JP2004116720A - 伝動ベルト及びそれを用いたベルト伝動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】伝動ベルトBは、ベルト本体10の背面側に外皮補強布30が設けられている。外皮補強布30は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面にゴム塗布層が設けられた布で構成されている。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルト及びそれを用いたベルト伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
Vリブドベルトは、平ベルトの柔軟性とVベルトの高伝動性とを兼ね備えたものであり、例えば自動車の補機駆動用ベルトとして広く用いられている。このVリブドベルトの当初の使用形態は、リブが形成されているベルト内側面をクランクプーリ及び補機プーリに接触させて巻き掛ける正掛けのものであった。しかしながら、近年、ベルト背面に新たにアイドラとして平プーリを接触させることによって補機プーリに十分な駆動力を与えたり、あるいはベルトがエンジン部品と干渉しないようにベルト背面に接触するアイドラを設けてベルトの走行方向を変えるということが行われるようになった。さらに、乗用車のラグジュアリー指向からオルタネーターやエアコンディショナー用ポンプの駆動負荷が大きくなり、また、補機駆動用ベルトの本数の削減、補機用スペースの削減といった目的から、サーペンタインドライブと称される多軸掛けが採用されるようになってきている。
【0003】
このサーペンタインドライブは、多数の補機の各々に取り付けられたプーリの全てを同一平面上に配置し、それらのプーリに一本のベルトを巻き掛け、一部のプーリについては背面駆動するものもあり、各プーリへの巻き付け角度を確保するためにベルトは凹凸の多いレイアウトとなる。また、ディーゼルエンジン等は回転変動が大きく、上記のようなサーペンタインドライブとした場合、ベルトの背面部とアイドラとの接触部は回転変動により大きな剪断力を受けやすい。
【0004】
このように、Vリブドベルトは、使用条件がますます厳しくなってきており、その背面部分にかかる負荷も大きくなってきている。Vリブドベルトの背面側には、通常、ゴム糊に浸漬する接着処理が施された外皮補強布が設けられるが、特に、その外被補強布に付着したゴムに大きな負荷がかかって摩耗粉が発生するという問題がある。
【0005】
これに対して、下記特許文献1には、Vリブドベルトの背面側に設けられた外被帆布にゴム糊を含浸させ、さらにその外被帆布の表面にゴム糊を塗布することによって背面ゴム層を設けたVリブドベルトであって、少なくとも背面ゴム層のゴムを、CR(クロロプレン)ポリマー、ハードカーボン及び導電性カーボンを主成分とするゴム組成物で構成することにより、背面ゴム層の耐摩耗性を向上させることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−323368号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Vリブドベルトの使用条件が益々厳しくなり、その背面に加わる負荷が大きくなると、背面ゴム層の耐摩耗性をさらに高める必要がある。図6に示すようにベルト背面のゴムが摩耗すると、その摩耗粉によって消しゴム滓状の粘着物aを生じ、その粘着物aによってベルト背面に段差が生じる。この為に、粘着物aが平プーリに接触するときに異音(叩き音)が発生するようになる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴムの摩耗によって生じる外皮補強布への粘着物の発生を防いで、それに起因した異音の発生を防止することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトであって、
上記外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面に未架橋時のムーニー粘度が80MS1+4(100℃)以上であるゴム塗布層が設けられた布で構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布に含まれず、また、外皮補強布のベルト本体側に接着用のゴム塗布層を有するものの、その未架橋時の粘度が高くて流動性が低いので、それによってベルト成形時の外皮補強布からのゴム塗布層のゴムのしみ出しを防ぐことができる。そのため、ベルト走行時にベルト背面がプーリと接触しても外皮補強布から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
上記外皮補強布は、上記RFL被膜が上記布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、外皮補強布に付着したRFL被膜が十分に多く、外皮補強布の布目が塞がれるので、それによってもベルト成形時に外皮補強布からゴム塗布層のゴムがしみ出すのを防ぐことができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトであって、
上記外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面にゴム塗布層が設けられた布で構成され、該RFL被膜が該布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布に含まれず、また、外皮補強布に付着したRFL被膜が十分に多く、外皮補強布の布目が塞がれるので、それによってベルト成形時に外皮補強布からゴム塗布層のゴムがしみ出すのを防ぐことができる。そのため、ベルト走行時にベルト背面がプーリと接触しても外皮補強布から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一に記載された伝動ベルトにおいて、
