JP2004115931A - 無機繊維製品 - Google Patents

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三須 安雄
Koji Nemoto
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Abstract

【課題】耐熱性の高い、かつ、取り扱い性に優れた無機繊維製品を提供する。
【解決手段】Alが50〜60重量%で、残部がSiOで、1000℃ 程度の熱処理によりムライト微結晶を析出させた無機繊維からなり、それらの無機繊維の繊維径が2.5μm以上である。Na及びKの合計量が500ppm以下、Feが300ppm以下である。そのような無機繊維に、結晶質アルミナファイバーを9重量%以下含有させることもできる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性の高い無機繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミナ(Al)とシリカ(SiO)を原料として溶融して製造する非 晶質のセラミックファイバーは、工業炉の断熱材として広く採用されている。
【0003】
その非晶質のセラミックファイバーの使用温度は、1260℃程度が限界である。そのため、その耐熱性(収縮率)を向上させる目的でアルミナ含有量を増加させたり、ジルコニア、クロミアなどの第3成分を添加したりする方法が採られてきた。
【0004】
通常、非晶質のセラミックファイバーは、アルミナ含有量が48重量%程度である。
【0005】
このようなセラミックファイバーのアルミナ含有量を50重量%以上に増加させて繊維化すると、繊維の繊錐径が小さくなり、さらに、セラミックファイバー製造の際に不可避であるショットと呼ばれる非繊維状粒子の割合が増加してしまう。また、1000〜1100℃で加熱された際、繊維に晶出するムライトの量が多くなり、かえってムライトの晶出に伴う低温での繊維の収縮率が増加してしまう。しかし、それ以上の温度で晶出するシリカの結晶であるクリストバライトの晶出量が、アルミナ含有量48重量%品よりも少ないので、1300℃までの使用は可能であるが、1400℃以上の耐熱性を期待することはできない。1400℃以上の使用のときは、耐熱性が十分ではないからである。
【0006】
また、前述の非晶質セラミックファイバーは、第3成分としてジルコニアを添加すると、1300℃程度における収縮率は改善されるものの、1500℃以上に加熱された場合や、炉内に飛散するアルカリなどが繊維に付着した場合に、著しく収縮してしまう。そのため、前述の非晶質セラミックファイバーの使用には制限があった。
【0007】
また、第3成分としてクロミアを添加した場合は、熱的安定性は優れるものの、環境面での配慮が必要であり、その使用は、今日の環境基準を考えると、制限されていると言わざるを得ない。
【0008】
一方、第3成分を添加する事なく、繊維の耐熱性を向上させる方法が、特許第2673142号公報、特開平5−286786号公報、特開平10−130961号公報に開示されている。
【0009】
特許第2673142号公報には、繊維中の不純物量を制限することにより、シリカの結晶であるクリストバライトの結晶化と成長を抑制し、1300℃で長時間使用しても、収縮率が小さく、被処理物への汚染を低減することができる繊維が記載されている。
【0010】
特開平10−130961号公報には、セラミックファイバー中の不純物量を制限し、結晶質アルミナ繊維を添加した耐火断熱材が記載されている。この耐火断熱材では、クリストバライトの結晶化と成長が抑制され、粉塵の発生が少なく、1400℃−24時間の加熱では、収縮率が3%程度である。
【0011】
特開平5−286786号公報には、セラミックファイバーに結晶化ファイバーを添加して混紡し、ブランケットの厚さ方向の収縮を抑えるとともに、結晶化ファイバーが骨の役目をしてセラミックファイバーの過度の収縮に伴なう強度低下を補うことにより耐熱性と取り扱い性を改善することが記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許第2673142号公報及び特開平10−130961号公報に記載の方法では、使用する原料を高純度のものにする必要があり、かつ製造工程からの不純物の混入にも充分な注意が必要であるため、製造コストが非常に高くなる。
