JP4831429B2 - Dna及びrna中の核酸塩基の電気化学的検出方法 - Google Patents

Dna及びrna中の核酸塩基の電気化学的検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性カーボン電極を用いて試料中に含まれるDNA、およびRNA中の各々の核酸塩基を標識することなく、簡便にかつ高感度に識別、定量する方法に関するものである。
ヒトゲノム計画の完了に伴い、得られたヒトゲノムの配列情報からの遺伝情報の解読(遺伝子の同定)や、その機能解析などがポストシークエンス研究としての主要な課題である。それに関連して、ゲノム中の一つの核酸塩基の変異(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)を調べるプロジェクトが国内外でスタートしている。SNPは数百から数千塩基に一つの割合で出現し、ヒト全ゲノム32億塩基中には、300万から1000万個所あると見積もられている。生物・医学的に意味のある遺伝子より得られたSNP情報は、例えば、疾患遺伝子の原因や機構における分子レベルの解明をもたらすだけでなく、さらにはそれらの知見を基に、各個人に対する創薬や薬剤耐性の解明などが期待されるため、非常に重要である。
SNPの計測法としては、未知の変異を調べる場合と、既知の変異の有無を調べる二種類に大別される。未知の変異に対しては、DNAの再シークエンシング(近年ではダイデオキシ法が主流)が最も一般的である。
一方、配列が既知の特定の塩基配列を有するDNAと比べて変化の有無を検出する方法としては、ハイブリダイゼーション法が主流となっている。ハイブリダイゼーション法とは、ガラスなどの固体基板上に調べたいDNAに相補的なDNA断片(プローブDNA)を固定化し、そこへ被験DNAを作用させ、両者間において二本鎖形成(ハイブリダイゼーション)を行い、このハイブリダイゼーションの有無(強度)を検出するものであり、このため、高選択的な検出方法である。被験DNA中に塩基配列の違いがある、つまりSNPが存在する場合、ハイブリダイゼーションの熱力学的安定性はSNPがない場合に比べて弱いため、ハイブリダイゼーションの度合が小さくなることを利用して、対象の遺伝子配列のSNPを検出する報告が多数なされている。
また、このハイブリダイゼーション法の検出技術としては、蛍光法と質量分析法が主流となっている。蛍光法では、蛍光標識した被験DNAとプローブDNAとの間でのハイブリダイゼーションを起こさせ、その蛍光強度を検出する。しかし蛍光検出ではバックグラウンド蛍光と蛍光の退色性による感度の低下が常に問題となる。このため定性的なSNPの判別には比較的良好な結果を示すが、定量性に欠ける。近年では、特にcy3、cy5と呼ばれる蛍光色素による標識が多用されており、上記に改善が見られるが、両蛍光分子は非常に高価であるという問題がある。
対照的に質量分析法は、各核酸塩基の分子量の違いが直接的に反映されるため、SNPの結果としては一目瞭然の結果を示す。しかしながら、質量分析法は、対象DNAの精製を始めとし、煩雑な前処理を必要とし、さらには測定、解析、装置の管理に専門性が必要とされる上に、装置自体の価格が破格である。
このような試料中の目的遺伝子中のSNPの検出法において、安価で操作性に優れ、かつ高い感度などの条件を充分に有する可能性のある技術の一つとして電気化学的手法が挙げられる。電気化学法は、蛍光法のような光学的手法で必要なレーザー光源を必要としないため、簡便で極めて安価な部品から検出・測定のシステムを構成できる。
このため一般的には、上記で示した蛍光分子の変わりに、電気化学的活性基を標識した被験DNAを固定化プローブとハイブリダイゼーションさせた後、(1)その電気化学信号の増加を調べる方法(特許文献1、非特許文献1)、(2)ハイブリダイゼーション後、電気化学活性を有し、なおかつ二本鎖を特異的に認識しうる分子(インターカレータ)を作用させ、その電気化学信号の増減から間接的に塩基配列の違いを識別する方法が考案されている(特許文献2、非特許文献2)。これらの手法においても、SNPの存在の有無によってハイブリダイゼーションの熱力学的安定性に差が生じることをSNP判別の原理としている。逆に、熱力学的安定性によらない手法としては、(3)DNA二重鎖内の特定の構造を介した電荷移動を利用した報告がなされている(特許文献3、非特許文献3、4、5)。
特開平9-288080号公報 特開平5-199898号公報 特表2002-510791 Anal. Chem. (2000) 1334-1341 Anal. Chem. (1994) 3830-3833. Nature Biotechnol. (2000) 1096-1100. J. Am Chem. Soc. (2004) 14732-14733. Proc. Nat. Acad. Sci. U. S. A. (2005) 11606-11610.