上記ベルト本体がVリブドベルト本体であることを特徴とする。
【0016】
Vリブドベルトはサーペンタインドライブ等においてベルト背面に高い負荷を受けながら動力を伝達するものであるので、上記の構成によれば、本発明の効果が最も高いものとなる。
【0017】
請求項5に係る発明は、ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトが複数のプーリに巻き掛けられてなり、該複数のプーリのうち少なくとも1つが該伝動ベルトのベルト背面に接触する平プーリであるベルト伝動装置であって、
上記伝動ベルトの外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面に未架橋時のムーニー粘度が80MS1+4(100℃)以上であるゴム塗布層が設けられた布で構成されていることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、伝動ベルトにおいて、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布に含まれず、また、外皮補強布のベルト本体側に接着用のゴム塗布層を有するものの、その未架橋時の粘度が高くて流動性が低く、ベルト成形時に外皮補強布からゴム塗布層のゴムがしみ出すのを防止することができるので、ベルト走行時にベルト背面ががプーリと接触しても外皮補強布から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載された伝動ベルトにおいて、
上記外皮補強布は、上記RFL被膜が上記布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、外皮補強布に付着したRFL被膜が十分に多く、外皮補強布の布目が塞がれるので、それによってもベルト成形時に外皮補強布からゴム塗布層のゴムがしみ出すのを防ぐことができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトが複数のプーリに巻き掛けられてなり、該複数のプーリのうち少なくとも1つが該伝動ベルトのベルト背面に接触する平プーリであるベルト伝動装置であって、
上記伝動ベルトの外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面にゴム塗布層が設けられた布で構成され、該RFL被膜が該布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、伝動ベルトにおいて、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布に含まれず、また、外皮補強布に付着したRFL被膜が十分に多く、外皮補強布の布目が塞がれ、ベルト成形時に外皮補強布からゴム塗布層のゴムがしみ出すのを防止することができるので、ベルト走行時にベルト背面がプーリと接触しても外皮補強布から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係るVリブドベルトBを示す。
【0024】
このVリブドベルトBは、Vリブドベルト本体10と、Vリブドベルト本体10にベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線20と、Vリブドベルト本体10の背面側を被覆するように設けられた外皮補強布30と、を備えている。
【0025】
Vリブドベルト本体10は、クロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のゴム組成物で形成されており、心線20が埋設された接着ゴム層11と、接着ゴム層11の下側のリブゴム層12と、接着ゴム層11の上側のベルト背面部をなす上ゴム層13と、が積層されて一体となった構成となっている。ベルト内側に対応したリブゴム層12は、プーリに接触して直接に動力を伝達する部分となることから、ベルト長手方向に延びる突条34のリブ12aがベルト幅方向に並列して形成されており、また、ベルト幅方向に配向したアラミド繊維やナイロン繊維等の短繊維12bが混入されている。なお、リブゴム層12に混入された短繊維12bのうち露出するものは表面から突出した形態となっている。
【0026】
心線20は、アラミド繊維やポリエステル繊維等の撚り糸で構成されており、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という)に浸漬した後に加熱する処理やゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理が施されている。
【0027】
外皮補強布30は、図2に示すように、経糸31及び緯糸32からなる織布で構成されている。また、外皮補強布30は、成形加工前にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)水溶液に浸漬して加熱する処理が施され、ベルト表面に表出するようにRFL被膜33で被覆されている。さらに、外皮補強布30は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するためにVリブドベルト本体10側となる表面にゴム糊をコーティングして乾燥させる処理が施され、ゴム塗布層34が形成されている。ここで、外皮補強布30には、RFL被膜33が織布の質量に対して35質量%以上付着している。また、ゴム塗布層34の未架橋時の粘度がムーニー粘度は80MS1+4(100℃)以上である。
【0028】
