JP2004113093A - 冠動脈攣縮のリスク診断方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下の工程を含んでなる方法により冠動脈攣縮のリスク診断を行う。
(i)冠動脈攣縮との関連が認められた4個の遺伝子多型、又は5個の遺伝子多型より選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(ii)前記工程によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び
(iii)決定された遺伝子型から冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求める工程。
【選択図】 図11
Description
【産業上の利用分野】
本発明は冠動脈攣縮に関連する遺伝子を利用した検出方法に関する。詳しくは冠動脈攣縮に関連する複数の遺伝子の多型を利用した検出方法及び該方法に用いられるキットに関する。冠動脈攣縮を発症するリスクを求めることに本発明を利用できる。
【0002】
【従来の技術】
冠動脈攣縮は異型狭心症、心筋梗塞および心突然死の病因に重要な役割を有している。カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム)や亜硝酸剤が冠動脈攣縮に有効であることが知られているが、冠動脈攣縮の分子メカニズムは未だ不明である。冠動脈攣縮を予防するための一つの方法は冠動脈攣縮感受性遺伝子を同定することである。今までにゲノム疫学的研究により内皮型一酸化窒素合成酵素(非特許文献1、2)、アンギオテンシン変換酵素(非特許文献3)、アンギオテンシンIIタイプ1受容体(非特許文献4)、パラオキソナーゼ(非特許文献5)、ホスホリパーゼC−δ1(非特許文献6)などの遺伝子多型と冠動脈攣縮発症との関連が報告されているが、冠動脈攣縮感受性遺伝子は未だ十分に同定されていない。冠動脈攣縮の罹患頻度は白人に比較し日本人で高いことが報告されており、人種による遺伝因子の多様性が冠動脈攣縮の病態に関連する可能性がある(非特許文献1)。したがって、それぞれの人種で多型と冠動脈攣縮との関連についてのデータベースを構築することが重要である。
【0003】
【非特許文献1】
Nakayama M, Yasue H, Yoshimura M, et al. T−786→C mutation in the 5’−flanking region of the endothelial nitric oxide synthase gene is associated with coronary spasm. Circulation. 1999;99:2864−2870.
【非特許文献2】
Yoshimura M, Yasue H, Nakamura M, et al. Genetic risk factors for coronary artery spasm: significance of endothelial nitric oxide synthase gene T−786→C and missense Glu298Asp. J Invest Med. 2000;48:367−374.
【非特許文献3】
Oike Y, Hata A, Ogata Y, et al. Angiotensin converting enzyme as a genetic risk factor for coronary artery spasm: implication in the pathogenesis of myocardial infarction. J Clin Invest. 1995;96:2975−2979.
【非特許文献4】
Amant C, Hamon M, Bauters C, et al. The angiotensin II type 1 receptorgene polymorphism is associated with coronary artery vasoconstriction. J Am Coll Cardiol. 1997;29:486−490.
【非特許文献5】
Ito T, Yasue H, Yoshimura M, et al. Paraoxonase gene Gln192Arg (Q192R)polymorphism is associated with coronary artery spasm. Hum Genet. 2002;110:89−94.
【非特許文献6】
Nakano T, Osanai T, Tomita H, et al. Enhanced activity of variant phospholipase C−d1 protein (R257H) detected in patients with coronary arteryspasm. Circulation. 2002;105:2024−2029.
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、今までに幾つかの遺伝子多型と冠動脈攣縮との関連解析が行われてきた。しかし冠動脈攣縮感受性遺伝子は未だ十分同定されていない。その主な理由は多くの研究においては対象集団の大きさが十分でないことと、遺伝子多型のみならず喫煙などの環境因子が人種間で異なっていることに起因する。
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであって、その目的は高精度で予知確率の高い冠動脈攣縮の遺伝的リスクを診断する手段を提供し、冠動脈攣縮に起因する異型狭心症、心筋梗塞および心突然死の一次予防に貢献することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上の目的を達成するために数種類の公的データベースを用いて冠動脈硬化、冠動脈攣縮、高血圧、糖尿病、高脂血症などとの関連が推定される71遺伝子を抜粋し、遺伝子の機能変化との関連が予想されるものなどを中心に112多型を選択した。続いて、この71遺伝子112多型に関して心筋梗塞との関連解析を心筋梗塞445例と対照464例について行い、男性で19個、女性で18個の一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)が心筋梗塞発症と関連することを見出したが(Yamada Y, Izawa H, Ichihara S, et al. Prediction of risk of myocardial infarction from polymorphisms in candidate genes. N Engl J Med. in press.)、それらの多型群の中には冠動脈攣縮の候補遺伝子も含まれていた。そこで、これらのSNPと冠動脈攣縮との関連について大規模関連解析を行った。その結果、冠動脈形攣縮と関連するSNPを男性で4個、女性で5個同定することに成功した。更に、これらの多型を組み合わせて解析する多因子ロジスティック回帰分析のstepwise forward selection methodにより、冠動脈攣縮の最大オッズ比が男性で5.08、女性で53.37を呈し、過去に報告された関連解析の中で最大のオッズ比を示した。この結果から、これらのSNPの中から複数のSNPを選択し、各SNPを解析した結果を組み合わせて用いれば、信頼性が高く、予知確率の高い冠動脈攣縮のリスク診断が行えるとの知見が得られた。本発明は以上の知見に基づくものであって、次の構成を提供する。
[1] 以下の工程(a)を含んでなる、核酸試料の遺伝子型を検出する方法、
(a)核酸試料における、以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型。
[2] 以下の工程(b)を含んでなる、核酸試料の遺伝子型を検出する方法、
(b)核酸試料における、以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型。
[3] 以下の工程(i)〜(iii)を含んでなる、冠動脈攣縮のリスク診断方法、
(i)核酸試料における、以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型、
(ii)前記工程によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び
(iii)決定された遺伝子型から冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求める工程。
[4] 以下の工程(iv)〜(vi)を含んでなる、冠動脈攣縮のリスク診断方法、
(iv)核酸試料における、以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型、
(v)前記工程によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び
(vi)決定された遺伝子型から冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求める工程。
[5] 以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型を解析するための核酸、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型を解析するための核酸、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型を解析するための核酸、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型を解析するための核酸。
[6] 以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型を解析するための核酸、
(6)腫瘍壊死因子アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型を解析するための核酸、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型を解析するための核酸、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型を解析するための核酸、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型を解析するための核酸。
[7] 以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸が不溶性支持体に固定されてなる固定化核酸、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型を解析するための核酸、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型を解析するための核酸、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型を解析するための核酸、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型を解析するための核酸。
[8] 以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸が不溶性支持体に固定されてなる固定化核酸、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型を解析するための核酸、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型を解析するための核酸、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型を解析するための核酸、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型を解析するための核酸、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型を解析するための核酸。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の局面は核酸試料の遺伝子型を検出する方法に関し、その一態様は以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程を含むことを特徴とする。他の態様としては、以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程を含むことを特徴とする。尚、以上の工程の結果得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定することにより冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求めることができる。
