JP2004116318A - 内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】扱いが容易で、少数人員でシリンダライナを容易に抜き出すことを可能とする。
【解決手段】シリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿される支持パイプ5と、支持パイプ5の上端面に当接しシリンダ開口上に架設される架橋体7と、シリンダライナ63を貫通しジャッキ11に連結される引上げロッド15と、引上げロッド15に固設されクレーンの吊具3に掛かる係合環20と、引上げロッド15をシリンダライナ63の中心軸線上に支持し移動を案内する支持体25と、引上げロッド15に対し直交する位置と軸線方向に略沿う位置との間を揺動自在とされ引上げロッド15に対し直交することでシリンダライナ下端に当接される保持体31と、保持体31に連結されシリンダライナ63外部から揺動させる揺動機構部41と、シリンダライナ63の外周面とボルト62との間隙に嵌入されシリンダライナ63を支持する支持部材47とを具備する。
【選択図】 図1
【解決手段】シリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿される支持パイプ5と、支持パイプ5の上端面に当接しシリンダ開口上に架設される架橋体7と、シリンダライナ63を貫通しジャッキ11に連結される引上げロッド15と、引上げロッド15に固設されクレーンの吊具3に掛かる係合環20と、引上げロッド15をシリンダライナ63の中心軸線上に支持し移動を案内する支持体25と、引上げロッド15に対し直交する位置と軸線方向に略沿う位置との間を揺動自在とされ引上げロッド15に対し直交することでシリンダライナ下端に当接される保持体31と、保持体31に連結されシリンダライナ63外部から揺動させる揺動機構部41と、シリンダライナ63の外周面とボルト62との間隙に嵌入されシリンダライナ63を支持する支持部材47とを具備する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル機関などの内燃機関のシリンダに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナを取り外す内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関などの内燃機関のシリンダに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナは、耐摩耗性に優れた特殊鋳鉄製ライナで、シリンダブロックに挿入されている。このシリンダライナは、定期点検などメンテナンス時に、シリンダブロックより抜き出し、外周面,内周面などの点検が行われ、例えば、常用機関であれば運転3万時間若しくは3〜4年に1度、非常用機関の場合には8〜10年に1度の交換作業が行われる。
【0003】
このシリンダライナの抜き出し作業は、従来では手作業にて行っていた。この手作業によるシリンダライナの抜き出し作業は、シリンダの径が小さいものであれば比較的作業は容易であるが、シリンダ内径が200mm以上などの大型ディーゼル機関などの場合には、非常に重労働となる。
【0004】
この大型ディーゼル機関でのシリンダライナの抜き出し作業は、図16に示すような治具70が用いられる。この治具70は、シリンダヘッドを固定するためのシリンダブロック61より植設状態となる複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうちシリンダ61a上部開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿される一対のパイプ71と、両パイプ71,71の上端に当接してこれらパイプ71,71間に掛け渡される板状の渡し金72と、シリンダライナ63の外径と略同等の長さに形成される板材よりなる受け金73と、渡し金72と受け金73とを連結する一対のボルト軸74,74と、各ボルト軸74,74の下端にそれぞれ螺着される固定ナット部材75と、各ボルト軸74,74の上端にそれぞれ螺着される抜き出しナット部材76とで構成される。
【0005】
そして、このような構成の治具70を用いてシリンダライナ63を抜き出すが、まず、一対のパイプ71をそれぞれシリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿し、各パイプ72の端部より各ボルト62の先端を突出した状態とする。次に渡し金72にボルト軸74を抜き出しナット部材76にて螺着して取り付け、各ボルト軸74をシリンダライナ63内に挿通状態として、渡し金72を各パイプ71の上端に当接させ各ボルト62に係止し、この渡し金72を両パイプ71の上端部にてシリンダ開口上方に架設状態とする。次に、シリンダ下方のクランクケース65内に作業者が入り、シリンダ61a上方から挿入されている各ボルト軸74の下端に対して受け金73を固定ナット部材75にて螺着固定し、受け金73の両端部分をシリンダライナ63の下端縁63aに当接させる。
このようにシリンダライナ63に対してセットされた治具70は、渡し金72上面の抜き出しナット部材76を同時に人力にて回転させることにより、各ボルト軸74が渡し金72に対して軸方向に移動することとなり、これにより、受け金73がシリンダ61a上方に移動して、シリンダライナ63が、この受け金73の移動によって上部開口より抜き出されることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のシリンダライナの抜き出し治具では、抜き取るシリンダライナの大きさが大型であることから、治具を構成する各部品が大型であり、また重量のある構成であることから、治具の組み立てや、解体などに作業者を複数必要とし、その作業が非常に煩雑である欠点を有している。
【0007】
また、シリンダライナ下端に当接させる受け金をセットするためには、シリンダの上部から手の届く距離ではないことから、クランクケースに入っての作業となる。このクランクケース内は、非常に狭く、かつ足元にクランクシャフトが配置していることから、作業性が悪く、しかも受け金は堅牢な構造であることから例えば15〜20kgもあり、容易にボルト軸への固定などの作業を行うことができず、時間を要するなどの問題があった。
【0008】
さらに、シリンダライナを抜き出すためには、特に、抜き出し始めにおいては、シリンダブロックに対して、真直に引き抜かなければならず、すなわち、シリンダライナの中心軸線に対して治具の中心軸線を合わせ、これを保持しながら抜き出す必要が有り、従来では、作業者の経験に頼るところが多く、容易に作業を進めることが出来ず、簡便に作業を行うことのできる治具が望まれていた。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、シリンダライナを容易に抜き出すための、扱いが容易で、少数人員で作業を行うことのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、クランクケース内に作業者が入るなどの作業性の悪い状況を無くし、シリンダ外部から容易に作業を行うことを可能とし、その作業に要する時間を短縮させることのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0011】
さらに、本発明は、作業者の経験や勘などに頼ることなく、容易にかつ簡便に作業を行うことのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置は、内燃機関60のシリンダ61aに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナ63を取り外す内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1であって、
前記内燃機関60を構成するシリンダブロック61の上方に配置されるクレーンと、
前記シリンダブロック61よりシリンダヘッドを取り外した状態でのシリンダ61a上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち前記開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿されるとともに、各ボルト62の上端を所定長さ露出した状態で取り付けられる一対の支持パイプ5と、
前記クレーンの吊具3に掛かる掛環9を備え、前記各支持パイプ5の上端面に当接し、かつ前記各ボルト62の上端が貫通されて係止し、前記シリンダ61a上部開口の上方に架設される架橋体7と、
前記架橋体7に設けられるジャッキ11と、
前記シリンダライナ63より長尺に構成され、該シリンダライナ63の中心軸線上となって該シリンダライナ63を貫通して配置されるとともに、前記ジャッキ11に連結されて、該ジャッキ11にて軸線方向に移動自在とされる引上げロッド15と、
前記引上げロッド15の中途に固設され、前記クレーンの吊具3に掛かる係合環20と、
前記引上げロッド15の中途に設けられ、前記シリンダライナ63内面を転動するローラ28を備え、前記引上げロッド15を前記シリンダライナ63の中心軸線上に支持し、該引上げロッド15の軸線方向の移動を案内する支持体25と、
前記シリンダライナ63の外径と略同等の長さの略杆状に形成され、前記引上げロッド15の下端に配設され、該引上げロッド15に対し直交する位置と該引上げロッド15の軸線方向に略沿う位置との間を揺動自在とされるとともに、前記引上げロッド15に対し直交する位置で両端部の上面が前記シリンダライナ下端の開口縁63aに当接される保持体31と、
前記保持体31に連結されるとともに、操作部45が前記架橋体7の上方に延出して配置され、前記保持体31を前記シリンダライナ63外部から揺動させる揺動機構部41と、
前記シリンダライナ63の上端外周面と、前記各支持パイプ5が嵌挿される前記各ボルト62を除く他のボルト62との間隙に嵌入され、前記シリンダライナ63を支持する支持部材47と、
を具備することを特徴としている。
【0013】
なお、前記支持体25が、前記シリンダライナ63の内径に対応し、前記引上げロッド15から前記シリンダライナ63内面までの長さが調整自在に構成されることとしてもよく、また、前記保持体31の長さが、前記シリンダライナ63の外径に対応して伸縮自在に構成されることとしてもよい。
【0014】
さらに、前記保持体31は、前記引上げロッド15に対する取付状態での重心位置が長手方向の一端側とされて揺動自在とされる構成としてもよい。
【0015】
また、前記支持部材47は、木質材よりなることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、支持パイプ5をシリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿し取り付け、これら支持パイプ5に架設して架橋体7が取り付けられる。架橋体7にはジャッキ11を介し引上げロッド15が連結され、この引上げロッドが15がシリンダライナ63を貫通し、その下端に保持体31が位置する。この保持体31は、シリンダライナ63に挿通させる際に、引上げロッド15の軸線方向に沿う位置に揺動状態であり、シリンダライナ63にセットされる際は、揺動機構部41の操作にて、引上げロッド15に対し直交状態とされて、シリンダライナ下端開口縁63aに当接することとなる。そして、ジャッキ11を作動させることにより、引上げロッド15を介して保持体31が上昇駆動し、これによりシリンダライナ63の抜き出しが行われる。
