JP2004108428A - ベルト式無段変速機の滑り防止装置およびその滑り防止装置を備えるベルト式無段変速機 - Google Patents

ベルト式無段変速機の滑り防止装置およびその滑り防止装置を備えるベルト式無段変速機 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な構造で、駆動輪から受ける急激な変動に対して、無段変速機の無端金属ベルトの滑りを防止する。
【解決手段】無段変速機は、出力軸300に設けられた出力側プーリ320と、出力側プーリ320の溝幅を狭くするための油圧をアシストするアシスト部400とを含む。アシスト部400は、出力軸に摺動自在に設けられた慣性マス402、404と、出力軸300に固着された固定部材406と、慣性マス402、404と固定部材406との間にある粘性流体とを含む。粘性流体は、慣性マス402、404と固定部材406との間に回転数の差が発生すると移動する。アシスト部400は、この際に発生する粘性流体の流動抵抗力を、出力側プーリ320の溝幅を狭くする付勢力Fに変換する。
【選択図】    図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば、板片状の多数のエレメントを互いに対面させて環状に配置し、それらのエレメントに金属バンドであるフープを通して各エレメントを環状に結束して構成した無端金属ベルトを用いた無段変速装置に関し、特に、車両に搭載され、無端金属ベルトの破損を防止し、駆動輪から伝達される回転数およびトルクの急激な変動に応答良く反応する無段変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両においては、トランスミッションの変速比を車両の走行状況に応じて無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が搭載されることがある。このCVTは、エンジン出力を効率的に引き出すことが可能であり、燃費および走行性能の向上に優れる。実用化されたCVTの1つとして、金属ベルトと一対のプーリとを用いて、油圧によってプーリの有効径を変化させることで連続的に無段の変速を実現するものがある。無端金属ベルトが、入力軸に取付けられた入力側プーリおよび出力軸に取付けられた出力側プーリに巻き掛けられて使用される。入力側プーリおよび出力側プーリは、溝幅を無段階に変えられる1対のシーブをそれぞれ備え、溝幅を変えることで、無端金属ベルトの入力側プーリおよび出力側プーリに対する巻付け半径が変わり、これにより入力軸と出力軸との間の回転数比、すなわち変速比を連続的に無段階に変化させることができる。
【0003】
このようなCVTにおいては、油圧による挟圧力を用いてプーリの溝幅を変えている。この挟圧力が適正な圧力を有しないと、金属ベルトの対シーブ摩擦面が滑り、そのような滑り状態が継続すると対シーブ摩擦面が磨耗して、ついには金属ベルトが破損するおそれもある。特に、無段変速機の出力軸に接続された駆動輪から急激な回転数やトルクの変動を受けた場合に、このようなおそれが現実のものになる。特開平3−163251号公報(特許文献1)は、このような金属ベルトの滑りを防止して、安定な動作を実現する無段変速機を開示する。
【0004】
この公報に開示された無段変速機は、エンジンからの入力軸に接続された入力側プーリと、駆動軸に接続された出力側プーリと、これらのプーリに巻き掛けられた金属ベルトと、駆動軸に設けられ、出力側プーリと駆動輪との間のトルク伝達量を調整する油圧多板クラッチと、エンジンの出力に応じて油圧多板クラッチの結合度を調整する調整回路と、車両の走行状況に応じてプーリの有効径を制御する制御回路と、入力軸と出力軸とを接続するチェーンと、チェーンによるトルク伝達と金属ベルトによるトルク伝達とのいずれかを選択的に実行する選択回路とを含む。
【0005】
エンジンに接続された入力軸から駆動輪に接続された出力軸までのトルク伝達を、無段変速機を構成する金属ベルトとチェーンとの2つの経路で実現する。この経路は、変速機のレンジに従って選択される。また、調整回路は、油圧多板クラッチは、エンジンの出力が大きいほど結合力が強くなるように調整される。たとえば、車両が急勾配の登坂路に到達すると出力軸側の負荷が急激に大きくなり、出力軸を介して駆動輪のトルク変動が無段変速機に伝達される。このときにエンジン出力が低いと、油圧多板クラッチの結合度が比較的低いので、この油圧多板クラッチが滑る。そのため、出力軸プーリおよび入力側プーリにトルク変動が伝達されない。そして、運転者が登坂路を登るためにエンジン出力を増加させるためにアクセルを操作すると、油圧多板クラッチの結合度が増す。