JP2004107754A - ほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法 - Google Patents

ほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法 Download PDF

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Fumiaki Sato
佐藤 文昭
Rihei Hamada
濱田 利平
Yoshihiro Kino
城野 喜広
Takahiro Hayashida
林田 貴裕
Junichi Fujimoto
藤本 準一
Masao Komai
駒井 正雄
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Abstract

【課題】低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、B添加鋼板を用い、加工性に優れた上に、上釉薬の直接1回掛けで優れたほうろう密着性と黒点欠陥のないほうろう層が得られるほうろう用めっき鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定の成分とその成分割合を有する低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板にCo−Mo合金めっきを施し、次いで熱処理して、鋼板の表面に存在するCo、Mo、Feの量を一定範囲としたほうろう用鋼板を作成し、これに釉薬を掛けて焼成する。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法に関する。より詳細には、低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板、B添加鋼板を用いた、優れたほうろうの密着性が得られるほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ほうろう製品は台所・食卓用品、燃焼機器用部品、浴槽、建造物の内装材および外装材などの用途で幅広く用いられている。ほうろう製品は、通常鋼板上に下釉薬を掛けて焼成し、さらにその上に上釉薬を掛けて焼成する2回掛けで製造されているが、生産コストの低減を図るために、鋼板上に上釉薬を直接掛けて焼成するだけの直接1回掛けによる製造方法が用いられている。しかし、直接1回掛けによる製造方法においては、使用する鋼板のほうろう加工のための前処理として、酸洗を強化したりNi浸漬処理を施す必要がある。また、直接1回掛けによるほうろう製品における良好なほうろう密着性を得るための鋼板としては、製鋼段階でC量を低減し、脱酸処理を施さずに連続鋳造法を用いて製造された酸素含有量が多い高酸素鋼の圧延板が広く使用されている。しかし、高酸素鋼は一般に加工性に乏しく、厳しい加工が要求される用途への使用が制限されている。
【0003】
1回掛けほうろうにおいて釉薬との密着性を向上させる手段として、ほうろうを施す前に行う表面処理を、従来のニッケル浸漬法に代えて、従来の炭素鋼板からなる鉄鋼材の表面にNiもしくはFeの一種または二種の金属とMoまたはWの一種または二種の金属との合金を被覆することを提案している(特許文献1参照)が、その加工性に関しては何も記載がない。ほうろう製品はその製造工程で曲げや深しぼり加工等の厳しい加工を行なうのが多く、ほうろう用鋼板としてはほうろう密着性と共に優れた加工性が要求されるが、その両者を満足するに到っていない。
【0004】
一方、台所用品や浴槽のように、厳しい加工が要求される用途には、従来からB添加鋼(特許文献2参照)やTi添加鋼の圧延板が用いられている。しかしながら、B添加鋼板やTi添加鋼板は加工性には優れているものの、直接1回掛けではほうろう層に黒点欠陥が発生するため、下釉薬仕上げか、又は上釉薬および下釉薬の2回掛けでほうろう層を形成しなければならなかった。そこで、本発明者らは、従来のほうろう用鋼板の上記問題点を解決するために、ほうろう密着性と加工性に優れ、且つ上釉薬の直接1回掛けで黒点欠陥のないほうろう層が得られるほうろう用鋼板を先に提供した(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭54−24413号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】
特開平10−140286号公報
【特許文献3】
特開2002−194493号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記提案のほうろう用鋼板は、上記要求を満たすものであったが、高価なNi−Mo合金めっき皮膜を形成するため、コストの低減の点ではまだ満足するものではなかった。そのため、工程を省略し製造エネルギーを低減して、生産コストの低減を図ることが可能で、且つ加工性に優れ、しかもより安価な合金めっきで直接1回掛けでも十分な密着性が得られるような、より安価なほうろう用めっき鋼板が求められている。
