JP2004107144A - 施肥方法 - Google Patents

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中野 一郎
Takayoshi Obata
小畠 敬良
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北野 智一
Naotoshi Miyata
宮田 尚稔
Shinichiro Wakahara
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Abstract

【課題】施設栽培における栽培残渣をメタン発酵させて得られるメタン発酵汚泥中の成分を肥料として有効利用することができる循環型施設栽培方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物として施設栽培における栽培残渣をメタン発酵設備3でメタン発酵させたメタン発酵汚泥、メタン発酵汚泥を膜分離設備4で膜分離した膜分離液、メタン発酵汚泥を脱水設備8で脱水した脱水ろ液、脱水ろ液や膜分離液を生物学的硝化設備10で硝化した硝化槽処理液の少なくとも何れかを肥料として使用する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は施肥方法に関し、栽培後残渣等の有機性廃棄物を栽培に循環利用する技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、施設栽培を行う場合には、植物の生育環境を人工的に最適な状態に制御して植物の成長を促進している。このため、施設栽培システムにおいては、ナトリウムランプなどの人工光を使用し、栽培養液をポンプで循環供給し、栽培施設内の温度を一定範囲に調節し、栽培ハウス内の炭酸ガス濃度を一定値以上に保っている。
【0003】
従来の公知文献としては例えば特許文献1がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−137979
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、施設栽培システムは植物の生育環境を保つために電気を多く必要とすし、化学工業的に製造した炭酸ガスをボンベで購入せねばならず、コストが高かった。また、作物の生育や作業環境を考慮すると夏場の冷房が必要であるが、散水による気化熱利用のみで効果が小さく、高温の生育環境が作物の生育へ与える悪影響から周年栽培が困難であった。また、施設栽培では栽培作物の出荷できない部分(栽培残渣、製品ロス)が40〜70%にも達し、その処分が問題となっている。
【0006】
一方、畜産糞尿等をメタン発酵させて糞尿の減量化を行うとともに発生するバイオガスを発電に利用する技術があり、メタン発酵設備の発酵汚泥は成分調整して河川等に廃棄していた。しかし、畜産糞尿だけではメタン発酵におけるバイオガス発生が少なく、十分な発電量を得られなかった。
【0007】
また、生ゴミや家畜糞尿のメタン発酵汚泥を脱水した脱水ろ液または膜分離した膜分離液は、肥料成分として有効な窒素をアンモニア態窒素として含んでおり栽培養液の成分調整に使用可能であるが、植物が利用し易い硝酸態窒素としては含んでいない。また、メタン発酵汚泥は肥料成分として有効なリン、カルシウムを含んでいるが脱水ろ液または膜分離液に含まれる量はわずかである。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するものであり、施設栽培における栽培残渣をメタン発酵させて得られるメタン発酵汚泥中の成分を肥料として有効利用することができる施肥方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の施肥方法は、有機性廃棄物をメタン発酵設備でメタン発酵させたメタン発酵汚泥、もしくはメタン発酵汚泥を脱水設備で脱水した脱水ろ液、もしくは脱水ろ液を生物学的硝化設備に導入して脱水ろ液中のアンモニアを硝化した硝化槽処理液、もしくはメタン発酵汚泥を膜分離設備で膜分離した膜分離液、もしくは膜分離液を生物学的硝化設備に導入して膜分離液中のアンモニアを硝化した硝化槽処理液の少なくとも何れかを肥料として使用するものである。
