JP2004115495A - チロシナーゼ活性阻害剤 - Google Patents

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並木 満夫
Yukimichi Koizumi
小泉 幸道
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Abstract

【課題】毒性が全くなく、安全性に優れ、チロシナーゼ活性の高いチロシナーゼ活性阻害剤及びそれを配合した外用剤の提供。
【解決手段】セサミノールを有効成分として含むチロシナーゼ活性阻害剤及びセサミノールを有効成分として配合した外用剤。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チロシナーゼ活性阻害剤及びそれを配合した外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの肌の黒化、シミ、そばかすなどの生成の原因は、ホルモンの分泌異常または紫外線の刺激などにより増加または活性化したメラノサイト中でチロシナーゼによって、チロシンからメラニンが生成し、それが皮膚組織に放出され、沈着するために生ずるとされる。そのため、生成するメラミンを阻止することを目的として、チロシナーゼの活性を阻害する物質を用いる手段が考えられ、例えばアスコルビン酸、ハイドロキノン、コウジ酸または植物からの抽出物が使用または示唆されている。また、食品の変色の1つの原因も、チロシンからメラニンが生成することによるとされる。
【0003】
これら従来のチロシナーゼ活性阻害物質は、安全性、活性の強さ、安定性、匂い、色などの点で問題があり、新しいチロシナーゼ活性阻害剤が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明によれば、毒性が全くなく、安全性に優れ、チロシナーゼ活性の高いチロシナーゼ活性阻害剤及びそれを配合した外用剤が提供される。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セサミノールを有効成分として含むチロシナーゼ活性阻害剤及びそれを配合した外用剤に関する。
【0006】
本発明で使用されるセサミノールは、ゴマの種子中のゴマリグナンの1つである。ゴマの種子は、世界で数千年の歴史を有する食品であり、しかもその栄養学的な価値は古くから認められてきている。そして、最近、その機能的な有効性について科学的な研究がなされ、種子の中に含まれているゴマ特有の成分であるゴマリグナン類について、興味のある独特な機能性が見いだされてきている。ゴマリグナン類として主なものは、セサミン、セサモリン、セサミノールなどを挙げることができる。セサミノールは、配糖体として多く存在し、またセサモリンから転移反応により生成する。
【0007】
ヒトの体内に産生される活性酸素は、その量が過剰になると、ヒトに対して有害となり、例えば老化、発癌、糖尿病、アルツハイマー病などを生じさせるといわれている。その活性酸素をおさえるために、抗酸化作用を有する物質を摂取する必要があり、有効な抗酸化物質を見いだす努力がなされている。ゴマリグナンは、この抗酸化効果を有し、特にセサミノールがその効果が強い。
【0008】
セサミノールは、モノフェノールリグナンで、ゴマの種子に遊離のものは微量であるが、配糖体として多く存在している(例えば、400mg/100g)。その物理化学的性質として、分子式はC2018、分子量は370、融点は130−131℃、[α]は+27.8、UV dmax(nm)は238、295である。
【0009】
セサミノールを得るには、ゴマの種子を原料として用い、種々の方法で採取できる。
【0010】
ゴマ種子そのものから採取するには、例えば、ゴマ種子を粉砕し、有機溶媒例えば酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メタノール、エタノール、好ましくはアセトンにより抽出し、抽出物を分別手段、例えばカラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、再結晶、蒸留など、好ましくはシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィによって、目的とするセサミノールを得る。
【0011】
