JP2004113002A - プロトンatpアーゼ活性低下株を用いたグルタミン酸の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来、グルタミン酸発酵は、発酵菌としてコリネバクテリウム・グルタミカムを用いビオチン制限条件下、または少量のペニシリンやノニオン系界面活性剤を添加し培養する方法が用いられている。また、オレイン酸要求変異株やグリセロール要求性変異株、リゾチーム感受性変異株を用いることでもグルタミン酸を生産することができる。本発明の課題は、さらにグルタミン酸生産効率の上昇した新規グルタミン酸生産菌を取得し、効率的なグルタミン酸の製造法を提供することである。
【解決手段】めに、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下変異株を用いることによって、グルタミン酸生産が効率化され、発酵基質の消費速度、グルタミン酸生産速度、蓄積量および収率が著しく高められた。したがって本発明によってグルタミン酸の工業的発酵生産のいっそうの効率化に寄与することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】めに、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下変異株を用いることによって、グルタミン酸生産が効率化され、発酵基質の消費速度、グルタミン酸生産速度、蓄積量および収率が著しく高められた。したがって本発明によってグルタミン酸の工業的発酵生産のいっそうの効率化に寄与することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルタミン酸生産菌、およびこれを用いてグルタミン酸を発酵法により生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の主な方法としては、発酵菌としてコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に属するコリネ型細菌を、グルコース等を炭素源とした培地で、ビオチン濃度を制限した条件で培養する方法、あるいはショ糖を大量に含む廃糖蜜を主要な炭素源とした培地で培養する手法が主に用いられる。後者の場合は、原料に著量のビオチンが、含有されるため、その濃度を制限する事はできないが、培養開始数時間後に少量のペニシリンなどの抗生物質、あるいはTween 40などのノニオン系界面活性剤の添加によってグルタミン酸を著量生産させることができる(たとえば、「発酵ハンドブック」、共立出版株式会社、2001年、p.141−p.145)。しかし、現在、全世界でのグルタミン酸生産量は年間100万トン以上といわれており、その生産の効率化は常に求められている。
【0003】
一方我々は、発酵生産効率化の研究として、主要な産業微生物の糖代謝について研究を進めており、この過程で大腸菌(Yokotaら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、 58、 2164−2167、 1994)やコリネバクテリウム・グルタミカム(Sekineら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、 57、 534−540、 2001)においてH+−ATPase活性の欠失または低下変異が発酵原料であるグルコースの代謝活性を著しく高めることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、グルタミン酸を短期間に、高収率かつ高蓄積量で生成する新規グルタミン酸生産菌を取得し、安価かつ効率的な発酵法によるグルタミン酸の製造法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、発酵法によるグルタミン酸生産において、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下変異株を用い、併せて、少量のTween40などのノニオン系界面活性剤やペニシリンなどの抗生物質、飽和脂肪酸あるいはその誘導体を添加した培地において培養することによって、 H+−ATPase活性が正常である親株に比べて、グルタミン酸生産が効率化され、発酵基質である糖質原料の消費速度、グルタミン酸生産速度、蓄積量および収率を著しく高めることを見いだした。さらにオレイン酸要求株、グリセロール要求株、リゾチーム感受性株を親株として、H+−ATPase活性低下変異株を誘導した場合にも同様な効果を認め、本発明を完成させるに至った。
【0006】