本発明は、上記実状に鑑み創案されたものであって、低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板を用い、加工性に優れた上に、上釉薬の直接1回掛けで優れたほうろう密着性と黒点欠陥のないほうろう層が得られる安価なほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する研究において、従来2回掛けでほうろう層を形成しなければならなかったTi添加鋼板やB添加鋼板でも、その成分比率と、表面処理法を工夫することによって、加工性に優れた上に、上釉薬の直接1回掛けで優れたほうろう密着性と黒点欠陥のないほうろう層が得られることを見出し、さらに研究した結果、Fe−Mo合金めっき層の元素割合が特定の範囲内になるように選択することによって、Ni−Mo合金めっきに代え、より安価なFe−Mo合金めっきでNi−Mo合金めっきと同様な効果が得られることを知得し、本発明に到達したものである。
【0008】
即ち、上記課題を解決する本発明の請求項1のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるAlキルド鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0009】
請求項2のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、O:0.001〜0.10%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高酸素鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0010】
請求項3のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、Ti:0.03〜0.50%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるTi添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0011】
請求項4のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、Nb:0.03〜0.50%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるNb添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0012】
請求項5のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、TiおよびNbの両者の合計が0.03〜0.50%を超えない範囲でTi:0.01〜0.40%、Nb:0.01〜0.40%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるTi−Nb添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0013】
請求項6のほうろう用鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、B:0.001〜0.020%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるB添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなることを特徴とする。
【0014】
請求項7のほうろう用鋼板は、上記のいずれかのほうろう用鋼板の、光電子分光法(以下XPSと呼ぶ)で測定したほうろう用鋼板の表面に存在する元素の割合が、表面から深さ100nmにおいて、Co:5〜50%、Mo:5〜45%、Fe:30〜90%であり、かつCo+Mo+Fe=100%であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の上記請求項1〜6の各ほうろう用鋼板の製造方法は、上記に記載のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板上に、それぞれCo−Mo合金めっきを施し、次いで熱処理を施すことを特徴とする方法である。前記Co−Mo合金めっきとしては、めっき皮膜中のCo量が1.5〜20.0g/m、Mo量が0.4〜7.0g/mとなるようにめっきすることが好ましい。そして、前記熱処理を500〜900℃の温度で実施することが好ましい。
【0016】
さらに本発明のほうろう層を形成してなるほうろう製品は、上記のいずれかのほうろう用鋼板に、ほうろう層を形成してなることを特徴とする。そして、本発明のほうろう製品の製造方法は、上記の各ほうろう用鋼板上に、1回掛けで上釉薬を施釉し、次いで焼成することを特徴とする。
【0017】
本発明の上記のいずれかのほうろう用鋼板に用いるAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板における各成分の限定理由は以下の通りである。
[C]
