JP2004110781A - タッチパネル用フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性フィルムと球状多孔質シリカを含む表面硬度化層を設けることで、反射防止効果、耐スクラッチ性、透明性、防汚性、入力耐久性に優れたタッチパネル用フィルムを提供すること。
【解決手段】熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されており、かつ該表面硬度化層表面の水滴接触角が80度以上であり、かつ該表面硬度化層の溶剤耐久指数が0.8以上であることを特徴とするタッチパネル用フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されており、かつ該表面硬度化層表面の水滴接触角が80度以上であり、かつ該表面硬度化層の溶剤耐久指数が0.8以上であることを特徴とするタッチパネル用フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タッチパネルフィルムに関し、更に詳しくは、フィルム表面の防汚性に優れ、かつ表面硬度が高く、耐摩耗性に優れると同時に、表面硬度化層と基材フィルムとの密着性が優れたタッチパネル用フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年カーナビやPDAなどの急速な普及により、ディスプレイ画面を指で触ったり、ペンで押圧するだけで入力できるタッチパネルが普及している。タッチパネルといってもその方式は抵抗膜式、静電容量方式、超音波方式、赤外線方式などがあるが、コスト面、メンテナンスの容易さから抵抗膜方式が最も多く使われている。その抵抗膜式タッチパネルは、一般的にはガラス若しくはフィルム上に透明導電層を形成し、スペーサーを介してフィルムに形成された導電層を対向配置させた構造をとる。簡単に構造を示すと、ディスプレイ/ガラス若しくはフィルム/透明導電層A/スペーサー/透明導電層B/フィルム/ハードコート層である。指やペンでハードコート側から直接押圧すれば、フィルムがその部分だけ湾曲し、ハードコート側の導電層Bが対向している導電層Aに接触し入力が図れ、押圧位置はX−Y座標として認識されコンピュータに入力される。
【0003】
このタッチパネルに於いて画面への外光の映り込みや、空気層との界面で生じる反射光が非常に問題となり画面を見難いものにしていた。また特に指で入力するタイプのタッチパネルに於いては、直接フィルム表面に指が触れるので特に表面が汚れやすく問題となっていた。
【0004】
このため基材表面に、外光の反射防止のために、(1)単層または多層の蒸着層を形成し反射防止をする方法(特許文献1参照)や、(2)シリカ等の微粒子を含有したマットコーティングを施す方法(特許文献2参照)等が知られている。
【0005】
また、防汚性を改善するためハードコート塗液中にシリコーン樹脂などをあらかじめ添加しておき、それを塗工し、硬化させる方法(特許文献3参照)や、表面硬度化層を設けた後にフッ素化合物を含む層を設ける方法(特許文献4参照)が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−122504号公報
【0007】
【特許文献2】特開平11−286083号公報
【0008】
【特許文献3】特開平10−104403号公報
【0009】
【特許文献4】特開平6−308327号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。まず反射防止性において、(1)の方法については、製造工程が複雑であり、またコストも非常に高く耐スクラッチ性も劣る。(2)の方法についてバインダーとしてハードコート樹脂を使用すれば耐スクラッチ性のある膜を形成することができるが、従来使用する微粒子は、粒子径が揃ったものは、粒子径が小さい物しかないために十分な反射防止性能を付与するためには、微粒子を多量に添加しなければならなく、従って反射防止性能が次第に向上するに従い、透過性が低下していく。また粒子径が大きいものは、粒子径が揃っておらず、かつその形状は均一性のない多角形となっていた為に、得られたフィルムを重ね合わせたときに、尖った粒子で他のフィルム表面を傷つけるのみならず、指紋、油性ペンなどの汚れが付着したときに、微粒子の隙間に汚れが付着して、拭き取ることが困難になったり、防汚性を持続させることが不可能であったり、粒子の破壊により充分な表面硬度がでず、耐スクラッチ性が不十分であるといった問題があった。
【0011】
また、防汚性においては、塗液中に樹脂を添加する方法では、初期は防汚性を発現するが、汚れの付着を繰り返すうちに防汚性が低下する問題があり、表面硬度化層の上に更に防汚層を形成する方法は、工程が多くなり、コスト高になるのみならず、機械的強度の弱いフッ素化合物を含む為に、充分な表面硬度が得られない問題があった。
【0012】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、反射防止効果、耐スクラッチ性、透明性、防汚性、入力耐久性に優れたタッチパネル用フィルムを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明のタッチパネル用フィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されており、かつ該球状多孔質シリカを含む層表面の水滴接触角が80度以上であり、かつ該表面硬度化層表面の溶剤耐久指数が0.8以上であることを特徴とするタッチパネル用フィルムである。
【0014】
また、本発明のタッチパネル用フィルムにおいては、熱可塑性フィルムが二軸配向されたポリエステルフィルムであること、表面硬度化層が活性線または熱硬化型の樹脂からなること、表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカの平均1次粒径が2.5μm以上10μm以下であること、表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカ濃度が0.1重量%以上5重量%以下であること、表面硬度化層の表面に活性線または熱硬化型のフッ素系重合体が含まれること、表面硬度化層と熱可塑性フィルムの界面付近に表面硬度化層を構成する成分と熱可塑性フィルムを構成する成分の混在層が存在することがそれぞれ好ましい態様である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のタッチパネル用フィルムは、熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層された基本構成を有している。
【0016】
本発明における熱可塑性フィルムとは、溶融押し出し可能で、かつ二軸延伸により結晶配向したフィルムが好ましい。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドなどの二軸配向フィルムであり、特にポリエステルフィルムが、透明性、寸法安定性、機械的特性、および本発明において積層する耐熱性の樹脂層との接着性などの点で好ましい。好ましいポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度がかかる好ましい範囲の場合には、寸法安定性や機械的強度が十分である。
【0017】
また、熱可塑性フィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0018】
上述したポリエステルを使用する場合には、25℃のo−クロロフェノール中で測定した極限粘度は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0019】
本発明における熱可塑性フィルムは、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が設けられた状態では二軸配向されたものである。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0020】
熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0021】
熱可塑性フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、本発明のタッチパネル用フィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。また、得られたタッチパネル用フィルムを各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明においては、基材フィルムである上記熱可塑性フィルムの少なくとも片面に球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されるが、この表面硬度化層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましく用いられる。
【0023】
活性線または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、活性線重合成分としてアクリルオリゴマーと反応性希釈剤を含むものであり、その他に必要に応じて光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤、熱重合禁止剤あるいは改質剤を含有しているものを用いてもよい。
【0024】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリル、ウレタンアクリル、エポキシアクリル、ポリエーテルアクリルなどであり、またメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。また、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や開始の助長のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましく、熱風による架橋の場合には、架橋促進のために熱重合開始剤を添加することが好ましい。これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三・金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社1981年発行、第267〜275頁、第562〜593頁を参考とすることができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができる。
【0026】
表面硬度化層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料および安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内で表面硬度化層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じて表面硬度化層の特性を改良することができる。
【0027】
これらの中で、特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる活性線または熱硬化性単量体混合物を主たる構成成分とする活性線または熱硬化物からなる表面硬度化層が、硬度、硬化性はもちろん、耐摩耗性、可撓性に優れるので好ましい。
【0028】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものをいう。)を有する単量体としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物を用いることができる。