界面活性剤、ペニシリン、飽和脂肪酸添加によるグルタミン酸生産、オレイン酸要求株、グリセロール要求株、リゾチーム感受性株によるグルタミン酸生産は公知の技術であり、さらにH+−ATPase欠損株が高い糖代謝活性を示すことも公知である。しかしこの組み合わせによって高いグルタミン酸生産性を有する新たな菌株が育種できるかは容易に類推できるものではない。糖代謝活性の亢進は一般に解糖系の活性が上昇することを示唆している。これが直ちにグルタミン酸生産に反映されるか否かは、解糖系からグルタミン酸生産へ至る多数の代謝反応の複雑な制御が関与し、未だにグルタミン酸生産のメカニズムが解明されていないことを考えると、極めて予測しがたい状況にある。一般に代謝工学においてある酵素の遺伝子を操作した場合、予想通りの代謝の変化が起こらないことがかなり報告されており、今日的な問題点として盛んに議論されている所である(Emmerlingら、Metabolic Engineering、 1、 117−127、 1999)
H+−ATPase活性低下の程度は、数値によって厳密には表現できない。しかし、本活性は酸化的リン酸化に関与するため、本活性が十分低下して生理的に機能しない場合は、酢酸やコハク酸等の非発酵性基質には生育できなくなる。そこでH+−ATPase活性低下変異株が酢酸あるいはコハク酸を炭素源として生育できないことをもって、本発明において述べるところのH+−ATPase活性低下変異株であると判定することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される変異株は、H+−ATPase活性低下を有する変異株である。具体的に例示すると、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)等が挙げられる。
本発明で使用する変異株は、たとえばコリネバクテリウム・グルタミカムの野生株を親株として、通常の変異操作、および遺伝子工学的手法を用いる染色体組み換えによって得ることができる。
親株として具体的には、グルタミン酸生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム No. 2247 (ATCC14067)等が挙げられる。
【0008】
本発明でグルタミン酸を生産するために使用する培地は、炭素源、窒素源、無機塩、その他、必要に応じてアミノ酸、ビタミン、核酸などの有機微量栄養素を含有する通常の栄養培地が使用される。炭素源としては、使用する変異株の利用可能なものであればよく、たとえばブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、澱粉分解物、糖蜜などの糖類が使用される。
窒素源としてはアンモニアガス、硫酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、尿素、肉エキス等無機あるいは有機の窒素源が用いられる。有機微量元素としてはアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、さらにこれらを含有するペプトン、酵母エキス、タンパク分解物等が利用され、生育にアミノ酸、脂肪酸、グリセロールなどを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが必要である。
【0009】
培養は、好気条件で行われる。培養初期に必要に応じて界面活性剤や飽和脂肪酸、ペニシリン等を添加し、培養期間中培地のpHを微アルカリ性に保ち、温度を30〜35℃に制御しつつ24時間〜48時間振とう培養、または通気撹拌培養することによりグルタミン酸が、著量培養液中に蓄積される。
培養液からグルタミン酸を採取する方法は、公知の方法に従って行えばよく、培養液から菌体を分離除去した後、グルタミン酸塩として濃縮晶析する方法、あるいはイオン交換樹脂を用いる方法などにより採取される。
【0010】
【実施例】
以下、実施例をもとにさらに具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
【実施例1】
H+−ATPase活性低下株の取得
野生型グルタミン酸生産菌として、コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247 (ATCC14067)を用い、ネオマイシン自然耐性変異株の中からH+−ATPase活性の低下した変異株コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)を取得した。
ネオマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質への耐性とH+−ATPase活性低下変異に相関があることはいくつかの報告があり、すでに大腸菌(Kammerら、J. Bacteriol.、 111、 287−289、 1972)や乳酸菌(Yokotaら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、 59、 2004−2007、 1995)では、ネオマイシン耐性株の中にH+−ATPase活性低下変異株が見いだされていた。
そこで、H+−ATPase活性低下変異株を取得するため、まずコリネバクテリウム・グルタミカムNo.