このようなVリブドベルトBによれば、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布30に含まれず、また、外皮補強布30のベルト本体側に接着用のゴム塗布層34を有するものの、その未架橋時の粘度がムーニー粘度で80MS1+4(100℃)以上と高くて流動性が低く、さらに、外皮補強布30に付着したRFL被膜33が織布の質量に対して35質量%以上と十分に多く、外皮補強布30の布目が塞がれるので、それによってベルト成形時の外皮補強布30からのゴム塗布層34のゴムのしみ出しを防ぐことができる。そのため、ベルト走行時にベルト背面がプーリと接触しても外皮補強布30から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0029】
以上のVリブドベルトBは、公知のベルト製造方法により製造が可能である。
【0030】
図3は、VリブドベルトBを用いた自動車エンジンにおけるサーペンタインドライブの補機駆動用ベルト伝動装置40のレイアウトを示す。
【0031】
この補機駆動用ベルト伝動装置40のレイアウトは、最上位置のパワーステアリングプーリ41と、そのパワーステアリングプーリ41の下方に配置されたACジェネレータプーリ42と、パワーステアリングプーリ41の左下方に配置された平プーリのテンショナプーリ43と、そのテンショナプーリ43の下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ44と、テンショナプーリ43の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ45と、そのクランクシャフトプーリ45の右下方に配置されたエアコンプーリ46と、により構成されている。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ43及びウォーターポンププーリ44以外は全てリブプーリである。そして、VリブドベルトBは、リブ側が接触するようにパワーステアリングプーリ41に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ43に巻き掛けられた後、リブ側が接触するようにクランクシャフトプーリ45及びエアコンプーリ46に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ44に巻き掛けられ、そして、リブ側が接触するようにACジェネレータプーリ42に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ41に戻るように設けられている。
【0032】
この補機駆動用ベルト伝動装置40では、本発明のVリブドベルトBが用いられているので、外皮補強布30がプーリと接触しても外皮補強布30から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【0033】
【実施例】
(試験評価用ベルト)
試験評価用ベルトとして、以下の各例のVリブドベルトを準備した。それぞれの構成を表1にも示す。
【0034】
<例1>
固形分濃度が2.31質量%のレゾルシン・ホルマリンの初期縮合物の水溶液(以下「RF水溶液」という)と固形分濃度40質量%のビニルピリジンラテックス(日本合成ゴム社製)を水で希釈して固形分濃度を13.9質量%としたものとを混合し、固形分濃度が28質量%であるRFL水溶液を調合した。
【0035】
また、エチレンプロピレンジエンゴム(出光社製 商品名:ケルタン6380B)100質量部に対し、HAFカーボン(三菱化学社製)50質量部、シリカ(トクヤマ社製 商品名:トクシールGU)20質量部、加硫剤(細井化学社製オイル硫黄)1.6質量部、加硫促進剤(三新化学社製 商品名:EM−2)2.8質量部、同じく加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:MSA)1.2質量部、加硫助剤(花王社製 ステアリン酸)1質量部、加硫助剤(堺化学工業社製 酸化亜鉛)5質量部、老化防止剤(大内振興化学社製 商品名:224)2質量部、同じく老化防止剤(大内振興化学社製 商品名:MB)1質量部を配合して混練したゴム組成物を有機溶剤に溶解させたゴム糊1を調合した。ゴム糊1を構成するゴム組成物の未架橋時のムーニー粘度は60MS1+4(100℃)であった。
【0036】
ポリエステル繊維と綿との混紡である経糸及び緯糸からなる平織りの織布に対してRFL水溶液に浸漬して引き上げた後に加熱する処理を1回施し、しかる後に、ベルト本体側となる方の表面にゴム糊1をコーティングした後に乾燥させる処理を施した。織布の質量に対するRFL被膜の付着量は27質量%であった。そして、その織布を外皮補強布としてVリブドベルトを作製し、それを例1とした。このとき、Vリブドベルトとして3リブのものと6リブのものとを作製した。
【0037】
なお、ベルト本体の接着ゴム層を形成するゴム組成物として、エチレンプロピレンジエンゴム(出光社製 商品名:ケルタン6380B)100質量部に対して、HAFカーボン(三井化学社製)50質量部、シリカ(トクヤマ社製 商品名:トクシールGU)20質量部、パラフィンオイル(日本サン化学社製 商品名:サンフレックス2280)20質量部、加硫剤(細井化学社製 オイル硫黄)3質量部、加硫助剤(花王社製 ステアリン酸)1質量部、加硫助剤(堺化学工業社製 酸化亜鉛)を5質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:224)2質量部、(大内新興化学社製 商品名:MB)1質量部、粘着付与剤(日本ゼオン社製 商品名:石油樹脂クイントンA−100)5質量部、短繊維(綿粉)2質量部を配合して混練したものを用いた。また、リブゴム層を形成するゴム組成物として、エチレンプロピレンジエンゴム(出光社製 商品名:ケルタン6380B)100質量部に対して、HAFカーボン(三井化学社製)70質量部、パラフィンオイル(日本サン化学社製 商品名:サンフレックス2280)20質量部、加硫剤(細井化学社製 オイル硫黄)1.6質量部、加硫促進剤(三新化学社製 商品名:EM−2)2.8質量部、同じく加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:MSA)1.2質量部、加硫助剤(花王社製 ステアリン酸)1質量部、加硫助剤(堺化学工業社製 酸化亜鉛)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:224)2質量部、老化防止剤(大内振興化学社製商品名:MB)1質量部、短繊維(ナイロン繊維)22質量部を配合して混練したものを用いた。さらに、心線としてポリエステル繊維のものを用いた。