【0029】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、重合性単量体総量に対して20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%である。
【0031】
上記単量体の使用割合が20重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で満足でない場合があり、また、その量が90重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招くことがあるので好ましくない。
【0032】
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0033】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0034】
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などを用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0035】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、単量体総量に対して10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。単量体の使用割合が80重量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる方向のため好ましくない。また、その使用割合が10重量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材ポリエステルフィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合があるので好ましくない。
【0036】
本発明における活性線または熱硬化性の樹脂組成物を硬化させる方法として、紫外線を照射する方法、または熱風による方法を用いることができ、紫外線を照射する方法を用いる場合には、前記樹脂組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。また、熱風による方法では前期樹脂組成物に熱重合開始剤を加えることが望ましい。
【0037】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0038】
光重合開始剤の使用量は重合性単量体組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0039】
また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0040】
熱重合開始剤の使用量は、熱硬化樹脂を主成分とする層を形成する組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。 本発明に用いられる活性線または熱硬化性の樹脂組成物には、製造時の低温での熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、重合性化合物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0041】
本発明に用いられる表面硬度化層を形成する活性線または熱硬化性の樹脂組成物を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロール、基材フィルムである熱可塑性フィルムとの接着を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合することが好ましい。有機溶剤を配合する好ましい範囲としては0.1重量%以上、99重量%未満、好ましくは5重量%以上、98重量%未満、より好ましくは10重量%以上、90重量%未満、更に好ましくは20重量%以上、80重量%未満である。有機溶剤の配合量が0.1重量%未満のときは、基材フィルムである熱可塑性フィルムと表面硬度化層の界面に、両層の層からなる混在相領域を形成することができず、90重量%以上の時は塗剤濃度が低くなりすぎるために、十分な表面硬度化層厚みを設けることが困難になるので好ましくない。
【0042】
本発明における球状多孔質シリカとは、二酸化珪素で構成されており、その内部に細孔と呼ばれるナノメーター単位の穴を無数に有した、球状のシリカであり、その細孔内にはポリマーを含む種々の溶媒が入ることができる特徴を有しているものである。以下に限定するわけではないが、その具体例としては、一定流量のシリカゾルをノズルから流出させつつ、ノズル内のシリカゾルに一定周波数および一定振幅の振動を与えることによって、ノズルから流出するシリカゾルを液滴化し、その液滴化によって球状となるシリカゾルをゲル化させて粒子化させて得られる様な球状多孔質シリカである。
【0043】
本発明で用いるシリカ粒子は球状でなければならない。更に真球状に近い方が好ましい。形状が真球に近いほど、機械的強度が強く、塗膜中に均一分散しやすいからである。本発明で球状とは角部ない形状をしており、更に真球度(粒子の短径/長径比)が0.8以上から1以下のもののことを言う。シリカ粒子が球状でなく、多数の角部を有した形状をしている場合は、表面の粗さが不均一になり、十分な反射防止性能がでないと同時に、表面を強く擦ったときに表面に突出した角部が欠けて粉を発生したり、角部への汚染物質の付着による防汚機能阻害や、加工工程でフィルムを巻き取ったときに、表面に突出した角部が表面硬度化層非積層面に傷を付けたりして、光学特性が低下するので好ましくない。また真球度が0.8未満では、粒子の方向により突起高さが決まるため、表面の粗さを均一にすることができないので好ましくない。
【0044】
本発明において球状多孔質シリカの平均1次粒子径は、2.5μm以上10μm以下が好ましいが、より好ましくは3μm以上8μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上6μm以下である。なぜなら、平均1次粒子径が2.5μm未満では、レイリー(Rayleigh)散乱により散乱光の波長依存性や着色がおこり、10μmより大きい場合は、平行光線の透過が大きく阻害されるために、透過像が明確に見ることができなくなるので好ましくない。
【0045】
本発明において球状多孔質シリカは表面硬度化層中に0.1重量%以上5重量%以下含まれることが好ましいが、より好ましくは0.2重量%以上4重量%未満、更に好ましくは0.3重量%以上1重量%未満である。
【0046】
表面硬度化層に含まれる粒子が0.1重量%未満では、表面硬度化層表面のシリカ粒子による隆起個数が少なすぎるために、充分な反射防止性を示さなくなるので好ましくなく、5重量%より多い場合は、平行光線の透過率が低下してしまうために、透過像が不鮮明になるので好ましくない。
【0047】
本発明において表面硬度化層表面の水滴接触角は80度以上でなければならない。より好ましくは85度以上、更に好ましくは90度以上である。水滴接触角が80度未満であると、タッチパネルに使用した場合、指紋、汚水、油性ペンなどが表面に付着したときに、ふき取りが困難になってしまうからである。なお、一般に水滴接触角を110度を超えるようにすることは困難である。
【0048】
更に本発明に置いて表面硬度化層表面の耐溶剤指数が0.8以上でなければならない。より好ましくは0.9以上である。耐溶剤指数が0.8未満であると、タッチパネル用とにおいて、繰り返し指で表面を触れているうちに、防汚性が低下してしまい、汚れが落ちにくくなるのみならず、不衛生であり、光透過性などの光学特性にも大きく影響を与えるからである。なお、一般に耐溶剤指数を1.0を超えるようにすることは困難である。
【0049】
本発明で述べる溶剤耐久指数とは、ふき取り前の表面硬度化層表面の水滴接触角をa1(度)、溶剤を十分染み込ませた綿布で荷重0.1kg/cm2の圧力で表面硬度化層表面を10往復拭き取った後の表面の水滴接触角をa2(度)としたとき、ふき取りに用いた溶剤における溶剤耐久指数=a2/a1のことを言う。溶剤としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤があげられるが、特に揮発性の高い溶剤を用いる方がふき取り後の接触角測定に置いて溶剤が正確な水滴接触角の測定の妨げにならないので好ましいので、本発明では、メチルエチルケトン(以下、MEKと略称する)を用いて、拭き取って得られた値を溶剤耐久指数とする。
【0050】
この様な大きな水滴接触角を発現させるためには、表面硬度化層表面に撥水、撥油性の高い化合物を存在させる方法がある。そのような化合物としてシリコーン系重合体、フッ素系重合体が好ましいが、中でも活性線反応型のフッ素系重合体が表面に含まれることが好ましい。更に表面硬度化層中に存在するシリコーン重合体またはフッ素系重合体は、表面硬度化層表面に偏在している構造が好ましい。この様な構造となるためには、表面硬度化層を形成する塗剤の中にシリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマーまたはフッ素系重合体を混在させ、塗布後、溶媒乾燥の熱処理工程で、表面硬度化層表面にブリードアウトさせ、そのあと必要に応じて活性線照射処理を行うことで得ることができる。このような構造は表面硬度化層を二次イオン質量分析法を用いて深さ方向にシリコン原子、またはフッ素原子の濃度分布を測定することで確認できるし、表面の水滴接触角が、シリコーン化合物、またはフッ素化合物添加前の水滴接触角よりも大きくなることからも確認することができる。
【0051】
この様にして得られるシリコーン重合体またはフッ素系重合体が表面に偏在した構造は、耐スクラッチ性が高く、シリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマーまたはフッ素系重合体フッ素化合物の少量添加で高い防汚機能を発現することができる。この様な活性線または熱反応型のシリコーン系モノマー、フッ素系モノマーとしては、片末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサン、両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンのモノマー、オリゴマー、これらを共重合したシリコーン共重合体等、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の含フッ素メタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート等の含フッ素アクリレート、3−パーフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−9−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン等のエポキサイド、エポキシアクリレート等を挙げることができる。また、これらモノマーのオリゴマーやプレポリマー等も挙げることができる。
【0052】
また、これらの活性線または熱反応型のシリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系共重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマー、フッ素系共重合体はそれ単独で添加しても良いし、これらが含まれる塗液として添加しても良い。
【0053】