しかしながら、上記の報告のように、被験DNAに化学修飾する必要がないような、最も簡便なプロセスだけで済む技術を基にした測定方法においてさえも、ハイブリダイゼーション法を適用する限りは、固定化プローブ側には電極基板に固定化させるための官能基の導入、もしくは電気化学活性基を標識する工程が必要不可欠である。さらには、これらプローブ分子の合成はコストが高いと言う問題もある。
一方で、全く標識の工程を必要としない検出技術として、DNAを構成する核酸塩基の電気化学的な直接酸化が挙げられる。DNAおよびRNAを構成する全ての核酸塩基は電気化学活性であり、それぞれの塩基の酸化される電位が異なることから、原理的にはすべての塩基を検出可能である。実際に、たとえば、全塩基の中で最も酸化の容易なG(グアニン)塩基に着目して、DNA中のG塩基を電気化学的に酸化させてその濃度を測定する方法が知られている(非特許文献6)。
J. Am Chem. Soc. (1995) 8933-8938.
このように電気化学測定は、溶液中の目的成分について、その濃度あるいは濃度変化を電極上での電流信号として変換、出力することで、簡便かつ高感度に測定の対象である目的成分を測定することができることから、この測定方法を、電気化学的に活性な核酸塩基類を構成成分としているDNAおよびRNAの測定に応用することが考慮できる。
電気化学検出用の電極としては、従来から導電性に優れたグラファイト構造のカーボン材料が多用されてきた。しかしDNAおよびRNAを構成する核酸塩基の直接的な酸化による検出では電極に高電位をかける必要があり、グラファイト電極はこの高電位に不安定であるため、酸性および中性測定溶液中では全塩基のうちGおよびA(アデニン)塩基に基づく電気信号しか安定に検出できない。さらにはグラファイト電極においては、DNAの電極表面への吸着による表面汚染が激しく、安定性・精度の低下を招くといった問題があった。測定溶液として高アルカリ水溶液を用いると、これら核酸塩基の酸化電位は低電位側にシフトするため、グラファイト電極においても酸化、検出されようになる事が報告されているが、反面、酸化電流の減少も伴う。すなわち、電気化学的手法のメリットである高感度測定が達成できない。
したがって、本発明は上記従来技術の問題点を解消して、試料中に含まれるDNA、およびRNA中の各々の核酸塩基を標識することなく、簡便にかつ高感度に識別、定量する方法を提供すること、特に目的の配列を有するDNAと一塩基多型の関係にある変異型DNAを非標識で、かつ高感度に検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、DNA及びRNAを構成する5種類の核酸塩基である、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)のうち、最も酸化電位の高いU塩基に基づく酸化を検出可能な広い電位窓を酸化側に有する作用電極を用いて、試料とするDNA、およびRNA中の各々の核酸塩基を電解酸化して検出することにより、上記課題が解決されることを発見し本発明を完成したものである。
即ち、本発明はつぎの1〜の構成を採用するものである。
1.DNA又はRNAを含有する電解質溶液の試料中に、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)に基づく酸化を検出可能な電位窓を酸化側に有する作用電極、対極及び参照電極を挿入し、作用電極に電位を印加して試料中の各核酸塩基の電解酸化電流を測定し、試料中の各核酸塩基の電解酸化電流と標準試料中の各核酸塩基の電解酸化電流を対比して、試料中の標準試料と異なる核酸塩基を非標識に検出することを特徴とするDNA又はRNA中の各核酸塩基の電気化学的検出方法。
.DNAを含有する試料中の1塩基多型を非標識に検出することを特徴とするに記載の検出方法。
.電解酸化電流の測定結果を、変異に関与しない少なくとも1種の核酸塩基の単位濃度により規格化し、補正することにより核酸塩基の変異部位を非標識に検出することを特徴とする1又は2に記載の検出方法。
.前記作用電極が銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)に対して2.0〜2.1ボルト(VvsAg/AgCl)の電位窓を酸化側に有するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の検出方法。