この場合において、油圧多板クラッチが滑り始めてから滑り停止するまでの間に、無段変速機が適正な変速比を選択する。これにより、金属ベルトの滑りを生じることなく、迅速に適正な作動状態を実現できる。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−163251号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この公報に開示された無段変速機には、油圧多板クラッチ、チェーン、調整回路および選択回路が必要になり、構成要素の増大に伴い、無段変速機が大型化および高価格化するとともに、保守性に劣るものとなる。さらに、駆動輪から無段変速機がトルク変動を受けたときにエンジン出力がすでに高いと、油圧多板クラッチが滑らないで、トルク変動が無段変速機に伝達されて、金属ベルトとプーリとの間で滑りが生じる。さらに、たとえば、低μ路で軽くブレーキを踏んでタイヤがロックして、その後アスファルト路面になったとすると、高速の応答性が必要になるが、上述した公報に開示された無段変速装置では、エンジンの出力がすでに高く、油圧多板クラッチが滑らない状況では、満足するような高速の応答性を実現し得ない。すなわち、上述した公報のように、構成要素を増やして無段変速機を構成しても、負荷変動を受けた場合のエンジンの出力によっては、無段変速機がトルク変動を受けてしまい、金属ベルトとプーリとの間で滑りが生じて金属ベルトの磨耗による金属ベルトの破損を招くおそれがあるばかりか、高速の応答性を実現することが困難である。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、簡易な構造で、駆動輪から伝達される回転数およびトルクの急激な変動に応答良く反応することができる無段変速機の滑り防止装置およびその滑り防止装置を備えるベルト式無段変速機を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る滑り防止装置は、ベルト式無段変速機においてベルトの滑りを防止する。この滑り防止装置は、出力軸が回転する慣性に対応して回転する第1の回転部と、出力軸に固着された第2の回転部と、第1の回転部の回転動作と第2の回転部の回転動作との差を、出力側プーリの押圧力に加える付勢力に変換するための変換手段とを含む。
【0010】
第1の発明によると、第1の回転部は、出力軸が回転する慣性に応じた回転数で回転する。第2の回転部は、出力軸に固着しているため出力軸とともに回転する。たとえば、低μ路で軽くブレーキを踏んでタイヤがロックすると、タイヤが回転しないので出力軸の回転数が急激に低下して、第2の回転部の回転数が急激に低下する。その一方で、急激に出力軸の回転が低下しても、慣性で回転している第1の回転部の回転数は急激に低下しない。変換手段は、第1の回転部の回転動作と第2の回転部の回転動作との差(たとえば、回転数の差であったり回転トルクであったりする)を、出力側プーリの押圧力に加える付勢力に変換する。これにより、タイヤがロックして出力軸の回転数が急激に低下して、慣性で回転している第1の回転部と、出力軸に固着された第2の回転部との回転動作の差により発生する付勢力を出力側のプーリに加えることができる。その付勢力は、より強くベルトを挟持するため、ベルトと出力側プーリとの間で滑りを生じることがない。その結果、タイヤのロックを検知してその電気信号に基づいて無段変速機を制御していたのでは遅すぎるのに対して、駆動輪から伝達される回転数およびトルクの急激な変動に応答良く反応することができる無段変速機の滑り防止装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る滑り防止装置は、第1の発明の構成に加えて、変換手段は、第1の回転部の回転数と第2の回転部の回転数との回転数差を、付勢力に変換するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、慣性で回転を続ける第1の回転部の回転数と、出力軸に固着された第2の回転部の回転数との差を、たとえば、粘性流体を介して、付勢力に変換することができる。
【0013】
第3の発明に係る滑り防止装置は、第2の発明の構成に加えて、第1の回転部と第2の回転部とは、粘性流体を介して接触している。変換手段は、回転数差により発生する粘性流体の粘性抵抗力を付勢力に変換するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、第1の回転部と第2の回転部との間にある粘性流体は、それらの回転部の回転数差により粘性流体が移動する。この粘性流体は粘度が高いシリコンオイルなどである。変換手段は、粘性流体が移動するときに発生する流動抵抗力を付勢力に変換する。このように、制御装置を用いることなく、変換手段により回転数差を付勢力に変換するので、簡易な、応答性の良好な滑り防止装置を提供することができる。
