0016】
緩衝体フランジ7の緩衝体取付フランジ8Aに面する部分には、胴体1を取り囲む環状溝が形成される。リング状の弾性シール11がその環状溝内に装填されている。ボルト6aが外筒5の外面よりも外側で緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7を結合しているので、緩衝体6がキャスク本体15に取り付けられる。弾性シール11は、胴体1の外面とボルト6aとの間に位置する。弾性シールの使用は、緩衝体6,16が施設外でのキャスク本体15の輸送時のみに使用されるため、キャスク本体15の使用済燃料中間貯蔵施設等の貯蔵施設内での長期貯蔵による弾性シールの劣化を考慮する必要がないためである。この弾性シールの替りに金属性のシールを用いることも可能である。
【0017】
緩衝体16は、環状溝及び弾性シール11が設けられていない以外は、緩衝体6と同じ構成を有する。ボルト16aが外筒5の外面よりも外側で緩衝体取付フランジ8Bと緩衝体16の緩衝体フランジ7を結合しているので、緩衝体16がキャスク本体15に取り付けられる。緩衝体16の凹部19内に、胴体1の底部側の端部が挿入されている。
【0018】
緩衝体6のキャスク本体15への取り付けによって、緩衝体6の緩衝体フランジ7は、前述の特開平11−287893号公報に記載された三次蓋と同様な機能を発揮する。緩衝体6,16のキャスク本体15への取り付けについて説明する。緩衝体16を床に置き、吊り上げられたキャスク本体15を吊り下ろしながら、キャスク本体15の底部側端部を緩衝体16に設けられた凹部19内に挿入する。キャスク本体15の胴体1内には複数の使用済燃料集合体が装荷されている。キャスク本体15が凹部19内に挿入された後、緩衝体取付フランジ8Bと緩衝体16の緩衝体フランジ7をボルト16aにより結合する。そして、図2に示すように、凹部18が下向きになるように緩衝体6を吊り上げてその緩衝体6を吊り下ろしながら、凹部18内にキャスク本体15の二次蓋側端部を挿入する。挿入終了後に、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7とをボルト6aによって結合する。緩衝体6の緩衝体フランジ7に設けられた弾性シール11がボルト6aによる両フランジの締め付けによって弾性変形するため、緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7との間の気密性が確保される。
【0019】
なお、キャスク本体15への緩衝体6,16の取り付けは、以下のように行ってもよい。キャスク本体15を横にして支持し、該当する端部に水平方向から緩衝体6,16を嵌め込み、緩衝体6,16を上記したようにキャスク本体15にそれぞれ取り付ける。
【0020】
内部に使用済燃料集合体が装荷された輸送貯蔵用キャスク14は、クレーン
(図示せず)によって横転され、水平状態で運搬用のトレーラに載置され、原子力発電施設から所定の場所(例えば、使用済燃料中間貯蔵施設)まで運搬される。使用済燃料中間貯蔵施設内の貯蔵建屋内において輸送貯蔵用キャスク14から緩衝体6,16を取り外し、キャスク本体15はその底部を貯蔵建屋の床上に置いて垂直状態で保管される。
【0021】
輸送貯蔵用キャスク14の貯蔵時においては、多重防護の考え方により一次蓋,二次蓋それぞれに取り付けられた密封シールで放射性物質を閉じ込めておくという方法が取られる。一次蓋2と二次蓋3との間に形成される空間は大気圧以上に加圧されている。貯蔵建屋内にキャスク本体15が貯蔵されている間、二次蓋3に設置された圧力センサ12が、一次蓋2と二次蓋3の間に形成される空間の圧力をモニターする。これによって、一次シール9または二次シール10に異常が生じたことを検知することができる。どちらかのシールに異常が生じた場合には、一次蓋2と二次蓋3の間の空間内の流体が胴体1内または胴体1外に漏れ、その空間内の圧力が低下する。このため、圧力センサ12が検出したその空間内の圧力が設定圧力よりも低下したとき、一次シール9または二次シール10が異常な状態にある。
【0022】
輸送貯蔵用キャスク14は、輸送時において緩衝体6,16を備えており、二次蓋3を、緩衝体6、具体的には緩衝体6の緩衝体フランジ7によって覆っている。このため、輸送貯蔵用キャスク14は、輸送中において、一次蓋2,二次蓋3及び緩衝体6によって気密性が保たれる。
【0023】
緩衝体6によって気密性が保たれる理由について説明する。緩衝体6の緩衝体フランジ7は、緩衝体6をキャスク本体15に装着したときに二次密封境界、具体的には二次蓋3を完全に覆うように、また、二次蓋3,胴体1の外側の側面及び緩衝体取付フランジ8Aに面する側から木材17側に向かう間隙が形成されないように製作されている。緩衝体取付けフランジ8Aも胴体1との間に開口が形成されないように胴体1に溶接されている。更に、弾性シール11が結合された緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7に圧着されている。弾性シール11,緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7は、緩衝体取付フランジ8A及び緩衝体6の緩衝体フランジ7が結合された状態で緩衝体取付フランジ8Aと緩衝体6の緩衝体フランジ7との間に形成される隙間と外部の環境との連通を阻止する気密保持部材となっている。このため、二次蓋3,胴体1の外側の側面,緩衝体取付フランジ8A,緩衝体6の緩衝体フランジ7及び弾性シール11によって、三次密封境界が形成される。