Cは良好な加工性を確保し、ほうろうを焼成する際の気泡や黒点の発生を抑制する観点から、0.10%以下とする。特に加工性を向上させるためには、Cを0.010%以下にすることが好ましい。
[Mn]
MnはSと結合することによって、熱間加工時の脆化による割れを抑制する効果およびほうろう密着性を良好にする効果があり、1.0%以下含有させる必要がある。1.0%を超えると材質を硬化させ、延性およびプレス成形性が低下する。
[P]
Pは鋼を強化する作用があるが、過剰の含有は深絞り性が劣化するので、0.15%以下とする。
[S]
Sは酸洗時に鋼板の粗面化を促進して、アンカー効果によりほうろうの密着性を向上するのに有効であるが、過剰の含有は気泡および黒点の原因となるので、0.1%以下とする。
[Al]
Alは溶鋼の脱酸剤として添加するが、過剰の含有はコストが上昇するだけなので、0.1%以下とする。
[O]
Oは耐爪飛び性を改善する効果があるが、過剰の含有は連鋳スラブのブローホールが多く、製品歩留まりが悪くなるので、高酸素鋼板として用いる場合は0.01〜0.10%の範囲とする。
[Ti]
Tiは深絞り性の向上および爪飛びの発生を抑制する効果があり、0.03%以上の添加が必要であるが、過剰の含有は表面欠陥の発生および製造コストの上昇を招くので、Ti添加鋼板として用いる場合は0.03〜0.50%の範囲とする。
[Nb]
NbもTiと同様に、深絞り性の向上および爪飛びの発生を抑制する効果があり、0.03%以上の添加が必要であるが、過剰の含有は表面欠陥の発生および製造コストの上昇を招くので、Tiと同様にNb添加鋼板として用いる場合は0.03〜0.50%の範囲とする。
また、TiとNbは併用して用いることも可能であり、その場合の添加量としては、両者の合計で0.03〜0.50%を超えない範囲でTi:0.01〜0.40%、Nb:0.01〜0.40%の範囲であることが好ましい。
[B]
Bは耐爪飛び性を向上する効果があり、0.001%以上の添加が必要であるが、過剰の含有はスラブ性状が不安定となるので、B添加鋼板として用いる場合は0.001〜0.020%の範囲とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明においては、下記のように成分を規制した低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板、B添加鋼板の各鋼板にCo−Mo合金めっきを施し、次いで熱処理してなるほうろう用鋼板の表面に存在するCo、Mo、Feの量を一定範囲とすることにより、上釉薬を直接1回掛けのみで施釉したほうろう製品においても優れたほうろう密着性が得られることが判明した。
【0019】
本発明において、低炭素のAlキルド鋼板は、成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなっている。そして、高酸素鋼板は上記成分にOが0.001〜0.10%の関係で添加され、Ti添加鋼板は、Tiが0.03〜0.50%の関係で添加され、Nb添加鋼板はNbが0.03〜0.50%の関係で添加され、Ti−Nb添加鋼板はTiおよびNbの両者の合計が0.03〜0.50%を超えない範囲でTi:0.01〜0.40%、Nb:0.01〜0.40%の関係で添加され、B添加鋼板はBが0.001〜0.20%添加されてなる。
【0020】
上記範囲に成分を調整した鋼を連続鋳造法を用いてスラブとする。このスラブを熱間圧延、または再加熱した後熱間圧延する。次いで、硫酸酸洗など定法により酸洗して脱スケールした後、50〜95%程度の圧延率で冷間圧延し、再結晶温度以上、Ac3点以下の温度で箱形焼鈍法または連続焼鈍法により焼鈍し、次いで0.1〜5%程度の圧延率で調質圧延を施し、本発明に用いる鋼板とする。
【0021】
次いで、上記鋼板にCo−Mo合金めっきを施す。合金めっきは無電解めっき法、電解めっき法のいずれを用いてもよいが、合金組成の制御しやすさの点から電解めっき法を用いることが好ましい。めっき浴組成としては、Coイオンを硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン酸塩などの無機酸塩の形で供給し、Moイオンを金属酸塩のアンモニウム塩などの形で供給し、これにクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸やこれらの有機酸の塩を錯化剤として添加した水溶液を用いる。この水溶液に酸またはアルカリを加えてpHを2〜4に調節し、浴温を30〜50℃に調節し、陽極としてCo板を用い、5〜30A/dmの電流密度で直流電解する。めっき前の鋼板はめっきするまでの経時中に酸化したり、油脂類と接触することがあるので、前記のめっきを施す直前に、定法により脱脂処理、酸洗処理を施すことが好ましい。
【0022】
上記合金めっきによって形成される皮膜量は、Co量として1.5〜20.0好ましくは2.0〜6.0g/m、Mo量として0.4〜7.0好ましくは1.0〜2.0g/mである。これらの量は蛍光X線分析法を用いて求めることができる。めっき皮膜中のCo量およびMo量がこの範囲をはずれた場合は、下記に示すようにめっき後の熱処理により鋼板表面にFe、Co、Moの元素を好適範囲で存在させることができず、良好なほうろうとの密着性を得ることができない。