本発明の表面硬度化層を形成するための塗剤に用いる有機溶剤としては、沸点が50〜250℃の有機溶剤が、塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドンなど双極性非プロトン溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。この中で、双極性非プロトン溶剤を含む溶剤を用いると、基材フィルムである熱可塑性フィルムの層と表面硬度化層の界面に、効率よく両層の成分相が混在してなる混在層領域を形成することができるので好ましい。「混在層領域」については後述する。
【0054】
本発明で述べる表面硬度化層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
【0055】
表面硬度化層を形成するための塗液の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。各々の方式には特徴があり、タッチパネル用フィルムの要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。
【0056】
特に、塗液中の有機溶剤量はできるだけ少ないことが、生産性、防爆性の観点から有利であるから、多段塗布をおこなっても良い。ここで述べる多段塗布とは、塗布装置を熱可塑性フィルムの進行方向に目的の台数並べ、各塗布装置で目標の塗布厚みになるように塗液の塗布を行う方法である。この方法で用いられる塗剤は全て同じでも良いが、1段目の塗布には、より有機溶剤が多く含まれる塗剤を用い、2段目以降は徐々に塗剤中の有機溶剤量を減らしたものを用いることが好ましい。
【0057】
本発明で述べる活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行うと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0058】
表面硬度化層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1μm〜30μmが好ましく、より好ましくは1μm〜15μmである。表面硬度化層の厚さがかかる好ましい範囲の場合には、硬化時の酸素障害はなく硬化が十分に起こり、表面硬度が十分で傷が付きにくく、一方硬化膜が脆くなることはなく、積層体を折り曲げたときにも硬化膜にクラックが入りにくい。
【0059】
また、本発明の効果が損なわれない範囲において、表面硬度化層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0060】
また、本発明のフィルムは、表面硬度化層を設けたのとは反対面に透明導電層を設けてタッチパネルに用いられる。このとき設けられる透明導電層は酸化インジュウム−スズ(ITO)や酸化アンチモン−スズ(ATO)などの無機酸化物導電層や、ポリチオフェンやポリアニリン、ポリフェニレンなどの有機導電性高分子層などがあるがこれらに限定されるされるものではない。
【0061】
なお、本発明では、片面に表面硬度化層、その反対面にこれらの透明導電層との接着性を向上させるプライマー層は、表面硬度化層を形成する塗液を塗布するときに同時にその裏面に塗布し、延伸、乾燥を行い設けても良いことは言うまでもない。
【0062】
このようにして得られるタッチパネル用フィルムの基材である熱可塑性フィルムと表面硬度化層の接着性は、T字剥離において1kg/25mm幅以上、さらには2kg/25mm幅以上となるように積層されるのが好ましい。かかる好ましい密着性とすると、各種用途に使用したときに表面硬度化層が剥離する問題が生じない。
【0063】
このような状態の積層フィルムを得るには、1軸延伸され結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、有機溶剤を含有する活性線または熱硬化型樹脂組成物を主成分とする塗液を塗布し、その後、予熱工程を経て先の方向とは直角方向に延伸され熱固定、更に活性線照射処理される製造方法において、活性線または熱硬化型樹脂濃度が95重量%以下、さらには80重量%以下、特に70重量%以下で延伸されることが好ましい。活性線または熱硬化型樹脂の濃度が95重量%を超えると基材フィルムの熱可塑性フィルムと表面硬度化層との密着性が不良となり、表面硬度化層に多数の亀裂が入り、著しく平滑性や透明性を損なうことがある。
【0064】
このようにして製造されたタッチパネル用フィルムには、前述したように混在層が存在するのが好ましい。本発明においては、その構造の確認方法として以下の方法を採用する。表面硬度化層を形成する物質がRuO4染色またはOsO4染色などが可能な場合、タッチパネル用フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影を行なう。その写真をイメージアナライザー(例えば、V10 for Windows95[登録商標] TOYOBO)にて画像解析を行なう。画像解析方法は、界面付近を中心に厚み方向2μmの一次元濃度分布を測定し、その結果において界面付近での画像濃度変化が界面付近厚み方向100nmの間で、表面硬度化層の平均濃度と基材フィルムの平均濃度の差の分だけ変化した場合は混在層が存在しないと判定し、界面付近厚み方向100nmの間での濃度変化が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差よりも小さければ混在層が存在すると判定する。
【0065】
これをわかりやすく図面で示すと、図1は、界面付近100nmの間で画像濃度が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差の分だけ変化しているので、混在層が存在しないとし、一方、図2は、界面付近100nmの間で画像濃度が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差の分だけ変化していないので、混在層が存在するとする。
【0066】
これをわかりやすく式で示すと、表面硬度化層の平均画像濃度をCh、基材フィルムの平均画像濃度をCpとし、界面付近厚み方向100nmの画像濃度変化をΔCとすると、ΔC/|Cp−Ch|>1ならば、混在層は存在しないと判定し、ΔC/|Cp−Ch|≦1ならば混在層が存在すると判定する。
【0067】
また、表面硬度化層を構成する物質によっては、構成する特徴的な原子に着目し、界面付近を分析電子顕微鏡(AEM)にて厚み方向に分析し、特徴原子の分布から混在層の有無を確認することもできる。
【0068】
本発明のタッチパネル用フィルムにおいて、そのような混在層が明確に存在することが、表面硬度化層と基材フィルムの界面での接着性を向上させ、更には、接着性に優れたタッチパネル用フィルムとしての特性を向上させる上で効果をもたらしている。該混在層は、ある程度厚みを持ったものであることが好ましく、具体的には0.1〜2μm程度、さらには0.2〜0.4μm程度の厚みを持って、明確な混在層として存在している積層構造であることが好ましいものである。
【0069】
次に、本発明のタッチパネル用フィルムの製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PET)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明のタッチパネル用フィルムは、熱可塑性フィルムの片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層を設けることによって製造することができる。以下、その製造方法の一例について具体的に記述する。
【0071】
基材フィルムとなるPETペレットを真空乾燥して十分に水分を除去した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出しし、T字型の口金からシート状に成形する。このシート状物を鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2〜5倍の延伸を行う。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、双極性非プロトン溶剤などの有機溶媒に溶解した活性線または熱硬化性樹脂塗液を塗布し、その後フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で予熱後、幅方向に約2〜5倍延伸するが、ここで予熱延伸工程は双極性非プロトン溶剤の沸点以下の温度とするのが好ましい。延伸前もしくは延伸中に該溶剤が蒸発揮散せずに、残留する場合には、基材フィルムと表面硬度化層の界面に各層をなす混在相の形成が容易であり、表面硬度化層と基材フィルムの十分な接着性が得られる。幅方向に延伸された積層フィルムは、更に熱処理を行い、基材フィルムの結晶配向を完了させるが、その工程においては双極性非プロトン溶剤の沸点より高い温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度が該溶剤の沸点より高い場合には、積層膜中に溶剤が残存せず、積層膜の強度に優れ、接着性も良好になる。
【0072】
具体的に例示すれば、双極性非プロトン溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いた場合には、その沸点が202℃であり、予熱温度を100〜150℃、延伸温度を85〜130℃、熱処理温度を205〜245℃程度とすることが好ましい。熱処理温度が適切であると結晶配向が崩れず、平面性が良好で強度の低下を招くこともないので、少なくとも基材フィルムの融点より10℃以下、好ましくは20℃以下の温度とすることが良い。
【0073】
そして、照射エネルギー約85mJ/cm2の活性線を照射し、表面硬度化層を硬化させることにより、タッチパネル用フィルムを得ることができる。活性線の照射は熱処理ゾーン、および熱処理後のいずれにおいて実施しても良いが、熱処理ゾーン内で幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施しながら照射し硬化させると、カールが著しく改良されるので特に好ましい。
【0074】
このようにして得られたタッチパネル用フィルムは、フィルム表面の防汚性に優れ、かつ表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、更に防汚性の耐久性にも優れると同時に、表面硬度化層と基材フィルムとの密着性が優れているので、広範な使用条件で使用できる。
【0075】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)表面硬度化層の厚み、プライマー層の有無、および混在層の確認
タッチパネル用フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影を行なった。その断面写真から、プライマー層の有無の確認、表面硬度化層の厚みの測定を行なった。また、写真上での染色の濃度差で樹脂種を判定した。なお混在層がある場合は混在層を含めた厚みを積層厚みとした。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
混在層の存在の有無は、以下の方法で求めた。
【0076】
40,000倍の断面写真をイメージアナライザー(V10 for Windows95[登録商標] TOYOBO)に取り込み、界面付近を中心に厚み方向2μmの一次元濃度分布を測定し、この結果から基材ポリエステルフィルムの平均画像濃度Cpと、表面硬度化層の平均画像濃度Chを求めた。そして、界面付近を中心に100nmの幅の画像濃度変化ΔCを求め、ΔC/|Cp−Ch|を算出した。この値が1以下ならば混在層が存在するとした。観察方法は次のとおり。
・装置:透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法。
【0077】
(2)水滴接触角の測定
協和界面化学(株)製接触角計CA−D型を用いて、水のフィルム表面に対する静的接触角(θ)を5回測定し、その平均値をその表面の水滴接触角とした。