(1)腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor−α)遺伝子の塩基番号−863位の多型:−863C→A(以下、「TNFα(−863C→A)多型」ともいう)
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス(NADH/NADPH oxidase p22 phox)遺伝子の塩基番号242位の多型:242C→T(以下、「p22フォックス(242C→T)多型」ともいう)
(3)アポリポプロテインE(Apolipoprotein E)遺伝子の塩基番号−219位の多型:−219G→T(以下、「ApoE(−219G→T)多型」ともいう)
(4) アポリポプロテインC−III(Apolipoprotein C−III)遺伝子の塩基番号−482位の多型:−482C→T(以下、「ApoC−III(−482C→T)多型」ともいう)
(5)ストロメライシン1(Stromelysin−1)遺伝子の塩基番号−1171位の多型:−1171/5A→6A(以下、「ストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型」ともいう)
(6)アポリポプロテインE(Apolipoprotein E)遺伝子の塩基番号4070位の多型:4070C→T(以下、「ApoE(4070C→T)多型」ともいう)
(7)インターロイキン6(Interleukin−6)遺伝子の塩基番号−634位の多型:−634C→G(以下、「IL−6(−634C→G)多型」ともいう)
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素(Endothelial nitric oxide synthase)遺伝子の塩基番号−786位の多型:−786T→C(以下、「ENOS(−786T→C)多型」ともいう)
(9)脂肪酸結合タンパク質2(Fatty acid−binding protein 2)遺伝子の塩基番号2445位の多型:2445G→A(以下、「FABP2(2445G→A)多型」ともいう)
【0007】
以上において−863C→Aのような表記は、当該塩基番号位置の多型が矢印の前又は後の塩基である二つの遺伝子型からなることを意味する。但し、−1171/5A→6Aは塩基番号−1171位から3’方向にA(アデニン)が連続して5個存在する遺伝子型と6個存在する遺伝子型からなる多型を意味する。
【0008】
各遺伝子における塩基番号は公共のデータベースであるGenBank(NCBI)に登録されている公知の配列を基準として表される。尚、配列番号1の塩基配列(Accession No. L11698:Homo sapiens tumor necrosis factor alpha gene, promoter region)において197番目の塩基が腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基に相当する。同様に配列番号2の塩基配列(Accession No. M61107:Homo sapiens cytochrome b light chain (CYBA) gene, exons 3 and 4)において684番目の塩基がNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基に相当し、配列番号3の塩基配列(Accession No. AF055343:Homo sapiens apolipoprotein E (APOE) gene, 5’ regulatory region, partial sequence)において801番目の塩基がアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基に相当し、配列番号4の塩基配列(Accession No. X13367:Human DNA for apolipoprotein C−III 5’−flank)において936番目の塩基がアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基に相当し、配列番号5の塩基配列(Accession No. U43511:Homo sapiens stromelysin−1 gene,promoter region)において698番目の塩基がストロメライシン1遺伝子の−1171位塩基に相当し、配列番号6の塩基配列(Accession No. M10065 J03053 J03054:Human apolipoprotein E (epsilon−4 allele) gene, complete cds)において4070番目の塩基がアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基に相当し、配列番号7の塩基配列(Accession No. AF372214:Homo sapiens interleukin 6 (IL6) gene, complete cds)において1111番目の塩基がインターロイキン6遺伝子の−634位塩基に相当し、配列番号8の塩基配列(Accession No. L10693:Human constitutive endothelial nitric oxide synthase gene, exon 1 and promoter region)において815番目の塩基が内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基に相当し、配列番号9の塩基配列(Accession No. M18079 J03465:Human, intestinal fatty acid binding protein gene, complete cds, and an Alu repetitive element)において2445番目の塩基が脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基に相当する。
【0009】
本発明において「多型を解析する」とは、解析対象の遺伝子多型について核酸試料がどのような遺伝子型を有するかを調べることを意味し、多型が存在する位置の塩基(塩基配列)を調べることと同義である。典型的には、TNFα(−863C→A)多型の解析を例に採れば、核酸試料における腫瘍壊死因子αの遺伝子型がCC(−863位塩基が両アレル共にCのホモ接合体)、CA(−863位塩基がCのアレルとAのアレルとのヘテロ接合体)、及びAA(−863位塩基が両アレル共にAのホモ接合体)の中のいずれであるかを調べることを意味する。
【0010】
上記の(1)〜(4)の多型は、後述の実施例で示されるように、日本人男性を対象とした解析において冠動脈攣縮の遺伝的リスクの判定に利用することが特に有効と認められた多型である。従ってこれらの多型を解析対象とすることは、被験者として男性(特に日本人男性)を採用するときに、より高精度で予知確率の高い診断を可能とする。
【0011】
同様に、上記の(5)〜(9)の多型は、後述の実施例で示されるように、日本人女性を対象とした解析において冠動脈攣縮の遺伝的リスクの判定に利用することが特に有効と認められた多型である。従ってこれらの多型を解析対象とすることは、被験者として女性(特に日本人女性)を採用するときに、より高精度で予知確率の高い診断を可能とする。
【0012】
ここで、原則的には解析する多型の数の増加に比例して核酸試料の遺伝子型がより細かく分類され、これによって一層予知確率の高い冠動脈攣縮の遺伝的リスクの診断を行うことができる。かかる見地から、上記の(1)〜(4)の多型の中でより多くの多型を解析して遺伝子型を検出することが好ましい。従って、(1)〜(4)のすべての多型を解析することが最も好ましい。三つ以下の多型を組み合わせて遺伝子型の検出を行う場合には、後述の実施例で示されるオッズ比の高い多型を優先的に選択して用いることが好ましい。例えば三つの多型を組み合わせて用いるのであれば、オッズ比が上位である三つの多型、即ち(2)、(3)、及び(4)を選択することが好ましい。同様に例えば二つの多型を組み合わせて用いるのであれば(3)及び(4)を選択することが好ましい。
【0013】
(5)〜(9)の多型から選択される二つ以上の多型を解析する場合も同様に、これらすべての多型、即ち五つの多型を解析することが最も好ましい。四つ以下の多型を組み合わせて遺伝子型の検出を行う場合には、後述の実施例で示されるオッズ比の高い多型を優先的に選択して用いることが好ましい。例えば四つの多型を組み合わせて用いるのであれば、オッズ比が上位である四つの多型、即ち(5)、(6)、(7)、及び(8)を選択することが好ましい。同様に例えば三つの多型を組み合わせて用いるのであれば(5)、(6)、及び(7)を選択することが好ましい。同様に例えば二つの多型を組み合わせて用いるのであれば(5)及び(7)を選択することが好ましい。
【0014】
各遺伝子多型を解析する方法は特に限定されるものではなく例えば、アリル特異的プライマー(及びプローブ)を用い、PCR法による増幅、及び増幅産物の多型を蛍光又は発光によって解析する方法や、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR−RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR−SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita,M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766−2770(1989)等)、PCR−SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR−SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature, 324, 163−166(1986)等)、又はTaqMan−PCR法(Livak, KJ, Genet Anal,14,143(1999),Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol.,34,2933(1996))、Invader法(Lyamichev V et al., Nat Biotechnol,17,292(1999))、プライマー伸長法を用いたMALDI−TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP, Genome Res 7,378(1997))、RCA(rolling cycle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19,225(1998))、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077(1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern,E., J. Mol. Biol. 98, 503−517(1975))等、公知の方法を採用できる。さらに、解析対象の多型部分を直接シークエンスすることにより解析してもよい。尚、これらの方法を任意に組み合わせて多型解析を行ってもよい。
【0015】
