JP2004109049A - 電気化学検出チップ - Google Patents
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Abstract
【課題】電気化学検出チップにおいて、上板と下地基板とを完全に接合させる。
【解決手段】下地基板5上の作用極2、対極3および参照極4からなる電極から外部端子8への配線を下地基板5の内部で行うことにより、配線の厚みによる接合部分の凹凸を無くす。
【選択図】 図1
【解決手段】下地基板5上の作用極2、対極3および参照極4からなる電極から外部端子8への配線を下地基板5の内部で行うことにより、配線の厚みによる接合部分の凹凸を無くす。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極での酸化還元反応を利用して核酸のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の遺伝情報はDNA塩基配列として保存されており、遺伝子の発現を解析することは各種疾病の予防、早期診断治療、オーダーメイド医療などに有効である。生物学、医学分野での遺伝子解析においては、特定の配列を有する核酸断片を検出する方法として、ハイブリダイゼーション法が用いられている。ハイブリダイゼーション法は、一本鎖の核酸同士の塩基配列が相補的である場合に相補性を持つ塩基対間の水素結合により二本鎖核酸を形成することを利用し、この中でも特に、目的とする遺伝子を特異的に検出することができる方法として、サザンハイブリダイゼーション法が一般的に利用されている。サザンハイブリダイゼーション法では、まず試料DNAを一種類以上の制限酵素でフラグメントとし、アガロースゲル電気泳動あるいはポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけてその分子量サイズによって分画ごとに分離する。次に、分離した試料DNA断片を一本鎖に変性した後、ナイロンフィルターまたはニトロセルロースペーパーに固定化する。そして、その試料DNA断片と、この試料DNA断片に相補性を有する放射性同位元素で標識された一本鎖DNA断片とをハイブリダイズさせた後、洗浄後のフィルターをオートラジオグラフィーにかけ現像することによって、相補性DNAとハイブリダイズする特定の塩基配列を有する試料DNA断片を検出することができる。
【0003】
しかし、上記のサザンハイブリダイゼーション法を含めた方法は標識として放射性同位元素を用いるため、検出に長時間を要し、バンドが不明確となりやすく、また放射性物質の取り扱いやコストの点で問題がある。
【0004】
サザンハイブリダイゼーション法では、放射性同位元素による標識の代わりに蛍光を標識として用いる方法も知られている。蛍光物質を標識として用いる方法は、安全性および迅速性において優れた方法である。例えば、スライドガラスやシリコンなどの基板上に非共有結合(静電結合)や共有結合で固定して高密度に整列化しているDNA断片に対して、蛍光物質で標識したDNA断片をハイブリダイゼーションさせ、そのハイブリダイゼーションを検出するDNAチップがすでに利用されている。しかし、励起光による褪色が起こること、測定には専用の蛍光測定装置が必要であることや蛍光の内部消光および凝集等のために一定量以上の蛍光物質を導入することは困難であること等の欠点がある。
【0005】
一方、下記の特許文献1には、標識手段として導電性物質を使用する方法が開示されている。この方法では、出力端子を備えた電極にプローブDNA断片を固定し、ここに試料DNA断片および電気化学活性縫込み型インターカレーターを接触させると、電極上に固定されているプローブDNA断片と試料DNA断片との間に二本鎖DNAが形成され、この二本鎖DNAの内部にインターカレーターが結合するため、電極に電位を印加すると、別に設けた対極との間にインターカレーターを介して電流が流れるため、その電流量を測定することによってハイブリダイゼーションを検出することができる。この方法では、標識された試料DNA断片を調製する必要がない。インターカレーターとしては、酸化還元活性を持ったフェロセン化合物が用いられ、これは二本鎖DNAに特異的に結合することが知られている。この方法では、リアルタイムで二本鎖DNAの検出が簡便に高感度で行うことができ、分画処理が不要で、蛍光色素の褪色という問題もない。しかし、この方法では電極へプローブDNAを固定する必要があるため、固定に関する再現性、信頼性が低く、時間がかかるなどの問題があり、また再利用が困難であるなどの短所がある。また遺伝子発現のモニタリング、DNA塩基配列の決定、遺伝子変異解析、遺伝子多型解析等を効率的に行うためには上記の方法では実用化レベルを十分満足するとは言い難い。