【0024】
キャスク本体15が使用済燃料中間貯蔵施設内の貯蔵建屋内に貯蔵されている間に、圧力センサ12の測定値が設定値よりも万が一低くなったときには、一次シール9または二次シール10が異常状態になっている。二次シール10の検査は二次蓋3を開放しなくても外部から行える。このため、まずは、二次シール
10の気密性を検査して一次シール9及び二次シール10のどちらに異常があるかを確認する。このとき、二次シール10に異常があった場合には、一次シール9は健全であるとして二次蓋3を開放し二次シール10を交換する。また、二次シール10が健全である、すなわち一次シール9に問題があるとの検査結果が出た場合、多重防護の状態で輸送貯蔵用キャスク14の貯蔵を続けることができなくなる。したがって、一次シール9を交換しなければならず、一次シール9を交換するためには一次蓋2を開放する必要がある。しかしながら、ホットセル施設を持たない使用済燃料中間貯蔵施設内では、放射性物質を外部に開放してしまうのでキャスク本体15に取り付けられている一次蓋2を開放することができない。一次シール9を交換するためには、ホットセル施設を備えた原子力発電施設まで、そのキャスク本体15を搬送しなければならない。そこで、使用済燃料中間貯蔵施設内にある貯蔵建屋内で、キャスク本体15に緩衝体6,16を図1のように取り付ける。緩衝体6を取り付けることによって、緩衝体6の緩衝体フランジ7が二次蓋3を覆うので、前述した三次密封境界が形成される。なお、二次シール10に異常があった場合でも、かならずしも使用済燃料中間貯蔵施設で交換する必要はない。一次シール9または二次シール10が異常となって一次密封境界または二次密封境界が損なわれているため、その三次密封境界が実質的には二次密封境界となる。すなわち、1つの密封境界が損なわれても、緩衝体6をキャスク本体15に取り付けることによって、多重の密封境界が形成される。キャスク本体15に緩衝体6,16が取り付けられた輸送貯蔵用キャスク14は、一次シール9または二次シール10の交換のために、トレーラにより原子力発電施設内のホットセル施設まで容易に搬送できる。そのホットセル施設内で、緩衝体6,16がキャスク本体15から取り外され、更に二次蓋3が胴体1から取り外される。二次シール10に異常のない場合には、更に一次蓋2を取り外す。異常状態の一次シール9を新しい一次シール9と交換する。一次蓋2及び二次蓋3を、順次、胴体1に取り付ける。これにより異常シールの交換が終了する。異常状態の一次シール9を交換する際に、二次シール10も新しい二次シール10に交換してもよい。
【0025】
本実施例は、二次蓋3を覆う緩衝体6の設置によって新たな密封境界を形成できるので、貯蔵中に一次シール9または二次シール10が損傷しても、使用済燃料集合体を収納したキャスク本体15を、ホット施設を有する原子力発電施設まで容易に輸送することができる。また、キャスク本体15の輸送中は、安全性が確保できる。本実施例は、落下時におけるキャスク本体15への衝撃力を吸収する機能を有する緩衝体6によって新たな密封境界を形成しているのである。緩衝体6は胴体1の外側に設けられた緩衝体取付フランジ8Aに取り付けられるので、本実施例は、胴体1の端部に一次蓋2及び二次蓋3の2つの蓋を取り付ければよい。このため、γ線遮蔽体である胴体1のγ線遮蔽性能を考慮しても、特開平11−287893号公報に記載された、3つの蓋を胴体に取り付けた輸送貯蔵用キャスクに比べて、本実施例のキャスク本体15は、三次蓋を取り付けるために必要なボルト,ガスケットが不要であることから、少なくとも胴体1の、2つの蓋を取り付ける部分における肉厚を低減できる。これにより、本実施例における胴体1の重量が軽減できる。従って、キャスク本体15は、胴体1の重量が軽減される分、特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクに比べて、内部に装荷できる使用済燃料集合体の体数を増加できる。本実施例は、異常なシール部材(一次シール9又は二次シール10)が存在していても輸送時におけるシール性を緩衝体6によって確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加できることから輸送効率を高めることができる。
【0026】
本実施例は、元々、キャスク本体15の輸送時に用いられる緩衝体を利用して第三密封境界を形成しているため、特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクに比べて、三次蓋が不要になる分、キャスク本体15の構造を単純化できる。特開平11−287893号公報に記載された輸送貯蔵用キャスクは、図示していないが、胴体を取り囲んで中性子遮蔽体及び外筒を備えている。
【0027】
本実施例は、緩衝体取付フランジ8Aに環状溝を設け、この環状溝内に弾性シール11をはめ込むという簡単な構造で、緩衝体6によるシールを実現できる。また、その環状溝内に装着されるシール部材をシール面の変位に追随して密封性能を保持しやすい弾性シール材にしているので、キャスク本体15に対する密封機能の信頼性を向上できる。
【0028】