核酸試料が少量の場合には、検出感度ないし精度の面からPCR法を利用した方法(例えばPCR−RFLP法)により解析することが好ましい。また、PCR法又はPCR法を応用した方法などの遺伝子増幅法により核酸試料を予め増幅(核酸試料の一部領域の増幅を含む)した後、上記いずれかの解析方法を適用することもできる。一方、多数の核酸試料を解析する場合には、アリル特異的PCR法、アリル特異的ハイブリダイゼーション法、TaqMan−PCR法、Invader法、プライマー伸長法を用いたMALDI−TOF/MS(matrix)法、RCA(rolling cycle amplification)法、又はDNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法等、多数の検体を比較的短時間で解析することが可能な解析方法を用いることが特に好ましい。
【0016】
以上の方法では、各方法に応じたプライマーやプローブ等の核酸(本発明において、「多型解析用核酸」ともいう)が使用される。多型解析用核酸の例としては、解析対象の多型を含む遺伝子において当該多型部位を含む一定領域(部分DNA領域)に相補的な配列を有する核酸を挙げることができる。また、解析対象の多型を含む遺伝子において当該多型部位を含む一定領域(部分DNA領域)に相補的な配列を有し、当該多型部分を含むDNAフラグメントを特異的に増幅できるように設計された核酸(プライマー)を挙げることができる。このような核酸としては、例えば腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位の多型が解析対象の場合には−863位の塩基がC(シトシン)である腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−863位の塩基がA(アデニン)である腫瘍壊死因子α遺伝子の3932位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸が該当する。
【0017】
多型解析用核酸の他の具体例としては、解析対象の多型部位がいずれかの遺伝子型である場合にのみ当該多型部位を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットを挙げることができる。より具体的には解析対象の多型部位を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、多型部位がいずれかの遺伝子型であるアンチセンス鎖の当該多型部位を含む部分DNA領域に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなる核酸セットを例示することができる。このような核酸セットとしては、腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位の多型が解析対象の場合には腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−863位塩基がC(シトシン)である腫瘍壊死因子α遺伝子のアンチセンス鎖において−863位塩基を含む部分DNA領域に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなる核酸セット、又は−863位塩基がA(アデニン)である腫瘍壊死因子α遺伝子のアンチセンス鎖において−863位塩基を含む部分DNA領域に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなる核酸セットが該当する。ここで、増幅される部分DNA領域の長さはその検出に適した範囲で適宜設定され例えば50bp〜200bp、好ましくは80bp〜150bpである。より具体的には例えばTNFα(−863C→A)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。尚、以下の配列の下線部は多型に対応する部分を表す。また、配列中のNはA、T、C、及びGのいずれかであることを意味する。
【0018】
アンチセンスプライマー
【0019】
同様に、p22フォックス(242C→T)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0020】
同様に、ApoE(−219G→T)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0021】
同様に、ApoC−III(−482C→T)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0022】
同様に、ストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0023】
同様に、ApoE(4070C→T)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0024】
同様に、IL−6(−634C→G)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0025】
同様に、ENOS(−786T→C)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0026】
同様にFABP2(2445G→A)多型解析用の核酸プライマーとして次の配列を有するものを例示できる。
【0027】
一方、プローブの具体例として以下のものを挙げることができる。
ApoC−III(−482C→T)多型解析用プローブとして
【0028】
FABP2(2445G→A)多型解析用プローブとして
【0029】
以上の核酸プライマー、核酸プローブは単なる一例であって、核酸プライマーであれば目的の増幅反応を支障なく行える限度において、他方核酸プローブであれば目的のハイブリダイゼーション反応を支障なく行える限度において一部の塩基配列に改変が施されたものであってもよい。ここでの「一部の改変」とは、塩基の一部が欠失、置換、挿入及び/又は付加されていることを意味する。改変にかかる塩基数は例えば1〜7個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは、1〜3個である。尚、このような改変は、原則として多型部位に対応する塩基以外の部分において行われる。ただし、解析対象の多型がストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型の場合には、多型部位に対応する塩基の一部を改変して得られる核酸をプライマー又はプローブとして用いることも可能である。
【0030】
多型解析用核酸(プローブ、プライマー)には、解析方法に応じて適宜DNA断片又はRNA断片が用いられる。多型解析用核酸の塩基長はそれぞれの機能が発揮される長さであればよく、プライマーとして用いられる場合の塩基長の例としては10〜50bp程度、好ましくは15〜40bp程度、更に好ましくは15〜30bp程度である。
尚、プライマーとして用いられる場合には増幅対象に特異的にハイブリダイズし、目的のDNAフラグメントを増幅することができる限り鋳型となる配列に対して多少のミスマッチがあってもよい。プローブの場合も同様に、検出対象の配列と特異的なハイブリダイズが行える限り、検出対象の配列に対して多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個である。
多型解析用核酸(プライマー、プローブ)はホスホジエステル法など公知の方法によって合成することができる。尚、多型解析用核酸の設計、合成等に関しては成書(例えばMolecular Cloning,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)を参考にすることができる。
【0031】
本発明における多型解析用核酸を予め標識物質で標識しておくことができる。このような標識化核酸を用いることにより例えば増幅産物の標識量を指標として多型の解析を行うことができる。また、多型を構成する各遺伝子型の遺伝子における部分DNA領域をそれぞれ特異的に増幅するように設計された2種類のプライマーを互いに異なる標識物質で標識しておけば、増幅産物から検出される標識物質及び標識量によって核酸試料の遺伝子型を判別できる。このような標識化プライマーを用いた検出方法の具体例としては、多型を構成する各遺伝子型のセンス鎖にそれぞれ特異的にハイブリダイズする2種類の核酸プライマー(アリル特異的センスプライマー)をフルオレセインイソチオシアネートとテキサスレッドでそれぞれ標識し、これら標識化プライマーとアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとを用いて多型部位を含む部分DNA領域を増幅し、得られた増幅産物における各蛍光物質の標識量を測定して多型を検出する方法を挙げることができる。尚、ここでのアンチセンスプライマーを例えばビオチンで標識しておけば、ビオチンとアビジンとの特異的な結合を利用して増幅産物の分離を行うことができる。
【0032】
多型解析用核酸の標識に用いられる標識物質としては32Pなどの放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、テキサスレッドなどの蛍光物質を例示でき、標識方法としてはアルカリフォスファターゼ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いた5’末端標識法、T4 DNAポリメラーゼやKlenow断片を用いた3’末端標識法、ニックトランスレーション法、ランダムプライマー法(Molecular Cloning,Third Edition,Chapter 9,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)などを例示できる。
【0033】
以上の多型解析用核酸を不溶性支持体に固定化した状態で用いることもできる。固定化に使用する不溶性支持体をチップ状、ビーズ状などに加工しておけば、これら固定化核酸を用いて多型の解析をより簡便に行うことができる。
【0034】
核酸試料は、被験者の血液、皮膚細胞、粘膜細胞、毛髪等から公知の抽出方法、精製方法を用いて調製することができる。多型解析対象の遺伝子を含むものであれば、任意の長さのゲノムDNAを核酸試料として用いることができる。また、必ずしも解析対象の遺伝子のすべてが一の核酸上に存在する核酸試料を用いる必要はない。即ち、本発明の核酸試料としては、解析対象の遺伝子のすべてが一の核酸上に存在しているもの、解析対象の遺伝子が二以上の核酸上に分かれて存在しているもののいずれをも用いることができる。尚、核酸試料において解析対象の遺伝子が完全な状態(即ち、遺伝子の全長が存在する状態)でなくても、少なくとも解析される多型部位が存在している限りにおいて断片的、部分的な状態であってもよい。
【0035】
各遺伝子多型の解析は遺伝子多型ごとに、又は複数若しくは全部を同時に行う。前者の場合としては例えば、被験者から得た核酸試料を解析対象の多型の数に合わせて分注し、各多型の解析を個別に行う。後者の場合としては例えばDNAチップまたはマイクロアレイによって行うことができる。尚、ここでいう同時とは解析過程のすべての操作が同時に行われることのみを意味するのではなく、一部の操作(例えば核酸増幅操作、プローブのハイブリダイズ、又は検出)が同時に行われる場合も含む。
【0036】
解析対象の遺伝子の転写産物であるmRNAを利用して各遺伝子の多型を解析することもできる。例えば被験者の血液、尿等から解析対象である遺伝子のmRNAを抽出、精製した後、ノーザンブロット法(Molecular Cloning, Third Edition,7.42,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、ドットブロット法(Molecular Cloning, Third Edition,7.46,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、RT−PCR法(Molecular Cloning, Third Edition,8.46,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、DNAチップ(DNAアレイ)を用いた方法などを実行することにより、mRNAを出発材料として多型解析を行うことができる。
【0037】