また、ゴマの種子から有機溶媒例えばヘキサンによる抽出や圧搾などによって得られたゴマ油からも採取できる。ゴマの種子そのものでは、前述のように、目的とするセサミノールの含量は低いが、焙煎しないゴマ油(ゴマサラダ油)を酸性白土の存在下で加熱すると、油中のセサモリンがセサミノールに転換し、セサミノールの量が、油100gあたり0.9mgから油100gあたり約80mgに増加するので、このような処理を施したものを用いるのが好ましい。
【0012】
これら以外に、ゴマの種子を脱脂したゴマの脱脂粕から、セサミノール配糖体をアルコール−水などで抽出し、遊離型にしたのち、カラムクロマトグラフィなどを使用して分離精製し、目的物を得ることもできる。
【0013】
得られたセサミノールは、以下の実施例に示されるように、優れたチロシナーゼ活性阻害を有する。使用するセサミノールは、純粋なものでも、少量のセサミンを含んでいるものでも使用できる。使用にあたっては、セサミノールを固体または液体の形で用いることができる。そして、チロシナーゼ活性阻害剤として、液状、粉末状、顆粒状、錠剤など任意の剤形を使用することができる。製剤化にあたっては、必要に応じ、任意の助剤を使用することができ、他のチロシナーゼ活性阻害剤と混合して製剤とすることもできる。
【0014】
本発明のチロシナーゼ活性阻害剤は、化粧品(例えば化粧水、乳液、クリームなど)、外用の医薬部外品または医薬品に配合できる。また、メラニンの生成による変色を起こす食品に、変色防止のために、添加物または表面処理に使用できる。
【0015】
本発明のチロシナーゼ活性阻害剤を含む化粧品には、種々の助剤を配合することができる。例えば、収れん剤例えばクエン酸、酒石酸、乳酸またはそれらの塩、塩化アルミニウムなど;殺菌・抗菌剤例えば安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルなど;美白剤例えばアスコルビン酸、コウジ酸など;紫外線吸収剤例えばβ−イソプロピルフラノン誘導体、テトラヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸など;保湿剤例えばセリン、グリシン、コラーゲンなど;細胞ふ活剤例えばリボフラビン、パントテン酸など;消炎・抗アレルギー剤例えばアズレン、アラントインなど;抗酸化・活性酸素消去剤例えばジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなど、そして香料、着色料などを挙げることができる。
【0016】
本発明のチロシナーゼ活性阻害剤を配合した外用剤を製造するには、製造工程の任意の段階で本発明のチロシナーゼ活性阻害剤を添加する。本発明のチロシナーゼ活性阻害剤は、約0.001−3重量%、好ましくは約0.01−1重量%の量で使用される。
【0017】
なお、ゴマリグナン中のセサミンは、以下の実施例に示されるように、チロシナーゼ活性阻害を実質的に有しない。
本発明のチロシナーゼ活性阻害剤は、従来から広く用いられてきたゴマから採取されるので、毒性を本質的に有しない。また、安定性に優れ、匂い及び色も殆どない。
以下に実施例を示す。
【0018】
【実施例】
実施例 1
中国産白ゴマ圧搾油から抽出分離した粗結晶状ゴマリグナンを、95%エタノールを使用して、加温溶解、冷却結晶分離の操作を繰り返し、初めに結晶状に析出するセサミンを分別し、セサモリンを主として含む粗結晶状リグナン(セサモリン88.0重量%、セサミン11.4重量%)を得た。
【0019】
得られた生成物12.7gをアセトニトリル100mLに溶解し、酸性白土10gを加え、80℃で撹拌しつつ60分間反応させた。反応終了後、酸性白土を分別し、溶媒を留去して、生成物約9.2gを得た。生成物中のセサミノールは、HPLCにより約66%であり、変換率は約54%であった。
【0020】
この生成物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィにより、n−ヘキサン:酢酸エチルの10:0から5:5、さらに0:10までの勾配で溶出し、主に7:3のフラクションから得られる白色結晶状の生成物約5.6gを得た。HPLCにより、生成物は、セサミノール約90重量%、セサミン約3.5重量%、セサモール約2重量%以下を含んだ。この生成物を試料として用いた。
【0021】