【0078】
(3)溶剤耐久指数の測定
初期(未処理)の表面硬度化層表面の水滴接触角をa1(度)、溶剤を十分染み込ませた綿布を用い、荷重0.1kg/cm2の圧力で表面硬度化層表面を10往復こすった後、80℃で2分間乾燥し、表面硬度化層の水滴接触角をa2(度)とし、溶剤耐久指数=a2/a1を求めた。溶剤として、メチルエチルケトンを使用した。
【0079】
(4)接着性
常態下(23℃、相対湿度65%)で、タッチパネル用フィルムの表面硬度化層に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープ(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、表面硬度化層の残存した個数により4段階で評価した(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)。◎と○を接着性良好とした。
【0080】
(5)ヘイズ
スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターを用い、JIS K 710 5に基づいて測定した。値が小さい方が好ましく、ヘイズ30%以下を合格とした。
【0081】
(6)光沢度
デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いてJIS Z 8741に準じて測定した。なお、測定条件は入射角60゜、受光角60゜とした。光沢度が120%以下の場合を合格とした。
【0082】
(7)耐摩耗性
スチールウール#0000で表面硬度化層表面を一定の荷重下で10往復摩擦し、耐傷性があった最大荷重を測定した。2kg/cm2以上の場合を合格とした。
【0083】
(8)耐汚染性−付着性
表面硬度化層の表面に油性インキペン(“マジックインキ”(登録商標))を用いて、長さ10cmの直線を書き、1分間放置後、インキのはじきの程度を目視判定した。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
○:油性インキペンが球状にはじかれている。
×:油性インキペンがはじかれず、書けている。
【0084】
(9)耐汚染性−拭き取性
(8)と同様の方法で筆記した油性インキをセルロース製不織布〔旭化成(株)製ハイゼガーゼ〕を用い荷重0.5kg/cm2で拭き取る方法で、油性インキの残存の程度を目視判定した。○を合格とした。
○:拭き取り回数5回以内で油性インキペンを完全に拭き取ることができる。
△:5回の拭き取りで油性インキペンの拭き取り跡が残る。
×:5回の拭き取りで油性インキペンを拭き取ることができない。
【0085】
(10)指紋の付着性
表面硬度化層の表面に指を数秒押しつけて(0.5kg荷重)、指紋を付着させ、その付き易さあるいは目立ち易さを目視判定した。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
○:指紋の付着が少なく、付いた指紋が目立たない。
×:指紋の付着がはっきりと認識できる。
【0086】
(11)指紋の拭き取り性
(10)と同様にした状態で指紋をセルロース製不織布〔旭化成(株)製ハイゼガーゼ〕で拭き取り(荷重0.5kg/cm2)、その取れ易さで目視判定を行った。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
【0087】
○:5回以内の拭き取りで指紋を完全に拭き取ることができる。
【0088】
△:5回の拭き取りで指紋の拭き取り跡が残る。
【0089】
×:5回の拭き取りで指紋の拭き取り跡が拡がり、拭き取ることができない。
【0090】
(12)フッ素、原子、シリコン原子の分布
二次イオン質量分析法(SIMS)により、塗膜表面から基材までの深さ方向分析を行い、フッ素、原子、シリコン原子の濃度分布を測定した。
【0091】
装置:PHI社製6300
【0092】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
<活性線または熱硬化性樹脂基本塗液>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)75重量%、 ポリエステルアクリレート(東亞合成化学工業(株)製アロニックスM−7100)15重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン10重量%、ジメチルポリシロキサンポリアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH−190)を0.2重量部となるように混合し塗液とした。この塗液を100%溶液とし、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)で適宜希釈して用いた。
【0093】
[塗剤A]
活性線硬化性樹脂基本塗液をNMPで濃度40重量%に希釈する。次に球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィアC−1504、平均1次粒子径4μm)を用いて濃度20重量%のNMP分散液を調整し、1時間超音波攪拌をする。更にフッ素アクリレートとしてトリフロロエチルメタクリレート(共栄社油脂化学(株)製M−3F)を用いて濃度20重量%のNMP溶液を調製した。次に調合した40重量%活性線硬化性樹脂基本塗液を495gと球状多孔質シリカ分散液5gを混合し、更に濃度20重量%のトリフロロエチルメタクリレート/NMP溶液を3g混合し、塗剤とした。この塗布液の塗液固形分中の球状多孔質シリカ量は0.5重量%、フッ素アクリレートは0.3重量
[塗剤B]
塗剤Aにおいてトリフロロエチルメタクリレートを添加しないこと以外は同様にして塗剤を調合した。
樹脂バインダー溶液の量を1.0kgにした以外は塗剤Aと同様に調合し、均一溶液を得た。この溶液の全固形分に対する球状多孔質シリカ量は33重%である。
【0094】
[塗剤C]
塗剤Aにおいて球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィア、平均1次粒子径2.7μm)にした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0095】
[塗剤D]
塗剤Aにおいて非球状の凝集シリカ(富士シリシア化学(株)製サイリシア430、平均粒子径4μm)(富士シリシア化学(株)製サイロスフィア、平均1次粒子径2.7μm)にした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0096】
[塗剤E]
塗剤Aにおいて、球状多孔質シリカを添加しなかったこと以外は同様にして塗剤を調合した。
【0097】
[塗剤F]
塗剤Aにおいて球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィアC−1504、平均1次粒子径4μm)20重量%分散液を10g、40重量%活性線硬化性樹脂基本塗液を490gと混合した以外は同様にして塗剤を調合した。
【0098】
[塗剤G]
塗剤Aにおいてトリフロロエチルメタクリレートに変えてポリジメチルシロキサンアクリレート(X−24−8201:信越化学工業(株)製)とした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0099】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下、PET)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸シートとした。この未延伸シートを、95℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面に、塗剤Aをダイコート方式で60μm厚に塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムの結晶配向を完了させた。さらに、このフィルムの両端をクリップで把持した状態で、フィルムを冷却させるときに、5%の弛緩処理をさせながら塗布面より9cmの高さにセットした160W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を10秒間照射し、硬化させ、PETフィルム上に表面硬度化層を有するタッチパネル用フィルムを得た。この積層タッチパネル用フィルムは、厚みが188μm、表面硬度化層厚みが5.0μmの透明性に優れたものであった。また界面の接着性−1は100/100、耐摩耗性は3.0kg/cm2であった。結果を表1に示す。このフィルムは耐摩耗性が良好であり、かつ防汚性およびその耐久性に優れていた。
【0100】
また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子が塗膜表面に局在化していることが確認された。
【0101】
【表1】
【0102】
(比較例1)
実施例1において塗剤Bを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は良好であったが、防汚性の耐久性がなかった。また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子は確認されなかった。
【0103】
(実施例2)
実施例1において塗剤Cを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性が良好であり、かつかつ防汚性およびその耐久性に優れていた。また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子が塗膜表面に局在化していることが確認された。
【0104】
(比較例2)
実施例1において塗剤Dを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は合格レベルであったが、防汚性が不良であった。
【0105】
(比較例3)
実施例1において塗剤Eを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は良好であったが、光沢度が大きく反射防止性能が劣っていた。
【0106】
(比較例4)
実施例1において塗布をしなかった以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性共に悪かった。
【0107】
(実施例3)
実施例1において塗剤Fを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性とも合格レベルであった。
【0108】
(実施例4)
実施例1において塗剤Gを用い、熱処理温度を230℃、熱処理時間を17秒にし、紫外線照射を行わなかったこと以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性とも合格レベルであった。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、反射防止効果、耐スクラッチ性、透明性、防汚性、入力耐久性に優れたタッチパネル用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、混在相領域がない場合の界面付近における画像濃度変化を示す図である。