さらに、上記の多型の中でアミノ酸の変化を伴うものについては、解析対象の遺伝子の発現産物を用いて多型解析を行うこともできる。この場合、多型部位に対応するアミノ酸を含んでいる限り、部分タンパク質、部分ペプチドであっても解析用試料として用いることができる。
【0038】
このような遺伝子の発現産物を用いて解析する方法としては、多型部位のアミノ酸を直接分析する方法、又は立体構造の変化を利用して免疫学的に分析する方法などが挙げられる。前者としては、周知のアミノ酸配列分析法(エドマン法を利用した方法)を用いることができる。後者としては、多型を構成するいずれかの遺伝子型を有する遺伝子の発現産物に特異的な結合活性を有するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いた、ELISA法(酵素結合免疫吸着定量法)、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、免疫拡散法等などを用いることができる。
【0039】
以上説明した本発明の検出方法を実行することにより得られる多型情報を、冠動脈攣縮の遺伝的リスクの診断に利用することができる。即ち、本発明は以上の検出方法によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び決定された核酸試料の遺伝子型から遺伝的リスクを求める工程を含んでなる、冠動脈攣縮のリスク診断方法も提供する。ここでの遺伝子型の決定は、典型的には、検出対象の多型に関して核酸試料の両アレルがいずれの遺伝子型をそれぞれ有するかを決定することである。TNFα(−863C→A)多型が検出対象である場合を例に採れば、典型的には核酸試料における腫瘍壊死因子αの遺伝子型がCC(−863位塩基が両アレル共にCのホモ接合体)、CA(−863位塩基がCのアレルとAのアレルとのヘテロ接合体)、及びAA(−863位塩基が両アレル共にAのホモ接合体)の中のいずれであるかを決定することである。
【0040】
後述の実施例で得られた結果を考慮すれば、高精度かつ予知確率の高い冠動脈攣縮の遺伝的リスクの診断を可能とするために、例えばTNFα(−863C→A)多型であれば核酸試料の遺伝子型がAAであるか、それともCA又はCCのいずれかであるかが決定される。同様にp22フォックス(242C→T)多型であればTT又はCTのいずれかであるか、それともCCであるか、ApoE(−219G→T)多型であればTTであるか、それともGT又はGGのいずれかであるか、ApoC−III(−482C→T)多型であればTT又はCTのいずれかであるか、それともCCであるか、ストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型であれば6A/6A又は5A/6Aのいずれかであるか、それとも5A/5Aであるか、ApoE(4070C→T)多型であればTT又はCTのいずれかであるか、それともCCであるか、IL−6(−634C→G)多型であればGGであるか、それともCG又はCCのいずれかであるか、ENOS(−786T→C)多型であればCC又はTCのいずれかであるか、それともTTであるか、FABP2(2445G→A)多型であればAAであるか、それともGA又はGGのいずれかであるかが決定される。
【0041】
冠動脈攣縮の遺伝的リスクを診断することにより、将来的に冠動脈攣縮を罹患するおそれの程度(発症し易さ)、即ち発症リスク(発症脆弱性)が予測され、また遺伝子型という客観的指標に基づいて冠動脈攣縮の認定や病状の把握を行うことが可能となる。換言すれば、本発明の診断方法によって冠動脈攣縮の発症リスクの評価、冠動脈攣縮に罹患していることの認定、又は症状の把握を行うことができる。中でも発症リスクの評価を行えることは臨床上極めて有意義である。発症リスクを事前に知ることは冠動脈攣縮の一次予防に貢献し、適切な予防措置を講じることを可能とするからである。
本発明の診断方法によって得られる情報は、適切な治療法の選択や、予後の改善、患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上、又は発症リスクの低減などに利用することができる。
【0042】
本発明の診断方法を実行することにより、冠動脈攣縮の発症リスク等をモニターすることができる。このようなモニターの結果、ある外的因子(環境因子、薬剤の投与など)と発症リスク等の増加との間に相関関係が認められれば、当該外的因子を危険因子と認定し、この情報を基に発症リスク等の低減を図ることが可能と考えられる。
【0043】
本発明で得られる冠動脈攣縮の発症に関連する遺伝情報は冠動脈攣縮の治療(予防的処置を含む)に利用され得る。例えば本発明の診断方法を実施した結果、解析対象の多型が冠動脈攣縮の発症リスクを高める遺伝子型であった場合に、発症リスクの低い遺伝子型を有する遺伝子を生体内に導入して発現させれば、当該遺伝子が発現することによって症状の軽減、発症の抑制、発症リスクの軽減などを期待できる。発症リスクの高い遺伝子型を有する遺伝子のmRNAに対するアンチセンス鎖を導入し、当該mRNAの発現を抑制する方法によっても、同様の治療効果が期待される。
【0044】
遺伝子又はアンチセンス鎖の導入は例えば、遺伝子導入用プラスミド又はウイルスベクターを用いた方法、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161−7165(1984))、超音波マイクロバブル(Lawrie, A., et al. Gene Therapy 7, 2023−2027 (2000))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413−7417(1984))、マイクロインジェクション(Graessmann,M. & Graessmann,A., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366−370(1976))等の方法により行うことができる。これらの方法を利用して所望の遺伝子などを生体に対して直接的に導入(in vivo法)又は間接的に導入(ex vivo法)することができる。
【0045】
本発明の第2の局面は、上述した本発明の検出方法又は診断方法に使用されるキット(遺伝子型検出用キット、又は冠動脈攣縮診断用キット)を提供する。かかるキットには上記の(1)〜(4)の多型からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析するための核酸(多型解析用核酸)が含まれる。他の態様としては上記の(5)〜(9)の多型からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析するための核酸(多型解析用核酸)を含んでキットが構築される。
多型解析用核酸は、それが適用される解析方法(上述したアリル特異的核酸等を用いたPCR法を利用する方法、PCR−RFLP法、PCR−SSCP、TaqMan−PCR法、Invader法等)において、解析対象の多型部分を含むDNA領域又はそれに対応するmRNAを特異的に増幅できるもの(プライマー)又は特異的に検出できるもの(プローブ)として設計される。以下に本発明において提供されるキットの具体例を示す。
【0046】
以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)−863位塩基がCである腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−863位塩基がAである腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、
(2)242位塩基がCであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は242位塩基がTであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、
(3)−219位塩基がGであるアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−219位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、及び
(4)−482位塩基がCであるアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−482位塩基がTであるアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸。
以上では、(1)〜(4)からなるグループから二つ以上の核酸を選択してキットを構成しているが、(1)〜(4)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸を選択してキットを構成してもよい。例えば(2)〜(4)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸)より二つ以上の核酸を選択してキットを構成することができる。
【0047】
以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)−1171位から3’方向に連続して5個のAが存在するストロメライシン1遺伝子の該配列部分を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−1171位から3’方向に連続して6個のAが存在するストロメライシン1遺伝子の該配列部分を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、
(6)4070位塩基がCであるアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は4070位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、
(7)−634位塩基がCであるインターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−634位塩基がGであるインターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、
(8)−786位塩基がTである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は−786位塩基がCである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、及び
(9)2445位塩基がGである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸、又は2445位塩基がAである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域に相補的な配列を有する核酸。以上では、(5)〜(9)からなるグループから二つ以上の核酸を選択してキットを構成しているが、(5)〜(9)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸を選択してキットを構成してもよい。例えば(5)〜(8)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位4位までの多型を解析するための核酸)より二つ以上の核酸を選択してキットを構成したり、(5)〜(7)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸)より二つ以上の核酸を選択してキットを構成することができる。
【0048】
以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)核酸試料中の腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基がCである場合にのみ、該腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中の腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基がAである場合にのみ、該腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、