【0006】
さらに、2枚のガラス板からなるマイクロチップにおいて、上板にはマイクロ流路を形成し、下地基板には微小電極・配線・端子を作製して、インターカレーターの存在下このマイクロ流路内に塩基配列が既知のDNA断片および試料DNA断片を含む混合溶液を導入し、微小電極を用いてサイクリックボルタンメトリーを行って電極間に流れる電流を測定することによりハイブリダイゼーションを検出するフロー型の電気化学検出チップの作製が検討されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−288080号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フロー型の電気化学検出チップでは、下地基板に電極から外部への配線の厚みによる微小な段差があるため上板と下地基板との完全な接合が困難であり、接着剤を用いる場合には接着剤が全体に行き渡らなかったり、接着剤が流れてマイクロ流路が塞がれるあるいは電極が覆われる等の問題が生ずる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気化学検出チップは、下地基板と上板とを組み合わせることによりマイクロ流路が形成され、前記下地基板上に前記マイクロ流路内に露出した一対の電極が形成され、既知の塩基配列を有する核酸断片および試料核酸断片を含む混合溶液をインターカレーターと共に前記マイクロ流路内に導入し、前記一対の電極間に電位を印加して該電極間に流れる電流を測定することにより前記混合溶液内のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップにおいて、前記電極と前記マイクロ流路の外部に設けられた端子との配線を前記下地基板の内部で行うことを特徴とするものである。
【0010】
「ハイブリダイゼーション」とは、一本鎖の核酸同士が相補的な塩基対(A−T、G−C)間の水素結合により二本鎖の核酸を形成することを言う。二本の鎖の相補性の程度が高いほど二本鎖の形成の効率は高くなり、また二本鎖構造の安定性も高くなる。
【0011】
「核酸」とは、塩基、リン酸および糖からなるヌクレオチドを基本単位とし、このリン酸が各ヌクレオチド間で糖の3’と5’位炭素の間にジエステル結合を作ることにより重合した長い鎖状のポリヌクレオチドである。糖部分がリボースかデオキシリボースかによってRNAとDNAに別れる。
【0012】
「インターカレーター」とは、核酸塩基対間に挿入結合する性質を持つ多環芳香族分子の総称である。インターカレーターは、先端に鉄イオンを含んだフェロセンを有し、電圧の変化によって酸化還元電流が発生する。インターカレーターはハイブリダイゼーションした核酸の隙間(二本鎖間)に特異的に入り込み結合するため、ハイブリダイゼーションしていない一本鎖核酸にはほとんど結合しない。このため、ハイブリダイゼーションした核酸ではインターカレーターが結合し大きな酸化還元電流が発生するが、ハイブリダイゼーションしていない核酸にはインターカレーターが結合せず酸化還元電流はほとんど発生しない。インターカレーターの構造の一例を以下に示す。
【0013】
【化1】
電極の材質は導電性のものであればよく、例えばAu、Ag、Pt等の金属、ITO、SnO2等の導電性酸化膜が挙げられる。電極の数は、二以上の複数であれば特に限定されない。
【0014】
下地基板は、不純物ドーピングによる導電性領域を作成できるものであればよく、例えばSi、GaAs、GaP、InP等を使用することができる。上板は、絶縁材料であって流路を形成できるものであればよい。下地基板と上板との接合は、例えば陽極接合、接着剤による接合、熱融着等により行うことができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の電気化学検出チップは、下地基板と上板とを組み合わせることによりマイクロ流路が形成され、下地基板上にマイクロ流路内に露出した一対の電極が形成され、既知の塩基配列を有する核酸断片および試料核酸断片を含む混合溶液をインターカレーターと共にマイクロ流路内に導入し、一対の電極間に電位を印加して電極間に流れる電流を測定することにより混合溶液内のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップにおいて、電極とマイクロ流路の外部に設けられた端子との配線を下地基板の内部で行うこととしたので、配線による接合部分の凹凸がなくなり、完全に下地基板と上板とを接合させることができ、接着剤が接合部分に行き渡らなかったり、接着剤がマイクロ流路に流れ出して流路や電極を塞ぐという問題が起こらない。