【0013】
さらに、特許第2673142号公報に記載の方法では、非晶質セラミックファイバーのアルミナ含有量が50%を超えたものは、製品の取り扱いが困難であった。
【0014】
特開平10−130961号公報の方法では、高純度のセラミックファイバーに、さらに結晶化ファイバーを添加するため、コスト面で一層不利であった。また、非晶質セラミックファイバーのアルミナ含有量が50%を超えたものについては、結晶化ファイバーを添加しない場合は、製品の取り扱いが困難であった。
【0015】
また、特開平5−286786号公報の方法では、1400℃における耐熱性は十分であるが、含有させる結晶化ファイバーが、10重量%以上も必要であり、かつ、それが非常に高価であるため、やはり製品のコストが高くなった。
【0016】
一方、非晶質のセラミックファイバーの耐熱性を向上させる方法として、前述のアルミナ含有量を増加させる方法の他に、セラミックファイバーを1000℃程度で予備加熱処理し、繊維中にムライトの微結晶を析出させる方法がある。この方法は、ムライトの微結晶をあらかじめ晶出させておくことで、工業炉等で使用する際の収縮率を抑制する方法である。
【0017】
しかし、この方法によると、アルミナを50重量%以上含有する非晶質セラミックファイバーは、予備加熱処理の段階で繊維の強度が失われ、柔軟性が乏しくなり、例えば、繊維をマット状やブランケット状にする際に、取り扱いが著しく困難になる問題、とくに、巻き取りしてロール状にできない問題があった。
【0018】
本発明の目的は、耐熱性の高い、かつ、取り扱い性に優れた無機繊維製品を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、前述のような従来技術の事情を考慮し、鋭意検討の結果、Al−SiOの2成分系の非晶質セラミックファイバーのAl含有率が5 0〜60重量%の範囲であっても、その繊維径を2.5μm以上とし、かつ、1000℃程度の予備加熱処理を行うことによって、繊維を、例えばマット状やブランケット状にした際の取り扱い性を良好なものにすることができることを見出したのである。
【0020】
本発明の解決手段を例示すると、特許請求の範囲の各請求項に記載の無機繊維製品である。
【0021】
【発明の実施の形態】
非晶質Al−SiO系セラミックファイバーにおいて、耐熱性を向上さ せる為には、Al含有量を増加させるのが一般的である。しかし、Al含有量が増加するにつれて、繊維径が小さくなる傾向が見られ、さらに、ショットと呼ばれる非繊維粒子の割合が増加し、繊維をマットあるいはブランケット状にした場合、品質が低下する。
【0022】
さらに、Al含有量を増加させると、実炉使用時のムライト析出量が多くなるため、1100℃付近での繊維の収縮率が大きくなり、耐熱性が低下してしまう。
【0023】
また、前述のように、耐熱性を向上させる方法として、予備加熱処理(すなわち事前に1000℃程度で短時間熱処理)をして、繊維中にムライトの微結晶を晶出させておき、その後の使用時における耐熱性を向上させる方法がある。しかし、この方法によると、アルミナを50重量%以上含有する非晶質アルミナシリカ繊維では、予備加熱処理の段階で繊維の柔軟性が失われ、例えば繊維をマット状やブランケット状にする際に、取り扱いが著しく困難であった。即ち、非晶質アルミナシリカ繊維で、かつ高アルミナ組成のマットあるいはブランケットは、熱処理後の取り扱い性が著しく悪かった。
【0024】
本願発明者は、セラミックファイバーの繊維径に注目し、Al−SiO の2成分系非晶質セラミックファイバーのAl含有率が50〜60重量%の範囲であっても、その繊維径を2.5μm以上とし、かつ、1000℃程度の予備加熱処理をすることによって、繊維にムライトの微結晶を晶出させても、繊維をマット状やブランケット状にした際の取扱い性を良好なものにできることを見出した。
【0025】