(2)核酸試料中のNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基がCである場合にのみ、該NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基がTである場合にのみ、該NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、
(3)核酸試料中のアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基がGである場合にのみ、該アポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基がTである場合にのみ、該アポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、及び
(4)核酸試料中のアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基がCである場合にのみ、該アポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基がTである場合にのみ、該アポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット。
以上では、(1)〜(4)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(1)〜(4)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(2)〜(4)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0049】
以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)核酸試料中のストロメライシン1遺伝子において−1171位から3’方向にAが5個連続して存在する場合にのみ、ストロメライシン1遺伝子の該配列部分を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のストロメライシン1遺伝子において−1171位から3’方向にAが6個連続して存在する場合にのみ、該ストロメライシン1遺伝子の該配列部分を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、
(6)核酸試料中のアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基がCである場合にのみ、該アポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基がTである場合にのみ、該アポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、
(7)核酸試料中のインターロイキン6遺伝子の−634位塩基がCである場合にのみ、該インターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中のインターロイキン6遺伝子の−634位塩基がGである場合にのみ、該インターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、
(8)核酸試料中の内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基がTである場合にのみ、該内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中の内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基がCである場合にのみ、該内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、及び
(9)核酸試料中の脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基がGである場合にのみ、該脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット、又は核酸試料中の脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基がAである場合にのみ、該脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セット。
以上では、(5)〜(9)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(5)〜(9)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(5)〜(8)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位4位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成したり、(5)〜(7)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0050】
以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−863位塩基がCである腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマー及び/又は−863位塩基がAである腫瘍壊死因子α遺伝子において−863位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、腫瘍壊死因子α遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、からなる核酸セット、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、242位塩基がCであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子において242位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマー及び/又は242位塩基がTであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子において242位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、からなる核酸セット、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−219位塩基がGであるアポリポプロテインE遺伝子において−219位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は−219位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子において−219位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、アポリポプロテインE遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−482位塩基がCであるアポリポプロテインC−III遺伝子において−482位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は−482位塩基がTであるアポリポプロテインC−III遺伝子において−482位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、アポリポプロテインC−III遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット。
以上では、(1)〜(4)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(1)〜(4)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(2)〜(4)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0051】
以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)ストロメライシン1遺伝子の−1171位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−1171位から3’方向にAが5個連続して存在するストロメライシン1遺伝子において該配列部分を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は−1171位から3’方向にAが6個連続して存在するストロメライシン1遺伝子において該配列部分を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、ストロメライシン1遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、4070位塩基がCであるアポリポプロテインE遺伝子において4070位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は4070位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子において4070位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、アポリポプロテインE遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット、
(7)インターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−634位塩基がCであるインターロイキン6遺伝子において−634位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は−634位塩基がGであるインターロイキン6遺伝子において−634位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、インターロイキン6遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、−786位塩基がTである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子において−786位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は−786位塩基がCである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子において−786位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、2445位塩基がGである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子において2445位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー及び/又は2445位塩基がAである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子において2445位塩基を含む部分DNA領域、に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の一部領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット。