キャスク本体15を使用済燃料中間貯蔵施設内にある貯蔵建屋内に貯蔵しているときに、一次シール9又は二次シール10が損傷した場合、キャスク本体15を原子力発電施設への搬送のために貯蔵建屋から搬出するまでの間は、キャスク本体15は貯蔵建屋によって外部環境と隔離されている。
【0029】
以上述べた実施例では、弾性シール11を装着する環状溝を緩衝体6の緩衝体フランジ7に設けているが、図3に示すように、緩衝体取付フランジ8Aの緩衝体6の緩衝体フランジ7に面する部分に環状溝を形成して、この環状溝内に弾性シール11を装着してもよい。緩衝体6の緩衝体フランジ7と緩衝体取付フランジ8Aとをボルト6aにて結合することにより、図1に示す実施例と同様に、緩衝体6の緩衝体フランジ7、緩衝体取付フランジ8A及び弾性シール11により、本実施例においても三次密封境界が形成される。本実施例も、上記した実施例と同じ効果を生じる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、異常なシール部材が存在していても輸送時におけるシール性を確保でき、かつ内部に収納する放射性物質の量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性物質収納用キャスクの縦断面図である。
【図2】緩衝体の取り付け状態を示す、図1のII部の拡大図である。
【図3】本発明の他の実施例である放射性物質収納用キャスクの緩衝体取付フランジ8A付近の拡大図である。
【符号の説明】
1…胴体、2…一次蓋、3…二次蓋、4…中性子遮蔽体、5…外筒、6,16…緩衝体、7…緩衝体フランジ、7a…外側缶体、8A,8B…緩衝体取付フランジ、9…一次シール、10…ニ次シール、11…弾性シール、12…圧力センサ、14…輸送貯蔵用キャスク、15…キャスク本体、17…木材。
Claims (6)
- 内部に放射性物質を収納する開口部を有する胴体と、前記開口部を覆い、第1シール部材を挟んで前記胴体の一端部に取り付けられた第1蓋と、前記第1蓋を覆い、第2シール部材を挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第2蓋と、前記2蓋を覆い、前記胴体の前記一端部の外周に沿って設置されたフランジ部材に第3シール部材を介して取り付けられた第1緩衝体と、前記胴体の他端部に装着される第2緩衝体とを備えた放射性物質収納用キャスク。
- キャスク本体と、前記キャスク本体の一端部に取り付けられた第1緩衝体と、前記キャスク本体の他端部に取り付けられた第2緩衝体とを備え、
前記キャスク本体は、内部に放射性物質を収納する開口部を前記一端部に有する胴体と、前記開口部を覆い、第1シール部材を間に挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第1蓋と、前記第1蓋を覆い、第2シール部材を間に挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第2蓋と、前記胴体の前記一端部の外周に沿って設置された第1フランジ部材と、前記胴体の前記他端部の外周に沿って設置された第2フランジ部材と、前記第1フランジ部材と前記第2フランジ部材との間に配置され、前記胴体の周囲に設置された中性子遮蔽体と、前記中性子遮蔽体を取り囲み、前記第1フランジ部材及び前記第2フランジ部材にそれぞれ取り付けられた外筒とを有し、
前記第1緩衝体は、前記第2蓋を覆い、第3シール部材を間に挟んで前記第1フランジ部材に取り付けられた放射性物質収納用キャスク。 - 前記第1緩衝体は、前記第2蓋を覆う金属部材、及びその金属部材に取り付けられた衝撃吸収部材を有する請求項1または請求項2記載の放射性物質収納用キャスク。
- 互いに対向する前記金属部材及び前記第1フランジ部材の一方の対向面に、前記胴体を取り囲む環状溝を設け、その環状溝内に前記第3シール部材を装着した請求項3記載の放射性物質収納用キャスク。
- 内部に放射性物質が収納されるキャスク本体の一端部に取り付けられ、前記キャスク本体の胴体に取り付けられた蓋を覆う緩衝体において、
衝撃力を吸収する衝撃力吸収部材と、前記衝撃力吸収部材に取り付けられ、前記蓋を覆って前記胴体の前記蓋側の端部に設けられたフランジ部材に取り付けられる金属部材と、前記金属部材が面している部分以外で、前記衝撃力吸収部材を覆うカバー部材とを備え、
前記金属部材の前記フランジ部材に面する側に、シール部材が装着される環状溝が形成されており、前記カバー部材の肉厚が前記金属部材の肉厚よりも薄いことを特徴とする緩衝体。 - 内部に放射性物質を収納する開口部を前記一端部に有する胴体と、前記開口部を覆い、第1シール部材を間に挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第1蓋と、前記第1蓋を覆い、第2シール部材を間に挟んで前記胴体の前記一端部に取り付けられた第2蓋と、前記胴体の前記一端部の外周に沿って設置された第1フランジ部材と、前記胴体の前記他端部の外周に沿って設置された第2フランジ部材と、前記第1フランジ部材と前記第2フランジ部材との間に配置され、前記胴体の周囲に設置された中性子遮蔽体と、前記中性子遮蔽体を取り囲み、前記第1フランジ部材及び前記第2フランジ部材にそれぞれ取り付けられた外筒とを備え、
前記第1フランジ部材の、前記一端部に装着される緩衝体に面する側に、第3シール部材が装着される環状溝が形成されている