2247株のネオマイシン自然耐性株を多数分離した。変異株の分離は、次のように行った。まず、ポリペプトン 10g/L、 酵母エキス10g/L 、 塩化ナトリウム5g/L、 グルコース5g/L(水酸化ナトリウムで、pHを 7. 0に調整)を含むM 7培地で30℃、一晩培養したコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株を、ネオマイシンを3、 4、 5μg/ml含むM 7寒天培地(寒天20g/L)に約10−7cells/plateになるように塗抹接種し、30℃で7日間培養した。ここで出現したコロニーを釣菌し、ネオマイシン自然耐性株であるコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)を得た。
【0012】
上記のようにして取得したコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株のH+−ATPase活性が低下していることの確認を行った。確認の方法は、本株の酢酸およびコハク酸非資化性を確認し、さらにATPase活性を測定した。
酢酸およびコハク酸の資化性については、H+−ATPase活性低下が、基質レベルのリン酸化によってATPを獲得できるグルコースのような炭素源には生育できるが、酢酸やコハク酸のような酸化的リン酸化でしかATPを獲得できない炭素源では生育できないことを利用してH+−ATPaseの活性低下を確認した。親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株はこれら全ての基質に生育することができる。具体的には、本株を酢酸ナトリウム27.34g/Lまたは、コハク酸2ナトリウム・6水和物44.98g/L、硫酸アンモニウム10g/L、尿素3g/L、リン酸2水素カリウム1.0g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.4g/L、硫酸鉄・7水和物0.1g/L、硫酸マンガン・5水和物8.1mg/L、チアミン塩酸塩100μg/L、ビオチン300μg/L(水酸化ナトリウムでpHを 7.3に調整)を含む最少培地に接種し、30℃で48時間培養を行い、生育の如何を判定した。
【0013】
またコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株のATPase活性を測定した。本法は、クロロホルムで透過処理した菌体を粗酵素液として用い、ATPから遊離するリン酸を硫酸酸性化でモリブデンと反応呈色させ、その波長660nmでの吸収(以下OD660)を測定することを原理とする。測定方法を以下に示す。
まず、M7培地で定常期まで培養した菌体を遠心分離により集菌し、2.5 mM 塩化マグネシウムを含む100 mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.5)で2回洗浄し、OD660が20から150となるように同緩衝液で懸濁した。この懸濁液にクロロホルムを1%(v/v)となるように加え1分間撹拌し、37℃で20分間インキュベートした。緩衝液で2回洗浄後、OD660が120から150となるように緩衝液で再懸濁し、粗酵素液とした。反応は2.5 mM Na2ATP、1 mM 塩化マグネシウム、10 μg BSA、50 μl エタノールを含むBis−Tris Propane緩衝液 (pH 6.5)550 μlに粗酵素液50 μlを添加し、37 ℃で反応した。必要に応じてH+−ATPase阻害剤であるジシクロヘキシルカルボキシジイミド(DCCD)をエタノールに溶解し、反応液に加えた。反応15分後に、0.1 N塩酸溶液の添加と同時に氷冷して反応を停止させた。反応液を遠心分離し、上清700 μlとリン酸発色液1.63 mlを加え18℃で15分間反応させ直ちにOD660を測定した。リン酸発色液は、5N硫酸、25g/Lモリブデン酸アンモニウム塩、10g/L p−メチルアミノフェノールサルフェート+30g/L硫酸水素ナトリウム、脱塩水を1:1:1:4(v/v)の割合で使用直前に混合した。活性は1分間に1nmoleのATPを加水分解する酵素量を1ユニットとし、比活性はタンパク質1mg当たりのユニット数として表示した。タンパク質の定量はバイオラッドプロテインアッセイキットによって行った。測定結果を図1に示す。
【0014】
コリネバクテリウム・グルタミカム F172−8株は、その親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株に比べ、DCCD感受性のATPase活性が低下していた。したがってコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株がH+−ATPase活性低下変異株であることが確認された。なお本株のH+−ATPase遺伝子にはγサブユニットにアミノ酸置換を含む点変異が存在することを確認している。これについての詳細な情報はすでに公表済みである(Sekineら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、 57、 534−540、 2001)。
【0015】
【実施例2】
H+−ATPase活性低下株F172−8によるグルタミン酸の生産:界面活性剤添加
コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株を用いてグルタミン酸発酵を行い、親株コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株と比較し、グルタミン酸生産能を評価した。培養方法は以下のとおりである。
