JP2004105900A - 焼却飛灰の処理剤及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼却飛灰の混練・成形工程で発生するアンモニアなどの揮発性の化合物の大気中への拡散を抑制し、成形工程、埋め立て地までの輸送工程及び埋め立て工程における焼却飛灰の飛散を抑制し、更に、処理焼却飛灰が含水した際に未固定の重金属類が溶出するのを抑制することのできる、新規な焼却飛灰の処理剤及びそれを用いた焼却飛灰の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。更に他の態様においては、本発明に係る処理剤は、更なる成分として、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含む。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。更に他の態様においては、本発明に係る処理剤は、更なる成分として、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ゴミや産業廃棄物等の焼却プラントなどから排出される焼却飛灰を処理する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
産業廃棄物や都市ゴミの焼却処理の際に発生する焼却飛灰は、最終的には埋め立て処理されるが、これらの焼却飛灰は重金属類を含有しているので、埋め立て処理を行った後に雨水などによって重金属類が溶出しないように固定化しなければならない。この焼却飛灰の固定化処理に関しては、「セメント固化法」、「酸その他の溶剤による抽出法」、「溶融固定化法」、「薬剤添加法」のいずれかの処理を行うことが義務づけられている。このうち、「薬剤添加法」は、他の方法に比べて一般的に装置並びに取り扱いが簡便なため、種々検討されている。
【0003】
薬剤添加法とは、所定量の水と薬剤と焼却飛灰とを混練して反応させ、有害な重金属類を固定化する方法である。この目的で用いることのできる薬剤としては、重金属類と複塩を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成するリン酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などの無機系重金属固定化剤、重金属類と硫化物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する硫黄系重金属固定化剤、重金属類とキレート化合物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する有機液体キレート系重金属固定化剤などが挙げられる。混練物は、造粒機又は成型機でペレット状、粒状の固形物に成形されて埋め立て処理されるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、従来の薬剤添加法では、混練・成形工程において、高温の焼却飛灰から揮発性の化合物が大気中に拡散するため、環境・労働安全衛生の観点から問題であった。特に、焼却排ガス中のNOx(窒素酸化物)の除去対策として、焼却施設には脱硝設備が装備されているのが一般的であるが、この脱硝設備に起因した問題があった。脱硝の方法は、無触媒脱硝法と触媒脱硝法とに大きく分けられるが、いずれも、アンモニア水又は尿素を焼却炉や反応塔に吹き込んでNOx(窒素酸化物)を窒素に還元する。しかしながら、焼却飛灰中に残留するアンモニア又はアンモニア性窒素化合物が、混練や成形工程で高温の処理焼却飛灰から大気中に揮発・拡散し、これが大きな問題となっていた。
【0005】
この対策として、例えばアンモニアなどの塩基性化合物に対しては、混練・成形工程で酸を添加して、塩基性化合物の拡散を防ぐ方法などが考えられているが、酸の添加のために固定化した重金属が溶出するなどの問題があり、実用的ではなかった。
【0006】
また、微粒子である焼却飛灰は、成形してもその一部が崩壊し、成形工程、埋め立て地までの輸送工程及び埋め立て工程において、飛散するという問題があった。更に、焼却飛灰は吸湿性があり、水分を吸収すると未固定の重金属類が溶出し易くなるなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭57−55473号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を考慮して、焼却飛灰の混練・成形工程で発生するアンモニアなどの揮発性の化合物の大気中への拡散を抑制し、成形工程、埋め立て地までの輸送工程及び埋め立て工程における焼却飛灰の飛散を抑制し、更に、処理焼却飛灰が含水した際に未固定の重金属類が溶出するのを抑制することのできる、新規な焼却飛灰の処理剤及びそれを用いた焼却飛灰の処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各種実施形態を説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0011】
樹脂酸とは、天然樹脂中に含まれる有機物の総称で、樹脂によって種類が異なるが、工業的には、ロジン(松ヤニ)やトール油中のジテルペン酸、即ち二重結合2個とアルキル化ヒドロフェナントレン核を持ったモノカルボン酸であるアビエチン酸系とピマル酸系のものが広く用いられている。本発明においては、任意の樹脂酸を用いることができるが、特にアビエチン酸、ピマル酸などを好適に用いることができる。また、樹脂酸の変性物としては、樹脂酸のエステル、アルカリ金属塩、α,β−不飽和多塩基酸付加物又はそのアルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、上記樹脂酸の、グリセリンエステル、n−ブチルアルコールエステル、カリウム塩、ナトリウム塩、マレイン酸付加物、フマル酸付加物或いはこれら付加物のカリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。これら樹脂酸又はその変性物は、溶液、乳化液或いは分散液の形態で用いることもできる。また、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物あるいはその溶液、乳化液若しくは分散液として、市販のロジンサイズ剤を本発明に係る焼却飛灰処理剤として用いることもできる。
【0012】
なお、乳化液としては、アクリル系高分子ポリマーを乳化剤として用いて、アビエチン酸を水溶媒に分散させたものなどが挙げられる。また、分散液としては、デンプンを分散剤として用いて、アビエチン酸を水溶媒に分散させたものなどが挙げられる。
【0013】
アビエチン酸、ピマル酸などの樹脂酸及びその変性物は、製紙用ロジンサイズ剤或いは防水ペイントなどのように耐水性を付与する目的で広く使用されている。これらの物質は、ロジン(松ヤニ)から生成されることからも明らかなように、皮膜形成特性を持つ天然物質であり、また消臭作用を持つことも知られている。本発明者らは、この樹脂酸を焼却飛灰の処理剤として応用することができないかどうかについて鋭意研究した結果、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、或いはこれらの溶液、乳化液若しくは分散液を、焼却飛灰と混練するか或いは焼却飛灰の成形物に塗布することによって、焼却飛灰からの重金属類やアンモニアなどの有害物質の漏洩を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明によれば、例えば、処理飛灰からアンモニアなどの揮発性の物質が大気中に拡散することを抑制することができ、また有害物質を含有する焼却飛灰が飛散するのを抑制することができ、更に処理焼却飛灰が含水した場合に重金属類などの有害物質が溶出することを抑制することができる。
【0015】
本発明における上記の効果発現のメカニズムについては明らかではないが、次のように推測することができる。揮発性物質の大気中への拡散の抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の包接効果と皮膜形成による被覆効果との相乗作用によるものと考えられる。対象となる揮発性物質がアンモニアなどのように塩基性の場合には、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物のカルボキシル基との反応も拡散抑制効果に寄与すると考えられる。また、焼却飛灰の飛散抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が皮膜形成することによる被覆効果と、耐水効果によるものと考えられる。更に、処理焼却飛灰が含水した場合の重金属類などの有害物質の溶出の抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が皮膜形成することによる被覆効果と、耐水効果によるものと考えられる。
【0016】
本発明に係る焼却飛灰の処理剤を焼却飛灰と接触させることによって、上記の所期の効果を達成することができる。即ち、本発明の他の態様は、上記に説明した本発明に係る焼却飛灰の処理剤を、焼却飛灰と接触させることを特徴とする焼却飛灰の処理方法を提供する。
【0017】
なお、本発明において、処理剤を焼却飛灰と接触させる態様としては、処理剤を焼却飛灰に加えて混練する方法や、或いは焼却飛灰を混練後成形した成形体に処理剤を塗布する方法などを採用することができる。
【0018】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰と混練する場合には、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物をそのまま用いてもよいし、或いはその溶液、乳化液若しくは分散液の形態で用いることもできる。
【0019】