本発明によれば、DNAおよびRNA中の各々の核酸塩基を簡便に、かつ高感度に電気化学的に識別、定量することが可能となる。特に、目的の配列を有するDNAと一塩基多型の関係にある変異型DNAを非標識で、ハイブリダイゼーションさせることなく簡便、かつ高感度に低コストで検出することができる。
本発明では、DNA又はRNAを含有する電解質溶液の試料中に、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)に基づく酸化を検出可能な電位窓を酸化側に有する作用電極、対極及び参照電極を挿入し、作用電極に電位を印加して試料中の各核酸塩基の電解酸化電流を測定することによりDNA又はRNA中の核酸塩基を電気化学的に検出する。
DNA、RNAを構成する5種類の核酸塩基であるG、A、T、C、Uのうち最も酸化電位の高いものはU塩基である。したがって、本発明においてはU塩基に由来する酸化を検出可能な広い電位窓を酸化側に有する作用電極を使用することが必要となる。
好ましい作用電極としては、銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)に対して2.0〜2.1ボルト(VvsAg/AgCl)の電位窓を酸化側に有するものが挙げられる。このような電極としては、ナノオーダーの平坦面性に優れる電極表面を有するものを使用することが好ましい。
具体例としては、例えば、本発明者等が先に提案した、ECRスパッタ法等により作製された高導電性カーボン薄膜電極を使用することができる。(特許文献4参照)
特開2006−090875号公報
この高導電性カーボン薄膜電極は、使用用途に応じて選択した基板にECRスパッタ法等により高導電性カーボン薄膜を堆積させることによって作製することができる。このような基板としては、例えば、導電性基板であれば、ドープしたシリコン単結晶ウエハが使用され、絶縁基板であればガラスやポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、等の各種高分子が使用される。
本発明で作用電極として使用する高導電性カーボン薄膜電極としては、その炭素間結合のsp3結合の比率がsp3とsp2結合の和に対して、0.1〜0.5程度であることが望ましい。このような電極は、上記した5つの核酸塩基の全てを酸化可能な電位窓を有し、かつ電極として使用するに十分な導電性を有する。
本発明において作用電極とするカーボン薄膜電極としては、DNA、RNAを構成する5種類全ての核酸塩基の電解酸化による識別、定量が可能な広い電位窓を酸化側に有する作用電極であれば、上記の電極に制限されるものではない。たとえば、近年では、ボロンをドープしたダイヤモンド(BDD)薄膜も高電位印加によっても安定なカーボン電極材料として知られている。このBDD薄膜としては、市販されているものを使用することができる。
また、対極及び参照電極として使用する電極には特に制限はなく、従来このような電極に使用されている電極はいずれも使用することができる。
本発明の測定手法において測定される対象分子は、核酸塩基を有する分子であれば特に限定されない。具体的な対象分子としては、例えば、デオキシリボヌクレオチドからなるDNA、cDNA、リボヌクレオチドからなるRNA、mRNAなどが挙げられる。配列の長さとしては、数十塩基程度が望ましいが、必要に応じて適当な制限酵素で断片化し、電気泳動にかけて目的の配列を含むDNAおよびRNA断片を抽出し使用しても良い。
以下、ECRスパッタ法により作製された高導電性カーボン薄膜電極を使用する場合を例にとり、本発明について説明する。
図1は、本発明の核酸塩基の電気化学的検出方法に使用する測定装置の1例を示す模式図である。この装置1は、電解質水溶液を収容する反応室2内に、作用電極3、対極4及び参照電極5を配置したもので、これらの電極はポテンシオスタット6を介してコンピュータ7に接続されている。作用電極3の表面には、既知の面積を有する穴をあけた絶縁テープ8を貼り付けることにより、電極面積を所定のものとすることができる。
つぎに、図1の測定装置を使用して核酸塩基を電気化学的に検出する手順を説明する。
まず、上記作用電極、適当な対極、参照電極と組み合わせて電解質水溶液中に挿入する。使用する電解質溶液の濃度、種類、およびpHについては、特に制限はないが、安定で、安価なものが好ましい。具体的には、作用電極に高電位を印加した場合でも電解質の分解が起こりにくく、感度良くピーク電流値が得られる弱酸性のpH緩衝液の使用が好ましい。例えば、pH5前後、濃度50〜100mmol/L前後の酢酸およびリン酸緩衝液等が好都合に用いられる。また、緩衝液中においてDNAおよびRNA分子の自己相補形成が懸念される場合には、それを防ぐための手段として、高電位を印加した場合でも分解が起こりにくい支持塩(過塩素酸塩類、硝酸塩類など)を緩衝液中に0.3〜1mol/L程度の濃度で適宜添加しても良い。
次に、上記作用電極に電位を印加し、バックグラウンド測定の結果を得る。ここへ目的分子を添加し、十分に攪拌した後、再度上記作用電極へ電位を印加する。測定結果として、例えばG、A、Cから構成されるDNAオリゴマー1(5’-GAC-3’)を添加した場合、各G、A、Cに応じたピーク電流が異なる電位に同時に得られる。また、この結果からバックグラウンド電流の結果を差し引くことによって、より明瞭な結果が得られる。これらの各塩基の電流量は、分子の濃度、および分子中における個数に比例する。このため、予め、DNA、およびRNAの構成単位である個々の核酸塩基もしくはそれらの誘導体の濃度と電流値の検量線を作製しておけば、オリゴマーとしての濃度、および分子中での各塩基の成分比が容易に決定することができる。
次に、上述の特徴を活用したDNA間の一塩基多型の検出について説明する。また、その検出方法の概略図を、図2に例示した。
上記同様に、電解質水溶液についてバックグラウンド測定を行った後、ここへ目的分子を添加し、十分に攪拌した後、再度上記作用電極へ電位を印加する。測定結果として、例えばG、A、T、Cから構成されるDNAオリゴマー2(5’-GGACTC-3’:野生型)を添加した場合、各G、A、T、Cに応じたピーク電流が異なる電位に同時に得られる。これと同様に上述と同じくG、A、T、Cから構成されるが、その一塩基が異なる(GからAへと変異した)同濃度のDNAオリゴマー3(5’-GAACTC-3’:変異型)の測定結果では、オリゴマー2とはGとAのピーク電流が異なった結果が得られる。
すなわち、変異型オリゴマー3の結果から野生型オリゴマー2の結果を差し引くと、変異のあった塩基がA、すなわちグラフとしては増えた塩基が正の値として、また逆に減った塩基がG、すなわちグラフとしては減ったG塩基が負の値として、さらには、変化のなかった、T、Cにおいては、グラフの電位軸にほぼ水平な結果(電流値の変化がゼロ)が得られる(図2参照)。また、各々の測定結果から予めバックグラウンドを差し引いた結果どうしを比較すれば、さらに明瞭な変化、すなわち低濃度域での変化が検出可能である。
また、実際の測定系では正常なDNAと変異DNAの濃度が異なる場合、電流値の差から変異点を検出することは困難であると予想される。その様な場合、測定結果の濃度補正を適宜行う必要がある。例えば、上述のオリゴマー2の濃度がオリゴマー3の10倍であった場合、対応する測定結果において、変異に関与しない2種類(T,C)のいずれか、もしくは両方の塩基の電流値を利用して濃度で規格化し補正した後に差分を計算することで、上述と同様に変異部分がGからAであることが検出可能である。その際、各々の測定結果から予めバックグラクウンド電流を差し引いておく必要がある。
本発明の全核酸塩基の識別測定、および一塩基多型の検出を行う装置は、上記のように5つの核酸塩基の全ての酸化を検出可能な電位窓の広い電極を備えている電気化学セルを具有していることを特徴としている。さらに、pH調製剤、電流-電位測定装置等、本発明の測定系を構築するための部材あるいは試薬等を組み合わせて測定キットとしてもよい。また、目的のDNA、およびそれと一塩基多型の関係にある変異DNAとを同時に測定することのできるような多電極とし、およびそれに対応できるマルチ電流-電位測定装置を組合せても良い。
上記のとおり、本発明のDNA、およびRNA中の各々の核酸塩基の識別、定量、および一塩基多型の検出方法および測定装置は、従来の手段に必要不可欠であった標識とハイブリダイゼーションの工程を不要とするものであり、簡便、迅速、かつ高感度に全核酸塩基の識別、定量、および一塩基多型検出を行う上で極めて有効である。
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。電気化学的な測定法として下記では微分パルスボルタンメトリーによる実施例を示すが、その他にも、スクウェアパルスボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、交流ボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリー、等の手法が適宜使用可能である。