【0015】
第4の発明に係る滑り防止装置は、第1の発明の構成に加えて、変換手段は、第1の回転部と第2の回転部との間に発生するトルクを、付勢力に変換するための手段を含む。
【0016】
第4の発明によると、慣性で回転を続ける第1の回転部と、出力軸に固着された第2の回転部との間に発生するトルクを、たとえば、カムに沿って移動するボールを介して、付勢力に変換することができる。
【0017】
第5の発明に係る滑り防止装置は、第4の発明の構成に加えて、第1の回転部と第2の回転部との間でカム機構が構成されている。変換手段は、トルクにより、カムを押す力を付勢力に変換するための手段を含む。
【0018】
第5の発明によると、第1の回転部には第1のカムを、第2の回転部には第2のカムを含み、これらのカムの間には、トルクによってカムに沿って移動する、たとえばボールが設けられる。変換手段は、ボールがカムに沿って移動するときに発生するカムを押す力を付勢力に変換する。このように、制御装置を用いることなく、変換手段によりトルクを付勢力に変換するので、簡易な、応答性の良好な滑り防止装置を提供することができる。
【0019】
第6の発明に係るベルト式無段変速機は、第1〜5のいずれかの発明の構成を有する滑り防止装置を備えたものである。
【0020】
第6の発明によると、無段変速機に備えられた滑り防止装置の第1の回転部は、出力軸が回転する慣性に応じた回転数で回転する。第2の回転部は、出力軸に固着しているため出力軸とともに回転する。たとえば、低μ路で軽くブレーキを踏んでタイヤがロックすると、タイヤが回転しないので出力軸の回転数が急激に低下して、第2の回転部の回転数が急激に低下する。その一方で、急激に出力軸の回転が低下しても、慣性で回転している第1の回転部の回転数は急激に低下しない。変換手段は、第1の回転部の回転動作と第2の回転部の回転動作との差、たとえば、回転数の差やトルクを、出力側プーリの押圧力に加える付勢力に変換する。これにより、タイヤがロックして出力軸の回転数が急激に低下して、慣性で回転している第1の回転部と、出力軸に固着された第2の回転部との回転動作の差により発生する付勢力を出力側のプーリに加えることができる。その付勢力は、より強くベルトを挟持するため、ベルトと出力側プーリとの間で滑りを生じることがない。その結果、タイヤのロックを検知してその電気信号に基づいて無段変速機を制御していたのでは遅すぎるのに対して、駆動輪から伝達される回転数およびトルクの急激な変動に応答良く反応することができる滑り防止装置を備えた無段変速機を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
ただし、以下の説明では、多数のエレメントが互いに板厚方向に環状に並べて配置され、その左右のサドル部に環状の金属帯であるフープを通して各エレメントが結束されて構成された無端金属ベルトを使用したベルト式無段変速機について説明する。しかし、本発明の滑り防止装置は、このような無端金属ベルトに限定して適用されるものではない。上記のような構造である無端金属ベルトは一例であって、本発明を限定するものではない。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るベルト式無段変速機100について説明する。このベルト式無段変速機100においては、無端金属ベルト106が、入力軸200に取付けられた入力側プーリ220および出力軸300に取付けられた出力側プーリ320に巻き掛けられて使用される。このベルト式無段変速機100においては、出力軸300が駆動輪から受ける回転数変動に対応して出力側プーリ320の挟圧力をアシストするアシスト部400を備える。
【0024】
入力側プーリ220および出力側プーリ320は、溝幅を無段階に変えられる1対のシーブ108をそれぞれ備え、車両の走行状態に応じて制御される油圧回路により溝幅を変えることで、無端金属ベルト106の入力側プーリ220および出力側プーリ320に対する巻付け半径が変わり、これにより入力軸200と出力軸300との間の回転数比、すなわち変速比を連続的に無段階に変化させることができる。
【0025】
図2を参照して、無端金属ベルト106は、多数のエレメント102が互いに板厚方向に環状に並べて配置され、その左右のサドル部に環状の金属帯であるフープ104を通して各エレメント102が結束されて、図3に示すように、全体として、無端金属ベルト106が構成される。