つまり、Al−SiOの2成分系非晶質セラミックファイバーのアルミ ナ含有量が48重量%程度であれば、予備加熱処理後の取り扱い性に対する繊維径の影響は少ないが、アルミナ含有量が50重量%〜60重量%になると、1000℃程度の予備加熱処理時に生成するムライト結晶が、繊維のアルミナ含有量に伴って増加し、その結果、繊維の強度劣化が起こり、マットあるいはブランケットの取り扱い性が極端に低下する。
【0026】
これは、繊維中の微結晶ムライトとガラス(ムライトになっていない非晶質部分)の構成比は変わらないものの、繊維径が大きくなると、ガラス量が多くなるために、その柔軟性を維持できるものであると考えられる。
【0027】
従って、繊維径が2.5μm以上でないと、繊維の強度低下が、繊維の集合体(つまりマットあるいはブランケット)の強度の低下や、取り扱い性の低下に繋がる。
【0028】
しかし、アルミナ含有量が60重量%を超えると、繊維径を2.5μm以上とすることによる効果はあまり見られなくなる。それは、アルミナ含有量が60重量%を超えると、1000℃程度での予備加熱処理によって繊維中に晶出するムライトの量が多くなりすぎる事が原因であると考えられる。
【0029】
また、A1−SiOの2成分系非晶質セラミックファイバーは、110 0℃を超える温度で加熱されると、繊維中にシリカの結晶であるクリストバライトが晶出する。そのように繊維中にクリストバライトが晶出したり、さらに結晶成長したりすると、このことも繊維の強度劣化を引き起こす要因となる。
【0030】
さらに、本願発明者は、検討の結果、A1−SiOの2成分系非晶質セ ラミックファイバーの繊維中に含まれる不純物として、NaとKの合計量が500ppm以下、Feが300ppm以下であると、クリストバライトの結晶化や、結晶成長を抑えることが出来ることを見出した。
【0031】
これら不純物の含有量を所定値以下に少なくした繊維では、長時間加熱を受けても、繊維中の結晶は微細な状態であり、繊維の表面状態は滑らかで、強度低下が起こりにくい。
【0032】
さらに、Na、K、Feについてこの程度の純度であれば、比較的安価な原料で所望の繊維を製造することができ、製品のコスト増加を最小限に抑えることが出来る。
【0033】
無機繊維の製造方法としては、原料を電気炉で溶融し、溶湯を高圧のエアーで分散、繊維化させるブローイング法と、溶湯を回転体の遠心力で繊維化するスピニング法を採用することが出来る。一般に、スピニング法の方が繊維径の大きい繊維が出来やすいので、本発明では有利であるが、その収率は最大70%程度である。
【0034】
ブローイング法は、その収率は90%以上であるが、繊維径の小さい繊維となりやすい。例えば、溶湯の温度、ブローイングノズルと溶湯の間隔、溶湯量、溶解電力等の制御によって、単位時間当たりの供給量を適正化することで、本発明に適した繊維径の繊維を製造する事が効率よく出来る。
【0035】
従って、本発明では、どちらの繊維化の方法も採用することが出来る。
【0036】
繊維化した繊維を集綿器で集綿して、堆積させ、マット状にする。ブランケット状にする場合は、この後に、ニードルパンチ処理を施す。
【0037】
さらに、1000℃程度の予備加熱処理を施した本発明の繊維に、結晶質アルミナファイバーを9重量%以下含有させて混紡することにより、ブランケットの厚さ方向の加熱収縮率の改善と、予備加熱処理後のマットあるいはブランケットの巻き取り性がさらに向上する。
【0038】
本発明では、結晶質アルミナファイバーとは、アルミナ含有率が70重量%以上で残部がシリカからなり、ムライトとコランダムで構成されている結晶質繊維である。
【0039】
結晶質アルミナファイバーの含有量は、9重量%を超えるとコストアップとなるため、9重量%以下の添加が好ましく、2〜7重量%がとくに好ましい。
【0040】
また、結晶質アルミナファイバーを含有させると、耐熱性を向上させる効果とともに、補強効果もあるので、結晶質アルミナファイバーの繊維径も、3〜6μm程度の繊維径のものを使用することが好ましい。
【0041】
結晶質アルミナファイバーを含有させる方法としては、特開平5−28676号公報記載の方法を採用する事が出来る。たとえば、アルミナファイバーマットあるいはブランケットを小塊にして供給する。すなわち、これらの小塊を予め形成しておき、非晶質セラミックファイバーを繊維化させる際に、繊維化されて集綿器に落下して堆積するまでの間に、所定量の小塊を集綿器内の気流に乗せて供給する。