以上では、(5)〜(9)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(5)〜(9)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(5)〜(8)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位4位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成したり、(5)〜(7)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0052】
以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)−863位塩基がCである腫瘍壊死因子α遺伝子のセンス鎖において−863位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、−863位塩基がAである腫瘍壊死因子α遺伝子のセンス鎖において−863位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及び腫瘍壊死因子α遺伝子のアンチセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されて腫瘍壊死因子α遺伝子の−863位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(2)242位塩基がCであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子のセンス鎖において242位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、242位塩基がTであるNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子のセンス鎖において242位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及びNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子のアンチセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてNADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の242位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(3)−219位塩基がGであるアポリポプロテインE遺伝子のアンチセンス鎖において−219位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、−219位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子のアンチセンス鎖において−219位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及びアポリポプロテインE遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてアポリポプロテインE遺伝子の−219位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(4)−482位がCであるアポリポプロテインC−III遺伝子のアンチセンス鎖において−482位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズする第1核酸と、−482位がTであるアポリポプロテインC−III遺伝子のアンチセンス鎖において−482位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズする第2核酸と、アポリポプロテインC−III遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてアポリポプロテインC−III遺伝子の−482位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、−482位がCであるアポリポプロテインC−III遺伝子を鋳型として前記第1核酸及び前記第3核酸を用いて増幅される核酸に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第4核酸と、及び−482位がTであるアポリポプロテインC−III遺伝子を鋳型として前記第2核酸及び前記第3核酸を用いて増幅される核酸に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第5核酸と、からなる核酸セット。
以上では、(1)〜(4)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(1)〜(4)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(2)〜(4)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0053】
以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸セットを含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)−1171位から3’方向にAが5個連続して存在するストロメライシン1遺伝子のアンチセンス鎖において該塩基部分を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、−1171位塩基から3’方向にAが6個連続して存在するストロメライシン1遺伝子のアンチセンス鎖において該塩基部分を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及びストロメライシン1遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてストロメライシン1遺伝子の−1171位塩基部分を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(6)4070位塩基がCであるアポリポプロテインE遺伝子のアンチセンス鎖において4070位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、4070位塩基がTであるアポリポプロテインE遺伝子のアンチセンス鎖において4070位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及びアポリポプロテインE遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてアポリポプロテインE遺伝子の4070位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(7)−634位塩基がCであるインターロイキン6遺伝子のアンチセンス鎖において−634位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、−634位塩基がGであるインターロイキン6遺伝子のアンチセンス鎖において−634位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及びインターロイキン6遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されてインターロイキン6遺伝子の−634位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、
(8)−786位塩基がTである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子のアンチセンス鎖において−786位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第1核酸と、−786位塩基がCである内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子のアンチセンス鎖において−786位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第2核酸と、及び内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されて内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の−786位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、からなる核酸セット、及び
(9)2445位がGである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子のアンチセンス鎖において2445位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズする第1核酸と、2445位がAである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子のアンチセンス鎖において2445位塩基を含む部分領域、に対して特異的にハイブリダイズする第2核酸と、脂肪酸結合タンパク質2遺伝子のセンス鎖の一部領域に対して特異的にハイブリダイズし且つ前記第1核酸又は前記第2核酸とともに使用されて脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の2445位塩基を含む部分DNA領域を特異的に増幅することが可能な第3核酸と、2445位がGである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子を鋳型として前記第1核酸及び前記第3核酸を用いて増幅される核酸に対して特異的にハイブリダイズし且つ第1の標識物質で標識された第4核酸と、及び2445位がAである脂肪酸結合タンパク質2遺伝子を鋳型として前記第2核酸及び前記第3核酸を用いて増幅される核酸に対して特異的にハイブリダイズし且つ第2の標識物質で標識された第5核酸と、からなる核酸セット。
以上では、(5)〜(9)からなるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成しているが、(5)〜(9)の中から二つ以上を任意に選択してグループとし、かかるグループから二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成してもよい。例えば(5)〜(8)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位4位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成したり、(5)〜(7)からなるグループ(後述の実施例においてオッズ比が上位3位までの多型を解析するための核酸セット)より二つ以上の核酸セットを選択してキットを構成することができる。
【0054】
以上の各キットにおいては、キットの使用方法に応じた一又は二以上の試薬(バッファー、反応用試薬、検出用試薬など)などを組み合わせてもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0055】
【実施例】
<実施例1> 遺伝子多型の選択
PubMed[National Center for Biological Information (NCBI)], Online Mendelian inheritance in Men (NCBI), Single Nucleotide Polymorphism (NCBI)などの数種類の公的データベースを用いて、今までに報告された遺伝子の中から血管生物学、血小板・白血球生物学、凝固線溶系、脂質・糖・その他の代謝因子などの総合的側面から冠動脈硬化、冠動脈攣縮、高血圧、糖尿病、高脂血症などとの関連が推定される71遺伝子を抜粋した。さらにこれらの遺伝子に存在する多型の中でプロモーター領域やエクソンに存在するもの、あるいはスプライスドナー部位やアクセプター部位に位置し、遺伝子産物の機能変化との関連が予想されるものを中心に112多型を選択した(図1及び図2)。
【0056】
<実施例2> 遺伝子多型の決定