【0026】
エレメント102の形状の一例を、図4に示す。エレメント102の幅方向の両側の側面は、シーブ108におけるテーパ状のシーブ面110に接触する対シーブ摩擦面112であって、シーブ面110と一致するテーパ面とされている。その対シーブ摩擦面112を備えた基体部分114の幅方向での中心部に、図4での上側に延びた首部116が形成され、その首部116が、左右に広がった頂部118につながっている。その左右に広がった頂部118と基体部分114との間にスリットが形成されており、この左右2つのスリットの部分にフープ104が通されている。そして、基体部分114におけるフープ104が接触する面がサドル面120となっている。
【0027】
このサドル面120の高さは、基体部分114を横切るピッチ線Pからの寸法で表わされる。また、エレメント102の幅は、ピッチ線P上の寸法で表わされる。なお、頂部118のうち首部116の延長位置には、一方の面側に凸となり、他方の面側では凹となったディンプル・ホール122が形成されており、互いに隣接するエレメント102のディンプル・ホール122が互いに嵌合するようになっている。なお、ディンプル・ホール122の凸部を有する面がエレメントの表面、凹部を有する面がエレメントの裏面である。
【0028】
無端金属ベルト106は、1対のシーブ108の間に挟み付けられて使用される。その場合、シーブ面110および対シーブ摩擦面112がテーパ面であるために、各エレメントには、シーブ108による挟圧力により半径方向での外側に荷重が作用するが、各エレメント102がフープ104によって結束されているので、フープ104の張力により半径方向での外側への移動が規制される。その結果、シーブ面110と対シーブ摩擦面112との間に摩擦力が生じ、あるいは油膜の剪断力が生じてシーブ108と無端金属ベルト106との間でトルクが伝達される。
【0029】
このように、エレメント102を半径方向で外側に押圧する荷重は、シーブ108が無端金属ベルト106を挟み付けることにより生じる。このシーブ108の挟圧力は、別途設けられる油圧回路により制御される。車両を運転している場合において、低μ路で軽くブレーキを踏んでタイヤがロックして、その後アスファルト路面になったとすると、タイヤからのトルク変動や回転数変動を受けても無端金属ベルト106の対シーブ摩擦面112とシーブ108との間で滑りが生じないように、制御装置が車両の運転状況(出力軸の回転数の変化等)を把握して油圧回路を制御する。
【0030】
しかしながら、上述したような状況において、無段変速機100の出力軸300の回転数を検知してそれに基づいて制御していたのでは、必要な応答性が満足できない。変速比が変更するために出力側プーリ320の挟圧力を上昇させる制御が実行されて、実際に油圧回路により出力側プーリ320の挟圧力が上昇するよりも先に、無端金属ベルト106と出力側プーリ320との間で滑りが生じる。
【0031】
その結果、無端金属ベルト106の対シーブ摩擦面112が滑って磨耗して、その磨耗が継続すると無端金属ベルト106が破損する可能性もある。すなわち、出力軸300(タイヤ側)のトルク変動や回転数変動は、入力軸200(エンジン側)と異なり、予測が困難で、発生してから(タイヤのロック等)検知して、その電気信号に基づいて無段変速機100の変速比を変更してシーブ108の挟圧力が強くなるように制御していたのでは、応答性が満足できないので、無端金属ベルト106が滑る。このため、本実施の形態に係る無段変速機は、対シーブ摩擦面112が滑らないように、差回転に基づいて発生させる付勢力を用いて、シーブ108の油圧による挟圧力をアシストするためのアシスト部400を備える。
【0032】
図5を参照して、図1に示したアシスト部400の断面について説明する。図5に示すように、アシスト部400は、出力軸300に摺動自在に設けられた慣性マス402と、同じように出力軸300に摺動自在に設けられた慣性マス404と、出力軸300に固着された固定部材406と、慣性マス402、404により囲まれた粘性流体封入部408と、第1の押圧部410と、第2の押圧部420とを含む。
【0033】
慣性マス402、404は、ベアリングボールなどを用いて出力軸300と摺動自在に設けられる。このため、慣性マス402、404は、出力軸300の慣性力に対応して回転する。この慣性マス402、404とにより囲まれる粘性流体封入部408には、高粘度の粘性流体(シリコンオイルなど)が封入される。シリコンオイルで満たされた粘性流体封入部408の内部に固定部材406が設けられる。固定部材406は、出力軸300に固着されており、出力軸300と共に回転する。
【0034】