また核酸を電極に固定しないため、再現性が向上し、測定時間が短縮され、再利用が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の電気化学検出チップについて、図1から図4を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態による電気化学検出チップの概略平面図であり、図2は図1の電気化学検出チップのII−II線における断面図、図3は図1の電気化学検出チップのIII−III線における断面図である。図1から図3に示されるように、電気化学検出チップ1は下地基板5の上に上板6が組み合わされることにより作製され、下地基板5上には、作用極2、対極3、参照極4の3つの電極が露出して形成されていると共に、各電極2、3、4のそれぞれに接続される端子8が形成されている。各電極2、3、4は、Au電極を下地基板5上に蒸着することにより形成した。下地基板5はp−シリコンからなる基部5aおよびSiO2からなる表面絶縁層5bにより作製し、上板6と接合する際に上板6の下面(下地基板5との接合面)6aが配線の厚みにより下地基板5の上面(上板6との接合面)5cから浮いてしまうことを防ぐため、電極2、3、4と端子8とを接続する配線9をリン拡散により下地基板5内に形成した。上板6はガラスウェハにより作製し、ウェットエッチングにより溝10を形成した後下地基板5と接合することによりマイクロ流路7を形成した。下地基板の上面5cと上板の下面6aとの接合は陽極接合により行った。
【0018】
図1に示すように、本電気化学検出チップは、作用極2、対極3、および参照極4からなる三電極方式を用いて電気化学検出法を実施するものである。作用極2と対極3との間の電位差がある電位になると、作用極2で酸化還元反応が起こり、作用極2で起こる電極反応により電流が作用極2と対極3との間を流れる。参照電極4は作用極2の電位を測定するためのものであり、参照極4には事実上電流は流れない。酸化還元材料として、ハイブリダイゼーションしたDNAに特異的に入り込むインターカレーターを使用した。電気化学的検出法とは、電極での酸化還元反応を利用して溶液中の溶存物質の分析をしたり、標準酸化還元電位等の電気化学的特性を調べたりするための方法である。電解質溶液内の電極に電圧を印加すると、電解電流と電極界面の電気二重層を充電するための充電電流が流れる。解析を行うのは電解電流であるため、充電電流の影響を小さくする必要がある。そこで本電気化学検出チップでは、測定法として微分パルスボルダンメトリー(DPV)を採用した。DPVは電圧をパルス状に印加する方法である。ノーマルパルスボルタンメトリー(NPV)は基底電位が一定であり、電位パルスの大きさが変化する。一方DPVは、電位パルスが一定であり基底電位が変化する。電流のサンプリングを、電位パルスを加える直前とパルスを基底電位に戻す直前の2点で行い、2点でサンプリングした電流値の差を各パルスの基底電位に対してプロットする。つまり、得られた電流値は実際の電流値の微分値になる。DPVでは、2点の電流値の差を測定するため、充電電流の寄与が小さく、NPVに比べて感度が非常に高い。
【0019】
図4に、本発明の電気化学検出チップによる電気化学検出法の測定結果の実施例を示す。マイクロ流路内に以下の試料を導入し、作用極と対極との間に流れる電流を測定した。試料は、▲1▼50μMインターカレーター溶液、▲2▼10μM一本鎖DNA溶液、▲3▼10μM二本鎖DNA溶液、▲4▼20μMミスマッチDNA溶液を使用した。▲2▼から▲4▼の溶液は、50μMのインターカレーター溶液と0.1Mの酢酸バッファー溶液を含んでいた。試料はマイクロ流路内を流さずマイクロ流路内に留めて測定したが、試料をマイクロ流路内に流して測定してもよい。
【0020】
図3から明らかなようにピーク時の電流は、インターカレーター溶液およびミスマッチDNA溶液では約0.15μA、一本鎖DNA溶液では約0.2μAであるのに対し、二本鎖DNA溶液では約1.05μAと非常に大きくなっている。これはハイブリダイズした二本鎖DNAの中に入り込んだインターカレーターの酸化還元によりインターカレーターに電流が流れるためであり、二本鎖DNAに結合したインターカレーターに流れる電流を測定し、二本鎖が形成されていない場合に流れる電流と比較することによりハイブリダイゼーションの程度が検出できる。また、一本鎖DNAにもインターカレーターが若干結合するため、インターカレーター溶液よりも一本鎖DNA溶液の方がピーク時の電流がわずかに大きい。二本鎖DNAはPCR産物でもよく、この場合はPCRによる増幅の確認と産物の量を測定することが可能となる。