【0010】
上記した構成において、メタン発酵汚泥、脱水ろ液、膜分離液、硝化槽処理液は単独で施肥可能である。しかし、メタン発酵汚泥はアンモニア態窒素、リン、カリウム、カルシウムを多く含むが、植物が利用し易い硝酸態窒素としては含んでおらず、脱水ろ液、膜分離液に含まれるリン、カルシウムは少なく、硝化槽処理液は硝酸態窒素を含むがトータル窒素は少ない。このため、メタン発酵汚泥、膜分離液、脱水ろ液、硝化槽処理液を適宜に組み合わせて混合使用することで、バランスの取れた肥料として施肥することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明の施肥方法は、有機性廃棄物として栽培施設の栽培工程で発生する栽培残渣をメタン発酵設備でメタン発酵させ、メタン発酵汚泥、脱水ろ液、膜分離液、硝化槽処理液の少なくとも何れかを栽培施設に循環させて肥料として使用するものである。
【0012】
上記した構成により、施設栽培において発生する栽培残渣から施設栽培に必要な肥料成分を回収して循環利用できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、栽培施設1は、植物栽培の他に、苗生産、植物の花芽分化処理(夜冷、株冷)、乾燥、貯蔵等を行うものであるが、本実施の形態では施設内で完全閉鎖型栽培を行うものであり、太陽光を利用せずに人工光等による循環制御下で周年・計画栽培を行う。このため、完全閉鎖型栽培システムにおいては、栽培施設1で植物の生育環境を制御するために電力、熱、冷熱、二酸化炭素を消費し、電力を栽培施設内の人工光源や栽培養液の循環ポンプ等で消費し、熱は冬季や夜間の暖房、給湯、植物の乾燥加工に消費し、冷熱は夏場の冷房に消費し、二酸化炭素は植物の成長を促進するために消費する。栽培施設1で生産した新鮮野菜や花卉は周辺地域住民、食品製造業者、食品販売業者等へ出荷する。
【0014】
栽培工程において発生する栽培残渣、周辺地域から排出される生ゴミ、畜産糞尿等の有機性廃棄物は植物の生育に障害をきたすNaCl濃度が高いので、NaCl除去装置2で水洗いしてNaClを除去した後に、メタン発酵設備3に投入する。NaClを含む水洗後の廃水は後述する生物学的硝化設備10で処理するか、系外へ放出する。
【0015】
メタン発酵設備3には膜分離設備4が付帯しており、膜分離設備4はメタン発酵設備3のメタン発酵汚泥を膜分離して膜分離液を取り出す。膜分離設備4はメタン発酵槽内へ浸漬する浸漬型膜分離装置(液中膜)でも良く、メタン発酵槽外に配置する槽外型でも良い。
【0016】
メタン発酵設備3のメタン発酵工程で生成するバイオガスは発電装置5に供給し、発電装置5で発生する電気を人工光源や栽培養液の循環ポンプの電力として供給し、熱を冬場の暖房用に栽培施設1へ供給する。また、発電装置5で発生した排ガスに含まれるCOを施設栽培で利用するために、発電装置5で発生した排ガスをNOx,SOx除去装置6に供給し、排ガス中の植物栽培に有害となる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)を酸化鉄で脱硫するか硫黄酸化細菌で生物脱硫して除去し、COのみを栽培施設1に供給する。また、夏場には熱量がかなり余るので、熱および電気を吸収式の冷凍機7に供給し、発生する冷熱で栽培工程の施設内を冷房する。
【0017】
メタン発酵設備3で発生するメタン発酵汚泥は一部を取り出し、残部は脱水設備8で脱水して脱水ろ液を回収した後に、乾燥設備9で乾燥機により乾燥させて乾燥堆肥となす。脱水ろ液、膜分離液の一部は生物学的硝化設備10に供給してアンモニア態窒素を硝化して硝酸態窒素に転換した後に、生物学的硝化設備10の硝化槽処理液を取り出す。
【0018】