【0023】
上記のようにして鋼板上にCo−Mo合金めっきを施した後、熱処理を施す。熱処理は通常の鋼板の焼鈍と同様にして実施する。熱処理方法、すなわち焼鈍方法としては箱形焼鈍法、または連続焼鈍法のいずれを用いても差し支えない。焼鈍条件としては、熱処理後の鋼板表面に存在させるFe、Co、Moの割合にもよるが、アンモニア分解ガス及びHNXガスなどの還元性雰囲気中で500〜900℃の温度で1分〜15時間、好ましくは550〜750℃で1分〜8時間加熱であることが好ましい。
【0024】
以上のようにして、本発明のほうろう用めっき鋼板を得ることができる。上記の熱処理により、めっきしている金属と鋼を構成している金属とが相互拡散し、鋼板の表面に存在するFe、Co、Moの元素の割合が変化する。鋼板表面に存在する元素の割合は、XPSなどの表面分析装置を用いて測定することができる。熱処理後の鋼板のXPSで測定した鋼板の表面に存在するFe、Co、Moの元素の割合が、表層から深さ100nmにおいて、Co:5〜50%、Mo:5〜45%、Fe:30〜90%であり、好ましくはCo:5〜30%、Mo:5〜30%、Fe:40〜70%であり、かつCo+Mo+Fe=100%とすることにより、良好なほうろう密着性が得られる。なおここで言う深さは、熱処理後の鋼板の表面をArイオンでエッチングしたのと同一時間、標準試料SiOをエッチングした場合の深さで示す。このように、Co−Mo合金めっきを施した後に熱処理を施すことにより、めっき鋼板の表面にある程度以上のFeを存在させたMo−Co層が存在することにより、良好なほうろう密着性が得られる。Fe、Co、Moの存在割合が上記範囲をはずれる場合は、良好なほうろう密着性を得ることはできない。
【0025】
次いで上記のようにして得られたほうろう用鋼板は、平板の未加工の状態でほうろう加工してもよいし、曲げ加工や絞り加工を施して所望の形状に成形加工した後、ほうろう加工してもよい。また、本発明のほうろう用鋼板を用いることにより、酸洗、ニッケル処理を省いて、密着の良いほうろう製品が得られる。特に上釉薬を直接一回掛けで施釉するほうろう製品に用いるほうろう用鋼板においては、前処理の酸洗工程で、30〜40g/mの量の鉄をエッチングし、さらにその表面にニッケルを0.6〜1.5g/m析出させる必要がある。本発明のほうろう用鋼板ではこれらの工程を全て省くことができる。また、ほうろう製品としては、上釉薬直接一回掛け仕上げ、下釉薬仕上げ、下釉薬+上釉薬仕上げ、絵付け仕上げ等があるが、本発明のほうろう用鋼板はこれらの全てのほうろう製品に適用することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
[ほうろう用鋼板の作成]
表1に示す成分を有する鋼(A1〜F3)を溶鋼し、22種類のスラブを製造した。これらのスラブを1160℃に加熱し、仕上げ温度880℃で熱間圧延して板厚:2.8mmの熱延板とし、650℃でコイル状に捲き取った。次いでコイルを巻き解きながら脱スケールおよび硫酸酸洗し、冷間圧延を施して板厚:0.8mmとした後、830℃で75秒間連続焼鈍し、次いで圧延率:0.5%で調質圧延し、冷延鋼板を得た。
【0027】
【表1】
Figure 2004107754
【0028】
【表2】
Figure 2004107754
【0029】
上記の冷延鋼板に定法によりアルカリ脱脂、硫酸水溶液を用いて酸洗を施した後、下記のめっき浴を用い、下記の条件でCo−Mo合金を表2に示す皮膜量となるように電気めっきし、次いでアンモニア分解ガス中で表2に示す条件で熱処理し、表2の実施例1〜23に示すほうろう用めっき鋼板を作成した。これらのほうろう用鋼板の表面に存在するFe、Co、Moの元素の割合をXPSを用いて測定した。
<めっき浴>
硫酸コバルト       :  82g/L
モリブデン酸アンモニウム :  48g/L
クエン酸ナトリウム    :  88g/L
<めっき条件>
pH           :  3.0
浴温           :  40℃
電流密度         :  5〜20A/dm
陽極           :  Co板
【0030】
また、比較例として、鋼種番号D3については上記めっき浴、めっき条件で表2の比較例2に示す皮膜量となるように電気めっきし、鋼種番号E2とB2については、下記の条件でNiを表2の比較例1、3に示す皮膜量となるように電気めっきし、次いでアンモニア分解ガス中で表2に示す条件で熱処理し、表2の比較例1〜3に示すほうろう用めっき鋼板を作成した。これらのほうろう用鋼板の表面に存在するFe、Co、Ni、Moの元素の割合をXPSを用いて測定した。
<めっき浴>
硫酸ニッケル       :  300g/L
塩化ニッケル       :  45g/L
ホウ酸          :  30g/L
<めっき条件>
pH           :  4.0
浴温           :  55℃
電流密度         :  10A/dm
陽極           :  ニッケル板
【0031】
[特性評価]
上記のようにして得られたほうろう用めっき鋼板について、下記のように加工性、上釉薬の直接1回掛けのほうろう密着性および外観を評価した。
