JP2004107367A - 感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包してなり、色濃度−温度曲線に関して20℃乃至60℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料に関する。さらに詳細には、温度変化により大きなヒステリシス特性を示して発色−消色の可逆的変色を呈し、変色に要した熱又は冷熱の適用を取り去った後にあっても、着色状態と消色状態のいずれかを互変的且つ可逆的に保持する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の感温変色性色彩記憶性材料に関して、本出願人は先に提案している(特公平4−17154号公報)。
前記感温変色性色彩記憶性材料は、従来の可逆熱変色性材料のように変色温度を境にその前後で変色し、変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態はその状態が発現するのに要する熱または冷熱が適用されている間は維持され、熱または冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻るタイプと比較して、変色温度より低温側の色と高温側の色のいずれかを常温域において選択的に保持できるうえ、必要に応じて熱又は冷熱を適用することにより互変的に保持させることができ、感温記録材料、玩具類、装飾、印刷分野等多様な分野に適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この種の色彩記憶性効果は、前記特公平4−17154号公報に開示されているように、呈色反応をコントロールするエステル類から選ばれる化合物のうち、特定の化合物を構成成分として適用した系のみ発現されるものである。
本発明は、前記色彩記憶性効果を発現させる反応媒体となる化合物について、更に追求し、反応媒体の選択の自由度を高め、この種の感温変色性色彩記憶性材料の利用度を更に高めようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類を呈色反応の反応媒体として適用した系にあって、ヒステリシス幅(ΔH)の大きい熱変色特性を示し、効果的な色彩記憶性効果を発現させることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包してなり、色濃度−温度曲線に関して20℃乃至60℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を要件とする。
更には、色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T4 )が30℃以上であり、且つ、最低保持温度(T2 )が20℃以下である前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を要件とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図1のグラフについて説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する最低温度T4 (以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる最高温度T3 (以下、発色保持温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる最低温度T2 (以下、最低保持温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する最高温度T1 (以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。温度TA においては発色状態E点と消色状態F点の2相が共存する状態にある。この温度TA を含む、発色状態と消色状態が共存できる温度域が変色の保持可能な温度域であり、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
本発明者の実験では変色前後の各状態の保持できるΔH値は20℃乃至60℃の範囲である。ここで、T4 とT3 の差、或いは、T2 とT1 の差であるΔtが変色の鋭敏性を示す尺度であり、1℃乃至10℃の範囲が実用的である。
又、前記において、発色状態と消色状態の二相が実質的に保持され、実用に供される温度、即ち、TA を含むT3 とT2 の間の温度幅は10℃以上50℃未満の範囲が有効である。
更に、変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態のみ存在せるためには、完全消色温度(T4 )が30℃以上であり、且つ、最低保持温度(T2 )が20℃以下であることが好ましい。
【0006】
本発明における(イ)、(ロ)、(ハ)3成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも重量部である)。
又、各成分は各々2種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。又、一般顔料(非熱変色性)を配合することにより、有色〔1〕から有色〔2〕への色変化を付与することもできる。
【0007】
以下に(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、従来より公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0008】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0009】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、
1−フェニル−1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0010】
次に(ハ)成分のエステル類について具体的に化合物を例示する。
本発明に用いられるエステル類は、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類である。
具体的には、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸としては、1−,10−デカメチレンジカルボン酸、1−,11−ウンデカメチレンジカルボン酸、1−,12−ドデカメチレンジカルボン酸、1−,13−トリデカメチレンジカルボン酸、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1−,15−ペンタデカメチレンジカルボン酸、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、1−,17−ヘプタデカメチレンジカルボン酸、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1−,20−エイコサメチレンジカルボン酸を例示できる。
分子内に芳香環を有する一価アルコールとしては、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−イソプロピルベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−2−ブタノール、p−クロロベンジルアルコールを例示できる。
本発明に用いられるジエステル類は、前記した二塩基酸とアルコールの各種組み合わせにより得られる種々のジエステルが用いられる。
【0011】
前記エステル類は、従来の感温変色性色彩記憶性材料に用いられているエステル類を用いた場合と同程度、或いは、それ以上の広いヒステリシス幅が得られると共に、鋭敏な発色温度特性を有する。
具体的には、ヒステリシス幅(ΔH)が20〜60℃であると共に、T2 とT1 の差であるΔtが1〜10℃、好ましくは1〜8℃、より好ましくは1〜6℃を示す。
前記したヒステリシス幅と発色温度特性を有することにより、変色温度より低温側の色と高温側の色のいずれかを選択的に保持できる機能に優れ、且つ、降温によりT2 からT1 に移行する際の色変化が鋭敏であるため、実用性に富み、様々な用途への応用性に優れる。