また、本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、焼却飛灰に水及び必要に応じて本発明に係る焼却飛灰処理剤を添加して混練した成形物に対して、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液の形態の本発明に係る焼却飛灰処理剤を塗布することができる。塗布の方法としては、焼却飛灰の成形物に樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液をスプレーする方法、焼却飛灰の成形物に樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を含浸させる方法などを採用することができる。なお、本発明においては、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を焼却飛灰成形物に塗布した後に乾燥させることが必要であるが、これは焼却飛灰自体が持つ熱による自然乾燥であってもよいし、或いはドライヤーなどを用いて乾燥させてもよい。乾燥温度を60℃以上、好ましくは100℃以上とすることにより、より強固な皮膜が形成され、アンモニアなどの揮発性物質の大気中への拡散の抑制や、処理焼却飛灰の飛散抑制、重金属類などの有害物質の溶出抑制の効果がより大きくなる。
【0020】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰と混練する場合、焼却飛灰に対する処理剤の添加割合は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、焼却飛灰に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。添加割合が0.01重量%未満では十分な効果が得られず、また10重量%以上では、混練物の粘着性が大きくなりすぎて、混練装置に付着するなどの問題が発生するため実用的でない。また、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を焼却飛灰と混練する場合には、溶液、乳化液若しくは分散液中の樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の濃度は、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。また、混練の際には、処理する焼却飛灰の重量に対して5〜50重量%の水を加えて混練を行うことが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰成形物に塗布する場合には、塗布に用いる樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液中の樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の濃度は、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。濃度が0.01重量%未満では十分な効果が得られず、50重量%以上では、塗布液の粘度が高くなりすぎて、焼却飛灰処理剤を均一に塗布することが難しくなるので実用的でない。なお、塗布の場合には、焼却飛灰に対する処理剤の塗布量は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、0.01〜2重量%が好ましい。樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液を焼却飛灰に塗布する場合には、溶媒としては水及び/又は有機溶媒を使用することができる。特にアルコール類などの有機溶媒を用いると、塗布後の乾燥性が向上するので好ましい。
【0022】
また、本発明に係る樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を含む焼却飛灰処理剤を、焼却飛灰と混練して焼却飛灰成形物を形成し、更にこの成形物に本発明に係る焼却飛灰処理剤を塗布する場合には、本発明に係る焼却飛灰処理剤の使用量は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、焼却飛灰に対して、合計で0.01〜12重量%となるように用いることが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。
【0023】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、塗布液にデンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、SBRエマルジョン等のゴム乳液などを混合して、皮膜特性を調整することができる。
【0024】
更に、本発明においては、上記に説明した(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を、更に(イ)無機凝集剤と組み合わせて用いることにより、焼却飛灰からの有害物質の漏洩をより一層効果的に行うことが可能である。即ち、本発明の他の態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物に加えて、更に(イ)無機凝集剤を含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。
【0025】
本発明のかかる態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物と組み合わせて用いることのできる(イ)無機凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸アルミニウム(PAS)などのアルミニウム系凝集剤、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄などを挙げることができる。かかる態様において、無機凝集剤は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の焼却飛灰への定着を促進することによって、揮発性物質の大気中への拡散、重金属の溶出、処理飛灰の飛散などを抑制する効果を高めるものと考えられる。
【0026】
また、本発明においては、上記(ア)成分及び(イ)成分に加えて、更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を組み合わせて用いることにより、より一層の有害物質漏洩抑制効果を奏することができる。即ち、本発明の更に他の態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び(イ)無機凝集剤に加えて、更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。
【0027】
なお、本発明については、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び、(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸、ケイ酸塩、炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含む処理剤にも適用されうることは勿論である。
【0028】
本発明のかかる態様において用いることのできることのできる重金属固定化剤としては、重金属と複塩を形成して水に不溶性の安定した固定化物を得ることのできるリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などの無機系重金属固定化剤、重金属と硫化物を形成して水に不溶性の安定した固定化物を得ることのできる硫黄系重金属固定化剤、重金属類とキレート化合物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する有機液体キレート系重金属固定化剤などが挙げられる。リン酸塩としては、正リン酸、次亜リン酸、メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸、正亜リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、縮合リン酸などの塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩などを挙げることができ、ケイ酸塩としては、オルトケイ酸、二ケイ酸、四ケイ酸、メタケイ酸などの塩を挙げることができる。なお、ここで「塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。有機液体キレート系重金属固定化剤としては、ジアルキルジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアルカリ金属塩、具体的には、ジエチルジチオカルバミン酸のカリウム塩及び/又はN1,N2,N3,N5−テトラ(ジチオカルボキシ)テトラエチレンペンタミンのナトリウム塩及び/又はピペラジンビスジチオカルバミン酸のカリウム塩などを挙げることができる、硫黄系重金属固定化剤としては、硫化ソーダ、水硫化ソーダ、チオール系化合物などを挙げることができる。
【0029】
本発明のこれらの態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては(ウ)重金属固定化剤を焼却飛灰と接触させる方法としては、上記の各成分を焼却飛灰と混練する方法と、少なくとも成分(ア)の少なくとも一部を焼却飛灰の成形物に塗布し、残りの成分は成形前の焼却飛灰と混練する方法のいずれかを採用することができる。
【0030】
上記各成分を焼却飛灰と混練する場合には、上記各成分を混合して焼却飛灰に添加してもよく、或いはこれらを別々に焼却飛灰に添加してもよい。この場合、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物は、そのまま用いても、或いは、溶液、乳化液若しくは分散液の形態で用いてもよい。
【0031】
また、本発明のかかる態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、焼却飛灰に、水及び使用する場合には(ウ)重金属固定化剤と、更に場合により、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の残余量及び(イ)無機凝集剤を添加して混練した成形物に対して、溶液、乳化液若しくは分散液の形態の(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を塗布することができる。なお、この方法においては、(イ)無機凝集剤は、焼却飛灰に混練しても、塗布してもよい。塗布の方法としては、焼却飛灰の成形物に、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合によっては(イ)無機凝集剤を、溶液、乳化液若しくは分散液の形態でスプレーする方法、焼却飛灰の成形物に(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合によっては(イ)無機凝集剤の溶液、乳化液若しくは分散液を含浸させる方法などを採用することができる。