シリンダライナ63の上端縁が架橋体7に当接すると、このシリンダライナ63は、引上げロッド15を介して架橋体7と保持体31とで挟持される状態となり、この状態でクレーンを用い、吊り上げることでシリンダライナ63はシリンダブロック61から抜き出される。
【0017】
従って、シリンダブロック61の上方から、クレーンを用いて、シリンダライナ63への抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ63内に手を挿入することや、装置をシリンダライナにセットする際にクランクケース内に入るなど、従来行われていた煩雑な作業や危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0018】
また、このシリンダライナ抜き出し装置1では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナ63を挟持し保持する構造である架橋体7,保持体31、及び引上げロッド15を予め組み上げた状態で作業が進められ、特にシリンダライナ63の下端開口縁63aに当接する保持体31のセットをシリンダライナ63外部から揺動機構部41を用い操作することで行え、さらに、シリンダライナ63を抜き始める際はジャッキ11による構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナ63の抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0019】
なお、支持体25を、シリンダライナ63の内径に対応し、引上げロッド15からシリンダライナ63内面までの長さを調整自在な構成とすることで、対応するシリンダライナ63の内径に応じてその長さを調整変更し、対応させることとなり、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0020】
また、保持体31の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成とすることで、シリンダライナ63の外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体25の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置1を構成させることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の実施の形態を示す概略斜視図、図2は同抜き出し装置を構成する架橋体の平面図及び側面図、図3は同抜き出し装置を構成する係合環を備えたアーム部の平面図及び側面図、図4は同抜き出し装置を構成する支持体の平面図及び側面図、図5は同抜き出し装置を構成する保持体の平面図,側面図,正面図、図6は同抜き出し装置を構成する揺動案内部材を示す斜視図、図7は同抜き出し装置を構成する引上げロッド下端のストッパーを示す分解斜視図である。
【0022】
まずはじめに、本発明の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の適応される内燃機関60は、シリンダ径が200mm以上の大型ディーゼル機関であって、本実施の形態では、シリンダ径320mmとされるとともに、複数のシリンダ61aを備えV字状に並列した所謂V型配列のディーゼル機関に対する例を示す。
【0023】
内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1は、クレーンと、支持パイプ5と、架橋体7と、ジャッキ11と、引上げロッド15と、係合環20と、支持体25と、保持体31と、揺動機構部41と、支持部材47とで大略構成される。
【0024】
クレーンは、図示しないが、例えば、工場施設内に設置される天井クレーンなどで、本発明のシリンダライナ抜き出し装置1の対象である内燃機関(ディーゼル機関)60を構成するシリンダブロック61の上方に配置される。
このクレーンには、例えば、昇降するフックに吊具3が連結されており、後述する架橋体7及び係合環20に連結可能となっている。
【0025】
支持パイプ5は、一対で構成され、それぞれ同尺に形成される円筒パイプである。これら支持パイプ5は、内燃機関であるディーゼル機関60のシリンダブロック61よりシリンダヘッドを取り外した状態でのシリンダ61a上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿される。また、この支持パイプ5は、シリンダヘッド固定用ボルト62よりやや短尺に形成され、嵌挿した状態で、各ボルト62の上端となる雄ねじ部分62aを所定長さ露出した状態となって取り付けられる。
【0026】
次に、架橋体7は、図1に示すように、上記したシリンダヘッド固定用ボルト62の間隔長さよりやや長尺となる長さに形成され、図2に示すように、例えば板材を組み合わせて角柱状に枠組み形成され、長手方向両端に上下方向に貫通する取付孔8が形成されている。なお、これら取付孔8は、シリンダヘッド固定用ボルト62が貫通可能な径であり、かつ支持パイプ5が貫通不可能な径とされ、各支持パイプ5の上端面に当接し、かつ各ボルト62の上端が貫通されて係止し、シリンダ上部開口の上方に架設されるようになる。
【0027】
また、架橋体7の一方の端部7aにおける上面には、掛環9が突設されている。この掛環9は、前述したクレーンの吊具3に掛かるようになっている。
さらに、架橋体7の長手方向の中央には、上下方向に貫通する通過穴10が穿設される。
【0028】
次に、ジャッキ11は、架橋体7の上面中央に立設される。
このジャッキ11は、センターホール型油圧シリンダよりなり、内筒部12が外筒部13に対して、油圧により昇降駆動する。すなわち、外筒部13の下端が架橋体7に固定されて立設され、内筒部12の中心軸線が、通過穴10の中心と一致し連通するよう配設され、外筒部13に対して内筒部12が軸方向である上下方向にスライド移動自在となり、本実施の形態では、昇降のストロークが例えば200mmとされている。
なお、このジャッキ11には油圧源として、図示しない油圧ポンプが接続される。この油圧ポンプは、シリンダヘッドをシリンダブロック61より取り外す際に使用される油圧ポンプ装置であり、この油圧ポンプ装置が兼用されて使用される。
【0029】
次に、引上げロッド15は、シリンダライナ63の軸線方向の長さより十分に長尺に、例えば略2倍以上の長さに形成されており、ジャッキ11の内筒部12、及び架橋体7中央の通過穴10を貫通して配設される(図8参照)。
【0030】
この引上げロッド15は、図1に示すように、上部に雄ネジ部16が形成され、規制ナット17が螺着されている。規制ナット17は、底面がジャッキ11の内筒部12上端に当接するようになっており、すなわち、引上げロッド15をジャッキ11の内筒部2に挿通状態として上部の規制ナット17を所定の位置に螺着状態とすることで、内筒部12に対し引上げロッド15がその下半部を吊下状態とされ、内筒部12の上昇移動に伴い、引上げロッド15が軸線方向に移動、すなわち上昇するようになっている。
【0031】
また、この引上げロッド15の下端には、後述する保持体31を掛止するストッパー18が設けられる。このストッパー18は、本実施の形態では、図7に示すように、矩形板材よりなり、引上げロッド15の下端に嵌挿され、ナット部材18aなどの固定手段にて固定される。
【0032】
次に、係合環20は、引上げロッド15の中途に固設される。
この係合環20は、円形リング状で、本実施の形態では、図3(a),(b)に示すように、引上げロッド15に対して上方に延出するアーム部21を介して固設されている。アーム部21は、引上げロッド15の一側に当接する基板22と、略L字状に形成される延出板23とで大略構成されている。基板22は、図3に示すように、一対の固定リング24にて引上げロッド15の中途に固定され、延出板23は、基板22の一方の面に対し垂直方向に延出し先端が上方に延びるよう設けられている。延出板23の先端には、貫通孔23aが穿設されており、係合環20が取り付けられている。また、このアーム部21には、後述する揺動機構部41の一部を構成する係止腕44が突設されている。
そして、この係合環20は、クレーンの吊具3に掛けられる。
【0033】
次に、支持体25は、固定部26と、一対の脚部27と、一対のローラ28とで略構成される。
固定部26は、図1に示すように、引上げロッド15の中途位置、上記係合環20より下方に位置し、引上げロッド15の下半部側に固定される。この固定部26は、本実施の形態では、図4(a)に示すように、円筒パイプ形状で、引上げロッド15に対してボルト26aなどの固定手段にて固定される。
【0034】
一対の脚部27は、図4(a)(b)に示すように、固定部26の一側に設けられ、この固定部26の軸線方向に対し直交して延出するように、かつ互いに先端側が拡がるように略V字状に設けられる。
一対のローラ28は、各脚部27に対応して設けられ、軸方向を固定部26の軸線方向に対し直交する方向とされ転動自在とされる。なお、これらローラ28は、図4に示すように、一対の脚部27の各先端に掛け渡されて設けられる軸受板29に設けられている。
【0035】
そして、この支持体25は、引上げロッド15に設けられた状態で、引上げロッド中心CLからローラ28の先端までの距離Dをシリンダライナ63の内径の1/2の長さに設定され、引上げロッド15がシリンダライナ63の内部に位置する状態で、ローラ28がシリンダライナ63内面に接触して転動し、すなわち、シリンダライナ63内部において引上げロッド15をシリンダライナ63の中心軸線上に支持し、引上げロッド15の軸線方向の移動の案内を行う。
なお、この支持体25の引上げロッド15に対する突出方向は、引上げロッド15に対する架橋体7の長手方向と略平行な方向なる。
【0036】
次に、保持体31は、シリンダライナ63の外径の長さに形成される略杆状部材で、本実施の形態では、図5(a),(b)に示すように、シリンダライナ63の外径と略同等の長さの一対の側板32を上面及び下面にて連結板33,34にて連結して構成される。なお、上面における両端近傍に配設される一対の連結板33は、シリンダライナ63内面の曲率に対応した湾曲縁部33aが形成される。
【0037】
これら上面の連結板33の一方の連結板33には、後述する揺動機構部41に連結される固定環35が突設されている。また、この一方の連結板33にて固定される両側板32の一方の端縁には、稜線部分が切削加工され逃げ面32aを形成されている。
なお、この保持体31の幅長は、引上げロッド15下端に設けられるストッパー18よりも幅狭に設定され、すなわちこのストッパー18に載置されて係止される。
【0038】
また、この保持体31には、揺動案内部材37が設けられている。