【0038】
<例2>
RFL水溶液による処理の後にゴム糊に浸漬して乾燥させる処理を施した織布を外皮補強布として用いたことを除いて例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを例2とした。
【0039】
<例3>
エチレンプロピレンジエンゴム(出光社製 商品名:ケルタン6380E)100質量部に対して、HAFカーボン(三菱化学社製)50質量部、FEFカーボン(三菱化学社製)30質量部、シリカ(トクヤマ社製 商品名:トクシールGU)20質量部、加硫剤(細井化学社製 オイル硫黄)1.6質量部、加硫促進剤(三新化学社製 商品名:EM−2)2.8質量部、同じく加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:MSA)1.2質量部、加硫助剤(花王社製 ステアリン酸)1質量部、加硫助剤(堺化学工業社製 酸化亜鉛)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:224)2質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:MB)1質量部を配合して混練したゴム組成物を有機溶剤に溶解させたゴム糊2を調合した。ゴム糊2を構成するゴム組成物の未架橋時のムーニー粘度は80MS1+4(100℃)であった。
【0040】
外皮補強布を構成する織布のコーティングにゴム糊2を用いたことを除いて例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを例3とした。
【0041】
<例4>
固形分濃度が20質量%である上記と同一組成のRFL水溶液を調整し、織布をそのRFL水溶液に浸漬して引き上げた後に加熱する処理を2回施し、織布の質量に対するRFL被膜の付着量を37質量%とした外皮補強布を用いたことを除いて例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを例4とした。
【0042】
<例5>
織布を例1で用いたRFL水溶液に浸漬して引き上げた後に加熱する処理を2回施し、織布の質量に対するRFL被膜の付着量を45質量%とした外皮補強布を用いたことを除いて例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを例5とした。
【0043】
【表1】
【0044】
(試験評価方法)
−ベルト耐久性試験−
この試験に用いたベルト走行試験機90は、図4に示すように、プーリ径120mmのリブプーリである駆動プーリ91と、その駆動プーリ91の上方に設けられたプーリ径120mmのリブプーリである第1従動プーリ92と、駆動プーリ91及び第1従動プーリ92の右方のそれらの中間高さに設けられたプーリ径45mmのリブプーリである第2従動プーリ93と、第2従動プーリ93と同一高さであって駆動プーリ91の右上で且つ第1従動プーリ92の右下にベルト巻き付け角度が90°となるように設けられたプーリ径70mmの平プーリであるアイドラプーリ94と、を備えたものである。
【0045】
このベルト走行試験機90の駆動プーリ91、第1及び第2従動プーリ92,93にはリブがプーリ面に接触するように、また、アイドラプーリ94にはベルト背面が接触するように各例のVリブドベルトBを巻き掛けた後、第2従動プーリ93を後方に引く3リブ当たり834NのセットウェイトSWを負荷すると共に第1従動プーリ92に11.8kWの負荷をかけ、続いて85±3℃の雰囲気下において4900rpmで駆動プーリ91を回転させた。そして、走行開始からリブにクラックが生じるまでの走行時間を計測した。例1の結果を100とした相対評価を行った。
【0046】
−粘着摩耗性試験−
この試験に用いたベルト走行試験機80は、図5に示すように、相互に間隔をおいて配設された一対の平プーリであるプーリ径70mmの駆動プーリ81及び従動プーリ82を備えたものである。
【0047】
このベルト走行試験機80の駆動プーリ81及び従動プーリ82に、ベルト背面がプーリ面に接触するように各例のVリブドベルトBを巻き掛けた後、従動プーリ82を後方に引く1177NのセットウェイトSWを負荷すると共にに5.88〜8.09kWの負荷をかけ、続いて3500rpmで駆動プーリ81を回転させた。そして、走行後におけるベルト背面への粘着物の発生の有無を確認した。なお、駆動及び従動プーリ81,82として、図6に示すように、中程が膨らんだクラウン形をした平クラウンプーリを用いた。このものは、ベルト溝の端部の直径D1が68mm、ベルト溝の中央部の直径D2が70mm、フランジ部の直径D3が71mm、そして、ベルト溝の幅が34mm、フランジ部の厚みが2mmであった。
【0048】
(試験評価結果)
試験結果を表1に示す。
【0049】
表1によれば、例1及び2では外皮補強布からベルト表面へのゴムのしみ出しが見られたのに対し、例3〜5ではしみ出しが見られなかった。例1及び2では、外皮補強布のゴム塗布層の未架橋時のムーニー粘度が60MS1+4(100℃)と低いため、ベルト成形時にゴムが流動して織り目からしみ出したものと考えられる。これに対して、例3では、外皮補強布のゴム塗布層の未架橋時のムーニー粘度が80MS1+4(100℃)と高いため、ベルト成形時にゴムがあまり流動しなかったものと考えられる。また、例4及び5では、外皮補強布のゴム塗布層の未架橋時のムーニー粘度が例1及び2と同一であるが、これらの場合、RFL被膜の付着量が多いために織り目がRFL被膜で塞がれてゴムのしみ出しが抑えられたものと考えられる。