メタン発酵設備3のメタン発酵汚泥の一部、膜分離設備4の膜分離液の一部、脱水設備8の脱水ろ液の一部、生物学的硝化設備10の硝化槽処理液は、濃縮装置11を経た後に単独で施肥可能である。濃縮装置11はメタン発酵汚泥、膜分離液、脱水ろ液、硝化槽処理液の水分を発電装置5で発生した熱や膜等で除去して各液毎に濃縮するものであり、成分調整装置12は希釈や不足成分の添加によって栽培植物に対応した培地の成分に調節するものであり、電気伝導率(EC)の調整、pH調整を行う。メタン発酵汚泥は浮遊物質が多くてつまりを生じやすいので、人為的施肥もしくは目の粗い潅水チューブ・ノズルによって施肥し、あるいは水耕栽培の栽培養液とする。脱水ろ液は少し浮遊物質があるので、人為的施肥もしくは目の粗い潅水チューブによって施肥し、あるいは水耕栽培の栽培養液とする。膜分離液は浮遊物質がなく、人為的施肥、点滴チューブ、潅水チューブ・ノズル等によって施肥し、あるいは水耕栽培の栽培養液とする。硝化槽処理液は膜分離液に由来するものにおいて浮遊物質がなく、病害虫も除去されて安全性が高く、人為的施肥、点滴チューブ、潅水チューブ・ノズル等によって施肥し、あるいは水耕栽培の栽培養液とする。脱水ろ液に由来するものにおいて少し浮遊物質があり、人為的施肥もしくは目の粗い潅水チューブ・ノズルによって施肥し、あるいは水耕栽培の栽培養液とする。
【0019】
【表1】
Figure 2004107144
【0020】
しかし、表1に示すように、メタン発酵汚泥はアンモニア態窒素、リン、カリウム、カルシウムを多く含むが、植物が利用し易い硝酸態窒素としては含んでおらず、脱水ろ液、膜分離液に含まれるリン、カルシウムは少なく、硝化槽処理液は硝酸態窒素を含むがトータル窒素は少ない。このため、メタン発酵設備3のメタン発酵汚泥の一部、膜分離設備4の膜分離液の一部、脱水設備8の脱水ろ液の一部、生物学的硝化設備10の硝化槽処理液は、成分調整装置12で適宜に組み合わせて混合し、混合割合を調整することで栽培植物に対応した培地の成分に調節し、バランスの取れた肥料として施肥する。メタン発酵汚泥、膜分離液、脱水ろ液、硝化槽処理液は上述した施肥により栽培施設1において混合して使用しても良い。
【0021】
このように、施設栽培において発生する栽培残渣から施設栽培に必要な肥料成分を回収して循環利用でき、また栽培残渣、畜産糞尿、生ゴミをメタン発酵させて発生する熱、CO、電気を利用して、完全閉鎖型栽培システムにおいて植物の生育環境を制御するために必要な電力、熱、冷熱、COを賄うことにより、太陽光を利用せずに人工光等による循環制御下で周年・計画栽培を行うことができる。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、メタン発酵汚泥、脱水ろ液、膜分離液、硝化槽処理液は単独で施肥可能であるが、メタン発酵汚泥はアンモニア態窒素、リン、カリウム、カルシウムを多く含むが、植物が利用し易い硝酸態窒素としては含んでおらず、脱水ろ液、膜分離液に含まれるリン、カルシウムは少なく、硝化槽処理液は硝酸態窒素を含むがトータル窒素は少ないので、メタン発酵汚泥、膜分離液、脱水ろ液、硝化槽処理液を適宜に組み合わせて混合使用することで、バランスの取れた肥料として施肥することができ、施設栽培において発生する栽培残渣から施設栽培に必要な肥料成分を回収して循環利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すフローシート図である。
【符号の説明】
1  栽培施設
2  NaCl除去装置
3  メタン発酵設備
4  膜分離設備
5  発電装置
6  NOx,SOx除去装置
7  冷凍機
8  脱水設備
9  乾燥設備
10  生物学的硝化設備
11  濃縮装置
12  成分調整装置

Claims (2)

  1. 有機性廃棄物をメタン発酵設備でメタン発酵させたメタン発酵汚泥、もしくはメタン発酵汚泥を脱水設備で脱水した脱水ろ液、もしくは脱水ろ液を生物学的硝化設備に導入して脱水ろ液中のアンモニアを硝化した硝化槽処理液、もしくはメタン発酵汚泥を膜分離設備で膜分離した膜分離液、もしくは膜分離液を生物学的硝化設備に導入して膜分離液中のアンモニアを硝化した硝化槽処理液の少なくとも何れかを肥料として使用することを特徴とする施肥方法。
  2. 有機性廃棄物として栽培施設の栽培工程で発生する栽培残渣をメタン発酵設備でメタン発酵させ、メタン発酵汚泥、脱水ろ液、膜分離液、硝化槽処理液の少なくとも何れかを栽培施設に循環させて肥料として使用することを特徴とする請求項1記載の施肥方法。
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