(実施例1)ECRスパッタカーボン電極を用いた核酸塩基成分の測定
基板としてシリコンウエハー(サイズ:2インチ)を使用し、ECRスパッタ法によって作製された膜厚40nmのカーボン薄膜上に直径1mmの穴を開けた絶縁テープを貼り付けて電極面積が既知のカーボン薄膜電極とした。
このカーボン電極を、0.3mol/Lの過塩素酸ナトリウムを含むpH5.0の0.05mol/L酢酸緩衝液中に挿入し、ポテンシオスタット(CHIインスツルメンツ社製、ALS760)に参照電極(Ag/AgCl)、対極(Pt)とともに接続した。ここに濃度が100μmol/Lとなるように核酸塩基成分である各ヌクレオチド、グアノシンモノリン酸(GMP)、アデノシンモノリン酸(AMP)、シチジンモノリン酸(CMP)、チミジンモノリン酸(TMP)、ウリジンモノリン酸(UMP)を添加し、一定のパルス振幅、0.05V(対銀一塩化銀電極)を50ミリ秒、電位増加(パルス高さ)+0.005V、パルス周期0.2秒と設定して測定した場合の結果を図3に示した。
図3において、横軸は電位、縦軸はパルスを与える直前と与えた後のそれぞれの電解電流の差分値である。
図3から明らかなように、各塩基成分すべての酸化電流が明確に観測され、さらには、全てのヌクレオチドにおいて、繰り返し測定に良好な再現性が見られた。なお、この結果によれば、各々のヌクレオチド単位は、S(応答電流)/N(バックグラウンド電流)=2とした場合、およそ1μmol/L程度まで検出可能であった。
(比較例1)
上記実施例1において、ECRカーボン電極のかわりに従来から使用されているグラッシーカーボンディスク電極(電極直径:3mm)を用いた以外は、同様の条件で検討した結果、GMP、AMPの電解電流値は観察されたが、その他の高酸化電位を有するTMP、CMP、およびUMPの酸化電流値は観察されなかった。
すなわち、グラッシーカーボン電極は、より高酸化電位を有するTMP、CMP、UMPを酸化するに必要な高電位に対して不安定であり、グラッシーカーボン電極の有する電位窓範囲内では、G、Aに基づく酸化しか測定できなかった。またG、Aの一度目の測定は良好なものの、一回目の測定による酸化生成物の表面吸着が激しいために、ECRカーボン電極に比べて繰り返し測定に再現性が見られなかった。
以上のことから、ECRカーボン電極は従来のグラッシーカーボン電極に比べて顕著な優位性を示すことがわかった。
(実施例2)ECRスパッタカーボン電極によるDNAオリゴマー中の一塩基多型の検出
実施例1と同様の作用電極、実験装置、測定条件にてDNAオリゴマー中の一塩基多型の電気化学検出を行った。濃度が3μmol/LとなるようにDNAオリゴマー4(5’-GTT-GTT-GTT-3’)、およびDNAオリゴマー5(5’-GTT-GTC-GTT-3’)を添加し、電気化学測定を行った場合の結果を図4に示した。
図4から明らかなように、オリゴマー4、およびオリゴマー5の測定において、各々のDNAオリゴマー中の各塩基量に基づく酸化電流が観測された。この各々の結果を差し引くと、たとえばオリゴマー5の測定結果からオリゴマー4の結果を差し引いた場合、Gに関しては変化がなく、変異のあった塩基部分がCからTであることが検出可能であった。このように、酸化に高電位を要するCおよびT間の変異であっても、ECRを用いると、その変異が検出可能であった。
(実施例3)濃度が異なるDNAオリゴマー間での一塩基多型の検出
実際の測定系では正常なDNAと変異DNAの濃度が異なる場合、電流値の差から変異点を検出することは困難であると予想される。そこで、実施例1と同様の作用電極、実験装置、測定条件にて、異なる濃度間における一塩基多型検出の為の測定結果の補正方法を検討した。
まず、30 μmol/Lのオリゴマー6(5’-CAG-CAA-CAG-3’)、ならびに 3μmol/Lのオリゴマー7(5’-CAG-CAG-CAG-3’)の測定を行い、バックグラウンド電流を引き、オリゴマー6の測定結果を変異に関与しなかったC塩基の単位濃度で規格化を行った解析波形から、オリゴマー7の測定結果を差し引いた結果が図5である。図5に示したように、異なる濃度間においても規格化、補正を行うことで、実施例2の結果と同様の結果が得られ、充分に一塩基多型の検出(GからA)が可能であった。
(比較例2)グラッシーカーボン電極によるDNAオリゴマー中の一塩基多型の検出
上記の実施例2におけるECRカーボン電極の優位性を示すため、ECRカーボン電極のかわりに従来から使用されているグラッシーカーボン電極を用いて検討した。