このような構造を有するアシスト部400において、固定部材406と慣性マス402、404との回転数差により粘性流体封入部408に封入された粘性流体に発生する粘性抵抗により、付勢力Fが発生する。この付勢力Fを第1の押圧部410または第2の押圧部420に作用させることにより、出力側プーリ320の間隙を狭くし、無端金属ベルト106と出力側プーリ320との滑りをなくすることができる。
【0035】
図6を参照して、アシスト部400を構成する固定部材406の斜視図について説明する。図6に示すように、この固定部材406は、出力軸300に固着され、図6に示すような断面形状を有する。出力軸300と固着された固定部材406と、出力軸300と摺動自在に設けられた慣性マス402、404との間で、車両にブレーキングが発生すると、慣性マス402、404はそのまま回転を継続しようとする。一方、ブレーキの作用により出力軸300および固定部材406は停止しようとするため回転数が低下する。この慣性マス402、404と固定部材406との回転数差により、図6に示す矢示450の方向に力が発生する。このとき矢示450のいずれかの方向に力が発生する。その方向は出力軸300の回転方向により定まる。矢示450により発生した力により粘性流体封入部408に封入された粘性流体が移動しようとして、粘性流体の流動抵抗が発生する。その粘性抵抗が矢示460で示される。たとえば、車両にブレーキングが行なわれた場合には、出力軸300の回転数がN(1)からN(2)に低下する。このとき、慣性マス402、404の回転数はN(1)のままである。それに対して、N(1)よりも小さな回転数N(2)に到達した出力軸306および固定部材406と慣性マス402、404との間に回転数差が発生する。この回転数差により、粘性流体が矢示450のいずれかの方向に移動し、その移動により流動抵抗による力F(矢示460)が発生する。
【0036】
図7を参照して、図5のA−A断面について説明する。図7に示すように、出力軸300に固着された固定部材406は回転数N(2)で回転し、出力軸300と摺動自在に設けられた慣性マス402、404は、回転数N(1)(N(1)>N(2))で回転する。この回転数差により、固定部材406には矢示450のいずれかの方向に力が働き、粘性流体封入部408に封入された粘性流体を移動させる。粘性流体の移動により流動抵抗が発生しその流動抵抗により付勢力F(矢示460)が発生する。発生した付勢力F(矢示460)は、図5に示す第1の押圧部410または第2の押圧部420に対して作用し、出力軸側プーリ320の溝幅を狭くする。これにより、無端金属ベルト106が強く挟持され、無端金属ベルト106と出力側プーリ302との間で滑りが発生しなくなる。
【0037】
図8を参照して、回転数差ΔNと付勢力Fとの関係について説明する。図8に示すように、回転数差ΔN(=N(1)−N(2))は、付勢力Fとの関係において、緩やかに上昇する相関関係を有する。すなわち、回転数差ΔNが大きいほど付勢力Fが大きい。出力軸300の慣性により回転する慣性マス402、404と回転軸300に固着された固定部材406との回転数の差が大きければ大きいほど、出力側プーリ320に作用する付勢力Fが大きくなる。なお、図8に示す回転数差ΔNと付勢力Fとの関係は一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。
【0038】
以上のような構造を有する無段変速機100の動作について説明する。車両が定常状態で走行している場合には、出力軸300に摺動自在に設けられた慣性マス402、404と、回転軸300に固着された固定部材406との間には、回転数差が発生せずに回転している。このとき、出力側プーリ320と押す付勢力Fは発生しない。
【0039】
このような状態において、図9に示すように、ブレーキをオンすると、慣性マス402、404の回転数は、時間とともになだらかに低下するのに対して、固定部材406の回転数は、急激に低下する。
【0040】
図9に示すように、ブレーキがオンして固定部材406と慣性マス402、404との間に回転数差が発生すると、粘性流体封入部408に封入された高粘度の粘性流体の流動抵抗により付勢力Fが発生する。このときの付勢力は、ブレーキオンをしてから固定部材406と慣性マス402、404との回転数差と付勢力Fとの関係(図8)に応じて付勢力Fが発生する。すなわち、図9に示すように、回転数差ΔNが最も大きくなる時間T(1)において、最大の付勢力Fが発生し、時間T(1)以降、回転数差がなくなる時間T(2)に到達するまで、回転数差に応じた付勢力Fが発生する。
【0041】