この揺動案内部材37は、図6に示すように、摺動支持部38と揺動軸39とで略構成される。
摺動支持部38は、図6に示すように、短尺なパイプ状に形成されている。この摺動支持部38は、長さが保持体31の側板32の高さ幅と略同等とされ、また、内径は引上げロッド15の外径と同等若しくはやや大径に形成されており、この引上げロッド15に外嵌され、引上げロッド15に対し、軸方向に容易に摺動自在となるように取り付けられる。
【0039】
また、揺動軸39は、中途が湾曲したやや細径な軸部材よりなり、湾曲した中途部39aが摺動支持部38の外周面の上端近傍に固定され、両端が摺動支持部38の直径方向外側に延出するように設けられる。
そして、この揺動案内部材37は、保持体31の両側板32における長手方向中央よりやや一端側に逸れ、かつ上面側に近接した位置に、貫通して穿設される軸受孔32bに、揺動軸39の両端が嵌挿され設けられる。
【0040】
この揺動案内部材37が保持体31に設けられた状態は、保持体31に対して揺動案内部材37が揺動軸39を中心に揺動自在となり、その揺動案内部材37の摺動支持部38に引上げロッド15が挿通状態となる。すなわち、引上げロッド15に対して軸方向に摺動自在とされるとともに、この引上げロッド15に対して揺動自在となる。
【0041】
そして、図5に示すように、保持体31に対して揺動案内部材37の摺動支持部38の軸線方向が直交する方向となる状態では、引上げロッド15と保持体31とが直交状態であり、保持体31の中心を引上げロッド15が貫通する状態となり、この状態で、保持体31の両端が、シリンダライナ63の下端の開口縁63aに当接可能となり、また、保持体31に対して摺動支持部38が揺動し、傾斜した状態では、保持体31の長手方向が引上げロッド15の軸線方向に近接し、一端側が上向きとなって沿った状態となり、シリンダライナ63内を移動可能となる。この保持体31では、図5(a),(b)に示すように、揺動軸39が保持体31の長手方向の中心ではなく、一端側に逸れた位置とされていることから重心位置が偏芯しており、この保持体31の他端側が下向きとなり一端側が上向きとなるように設定される(図8参照)。
なお、この保持体31の引上げロッド15に対する長手方向が設定される方向は、架橋体7の長手方向に沿い略平行となる方向である。
【0042】
次に、揺動機構部41は、本実施の形態では、ワイヤ等の可撓性長体42と、そのワイヤ42の中途に設けられる係合片43と、前述した係合環20の基端部分に設けられる係止腕44とで略構成される。
ワイヤ42の一端42aは、保持体31に設けられている固定環35に連結固定される。そして、ワイヤ42は、支持体25の脚部27間を通り、架橋体7の間隙部分より上方に他端42b側が延出し、その端部42bを架橋体7の一部に固定している。なお、本実施の形態では、架橋体7に固定される他端側を操作部45としている。
ワイヤ中途の係合片43は、例えば軸状に形成され、係止腕44に掛かるようになっている。
【0043】
係合片43のワイヤ42に対する取付位置は、ワイヤ一端42aからの取付距離が、保持体31を引上げロッド15に沿わせるように揺動させた状態でのこの保持体31の固定環35から係止腕44までの距離とされ、すなわち、係合片43を係止腕44に掛けた状態で、この係合片43から一端42a側のワイヤ42は略弛まずに張られた状態となり、ワイヤ42を介し係合片43にて保持体31を吊下状態としている。
そして、この揺動機構部41のワイヤ42を、架橋体7上方から、その他端である操作部45を牽引することで係止腕44に掛かる係合片43を引上げ、互いの係合状態を解除することで、係合片43と保持体31との張設状態を解き、これにより、保持体31の傾斜状態を解除して揺動させる。
【0044】
次に、支持部材47は、本実施の形態では、木質材よりなり、略クサビ状に形成され、複数個で構成される。
これら支持部材47は、シリンダライナ63の外周面と、その周囲に位置するシリンダヘッド固定用ボルト62との間隙に嵌入され、シリンダライナ63を支持する。
【0045】
嵌入される際のシリンダヘッド固定用ボルト62は、上述した各支持パイプ5が嵌挿される各ボルト62を除く他のボルト62であって、例えば、本実施の形態の場合は、図1に示すように、合計8本のボルト62のうち、シリンダ61a開口を挟んで対向する2本には支持パイプ5が嵌挿され、残る6本のうち互いに対向位置となり略等間隔となる4本の各ボルト62とされる。
【0046】
そして、これら支持部材47は、シリンダライナ63の外周面とシリンダヘッド固定用ボルト62との間に嵌入された状態で、後述する抜き出し操作中に、シリンダライナ63とともに移動して、各ボルト62との支持状態を維持し、各ボルト62に対しては摺動することとなる。
【0047】
なお、この支持部材47は、上記した木質材の他に、硬質な合成樹脂など他の素材で構成してもよく、シリンダヘッド固定用ボルト62とシリンダライナ63外面との間に嵌合されて、抜き出し操作時にシリンダライナ63とともに移動し、かつシリンダヘッド固定用ボルト62に対して摺動可能となればよい。
【0048】
次に、上述した構成のシリンダライナ抜き出し装置1による、シリンダライナ63の抜き出しの手順を説明する。
まず、予めにシリンダヘッドを取り外した後のシリンダブロック61におけるシリンダ上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち、開口を挟み、シリンダ61aの中心軸線を中心にして対向する2本の各ボルト62に支持パイプ5をそれぞれ嵌挿し取り付ける。(図9参照)
【0049】
次に、図8に示すように、この抜き出し装置1の係合環20をクレーンの吊具3に掛け、吊りあげる。なお、重心が全体の下端側となることからやや斜めになった状態となる。
このとき、揺動機構部41の係合片43が、係合環20の基端側に設けられる係止腕44に掛かり、この係止腕44から保持体31までのワイヤ42が弛みなく張設状態となり、すなわち、保持体31を斜めにして、この保持体31の長手方向を引上げロッド15に沿わせるようにする。この保持体31の斜め状態では、引上げロッド15に対して直交する幅長が、シリンダライナ63の内径より短い幅長となる。
【0050】
次に、クレーンにより吊下状態の抜き出し装置1をシリンダブロック61上方に移動させ、図9に示すように、抜き出し対象のシリンダライナ63にセットする。すなわち、引上げロッド15の下部をシリンダライナ63内部に挿入させながら、クレーンにて降下させる。このとき、シリンダライナ63内に挿入される引上げロッド15の下部は、支持体25のローラ28に支持され挿入方向の移動がスムーズに行われる。そして、クレーンにより徐々に降下され、抜き出し装置1の架橋体7が、支持パイプ5の装着された各シリンダヘッド固定用ボルト62に係止されるとともに、各支持パイプ5の上端面に当接し、これらボルト62間に架橋体7が掛け渡され架設される。
【0051】
次に、クレーンによる降下が続行され、引上げロッド15の上端に螺着された規制ナット17がジャッキ11の内筒部12上端に当接するまで、架橋体7に対して引上げロッド15を降下させる。すなわち、保持体31をシリンダライナ下端63aより十分に下方に位置させる(図10参照)。
【0052】
次に、図10に示すように、揺動機構部41のワイヤ42の上部操作部45を手Hで掴み、やや引き上げ、係合片43と係止腕44との係合状態を解き、係止腕44から係合片43を外す。このとき、ワイヤ42の下端に連結されている保持体31は、揺動案内部材37の摺動支持部38が引上げロッド15に沿ってやや上昇し、係合片43と係止腕44との係合状態の解除を容易に行えるようになる。
なお、このとき、クレーンによる昇降動作は行われず、吊下状態が維持される。
【0053】
係合片43と係止腕44との係合状態を解除すると、図10に示すように、保持体31が引上げロッド15に対して揺動案内部材37により、引上げロッド15の下端に摺動移動してストッパー18に掛止される位置まで下降移動するとともに、引上げロッド15に沿って傾斜している状態から、保持体31下面がストッパー18に当接し引上げロッド15に対して直交する状態に揺動する。
【0054】
次に、クレーンを上昇駆動させ、このクレーンの吊具3に連結されている係合環20を介し、引上げロッド15とともに保持体31を上昇させる。このとき、架橋体7は上昇されず、この架橋体7に対しての上昇となる。そして、図11に示すように、引上げロッド15下端の保持体31の両端を、シリンダライナ63下端の開口縁63aに当接状態とさせる。
【0055】
次に、引上げロッド15上端に位置している規制ナット17の螺着位置を変更し、図11に示すように、ジャッキ11の内筒部12上端に当接する位置に螺着状態とする。
【0056】
次に、略クサビ状に形成されている支持部材47を、図1に示すように、シリンダライナ63の上端外周面と、その周囲に位置するシリンダヘッド固定用ボルト62との間隙に嵌入される。
以上で、シリンダライナ63への抜き出し装置1のセットが完了となる。
【0057】
次に、油圧ポンプを作動させ、この油圧ポンプに接続されているジャッキ11を駆動させる。
ジャッキ11は、内筒部12が上昇駆動を開始し、図12に示すように、この内筒部12上端に当接状態の規制ナット17を押し上げ、これにより引上げロッド15を上昇させる。
【0058】
これにより、引上げロッド15の下端の保持体31がシリンダライナ63を下から押し上げるように、ジャッキ11の上昇駆動にてシリンダブロック61に対して上昇移動し、すなわち、シリンダブロック61に対して支持パイプ5,架橋体7,引上げロッド15を介し、保持体31により抜き出しが行われる。
このとき、シリンダライナ63の外周面とシリンダヘッド固定用ボルト62との間に嵌入された支持部材47は、シリンダライナ63の上昇に伴いそれぞれ上昇し、各ボルト62に対しては摺動し、各ボルト62に対する支持が行われる。
【0059】
このジャッキ11による引上げロッド15の上昇移動によるシリンダライナ63の抜き出し動作は、図13に示すように、シリンダライナ63の上端縁63bが架橋体7の下面に当接するまで行われる。
【0060】
なお、この架橋体7下面に当接するまでのジャッキ11による動作が、1回のジャッキ11の上昇動作にて完了しない場合(図12参照)は、このジャッキ11による上昇とともに、クレーンによる吊下状態を維持させ、係合環20を介しての吊下状態として、ジャッキ11の内筒部12を降下動作したのち、再び、引上げロッド15に螺着されている規制ナット17を内筒部12の上面に当接状態となるよう螺着して、そして再びジャッキ11を上昇駆動させることで、引上げロッド15,保持体31を介してシリンダライナ63を上昇させ、シリンダライナ上端縁63bを架橋体7下面に当接させる。
【0061】
また、このジャッキ11による上昇の際には、クレーンも同時に上昇が行われることで、抜き出し装置1の自重による降下を防ぐことが可能となる。
【0062】
次に、クレーンの吊具3を、係合環20から架橋体7の掛環9に移し、すなわち、図14に示すように、クレーンによる吊下状態を架橋体7の掛環9の位置とする。
【0063】