対象は1994年7月から2001年12月の間に参加15施設を受診(または入院)した日本人2188例(男性1215例、女性973例)である。冠動脈攣縮593例(男性453例、女性140例)は、全例冠動脈造影と左室造影を行っており、心電図のST変化を伴う冠動脈攣縮が自発的に生じるか、またはエルゴノビンかアセチルコリンの冠動脈内注入により誘発されることを血管造影で確認した。
対照は1595例(男性762例、女性833例)で、参加施設を受診し冠動脈疾患の従来の危険因子、即ち喫煙(1日10本以上)、肥満(body mass index > 26 kg/m2)、高血圧(収縮期血圧 > 140 mmHgまたは拡張期血圧 > 90 mmHg、あるいはその両方)、糖尿病(空腹時血糖 > 126 mg/dLまたはヘモグロビンA1c > 6.5%、あるいはその両方)、高脂血症(血清総コレステロール > 220 mg/dL)、高尿酸血症(男性では血清尿酸 > 7.7 mg/dL、女性では血清尿酸 > 5.5 mg/dL)の少なくとも一つを有するが冠動脈疾患あるいは冠動脈攣縮を有しない症例である。これらの対照は安静時心電図が正常であり、運動負荷試験でも心筋虚血性変化は認められなかった。
心臓カテーテル検査は次のように行った。すべての投薬は冠動脈造影の24−48時間前に中止した。冠動脈攣縮の誘発は既報の方法(Nakayama M, Yasue H, Yoshimura M, et al. T−786→C mutation in the 5’−flanking region of the endothelial nitric oxide synthase gene is associated with coronary spasm. Circulation. 1999;99:2864−2870.、Yoshimura M, Yasue H, Nakamura M, et al.Genetic risk factors for coronary artery spasm: significance of endothelial nitric oxide synthase gene T−786→C and missense Glu298Asp. J Invest Med. 2000;48:367−374.)に従い、一部変更して行った。概説すると、左および右冠動脈造影を行った後、アセチルコリンを50 mgと100 mg の2回に分けて左冠動脈内 に注入し、冠動脈造影をそれぞれの注入の1分後に行った。次にアセチルコリン50 mgを右冠動脈内に注入し、冠動脈造影を再度行った。冠動脈攣縮は胸痛と心電図のST変化を伴う冠動脈の完全または部分閉塞、または高度の血管収縮と定義した。最後に、硝酸イソソルビド1mgを冠動脈内に注入し、左および右冠動脈造影を多方面から行った。全症例において冠動脈の狭窄は25%以下であった。
【0057】
それぞれの対象から静脈血7 mLを50 mmol/L EDTA−2Naを含むチューブに採血し、ゲノムDNAをDNA抽出キット(Qiagen, Chatsworth, CA)を用いて抽出した。一塩基多型の遺伝子型の決定は蛍光・発光法によるアリル特異的プライマー・プローブ測定システム(東洋紡ジーンアナリシス、敦賀、日本)により行った(図3)。多型部位を含むDNA断片は5’末端にfluorescein isothiocyanate(FITC)またはTexas red(TxR)で標識した2種類のアリル特異的センス(またはアンチセンス)プライマーと5’末端をビオチンで標識したアンチセンス(またはセンス)プライマーを用いてpolymerase chain reaction(PCR)により増幅した。また別法として、多型部位を含むDNA断片は2種類のアリル特異的センス(またはアンチセンス)プライマーと5’末端をビオチンで標識したアンチセンス(またはセンス)プライマーを用いて、またはセンスプライマーと5’末端をビオチンで標識したアンチセンスプライマーを用いてPCRにより増幅した。反応溶液(25 mL) には20 ngのDNA、5 pmolの各プライマー、0.2 mmol/Lの各デオキシヌクレオシド三リン酸、1−4mmol/Lの塩化マグネシウム、1 UのDNAポリメラーゼ(rTaq or KODplus; 東洋紡、大阪、日本)を含み、それぞれのDNAポリメラーゼ緩衝液を用いた。増幅プロトコールは初期変性が95℃で5分、35−45サイクルで変性が95℃で30秒、 アニーリングが55−67.5℃で30秒、伸展が72℃で30秒、そして最終伸展が72℃で2分とした。
蛍光法による遺伝子型の決定では、増幅したDNAを96穴プレートの各ウェルでストレプトアビジン結合磁気ビーズを含む溶液中で室温インキュベートした。このプレートを磁気スタンド上に置き、各ウェルから上清を採取し、0.01 M NaOHを含む96穴プレートの各ウェルに移した後、マイクロプレートリーダーによりFITCは励起・蛍光波長が485と538 nm、TxRは励起・蛍光波長が584と612 nmで蛍光を測定した。また発光法による遺伝子型の決定では、増幅したDNA を0.3 M NaOHで変性させ、96穴プレートの各ウェルの底面に固定したいずれかのアリル特異的補足プローブと35−40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション緩衝液で37℃、30分間ハイブリダイゼーションを行った。ウェルを十分に洗浄した後、アルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジンを各ウェルに加え、プレートを37℃、15分間振騰した。ウェルを再度洗浄し、0.8 mM 2−(4−iodophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium (monosodium salt)と0.4 mM5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphate p−toluidine saltを含む溶液を加えた後、450 nmでの吸光度を測定した。
【0058】
本方法による遺伝子型決定の精度を確認するために、50人のDNAサンプルを無作為に選びPCR−制限酵素断片長多型法またはPCR産物の直接塩基配列決定法を行った。いずれのサンプルにおいてもアリル特異的プライマー・プローブ測定システムにより決定された遺伝子型はPCR−制限酵素断片長多型法またはDNA塩基配列決定法によって決定されたものと同一であった。
【0059】
以下の関連解析における統計解析は次のように行った。臨床データは冠動脈攣縮例と対照との間でunpaired Student’s t test またはMann−Whitney U testを用いて比較した。定性的データはchi−square testで検定した。アリル頻度は gene counting methodにより推定し、Hardy−Weinberg平衡から逸脱しているかどうかはchi−square testによって検定した。本発明者らは危険因子を補正した多項ロジスティック回帰分析を行った。冠動脈攣縮を従属因子とし、年齢、body mass index(BMI)、喫煙状況 (0=非喫煙,1=喫煙)、代謝因子(0=高血圧・糖尿病・高コレステロール血症・高尿酸血症の経歴なし、1=経歴あり)、各多型の遺伝子型を独立因子とした。それぞれの遺伝子型はdominant(優性)、recessive(劣性)、additive(付加)遺伝モデルで解析し、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。組み合わせ遺伝子型解析では、ロジスティック回帰分析のstepwise forward selection methodによりそれぞれの遺伝子型についてのオッズ比を算出した。
【0060】
<実施例3> 冠動脈攣縮に関連する多型の選択、及び冠動脈攣縮リスク診断法の開発
本発明者らは先の報告において71候補遺伝子112多型と心筋梗塞との関連解析を男性451例(心筋梗塞219例、対照232例)と女性458例(心筋梗塞226例、対照232例)について行った(Yamada Y, Izawa H, Ichihara S, et al. Prediction of risk of myocardial infarction from polymorphisms in candidatre genes. N Engl J Med. in press.)。この研究により男性で19個、女性で18個の一塩基多型が心筋梗塞発症と関連することを見出したが、それらの多型群の中には冠動脈攣縮の候補遺伝子も含まれていた(図1、図2、図4を参照)。本実施例ではこれらの一塩基多型と冠動脈攣縮との関連について2188例の大規模関連解析を行った。
【0061】
検討した全対象2188例(男性1215例 、女性973例)の背景データを図5に示す。男性では、喫煙と高コレステロール血症の頻度が対照に比較し冠動脈攣縮例で有意に高く、年齢は対照群に比較し冠動脈攣縮例で有意に低かった。女性では、喫煙、高血圧と高尿酸血症の頻度が対照に比較し冠動脈攣縮例で有意に高く、年齢は対照群に比較し冠動脈攣縮例で有意に低かった。
【0062】
男性19多型、女性18多型と冠動脈攣縮との関連解析において、年齢、BMI、および喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症の頻度を補正した多項ロジスティック回帰分析により男性で4 個、女性で5個の多型が冠動脈攣縮発症と有意な関連を示した(dominantまたはrecessive遺伝モデルのいずれかがP<0.05)(図6)。これらの多型の遺伝子型分布を図7に示す。
【0063】
本発明者らは多項ロジスティック回帰分析のstepwise forward selection methodを行った(図8)。本法では、図6に示したそれぞれの多型の冠動脈攣縮との関連におけるP値(より低いP値)に基づいてdominantまたはrecessive遺伝モデルを採用した。これらの遺伝子の染色体上の遺伝子座を図8に示す。Stepwise forward selection methodにより算出した組み合わせ遺伝子型による冠動脈攣縮発症のオッズ比を、男性は図9と図11(A)に、女性は図10と図11(B)に示す。男性では、4個の多型の組み合わせ遺伝子型(TNFα(−863C→A)多型、p22フォックス(242C→T)多型、ApoC−III(−482C→T)多型、及びApoE(−219G→T)多型)により、最大オッズ比が5.08となった(図9、図11(A))。女性では、5個の多型の組み合わせ遺伝子型(ストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型、IL−6(−634C→G)多型、FABP2(2445G→A)多型、ApoE(4070C→T)多型、及びENOS(−786T→C)多型)により、最大のオッズ比が53.37となった(図10、図11(B))。
【0064】
以上のように、多項ロジスティック回帰分析により男性で4個、女性で5個の一塩基多型が冠動脈攣縮と関連した。即ち、本発明者らは男性で19個、女性で18個の一塩基多型と冠動脈攣縮との関連について2188例の大規模関連解析を行い、冠動脈攣縮発症と関連する多型を男性で4個、女性で5個同定した。さらに、多項ロジスティック回帰分析のstepwise forward selection methodにより男性では最大オッズ比5.08、女性では最大オッズ比53.37を呈する組み合わせ遺伝子型を用いた冠動脈攣縮の遺伝子リスク診断法を開発した。
【0065】