【0016】
まず、コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株は、M 7寒天平板培地で、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株は、M 7寒天平板培地にネオマイシン1.0 μg/mlを加えた培地で、30 ℃、48時間培養した。それぞれ菌体1白金耳分を、ブドウ糖40 g/L、尿素4.0 g/L、リン酸2水素カリウム1.0 g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.4 g/L、硫酸鉄・7水和物0.01 g/L、硫酸マンガン・5水和物0.01 g/L、チアミン塩酸塩20μ g/L、ビオチン60 μg/L、大豆加水分解物(全窒素=35 g/L)13.84
ml、消泡剤0.02 ml (水酸化カリウムでpHを 7.0に調整)を含む前培養培地S2に接種した。コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株は、10時間、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株は、14時間、振盪培養を行った。次に、この前培養菌液を集菌し、生理食塩水で洗浄し懸濁した。この菌懸濁液を初発細胞濃度が、OD660約1.5になるように、ブドウ糖100 g/L、硫酸アンモニウム45g/L、リン酸2水素カリウム1.0 g/L、硫酸マグネシウム・7水和物1.0 g/L、硫酸鉄・7水和物0.01 g/L、硫酸マンガン・5水和物0.01 g/L、チアミン塩酸塩200 μg/L、ビオチン60 μg/L、大豆加水分解物(全窒素35 g/L)13.84
ml、消泡剤0.02 ml(水酸化カリウムでpH を8.0に調整)を含むグルタミン酸生産培地に接種し、さらにpH低下を防ぐため乾熱滅菌した炭酸カルシウムを加え、31.5 ℃、振幅8.5 cm、毎分130往復で振盪培養を行った。培養開始後、OD660が10から12になったところで、界面活性剤を添加した(親株で約5時間後、変異株で約9時間後)。界面活性剤はTween 40を用い、20 % (w/v) 溶液をフィルター滅菌し、2.0 g/Lになるように添加した。経時的に菌液を約1 ml抜き取り、一部を0.1N 塩酸で希釈し生育(OD660)の測定を行い、それ以外を遠心分離により上清を回収してマイナス20 ℃で保存し、グルタミン酸生成量、グルコースの測定サンプルとした。グルタミン酸は、L−グルタミン酸測定キット (ヤマサ) による酵素法で行った。グルコースの測定はグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを主成分とするAR−2 (和光純薬) による酵素法で行った。
【0017】
生育量は,親株であるコリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株の方が高くなっていた(図2A)。しかし、炭素源であるブドウ糖の消費速度は、変異株であるコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株の方が早かった(図2B)。培養開始36時間後において、コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株では、グルタミン酸18.5 g/Lを蓄積した(図2C)。それに対しコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株では、36時間後には29.7 g/Lのグルタミン酸を蓄積し、48時間後にはさらに増加し32.0 g/L達した。
【0018】
【実施例3】
H+−ATPase活性低下株コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8によるグルタミン酸の生産:ペニシリン添加
界面活性剤Tween 40の代わりにペニシリンG(500 U/ml)を用いた以外は実施例2と同様に培養した。培養開始36時間後において、コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株では2.44 g/Lのグルタミン酸を蓄積した。それに対しコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株では36時間後には3.78 g/Lのグルタミン酸を蓄積した。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下株によって、極めて高いグルタミン酸生産性が得られることが明らかであり、グルタミン酸の工業的発酵生産の効率化に寄与することができるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株および、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8のH+−ATPase活性をDCCD存在もしくは、非存在下で比較したもの。
【符号の説明】
DCCD +:DCCD添加区、DCCD −:DCCD非添加区