<加工性>
ほうろう用めっき鋼板の加工性は山田式カップ(絞り比:2.2)に加工し、カップの成形性および加工部を粘着テープで剥離試験を行い、下記の評価基準で加工性を評価した。結果を表3に示す。
○:カップの成形性および剥離試験良好
△:カップの成形性良好で、試験部5%以内の剥離
×:カップの成形性良好で、試験部5%以上の剥離
××:カップの成形性不良
【0032】
上記のほうろう用めっき鋼板に、直接1回掛けにより、上釉薬(日本フエロー株式会社製:No.02−1103/100)を焼成後の厚さが約120μmとなるように施釉し乾燥した後、大気中の焼成炉にて800℃で3分間焼成し、試料とした。試料は下記のように、ほうろうの密着性および外観を評価した。
【0033】
ほうろうの密着性はPEI法で評価した。
油圧ハンドプレスを用いて25mm径の鋼球を8.9kNの力を作用させて上記の試料の平板部分に押しつけて変形させた後、その部分に169本の金属製導通針を押し当てて電流を通し、下記の式から絶縁性を評価した。
絶縁性(%)=(n/169)×100
ここで n:通電しなかった針の数である。次いで本式より得られた絶縁性を示す値(%)から、下記の評価基準でほうろう密着性を評価した。
○:絶縁性>85%
△:絶縁性≦85%でかつ≧80%
×:絶縁性<80%
結果を表3に示す。
【0034】
ほうろうの外観については、30cm×30cmのサイズの試験片を同一試料について10枚切り出し、泡・黒点および爪飛びの発生状況を肉眼観察して発生個数を計測し、下記の規準で評価した。
−泡・黒点−
○:泡および黒点は一切認められない。
△:10枚の試験片でトータル10個未満の泡または黒点が認められる。
×:10枚の試験片でトータル10個以上の泡または黒点が認められる。
−爪飛び−
○:爪飛びは一切認められない。
△:10枚の試験片でトータル10個未満の爪飛びが認められる。
×:10枚の試験片でトータル10個以上の爪飛びが認められる。
これらの結果を表3に示す。
【0035】
表3に示すように、本発明のほうろう用めっき鋼板は加工性に優れており、中でもTi添加鋼およびB添加鋼はとくに優れていた。さらに、上釉薬の直接1回掛けにおけるほうろう密着性および外観の優れたほうろう製品が、すべての本発明の範囲において得られた。
【0036】
これに対し、比較例1は、ほうろう密着性は良好であったがカップ成形性が不良であり、比較例2は逆にカップ成形性は良好であったがほうろう密着性が不良であり、比較例3はその両方とも不良であった。ほうろう外観については、比較例1と比較例3は泡・黒点と爪飛びの両方が観察され、比較例2は爪飛びが観察され、いずれもほうろう外観が不良であった。
【0037】
【表3】
Figure 2004107754
【0038】
[ほうろう製品の作成]
本発明のほうろう用鋼板を用いて、以下に示すようにしてほうろう製品を作成した。
表2の実施例12と実施例23のほうろう用鋼板を、それぞれ内径:160mm、深さ:110mmの鍋、および縦:220mm、横:400mm、深さ:8mmの石油ストーブ天板の形状にプレス成形加工し、施釉下地とした。次いで下記の釉薬を用い、下記のようにして施釉下地に4種類の方法で施釉し、次いで焼き付け、ほうろう製品とした。
【0039】
下釉薬:日本フエロー株式会社製 03−1226
上釉薬:日本フエロー株式会社製 02−2105
(1)下釉薬仕上げ(下釉薬1回掛け−1回焼成)
上記のようにしてプレス成形加工した鍋および石油ストーブ天板の施釉下地に、上記の下釉薬:03−1226を、焼成後の厚さが約100μmになるように施釉し、乾燥した後、焼成炉にて820℃で5分間焼成した。
(2)下釉薬仕上げ後上釉薬仕上げ(2回掛け−2回焼成)
上記と同様にして下釉薬を施釉し焼成した後、その表面に上記の上釉薬:02−2105を焼成後の厚さが約100μmになるように施釉し、乾燥後、焼成炉にて820℃で5分間焼成した。
(3)下釉薬+上釉薬仕上げ(2回掛け−1回焼成)
上記と同一の鍋および石油ストーブ天板の施釉下地に、上記の下釉薬:03−1226を、焼成後の厚さが約80μmになるように施釉し、焼成することなく引き続きその上に、上記の上釉薬:02−2105を焼成後の厚さが約120μmになるように施釉し、乾燥後、焼成炉にて820℃で5分間焼成した。
(4)上釉薬仕上げ(上釉薬直接1回掛け−1回焼成)
上記と同一の鍋および石油ストーブ天板の施釉下地に、上記の上釉薬:02−2105を焼成後の厚さが約120μmになるように施釉し、乾燥後、焼成炉にて820℃で5分間焼成した。
(1)〜(4)のようにして得られた鍋および石油ストーブ天板のほうろう製品の密着性および外観を下記の容量で評価した。
【0040】
先に示したほうろう用鋼板のほうろう密着性の評価と同様に、PEI法を用いて評価した。
ほうろう製品の外観を目視観察し、泡、黒点、ピンホール、爪飛び等の有無をの程度を評価した。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
Figure 2004107754
【0042】