本実施例の結果においては、喫煙頻度が対照に比較し冠動脈攣縮例で著明に高く、既報の結果に一致する(Sugiishi M, Takatsu F. Cigarette smoking is a major risk factor for coronary spasm. Circulation. 1993;87:76−79.)。冠動脈攣縮の主要な原因は、血管内皮細胞の機能障害(Yasue H, Horio Y, Nakamura N, et al. Induction of coronary artery spasm by acetylcholine in patients with variant angina: possible role of the parasympathetic nervous system in the pathogenesis of coronary artery spasm. Circulation. 1986;74:955−963.、Vanhoutte PM, Shimokawa H. Endotheliun−derived relaxing factor and coronary vasospasm. Circulation. 1989;80:1−9.)と血管平滑筋の過剰な収縮反応であり(Egashira K, Inou T, Yamada A, et al. Preserved endothelium−dependent vasodilation at the vasospastic site in patients with variant angina. J Clin Invest. 1992;89:1047−1052.)、その結果として血管の収縮弛緩調節の破綻をきたす。さらに、血管作動性物質は活性化された血小板から放出される(Vanhoutte PM, Shimokawa H. Endotheliun−derived relaxing factor and coronary vasospasm. Circulation. 1989;80:1−9.)。基礎病変として動脈硬化性変化が存在することも重要である(Shimokawa H, Tomoike H, NabeyamaS, et al. Coronary artery spasm induced in atherosclerotic miniature swine. Science. 1983;221:560−562.)。本発明者らは血管生物学、血小板・白血球生物学、線溶系、脂質・糖・その他の代謝因子などの包括的視点に基づいて男性19個、女性18個の一塩基多型と冠動脈攣縮との関連について検討した。実際、冠動脈攣縮と関連した遺伝子群はその病態において多彩な役割を有していた。すなわち、血管生物学(NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス、及び内皮型一酸化窒素合成酵素)、血管の炎症(腫瘍壊死因子α、及びインターロイキン6)、脂質代謝(アポリポプロテインC−III、アポリポプロテインE、及び脂肪酸結合タンパク質2)、基質代謝(ストロメライシン1)などである。冠動脈攣縮と関連した9個の多型のうち、内皮型一酸化窒素合成酵素の−786T→Cの多型を除く他の8多型については冠動脈攣縮との関連は今までに報告されていない。これらの多型の中で、ストロメライシン1遺伝子の−1171/5A→6Aの多型が最大のオッズ比を呈した。この多型は、今までに冠動脈疾患(Ye S, Watts GF, Mandalia S, et al.Preliminary report: genetic variation in the human stromelysin promoteris associated with progression of coronary atherosclerosis. Br Heart J.1995;73:209−15.)やバルーン拡張術後再狭窄との関連が報告されており(Humphries S, Bauters C, Meirhaeghe A, et al. The 5A6A polymorphism in the promoter of the stromelysin−1 (MMP3) gene as a risk factor for restenosis.Eur Heart J. 2002;23:721−725.)、特に後者の病態においては、慢性血管リモデリング(血管収縮)が重要であることが知られている。本発明者らの遺伝子リスク診断システムは冠動脈攣縮発症の最大オッズ比が男性で5.08、女性で53.37を呈し、とりわけ女性においては、今までに報告された大規模関連解析の中で最大のオッズ比を示した。
【0066】
本実施例で検討した多型のいくつかは、その近傍に存在する冠動脈攣縮と真に関連する遺伝子の多型と連鎖不平衡にある可能性がある。しかしながら、本発明者らの結果は男性で4個、女性で5個の遺伝子が日本人の冠動脈攣縮感受性遺伝子座であることを示した。さらに、これらの遺伝子多型の組み合わせ遺伝子型は冠動脈攣縮の遺伝的リスク診断に有用であると考えられる。
【0067】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば冠動脈攣縮に関連する遺伝子多型が解析され、そして核酸試料の遺伝子型が検出される。この遺伝子型の検出によって得られる多型情報を用いることにより、高精度で予知確率の高い冠動脈攣縮のリスク診断を行うことができる。したがって、本発明は冠動脈攣縮の発症リスクを事前に知る有効な手段となり、冠動脈攣縮に起因する異型狭心症、心筋梗塞および心突然死の一次予防への貢献が期待できる。また、本発明によれば冠動脈攣縮の診断に有用な補助的情報が得られ、より適切な治療を可能とし予後の改善などを図ることができる。更に本発明は冠動脈攣縮の発症メカニズムを解明する上での有効な情報を提供することから、冠動脈攣縮の予防法の確立にとって極めて重要な一手段ともなる。
【0069】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例におけるスクリーニング関連解析において検討した112遺伝子多型をまとめた表である。
【図2】図2は同じく実施例におけるスクリーニング関連解析において検討した112遺伝子多型をまとめた表である。
【図3】図3は実施例において遺伝子型を決定するために使用されるプライマー(上から順に配列番号19、20、21、16、17、18、25、26、27、31、32、33、34、35、36、28、29、30、13、14、15、22、23、24、10、11、12)、プローブ(上から順に配列番号37、38、39、40)及びその他の条件をまとめた表である。図中、FITCはフルオレセインイソチオシアネートを、TxRはテキサスレッドを、Biotinはビオチンをそれぞれ表す。
【図4】図4は実施例の関連解析において検討した一塩基多型をまとめた表である。
【図5】図5は実施例における関連解析の対象とした男性1215例及び女性973例の背景データをまとめた表である。年齢及びBody mass indexの各データは平均±標準偏差で表される。表中、*1はP<0.0001を、*2はP<0.05を、*3はP<0.001を、*4はP<0.01をそれぞれ表す。
【図6】図6は関連解析の対象とした遺伝子多型と多項ロジスティック回帰分析の結果をまとめた表である。各SNPにおいて低い方のP値は太字で表される。
【図7】図7は冠動脈攣縮と関連のある遺伝子多型について遺伝子型の分布を示した図である。
【図8】図8は冠動脈攣縮と関連のある遺伝子多型における多項ロジスティック回帰分析のstep forward selection methodを行った結果を示す表である。
【図9】図9は男性における4個の組合せ遺伝子多型を用いた冠動脈攣縮の遺伝的リスク診断を行った結果を示す表である。
【図10】図10は女性における4個の組合せ遺伝子多型を用いた冠動脈攣縮の遺伝的リスク診断を行った結果を示す表である。
【図11】図11は冠動脈攣縮のリスク診断における累積オッズ比と一塩基多型の数の関連を表したグラフである。(A)は男性、(B)は女性における関連を示す。(A)における各SNPは、SNP1: TNFα(−863C→A)多型、SNP2:p22フォックス(242C→T)多型、SNP3:ApoC−III(−482C→T)多型、SNP4:ApoE(−219G→T)多型である。(B)における各SNPは、SNP1:ストロメライシン1(−1171/5A→6A)多型、SNP2:IL−6(−634C→G)多型、SNP3:FABP2 (2445G→A)多型、SNP4:ApoE(4070C→T)多型、SNP5:ENOS(−786T→C)多型である。
Claims (8)
- 以下の工程(a)を含んでなる、核酸試料の遺伝子型を検出する方法、
(a)核酸試料における、以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型。 - 以下の工程(b)を含んでなる、核酸試料の遺伝子型を検出する方法、
(b)核酸試料における、以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型。 - 以下の工程(i)〜(iii)を含んでなる、冠動脈攣縮のリスク診断方法、
(i)核酸試料における、以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型、
(ii)前記工程によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び
(iii)決定された遺伝子型から冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求める工程。 - 以下の工程(iv)〜(vi)を含んでなる、冠動脈攣縮のリスク診断方法、
(iv)核酸試料における、以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の多型を解析する工程、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型、
(v)前記工程によって得られる多型情報から核酸試料の遺伝子型を決定する工程、及び
(vi)決定された遺伝子型から冠動脈攣縮の遺伝的リスクを求める工程。 - 以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型を解析するための核酸、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型を解析するための核酸、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型を解析するための核酸、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型を解析するための核酸。 - 以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸を含んでなる遺伝子型検出用キット、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型を解析するための核酸、
(6)腫瘍壊死因子アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型を解析するための核酸、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型を解析するための核酸、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型を解析するための核酸、及び
(9)脂肪酸結合タンパク質2遺伝子の塩基番号2445位の多型を解析するための核酸。 - 以下の(1)〜(4)からなるグループより選択される二つ以上の核酸が不溶性支持体に固定されてなる固定化核酸、
(1)腫瘍壊死因子α遺伝子の塩基番号−863位の多型を解析するための核酸、
(2)NADH/NADPHオキシダーゼp22フォックス遺伝子の塩基番号242位の多型を解析するための核酸、
(3)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号−219位の多型を解析するための核酸、及び
(4)アポリポプロテインC−III遺伝子の塩基番号−482位の多型を解析するための核酸。 - 以下の(5)〜(9)からなるグループより選択される二つ以上の核酸が不溶性支持体に固定されてなる固定化核酸、
(5)ストロメライシン1遺伝子の塩基番号−1171位の多型を解析するための核酸、
(6)アポリポプロテインE遺伝子の塩基番号4070位の多型を解析するための核酸、
(7)インターロイキン6遺伝子の塩基番号−634位の多型を解析するための核酸、
(8)内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子の塩基番号−786位の多型を解析するための核酸、及び
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