【図2】コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株および、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8の生育(図2A)、ブドウ糖消費量(図2B)、および、グルタミン酸生産量(図2C)を示した。
【符号の説明】
−■−:コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株
−●−:コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルタミン酸生産菌、およびこれを用いてグルタミン酸を発酵法により生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の主な方法としては、発酵菌としてコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に属するコリネ型細菌を、グルコース等を炭素源とした培地で、ビオチン濃度を制限した条件で培養する方法、あるいはショ糖を大量に含む廃糖蜜を主要な炭素源とした培地で培養する手法が主に用いられる。後者の場合は、原料に著量のビオチンが、含有されるため、その濃度を制限する事はできないが、培養開始数時間後に少量のペニシリンなどの抗生物質、あるいはTween 40などのノニオン系界面活性剤の添加によってグルタミン酸を著量生産させることができる(たとえば、「発酵ハンドブック」、共立出版株式会社、2001年、p.141−p.145)。しかし、現在、全世界でのグルタミン酸生産量は年間100万トン以上といわれており、その生産の効率化は常に求められている。
【0003】
一方我々は、発酵生産効率化の研究として、主要な産業微生物の糖代謝について研究を進めており、この過程で大腸菌(Yokotaら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、 58、 2164−2167、 1994)やコリネバクテリウム・グルタミカム(Sekineら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、 57、 534−540、 2001)においてH+−ATPase活性の欠失または低下変異が発酵原料であるグルコースの代謝活性を著しく高めることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、グルタミン酸を短期間に、高収率かつ高蓄積量で生成する新規グルタミン酸生産菌を取得し、安価かつ効率的な発酵法によるグルタミン酸の製造法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、発酵法によるグルタミン酸生産において、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下変異株を用い、併せて、少量のTween40などのノニオン系界面活性剤やペニシリンなどの抗生物質、飽和脂肪酸あるいはその誘導体を添加した培地において培養することによって、 H+−ATPase活性が正常である親株に比べて、グルタミン酸生産が効率化され、発酵基質である糖質原料の消費速度、グルタミン酸生産速度、蓄積量および収率を著しく高めることを見いだした。さらにオレイン酸要求株、グリセロール要求株、リゾチーム感受性株を親株として、H+−ATPase活性低下変異株を誘導した場合にも同様な効果を認め、本発明を完成させるに至った。
【0006】
界面活性剤、ペニシリン、飽和脂肪酸添加によるグルタミン酸生産、オレイン酸要求株、グリセロール要求株、リゾチーム感受性株によるグルタミン酸生産は公知の技術であり、さらにH+−ATPase欠損株が高い糖代謝活性を示すことも公知である。しかしこの組み合わせによって高いグルタミン酸生産性を有する新たな菌株が育種できるかは容易に類推できるものではない。糖代謝活性の亢進は一般に解糖系の活性が上昇することを示唆している。これが直ちにグルタミン酸生産に反映されるか否かは、解糖系からグルタミン酸生産へ至る多数の代謝反応の複雑な制御が関与し、未だにグルタミン酸生産のメカニズムが解明されていないことを考えると、極めて予測しがたい状況にある。一般に代謝工学においてある酵素の遺伝子を操作した場合、予想通りの代謝の変化が起こらないことがかなり報告されており、今日的な問題点として盛んに議論されている所である(Emmerlingら、Metabolic Engineering、 1、 117−127、 1999)
H+−ATPase活性低下の程度は、数値によって厳密には表現できない。しかし、本活性は酸化的リン酸化に関与するため、本活性が十分低下して生理的に機能しない場合は、酢酸やコハク酸等の非発酵性基質には生育できなくなる。そこでH+−ATPase活性低下変異株が酢酸あるいはコハク酸を炭素源として生育できないことをもって、本発明において述べるところのH+−ATPase活性低下変異株であると判定することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される変異株は、H+−ATPase活性低下を有する変異株である。具体的に例示すると、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)等が挙げられる。
本発明で使用する変異株は、たとえばコリネバクテリウム・グルタミカムの野生株を親株として、通常の変異操作、および遺伝子工学的手法を用いる染色体組み換えによって得ることができる。