前述した従来の感温変色性色彩記憶性材料には、(ハ)成分として炭素数10以下の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステルが開示されており、これらのエステル類を用いても広いヒステリシス幅を有するマイクロカプセル顔料を得ることはできるものの、発色温度特性について鋭敏なものが得られ難かった。更に、前記エステル類のなかには、所謂、可塑剤のような溶解力と結晶性の欠如を生じるものもあり、そのようなエステル類の使用は温度変化による発色性を損なったり、発色温度特性における鋭敏な色変化に劣る場合があった。
これは、(イ)、(ロ)、(ハ)成分の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物の結晶性が関与しており、アルキル鎖の短い二塩基酸により得られるジエステル自体が可塑剤のように結晶化し難く、しかも、溶剤のような働きを生じて(イ)、(ロ)成分を完全に溶解させ、組成物の結晶化の妨げになるためと推察される。
また、炭素数11の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステルは、前記と同様に可塑剤のような溶解力と結晶性の欠如を生じ易く、温度変化による発色性を損なったり、発色温度特性における鋭敏な色変化に劣る傾向にある。
本発明に用いられる炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類は、炭素数の増加に伴ってエステル自体の結晶性が向上するため、鋭敏な発色温度特性を示し、しかも、広いヒステリシス特性を有し、従来のジエステル類では成し得ない効果を奏する。
【0012】
本発明の(ハ)成分は前記エステル類を用いるが、必要に応じてヒステリシス特性を大きく変動しない範囲で他のエステル類、アルコール類、カルボン酸類、ケトン類、アミド類等を加えることができる。この場合、その添加量は本発明のエステル100に対して20以下(重量部)が所期の色彩記憶性効果を有効に発現させるうえで好ましい。
【0013】
前記三成分からなる均質相溶混合物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を形成する。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは、1〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは、最大外径の平均値が、50μmを越える系では、インキ、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、最大外径の平均値が0.5μm以下の系では、高濃度の発色性を示し難い。
また、前記マイクロカプセルは、内包物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、内包物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
なお、マイクロカプセル顔料は、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0014】
前記マイクロカプセル顔料は、塗料或いは印刷インキとして、多様な塗装乃至印刷物への適用や、該顔料を熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドして諸種の形態の賦形物として適用される。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
各実施例中におけるマイクロカプセル顔料の製造方法及び前記マイクロカプセル顔料の温度変化によるヒステリシス特性の測定方法について以下に説明する。尚、以下の配合例中の部は、重量部を示す。
【0016】
マイクロカプセル顔料の製造方法
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、(ロ)電子受容性化合物として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)本発明のジエステル化合物50.0部からなる三成分を120℃で加温溶解して均質相溶体となし、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー20部、酢酸エチル20部の混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100部中に滴下し、微小滴になるよう攪拌し、70℃で反応を1時間行った。これとは別に用意した2部の硬化剤〔油化シェルエポキシ(株)製、商品名:エピキュアU、エポキシ樹脂のアミン付加物〕を48部の水に溶解させた溶液を前記攪拌中の溶液中に徐々に添加し、液温を90℃に保って約3時間攪拌を続け、マイクロカプセル原液を得た。前記原液を遠心分離処理することにより、含水率約40重量%の青色から無色に変色する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を得た。
【0017】
ヒステリシス特性の測定方法
前記のようにして得られたマイクロカプセル顔料40部をエチレン−酢酸ビニルエマルジョン50部、消泡剤1部、レベリング剤1部、水8部からなるビヒクル中に均一に分散してなるインキを用いて、スクリーン印刷により上質紙に印刷した。得られた印刷物を以下の方法で加熱、冷却して変色挙動をグラフ上にプロットした。
前記印刷物を色差計〔TC−3600型色差計、(株)東京電色製〕の所定箇所に貼りつけ、その部分を温度幅80℃の範囲内で10℃/minの速度で印刷物を加熱、冷却した。例えば、実施例1の場合は、−20℃を測定開始温度として、10℃/minの速度で60℃まで加温し、続いて、10℃/minの速度で再び−20℃まで冷却した。各温度において色差計に表示された明度値をグラフ上にプロットして、図1に例示の色濃度−温度曲線を作成し、T1 、T2 、T3 、T4 、TH (着色過程における色濃度の中点の温度)、TG (消色過程における色濃度の中点の温度)、及びΔH(線分HG)、T2 −T1 (発色過程の温度幅)の各値を得た。表1、表2に各実施例及び比較例のジエステル類を適用したマイクロカプセル顔料の配合を示し、表3、表4に各実施例及び比較例の変色温度特性を示す。
なお、実施例2乃至4、及び比較例1乃至4の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料は、実施例1の(ハ)成分を表に示すジエステルに置き換える以外は同様の方法により調製した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【発明の効果】
本発明は、(ハ)成分として炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類を用いることにより、色濃度−温度曲線に関して、20℃〜60℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して発色−消色の可逆的変色を生起させ、変色温度より低温側の色と高温側の色の両方を互変的に記憶保持でき、必要に応じて熱又は冷熱を適用することにより、いずれかの色を可逆的に再現させて記憶保持できる特性を効果的に発現させることができると共に、発色温度特性も向上するため、従来のエステル類を配合した系と比較してより実用性に富む感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【符号の説明】
T1 完全発色温度
T2 最低保持温度
T3 最高保持温度
T4 完全消色温度
Claims (2)
- (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、炭素数12以上の飽和直鎖二塩基酸と、分子内に芳香環を有する一価アルコールとから構成されるジエステル類の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包してなり、色濃度−温度曲線に関して20℃乃至60℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料。
- 色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T4 )が30℃以上であり、且つ、最低保持温度(T2 )が20℃以下である、常温域で色彩記憶性を有する請求項1記載の感温感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料
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