【0032】
以上の説明から当業者が容易に理解できるように、本発明において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては(ウ)重金属固定化剤を含む処理剤とは、これらの(ア)成分、(イ)成分、及び場合によっては(ウ)成分が混合された形態のものに加えて、これらの各成分が別々に包装されている所謂パッケージ薬剤の形態で、各成分をそれぞれ別々に焼却飛灰に接触させることのできる形態のものも含まれる。
【0033】
なお、本発明において、成分(イ)無機凝集剤を用いる場合、その焼却飛灰に対する好ましい添加量は、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01重量%未満では、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の定着効果が不十分であり、20重量%以上では定着効果が頭打ちになり、経済的に好ましくない。
【0034】
更に、本発明において、成分(ウ)重金属固定化剤を用いる場合、その焼却飛灰に対する好ましい添加量は、焼却飛灰の重金属含有量によって変動するが、20重量%未満が一般的である。
【0035】
次に、本発明に係る焼却飛灰の処理方法を図を参照しながら説明する。図1は、本発明において、成分(ア)、及び場合によっては更に成分(イ)、及び場合によっては更に成分(ウ)を焼却飛灰と混練することによって、焼却飛灰の処理を行う方法を説明するフロー図である。本発明によって処理すべき焼却飛灰は、飛灰貯留槽1から混練機2に送られる。混練機2では、水槽6から水が供給され、薬剤槽7からは、上記の成分(ア)、及び場合によっては更に成分(イ)、及び場合によっては更に成分(ウ)が、化合物自体として、若しくは所望により溶液、乳化液若しくは分散液の形態で供給され、処理飛灰と混練される。混練によって形成される混練成形物は、固形物貯留槽4を経て、埋立地5に運ばれて埋立て処理される。本発明において用いることのできる混練機としては、当該技術において周知の混練機、例えば、押出造粒機、転動造粒機などを用いることができる。
【0036】
次に、図2は、成分(ア)及び場合によっては成分(イ)を焼却飛灰の成形物に塗布する態様を説明するフロー図である。本発明によって処理すべき焼却飛灰は、飛灰貯留槽1から混練機2に送られる。混練機2では、水槽6から水が供給され、薬剤槽7からは、必要に応じて(イ)無機凝集剤、(ウ)重金属固定化剤などの薬剤や、更に場合により(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が供給され、処理飛灰と混練される。混練によって形成される混練成形物は、次に塗布装置3に送られ、ここで、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び場合により(イ)無機凝集剤が、混練成形物に塗布される。混練成形物は、次に固形物貯留槽4を経て、埋立地5に運ばれて埋立て処理される。
【0037】
本発明において用いることのできる塗布装置3の具体的構成の例を図3及び4に示す。図3は、成分(ア)及び場合により成分(イ)の溶液に、焼却飛灰成形物を浸漬することによって、これらの成分を成形物へ塗布するための装置の一具体例を示す概念図である。図2の混練機2から送られてくる焼却飛灰成形物(混練成形物)13は、ベルトコンベア11に載置され、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合により(イ)無機凝集剤を含む溶液(塗布液)12が満たされた容器内に搬送され、溶液中に浸漬される。溶液を含浸させた混練成形物13は、次に第2のベルトコンベア15に載置され、乾燥装置14によって乾燥した後、図2の固形物貯留槽4へ送られる。この形態の装置においては、塗布液の塗布量は、塗布液12中の混練成形物3の滞留時間を変えることにより調整することができる。
【0038】
図4は、成分(ア)及び場合により成分(イ)の溶液を焼却飛灰成形物にスプレー噴霧することによって成形物への塗布を行うための装置の一具体例を示す概念図である。図2の混練機2から送られてくる焼却飛灰成形物(混練成形物)23は、ベルトコンベア21に載置され、スプレー24から、成分(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び場合により成分(イ)無機凝集剤の溶液(塗布液)がスプレー噴霧される。余剰の塗布液22は容器に収容され、塗布液循環ライン25によって再びスプレー24に送られる。塗布液がスプレーによって塗布された混練成形物23は、次に第2のベルトコンベア27に載置され、乾燥装置26によって乾燥した後、図2の固形物貯留槽4へ送られる。この形態の装置においては、塗布液の塗布量は、スプレー24の噴霧量及びベルトコンベア21の搬送速度を変えることにより調整することができる。なお、本装置においては、ベルトコンベア21を振動させるなどして、混練成形物23がベルトコンベア21上で転がるようにすることにより、塗布液が混練成形物23の表面上に均一に塗布されるようにすることが好ましい。
【0039】
本発明においては、成分(ア)を焼却飛灰と混練する場合の方が、成分(ア)を焼却飛灰成形物に塗布する場合よりも、焼却飛灰成形物の強度が高くなり、成形物の崩壊や焼却飛灰の飛散を抑制することができるが、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の使用量が多くなり易い。また、揮発性化合物の拡散抑制、耐水性付与という観点からは、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を焼却飛灰成形物に塗布する場合には、成形物の表面層を被覆すればよく、焼却飛灰と樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物とを混練して処理する場合と比較して使用量を減じることができるので、効率的、経済的である。
【0040】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
試験方法
各実施例で用いた試験法は以下の通りである。
【0042】
(1) 重金属溶出試験
環境庁告示第13号試験法に基づいて重金属の溶出試験を行った。
【0043】
(2) アンモニア揮発試験
1リットルの三角フラスコに焼却飛灰成形物(混練物)の試料20gを入れ、直ちに密栓し、10分間室温で放置した後、検知管によってフラスコ内部の気体中のアンモニア濃度を測定した。
【0044】
(3) 崩壊試験
焼却飛灰成形物の試料を室温条件下で一昼夜乾燥させた後、高さ30cmの高さから試験台上に3回落下させ、崩壊状態を観察した。
【0045】
(4) 耐水性試験
焼却飛灰成形物の試料を室温条件下で一昼夜乾燥させたものを、純水に3時間浸漬させた後、室温で1時間乾燥して重量を測定した。浸漬前後の重量差から下式によって含水率を求めた。含水率が低いほど、耐水性が高いと判断できる。
含水率(%)=浸漬前後の重量差(g)/浸漬前の重量(g)×100
【0046】
実施例1
BF灰(Ca=13%,Pb=16,000ppm,Zn=62,000ppm、Cu=940ppm、アンモニア性窒素=82.4ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を3重量部、樹脂酸としてアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。得られた成形試料に対して、上記の重金属溶出試験、アンモニア揮発試験、崩壊試験、耐水性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0047】
実施例2〜5
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部(実施例2〜4)又は1重量部(実施例5)添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を濃度1重量%(実施例2)又は3重量%(実施例3,5)又は5重量%(実施例4)のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例6〜7
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を、濃度6重量%の市販のサイズ剤A(主成分:強化ロジンのカリウム塩、星光化学製コロパールS−50X、成分濃度50重量%)又は市販サイズ剤B(主成分:強化ロジンとロジンエステル混合物の水性エマルジョン、星光化学製コロパールEV−30C、成分濃度50重量%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0049】
実施例8
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%、カルボキシメチルセルロース0.1重量%の溶液を、成形物に霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。スプレー溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0050】
実施例9
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%の溶液を、成形物に霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して9重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。この成形試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0052】
比較例2〜4
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1〜3重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬して塗布した後、10分間室温で乾燥した。水の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0053】