【図2】図2は、混在相領域を有する場合の界面付近におけ留画像濃度変化を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タッチパネルフィルムに関し、更に詳しくは、フィルム表面の防汚性に優れ、かつ表面硬度が高く、耐摩耗性に優れると同時に、表面硬度化層と基材フィルムとの密着性が優れたタッチパネル用フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年カーナビやPDAなどの急速な普及により、ディスプレイ画面を指で触ったり、ペンで押圧するだけで入力できるタッチパネルが普及している。タッチパネルといってもその方式は抵抗膜式、静電容量方式、超音波方式、赤外線方式などがあるが、コスト面、メンテナンスの容易さから抵抗膜方式が最も多く使われている。その抵抗膜式タッチパネルは、一般的にはガラス若しくはフィルム上に透明導電層を形成し、スペーサーを介してフィルムに形成された導電層を対向配置させた構造をとる。簡単に構造を示すと、ディスプレイ/ガラス若しくはフィルム/透明導電層A/スペーサー/透明導電層B/フィルム/ハードコート層である。指やペンでハードコート側から直接押圧すれば、フィルムがその部分だけ湾曲し、ハードコート側の導電層Bが対向している導電層Aに接触し入力が図れ、押圧位置はX−Y座標として認識されコンピュータに入力される。
【0003】
このタッチパネルに於いて画面への外光の映り込みや、空気層との界面で生じる反射光が非常に問題となり画面を見難いものにしていた。また特に指で入力するタイプのタッチパネルに於いては、直接フィルム表面に指が触れるので特に表面が汚れやすく問題となっていた。
【0004】
このため基材表面に、外光の反射防止のために、(1)単層または多層の蒸着層を形成し反射防止をする方法(特許文献1参照)や、(2)シリカ等の微粒子を含有したマットコーティングを施す方法(特許文献2参照)等が知られている。
【0005】
また、防汚性を改善するためハードコート塗液中にシリコーン樹脂などをあらかじめ添加しておき、それを塗工し、硬化させる方法(特許文献3参照)や、表面硬度化層を設けた後にフッ素化合物を含む層を設ける方法(特許文献4参照)が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−122504号公報
【0007】
【特許文献2】特開平11−286083号公報
【0008】
【特許文献3】特開平10−104403号公報
【0009】
【特許文献4】特開平6−308327号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。まず反射防止性において、(1)の方法については、製造工程が複雑であり、またコストも非常に高く耐スクラッチ性も劣る。(2)の方法についてバインダーとしてハードコート樹脂を使用すれば耐スクラッチ性のある膜を形成することができるが、従来使用する微粒子は、粒子径が揃ったものは、粒子径が小さい物しかないために十分な反射防止性能を付与するためには、微粒子を多量に添加しなければならなく、従って反射防止性能が次第に向上するに従い、透過性が低下していく。また粒子径が大きいものは、粒子径が揃っておらず、かつその形状は均一性のない多角形となっていた為に、得られたフィルムを重ね合わせたときに、尖った粒子で他のフィルム表面を傷つけるのみならず、指紋、油性ペンなどの汚れが付着したときに、微粒子の隙間に汚れが付着して、拭き取ることが困難になったり、防汚性を持続させることが不可能であったり、粒子の破壊により充分な表面硬度がでず、耐スクラッチ性が不十分であるといった問題があった。
【0011】
また、防汚性においては、塗液中に樹脂を添加する方法では、初期は防汚性を発現するが、汚れの付着を繰り返すうちに防汚性が低下する問題があり、表面硬度化層の上に更に防汚層を形成する方法は、工程が多くなり、コスト高になるのみならず、機械的強度の弱いフッ素化合物を含む為に、充分な表面硬度が得られない問題があった。
【0012】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、反射防止効果、耐スクラッチ性、透明性、防汚性、入力耐久性に優れたタッチパネル用フィルムを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明のタッチパネル用フィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されており、かつ該球状多孔質シリカを含む層表面の水滴接触角が80度以上であり、かつ該表面硬度化層表面の溶剤耐久指数が0.8以上であることを特徴とするタッチパネル用フィルムである。
【0014】
また、本発明のタッチパネル用フィルムにおいては、熱可塑性フィルムが二軸配向されたポリエステルフィルムであること、表面硬度化層が活性線または熱硬化型の樹脂からなること、表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカの平均1次粒径が2.5μm以上10μm以下であること、表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカ濃度が0.1重量%以上5重量%以下であること、表面硬度化層の表面に活性線または熱硬化型のフッ素系重合体が含まれること、表面硬度化層と熱可塑性フィルムの界面付近に表面硬度化層を構成する成分と熱可塑性フィルムを構成する成分の混在層が存在することがそれぞれ好ましい態様である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のタッチパネル用フィルムは、熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層された基本構成を有している。
【0016】
本発明における熱可塑性フィルムとは、溶融押し出し可能で、かつ二軸延伸により結晶配向したフィルムが好ましい。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドなどの二軸配向フィルムであり、特にポリエステルフィルムが、透明性、寸法安定性、機械的特性、および本発明において積層する耐熱性の樹脂層との接着性などの点で好ましい。好ましいポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度がかかる好ましい範囲の場合には、寸法安定性や機械的強度が十分である。
【0017】
また、熱可塑性フィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0018】
上述したポリエステルを使用する場合には、25℃のo−クロロフェノール中で測定した極限粘度は0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0019】
本発明における熱可塑性フィルムは、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が設けられた状態では二軸配向されたものである。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0020】
熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0021】
熱可塑性フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、本発明のタッチパネル用フィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。また、得られたタッチパネル用フィルムを各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明においては、基材フィルムである上記熱可塑性フィルムの少なくとも片面に球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されるが、この表面硬度化層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく、更に、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましく用いられる。
【0023】
活性線または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、活性線重合成分としてアクリルオリゴマーと反応性希釈剤を含むものであり、その他に必要に応じて光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤、熱重合禁止剤あるいは改質剤を含有しているものを用いてもよい。
【0024】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリル、ウレタンアクリル、エポキシアクリル、ポリエーテルアクリルなどであり、またメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。また、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や開始の助長のため、光重合開始剤および/または光増感剤を添加することが好ましく、熱風による架橋の場合には、架橋促進のために熱重合開始剤を添加することが好ましい。これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、架橋装置などの具体例は、山下晋三・金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社1981年発行、第267〜275頁、第562〜593頁を参考とすることができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として三菱レイヨン(株)、藤倉化成(株)、大日精化工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、東亜合成化学工業(株)、日東化成(株)、日本化薬(株)などの製品を利用することができる。
【0026】
表面硬度化層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、染料、顔料および安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内で表面硬度化層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じて表面硬度化層の特性を改良することができる。
【0027】
これらの中で、特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる活性線または熱硬化性単量体混合物を主たる構成成分とする活性線または熱硬化物からなる表面硬度化層が、硬度、硬化性はもちろん、耐摩耗性、可撓性に優れるので好ましい。
【0028】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基とを略して表示したものをいう。)を有する単量体としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物を用いることができる。
【0029】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体の使用割合は、重合性単量体総量に対して20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%である。
【0031】
上記単量体の使用割合が20重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で満足でない場合があり、また、その量が90重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招くことがあるので好ましくない。
【0032】
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0033】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0034】