そして、クレーンを引上げ動作させ、シリンダブロック61から、シリンダライナ63とともに架橋体7,保持体31,引上げロッド15等を引き上げる。このとき、シリンダライナ63は、引上げロッド15を介し架橋体7と保持体31とで挟持された状態となりシリンダブロック61から抜き取られる。
なお、支持部材47は、このクレーンによる引上げ途中で取り除かれる。
【0064】
次に、クレーンに吊下状態とされるシリンダライナ63を、シリンダブロック61より離脱させ、図15に示すように、床面上の台車50上に横置きに載置させる。このとき、支持体25のローラ28が、下向きとなるように、すなわち、引上げロッド15を支持体25にて支持するように載置させる。
【0065】
次に、載置状態のシリンダライナ63及び抜き出し装置1から、引上げロッド15に螺着されている規制ナット17を取り外す。
【0066】
次に、クレーンを作動させ、架橋体7を引上げロッド15から抜き去り、吊り上げる。このとき、引上げロッド15の上端側を手Hで保持し、引上げロッド15がシリンダライナ63内面に接触しないようにするのが好ましい。
【0067】
次に、引上げロッド15を一度シリンダライナ63下端方向に押動させ、保持体31とシリンダライナ下端63aとの当接状態を離脱させ、その後揺動機構部41のワイヤ42を牽引操作して、係合片43を係止腕44に掛け、保持体31を斜めな状態とさせる。このとき、保持体31は、揺動案内部材37の回転中心位置が、保持体31の長手方向の中間ではなく、一方に偏っていることから、ワイヤ42の牽引が軽い操作にて傾倒する。
そして、引上げロッド15を手で引き、シリンダライナ43から抜き取る。このとき、シリンダライナ63内面上を支持体25のローラ28が転動し、スムーズに抜き取られる。
【0068】
従ってこのように構成された内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1では、シリンダブロック61の上方から、クレーンを用いて、シリンダライナ63への抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ63内に手を挿入することや、装置をシリンダライナ63にセットする際にクランクケース内に入るなどの煩雑な作業や、危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ61a外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0069】
また、このシリンダライナ抜き出し装置1では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナ63を挟持し保持する構造である架橋体7,保持体31、及び引上げロッド15を予め組み上げた状態で作業が進められ、さらに、シリンダライナ63を抜き始める際はジャッキ11による構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナ63の抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0070】
なお、上述した実施の形態では、支持体25を構成する脚部27の長さが固定されており、シリンダライナ内径の1/2の長さで固定された例であるが、支持体25が、シリンダライナ63の内径に対応し、引上げロッド15からシリンダライナ63内面までの長さを調整自在な構成となることとしてもよい。
すなわち、脚部27を伸縮自在な構成として、対応するシリンダライナ63の内径に応じて脚部の長さを調整変更し、対応させることとしてもよく、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0071】
また、上述した実施の形態では、シリンダライナ63の下端63aに当接する保持体31の長さを、シリンダライナ63の外径の長さに形成され構成されているが、この保持体31の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成としてもよい。
このような構成とすることで、シリンダライナ63の外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体25の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置1を構成させることが可能となる。
【0072】
さらに、上述した実施の形態では、保持体31の揺動を行う揺動機構部41を、ワイヤ42と係合片43、係止腕44にて構成し、操作部45となるワイヤ上部を、手で掴み持ち引く操作にて保持体31の揺動を行う構成としたが、この揺動機構部41は、上記した構成に限ることはなく、他の構成としてもよく、機構的な構造を用いて、外部からの簡便な操作にて保持体31の揺動を行えることとしてもよい。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置では、シリンダブロックの上方から、クレーンを用いて、シリンダライナへの抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ内に手を挿入することや、装置をシリンダライナにセットする際にクランクケース内に入るなどの煩雑な作業や、危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0074】
また、このシリンダライナ抜き出し装置では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナを挟持し保持する構造である架橋体,保持体、及び引上げロッドを予め組み上げた状態で作業が進められ、特にシリンダライナの下端開口縁に当接する保持体のセットをシリンダライナ外部から揺動機構部を用い操作することで行え、さらに、シリンダライナを抜き始める際はジャッキによる構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナの抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0075】
さらに、支持体を、シリンダライナの内径に対応し、引上げロッドからシリンダライナ内面までの長さを調整自在な構成とすることで、対応するシリンダライナの内径に応じてその長さを調整変更し、対応させることとなり、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0076】
また、保持体の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成とすることで、シリンダライナの外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置を構成させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】同抜き出し装置を構成する架橋体の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図3】同抜き出し装置を構成する係合環を備えたアーム部の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】同抜き出し装置を構成する支持体の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図5】同抜き出し装置を構成する保持体の平面図(a),側面図(b),正面図(c)である。
【図6】同抜き出し装置を構成する揺動案内部材を示す斜視図である。
【図7】同抜き出し装置を構成する引上げロッド下端のストッパーを示す分解斜視図である。
【図8】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図9】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図10】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図11】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図12】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図13】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図14】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図15】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図16】従来のシリンダライナを抜き出す治具を示す側断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダライナ抜き出し装置
3…吊具
5…支持パイプ
7…架橋体
9…掛環
11…ジャッキ
15…引上げロッド
20…係合環
25…支持体
28…ローラ
31…保持体
41…揺動機構部
45…操作部
47…支持部材
60…内燃機関(ディーゼル機関)
61…シリンダブロック
61a…シリンダ
62…シリンダヘッド固定用ボルト
63…シリンダライナ
63a…開口縁
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル機関などの内燃機関のシリンダに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナを取り外す内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関などの内燃機関のシリンダに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナは、耐摩耗性に優れた特殊鋳鉄製ライナで、シリンダブロックに挿入されている。このシリンダライナは、定期点検などメンテナンス時に、シリンダブロックより抜き出し、外周面,内周面などの点検が行われ、例えば、常用機関であれば運転3万時間若しくは3〜4年に1度、非常用機関の場合には8〜10年に1度の交換作業が行われる。
【0003】
このシリンダライナの抜き出し作業は、従来では手作業にて行っていた。この手作業によるシリンダライナの抜き出し作業は、シリンダの径が小さいものであれば比較的作業は容易であるが、シリンダ内径が200mm以上などの大型ディーゼル機関などの場合には、非常に重労働となる。
【0004】
この大型ディーゼル機関でのシリンダライナの抜き出し作業は、図16に示すような治具70が用いられる。この治具70は、シリンダヘッドを固定するためのシリンダブロック61より植設状態となる複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうちシリンダ61a上部開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿される一対のパイプ71と、両パイプ71,71の上端に当接してこれらパイプ71,71間に掛け渡される板状の渡し金72と、シリンダライナ63の外径と略同等の長さに形成される板材よりなる受け金73と、渡し金72と受け金73とを連結する一対のボルト軸74,74と、各ボルト軸74,74の下端にそれぞれ螺着される固定ナット部材75と、各ボルト軸74,74の上端にそれぞれ螺着される抜き出しナット部材76とで構成される。