比較例5
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物に純水を霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。水の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して9重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より明らかなように、本発明に係る樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を含む焼却飛灰の処理剤を用いて焼却飛灰を処理した場合(実施例1〜9)は、本発明の処理剤を用いないで処理した場合(比較例1〜5)と比べて、アンモニア濃度が大幅に低減し、成形物が崩壊し難く、更に含水し難い(耐水性が高い)という結果が得られた。
【0056】
焼却飛灰に重金属固定化剤2重量%を添加して混練処理した実施例2〜4と比較例3とを比較すると、混練成形物に本発明の処理剤を浸漬塗布せずに処理した比較例3と比較して、混練成形物にアビエチン酸ナトリウム溶液を浸漬塗布した実施例2〜4では、鉛の溶出濃度が低くなった。その傾向は、用いたアビエチン酸ナトリウム溶液の濃度が高くなるほど顕著となり、濃度5重量%(実施例4)では、鉛の溶出濃度は0.05mg/L未満となった(重金属固定化剤添加量2重量%)。これは、焼却飛灰に重金属固定化剤を3重量%添加して混練処理した比較例4とほぼ同等の重金属溶出抑制効果を示したことになり、塗布法を採用することにより重金属固定化剤の使用量を減じることができたことが分かる。また、実施例8と実施例9とを比較すると、塗布液にカルボキシメチルセルロースを併用することによって、混練成形物の強度及び耐水性が向上することが分かる。
【0057】
実施例10
BF灰(Pb=3,200ppm、アンモニア性窒素41.2ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加えて混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を濃度3重量%のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0058】
実施例11,12
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、実施例6〜7で用いたものと同じ市販サイズ剤A又は市販サイズ剤Bの濃度6重量%の溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0059】
比較例6
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を3重量部添加して混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。塗布液の着液量は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0060】
比較例7
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、濃度6重量%のジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0061】
比較例8
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。塗布液(水)の着液量は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2より明らかなように、本発明に従って樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を単独で用いて焼却飛灰を処理しても、鉛含有量が本来少ない灰の処理には十分に適用できることが分かった。上記の実施例10〜12では、Pb=3,200ppm、アンモニア性窒素41.2ppmを含む灰を処理したところ、鉛溶出濃度は埋立て基準値である0.3mg/Lを十分に満足していた。また、従来の重金属固定化剤を用いた比較例6〜7と比べて、アンモニア濃度が極めて低く、更に、形成された成形物は極めて崩壊し難く、更に含水し難い(耐水性が高い)ものであった。
【0064】
実施例13〜14
BF灰(Ca=13%,Pb=16,000ppm,Zn=62,000ppm、Cu=940ppm、アンモニア性窒素=82.4ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1重量部、硫酸バンドを0.1重量部(実施例13)又は0.5重量部(実施例14)添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を3重量%のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた成形試料に対して、上記の重金属溶出試験、アンモニア揮発試験、崩壊試験、耐水性試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0065】
実施例15
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。得られた成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0066】
実施例16
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にリン酸カルシウム6重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0067】
実施例17
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)1重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、市販サイズ剤(主成分:強化ロジンとロジンエステル混合物の水性エマルジョン、星光化学製コロパールEV−30C、成分濃度50重量%)の濃度6重量部の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0068】
比較例9
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1重量部、硫酸バンドを0.1重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。この成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0069】
比較例10
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にリン酸カルシウムを6重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)の濃度3重量%の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表3より、無機凝集剤である硫酸バンドを使用することにより(実施例13、14)、アンモニア濃度が低減し、含水し難く、鉛の溶出が抑制されることが分かる。また、実施例13,14(樹脂酸+無機凝集剤+重金属固定化剤を使用)と比較例9(無機凝集剤+重金属固定化剤を使用)とを比較すると、無機凝集剤と重金属固定化剤とに加えて、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を使用することにより、アンモニア濃度が低減し、含水し難く、鉛の溶出が抑制され、成形物が崩壊し難いという結果が得られたことが分かる。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含む本発明の一態様に係る焼却飛灰の処理剤及び処理方法によれば、焼却飛灰の混練、成形工程で発生するアンモニアなどの揮発性化合物の大気中への拡散を抑制し、処理飛灰からの重金属などの有害物質の溶出を抑制することができる。更に、上記成分(ア)に加えて、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を併用して焼却飛灰を処理すると、処理飛灰からの重金属などの有害物質の溶出を更に飛躍的に抑制することができる。また、本発明によれば、焼却飛灰の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一態様に係る焼却飛灰の処理方法の概要を示すフロー図である。
【図2】本発明の他の態様に係る焼却飛灰の処理方法の概要を示すフロー図である。
【図3】本発明の一態様に係る焼却飛灰成形物に対する処理剤塗布装置の一具体例を示す概念図である。
【図4】本発明の他の態様に係る焼却飛灰成形物に対する処理剤塗布装置の他の具体例を示す概念図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ゴミや産業廃棄物等の焼却プラントなどから排出される焼却飛灰を処理する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
産業廃棄物や都市ゴミの焼却処理の際に発生する焼却飛灰は、最終的には埋め立て処理されるが、これらの焼却飛灰は重金属類を含有しているので、埋め立て処理を行った後に雨水などによって重金属類が溶出しないように固定化しなければならない。この焼却飛灰の固定化処理に関しては、「セメント固化法」、「酸その他の溶剤による抽出法」、「溶融固定化法」、「薬剤添加法」のいずれかの処理を行うことが義務づけられている。このうち、「薬剤添加法」は、他の方法に比べて一般的に装置並びに取り扱いが簡便なため、種々検討されている。
【0003】