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などを用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0035】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、単量体総量に対して10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。単量体の使用割合が80重量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる方向のため好ましくない。また、その使用割合が10重量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材ポリエステルフィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合があるので好ましくない。
【0036】
本発明における活性線または熱硬化性の樹脂組成物を硬化させる方法として、紫外線を照射する方法、または熱風による方法を用いることができ、紫外線を照射する方法を用いる場合には、前記樹脂組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。また、熱風による方法では前期樹脂組成物に熱重合開始剤を加えることが望ましい。
【0037】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0038】
光重合開始剤の使用量は重合性単量体組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0039】
また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0040】
熱重合開始剤の使用量は、熱硬化樹脂を主成分とする層を形成する組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。 本発明に用いられる活性線または熱硬化性の樹脂組成物には、製造時の低温での熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、重合性化合物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0041】
本発明に用いられる表面硬度化層を形成する活性線または熱硬化性の樹脂組成物を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロール、基材フィルムである熱可塑性フィルムとの接着を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合することが好ましい。有機溶剤を配合する好ましい範囲としては0.1重量%以上、99重量%未満、好ましくは5重量%以上、98重量%未満、より好ましくは10重量%以上、90重量%未満、更に好ましくは20重量%以上、80重量%未満である。有機溶剤の配合量が0.1重量%未満のときは、基材フィルムである熱可塑性フィルムと表面硬度化層の界面に、両層の層からなる混在相領域を形成することができず、90重量%以上の時は塗剤濃度が低くなりすぎるために、十分な表面硬度化層厚みを設けることが困難になるので好ましくない。
【0042】
本発明における球状多孔質シリカとは、二酸化珪素で構成されており、その内部に細孔と呼ばれるナノメーター単位の穴を無数に有した、球状のシリカであり、その細孔内にはポリマーを含む種々の溶媒が入ることができる特徴を有しているものである。以下に限定するわけではないが、その具体例としては、一定流量のシリカゾルをノズルから流出させつつ、ノズル内のシリカゾルに一定周波数および一定振幅の振動を与えることによって、ノズルから流出するシリカゾルを液滴化し、その液滴化によって球状となるシリカゾルをゲル化させて粒子化させて得られる様な球状多孔質シリカである。
【0043】
本発明で用いるシリカ粒子は球状でなければならない。更に真球状に近い方が好ましい。形状が真球に近いほど、機械的強度が強く、塗膜中に均一分散しやすいからである。本発明で球状とは角部ない形状をしており、更に真球度(粒子の短径/長径比)が0.8以上から1以下のもののことを言う。シリカ粒子が球状でなく、多数の角部を有した形状をしている場合は、表面の粗さが不均一になり、十分な反射防止性能がでないと同時に、表面を強く擦ったときに表面に突出した角部が欠けて粉を発生したり、角部への汚染物質の付着による防汚機能阻害や、加工工程でフィルムを巻き取ったときに、表面に突出した角部が表面硬度化層非積層面に傷を付けたりして、光学特性が低下するので好ましくない。また真球度が0.8未満では、粒子の方向により突起高さが決まるため、表面の粗さを均一にすることができないので好ましくない。
【0044】
本発明において球状多孔質シリカの平均1次粒子径は、2.5μm以上10μm以下が好ましいが、より好ましくは3μm以上8μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上6μm以下である。なぜなら、平均1次粒子径が2.5μm未満では、レイリー(Rayleigh)散乱により散乱光の波長依存性や着色がおこり、10μmより大きい場合は、平行光線の透過が大きく阻害されるために、透過像が明確に見ることができなくなるので好ましくない。
【0045】
本発明において球状多孔質シリカは表面硬度化層中に0.1重量%以上5重量%以下含まれることが好ましいが、より好ましくは0.2重量%以上4重量%未満、更に好ましくは0.3重量%以上1重量%未満である。
【0046】
表面硬度化層に含まれる粒子が0.1重量%未満では、表面硬度化層表面のシリカ粒子による隆起個数が少なすぎるために、充分な反射防止性を示さなくなるので好ましくなく、5重量%より多い場合は、平行光線の透過率が低下してしまうために、透過像が不鮮明になるので好ましくない。
【0047】
本発明において表面硬度化層表面の水滴接触角は80度以上でなければならない。より好ましくは85度以上、更に好ましくは90度以上である。水滴接触角が80度未満であると、タッチパネルに使用した場合、指紋、汚水、油性ペンなどが表面に付着したときに、ふき取りが困難になってしまうからである。なお、一般に水滴接触角を110度を超えるようにすることは困難である。
【0048】
更に本発明に置いて表面硬度化層表面の耐溶剤指数が0.8以上でなければならない。より好ましくは0.9以上である。耐溶剤指数が0.8未満であると、タッチパネル用とにおいて、繰り返し指で表面を触れているうちに、防汚性が低下してしまい、汚れが落ちにくくなるのみならず、不衛生であり、光透過性などの光学特性にも大きく影響を与えるからである。なお、一般に耐溶剤指数を1.0を超えるようにすることは困難である。
【0049】
本発明で述べる溶剤耐久指数とは、ふき取り前の表面硬度化層表面の水滴接触角をa1(度)、溶剤を十分染み込ませた綿布で荷重0.1kg/cm2の圧力で表面硬度化層表面を10往復拭き取った後の表面の水滴接触角をa2(度)としたとき、ふき取りに用いた溶剤における溶剤耐久指数=a2/a1のことを言う。溶剤としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤があげられるが、特に揮発性の高い溶剤を用いる方がふき取り後の接触角測定に置いて溶剤が正確な水滴接触角の測定の妨げにならないので好ましいので、本発明では、メチルエチルケトン(以下、MEKと略称する)を用いて、拭き取って得られた値を溶剤耐久指数とする。
【0050】
この様な大きな水滴接触角を発現させるためには、表面硬度化層表面に撥水、撥油性の高い化合物を存在させる方法がある。そのような化合物としてシリコーン系重合体、フッ素系重合体が好ましいが、中でも活性線反応型のフッ素系重合体が表面に含まれることが好ましい。更に表面硬度化層中に存在するシリコーン重合体またはフッ素系重合体は、表面硬度化層表面に偏在している構造が好ましい。この様な構造となるためには、表面硬度化層を形成する塗剤の中にシリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマーまたはフッ素系重合体を混在させ、塗布後、溶媒乾燥の熱処理工程で、表面硬度化層表面にブリードアウトさせ、そのあと必要に応じて活性線照射処理を行うことで得ることができる。このような構造は表面硬度化層を二次イオン質量分析法を用いて深さ方向にシリコン原子、またはフッ素原子の濃度分布を測定することで確認できるし、表面の水滴接触角が、シリコーン化合物、またはフッ素化合物添加前の水滴接触角よりも大きくなることからも確認することができる。
【0051】
この様にして得られるシリコーン重合体またはフッ素系重合体が表面に偏在した構造は、耐スクラッチ性が高く、シリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマーまたはフッ素系重合体フッ素化合物の少量添加で高い防汚機能を発現することができる。この様な活性線または熱反応型のシリコーン系モノマー、フッ素系モノマーとしては、片末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサン、両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンのモノマー、オリゴマー、これらを共重合したシリコーン共重合体等、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の含フッ素メタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート等の含フッ素アクリレート、3−パーフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−9−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン等のエポキサイド、エポキシアクリレート等を挙げることができる。また、これらモノマーのオリゴマーやプレポリマー等も挙げることができる。
【0052】
また、これらの活性線または熱反応型のシリコーン系モノマー、シリコーン系オリゴマー、シリコーン系共重合体、フッ素系モノマー、フッ素系オリゴマー、フッ素系共重合体はそれ単独で添加しても良いし、これらが含まれる塗液として添加しても良い。
【0053】
本発明の表面硬度化層を形成するための塗剤に用いる有機溶剤としては、沸点が50〜250℃の有機溶剤が、塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドンなど双極性非プロトン溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。この中で、双極性非プロトン溶剤を含む溶剤を用いると、基材フィルムである熱可塑性フィルムの層と表面硬度化層の界面に、効率よく両層の成分相が混在してなる混在層領域を形成することができるので好ましい。「混在層領域」については後述する。
【0054】
本発明で述べる表面硬度化層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
【0055】
表面硬度化層を形成するための塗液の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。各々の方式には特徴があり、タッチパネル用フィルムの要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。
【0056】