【0050】
粘着摩耗性試験においては、例1及び2ではベルト背面への粘着物の発生があったのに対し、例3〜5では粘着物の発生がなかった。例1ではしみ出したゴムが粘着物となり、例2では外皮補強布表面のゴム糊のゴム及びしみ出したゴムが粘着物となったものと考えられる。これに対して、例3〜5では、ゴムのしみ出しがなく、しかも、ゴム糊による処理が施されていないので、粘着物となるゴム成分がなかったものであると考えられる。
【0051】
ベルト耐久性試験においては、例1〜5の順に耐久性が優れる結果となったが、これからはほぼ同等と判断できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粘着物の原因となるベルト表面に表出したゴムが外皮補強布に含まれず、また、ベルト成形時の外皮補強布からのゴムのしみ出しが防止されるので、ベルト走行時に外皮補強布がプーリと接触しても外皮補強布から消しゴム滓状の粘着物が生じることはなく、粘着物がプーリと接して異音を発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るVリブドベルトの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るVリブドベルトの外皮補強布の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る補機駆動用ベルト伝動装置のレイアウトを示す図である。
【図4】ベルト耐久試験用のベルト走行試験機のレイアウトを示す図である。
【図5】粘着摩耗性試験用のベルト走行試験機のレイアウトを示す図である。
【図6】平クラウンプーリのプーリ軸を含む断面図である。
【図7】ゴムの摩耗によって消しゴム滓状の粘着物ができた従来のVリブドベルトの斜視図である。
【符号の説明】
B Vリブドベルト
10 Vリブドベルト本体
11 接着ゴム層
12 リブゴム層
12a リブ
12b 短繊維
13 上ゴム層
20 心線
30 外皮補強布
31 経糸
32 緯糸
33 RFL被膜
34 ゴム塗布層
40 補機駆動用ベルト伝動装置
41 パワーステアリングプーリ
42 ACジェネレータプーリ
43 テンショナプーリ
44 ウォーターポンププーリ
45 クランクシャフトプーリ
46 エアコンプーリ
80,90 ベルト走行試験機
81,91 駆動プーリ
82 従動プーリ
92 第1従動プーリ
93 第2従動プーリ
94 アイドラプーリ
a 粘着物
Claims (7)
- ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトであって、
上記外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面に未架橋時のムーニー粘度が80MS1+4(100℃)以上であるゴム塗布層が設けられた布で構成されていることを特徴とする伝動ベルト。 - 請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
上記外皮補強布は、上記RFL被膜が上記布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする伝動ベルト。 - ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトであって、
上記外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面にゴム塗布層が設けられた布で構成され、該RFL被膜が該布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする伝動ベルト。 - 請求項1乃至3のいずれか一に記載された伝動ベルトにおいて、
上記ベルト本体がVリブドベルト本体であることを特徴とする伝動ベルト。 - ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトが複数のプーリに巻き掛けられてなり、該複数のプーリのうち少なくとも1つが該伝動ベルトのベルト背面に接触する平プーリであるベルト伝動装置であって、
上記伝動ベルトの外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面に未架橋時のムーニー粘度が80MS1+4(100℃)以上であるゴム塗布層が設けられた布で構成されていることを特徴とするベルト伝動装置。 - 請求項5に記載された伝動ベルトにおいて、
上記伝動ベルトの外皮補強布は、上記RFL被膜が上記布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とする伝動ベルト。 - ベルト本体の背面側に外皮補強布が設けられた伝動ベルトが複数のプーリに巻き掛けられてなり、該複数のプーリのうち少なくとも1つが該伝動ベルトのベルト背面に接触する平プーリであるベルト伝動装置であって、
上記伝動ベルトの外皮補強布は、ベルト表面に表出するように形成されたレゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液によるRFL被膜によって被覆されていると共にベルト本体側となる表面にゴム塗布層が設けられた布で構成され、該RFL被膜が該布の質量に対して35質量%以上付着していることを特徴とするベルト伝動装置。
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-
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