薬剤添加法とは、所定量の水と薬剤と焼却飛灰とを混練して反応させ、有害な重金属類を固定化する方法である。この目的で用いることのできる薬剤としては、重金属類と複塩を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成するリン酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などの無機系重金属固定化剤、重金属類と硫化物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する硫黄系重金属固定化剤、重金属類とキレート化合物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する有機液体キレート系重金属固定化剤などが挙げられる。混練物は、造粒機又は成型機でペレット状、粒状の固形物に成形されて埋め立て処理されるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、従来の薬剤添加法では、混練・成形工程において、高温の焼却飛灰から揮発性の化合物が大気中に拡散するため、環境・労働安全衛生の観点から問題であった。特に、焼却排ガス中のNOx(窒素酸化物)の除去対策として、焼却施設には脱硝設備が装備されているのが一般的であるが、この脱硝設備に起因した問題があった。脱硝の方法は、無触媒脱硝法と触媒脱硝法とに大きく分けられるが、いずれも、アンモニア水又は尿素を焼却炉や反応塔に吹き込んでNOx(窒素酸化物)を窒素に還元する。しかしながら、焼却飛灰中に残留するアンモニア又はアンモニア性窒素化合物が、混練や成形工程で高温の処理焼却飛灰から大気中に揮発・拡散し、これが大きな問題となっていた。
【0005】
この対策として、例えばアンモニアなどの塩基性化合物に対しては、混練・成形工程で酸を添加して、塩基性化合物の拡散を防ぐ方法などが考えられているが、酸の添加のために固定化した重金属が溶出するなどの問題があり、実用的ではなかった。
【0006】
また、微粒子である焼却飛灰は、成形してもその一部が崩壊し、成形工程、埋め立て地までの輸送工程及び埋め立て工程において、飛散するという問題があった。更に、焼却飛灰は吸湿性があり、水分を吸収すると未固定の重金属類が溶出し易くなるなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭57−55473号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を考慮して、焼却飛灰の混練・成形工程で発生するアンモニアなどの揮発性の化合物の大気中への拡散を抑制し、成形工程、埋め立て地までの輸送工程及び埋め立て工程における焼却飛灰の飛散を抑制し、更に、処理焼却飛灰が含水した際に未固定の重金属類が溶出するのを抑制することのできる、新規な焼却飛灰の処理剤及びそれを用いた焼却飛灰の処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各種実施形態を説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0011】
樹脂酸とは、天然樹脂中に含まれる有機物の総称で、樹脂によって種類が異なるが、工業的には、ロジン(松ヤニ)やトール油中のジテルペン酸、即ち二重結合2個とアルキル化ヒドロフェナントレン核を持ったモノカルボン酸であるアビエチン酸系とピマル酸系のものが広く用いられている。本発明においては、任意の樹脂酸を用いることができるが、特にアビエチン酸、ピマル酸などを好適に用いることができる。また、樹脂酸の変性物としては、樹脂酸のエステル、アルカリ金属塩、α,β−不飽和多塩基酸付加物又はそのアルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、上記樹脂酸の、グリセリンエステル、n−ブチルアルコールエステル、カリウム塩、ナトリウム塩、マレイン酸付加物、フマル酸付加物或いはこれら付加物のカリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。これら樹脂酸又はその変性物は、溶液、乳化液或いは分散液の形態で用いることもできる。また、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物あるいはその溶液、乳化液若しくは分散液として、市販のロジンサイズ剤を本発明に係る焼却飛灰処理剤として用いることもできる。
【0012】
なお、乳化液としては、アクリル系高分子ポリマーを乳化剤として用いて、アビエチン酸を水溶媒に分散させたものなどが挙げられる。また、分散液としては、デンプンを分散剤として用いて、アビエチン酸を水溶媒に分散させたものなどが挙げられる。
【0013】
アビエチン酸、ピマル酸などの樹脂酸及びその変性物は、製紙用ロジンサイズ剤或いは防水ペイントなどのように耐水性を付与する目的で広く使用されている。これらの物質は、ロジン(松ヤニ)から生成されることからも明らかなように、皮膜形成特性を持つ天然物質であり、また消臭作用を持つことも知られている。本発明者らは、この樹脂酸を焼却飛灰の処理剤として応用することができないかどうかについて鋭意研究した結果、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、或いはこれらの溶液、乳化液若しくは分散液を、焼却飛灰と混練するか或いは焼却飛灰の成形物に塗布することによって、焼却飛灰からの重金属類やアンモニアなどの有害物質の漏洩を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明によれば、例えば、処理飛灰からアンモニアなどの揮発性の物質が大気中に拡散することを抑制することができ、また有害物質を含有する焼却飛灰が飛散するのを抑制することができ、更に処理焼却飛灰が含水した場合に重金属類などの有害物質が溶出することを抑制することができる。
【0015】
本発明における上記の効果発現のメカニズムについては明らかではないが、次のように推測することができる。揮発性物質の大気中への拡散の抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の包接効果と皮膜形成による被覆効果との相乗作用によるものと考えられる。対象となる揮発性物質がアンモニアなどのように塩基性の場合には、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物のカルボキシル基との反応も拡散抑制効果に寄与すると考えられる。また、焼却飛灰の飛散抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が皮膜形成することによる被覆効果と、耐水効果によるものと考えられる。更に、処理焼却飛灰が含水した場合の重金属類などの有害物質の溶出の抑制は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が皮膜形成することによる被覆効果と、耐水効果によるものと考えられる。
【0016】
本発明に係る焼却飛灰の処理剤を焼却飛灰と接触させることによって、上記の所期の効果を達成することができる。即ち、本発明の他の態様は、上記に説明した本発明に係る焼却飛灰の処理剤を、焼却飛灰と接触させることを特徴とする焼却飛灰の処理方法を提供する。
【0017】
なお、本発明において、処理剤を焼却飛灰と接触させる態様としては、処理剤を焼却飛灰に加えて混練する方法や、或いは焼却飛灰を混練後成形した成形体に処理剤を塗布する方法などを採用することができる。
【0018】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰と混練する場合には、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物をそのまま用いてもよいし、或いはその溶液、乳化液若しくは分散液の形態で用いることもできる。
【0019】
また、本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、焼却飛灰に水及び必要に応じて本発明に係る焼却飛灰処理剤を添加して混練した成形物に対して、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液の形態の本発明に係る焼却飛灰処理剤を塗布することができる。塗布の方法としては、焼却飛灰の成形物に樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液をスプレーする方法、焼却飛灰の成形物に樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を含浸させる方法などを採用することができる。なお、本発明においては、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を焼却飛灰成形物に塗布した後に乾燥させることが必要であるが、これは焼却飛灰自体が持つ熱による自然乾燥であってもよいし、或いはドライヤーなどを用いて乾燥させてもよい。乾燥温度を60℃以上、好ましくは100℃以上とすることにより、より強固な皮膜が形成され、アンモニアなどの揮発性物質の大気中への拡散の抑制や、処理焼却飛灰の飛散抑制、重金属類などの有害物質の溶出抑制の効果がより大きくなる。
【0020】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰と混練する場合、焼却飛灰に対する処理剤の添加割合は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、焼却飛灰に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。添加割合が0.01重量%未満では十分な効果が得られず、また10重量%以上では、混練物の粘着性が大きくなりすぎて、混練装置に付着するなどの問題が発生するため実用的でない。また、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液を焼却飛灰と混練する場合には、溶液、乳化液若しくは分散液中の樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の濃度は、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。また、混練の際には、処理する焼却飛灰の重量に対して5〜50重量%の水を加えて混練を行うことが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰成形物に塗布する場合には、塗布に用いる樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、乳化液若しくは分散液中の樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の濃度は、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。濃度が0.01重量%未満では十分な効果が得られず、50重量%以上では、塗布液の粘度が高くなりすぎて、焼却飛灰処理剤を均一に塗布することが難しくなるので実用的でない。なお、塗布の場合には、焼却飛灰に対する処理剤の塗布量は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、0.01〜2重量%が好ましい。樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液を焼却飛灰に塗布する場合には、溶媒としては水及び/又は有機溶媒を使用することができる。特にアルコール類などの有機溶媒を用いると、塗布後の乾燥性が向上するので好ましい。