特に、塗液中の有機溶剤量はできるだけ少ないことが、生産性、防爆性の観点から有利であるから、多段塗布をおこなっても良い。ここで述べる多段塗布とは、塗布装置を熱可塑性フィルムの進行方向に目的の台数並べ、各塗布装置で目標の塗布厚みになるように塗液の塗布を行う方法である。この方法で用いられる塗剤は全て同じでも良いが、1段目の塗布には、より有機溶剤が多く含まれる塗剤を用い、2段目以降は徐々に塗剤中の有機溶剤量を減らしたものを用いることが好ましい。
【0057】
本発明で述べる活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行うと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0058】
表面硬度化層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1μm〜30μmが好ましく、より好ましくは1μm〜15μmである。表面硬度化層の厚さがかかる好ましい範囲の場合には、硬化時の酸素障害はなく硬化が十分に起こり、表面硬度が十分で傷が付きにくく、一方硬化膜が脆くなることはなく、積層体を折り曲げたときにも硬化膜にクラックが入りにくい。
【0059】
また、本発明の効果が損なわれない範囲において、表面硬度化層の最外層に図柄などの印刷層を設けてもよい。
【0060】
また、本発明のフィルムは、表面硬度化層を設けたのとは反対面に透明導電層を設けてタッチパネルに用いられる。このとき設けられる透明導電層は酸化インジュウム−スズ(ITO)や酸化アンチモン−スズ(ATO)などの無機酸化物導電層や、ポリチオフェンやポリアニリン、ポリフェニレンなどの有機導電性高分子層などがあるがこれらに限定されるされるものではない。
【0061】
なお、本発明では、片面に表面硬度化層、その反対面にこれらの透明導電層との接着性を向上させるプライマー層は、表面硬度化層を形成する塗液を塗布するときに同時にその裏面に塗布し、延伸、乾燥を行い設けても良いことは言うまでもない。
【0062】
このようにして得られるタッチパネル用フィルムの基材である熱可塑性フィルムと表面硬度化層の接着性は、T字剥離において1kg/25mm幅以上、さらには2kg/25mm幅以上となるように積層されるのが好ましい。かかる好ましい密着性とすると、各種用途に使用したときに表面硬度化層が剥離する問題が生じない。
【0063】
このような状態の積層フィルムを得るには、1軸延伸され結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、有機溶剤を含有する活性線または熱硬化型樹脂組成物を主成分とする塗液を塗布し、その後、予熱工程を経て先の方向とは直角方向に延伸され熱固定、更に活性線照射処理される製造方法において、活性線または熱硬化型樹脂濃度が95重量%以下、さらには80重量%以下、特に70重量%以下で延伸されることが好ましい。活性線または熱硬化型樹脂の濃度が95重量%を超えると基材フィルムの熱可塑性フィルムと表面硬度化層との密着性が不良となり、表面硬度化層に多数の亀裂が入り、著しく平滑性や透明性を損なうことがある。
【0064】
このようにして製造されたタッチパネル用フィルムには、前述したように混在層が存在するのが好ましい。本発明においては、その構造の確認方法として以下の方法を採用する。表面硬度化層を形成する物質がRuO4染色またはOsO4染色などが可能な場合、タッチパネル用フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影を行なう。その写真をイメージアナライザー(例えば、V10 for Windows95[登録商標] TOYOBO)にて画像解析を行なう。画像解析方法は、界面付近を中心に厚み方向2μmの一次元濃度分布を測定し、その結果において界面付近での画像濃度変化が界面付近厚み方向100nmの間で、表面硬度化層の平均濃度と基材フィルムの平均濃度の差の分だけ変化した場合は混在層が存在しないと判定し、界面付近厚み方向100nmの間での濃度変化が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差よりも小さければ混在層が存在すると判定する。
【0065】
これをわかりやすく図面で示すと、図1は、界面付近100nmの間で画像濃度が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差の分だけ変化しているので、混在層が存在しないとし、一方、図2は、界面付近100nmの間で画像濃度が表面硬度化層の平均画像濃度と基材フィルムの平均画像濃度の差の分だけ変化していないので、混在層が存在するとする。
【0066】
これをわかりやすく式で示すと、表面硬度化層の平均画像濃度をCh、基材フィルムの平均画像濃度をCpとし、界面付近厚み方向100nmの画像濃度変化をΔCとすると、ΔC/|Cp−Ch|>1ならば、混在層は存在しないと判定し、ΔC/|Cp−Ch|≦1ならば混在層が存在すると判定する。
【0067】
また、表面硬度化層を構成する物質によっては、構成する特徴的な原子に着目し、界面付近を分析電子顕微鏡(AEM)にて厚み方向に分析し、特徴原子の分布から混在層の有無を確認することもできる。
【0068】
本発明のタッチパネル用フィルムにおいて、そのような混在層が明確に存在することが、表面硬度化層と基材フィルムの界面での接着性を向上させ、更には、接着性に優れたタッチパネル用フィルムとしての特性を向上させる上で効果をもたらしている。該混在層は、ある程度厚みを持ったものであることが好ましく、具体的には0.1〜2μm程度、さらには0.2〜0.4μm程度の厚みを持って、明確な混在層として存在している積層構造であることが好ましいものである。
【0069】
次に、本発明のタッチパネル用フィルムの製造方法について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PET)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明のタッチパネル用フィルムは、熱可塑性フィルムの片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層を設けることによって製造することができる。以下、その製造方法の一例について具体的に記述する。
【0071】
基材フィルムとなるPETペレットを真空乾燥して十分に水分を除去した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出しし、T字型の口金からシート状に成形する。このシート状物を鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2〜5倍の延伸を行う。次いで、この1軸延伸フィルムの表面に、双極性非プロトン溶剤などの有機溶媒に溶解した活性線または熱硬化性樹脂塗液を塗布し、その後フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で予熱後、幅方向に約2〜5倍延伸するが、ここで予熱延伸工程は双極性非プロトン溶剤の沸点以下の温度とするのが好ましい。延伸前もしくは延伸中に該溶剤が蒸発揮散せずに、残留する場合には、基材フィルムと表面硬度化層の界面に各層をなす混在相の形成が容易であり、表面硬度化層と基材フィルムの十分な接着性が得られる。幅方向に延伸された積層フィルムは、更に熱処理を行い、基材フィルムの結晶配向を完了させるが、その工程においては双極性非プロトン溶剤の沸点より高い温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度が該溶剤の沸点より高い場合には、積層膜中に溶剤が残存せず、積層膜の強度に優れ、接着性も良好になる。
【0072】
具体的に例示すれば、双極性非プロトン溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いた場合には、その沸点が202℃であり、予熱温度を100〜150℃、延伸温度を85〜130℃、熱処理温度を205〜245℃程度とすることが好ましい。熱処理温度が適切であると結晶配向が崩れず、平面性が良好で強度の低下を招くこともないので、少なくとも基材フィルムの融点より10℃以下、好ましくは20℃以下の温度とすることが良い。
【0073】
そして、照射エネルギー約85mJ/cm2の活性線を照射し、表面硬度化層を硬化させることにより、タッチパネル用フィルムを得ることができる。活性線の照射は熱処理ゾーン、および熱処理後のいずれにおいて実施しても良いが、熱処理ゾーン内で幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施しながら照射し硬化させると、カールが著しく改良されるので特に好ましい。
【0074】
このようにして得られたタッチパネル用フィルムは、フィルム表面の防汚性に優れ、かつ表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、更に防汚性の耐久性にも優れると同時に、表面硬度化層と基材フィルムとの密着性が優れているので、広範な使用条件で使用できる。
【0075】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)表面硬度化層の厚み、プライマー層の有無、および混在層の確認
タッチパネル用フィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影を行なった。その断面写真から、プライマー層の有無の確認、表面硬度化層の厚みの測定を行なった。また、写真上での染色の濃度差で樹脂種を判定した。なお混在層がある場合は混在層を含めた厚みを積層厚みとした。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
混在層の存在の有無は、以下の方法で求めた。
【0076】
40,000倍の断面写真をイメージアナライザー(V10 for Windows95[登録商標] TOYOBO)に取り込み、界面付近を中心に厚み方向2μmの一次元濃度分布を測定し、この結果から基材ポリエステルフィルムの平均画像濃度Cpと、表面硬度化層の平均画像濃度Chを求めた。そして、界面付近を中心に100nmの幅の画像濃度変化ΔCを求め、ΔC/|Cp−Ch|を算出した。この値が1以下ならば混在層が存在するとした。観察方法は次のとおり。
・装置:透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:凍結超薄切片法。
【0077】
(2)水滴接触角の測定
協和界面化学(株)製接触角計CA−D型を用いて、水のフィルム表面に対する静的接触角(θ)を5回測定し、その平均値をその表面の水滴接触角とした。
【0078】
(3)溶剤耐久指数の測定
初期(未処理)の表面硬度化層表面の水滴接触角をa1(度)、溶剤を十分染み込ませた綿布を用い、荷重0.1kg/cm2の圧力で表面硬度化層表面を10往復こすった後、80℃で2分間乾燥し、表面硬度化層の水滴接触角をa2(度)とし、溶剤耐久指数=a2/a1を求めた。溶剤として、メチルエチルケトンを使用した。
【0079】
(4)接着性
常態下(23℃、相対湿度65%)で、タッチパネル用フィルムの表面硬度化層に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープ(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、表面硬度化層の残存した個数により4段階で評価した(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)。◎と○を接着性良好とした。
【0080】
(5)ヘイズ
スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターを用い、JIS K 710 5に基づいて測定した。値が小さい方が好ましく、ヘイズ30%以下を合格とした。