以上のようにして、本実施の形態に係る無段変速機によると、運転者のブレーキング操作により出力軸に接続されたタイヤがロックすると、固定部材の回転数が急激に低下する。その一方、出力軸と摺動自在に設けられた慣性マスは、出力軸の急激な回転数の低下の影響を受けずに慣性力により回転を持続させる。その結果、慣性マスと固定部材との間には回転数差が発生する。この回転数差により、固定部材に力が発生し、その力に基づいて、固定部材の周囲の高粘性の粘性流体が移動し、その移動により流動抵抗が発生し、その流動抵抗により出力側プーリを押圧する力をアシストする付勢力が発生する。その結果、出力軸の回転数変化を回転数センサで検知してその時間微分をとることにより回転数変化の度合いを算出し制御装置を用いて油圧回路を制御して出力側プーリの溝幅を変更して無端金属ベルトの滑りをなくするのではなく、出力軸側回転数の変動に応じて、粘性流体の流動抵抗に基づくアシスト力を発生させることにより、無端金属ベルトの滑りをなくすることができる。その結果、出力軸側の回転数の急激な変化に高速に応答可能な滑り装置を有するベルト式無段変速機を提供することができる。
【0042】
なお、図10に示すように、発生した付勢力Fを作用させるのは、第1の押圧部410および第2の押圧部420のいずれに対してでもよいし、そのいずれか一方であってもよい。いずれの場合においても、付勢力Fは、出力側プーリ320の溝幅を狭くする油圧回路による挟圧力に加えられる。
【0043】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に係る無段変速機は、前述の第1の実施の形態に係る無段変速機とは異なり、図11に示すように、対シーブ摩擦面112が滑らないように、慣性マスと固定部材との間に発生するトルクから発生させる付勢力を用いて、シーブ108の油圧による挟圧力をアシストするための、第1の実施の形態のアシスト部400とは異なるアシスト部500を備える。
【0044】
図12を参照して、本実施の形態に係るアシスト部500の断面について説明する。なお、図12に示す断面図の中で、第1の実施の形態に係るアシスト部400と同じ構成については同じ参照符号を付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0045】
図12を参照して、本実施の形態に係るアシスト部500は、出力軸300に摺動自在に設けられた慣性マス502と、出力軸300に固着された固定部材504と、慣性マス502と固定部材504とに挟持されたボール506とを含む。このボール506は、ローラであっても他の部材であってもよい。アシスト部500は、後述するように、慣性マス502および固定部材504に設けられたボールカム機構によりボール506が慣性マス502と固定部材504との間に発生するトルクにより移動すると、ボール506がカムを押しつける力を付勢力に変換する。変換された付勢力Fは、第1の押圧部410または第2の押圧部420に作用し、出力側プーリ320の溝幅を狭くする。これにより、無端金属ベルト106と出力側プーリ320との間の滑りをなくすることができる。
【0046】
図13を参照して、図12に示すアシスト部500の詳細について説明する。図13(A)に、アシスト部500の慣性マス502と固定部材504との間にトルクが発生していない場合のボール506の状態を、図13(B)にアシスト部500の慣性マス502と固定部材504との間にトルクが発生している場合のボール506の状態を示す。図13(A)に示すように、ボール506が挟持される慣性マス502および固定部材504には、カム機構を有する。図13(B)に示すように、トルクが発生すると矢示550の方向に慣性マス502と固定部材504とに力が発生する。この力の発生は、ボール506を移動せしめ、ボール506の移動によりカムを押しつける力が発生する(矢示560)。図13(B)に示す力F(矢示560)が第1の押圧部410または第2の押圧部に作用して、出力側プーリ320の溝幅を狭くする。
【0047】
図14に、トルクTと発生する付勢力Fとの関係について説明する。図14に示すように、トルクTと付勢力FとはトルクTが増加するに従って付勢力Fが増加するリニアな関係を有する。
【0048】
以上のような構造を有する無段変速機の動作について説明する。
車両が定常状態で走行している場合、慣性マス502と固定部材504との間にトルクを発生しないため、図13(A)の状態でボール506が慣性マス502と固定部材504との間に挟持される。ブレーキ操作などにより、出力軸300の回転数が急激に変化すると、出力軸300に摺動自在に設けられた慣性マス502はそのまま回転を継続しようとするが、出力軸300および固定部材504が大きくその回転数を低下させる。このとき、出力軸300を回転させようとするトルクが正方向に発生する。