なお、コントロールとして用いたセサミンは、上記ゴマ圧搾油から抽出分離したリグナンを分別結晶化して得られた粗セサミンを、シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル系)により精製した結晶(融点122℃)を用いた。
【0022】
チロシナーゼ活性阻害
試料を50%エタノール水溶液で、0.03%(最終濃度0.01%)に希釈したものを試験に用い、対照に対する阻害率を指標として評価した。陽性対照として用いたグラブリジンを、0.00025%(最終濃度0.000083%)に希釈して使用した。
【0023】
チロシナーゼ活性阻害試験は、以下のようにして行った。マックルベイン緩衝液(pH6.8)1.8mLに、0.3mg/mL濃度のチロシン溶液1mLと試料溶液0.1mLを加え、37℃で10分間の予備保温を行った。これに、1mg/mL濃度のチロシナーゼ(シグマ社製)0.1mLを添加し、37℃で15分間加温した後、分光光度計を使用して、波長475nmで吸光度(A)を測定した。一方、チロシナーゼの代わりに緩衝液0.1mLを添加したものの吸光度(B)、試料溶液の代わりに緩衝液0.1mLを添加したものの吸光度(C)、さらに試料溶液とチロシナーゼの代わりに緩衝液0.2mLを加えたものの吸光度(D)をそれぞれ測定して、以下の式に従い抑制率(%)を算出した。
抑制率(%)=[1−(A−B)/(C−D)]×100
【0024】
本試料のチロシナーゼ活性阻害作用を、セサミン及びグラブリジンのそれらとともに示す。
Figure 2004115495
【0025】
即ち、本試料のチロシナーゼ活性阻害作用は、最終試料濃度0.01%で、100%の抑制を示し、IC50植は、<0.01%であり、効果は高い。一方、セサミンについては、効果は全く認められなかった。
【0026】
細胞におけるメラニン生成抑制
B16メラノーマ細胞を、2×10個/穴で12穴プレートにまき、24時間後、各試料化合物(1、3、10、30、100μg/mL)を10μg/mL含むテオフィリン含有培地に交換した。72時間培養し、次に細胞を10%TCA、エタノール/ジエチルエーテル(1/1)で処理した。次に、10%ジメチルスルホキシドを含む1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液に溶解後のOD475値を測定してメラニン量とした。その後、細胞数を測定し、細胞あたりのメラニン生成の抑制率(%)を求めた。
【0027】
Figure 2004115495
【0028】
細胞あたりのメラニン生成抑制のIC50%は、4.5μg/mLであり、効果は高い。
【0029】
また、B16メラノーマ細胞生存率は以下の通りである。
Figure 2004115495
【0030】
細胞生存率は、10μg/mLを越えた濃度で減少した。
【0031】
実施例 2
精製水80重量部に、1、3−ブチレングリコール6重量部、グリセリン4重量部を加え、室温で溶解した。一方、エタノール10重量部に、実施例1の生成物0.1重量部、オレイルアルコール0.1重量部、POE(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル0.5重量部、POE(15)ラウリルアルコールエーテル0.5重量部、香料適量を添加した。得られたエタノール溶液を初めの水溶液に加え、混合した。得られた混合物を濾過して、化粧水を得た。
【0032】
実施例 3
実施例2の化粧水を用いて、美白効果を調べた。コントロールとして、実施例1の生成物を含まない他は、実施例2で使用した成分を含むものを用いた。テストは、40代の女性からなる1群20名のパネラー2群を選び、3月間にわたり、1日2回、洗顔後に適量の実施例2の化粧水及びコントロールを顔面に塗布した。そして、テストの終了時に、下記の基準で効果を判定した。A:シミ、そばかすが実質的に目立たなくなった。B:シミ、そばかすがあまり目立たなくなった。C:変わらない。
【0033】
Figure 2004115495

Claims (2)

  1. セサミノールを有効成分として含むチロシナーゼ活性阻害剤。
  2. セサミノールを有効成分として配合した外用剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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