【0021】
上記電気化学検出チップによれば、図1中のV−V線断面概略図である図5に示すように、マイクロ流路7内の電極2、3、4とマイクロ流路7外の端子8とを接続する配線9を、下地基板の上面5c上に突出する状態で形成するのではなく、下地基板5の内部に形成して上面5c上に突出することのないようにしたので、下地基板の上面5cと上板の下面6aとを平坦面同士で密接させて接合することができる。これにより、上記配線9を下地基板の上面5c上に突出させて形成すると、図6(図5と同様の位置で切断した断面図)に示すように、上板の下面6aが配線9の上面に接して上板の下面6aと下地基板の上面5cとの間に空隙11が形成されてしまい、下地基板5と上板6との密着接合が困難になると共に、空隙11を接着剤で埋めようとしても接着剤が全体に行き渡らなかったり、あるいは接着剤がマイクロ流路内に流れ込んでマイクロ流路が塞がれてしまう等の問題が生じる。
【0022】
しかるに、本発明の電気化学検出チップによれば、上記のように配線9を下地基板5内に形成して下地基板5と上板6とを密着接合可能としたので、上記両者の不完全接合や接着剤による問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による電気化学検出チップの概略図
【図2】図1の電気化学検出チップのII−II線における断面図
【図3】図1の電気化学検出チップのIII−III線における断面図
【図4】本発明の電気化学検出チップにより電気化学的検出法を行った場合の電流と電圧との関係を示したグラフ
【図5】図1の電気化学検出チップのV−V線における断面図
【図6】従来の電気化学検出チップの断面図
【符号の説明】
1 電気化学検出チップ
2 作用極
3 対極
4 参照極
5 下地基板
5a 基部
5b 表面絶縁層
5c 基板5の上面
6 上板
6a 上板6の下面
7 マイクロ流路
8 端子
9 配線
10 溝
11 空隙
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極での酸化還元反応を利用して核酸のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の遺伝情報はDNA塩基配列として保存されており、遺伝子の発現を解析することは各種疾病の予防、早期診断治療、オーダーメイド医療などに有効である。生物学、医学分野での遺伝子解析においては、特定の配列を有する核酸断片を検出する方法として、ハイブリダイゼーション法が用いられている。ハイブリダイゼーション法は、一本鎖の核酸同士の塩基配列が相補的である場合に相補性を持つ塩基対間の水素結合により二本鎖核酸を形成することを利用し、この中でも特に、目的とする遺伝子を特異的に検出することができる方法として、サザンハイブリダイゼーション法が一般的に利用されている。サザンハイブリダイゼーション法では、まず試料DNAを一種類以上の制限酵素でフラグメントとし、アガロースゲル電気泳動あるいはポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけてその分子量サイズによって分画ごとに分離する。次に、分離した試料DNA断片を一本鎖に変性した後、ナイロンフィルターまたはニトロセルロースペーパーに固定化する。そして、その試料DNA断片と、この試料DNA断片に相補性を有する放射性同位元素で標識された一本鎖DNA断片とをハイブリダイズさせた後、洗浄後のフィルターをオートラジオグラフィーにかけ現像することによって、相補性DNAとハイブリダイズする特定の塩基配列を有する試料DNA断片を検出することができる。
【0003】
しかし、上記のサザンハイブリダイゼーション法を含めた方法は標識として放射性同位元素を用いるため、検出に長時間を要し、バンドが不明確となりやすく、また放射性物質の取り扱いやコストの点で問題がある。
【0004】
サザンハイブリダイゼーション法では、放射性同位元素による標識の代わりに蛍光を標識として用いる方法も知られている。蛍光物質を標識として用いる方法は、安全性および迅速性において優れた方法である。例えば、スライドガラスやシリコンなどの基板上に非共有結合(静電結合)や共有結合で固定して高密度に整列化しているDNA断片に対して、蛍光物質で標識したDNA断片をハイブリダイゼーションさせ、そのハイブリダイゼーションを検出するDNAチップがすでに利用されている。しかし、励起光による褪色が起こること、測定には専用の蛍光測定装置が必要であることや蛍光の内部消光および凝集等のために一定量以上の蛍光物質を導入することは困難であること等の欠点がある。