【0042】
このような方法で結晶質アルミナファイバーを含有させることによって、容易に結晶質アルミナファイバーを非晶質セラミックファイバー中に均一に分散させることができる。
【0043】
また、結晶質アルミナファイバーを含有させることと同様に、製品の取り扱い性を向上させるために、アルミナシリカ繊維を1000℃程度で予備加熱処理したものを含有させることもできる。この場合、予備加熱処理したアルミナシリカ繊維を、予め篩処理または分級処理によって、ショット(非繊維状粒子)を除去して使用することが好適である。
【0044】
使用する原料は、アルミナとシリカの2種類である。
【0045】
シリカは、天然品であり、比較的高純度の製品であるので、通常品を使用できる。
【0046】
アルミナ原料は、市販の低ソーダ品を利用すれば良い。この場合、従来の高純度品を使用する場合に比べ、コストアップにはならない。
【0047】
本発明の無機繊維製品の例をあげると、繊維を積層させたマット、マットをニードルパンチ処理したブランケット、ブランケットを積層・縫製したブロック、繊維を湿式成形したボードやスリーブ等の成形品、その他である。
【0048】
本発明において、繊維径とは、顕微鏡によって400倍に拡大したときの繊維の径を100本以上測定した平均値である。
【0049】
さらに具体的に述べると、次のとおりである。
【0050】
スライドガラス上で分散させた繊維試料を、顕微鏡で画像としてモニターに映し出し、モニター上で、繊維径を画像処理ソフトウェアを利用して計測する。
【0051】
繊維径は100本以上測定した平均値を算出し、平均値をその繊維試料の繊維径とする。
【0052】
測定の確からしさは、予め、対物測微計(標準スケール)をモニター上に映し出して、対物測微計の既知目盛の値を用いて装置を校正することにより、確認される。
【0053】
<使用する機器と用具>
1)繊維試料の前処理
スライドガラス
スポイト
分散剤(エタノール、グリセリンまたは流動パラフィン)
薬さじ
乳鉢
2)測定
CCDカメラ(白黒)
顕微鏡(CCDカメラがセットされている)
市販の画像処理装置(ソフトウェア含む)
モニター
対物測微計(標準ガラススケール)
<繊維試料の前処理>
・測定する繊維試料5gを乳鉢にて細かく切断する。
【0054】
・切断した繊維試料を薬さじで少量採取し、スライドガラスにのせる。
【0055】
・分散剤として、エタノール、グリセリンまたは流動パラフィンをスポイトにて測定試料に数滴滴下する。
【0056】
・スライドガラス上で繊維と分散剤をよく混合する。
【0057】
・繊維と分散剤を混合したペーストを別のスライドガラスに滴下し、薄く塗布する。
【0058】
<測定>
・スライドガラスを顕微鏡にセットする。(倍率400倍)
・画像処理装置とモニターの電源を入れ、繊維試料をモニターに映し出す。
【0059】
・モニターに映し出された繊維の直径にピントを合わせる。
【0060】
・ピントを合わせた繊維の、直径方向の端部(直径の縁)の濃さ(モニター上のドットの濃さ)と同じ濃さを、ソフトウェアで別途用意してある白黒256階調の濃さから選択する。(しきい値の決定)
・前記選択(しきい値の決定)により、モニター上で測定対象繊維が認識されて決定され、ソフトウェアによって繊維径が自動計測される。
【0061】
・測定は100本以上行い、その平均値をその繊維試料の繊維径とする。
【0062】
<校正>
・校正は予め、繊維試料の測定前に行う。
【0063】
・市販の、予め校正された対物測微計(標準ガラススケール)を顕微鏡にセットする。
【0064】
・対物測微計の目盛をモニター上に映し出す。
【0065】
・ソフトウェアによって予めモニター上に枠線2本が映し出されており、この枠線を移動させることによって、モニター上に映し出された対物測微計の任意の目盛線2本に、枠線をそれぞれ1本づつ合わせる。
【0066】
・枠線を合わせた2目盛間の対物測微計の目盛値をソフトウェアに入力して、校正する。
【0067】
【実施例】
本発明の実施例について説明する。
【0068】
【表1】
Figure 2004115931
