JP2004105265A - 脱臭体 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の吸着脱臭体である活性炭やゼオライト、シリカゲルでは硫化水素を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。また金属酸化物繊維で作ったハニカム体に担持させた脱臭体は、大型サイズを作製することが難しく大型施設で用いることが極めて困難であった。またハニカム体は非常に脆く、外力により簡単に壊れてしまうため、取り扱いにくいという課題もあった。
【解決手段】硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有するマンガン、銅、コバルトの複合酸化物をバインダで結着させ固形化することで、脱臭能力が極めて高く、取り扱いやすい脱臭体1を実現でき、大型施設に対応することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有するマンガン、銅、コバルトの複合酸化物をバインダで結着させ固形化することで、脱臭能力が極めて高く、取り扱いやすい脱臭体1を実現でき、大型施設に対応することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ臭などの複合臭気や、下水処理場などで発生する硫化水素等の硫黄系臭気を除去する脱臭体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、活性炭やゼオライトやシリカゲル等を粒状で充填層に充填させ、臭気を脱臭する脱臭体としたものや、硫黄系の臭気を化学吸着する吸着剤を粉末状で作製し、シリカ等の金属酸化物繊維で作ったハニカム体に担持させ脱臭体とするものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、活性炭やゼオライト、シリカゲルでは、トイレ臭などの複合臭気、特に硫黄系の臭気を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。
【0004】
また、硫黄系の臭気を化学吸着する吸着剤をシリカ等の金属酸化物繊維で作ったハニカム体に担持させた脱臭体は、大型サイズを作製することが難しいため、下水処理場など大型施設で用いることが極めて困難であった。またハニカム体は非常に脆く、外力により簡単に壊れてしまうため、取り扱いにくいという課題もあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するものであり、化学吸着作用を有する吸着剤とバインダとを備え、前記バインダにより前記化学吸着作用を有する吸着剤を結着し固形化した脱臭体としたもので、硫黄系の臭気、特に硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有する吸着剤を用い、固形化することで脱臭体を容易に扱うことができるようになり、また大型施設に対応することが容易となる。
【0006】
また、多孔質構造を持たせて固形化することで、単位体積あたりの表面積を大きくすることができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の表面積を有する脱臭体とすることができる。したがって、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤とバインダとを備え、前記バインダにより前記化学吸着作用を有する吸着剤を結着し固形化した脱臭体としたもので、トイレ臭中に含まれる硫化水素や下水処理場で発生する硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。さらに、小さな外力で破壊されることがないので、非常に取扱い性がよい。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1記載の脱臭体としたもので、これらは硫化水素を主に硫酸化物として化学吸着し脱臭するものだが、特にマンガン、コバルト、銅、亜鉛の酸化物や複合酸化物などは、硫酸化物を作りやすく、硫化水素を除去する能力が非常に高い。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1記載の脱臭体としたもので、ゼオライトやセピオライト、シリカ、アルミナ等の物理吸着作用を有する吸着剤を加えることで、トイレ臭のアンモニアや二硫化ジメチルに対する脱臭作用を高めることができる。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、バインダが無機物である請求項1記載の脱臭体としたもので、コロイダルシリカや水ガラス等の無機のバインダを用いることにより、同じ無機物である化学吸着作用を有する吸着剤や物理吸着作用を有する吸着剤を結着しやすく、また物理吸着作用を有する吸着剤に物理吸着した物質を熱をかけて脱着させるときに、200℃以上の高温まで上げることができ脱着を容易にし、再び物理吸着作用を有する脱臭体として用いることができる。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、バインダが無機物である請求項1記載の脱臭体としたもので、単位体積あたりの表面積を大きくすることができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の表面積を有する脱臭体とすることができる。したがって、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保できる。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とスペーサーとをバインダで結着した後に、スペーサーを除去手段で取り除くことにより多孔質構造を付与した請求項5記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、スペーサーが有機物で、かつ除去手段が燃焼である請求項6記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、スペーサーがバインダである請求項6もしくは7記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とを結着する結着力が高まるため、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とを結着する加工工程が容易になる。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、スペーサーが発泡効果を有する物質である請求項6〜8いずれか1項記載の脱臭体としたもので、発泡効果により緻密な多孔質構造を付与することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0016】
また、請求項10記載の発明は、バインダが水に不溶で、かつスペーサーが水溶性で、かつ除去手段が水への溶解である請求項6記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図である。図1(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は固形化した脱臭体1の一部分を拡大した模式図である。固形化した脱臭体1は、化学吸着を有する吸着剤2(以下、本実施例では化学吸着剤という)がバインダ3により結着し、構成されているものである。本実施例では、化学吸着剤2にマンガン、銅、コバルトの複合酸化物(以下、本実施例では複合酸化物Aという)を用い、バインダ3にコロイダルシリカを用いた。なお、本実施例ではマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いたが、これに限定するものではなく、マンガン、銅、亜鉛、コバルトのいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物あるいはその混合物とすることにより、同様に硫化水素に対する強力な化学吸着作用を有する脱臭体とすることができる。
【0019】
本実施例で用いた複合酸化物Aは、特に硫化水素の除去に優れ、硫化水素を最終的に硫酸塩の形で化学吸着するものである。また、同じ硫黄系臭気であるメチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用も有する。複合酸化物Aは0.1〜1μm程度の大きさであり、固形化した脱臭体1は直径5mm、高さ5mm程度の円柱状であったが、これらの大きさに拘るものではない。固形化した脱臭体1は極力小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、化学吸着剤2とバインダ3の形は球状に限定されるものでなく、また固形化した脱臭体1の形は円柱に限定されるものではない。固形化した脱臭体の表面に凹凸を設けたり、多孔質構造を付与したりすることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0020】
本実施例で用いたコロイダルシリカは、シリカ粒径がナノオーダーの無機系接着剤であり、本実施例で用いた無機物である複合酸化物A同士の接着に非常に優れる。また、有機の接着剤のように、膜状になり複合酸化物Aの表面を覆ってしまうことがほとんど無いので、複合酸化物Aの吸着性能を低下させることがない。複合酸化物Aとバインダとの混合比は特に限定するものではないが、バインダが多くなると、複合酸化物Aの化学吸着作用が低下し、極端にバインダが少ないと、固形化した複合酸化物Aの強度が小さいものとなる。望ましくは、複合酸化物とバインダが重量比で10:1程度である。
【0021】
複合酸化物Aを固形化した脱臭体は押し出し成形などで簡単に作製することができるため大量に生産でき、大きな施設にも簡単に適用することができる。また、固形化した脱臭体の強度は高く、運搬性、取扱性ともに非常によい。
【0022】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0023】
<実験例1>
複合酸化物A100gに、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラムという)。また、同条件で直径1mmの固形化した脱臭体も作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラムという)。さらに、1平方インチあたりのセル数が205のセラミックス繊維を原料とした50ccのハニカム体に、複合酸化物Aをシリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)をバインダとして、ハニカム体1ccあたり0.10gの重量で担持したものを作製した(以下、本実施例ではハニカムカラムという)。また、対照として、50ccの容器に活性炭を約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では活性炭カラムという)。
【0024】
これら4種類のカラムを用いて硫化水素の通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに