JP2004108892A - 蛍光分光分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価でかつ複数の測定点で同時に蛍光相関分光分析が可能な装置を供給することを目的とする。
【解決手段】励起光学系は、励起光を試料(5)の複数の測定点に照射しつつ繰返し走査する走査系(3)を有し、検出器(6)から出力された蛍光強度情報をそれぞれの測定点に対応づけて演算を行い、それぞれの測定点に対応した統計関数を得る統計解析装置(7)を備えた蛍光分光分析装置である。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光分光分析装置に関し、とくに複数の測定点で同時に蛍光相関分光分析が可能な蛍光分光分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の光学技術やデータ解析技術の進歩に伴い、蛍光の強度を統計的に解析して、蛍光分子の特性に関する情報を得る解析手法が開発されてきている。このような技術としては、蛍光相関分光分析法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)、光子計数ヒストグラム解析法(Photon Counting Histogram Analysis)、蛍光寿命解析(Fluorescence Decay Time Analysis)等が知られている。
【0003】
蛍光相関分光分析法は蛍光強度の揺らぎを解析し、分子毎の拡散時間や平均分子数を求める手法で、Single molecule Detection in Solution,69P,Ch.Zander,J.Enderleing,R.A.keIler等に詳述されている。
【0004】
また、光子計数ヒストグラム解析は蛍光揺らぎデータから観測領域内の分子毎の光子計数(明るさ)や平均分子数を求める手法であり、The Photon Counting Histogram in Fluorescence Fluctuation Spectroscopy, Yan Chan et.al., Biophysical Journal Vol.177 July 1999 553−567、Distribution of molecular aggregation by analysis of fluctuation moments. Hong Qian and Elliot L.Elson.Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.87,pp.5479−5483,july 1990等に記載されている。
【0005】
蛍光寿命解析法は、蛍光の減衰時間を解析することにより、分子毎の蛍光寿命や平均の分子数を求める手法で、Single molecule Detection in Solution,59p,Ch.Zander,J.Enderleing,R.A.keller等に記載されている。
【0006】
蛍光相関分光分析(Fluorescence Correlation Spectroscopy)は特によく知られており、国内外の研究機関で各種分子の解析、特に生物由来の分子の解析に多く用いられている。前述のように、蛍光相関分光分析は蛍光分子のブラウン運動に基づく蛍光強度の時間的な揺らぎを測定し、この自己相関関数を求めることにより、測定領域に於ける蛍光分子の固有の特性値を得る測定方法である。
【0007】
蛍光強度の揺らぎの実測値から自己相関関数を求めるには式(1)が用いられる。
【0008】
【数1】
Figure 2004108892
蛍光強度の測定には、走査型レーザ顕微鏡等で採用されている共焦点光学系が一般に用いられる。図15に共焦点光学系の構成を示す。この光学系では高い空間解像度が得られるという特徴を備えている。
【0009】
この共焦点光学系を用いた蛍光分光分析では測定領域内の励起光分布や検出器の感度プロファイルをガウス分布と近似することにより、自己相関関数は式(2)の関係で記述されることが知られている。
【0010】
【数2】
Figure 2004108892
蛍光強度の実測値を式(1)に代入して求めた自己相関関数を用い、式(2)へのフィッティング演算を行うことにより、当該分子の拡散時間を表すτ。や、平均の個数Nと言った目的の分子に対する特性値を求めることができる。この拡散時間の違いを利用すると、分子の会合、他の分子との結合等、観察される分子の状態を推定することが可能となる。現在では蛍光相関分光分析法は、特に生物学的な物質の各種研究に応用が拡がってきている。「蛍光相関分光法によるDNA検出」精密工学会誌(1999)Vbl.65,No.2,175−180には、このような測定の例が記載されている。
【0011】
この蛍光相関分光分析法は、当初は溶液状態の試料に対して用いられたが、測定が非侵襲に行える利点が注目され、近年では細胞系などの不均質な試料にも用いられるようになってきている。例えば、”Ligand−Receptor Interaction in the Membrane of Cultured Cells Monitored by Fluorescence Correlation Spectroscopy”Bio.Chem.,vo1382,pp.371−378には、細胞膜上のリガンドレセプター反応の測定が記載されている。
【0012】
試料が溶液状態となっている溶液系では基本的に全ての場所が均一と考えられるため、吸着等の特異現象が発生しやすい容器界面の近傍を避けると、溶液中の1点を測定すれば系全体の様子を把握することができた。しかし、細胞の様に不均質な系では、個々の場所で発生している事象が異なり、測定結果は測定場所に大きく依存する。換言すると、測定場所は測定結果の一部とも言える。
【0013】
また、このような系、特に細胞系では、異なる地点間の事象が互いに関連をもっており、ある地点のある事象が別の地点の別の事象を引き起すと言った時間的空間的な関連を持っている場合が多い。このような系を的確に把握するためには、異なる地点間で同時に測定を行うことが不可欠である。近年研究者の間からは異なる地点間で同時に測定を行うことの要望が上がってきている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
現在入手可能な蛍光分光分析装置は、一度に測定できる観測点の数は1点のみである。複数の測定点で測定したいという要望に応えるため、1点の測定が終ると次の地点に移り、逐次的に複数の測定地点を測定する装置があるに過ぎない。
【0015】
相関分光分析において、精度の良いデータを得るためには観測対象物質の拡散時間に対し、最低1000倍の長さのデータを蓄積することが必要とされる。例えば、拡散時間が50msの物質の分析を行う場合、約50秒間の測定が必要である。この場合、1ヶ所の測定に50秒必要であるため、複数の地点を測定する際には50秒ずつの間隔でしか測定できない。測定の各地点で起る事象の間に時間的な関連性がない場合には、このような方法も適用可能だが、このような逐次的な多点測定では時間的に早い関連を持った事象間の関連性は解析することが不可能である。
【0016】
複数の測定点を同時に測定するためには、複数の測定系を準備し平行して測定する方法も考えられる。しかし、蛍光相関分光分析で用いられる測定系は、レーザを光源に用いる共焦点光学系を単光子計測可能な超高感度の検出器と組合わせて用いるため高価である。複数の測定系を得る為には測定装置が高価になるととともに、大型化してしまうと言う欠点がある。
【0017】
また、細胞を測定する場合、複数の測定点相互の間隔は非常に狭く、複数の対物レンズを用いることができない。従って、測定系を複数準備したとしても、1個の対物レンズで複数のヶ所を励起し、かつ、そこからの蛍光を補足する必要がある。即ち、対物レンズの数は1個として増加しないように構成しても、励起光を1本にまとめるためのミラー系、補足された蛍光を測定系毎に分離するミラー系が必要であり、その結果、励起光量および蛍光の減少、目的とする波長が自由に選べない等の設計上の制限が多く発生する。
【0018】
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、安価でかつ複数の測定点で同時に蛍光相関分光分析が可能な装置を供給することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解消するための本発明は、励起光学系は、励起光を試料の複数の測定点に照射しつつ繰返し走査する走査系を有し、検出器から出力された蛍光強度情報をそれぞれの測定点に対応づけて演算を行い、それぞれの測定点に対応した統計関数を得る統計解析装置を備えた蛍光分光分析装置である。
【0020】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、走査系は、少なくとも1つの測定点において励起光を照射したまま所定時間停止した後、次の測定点を走査する蛍光分光分析装置である。
【0021】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、測定点に於ける停止時間は、1ミリ秒以上、かつ1秒以下である蛍光分光分析装置である。
【0022】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、走査系は、測定点に於ける停止時間を変化させながら走査する蛍光分光分析装置である。
【0023】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、統計解析装置は、検出器のそれぞれの測定点での測定情報を抽出し、抽出された測定情報を時間経過に対応付けた断続する出力情報を作成し、この出力情報に基いて、抽出された測定情報のみを用いた統計解析を行うことにより、それぞれの測定点毎に統計関数を求める機能を有する蛍光分光分析装置である。
【0024】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、統計解析装置は、統計関数において生ずるブラインドの範囲を、このブラインドの範囲の前後の関数値に基づく補間演算を行って補間し、ブラインド範囲の生じていない統計関数を求める機能を有する蛍光分光分析装置である。
【0025】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、測定点での測定情報は、測定位置またはその近傍を含めた実質的に同位置とみなせる位置に対応する検出器からの測定情報である蛍光分光分析装置である。
【0026】
また本発明は、上記記載の発明である蛍光分光分析装置において、統計関数は、自己相関関数である蛍光分光分析装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る蛍光分光分析装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0028】
レーザ光源1から出射したレーザ光はダイクロイックミラー2で反射された後XYスキャナ3に入射する。ここで、光軸はX軸、Y軸方向に偏向され、対物レンズ4に入る。これによって視野内の焦点面上にある試料5の任意の位置に、測定領域(焦点領域)を位置することができる。
【0029】
焦点領域内の蛍光分子から発した蛍光は同じ対物レンズ4で補足され、逆の光路を通りダイクロイックミラー2に導かれる。ダイクロイックミラー2では、励起光と比べ波長の長い蛍光を透過するように設計されており、蛍光は光検出器6に到達する。光検出器6としてはAPD(アバランシェフォトダイオード)、あるいは光電子増倍管などが好適である。
【0030】
光検出器6で光電変換された蛍光の強度信号は、相関解析装置7に入力される。相関解析装置7にはまた、測定領域の位置情報がXYスキャナー駆動装置8より入力される。相関解析装置7は検出器6からの蛍光強度信号と、XYスキャナ駆動装置8からの測定位置の位置情報と対応づけて相関演算を行い、測定位置に対応した相関関数を演算する。
【0031】
次に本蛍光分光分析装置の動作を説明する。
本実施の形態において、XYスキャナ3は対物レンズ4の視野内において測定領域をラスタースキャンすることもできるし、任意の一つまたは複数の測定位置を順次走査したり停止させることもできる。そこで、3つの測定点A、B、Cを順次走査する動作について説明する。
【0032】
図2、図3は、XYスキャナによる測定点の走査の様子を説明する図である。XYスキャナ3は、一つの測定地点で一定時間(tw)、例えば10ms停止したのち、次の地点に移動し、そこで一定時間停止した後、次の点に移り、これを周期(tc)、例えば40msで繰り返す。
【0033】
尚、各測定点における停止時間は一定である必要は無く、測定点毎に停止時間を変化させても良く、また同一測定点においても測定時間を繰り返す毎に変化させながら走査させても良い。
【0034】
図4は、測定点の走査によって得られる蛍光強度信号の推移を示す図である。測定点が測定地点A,B,Cを順次移動しながら測定を行っているため、検出器6から出力される蛍光の強度信号は、それぞれ測定地点A、B、Cからの蛍光強度信号、及び測定地点間の移動の無効データが時分割的に混在している。相関解析装置7では、この複数の測定地点間からの信号が混ざった信号を入力信号とし、XYスキャナ駆動装置8から供給される測定点の位置情報と組合せて演算を行うことにより、それぞれの測定地点の信号に相当する自己相関関数を求める。
【0035】
続いて自己相関関数を求める方法について説明する。
【0036】
第1の方法は、個々の測定地点に属する範囲内でのみ自己相関の演算を集積する方法である。簡単の為に、測定地点Aに注目して説明する。測定地点Aの自己相関関数は、測定地点B、C、及び移動中のデータとは無関係であり、A地点の自己相関関数を求めるために使用できるのは、測定地点Aで取得された測定データのみである。
【0037】
図5は、XYスキャナ駆動装置8より供給される測定位置情報を用い、測定地点Aのデータのみを抽出したものであり、測定地点Aのデータは幅tw、周期tcのウインドウ内にのみ存在する断続的なデータをなっている。
【0038】
自己相関関数の変数であるτがtwより小さい範囲では、式(1)の積演算に使用されている2点即ち、I(t)とI(t+τ)の両方が同一のウインドウ内に存在し得る。そこで、この2点が同一のウインドウ内で得られる範囲内で、即ち0<t≦tw一τの範囲で積演算を行ってその結果を集積する。この集積操作を次のウインドウ、また次のウインドウと繰返すことによりデータの確度を上げることができ、連続的に取ったデータと遜色のない有意なデータを得ることができる。式(3)はこの集積方法を記述する式である。
【0039】
【数3】
Figure 2004108892
τがtwを越えた範囲では自己相関関数は連続的には求まらず、式(1)で積演算に使用される2点が異なるウインドウ内に存在する範囲のτに関して、部分的に求めることができる。この様子を図6に示す。τがtwを越える場合、自己相関関数は式(5)を用いることにより、式(4)で示される範囲について求めることができる。換言すれば、τが求めることが出来ないブラインドの範囲が断続的に発生する。
【0040】
【数4】
Figure 2004108892
【数5】
Figure 2004108892
しかし、この問題は、測定したい分子の拡散時間がこのブラインド範囲にかからないように、twやtcの幅を選択することで対処が可能であり、さらに、ブラインドの範囲を前後の曲線より補間する方法や、有効なデータ範囲でのみフィッティングを行うことにより、この問題を回避することが可能である。
【0041】
図7はtwを測定したい分子の拡散時間よりも長く取った場合の自己相関関数を示す図である。即ち本図7は、測定したい分子の自己相関関数成分の殆どすべてがtw内に収るように設定した場合を示している。目的分子の自己相関成分がほぼ完全に得られるので、式(2)を用いてそのままフィッティングを行っても殆ど誤差が生じない。また、この場合フィッティング範囲はtw以下とすることが望ましい。尚、図7では時間軸が対数表記となっているが、これは取扱い時間範囲が広範囲に及ぶためであり、一般に自己相関関数の表記には対数軸が使われることが多いためである。
【0042】
また逆に、twを測定対象分子の拡散時間よりも十分に小さく設定することによっても、誤差の少ないデータが得られる。図8は、twを測定したい分子の拡散時間よりも小さく取った場合の自己相関関数を示す図である。
【0043】
twよりτが大きな範囲では離散的に自己相関関数が得られるが、間隔が十分に小さいため、実質上連続データと遜色のない自己相関関数が求まる。フィッティングを行う際には、自己相関関数が得られている部分のみ選択的にフィッティングする方法と、一旦これらの間隔のデータを補間法で補った後に、フィッティングをかける方法とがある。
【0044】
上記の様に測定の分子の拡散時間に対して、twを十分に大きな値、または小さな値に取ることができず、拡散時間の近くに取る必要がある場合にも同様に適応できる。図9は、twを測定したい分子の拡散時間の近くに取った場合の自己相関関数を示す図である。この場合、上述の場合と同様、フィッティングを行う際に自己相関関数が得られている部分のみ選択的にフィッティングする方法と、一旦これらの間隔のデータを補間法で補った後に、フィッティングをかける方法とがある。
【0045】
次に、複数の測定地点間からの信号が混在した信号から、それぞれの地点の自己相関関数を求める、第2方法について述べる。図10は、自己相関関数を求める第2の方法を説明する図である。
【0046】
図10の▲1▼は相関解析装置7への入力信号を表し、全ての測定地点からのデータが時分割的に混在している。この信号と、測定地点Aからのデータと見なせる場合には1でそれ以外では0であるようなウインドウ関数(図10中の▲2▼)、との積を取り、測定地点Aからのみの信号を選び出す(図10中の▲3▼)。この積演算はオペアンプ等によりアナログ演算で求めても良いし、信号をAD変換した後、デジタル演算で求めても良い。
【0047】
次に、図10の▲3▼の信号に対して自己相関関数を求める処理を行う。使用するデータが部分的であるため、自己相関演算で得られる自己相関関数(Cd(τ))は、図11に示すようにデータの欠如と変形が生じた形で得られる。入力信号はブラウン運動に基づくランダム信号であり、周期関数であるウインドウ関数との間に特別な相関関係はない。
【0048】
この場合には、得られた自己相関関数(Cd(τ))は、目的信号の自己相関関数とウインドウ関数(図10の▲2▼)の自己相関関数(Cm(τ))の積となる。このウインドウ関数の自己相関関数を用いることにより、欠損区間を除いて元の自己相関関数(Cs(τ))を復元することができる。尚、図10、11においては、説明を分り易くする目的で、時間軸はリニアスケールとしてある。
【0049】
この方法で得られる自己相関関数は、第1の方法で得られる自己相関関数と基本的に同じであり、tc、twの組合せによりデータの欠損が発生する。これに対する対応も全く同様であり、図7、図8、図9で示した対応が可能である。
【0050】
以上の説明では、測定点数が3点の場合について行ったが、測定点の数は2点でも、また4点以上でも構わない。また、測定は停止して行うことが望ましいが、条件によっては動かしながら(走査しながら)データを採集し、特定の測定点の近傍と見なせる領域からのデータを特定地点のデータと見なして演算してもよい。また逆に、XYスキャナ3の停止時にリンギングが大きい場合には、目的位置に停止後、リンギングが収ってからのデータを採用することが望ましい。
【0051】
図12は、本発明に係る蛍光分光分析装置の第2の実施の形態を示す図である。第1の実施の形態と同様の機能を備えた部分には同一番号を付してその詳細の説明を省略する。本実施の形態では、画像処理装置10を新たに設けて、試料5の蛍光像を生成するように構成した点が異なっている。
【0052】
本実施の形態の測定系は、顕微鏡画像取得系と組合わせて用いるとその効果が大きく発揮できる。特に、光学系が類似であるため、共焦点レーザ走査型顕微鏡と組合わせると一層効果が大きい。尚、本発明は、この実施の形態に限定されず、複数の光学系を重ねる系に対して用いてもよい。
【0053】
一般に生物由来の試料を使用する場合、拡散時間は小型分子で100μ秒程度、大型の分子で数10ミリ秒程度である。図7に見るように、測定の停止時間幅(tw)を、拡散時間の10倍、できれば100倍取るとその分子の自己相関成分の殆どを含むことができる。twを目的分子の拡散時間より長くとる手法を適用する場合は、twは1ミリ秒から1秒の範囲にその最適値が存在する。
【0054】
今までの例では、ウインドウの間隔tcが固定の場合を述べてきたが、tcは可変にしても用いることができる。上述のようにデータ欠損区間はtcに依存するので、tcを可変することにより、データの欠損区間をほとんどなくすことが可能である。例えば、tc/tw=4に保ちつつ、tcを1倍から4倍の範囲で可変すると、欠損区間を全くなくすことが可能である。図13、14にこの様子を示す。可変区間の条件としては、式(6)に示すように、最短時の周期(tc(min))が最長時のウインドウ幅(tw(max))と同じかそれ以下にすると欠損をなくすことが可能である。
【0055】
【数6】
Figure 2004108892
今までの説明では、蛍光の解析方法をして、蛍光相関分光分析法に対する応用例について説明してきたが、その他の蛍光解析手法、例えば、光子計数ヒストグラム解析や蛍光寿命解析法に対しても全く同様に用いることが出来、1つの光学系で多数の測定点で、これらの蛍光分析法による観測を可能にする。
【0056】