【0049】
すなわち、図15に示すように、時間T(3)において出力軸のトルクがピークを迎える。このとき、エンジンがタイヤを回す方向を正方向としているため、時間T(3)におけるピークは、エンジンがタイヤを回すためのトルクのピーク値である。この時間T(3)の場合に、図14に示すようなトルクTと付勢力Fとの関係により付勢力のピークが発生する。この付勢力は、図13を用いて説明したように、ボール506がカムに沿って移動することによりボール506がカムを押す力である。
【0050】
以上のようにして、本実施の形態に係る無段変速機によると、ボールとカム機構とを用いて、慣性マスと固定部材の間のトルクに基づいて、ボールが移動しようとする。ボールはカムの斜面に沿って移動し、カムの斜面をボールが押す。この押す力が出力側プーリを押す力に変換される。その結果、前述の第1の実施の形態と同様に、出力軸の回転数を検知し、その時間微分を求めることにより出力軸の回転数変化を検知して、その回転数変化に基づいて出力プーリを押す押圧力を変化させることよりも、はるかに早い応答性を有する無端金属ベルトの滑り防止装置を実現することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るベルト式無段変速機の断面図である。
【図2】無端金属ベルトを説明するための部分斜視図である。
【図3】無端金属ベルトの全体構成を示す斜視図である。
【図4】エレメントの正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るアシスト部の断面図である。
【図6】図5に示すアシスト部の圧力発生機構の斜視図である。
【図7】図5に示すアシスト部の圧力発生機構の断面図である。
【図8】回転数差と発生する付勢力との関係を示す図である。
【図9】回転数差および付勢力の時間的変化を示す図である。
【図10】付勢力の作動部位を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るベルト式無段変速機の断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るアシスト部の断面図である。
【図13】図12に示すアシスト部の圧力発生部の断面図である。
【図14】トルクと発生する付勢力との関係を示す図である。
【図15】トルクおよび付勢力の時間的変化を示す図である。
【符号の説明】
100 無段変速機、102 エレメント、104 フープ、106 無端金属ベルト、108 シーブ、110 シーブ面、112 対シーブ摩擦面、114 基体部分、116 首部、118 頂部、120 サドル面、122 ディンプル・ホール、124 傾斜面、200 入力軸、220 入力側プーリ、300 出力軸、320 出力側プーリ、400 アシスト部、402,404 慣性マス、406 固定部材、408 粘性流体封入部、410 第1の押圧部、412 第2の押圧部、500 アシスト部、502 慣性マス、504 固定部材、506 ボール。

Claims (6)

  1. ベルト式無段変速機においてベルトの滑りを防止する装置であって、
    出力軸が回転する慣性に対応して回転する第1の回転部と、
    出力軸に固着された第2の回転部と、
    前記第1の回転部の回転動作と前記第2の回転部の回転動作との差を、出力側プーリの押圧力に加える付勢力に変換するための変換手段とを含む、滑り防止装置。
  2. 前記変換手段は、前記第1の回転部の回転数と前記第2の回転部の回転数との回転数差を、前記付勢力に変換するための手段を含む、請求項1に記載の滑り防止装置。
  3. 前記第1の回転部と前記第2の回転部とは、粘性流体を介して接触し、
    前記変換手段は、前記回転数差により発生する前記粘性流体の粘性抵抗力を前記付勢力に変換するための手段を含む、請求項2に記載の滑り防止装置。
  4. 前記変換手段は、前記第1の回転部と前記第2の回転部との間に発生するトルクを、前記付勢力に変換するための手段を含む、請求項1に記載の滑り防止装置。
  5. 前記第1の回転部と前記第2の回転部との間でカム機構が構成され、
    前記変換手段は、前記トルクにより、前記カムを押す力を前記付勢力に変換するための手段を含む、請求項4に記載の滑り防止装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の滑り防止装置を含む、ベルト式無段変速機。
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