【0005】
一方、下記の特許文献1には、標識手段として導電性物質を使用する方法が開示されている。この方法では、出力端子を備えた電極にプローブDNA断片を固定し、ここに試料DNA断片および電気化学活性縫込み型インターカレーターを接触させると、電極上に固定されているプローブDNA断片と試料DNA断片との間に二本鎖DNAが形成され、この二本鎖DNAの内部にインターカレーターが結合するため、電極に電位を印加すると、別に設けた対極との間にインターカレーターを介して電流が流れるため、その電流量を測定することによってハイブリダイゼーションを検出することができる。この方法では、標識された試料DNA断片を調製する必要がない。インターカレーターとしては、酸化還元活性を持ったフェロセン化合物が用いられ、これは二本鎖DNAに特異的に結合することが知られている。この方法では、リアルタイムで二本鎖DNAの検出が簡便に高感度で行うことができ、分画処理が不要で、蛍光色素の褪色という問題もない。しかし、この方法では電極へプローブDNAを固定する必要があるため、固定に関する再現性、信頼性が低く、時間がかかるなどの問題があり、また再利用が困難であるなどの短所がある。また遺伝子発現のモニタリング、DNA塩基配列の決定、遺伝子変異解析、遺伝子多型解析等を効率的に行うためには上記の方法では実用化レベルを十分満足するとは言い難い。
【0006】
さらに、2枚のガラス板からなるマイクロチップにおいて、上板にはマイクロ流路を形成し、下地基板には微小電極・配線・端子を作製して、インターカレーターの存在下このマイクロ流路内に塩基配列が既知のDNA断片および試料DNA断片を含む混合溶液を導入し、微小電極を用いてサイクリックボルタンメトリーを行って電極間に流れる電流を測定することによりハイブリダイゼーションを検出するフロー型の電気化学検出チップの作製が検討されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−288080号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フロー型の電気化学検出チップでは、下地基板に電極から外部への配線の厚みによる微小な段差があるため上板と下地基板との完全な接合が困難であり、接着剤を用いる場合には接着剤が全体に行き渡らなかったり、接着剤が流れてマイクロ流路が塞がれるあるいは電極が覆われる等の問題が生ずる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気化学検出チップは、下地基板と上板とを組み合わせることによりマイクロ流路が形成され、前記下地基板上に前記マイクロ流路内に露出した一対の電極が形成され、既知の塩基配列を有する核酸断片および試料核酸断片を含む混合溶液をインターカレーターと共に前記マイクロ流路内に導入し、前記一対の電極間に電位を印加して該電極間に流れる電流を測定することにより前記混合溶液内のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップにおいて、前記電極と前記マイクロ流路の外部に設けられた端子との配線を前記下地基板の内部で行うことを特徴とするものである。
【0010】
「ハイブリダイゼーション」とは、一本鎖の核酸同士が相補的な塩基対(A−T、G−C)間の水素結合により二本鎖の核酸を形成することを言う。二本の鎖の相補性の程度が高いほど二本鎖の形成の効率は高くなり、また二本鎖構造の安定性も高くなる。
【0011】
「核酸」とは、塩基、リン酸および糖からなるヌクレオチドを基本単位とし、このリン酸が各ヌクレオチド間で糖の3’と5’位炭素の間にジエステル結合を作ることにより重合した長い鎖状のポリヌクレオチドである。糖部分がリボースかデオキシリボースかによってRNAとDNAに別れる。
【0012】
「インターカレーター」とは、核酸塩基対間に挿入結合する性質を持つ多環芳香族分子の総称である。インターカレーターは、先端に鉄イオンを含んだフェロセンを有し、電圧の変化によって酸化還元電流が発生する。インターカレーターはハイブリダイゼーションした核酸の隙間(二本鎖間)に特異的に入り込み結合するため、ハイブリダイゼーションしていない一本鎖核酸にはほとんど結合しない。このため、ハイブリダイゼーションした核酸ではインターカレーターが結合し大きな酸化還元電流が発生するが、ハイブリダイゼーションしていない核酸にはインターカレーターが結合せず酸化還元電流はほとんど発生しない。インターカレーターの構造の一例を以下に示す。
【0013】
【化1】