Al−SiOの2成分系非晶質セラミックファイバー用の原料を、電気 炉で溶融して、表1に示す組成の溶湯をつくり、その溶湯を出湯量500Kg/hで炉外に導きだし、ブローイング法又はスピニング法で繊維化し、ブランケットを作製した。
【0069】
さらに、Al−SiOの2成分系非晶質セラミックファイバーに、結晶 質アルミナファイバーを含有させて混紡したブランケットも、前述の方法で作製した。
【0070】
次に、ブランケット(嵩密度130kg/m、厚さ25mm)を1000℃ で15分間予備加熱処理した。予備加熱処理後、ブランケットを直径100mmの紙管に巻き取って口ール状とした。
【0071】
評価は、以下のように行った。即ち、Al−SiOの2成分系非晶質セ ラミックファイバーの化学分析値、繊維径、ショット含有量を測定し、さらに、1400℃で1ケ月間加熱した繊維の圧縮強度を測定し、繊維の表面状態をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。結晶質アルミナファイバーを含有させたブランケットの場合、混紡する前のアルミナシリカ繊維を試料として測定して、観察を行った。
【0072】
さらに、予備加熱処理したブランケットについて、巻き取る際の巻き取り性、1400℃−24時間加熱後の収縮率を測定して評価した。
【0073】
主成分であるAlとSiOの分析は、原子吸光法で行った。不純物の分 析は、ICP発光分光分析法で行った。
【0074】
繊維径の測定は、すでに説明した方法で実施した。つまり、採取した繊維を顕微鏡で400倍に拡大し、さらに顕微鏡にセットしたカメラによってモニターに映し出して、モニター上で繊維径を計測して行った。計測は100本以上行い、その平均値を採取した繊維の繊維径とした。
【0075】
ショット含有率の測定は、JIS R3311法で行った。すなわち標準ふるい(呼び寸法212μm)のふるい面上に残ったショットの量を秤量して、採取した試料中のショット含有率を算出した。
【0076】
圧縮強度の測定は、(株)島津製作所製の微小圧縮強度試験機MCTM−500を用いて、素繊維(繊維1本)について、50本を測定し、その平均値を採用した。この微小圧縮強度は、繊維状の物質を測定する場合は、その繊維の引張強度として取り扱うことができる値である。
【0077】
ブランケットの巻き取り性は、巻き取り時に、巻き取りが良好であったブランケットの取り扱い性を「良」とし、巻き取りが不可であったブランケットを「不良」として評価した。
【0078】
ブランケットの収縮率は、JIS R3311法に準じて、電気炉を用いて行い、温度および時間を1400℃および24時間とし、長手方向と厚さ方向について測定した。
【0079】
実施例1は、アルミナ53重量%の組成で、繊維径が2.5μmのブランケットである。1000℃での予備加熱処理後の、ブランケットの取り扱い性は、良好であった。繊維中の不純物であるNa、K、Feについては、NaとKの合計量が500ppm以下、Feが300ppm以下であった。1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維の状態が微細な結晶のままであって、良好であった。繊維の強度低下はほとんど起こっていない。又、長手方向の収縮率は1400℃の使用に際し、十分に小さな値である。
【0080】
図1は、実施例1に対応した1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維のSEM写真である。図1の写真から明らかな通り、繊維は微細な結晶からなっており、そのため強度も強く、素繊維の圧縮強度は、1180MPaであった。
【0081】
実施例2は、アルミナ53重量%組成で、繊維径が4.5μmの繊維で、これに結晶質アルミナファイバーを3重量%含有させたブランケットである。結晶質アルミナファイバーを含有しているので予備加熱処理後のブランケットの巻き取り性は良好であったが、アルミナシリカ繊維のNaとKの合計量が500ppmより大きく、Feが300ppmより大きいため、1400℃−1ヶ月間加熱後のアルミナシリカ繊維は結晶が成長している。又、実施例1と同様、長手方向の収縮率は十分に小さく、結晶質アルミナファイバーを含まない実施例1、比較例2に比べ、厚さ方向の収縮率が小さい。