グラッシーカーボンディスク電極(電極直径:3mm)を、pH5.0の0.05mol/L酢酸緩衝液中に挿入し、実施例2と同様の実験装置、測定条件にてDNAオリゴマー中の一塩基多型の電気化学検出を行った。図6に示したように、3μmol/Lのオリゴマー8(5'-ACC-ACC-ACT-3')の測定を行い、バックグラウンド電流を引いた場合、A塩基に基づく電解酸化電流値はわずかに観察されたが、T、Cの酸化電流値は観察されなかった。
すなわち、グラッシーカーボン電極は、高酸化電位を有するT、C塩基を酸化するに必要な高電位に対して不安定であり、グラッシーカーボンの有する電位窓範囲内では、Aに基づく酸化しか測定できないことが分かる。このことから、GA間での変異においては検出可能なものの、本比較例のようにCT間、もしくはGT間の変異は観察できない。また、実施例1での核酸塩基モノマーでの試験同様、GとAの電解酸化に関しては一度目の測定は良好なものの、一回目の測定による酸化生成物の表面吸着が激しいために、ECRカーボン電極に比べて繰り返し測定に再現性が見られなかった。
以上の実施例及び比較例からも明らかなように、本発明は、該導電性カーボン電極を用い、DNA、RNA中の各々の核酸塩基を同時に、識別、定量し、またその特徴を利用して一塩基多型を、簡便、かつ高感度に非標識で検出する方法を提供するものであって、従来のように標識、ならびにハイブリダイゼーションの工程を一切必要としないため、極めて簡便な手法である。さらには、該作用電極は、吸着汚染に対する高い抑制性、極めて低いバックグラウンド電流特性を併せ持つため極めて高感度な測定結果が得られる。したがって、本発明は、標識を必要とせず簡便で、高感度なDNAおよびRNA中の全核酸塩基成分の定量方法として極めて有用である。またこれによって、蛍光法とMS法によるそれぞれの検出法の利点を併せ持つ一塩基多型の検出が、簡便、迅速、かつ高感度にできるものである。
本発明で使用する核酸塩基の電気化学的検出に使用する測定装置の1例を示す模式図である。 本発明におけるオリゴヌクレオチド中の一塩基多型の電気化学検出方法の原理を例示した概略図である。 実施例1において、各々の核酸塩基成分の電解酸化電流を測定した結果を示した図である。 実施例2において、DNAオリゴマー中の一塩基多型の検出を測定した結果を示した図である。 実施例3において、濃度の異なるオリゴヌクレオチド間における一塩基多型の検出を、濃度補正を行った場合の結果を示した図である。 比較例2において、グラッシーカーボン電極によるDNAオリゴマー中の一塩基多型の検出を測定した結果を示した図である。
符号の説明
1 測定装置
2 反応室
3 作用電極
4 対極
5 参照電極
6 ポテンシオスタット
7 コンピュータ
8 絶縁テープ

Claims (4)

  1. DNA又はRNAを含有する電解質溶液の試料中に、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)に基づく酸化を検出可能な電位窓を酸化側に有する作用電極、対極及び参照電極を挿入し、
    作用電極に電位を印加して試料中の各核酸塩基の電解酸化電流を測定し、
    試料中の各核酸塩基の電解酸化電流と標準試料中の各核酸塩基の電解酸化電流を対比して、試料中の標準試料と異なる核酸塩基を非標識に検出する、
    ことを特徴とするDNA又はRNA中の各核酸塩基の電気化学的検出方法。
  2. DNAを含有する試料中の1塩基多型を非標識に検出することを特徴とする請求項に記載の検出方法。
  3. 電解酸化電流の測定結果を、変異に関与しない少なくとも1種の核酸塩基の単位濃度により規格化し、補正することにより核酸塩基の変異部位を非標識に検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. 前記作用電極が銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)に対して2.0〜2.1ボルト(VvsAg/AgCl)の電位窓を酸化側に有するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の検出方法。
JP2007140216A 2007-05-28 2007-05-28 Dna及びrna中の核酸塩基の電気化学的検出方法 Active JP4831429B2 (ja)

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