親株として具体的には、グルタミン酸生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム No. 2247 (ATCC14067)等が挙げられる。
【0008】
本発明でグルタミン酸を生産するために使用する培地は、炭素源、窒素源、無機塩、その他、必要に応じてアミノ酸、ビタミン、核酸などの有機微量栄養素を含有する通常の栄養培地が使用される。炭素源としては、使用する変異株の利用可能なものであればよく、たとえばブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、澱粉分解物、糖蜜などの糖類が使用される。
窒素源としてはアンモニアガス、硫酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、尿素、肉エキス等無機あるいは有機の窒素源が用いられる。有機微量元素としてはアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、さらにこれらを含有するペプトン、酵母エキス、タンパク分解物等が利用され、生育にアミノ酸、脂肪酸、グリセロールなどを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが必要である。
【0009】
培養は、好気条件で行われる。培養初期に必要に応じて界面活性剤や飽和脂肪酸、ペニシリン等を添加し、培養期間中培地のpHを微アルカリ性に保ち、温度を30〜35℃に制御しつつ24時間〜48時間振とう培養、または通気撹拌培養することによりグルタミン酸が、著量培養液中に蓄積される。
培養液からグルタミン酸を採取する方法は、公知の方法に従って行えばよく、培養液から菌体を分離除去した後、グルタミン酸塩として濃縮晶析する方法、あるいはイオン交換樹脂を用いる方法などにより採取される。
【0010】
【実施例】
以下、実施例をもとにさらに具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
【実施例1】
H+−ATPase活性低下株の取得
野生型グルタミン酸生産菌として、コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247 (ATCC14067)を用い、ネオマイシン自然耐性変異株の中からH+−ATPase活性の低下した変異株コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)を取得した。
ネオマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質への耐性とH+−ATPase活性低下変異に相関があることはいくつかの報告があり、すでに大腸菌(Kammerら、J. Bacteriol.、 111、 287−289、 1972)や乳酸菌(Yokotaら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、 59、 2004−2007、 1995)では、ネオマイシン耐性株の中にH+−ATPase活性低下変異株が見いだされていた。
そこで、H+−ATPase活性低下変異株を取得するため、まずコリネバクテリウム・グルタミカムNo.
2247株のネオマイシン自然耐性株を多数分離した。変異株の分離は、次のように行った。まず、ポリペプトン 10g/L、 酵母エキス10g/L 、 塩化ナトリウム5g/L、 グルコース5g/L(水酸化ナトリウムで、pHを 7. 0に調整)を含むM 7培地で30℃、一晩培養したコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株を、ネオマイシンを3、 4、 5μg/ml含むM 7寒天培地(寒天20g/L)に約10−7cells/plateになるように塗抹接種し、30℃で7日間培養した。ここで出現したコロニーを釣菌し、ネオマイシン自然耐性株であるコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8(FERM P−19030)を得た。
【0012】
上記のようにして取得したコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株のH+−ATPase活性が低下していることの確認を行った。確認の方法は、本株の酢酸およびコハク酸非資化性を確認し、さらにATPase活性を測定した。
酢酸およびコハク酸の資化性については、H+−ATPase活性低下が、基質レベルのリン酸化によってATPを獲得できるグルコースのような炭素源には生育できるが、酢酸やコハク酸のような酸化的リン酸化でしかATPを獲得できない炭素源では生育できないことを利用してH+−ATPaseの活性低下を確認した。親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株はこれら全ての基質に生育することができる。具体的には、本株を酢酸ナトリウム27.34g/Lまたは、コハク酸2ナトリウム・6水和物44.98g/L、硫酸アンモニウム10g/L、尿素3g/L、リン酸2水素カリウム1.0g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.4g/L、硫酸鉄・7水和物0.1g/L、硫酸マンガン・5水和物8.1mg/L、チアミン塩酸塩100μg/L、ビオチン300μg/L(水酸化ナトリウムでpHを 7.3に調整)を含む最少培地に接種し、30℃で48時間培養を行い、生育の如何を判定した。
【0013】
またコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株のATPase活性を測定した。本法は、クロロホルムで透過処理した菌体を粗酵素液として用い、ATPから遊離するリン酸を硫酸酸性化でモリブデンと反応呈色させ、その波長660nmでの吸収(以下OD660)を測定することを原理とする。測定方法を以下に示す。
まず、M7培地で定常期まで培養した菌体を遠心分離により集菌し、2.5 mM 塩化マグネシウムを含む100 mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.5)で2回洗浄し、OD660が20から150となるように同緩衝液で懸濁した。この懸濁液にクロロホルムを1%(v/v)となるように加え1分間撹拌し、37℃で20分間インキュベートした。緩衝液で2回洗浄後、OD660が120から150となるように緩衝液で再懸濁し、粗酵素液とした。反応は2.5 mM Na2ATP、1 mM 塩化マグネシウム、10 μg BSA、50 μl エタノールを含むBis−Tris Propane緩衝液 (pH 6.5)550 μlに粗酵素液50 μlを添加し、37 ℃で反応した。必要に応じてH+−ATPase阻害剤であるジシクロヘキシルカルボキシジイミド(DCCD)をエタノールに溶解し、反応液に加えた。反応15分後に、0.1 N塩酸溶液の添加と同時に氷冷して反応を停止させた。反応液を遠心分離し、上清700 μlとリン酸発色液1.63 mlを加え18℃で15分間反応させ直ちにOD660を測定した。リン酸発色液は、5N硫酸、25g/Lモリブデン酸アンモニウム塩、10g/L p−メチルアミノフェノールサルフェート+30g/L硫酸水素ナトリウム、脱塩水を1:1:1:4(v/v)の割合で使用直前に混合した。活性は1分間に1nmoleのATPを加水分解する酵素量を1ユニットとし、比活性はタンパク質1mg当たりのユニット数として表示した。タンパク質の定量はバイオラッドプロテインアッセイキットによって行った。測定結果を図1に示す。
【0014】
コリネバクテリウム・グルタミカム F172−8株は、その親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株に比べ、DCCD感受性のATPase活性が低下していた。したがってコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株がH+−ATPase活性低下変異株であることが確認された。なお本株のH+−ATPase遺伝子にはγサブユニットにアミノ酸置換を含む点変異が存在することを確認している。これについての詳細な情報はすでに公表済みである(Sekineら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、 57、 534−540、 2001)。
【0015】
【実施例2】
H+−ATPase活性低下株F172−8によるグルタミン酸の生産:界面活性剤添加
コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株を用いてグルタミン酸発酵を行い、親株コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株と比較し、グルタミン酸生産能を評価した。培養方法は以下のとおりである。
【0016】
まず、コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株は、M 7寒天平板培地で、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株は、M 7寒天平板培地にネオマイシン1.0 μg/mlを加えた培地で、30 ℃、48時間培養した。それぞれ菌体1白金耳分を、ブドウ糖40 g/L、尿素4.0 g/L、リン酸2水素カリウム1.0 g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.4 g/L、硫酸鉄・7水和物0.01 g/L、硫酸マンガン・5水和物0.01 g/L、チアミン塩酸塩20μ g/L、ビオチン60 μg/L、大豆加水分解物(全窒素=35 g/L)13.84
ml、消泡剤0.02 ml (水酸化カリウムでpHを 7.0に調整)を含む前培養培地S2に接種した。コリネバクテリウム・グルタミカムNo. 2247株は、10時間、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株は、14時間、振盪培養を行った。次に、この前培養菌液を集菌し、生理食塩水で洗浄し懸濁した。この菌懸濁液を初発細胞濃度が、OD660約1.5になるように、ブドウ糖100 g/L、硫酸アンモニウム45g/L、リン酸2水素カリウム1.0 g/L、硫酸マグネシウム・7水和物1.0 g/L、硫酸鉄・7水和物0.01 g/L、硫酸マンガン・5水和物0.01 g/L、チアミン塩酸塩200 μg/L、ビオチン60 μg/L、大豆加水分解物(全窒素35 g/L)13.84