【0082】
実施例3は、アルミナ54重量%組成で、繊維径は2.6μmの繊維で、これに結晶質アルミナファイバーを7重量%添加したブランケットである。結晶質アルミナファイバーを含有しているので、予備加熱処理後のブランケットの巻き取り性は良好であった。さらに不純物が少ないため、1400℃−1ヶ月間加熱後のアルミナシリカ繊維の状態が良好である。又、実施例1と同様、長手方向の収縮率は十分に小さく、結晶質アルミナファイバーを含まない実施例1、比較例2に比べ、厚さ方向の収縮率が小さい。
【0083】
実施例4は、アルミナ54.5重量%組成で、繊維径が30μmの繊維である。巻き取り性は、良好であるが、不純物を多く含むため、1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維は結晶が成長している。
【0084】
実施例5は、アルミナ58重量%組成で、繊維径が3.5μmの繊維である。実施例4と同様に、巻き取り性は、良好であるが、不純物を多く含むため、1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維は結晶が成長している。
【0085】
比較例1は、アルミナ49重量%組成で、繊維径が3.0μmの繊維である。巻き取り性は良好であるが、収縮率が実施例1〜5に比べ劣る。また、不純物を多く含むため、1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維は結晶が成長している。
【0086】
比較例2は、アルミナ53重量%組成で、繊維径が1.9μmの繊維である。繊維径が小さいため、巻き取り性が悪く、ロール状にした際、巻き割れが著しかった。不純物を多く含むため、1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維は結晶が成長して、強度低下しており、素繊維の圧縮強度は590MPaであった。
【0087】
図2は、比較例2に対応した1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維のSEM写真である。
【0088】
比較例3は、アルミナ63重量%組成で、繊維径が3.4μmの繊維である。アルミナが60重量%を超えているため、予備加熱処理によるムライトの晶出量が多すぎて、比較例2と同様に、巻き取り牲が悪い。さらに、不純物を多く含むため、1400℃−1ヶ月間加熱後の繊維は結晶が成長している。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度の高価な原料を使用することなく、安価で、耐熱性の高い、かつ、取り扱い性に優れた無機繊維製品を提供できる。
【0090】
また、本発明によれば、結晶質アルミナファイバーを含有させて混紡する際、少ない含有量で、取り扱い性が良好で、かつ、厚さ方向の収縮率をの小さい無機繊維製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による繊維の一例のSEM写真である。図1の右下の直線長さは2μmを表す。
【図2】比較例2による繊維の一例のSEM写真である。図2の右下の直線長さは2μmを表す。

Claims (3)

  1. Alが50〜60重量%で、残部がSiOで、1000 ℃程度の熱処理によりムライト微結晶を析出させた無機繊維からなり、それらの無機繊維の繊維径が2.5μm以上であることを特徴とする無機繊維製品。
  2. Na及びKの合計量が500ppm以下、Feが300ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機繊維製品。
  3. 請求項1または2に記載の無機繊維に、結晶質アルミナファイバーを9重量%以下含有させたことを特徴とする無機繊維製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011093732A (ja) * 2009-10-28 2011-05-12 Itm Co Ltd 無機繊維ブロック

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