【0022】
また、本発明に係る樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を含む焼却飛灰処理剤を、焼却飛灰と混練して焼却飛灰成形物を形成し、更にこの成形物に本発明に係る焼却飛灰処理剤を塗布する場合には、本発明に係る焼却飛灰処理剤の使用量は、焼却飛灰処理剤の必須成分である樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の重量として、焼却飛灰に対して、合計で0.01〜12重量%となるように用いることが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。
【0023】
本発明に係る焼却飛灰処理剤を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、塗布液にデンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、SBRエマルジョン等のゴム乳液などを混合して、皮膜特性を調整することができる。
【0024】
更に、本発明においては、上記に説明した(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を、更に(イ)無機凝集剤と組み合わせて用いることにより、焼却飛灰からの有害物質の漏洩をより一層効果的に行うことが可能である。即ち、本発明の他の態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物に加えて、更に(イ)無機凝集剤を含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。
【0025】
本発明のかかる態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物と組み合わせて用いることのできる(イ)無機凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸アルミニウム(PAS)などのアルミニウム系凝集剤、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄などを挙げることができる。かかる態様において、無機凝集剤は、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の焼却飛灰への定着を促進することによって、揮発性物質の大気中への拡散、重金属の溶出、処理飛灰の飛散などを抑制する効果を高めるものと考えられる。
【0026】
また、本発明においては、上記(ア)成分及び(イ)成分に加えて、更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を組み合わせて用いることにより、より一層の有害物質漏洩抑制効果を奏することができる。即ち、本発明の更に他の態様は、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び(イ)無機凝集剤に加えて、更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤に関する。
【0027】
なお、本発明については、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び、(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸、ケイ酸塩、炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含む処理剤にも適用されうることは勿論である。
【0028】
本発明のかかる態様において用いることのできることのできる重金属固定化剤としては、重金属と複塩を形成して水に不溶性の安定した固定化物を得ることのできるリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩などの無機系重金属固定化剤、重金属と硫化物を形成して水に不溶性の安定した固定化物を得ることのできる硫黄系重金属固定化剤、重金属類とキレート化合物を形成して水に不溶性の安定な固定化物を形成する有機液体キレート系重金属固定化剤などが挙げられる。リン酸塩としては、正リン酸、次亜リン酸、メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸、正亜リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、縮合リン酸などの塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩などを挙げることができ、ケイ酸塩としては、オルトケイ酸、二ケイ酸、四ケイ酸、メタケイ酸などの塩を挙げることができる。なお、ここで「塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。有機液体キレート系重金属固定化剤としては、ジアルキルジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸基を分子内に2個以上有する化合物のアルカリ金属塩、具体的には、ジエチルジチオカルバミン酸のカリウム塩及び/又はN1,N2,N3,N5−テトラ(ジチオカルボキシ)テトラエチレンペンタミンのナトリウム塩及び/又はピペラジンビスジチオカルバミン酸のカリウム塩などを挙げることができる、硫黄系重金属固定化剤としては、硫化ソーダ、水硫化ソーダ、チオール系化合物などを挙げることができる。
【0029】
本発明のこれらの態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては(ウ)重金属固定化剤を焼却飛灰と接触させる方法としては、上記の各成分を焼却飛灰と混練する方法と、少なくとも成分(ア)の少なくとも一部を焼却飛灰の成形物に塗布し、残りの成分は成形前の焼却飛灰と混練する方法のいずれかを採用することができる。
【0030】
上記各成分を焼却飛灰と混練する場合には、上記各成分を混合して焼却飛灰に添加してもよく、或いはこれらを別々に焼却飛灰に添加してもよい。この場合、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物は、そのまま用いても、或いは、溶液、乳化液若しくは分散液の形態で用いてもよい。
【0031】
また、本発明のかかる態様において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を焼却飛灰の成形物に塗布する場合には、焼却飛灰に、水及び使用する場合には(ウ)重金属固定化剤と、更に場合により、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の残余量及び(イ)無機凝集剤を添加して混練した成形物に対して、溶液、乳化液若しくは分散液の形態の(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を塗布することができる。なお、この方法においては、(イ)無機凝集剤は、焼却飛灰に混練しても、塗布してもよい。塗布の方法としては、焼却飛灰の成形物に、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合によっては(イ)無機凝集剤を、溶液、乳化液若しくは分散液の形態でスプレーする方法、焼却飛灰の成形物に(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合によっては(イ)無機凝集剤の溶液、乳化液若しくは分散液を含浸させる方法などを採用することができる。
【0032】
以上の説明から当業者が容易に理解できるように、本発明において、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては(ウ)重金属固定化剤を含む処理剤とは、これらの(ア)成分、(イ)成分、及び場合によっては(ウ)成分が混合された形態のものに加えて、これらの各成分が別々に包装されている所謂パッケージ薬剤の形態で、各成分をそれぞれ別々に焼却飛灰に接触させることのできる形態のものも含まれる。
【0033】
なお、本発明において、成分(イ)無機凝集剤を用いる場合、その焼却飛灰に対する好ましい添加量は、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01重量%未満では、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の定着効果が不十分であり、20重量%以上では定着効果が頭打ちになり、経済的に好ましくない。
【0034】
更に、本発明において、成分(ウ)重金属固定化剤を用いる場合、その焼却飛灰に対する好ましい添加量は、焼却飛灰の重金属含有量によって変動するが、20重量%未満が一般的である。
【0035】
次に、本発明に係る焼却飛灰の処理方法を図を参照しながら説明する。図1は、本発明において、成分(ア)、及び場合によっては更に成分(イ)、及び場合によっては更に成分(ウ)を焼却飛灰と混練することによって、焼却飛灰の処理を行う方法を説明するフロー図である。本発明によって処理すべき焼却飛灰は、飛灰貯留槽1から混練機2に送られる。混練機2では、水槽6から水が供給され、薬剤槽7からは、上記の成分(ア)、及び場合によっては更に成分(イ)、及び場合によっては更に成分(ウ)が、化合物自体として、若しくは所望により溶液、乳化液若しくは分散液の形態で供給され、処理飛灰と混練される。混練によって形成される混練成形物は、固形物貯留槽4を経て、埋立地5に運ばれて埋立て処理される。本発明において用いることのできる混練機としては、当該技術において周知の混練機、例えば、押出造粒機、転動造粒機などを用いることができる。
【0036】