ml、消泡剤0.02 ml(水酸化カリウムでpH を8.0に調整)を含むグルタミン酸生産培地に接種し、さらにpH低下を防ぐため乾熱滅菌した炭酸カルシウムを加え、31.5 ℃、振幅8.5 cm、毎分130往復で振盪培養を行った。培養開始後、OD660が10から12になったところで、界面活性剤を添加した(親株で約5時間後、変異株で約9時間後)。界面活性剤はTween 40を用い、20 % (w/v) 溶液をフィルター滅菌し、2.0 g/Lになるように添加した。経時的に菌液を約1 ml抜き取り、一部を0.1N 塩酸で希釈し生育(OD660)の測定を行い、それ以外を遠心分離により上清を回収してマイナス20 ℃で保存し、グルタミン酸生成量、グルコースの測定サンプルとした。グルタミン酸は、L−グルタミン酸測定キット (ヤマサ) による酵素法で行った。グルコースの測定はグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを主成分とするAR−2 (和光純薬) による酵素法で行った。
【0017】
生育量は,親株であるコリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株の方が高くなっていた(図2A)。しかし、炭素源であるブドウ糖の消費速度は、変異株であるコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株の方が早かった(図2B)。培養開始36時間後において、コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株では、グルタミン酸18.5 g/Lを蓄積した(図2C)。それに対しコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株では、36時間後には29.7 g/Lのグルタミン酸を蓄積し、48時間後にはさらに増加し32.0 g/L達した。
【0018】
【実施例3】
H+−ATPase活性低下株コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8によるグルタミン酸の生産:ペニシリン添加
界面活性剤Tween 40の代わりにペニシリンG(500 U/ml)を用いた以外は実施例2と同様に培養した。培養開始36時間後において、コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株では2.44 g/Lのグルタミン酸を蓄積した。それに対しコリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株では36時間後には3.78 g/Lのグルタミン酸を蓄積した。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、コリネバクテリウム・グルタミカムのH+−ATPase活性低下株によって、極めて高いグルタミン酸生産性が得られることが明らかであり、グルタミン酸の工業的発酵生産の効率化に寄与することができるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株および、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8のH+−ATPase活性をDCCD存在もしくは、非存在下で比較したもの。
【符号の説明】
DCCD +:DCCD添加区、DCCD −:DCCD非添加区
【図2】コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株および、コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8の生育(図2A)、ブドウ糖消費量(図2B)、および、グルタミン酸生産量(図2C)を示した。
【符号の説明】
−■−:コリネバクテリウム・グルタミカム No.2247株
−●−:コリネバクテリウム・グルタミカムF172−8株
Claims (6)
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を、界面活性剤存在下で培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を、ペニシリン等の抗生物質存在下で培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を、飽和脂肪酸あるいはその誘導体存在下で培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、生育にオレイン酸を要求する変異株で、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、生育にグリセロールを要求する変異株で、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
- コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属し、リゾチーム感受性を有し、酸化的リン酸化に関与するプロトンATPアーゼ(H+−ATPase)活性が、少なくとも親株の70%以下に低下し、かつ酢酸あるいはコハク酸を唯一炭素源とする培地に生育することができない変異株を培養し、培養液中にグルタミン酸を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるグルタミン酸の製造法。
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- 2002-09-24 JP JP2002276462A patent/JP2004113002A/ja active Pending
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