【0005】
そして、このような構成の治具70を用いてシリンダライナ63を抜き出すが、まず、一対のパイプ71をそれぞれシリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿し、各パイプ72の端部より各ボルト62の先端を突出した状態とする。次に渡し金72にボルト軸74を抜き出しナット部材76にて螺着して取り付け、各ボルト軸74をシリンダライナ63内に挿通状態として、渡し金72を各パイプ71の上端に当接させ各ボルト62に係止し、この渡し金72を両パイプ71の上端部にてシリンダ開口上方に架設状態とする。次に、シリンダ下方のクランクケース65内に作業者が入り、シリンダ61a上方から挿入されている各ボルト軸74の下端に対して受け金73を固定ナット部材75にて螺着固定し、受け金73の両端部分をシリンダライナ63の下端縁63aに当接させる。
このようにシリンダライナ63に対してセットされた治具70は、渡し金72上面の抜き出しナット部材76を同時に人力にて回転させることにより、各ボルト軸74が渡し金72に対して軸方向に移動することとなり、これにより、受け金73がシリンダ61a上方に移動して、シリンダライナ63が、この受け金73の移動によって上部開口より抜き出されることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のシリンダライナの抜き出し治具では、抜き取るシリンダライナの大きさが大型であることから、治具を構成する各部品が大型であり、また重量のある構成であることから、治具の組み立てや、解体などに作業者を複数必要とし、その作業が非常に煩雑である欠点を有している。
【0007】
また、シリンダライナ下端に当接させる受け金をセットするためには、シリンダの上部から手の届く距離ではないことから、クランクケースに入っての作業となる。このクランクケース内は、非常に狭く、かつ足元にクランクシャフトが配置していることから、作業性が悪く、しかも受け金は堅牢な構造であることから例えば15〜20kgもあり、容易にボルト軸への固定などの作業を行うことができず、時間を要するなどの問題があった。
【0008】
さらに、シリンダライナを抜き出すためには、特に、抜き出し始めにおいては、シリンダブロックに対して、真直に引き抜かなければならず、すなわち、シリンダライナの中心軸線に対して治具の中心軸線を合わせ、これを保持しながら抜き出す必要が有り、従来では、作業者の経験に頼るところが多く、容易に作業を進めることが出来ず、簡便に作業を行うことのできる治具が望まれていた。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、シリンダライナを容易に抜き出すための、扱いが容易で、少数人員で作業を行うことのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、クランクケース内に作業者が入るなどの作業性の悪い状況を無くし、シリンダ外部から容易に作業を行うことを可能とし、その作業に要する時間を短縮させることのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0011】
さらに、本発明は、作業者の経験や勘などに頼ることなく、容易にかつ簡便に作業を行うことのできるシリンダライナ抜き出し装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置は、内燃機関60のシリンダ61aに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナ63を取り外す内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1であって、
前記内燃機関60を構成するシリンダブロック61の上方に配置されるクレーンと、
前記シリンダブロック61よりシリンダヘッドを取り外した状態でのシリンダ61a上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち前記開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿されるとともに、各ボルト62の上端を所定長さ露出した状態で取り付けられる一対の支持パイプ5と、
前記クレーンの吊具3に掛かる掛環9を備え、前記各支持パイプ5の上端面に当接し、かつ前記各ボルト62の上端が貫通されて係止し、前記シリンダ61a上部開口の上方に架設される架橋体7と、
前記架橋体7に設けられるジャッキ11と、
前記シリンダライナ63より長尺に構成され、該シリンダライナ63の中心軸線上となって該シリンダライナ63を貫通して配置されるとともに、前記ジャッキ11に連結されて、該ジャッキ11にて軸線方向に移動自在とされる引上げロッド15と、
前記引上げロッド15の中途に固設され、前記クレーンの吊具3に掛かる係合環20と、
前記引上げロッド15の中途に設けられ、前記シリンダライナ63内面を転動するローラ28を備え、前記引上げロッド15を前記シリンダライナ63の中心軸線上に支持し、該引上げロッド15の軸線方向の移動を案内する支持体25と、
前記シリンダライナ63の外径と略同等の長さの略杆状に形成され、前記引上げロッド15の下端に配設され、該引上げロッド15に対し直交する位置と該引上げロッド15の軸線方向に略沿う位置との間を揺動自在とされるとともに、前記引上げロッド15に対し直交する位置で両端部の上面が前記シリンダライナ下端の開口縁63aに当接される保持体31と、
前記保持体31に連結されるとともに、操作部45が前記架橋体7の上方に延出して配置され、前記保持体31を前記シリンダライナ63外部から揺動させる揺動機構部41と、
前記シリンダライナ63の上端外周面と、前記各支持パイプ5が嵌挿される前記各ボルト62を除く他のボルト62との間隙に嵌入され、前記シリンダライナ63を支持する支持部材47と、
を具備することを特徴としている。
【0013】
なお、前記支持体25が、前記シリンダライナ63の内径に対応し、前記引上げロッド15から前記シリンダライナ63内面までの長さが調整自在に構成されることとしてもよく、また、前記保持体31の長さが、前記シリンダライナ63の外径に対応して伸縮自在に構成されることとしてもよい。
【0014】
さらに、前記保持体31は、前記引上げロッド15に対する取付状態での重心位置が長手方向の一端側とされて揺動自在とされる構成としてもよい。
【0015】
また、前記支持部材47は、木質材よりなることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、支持パイプ5をシリンダヘッド固定用ボルト62に嵌挿し取り付け、これら支持パイプ5に架設して架橋体7が取り付けられる。架橋体7にはジャッキ11を介し引上げロッド15が連結され、この引上げロッドが15がシリンダライナ63を貫通し、その下端に保持体31が位置する。この保持体31は、シリンダライナ63に挿通させる際に、引上げロッド15の軸線方向に沿う位置に揺動状態であり、シリンダライナ63にセットされる際は、揺動機構部41の操作にて、引上げロッド15に対し直交状態とされて、シリンダライナ下端開口縁63aに当接することとなる。そして、ジャッキ11を作動させることにより、引上げロッド15を介して保持体31が上昇駆動し、これによりシリンダライナ63の抜き出しが行われる。
シリンダライナ63の上端縁が架橋体7に当接すると、このシリンダライナ63は、引上げロッド15を介して架橋体7と保持体31とで挟持される状態となり、この状態でクレーンを用い、吊り上げることでシリンダライナ63はシリンダブロック61から抜き出される。
【0017】
従って、シリンダブロック61の上方から、クレーンを用いて、シリンダライナ63への抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ63内に手を挿入することや、装置をシリンダライナにセットする際にクランクケース内に入るなど、従来行われていた煩雑な作業や危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0018】
また、このシリンダライナ抜き出し装置1では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナ63を挟持し保持する構造である架橋体7,保持体31、及び引上げロッド15を予め組み上げた状態で作業が進められ、特にシリンダライナ63の下端開口縁63aに当接する保持体31のセットをシリンダライナ63外部から揺動機構部41を用い操作することで行え、さらに、シリンダライナ63を抜き始める際はジャッキ11による構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナ63の抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0019】
なお、支持体25を、シリンダライナ63の内径に対応し、引上げロッド15からシリンダライナ63内面までの長さを調整自在な構成とすることで、対応するシリンダライナ63の内径に応じてその長さを調整変更し、対応させることとなり、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0020】
また、保持体31の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成とすることで、シリンダライナ63の外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体25の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置1を構成させることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の実施の形態を示す概略斜視図、図2は同抜き出し装置を構成する架橋体の平面図及び側面図、図3は同抜き出し装置を構成する係合環を備えたアーム部の平面図及び側面図、図4は同抜き出し装置を構成する支持体の平面図及び側面図、図5は同抜き出し装置を構成する保持体の平面図,側面図,正面図、図6は同抜き出し装置を構成する揺動案内部材を示す斜視図、図7は同抜き出し装置を構成する引上げロッド下端のストッパーを示す分解斜視図である。
【0022】
まずはじめに、本発明の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の適応される内燃機関60は、シリンダ径が200mm以上の大型ディーゼル機関であって、本実施の形態では、シリンダ径320mmとされるとともに、複数のシリンダ61aを備えV字状に並列した所謂V型配列のディーゼル機関に対する例を示す。
【0023】
内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1は、クレーンと、支持パイプ5と、架橋体7と、ジャッキ11と、引上げロッド15と、係合環20と、支持体25と、保持体31と、揺動機構部41と、支持部材47とで大略構成される。