【0081】
(6)光沢度
デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いてJIS Z 8741に準じて測定した。なお、測定条件は入射角60゜、受光角60゜とした。光沢度が120%以下の場合を合格とした。
【0082】
(7)耐摩耗性
スチールウール#0000で表面硬度化層表面を一定の荷重下で10往復摩擦し、耐傷性があった最大荷重を測定した。2kg/cm2以上の場合を合格とした。
【0083】
(8)耐汚染性−付着性
表面硬度化層の表面に油性インキペン(“マジックインキ”(登録商標))を用いて、長さ10cmの直線を書き、1分間放置後、インキのはじきの程度を目視判定した。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
○:油性インキペンが球状にはじかれている。
×:油性インキペンがはじかれず、書けている。
【0084】
(9)耐汚染性−拭き取性
(8)と同様の方法で筆記した油性インキをセルロース製不織布〔旭化成(株)製ハイゼガーゼ〕を用い荷重0.5kg/cm2で拭き取る方法で、油性インキの残存の程度を目視判定した。○を合格とした。
○:拭き取り回数5回以内で油性インキペンを完全に拭き取ることができる。
△:5回の拭き取りで油性インキペンの拭き取り跡が残る。
×:5回の拭き取りで油性インキペンを拭き取ることができない。
【0085】
(10)指紋の付着性
表面硬度化層の表面に指を数秒押しつけて(0.5kg荷重)、指紋を付着させ、その付き易さあるいは目立ち易さを目視判定した。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
○:指紋の付着が少なく、付いた指紋が目立たない。
×:指紋の付着がはっきりと認識できる。
【0086】
(11)指紋の拭き取り性
(10)と同様にした状態で指紋をセルロース製不織布〔旭化成(株)製ハイゼガーゼ〕で拭き取り(荷重0.5kg/cm2)、その取れ易さで目視判定を行った。判定基準を以下に示す。○を合格とした。
【0087】
○:5回以内の拭き取りで指紋を完全に拭き取ることができる。
【0088】
△:5回の拭き取りで指紋の拭き取り跡が残る。
【0089】
×:5回の拭き取りで指紋の拭き取り跡が拡がり、拭き取ることができない。
【0090】
(12)フッ素、原子、シリコン原子の分布
二次イオン質量分析法(SIMS)により、塗膜表面から基材までの深さ方向分析を行い、フッ素、原子、シリコン原子の濃度分布を測定した。
【0091】
装置:PHI社製6300
【0092】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
<活性線または熱硬化性樹脂基本塗液>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)75重量%、 ポリエステルアクリレート(東亞合成化学工業(株)製アロニックスM−7100)15重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン10重量%、ジメチルポリシロキサンポリアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH−190)を0.2重量部となるように混合し塗液とした。この塗液を100%溶液とし、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)で適宜希釈して用いた。
【0093】
[塗剤A]
活性線硬化性樹脂基本塗液をNMPで濃度40重量%に希釈する。次に球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィアC−1504、平均1次粒子径4μm)を用いて濃度20重量%のNMP分散液を調整し、1時間超音波攪拌をする。更にフッ素アクリレートとしてトリフロロエチルメタクリレート(共栄社油脂化学(株)製M−3F)を用いて濃度20重量%のNMP溶液を調製した。次に調合した40重量%活性線硬化性樹脂基本塗液を495gと球状多孔質シリカ分散液5gを混合し、更に濃度20重量%のトリフロロエチルメタクリレート/NMP溶液を3g混合し、塗剤とした。この塗布液の塗液固形分中の球状多孔質シリカ量は0.5重量%、フッ素アクリレートは0.3重量
[塗剤B]
塗剤Aにおいてトリフロロエチルメタクリレートを添加しないこと以外は同様にして塗剤を調合した。
樹脂バインダー溶液の量を1.0kgにした以外は塗剤Aと同様に調合し、均一溶液を得た。この溶液の全固形分に対する球状多孔質シリカ量は33重%である。
【0094】
[塗剤C]
塗剤Aにおいて球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィア、平均1次粒子径2.7μm)にした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0095】
[塗剤D]
塗剤Aにおいて非球状の凝集シリカ(富士シリシア化学(株)製サイリシア430、平均粒子径4μm)(富士シリシア化学(株)製サイロスフィア、平均1次粒子径2.7μm)にした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0096】
[塗剤E]
塗剤Aにおいて、球状多孔質シリカを添加しなかったこと以外は同様にして塗剤を調合した。
【0097】
[塗剤F]
塗剤Aにおいて球状多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)製サイロスフィアC−1504、平均1次粒子径4μm)20重量%分散液を10g、40重量%活性線硬化性樹脂基本塗液を490gと混合した以外は同様にして塗剤を調合した。
【0098】
[塗剤G]
塗剤Aにおいてトリフロロエチルメタクリレートに変えてポリジメチルシロキサンアクリレート(X−24−8201:信越化学工業(株)製)とした以外は同様にして塗剤を調合した。
【0099】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下、PET)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸シートとした。この未延伸シートを、95℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面に、塗剤Aをダイコート方式で60μm厚に塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで5秒間の熱処理を施し、基材フィルムの結晶配向を完了させた。さらに、このフィルムの両端をクリップで把持した状態で、フィルムを冷却させるときに、5%の弛緩処理をさせながら塗布面より9cmの高さにセットした160W/cmの照射強度を有する高圧水銀灯で、紫外線を10秒間照射し、硬化させ、PETフィルム上に表面硬度化層を有するタッチパネル用フィルムを得た。この積層タッチパネル用フィルムは、厚みが188μm、表面硬度化層厚みが5.0μmの透明性に優れたものであった。また界面の接着性−1は100/100、耐摩耗性は3.0kg/cm2であった。結果を表1に示す。このフィルムは耐摩耗性が良好であり、かつ防汚性およびその耐久性に優れていた。
【0100】
また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子が塗膜表面に局在化していることが確認された。
【0101】
【表1】
【0102】
(比較例1)
実施例1において塗剤Bを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は良好であったが、防汚性の耐久性がなかった。また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子は確認されなかった。
【0103】
(実施例2)
実施例1において塗剤Cを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性が良好であり、かつかつ防汚性およびその耐久性に優れていた。また、本塗膜のフッ素原子濃度分布測定を行った結果、フッ素原子が塗膜表面に局在化していることが確認された。
【0104】
(比較例2)
実施例1において塗剤Dを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は合格レベルであったが、防汚性が不良であった。
【0105】
(比較例3)
実施例1において塗剤Eを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性は良好であったが、光沢度が大きく反射防止性能が劣っていた。
【0106】
(比較例4)
実施例1において塗布をしなかった以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性共に悪かった。
【0107】
(実施例3)
実施例1において塗剤Fを用いた以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性とも合格レベルであった。
【0108】
(実施例4)
実施例1において塗剤Gを用い、熱処理温度を230℃、熱処理時間を17秒にし、紫外線照射を行わなかったこと以外は同様にして作製した。結果を表1に併せて示す。このフィルムは耐摩耗性、防汚性とも合格レベルであった。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、反射防止効果、耐スクラッチ性、透明性、防汚性、入力耐久性に優れたタッチパネル用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、混在相領域がない場合の界面付近における画像濃度変化を示す図である。
【図2】図2は、混在相領域を有する場合の界面付近におけ留画像濃度変化を示す図である。
Claims (7)
- 熱可塑性フィルムの少なくとも片面に、球状多孔質シリカを含む表面硬度化層が積層されており、かつ該表面硬度化層表面の水滴接触角が80度以上であり、かつ該表面硬度化層の溶剤耐久指数が0.8以上であることを特徴とするタッチパネル用フィルム。
- 熱可塑性フィルムが二軸配向されたポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用フィルム。
- 該表面硬度化層が活性線または熱硬化型の樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル用フィルム。
- 該表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカの平均1次粒径が2.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル用フィルム。
- 該表面硬度化層に含まれる球状多孔質シリカ濃度が0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタッチパネル用フィルム。
- 該表面硬度化層の表面に活性線または熱硬化型のフッ素系重合体またはシリコーン重合体が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタッチパネル用フィルム。
- 該表面硬度化層と該熱可塑性フィルムの界面付近に該表面硬度化層を構成する成分と該熱可塑性フィルムを構成する成分の混在層が存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタッチパネル用フィルム。
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