表4に示すように、本発明のほうろう製品は、下釉薬または上釉薬のみ施釉した後焼成する1回掛けの場合でも、下釉薬を施釉し焼成し、次いで上釉薬を施釉し焼成する場合、および下釉薬を施釉し次いで上釉薬を施釉し焼成する2回掛けの場合と同様に、ほうろう密着性および外観に優れている。
【0043】
また、本発明のほうろう用鋼板は、上記のようにほうろう用製品の下地としてのみならず、無機コーティングや有機コーティング皮膜を形成させる下地としても適用することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、所定の成分に調整した低炭素のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板にCo−Mo合金めっきを施し、次いで熱処理することにより、Ni−Mo合金めっきを施した場合と同様な加工性とほうろう密着性に優れたほうろう用鋼板を得ることができる。そして、これらのほうろう用鋼板の表面に存在するCo、Mo、Feの量を一定範囲とし、そのほうろう用鋼板に上釉薬を直接1回掛して焼成しほうろう製品とすることにより、上釉薬および下釉薬を2回掛けするほうろう製品と同様に、ほうろう密着性と外観に優れたほうろう製品が得られる。

Claims (12)

  1. 成分がC:≦0.10重量%(以下重量%を単に%で示す)、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるAlキルド鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  2. 成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、O:0.01〜0.10%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高酸素鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  3. 成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、Ti:0.03〜0.50%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるTi添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  4. 成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、Nb:0.03〜0.50%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるNb添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  5. 成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、TiおよびNbの両者の合計が0.03〜0.50%を超えない範囲でTi:0.01〜0.40%、Nb:0.01〜0.40%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるTi−Nb添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  6. 成分がC:≦0.10%、Mn:≦1.0%、P:≦0.15%、S:≦0.1%、Al:≦0.1%、B:0.001〜0.020%の関係で含有されており、残部がFeおよび不可避的不純物からなるB添加鋼板上にCo−Mo合金めっき皮膜を形成し、次いで熱処理してなる、ことを特徴とするほうろう用鋼板。
  7. ほうろう用鋼板の、光電子分光法で測定した鋼板の表面に存在する元素の割合が、表面から深さ100nmにおいて、Co:5〜50%、Mo:5〜45%、Fe:30〜90%であり、かつCo+Mo+Fe=100%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のほうろう用鋼板。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のAlキルド鋼板、高酸素鋼板、Ti添加鋼板、Nb添加鋼板、Ti−Nb添加鋼板又はB添加鋼板上に、Co−Mo合金めっきを施し、次いで熱処理を施すことを特徴とする、ほうろう用鋼板の製造方法。
  9. 前記Co−Mo合金めっきとして、めっき皮膜中のCo量が1.5〜20.0g/m、Mo量が0.4〜7.0g/mとなるようにめっきすることを特徴とする、請求項8に記載のほうろう用鋼板の製造方法。
  10. 前記熱処理を500〜900℃の温度で実施することを特徴とする、請求項8又は9に記載のほうろう用鋼板の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載のほうろう用鋼板に、ほうろう層を形成してなることを特徴とするほうろう製品。
  12. 請求項1〜7のいずれかに記載のほうろう用鋼板上に、1回掛けで上釉薬を施釉し、次いで焼成することを特徴とする、ほうろう製品の製造方法。
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