電極の材質は導電性のものであればよく、例えばAu、Ag、Pt等の金属、ITO、SnO2等の導電性酸化膜が挙げられる。電極の数は、二以上の複数であれば特に限定されない。
【0014】
下地基板は、不純物ドーピングによる導電性領域を作成できるものであればよく、例えばSi、GaAs、GaP、InP等を使用することができる。上板は、絶縁材料であって流路を形成できるものであればよい。下地基板と上板との接合は、例えば陽極接合、接着剤による接合、熱融着等により行うことができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の電気化学検出チップは、下地基板と上板とを組み合わせることによりマイクロ流路が形成され、下地基板上にマイクロ流路内に露出した一対の電極が形成され、既知の塩基配列を有する核酸断片および試料核酸断片を含む混合溶液をインターカレーターと共にマイクロ流路内に導入し、一対の電極間に電位を印加して電極間に流れる電流を測定することにより混合溶液内のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップにおいて、電極とマイクロ流路の外部に設けられた端子との配線を下地基板の内部で行うこととしたので、配線による接合部分の凹凸がなくなり、完全に下地基板と上板とを接合させることができ、接着剤が接合部分に行き渡らなかったり、接着剤がマイクロ流路に流れ出して流路や電極を塞ぐという問題が起こらない。また核酸を電極に固定しないため、再現性が向上し、測定時間が短縮され、再利用が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の電気化学検出チップについて、図1から図4を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態による電気化学検出チップの概略平面図であり、図2は図1の電気化学検出チップのII−II線における断面図、図3は図1の電気化学検出チップのIII−III線における断面図である。図1から図3に示されるように、電気化学検出チップ1は下地基板5の上に上板6が組み合わされることにより作製され、下地基板5上には、作用極2、対極3、参照極4の3つの電極が露出して形成されていると共に、各電極2、3、4のそれぞれに接続される端子8が形成されている。各電極2、3、4は、Au電極を下地基板5上に蒸着することにより形成した。下地基板5はp−シリコンからなる基部5aおよびSiO2からなる表面絶縁層5bにより作製し、上板6と接合する際に上板6の下面(下地基板5との接合面)6aが配線の厚みにより下地基板5の上面(上板6との接合面)5cから浮いてしまうことを防ぐため、電極2、3、4と端子8とを接続する配線9をリン拡散により下地基板5内に形成した。上板6はガラスウェハにより作製し、ウェットエッチングにより溝10を形成した後下地基板5と接合することによりマイクロ流路7を形成した。下地基板の上面5cと上板の下面6aとの接合は陽極接合により行った。
【0018】
図1に示すように、本電気化学検出チップは、作用極2、対極3、および参照極4からなる三電極方式を用いて電気化学検出法を実施するものである。作用極2と対極3との間の電位差がある電位になると、作用極2で酸化還元反応が起こり、作用極2で起こる電極反応により電流が作用極2と対極3との間を流れる。参照電極4は作用極2の電位を測定するためのものであり、参照極4には事実上電流は流れない。酸化還元材料として、ハイブリダイゼーションしたDNAに特異的に入り込むインターカレーターを使用した。電気化学的検出法とは、電極での酸化還元反応を利用して溶液中の溶存物質の分析をしたり、標準酸化還元電位等の電気化学的特性を調べたりするための方法である。電解質溶液内の電極に電圧を印加すると、電解電流と電極界面の電気二重層を充電するための充電電流が流れる。解析を行うのは電解電流であるため、充電電流の影響を小さくする必要がある。そこで本電気化学検出チップでは、測定法として微分パルスボルダンメトリー(DPV)を採用した。DPVは電圧をパルス状に印加する方法である。ノーマルパルスボルタンメトリー(NPV)は基底電位が一定であり、電位パルスの大きさが変化する。一方DPVは、電位パルスが一定であり基底電位が変化する。電流のサンプリングを、電位パルスを加える直前とパルスを基底電位に戻す直前の2点で行い、2点でサンプリングした電流値の差を各パルスの基底電位に対してプロットする。つまり、得られた電流値は実際の電流値の微分値になる。DPVでは、2点の電流値の差を測定するため、充電電流の寄与が小さく、NPVに比べて感度が非常に高い。
【0019】