次に、図2は、成分(ア)及び場合によっては成分(イ)を焼却飛灰の成形物に塗布する態様を説明するフロー図である。本発明によって処理すべき焼却飛灰は、飛灰貯留槽1から混練機2に送られる。混練機2では、水槽6から水が供給され、薬剤槽7からは、必要に応じて(イ)無機凝集剤、(ウ)重金属固定化剤などの薬剤や、更に場合により(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物が供給され、処理飛灰と混練される。混練によって形成される混練成形物は、次に塗布装置3に送られ、ここで、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び場合により(イ)無機凝集剤が、混練成形物に塗布される。混練成形物は、次に固形物貯留槽4を経て、埋立地5に運ばれて埋立て処理される。
【0037】
本発明において用いることのできる塗布装置3の具体的構成の例を図3及び4に示す。図3は、成分(ア)及び場合により成分(イ)の溶液に、焼却飛灰成形物を浸漬することによって、これらの成分を成形物へ塗布するための装置の一具体例を示す概念図である。図2の混練機2から送られてくる焼却飛灰成形物(混練成形物)13は、ベルトコンベア11に載置され、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物及び場合により(イ)無機凝集剤を含む溶液(塗布液)12が満たされた容器内に搬送され、溶液中に浸漬される。溶液を含浸させた混練成形物13は、次に第2のベルトコンベア15に載置され、乾燥装置14によって乾燥した後、図2の固形物貯留槽4へ送られる。この形態の装置においては、塗布液の塗布量は、塗布液12中の混練成形物3の滞留時間を変えることにより調整することができる。
【0038】
図4は、成分(ア)及び場合により成分(イ)の溶液を焼却飛灰成形物にスプレー噴霧することによって成形物への塗布を行うための装置の一具体例を示す概念図である。図2の混練機2から送られてくる焼却飛灰成形物(混練成形物)23は、ベルトコンベア21に載置され、スプレー24から、成分(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物、及び場合により成分(イ)無機凝集剤の溶液(塗布液)がスプレー噴霧される。余剰の塗布液22は容器に収容され、塗布液循環ライン25によって再びスプレー24に送られる。塗布液がスプレーによって塗布された混練成形物23は、次に第2のベルトコンベア27に載置され、乾燥装置26によって乾燥した後、図2の固形物貯留槽4へ送られる。この形態の装置においては、塗布液の塗布量は、スプレー24の噴霧量及びベルトコンベア21の搬送速度を変えることにより調整することができる。なお、本装置においては、ベルトコンベア21を振動させるなどして、混練成形物23がベルトコンベア21上で転がるようにすることにより、塗布液が混練成形物23の表面上に均一に塗布されるようにすることが好ましい。
【0039】
本発明においては、成分(ア)を焼却飛灰と混練する場合の方が、成分(ア)を焼却飛灰成形物に塗布する場合よりも、焼却飛灰成形物の強度が高くなり、成形物の崩壊や焼却飛灰の飛散を抑制することができるが、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の使用量が多くなり易い。また、揮発性化合物の拡散抑制、耐水性付与という観点からは、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を焼却飛灰成形物に塗布する場合には、成形物の表面層を被覆すればよく、焼却飛灰と樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物とを混練して処理する場合と比較して使用量を減じることができるので、効率的、経済的である。
【0040】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
試験方法
各実施例で用いた試験法は以下の通りである。
【0042】
(1) 重金属溶出試験
環境庁告示第13号試験法に基づいて重金属の溶出試験を行った。
【0043】
(2) アンモニア揮発試験
1リットルの三角フラスコに焼却飛灰成形物(混練物)の試料20gを入れ、直ちに密栓し、10分間室温で放置した後、検知管によってフラスコ内部の気体中のアンモニア濃度を測定した。
【0044】
(3) 崩壊試験
焼却飛灰成形物の試料を室温条件下で一昼夜乾燥させた後、高さ30cmの高さから試験台上に3回落下させ、崩壊状態を観察した。
【0045】
(4) 耐水性試験
焼却飛灰成形物の試料を室温条件下で一昼夜乾燥させたものを、純水に3時間浸漬させた後、室温で1時間乾燥して重量を測定した。浸漬前後の重量差から下式によって含水率を求めた。含水率が低いほど、耐水性が高いと判断できる。
含水率(%)=浸漬前後の重量差(g)/浸漬前の重量(g)×100
【0046】
実施例1
BF灰(Ca=13%,Pb=16,000ppm,Zn=62,000ppm、Cu=940ppm、アンモニア性窒素=82.4ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を3重量部、樹脂酸としてアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。得られた成形試料に対して、上記の重金属溶出試験、アンモニア揮発試験、崩壊試験、耐水性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0047】
実施例2〜5
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部(実施例2〜4)又は1重量部(実施例5)添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を濃度1重量%(実施例2)又は3重量%(実施例3,5)又は5重量%(実施例4)のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例6〜7
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を、濃度6重量%の市販のサイズ剤A(主成分:強化ロジンのカリウム塩、星光化学製コロパールS−50X、成分濃度50重量%)又は市販サイズ剤B(主成分:強化ロジンとロジンエステル混合物の水性エマルジョン、星光化学製コロパールEV−30C、成分濃度50重量%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0049】
実施例8
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%、カルボキシメチルセルロース0.1重量%の溶液を、成形物に霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。スプレー溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0050】
実施例9
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%の溶液を、成形物に霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して9重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。この成形試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0052】
比較例2〜4
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1〜3重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬して塗布した後、10分間室温で乾燥した。水の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0053】
比較例5
実施例1で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を2重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物に純水を霧吹き器でスプレー塗布した後、10分間室温で乾燥した。水の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して9重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より明らかなように、本発明に係る樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を含む焼却飛灰の処理剤を用いて焼却飛灰を処理した場合(実施例1〜9)は、本発明の処理剤を用いないで処理した場合(比較例1〜5)と比べて、アンモニア濃度が大幅に低減し、成形物が崩壊し難く、更に含水し難い(耐水性が高い)という結果が得られた。
【0056】
焼却飛灰に重金属固定化剤2重量%を添加して混練処理した実施例2〜4と比較例3とを比較すると、混練成形物に本発明の処理剤を浸漬塗布せずに処理した比較例3と比較して、混練成形物にアビエチン酸ナトリウム溶液を浸漬塗布した実施例2〜4では、鉛の溶出濃度が低くなった。その傾向は、用いたアビエチン酸ナトリウム溶液の濃度が高くなるほど顕著となり、濃度5重量%(実施例4)では、鉛の溶出濃度は0.05mg/L未満となった(重金属固定化剤添加量2重量%)。これは、焼却飛灰に重金属固定化剤を3重量%添加して混練処理した比較例4とほぼ同等の重金属溶出抑制効果を示したことになり、塗布法を採用することにより重金属固定化剤の使用量を減じることができたことが分かる。また、実施例8と実施例9とを比較すると、塗布液にカルボキシメチルセルロースを併用することによって、混練成形物の強度及び耐水性が向上することが分かる。
【0057】
実施例10
BF灰(Pb=3,200ppm、アンモニア性窒素41.2ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加えて混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を濃度3重量%のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0058】