【0024】
クレーンは、図示しないが、例えば、工場施設内に設置される天井クレーンなどで、本発明のシリンダライナ抜き出し装置1の対象である内燃機関(ディーゼル機関)60を構成するシリンダブロック61の上方に配置される。
このクレーンには、例えば、昇降するフックに吊具3が連結されており、後述する架橋体7及び係合環20に連結可能となっている。
【0025】
支持パイプ5は、一対で構成され、それぞれ同尺に形成される円筒パイプである。これら支持パイプ5は、内燃機関であるディーゼル機関60のシリンダブロック61よりシリンダヘッドを取り外した状態でのシリンダ61a上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち開口を挟んで対向する2本の各ボルト62に嵌挿される。また、この支持パイプ5は、シリンダヘッド固定用ボルト62よりやや短尺に形成され、嵌挿した状態で、各ボルト62の上端となる雄ねじ部分62aを所定長さ露出した状態となって取り付けられる。
【0026】
次に、架橋体7は、図1に示すように、上記したシリンダヘッド固定用ボルト62の間隔長さよりやや長尺となる長さに形成され、図2に示すように、例えば板材を組み合わせて角柱状に枠組み形成され、長手方向両端に上下方向に貫通する取付孔8が形成されている。なお、これら取付孔8は、シリンダヘッド固定用ボルト62が貫通可能な径であり、かつ支持パイプ5が貫通不可能な径とされ、各支持パイプ5の上端面に当接し、かつ各ボルト62の上端が貫通されて係止し、シリンダ上部開口の上方に架設されるようになる。
【0027】
また、架橋体7の一方の端部7aにおける上面には、掛環9が突設されている。この掛環9は、前述したクレーンの吊具3に掛かるようになっている。
さらに、架橋体7の長手方向の中央には、上下方向に貫通する通過穴10が穿設される。
【0028】
次に、ジャッキ11は、架橋体7の上面中央に立設される。
このジャッキ11は、センターホール型油圧シリンダよりなり、内筒部12が外筒部13に対して、油圧により昇降駆動する。すなわち、外筒部13の下端が架橋体7に固定されて立設され、内筒部12の中心軸線が、通過穴10の中心と一致し連通するよう配設され、外筒部13に対して内筒部12が軸方向である上下方向にスライド移動自在となり、本実施の形態では、昇降のストロークが例えば200mmとされている。
なお、このジャッキ11には油圧源として、図示しない油圧ポンプが接続される。この油圧ポンプは、シリンダヘッドをシリンダブロック61より取り外す際に使用される油圧ポンプ装置であり、この油圧ポンプ装置が兼用されて使用される。
【0029】
次に、引上げロッド15は、シリンダライナ63の軸線方向の長さより十分に長尺に、例えば略2倍以上の長さに形成されており、ジャッキ11の内筒部12、及び架橋体7中央の通過穴10を貫通して配設される(図8参照)。
【0030】
この引上げロッド15は、図1に示すように、上部に雄ネジ部16が形成され、規制ナット17が螺着されている。規制ナット17は、底面がジャッキ11の内筒部12上端に当接するようになっており、すなわち、引上げロッド15をジャッキ11の内筒部2に挿通状態として上部の規制ナット17を所定の位置に螺着状態とすることで、内筒部12に対し引上げロッド15がその下半部を吊下状態とされ、内筒部12の上昇移動に伴い、引上げロッド15が軸線方向に移動、すなわち上昇するようになっている。
【0031】
また、この引上げロッド15の下端には、後述する保持体31を掛止するストッパー18が設けられる。このストッパー18は、本実施の形態では、図7に示すように、矩形板材よりなり、引上げロッド15の下端に嵌挿され、ナット部材18aなどの固定手段にて固定される。
【0032】
次に、係合環20は、引上げロッド15の中途に固設される。
この係合環20は、円形リング状で、本実施の形態では、図3(a),(b)に示すように、引上げロッド15に対して上方に延出するアーム部21を介して固設されている。アーム部21は、引上げロッド15の一側に当接する基板22と、略L字状に形成される延出板23とで大略構成されている。基板22は、図3に示すように、一対の固定リング24にて引上げロッド15の中途に固定され、延出板23は、基板22の一方の面に対し垂直方向に延出し先端が上方に延びるよう設けられている。延出板23の先端には、貫通孔23aが穿設されており、係合環20が取り付けられている。また、このアーム部21には、後述する揺動機構部41の一部を構成する係止腕44が突設されている。
そして、この係合環20は、クレーンの吊具3に掛けられる。
【0033】
次に、支持体25は、固定部26と、一対の脚部27と、一対のローラ28とで略構成される。
固定部26は、図1に示すように、引上げロッド15の中途位置、上記係合環20より下方に位置し、引上げロッド15の下半部側に固定される。この固定部26は、本実施の形態では、図4(a)に示すように、円筒パイプ形状で、引上げロッド15に対してボルト26aなどの固定手段にて固定される。
【0034】
一対の脚部27は、図4(a)(b)に示すように、固定部26の一側に設けられ、この固定部26の軸線方向に対し直交して延出するように、かつ互いに先端側が拡がるように略V字状に設けられる。
一対のローラ28は、各脚部27に対応して設けられ、軸方向を固定部26の軸線方向に対し直交する方向とされ転動自在とされる。なお、これらローラ28は、図4に示すように、一対の脚部27の各先端に掛け渡されて設けられる軸受板29に設けられている。
【0035】
そして、この支持体25は、引上げロッド15に設けられた状態で、引上げロッド中心CLからローラ28の先端までの距離Dをシリンダライナ63の内径の1/2の長さに設定され、引上げロッド15がシリンダライナ63の内部に位置する状態で、ローラ28がシリンダライナ63内面に接触して転動し、すなわち、シリンダライナ63内部において引上げロッド15をシリンダライナ63の中心軸線上に支持し、引上げロッド15の軸線方向の移動の案内を行う。
なお、この支持体25の引上げロッド15に対する突出方向は、引上げロッド15に対する架橋体7の長手方向と略平行な方向なる。
【0036】
次に、保持体31は、シリンダライナ63の外径の長さに形成される略杆状部材で、本実施の形態では、図5(a),(b)に示すように、シリンダライナ63の外径と略同等の長さの一対の側板32を上面及び下面にて連結板33,34にて連結して構成される。なお、上面における両端近傍に配設される一対の連結板33は、シリンダライナ63内面の曲率に対応した湾曲縁部33aが形成される。
【0037】
これら上面の連結板33の一方の連結板33には、後述する揺動機構部41に連結される固定環35が突設されている。また、この一方の連結板33にて固定される両側板32の一方の端縁には、稜線部分が切削加工され逃げ面32aを形成されている。
なお、この保持体31の幅長は、引上げロッド15下端に設けられるストッパー18よりも幅狭に設定され、すなわちこのストッパー18に載置されて係止される。
【0038】
また、この保持体31には、揺動案内部材37が設けられている。
この揺動案内部材37は、図6に示すように、摺動支持部38と揺動軸39とで略構成される。
摺動支持部38は、図6に示すように、短尺なパイプ状に形成されている。この摺動支持部38は、長さが保持体31の側板32の高さ幅と略同等とされ、また、内径は引上げロッド15の外径と同等若しくはやや大径に形成されており、この引上げロッド15に外嵌され、引上げロッド15に対し、軸方向に容易に摺動自在となるように取り付けられる。
【0039】
また、揺動軸39は、中途が湾曲したやや細径な軸部材よりなり、湾曲した中途部39aが摺動支持部38の外周面の上端近傍に固定され、両端が摺動支持部38の直径方向外側に延出するように設けられる。
そして、この揺動案内部材37は、保持体31の両側板32における長手方向中央よりやや一端側に逸れ、かつ上面側に近接した位置に、貫通して穿設される軸受孔32bに、揺動軸39の両端が嵌挿され設けられる。
【0040】
この揺動案内部材37が保持体31に設けられた状態は、保持体31に対して揺動案内部材37が揺動軸39を中心に揺動自在となり、その揺動案内部材37の摺動支持部38に引上げロッド15が挿通状態となる。すなわち、引上げロッド15に対して軸方向に摺動自在とされるとともに、この引上げロッド15に対して揺動自在となる。
【0041】
そして、図5に示すように、保持体31に対して揺動案内部材37の摺動支持部38の軸線方向が直交する方向となる状態では、引上げロッド15と保持体31とが直交状態であり、保持体31の中心を引上げロッド15が貫通する状態となり、この状態で、保持体31の両端が、シリンダライナ63の下端の開口縁63aに当接可能となり、また、保持体31に対して摺動支持部38が揺動し、傾斜した状態では、保持体31の長手方向が引上げロッド15の軸線方向に近接し、一端側が上向きとなって沿った状態となり、シリンダライナ63内を移動可能となる。この保持体31では、図5(a),(b)に示すように、揺動軸39が保持体31の長手方向の中心ではなく、一端側に逸れた位置とされていることから重心位置が偏芯しており、この保持体31の他端側が下向きとなり一端側が上向きとなるように設定される(図8参照)。
なお、この保持体31の引上げロッド15に対する長手方向が設定される方向は、架橋体7の長手方向に沿い略平行となる方向である。
【0042】
次に、揺動機構部41は、本実施の形態では、ワイヤ等の可撓性長体42と、そのワイヤ42の中途に設けられる係合片43と、前述した係合環20の基端部分に設けられる係止腕44とで略構成される。
ワイヤ42の一端42aは、保持体31に設けられている固定環35に連結固定される。そして、ワイヤ42は、支持体25の脚部27間を通り、架橋体7の間隙部分より上方に他端42b側が延出し、その端部42bを架橋体7の一部に固定している。なお、本実施の形態では、架橋体7に固定される他端側を操作部45としている。
ワイヤ中途の係合片43は、例えば軸状に形成され、係止腕44に掛かるようになっている。
【0043】
係合片43のワイヤ42に対する取付位置は、ワイヤ一端42aからの取付距離が、保持体31を引上げロッド15に沿わせるように揺動させた状態でのこの保持体31の固定環35から係止腕44までの距離とされ、すなわち、係合片43を係止腕44に掛けた状態で、この係合片43から一端42a側のワイヤ42は略弛まずに張られた状態となり、ワイヤ42を介し係合片43にて保持体31を吊下状態としている。
そして、この揺動機構部41のワイヤ42を、架橋体7上方から、その他端である操作部45を牽引することで係止腕44に掛かる係合片43を引上げ、互いの係合状態を解除することで、係合片43と保持体31との張設状態を解き、これにより、保持体31の傾斜状態を解除して揺動させる。
【0044】
次に、支持部材47は、本実施の形態では、木質材よりなり、略クサビ状に形成され、複数個で構成される。
これら支持部材47は、シリンダライナ63の外周面と、その周囲に位置するシリンダヘッド固定用ボルト62との間隙に嵌入され、シリンダライナ63を支持する。