ことを特徴とする放射性物質収納用キャスク本体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002276560A JP2004117008A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 放射性物質収納用キャスク |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002276560A JP2004117008A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 放射性物質収納用キャスク |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004117008A true JP2004117008A (ja) | 2004-04-15 |
Family
ID=32272396
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002276560A Pending JP2004117008A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 放射性物質収納用キャスク |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004117008A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008089487A (ja) * | 2006-10-04 | 2008-04-17 | Toshiba Corp | 放射性物質収納容器およびその補修方法 |
JP2010181327A (ja) * | 2009-02-06 | 2010-08-19 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | キャスク用緩衝体 |
-
2002
- 2002-09-24 JP JP2002276560A patent/JP2004117008A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008089487A (ja) * | 2006-10-04 | 2008-04-17 | Toshiba Corp | 放射性物質収納容器およびその補修方法 |
JP2010181327A (ja) * | 2009-02-06 | 2010-08-19 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | キャスク用緩衝体 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10872707B2 (en) | Nuclear waste storage canisters | |
WO2012002353A1 (ja) | キャスク用緩衝体 | |
KR20010012771A (ko) | 핵 연료봉을 이송 및 저장하기 위한 장치 및 상기 장치를사용하기 위한 방법 | |
JP3411902B2 (ja) | 輸送貯蔵用密閉容器 | |
US20030010938A1 (en) | Double-chamber container for transporting or storing radioactive materials | |
JP6769902B2 (ja) | 貯蔵容器 | |
JP2004117008A (ja) | 放射性物質収納用キャスク | |
JP5371681B2 (ja) | 放射性物質格納容器および放射性物質格納容器の使用方法 | |
JP2007071787A (ja) | キャスクおよびキャスクの取扱方法 | |
JP2941250B1 (ja) | 輸送・貯蔵兼用キャスクの蓋部構造 | |
JP6774524B2 (ja) | 放射性物質収納容器 | |
JP2014066567A (ja) | 放射性物質輸送貯蔵容器 | |
JPS5991398A (ja) | 衝撃吸収装置 | |
JP3999614B2 (ja) | 放射性物質格納容器 | |
JP2002174693A (ja) | 放射性物質の輸送用容器 | |
JP7356953B2 (ja) | 緩衝蓋、放射性物質収納容器の保護装置および放射性物質収納容器の保護方法 | |
JP6574394B2 (ja) | 放射性物質収納容器 | |
JP2023059088A (ja) | 使用済燃料輸送又は貯蔵キャスクのバスケット | |
JP7071852B2 (ja) | 放射性物質輸送貯蔵容器 | |
JP3848913B2 (ja) | 放射性物質格納容器の密閉構造 | |
US20240087765A1 (en) | System for transporting radioactove materials | |
JP2005214870A (ja) | リサイクル燃料集合体収納容器 | |
JP7336420B2 (ja) | 放射性物質収納容器の保護装置および放射性物質収納容器 | |
KR101359255B1 (ko) | 캐스크 | |
JP2004093507A (ja) | リサイクル燃料集合体格納容器 |