実施例11,12
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、実施例6〜7で用いたものと同じ市販サイズ剤A又は市販サイズ剤Bの濃度6重量%の溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0059】
比較例6
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を3重量部添加して混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。塗布液の着液量は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0060】
比較例7
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、濃度6重量%のジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0061】
比較例8
実施例10で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加えて混練した。混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を純水に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。塗布液(水)の着液量は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例1と同様の試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2より明らかなように、本発明に従って樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を単独で用いて焼却飛灰を処理しても、鉛含有量が本来少ない灰の処理には十分に適用できることが分かった。上記の実施例10〜12では、Pb=3,200ppm、アンモニア性窒素41.2ppmを含む灰を処理したところ、鉛溶出濃度は埋立て基準値である0.3mg/Lを十分に満足していた。また、従来の重金属固定化剤を用いた比較例6〜7と比べて、アンモニア濃度が極めて低く、更に、形成された成形物は極めて崩壊し難く、更に含水し難い(耐水性が高い)ものであった。
【0064】
実施例13〜14
BF灰(Ca=13%,Pb=16,000ppm,Zn=62,000ppm、Cu=940ppm、アンモニア性窒素=82.4ppmを含む)100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1重量部、硫酸バンドを0.1重量部(実施例13)又は0.5重量部(実施例14)添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に成形物を3重量%のアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)溶液に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた成形試料に対して、上記の重金属溶出試験、アンモニア揮発試験、崩壊試験、耐水性試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0065】
実施例15
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にアビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。得られた成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0066】
実施例16
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にリン酸カルシウム6重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)3重量%の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0067】
実施例17
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウム塩を主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)1重量部、硫酸バンド0.5重量部を添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物を、市販サイズ剤(主成分:強化ロジンとロジンエステル混合物の水性エマルジョン、星光化学製コロパールEV−30C、成分濃度50重量%)の濃度6重量部の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。サイズ剤溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0068】
比較例9
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にジエチルジチオカルバミン酸カリウムを主成分とする重金属固定化剤(成分濃度57重量%)を1重量部、硫酸バンドを0.1重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。この成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0069】
比較例10
実施例13で用いたものと同じBF灰100重量部に対して、水30重量部を加え、更にリン酸カルシウムを6重量部添加して混練し、混練物を成形機で直径1cm、長さ2cmの円柱状に成形した。成形直後に、成形物に、アビエチン酸ナトリウム(中和率65%)の濃度3重量%の溶液中に浸漬した後、10分間室温で乾燥した。アビエチン酸ナトリウム溶液の塗布量(着液量)は、混練成形物に対して10重量%であった。得られた成形試料に対して実施例13と同様の試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表3より、無機凝集剤である硫酸バンドを使用することにより(実施例13、14)、アンモニア濃度が低減し、含水し難く、鉛の溶出が抑制されることが分かる。また、実施例13,14(樹脂酸+無機凝集剤+重金属固定化剤を使用)と比較例9(無機凝集剤+重金属固定化剤を使用)とを比較すると、無機凝集剤と重金属固定化剤とに加えて、樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を使用することにより、アンモニア濃度が低減し、含水し難く、鉛の溶出が抑制され、成形物が崩壊し難いという結果が得られたことが分かる。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように、(ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含む本発明の一態様に係る焼却飛灰の処理剤及び処理方法によれば、焼却飛灰の混練、成形工程で発生するアンモニアなどの揮発性化合物の大気中への拡散を抑制し、処理飛灰からの重金属などの有害物質の溶出を抑制することができる。更に、上記成分(ア)に加えて、(イ)無機凝集剤、及び場合によっては更に(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を併用して焼却飛灰を処理すると、処理飛灰からの重金属などの有害物質の溶出を更に飛躍的に抑制することができる。また、本発明によれば、焼却飛灰の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一態様に係る焼却飛灰の処理方法の概要を示すフロー図である。
【図2】本発明の他の態様に係る焼却飛灰の処理方法の概要を示すフロー図である。
【図3】本発明の一態様に係る焼却飛灰成形物に対する処理剤塗布装置の一具体例を示す概念図である。
【図4】本発明の他の態様に係る焼却飛灰成形物に対する処理剤塗布装置の他の具体例を示す概念図である。
Claims (7)
- (ア)樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物を必須成分として含むことを特徴とする焼却飛灰の処理剤。
- 樹脂酸が、アビエチン酸又はピマル酸であり、樹脂酸変性物が、樹脂酸のエステル、アルカリ金属塩、α,β−不飽和多塩基酸付加物又はそのアルカリ金属塩である請求項1に記載の焼却飛灰の処理剤。
- 樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物の溶液、分散液、乳化液の形態である請求項1又は2に記載の焼却飛灰の処理剤。
- 樹脂酸及び/又は樹脂酸変性物或いはその溶液、分散液若しくは乳化液として市販のロジンサイズ剤を含む請求項3に記載の焼却飛灰の処理剤。
- 更に、(イ)無機凝集剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の焼却飛灰の処理剤。
- 更に、(ウ)有機系液体キレート剤、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選ばれる1種以上の重金属固定化剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の焼却飛灰の処理剤。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の焼却飛灰の処理剤を、焼却飛灰と接触させることを特徴とする焼却飛灰の処理方法。
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JP2014136172A (ja) * | 2013-01-15 | 2014-07-28 | Gifu City | 最終処分場におけるカルシウムの溶出防止方法 |
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2002
- 2002-09-20 JP JP2002274589A patent/JP2004105900A/ja active Pending
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