本実施の形態によると、複数の測定点で、各測定点間に時間的に早い関連性がある場合にも適応可能な蛍光相関分光分析の装置を提供することが可能になる。また、装置の大型化を防ぎ、低コストな測定装置を提供することが可能となる。また、測定点の数に制限がないため必要に応じた測定点を設定すれば良く、用途に応じた測定システムを提供できる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の蛍光分光分析装置によれば、安価でかつ複数の測定点で同時に蛍光相関分光分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蛍光分光分析装置の第1の実施の形態を示す図。
【図2】XYスキャナによる測定点の走査の様子を説明する図。
【図3】XYスキャナによる測定点の走査の様子を説明する図。
【図4】測定点の走査によって得られる蛍光強度信号の推移を示す図。
【図5】測定地点Aのデータのみを抽出した図。
【図6】自己相関関数を求める方法を説明する図。
【図7】twを測定したい分子の拡散時間よりも長く取った場合の自己相関関数を示す図。
【図8】twを測定したい分子の拡散時間よりも小さく取った場合の自己相関関数を示す図。
【図9】twを測定したい分子の拡散時間の近くに取った場合の自己相関関数を示す図。
【図10】自己相関関数を求める第2の方法を説明する図。
【図11】自己相関関数を示す図。
【図12】本発明に係る蛍光分光分析装置の第2の実施の形態を示す図。
【図13】ウインドウの間隔tcの可変を説明する図。
【図14】ウインドウの間隔tcの可変を説明する図。
【図15】共焦点光学系の構成を示す図。
【符号の説明】
1…レーザ光源
2…ダイクロイックミラー
3…XYスキャナ
4…対物レンズ
5…試料
6…光検出器
7…相関解析装置
8…XYスキャナ駆動装置
9…コンピュータ
10…画像処理装置

Claims (8)

  1. 試料に励起光を照射する励起光学系、該励起光を照射された試料より発する蛍光を検出する検出器、該検出器に蛍光を導く検出光学系を備えた蛍光分光分析装置であって、
    励起光学系は、励起光を前記試料の複数の測定点に照射しつつ繰返し走査する走査系を有し、
    前記検出器から出力された蛍光強度情報を前記それぞれの測定点に対応づけて演算を行い、それぞれの測定点に対応した統計関数を得る統計解析装置
    を備えたことを特徴とする蛍光分光分析装置。
  2. 前記走査系は、少なくとも1つの測定点において励起光を照射したまま所定時間停止した後、次の測定点を走査することを特徴とする請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
  3. 前記測定点に於ける停止時間は、1ミリ秒以上、かつ1秒以下であることを特徴とする請求項2に記載の蛍光分光分析装置。
  4. 前記走査系は、前記測定点に於ける停止時間を変化させながら走査することを特徴とする請求項2または3に記載の蛍光分光分析装置。
  5. 前記統計解析装置は、前記検出器のそれぞれの測定点での測定情報を抽出し、抽出された前記測定情報を時間経過に対応付けた断続する出力情報を作成し、この出力情報に基いて、抽出された前記測定情報のみを用いた統計解析を行うことにより、それぞれの測定点毎に統計関数を求める機能を有することを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1の請求項に記載の蛍光分光分析装置。
  6. 前記統計解析装置は、前記統計関数において生ずるブラインドの範囲を、このブラインドの範囲の前後の関数値に基づく補間演算を行って補間し、ブラインド範囲の生じていない統計関数を求める機能を有することを特徴とする請求項5に記載の蛍光分光分析装置。
  7. 前記測定点での測定情報は、測定位置またはその近傍を含めた実質的に同位置とみなせる位置に対応する前記検出器からの測定情報であることを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光分光分析装置。
  8. 前記統計関数は、自己相関関数であることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1の請求項に記載の蛍光分光分析装置。
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