【0045】
嵌入される際のシリンダヘッド固定用ボルト62は、上述した各支持パイプ5が嵌挿される各ボルト62を除く他のボルト62であって、例えば、本実施の形態の場合は、図1に示すように、合計8本のボルト62のうち、シリンダ61a開口を挟んで対向する2本には支持パイプ5が嵌挿され、残る6本のうち互いに対向位置となり略等間隔となる4本の各ボルト62とされる。
【0046】
そして、これら支持部材47は、シリンダライナ63の外周面とシリンダヘッド固定用ボルト62との間に嵌入された状態で、後述する抜き出し操作中に、シリンダライナ63とともに移動して、各ボルト62との支持状態を維持し、各ボルト62に対しては摺動することとなる。
【0047】
なお、この支持部材47は、上記した木質材の他に、硬質な合成樹脂など他の素材で構成してもよく、シリンダヘッド固定用ボルト62とシリンダライナ63外面との間に嵌合されて、抜き出し操作時にシリンダライナ63とともに移動し、かつシリンダヘッド固定用ボルト62に対して摺動可能となればよい。
【0048】
次に、上述した構成のシリンダライナ抜き出し装置1による、シリンダライナ63の抜き出しの手順を説明する。
まず、予めにシリンダヘッドを取り外した後のシリンダブロック61におけるシリンダ上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルト62のうち、開口を挟み、シリンダ61aの中心軸線を中心にして対向する2本の各ボルト62に支持パイプ5をそれぞれ嵌挿し取り付ける。(図9参照)
【0049】
次に、図8に示すように、この抜き出し装置1の係合環20をクレーンの吊具3に掛け、吊りあげる。なお、重心が全体の下端側となることからやや斜めになった状態となる。
このとき、揺動機構部41の係合片43が、係合環20の基端側に設けられる係止腕44に掛かり、この係止腕44から保持体31までのワイヤ42が弛みなく張設状態となり、すなわち、保持体31を斜めにして、この保持体31の長手方向を引上げロッド15に沿わせるようにする。この保持体31の斜め状態では、引上げロッド15に対して直交する幅長が、シリンダライナ63の内径より短い幅長となる。
【0050】
次に、クレーンにより吊下状態の抜き出し装置1をシリンダブロック61上方に移動させ、図9に示すように、抜き出し対象のシリンダライナ63にセットする。すなわち、引上げロッド15の下部をシリンダライナ63内部に挿入させながら、クレーンにて降下させる。このとき、シリンダライナ63内に挿入される引上げロッド15の下部は、支持体25のローラ28に支持され挿入方向の移動がスムーズに行われる。そして、クレーンにより徐々に降下され、抜き出し装置1の架橋体7が、支持パイプ5の装着された各シリンダヘッド固定用ボルト62に係止されるとともに、各支持パイプ5の上端面に当接し、これらボルト62間に架橋体7が掛け渡され架設される。
【0051】
次に、クレーンによる降下が続行され、引上げロッド15の上端に螺着された規制ナット17がジャッキ11の内筒部12上端に当接するまで、架橋体7に対して引上げロッド15を降下させる。すなわち、保持体31をシリンダライナ下端63aより十分に下方に位置させる(図10参照)。
【0052】
次に、図10に示すように、揺動機構部41のワイヤ42の上部操作部45を手Hで掴み、やや引き上げ、係合片43と係止腕44との係合状態を解き、係止腕44から係合片43を外す。このとき、ワイヤ42の下端に連結されている保持体31は、揺動案内部材37の摺動支持部38が引上げロッド15に沿ってやや上昇し、係合片43と係止腕44との係合状態の解除を容易に行えるようになる。
なお、このとき、クレーンによる昇降動作は行われず、吊下状態が維持される。
【0053】
係合片43と係止腕44との係合状態を解除すると、図10に示すように、保持体31が引上げロッド15に対して揺動案内部材37により、引上げロッド15の下端に摺動移動してストッパー18に掛止される位置まで下降移動するとともに、引上げロッド15に沿って傾斜している状態から、保持体31下面がストッパー18に当接し引上げロッド15に対して直交する状態に揺動する。
【0054】
次に、クレーンを上昇駆動させ、このクレーンの吊具3に連結されている係合環20を介し、引上げロッド15とともに保持体31を上昇させる。このとき、架橋体7は上昇されず、この架橋体7に対しての上昇となる。そして、図11に示すように、引上げロッド15下端の保持体31の両端を、シリンダライナ63下端の開口縁63aに当接状態とさせる。
【0055】
次に、引上げロッド15上端に位置している規制ナット17の螺着位置を変更し、図11に示すように、ジャッキ11の内筒部12上端に当接する位置に螺着状態とする。
【0056】
次に、略クサビ状に形成されている支持部材47を、図1に示すように、シリンダライナ63の上端外周面と、その周囲に位置するシリンダヘッド固定用ボルト62との間隙に嵌入される。
以上で、シリンダライナ63への抜き出し装置1のセットが完了となる。
【0057】
次に、油圧ポンプを作動させ、この油圧ポンプに接続されているジャッキ11を駆動させる。
ジャッキ11は、内筒部12が上昇駆動を開始し、図12に示すように、この内筒部12上端に当接状態の規制ナット17を押し上げ、これにより引上げロッド15を上昇させる。
【0058】
これにより、引上げロッド15の下端の保持体31がシリンダライナ63を下から押し上げるように、ジャッキ11の上昇駆動にてシリンダブロック61に対して上昇移動し、すなわち、シリンダブロック61に対して支持パイプ5,架橋体7,引上げロッド15を介し、保持体31により抜き出しが行われる。
このとき、シリンダライナ63の外周面とシリンダヘッド固定用ボルト62との間に嵌入された支持部材47は、シリンダライナ63の上昇に伴いそれぞれ上昇し、各ボルト62に対しては摺動し、各ボルト62に対する支持が行われる。
【0059】
このジャッキ11による引上げロッド15の上昇移動によるシリンダライナ63の抜き出し動作は、図13に示すように、シリンダライナ63の上端縁63bが架橋体7の下面に当接するまで行われる。
【0060】
なお、この架橋体7下面に当接するまでのジャッキ11による動作が、1回のジャッキ11の上昇動作にて完了しない場合(図12参照)は、このジャッキ11による上昇とともに、クレーンによる吊下状態を維持させ、係合環20を介しての吊下状態として、ジャッキ11の内筒部12を降下動作したのち、再び、引上げロッド15に螺着されている規制ナット17を内筒部12の上面に当接状態となるよう螺着して、そして再びジャッキ11を上昇駆動させることで、引上げロッド15,保持体31を介してシリンダライナ63を上昇させ、シリンダライナ上端縁63bを架橋体7下面に当接させる。
【0061】
また、このジャッキ11による上昇の際には、クレーンも同時に上昇が行われることで、抜き出し装置1の自重による降下を防ぐことが可能となる。
【0062】
次に、クレーンの吊具3を、係合環20から架橋体7の掛環9に移し、すなわち、図14に示すように、クレーンによる吊下状態を架橋体7の掛環9の位置とする。
【0063】
そして、クレーンを引上げ動作させ、シリンダブロック61から、シリンダライナ63とともに架橋体7,保持体31,引上げロッド15等を引き上げる。このとき、シリンダライナ63は、引上げロッド15を介し架橋体7と保持体31とで挟持された状態となりシリンダブロック61から抜き取られる。
なお、支持部材47は、このクレーンによる引上げ途中で取り除かれる。
【0064】
次に、クレーンに吊下状態とされるシリンダライナ63を、シリンダブロック61より離脱させ、図15に示すように、床面上の台車50上に横置きに載置させる。このとき、支持体25のローラ28が、下向きとなるように、すなわち、引上げロッド15を支持体25にて支持するように載置させる。
【0065】
次に、載置状態のシリンダライナ63及び抜き出し装置1から、引上げロッド15に螺着されている規制ナット17を取り外す。
【0066】
次に、クレーンを作動させ、架橋体7を引上げロッド15から抜き去り、吊り上げる。このとき、引上げロッド15の上端側を手Hで保持し、引上げロッド15がシリンダライナ63内面に接触しないようにするのが好ましい。
【0067】
次に、引上げロッド15を一度シリンダライナ63下端方向に押動させ、保持体31とシリンダライナ下端63aとの当接状態を離脱させ、その後揺動機構部41のワイヤ42を牽引操作して、係合片43を係止腕44に掛け、保持体31を斜めな状態とさせる。このとき、保持体31は、揺動案内部材37の回転中心位置が、保持体31の長手方向の中間ではなく、一方に偏っていることから、ワイヤ42の牽引が軽い操作にて傾倒する。
そして、引上げロッド15を手で引き、シリンダライナ43から抜き取る。このとき、シリンダライナ63内面上を支持体25のローラ28が転動し、スムーズに抜き取られる。
【0068】
従ってこのように構成された内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置1では、シリンダブロック61の上方から、クレーンを用いて、シリンダライナ63への抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ63内に手を挿入することや、装置をシリンダライナ63にセットする際にクランクケース内に入るなどの煩雑な作業や、危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ61a外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0069】
また、このシリンダライナ抜き出し装置1では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナ63を挟持し保持する構造である架橋体7,保持体31、及び引上げロッド15を予め組み上げた状態で作業が進められ、さらに、シリンダライナ63を抜き始める際はジャッキ11による構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナ63の抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0070】
なお、上述した実施の形態では、支持体25を構成する脚部27の長さが固定されており、シリンダライナ内径の1/2の長さで固定された例であるが、支持体25が、シリンダライナ63の内径に対応し、引上げロッド15からシリンダライナ63内面までの長さを調整自在な構成となることとしてもよい。
すなわち、脚部27を伸縮自在な構成として、対応するシリンダライナ63の内径に応じて脚部の長さを調整変更し、対応させることとしてもよく、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0071】
また、上述した実施の形態では、シリンダライナ63の下端63aに当接する保持体31の長さを、シリンダライナ63の外径の長さに形成され構成されているが、この保持体31の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成としてもよい。