図4に、本発明の電気化学検出チップによる電気化学検出法の測定結果の実施例を示す。マイクロ流路内に以下の試料を導入し、作用極と対極との間に流れる電流を測定した。試料は、▲1▼50μMインターカレーター溶液、▲2▼10μM一本鎖DNA溶液、▲3▼10μM二本鎖DNA溶液、▲4▼20μMミスマッチDNA溶液を使用した。▲2▼から▲4▼の溶液は、50μMのインターカレーター溶液と0.1Mの酢酸バッファー溶液を含んでいた。試料はマイクロ流路内を流さずマイクロ流路内に留めて測定したが、試料をマイクロ流路内に流して測定してもよい。
【0020】
図3から明らかなようにピーク時の電流は、インターカレーター溶液およびミスマッチDNA溶液では約0.15μA、一本鎖DNA溶液では約0.2μAであるのに対し、二本鎖DNA溶液では約1.05μAと非常に大きくなっている。これはハイブリダイズした二本鎖DNAの中に入り込んだインターカレーターの酸化還元によりインターカレーターに電流が流れるためであり、二本鎖DNAに結合したインターカレーターに流れる電流を測定し、二本鎖が形成されていない場合に流れる電流と比較することによりハイブリダイゼーションの程度が検出できる。また、一本鎖DNAにもインターカレーターが若干結合するため、インターカレーター溶液よりも一本鎖DNA溶液の方がピーク時の電流がわずかに大きい。二本鎖DNAはPCR産物でもよく、この場合はPCRによる増幅の確認と産物の量を測定することが可能となる。
【0021】
上記電気化学検出チップによれば、図1中のV−V線断面概略図である図5に示すように、マイクロ流路7内の電極2、3、4とマイクロ流路7外の端子8とを接続する配線9を、下地基板の上面5c上に突出する状態で形成するのではなく、下地基板5の内部に形成して上面5c上に突出することのないようにしたので、下地基板の上面5cと上板の下面6aとを平坦面同士で密接させて接合することができる。これにより、上記配線9を下地基板の上面5c上に突出させて形成すると、図6(図5と同様の位置で切断した断面図)に示すように、上板の下面6aが配線9の上面に接して上板の下面6aと下地基板の上面5cとの間に空隙11が形成されてしまい、下地基板5と上板6との密着接合が困難になると共に、空隙11を接着剤で埋めようとしても接着剤が全体に行き渡らなかったり、あるいは接着剤がマイクロ流路内に流れ込んでマイクロ流路が塞がれてしまう等の問題が生じる。
【0022】
しかるに、本発明の電気化学検出チップによれば、上記のように配線9を下地基板5内に形成して下地基板5と上板6とを密着接合可能としたので、上記両者の不完全接合や接着剤による問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による電気化学検出チップの概略図
【図2】図1の電気化学検出チップのII−II線における断面図
【図3】図1の電気化学検出チップのIII−III線における断面図
【図4】本発明の電気化学検出チップにより電気化学的検出法を行った場合の電流と電圧との関係を示したグラフ
【図5】図1の電気化学検出チップのV−V線における断面図
【図6】従来の電気化学検出チップの断面図
【符号の説明】
1 電気化学検出チップ
2 作用極
3 対極
4 参照極
5 下地基板
5a 基部
5b 表面絶縁層
5c 基板5の上面
6 上板
6a 上板6の下面
7 マイクロ流路
8 端子
9 配線
10 溝
11 空隙
Claims (1)
- 下地基板と上板とを組み合わせることによりマイクロ流路が形成され、前記下地基板上に前記マイクロ流路内に露出した一対の電極が形成され、既知の塩基配列を有する核酸断片および試料核酸断片を含む混合溶液をインターカレーターと共に前記マイクロ流路内に導入し、前記一対の電極間に電位を印加して該電極間に流れる電流を測定することにより前記混合溶液内のハイブリダイゼーションの有無を検出する電気化学検出チップにおいて、
前記電極と前記マイクロ流路の外部に設けられた端子との配線を前記下地基板の内部で行うことを特徴とする電気化学検出チップ。
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CN116024310A (zh) * | 2023-02-27 | 2023-04-28 | 常州先趋医疗科技有限公司 | 基于二价铁离子放大电信号的检测方法及系统 |
-
2002
- 2002-09-20 JP JP2002275142A patent/JP2004109049A/ja not_active Withdrawn
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