このような構成とすることで、シリンダライナ63の外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体25の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置1を構成させることが可能となる。
【0072】
さらに、上述した実施の形態では、保持体31の揺動を行う揺動機構部41を、ワイヤ42と係合片43、係止腕44にて構成し、操作部45となるワイヤ上部を、手で掴み持ち引く操作にて保持体31の揺動を行う構成としたが、この揺動機構部41は、上記した構成に限ることはなく、他の構成としてもよく、機構的な構造を用いて、外部からの簡便な操作にて保持体31の揺動を行えることとしてもよい。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置では、シリンダブロックの上方から、クレーンを用いて、シリンダライナへの抜き出しの作業を進めることができ、シリンダライナ内に手を挿入することや、装置をシリンダライナにセットする際にクランクケース内に入るなどの煩雑な作業や、危険な作業が無く、また、抜き出し装置の組み立てや解体などの煩雑な作業が無く、シリンダ外部からの作業で略全て行えることから、作業に要する時間の短縮化を図ることが可能となるとともに、少数人員での作業で行えることが可能となる。
【0074】
また、このシリンダライナ抜き出し装置では、クレーンによる吊下状態での作業であり、シリンダライナを挟持し保持する構造である架橋体,保持体、及び引上げロッドを予め組み上げた状態で作業が進められ、特にシリンダライナの下端開口縁に当接する保持体のセットをシリンダライナ外部から揺動機構部を用い操作することで行え、さらに、シリンダライナを抜き始める際はジャッキによる構造としたことから、その作業に、経験や勘など作業者の熟練度を要することなく、簡便にシリンダライナの抜き出し作業を行うことが可能となる。
【0075】
さらに、支持体を、シリンダライナの内径に対応し、引上げロッドからシリンダライナ内面までの長さを調整自在な構成とすることで、対応するシリンダライナの内径に応じてその長さを調整変更し、対応させることとなり、このような構成とすることで、汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となる。
【0076】
また、保持体の長さを所望の長さに設定可能な、例えば伸縮自在な構成とすることで、シリンダライナの外径が異なる場合に応じた汎用性のある抜き出し装置を得ることが可能となり、上記した支持体の長さ調整可能な構成とともに併用した構成とすることで、種々の径に対応するシリンダライナ抜き出し装置を構成させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】同抜き出し装置を構成する架橋体の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図3】同抜き出し装置を構成する係合環を備えたアーム部の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】同抜き出し装置を構成する支持体の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図5】同抜き出し装置を構成する保持体の平面図(a),側面図(b),正面図(c)である。
【図6】同抜き出し装置を構成する揺動案内部材を示す斜視図である。
【図7】同抜き出し装置を構成する引上げロッド下端のストッパーを示す分解斜視図である。
【図8】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図9】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図10】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図11】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図12】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図13】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図14】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図15】同シリンダライナ抜き出し装置の動作を説明する側断面図である。
【図16】従来のシリンダライナを抜き出す治具を示す側断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダライナ抜き出し装置
3…吊具
5…支持パイプ
7…架橋体
9…掛環
11…ジャッキ
15…引上げロッド
20…係合環
25…支持体
28…ローラ
31…保持体
41…揺動機構部
45…操作部
47…支持部材
60…内燃機関(ディーゼル機関)
61…シリンダブロック
61a…シリンダ
62…シリンダヘッド固定用ボルト
63…シリンダライナ
63a…開口縁
Claims (5)
- 内燃機関のシリンダに装着されシリンダ内面を構成するシリンダライナを取り外す内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置であって、
前記内燃機関を構成するシリンダブロックの上方に配置されるクレーンと、
前記シリンダブロックよりシリンダヘッドを取り外した状態でのシリンダ上部開口を囲繞するように植設される複数のシリンダヘッド固定用ボルトのうち前記開口を挟んで対向する2本の各ボルトに嵌挿されるとともに、各ボルトの上端を所定長さ露出した状態で取り付けられる一対の支持パイプと、
前記クレーンの吊具に掛かる掛環を備え、前記各支持パイプの上端面に当接し、かつ前記各ボルトの上端が貫通されて係止し、前記シリンダ上部開口の上方に架設される架橋体と、
前記架橋体に設けられるジャッキと、
前記シリンダライナより長尺に構成され、該シリンダライナの中心軸線上となって該シリンダライナを貫通して配置されるとともに、前記ジャッキに連結されて、該ジャッキにて軸線方向に移動自在とされる引上げロッドと、
前記引上げロッドの中途に固設され、前記クレーンの吊具に掛かる係合環と、
前記引上げロッドの中途に設けられ、前記シリンダライナ内面を転動するローラを備え、前記引上げロッドを前記シリンダライナの中心軸線上に支持し、該引上げロッドの軸線方向の移動を案内する支持体と、
前記シリンダライナの外径と略同等の長さの略杆状に形成され、前記引上げロッドの下端に配設され、該引上げロッドに対し直交する位置と該引上げロッドの軸線方向に略沿う位置との間を揺動自在とされるとともに、前記引上げロッドに対し直交する位置で両端部の上面が前記シリンダライナ下端の開口縁に当接される保持体と、
前記保持体に連結されるとともに、操作部が前記架橋体の上方に延出して配置され、前記保持体を前記シリンダライナ外部から揺動させる揺動機構部と、
前記シリンダライナの上端外周面と、前記各支持パイプが嵌挿される前記各ボルトを除く他のボルトとの間隙に嵌入され、前記シリンダライナを支持する支持部材と、
を具備することを特徴とする内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置。 - 前記支持体が、前記シリンダライナの内径に対応し、前記引上げロッドから前記シリンダライナ内面までの長さが調整自在に構成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置。
- 前記保持体の長さが、前記シリンダライナの外径に対応して伸縮自在に構成されることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置。
- 前記保持体は、前記引上げロッドに対する取付状態での重心位置が長手方向の一端側とされて揺動自在とされることを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1つに記載の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置。
- 前記支持部材は、木質材よりなることを特徴とする請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002277634A JP2004116318A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置 |
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JP2002277634A JP2004116318A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2004116318A true JP2004116318A (ja) | 2004-04-15 |
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ID=32273176
Family Applications (1)
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JP2002277634A Pending JP2004116318A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 内燃機関のシリンダライナ抜き出し装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004116318A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101223703B1 (ko) * | 2012-06-08 | 2013-01-22 | 이은주 | 라이너 탈착장치 |
CN107932355A (zh) * | 2017-12-31 | 2018-04-20 | 温州瑞明工业股份有限公司 | 一种缸套抓取装置 |
CN108422381A (zh) * | 2018-05-17 | 2018-08-21 | 国家电网公司 | 适用于内嵌式自润滑轴套的拔除工具及其使用方法 |
RU2668765C1 (ru) * | 2015-03-03 | 2018-10-02 | Сюйчжоу Хэви Машинери Ко., Лтд. | Корпус головки цилиндра, система с одним болтом цилиндра и кран |
KR102637379B1 (ko) * | 2023-07-06 | 2024-02-19 | 주식회사 삼신 | 위켓 게이트용 캐스트 레버 제거 장치 |
-
2002
- 2002-09-24 JP JP2002277634A patent/JP2004116318A/ja active Pending
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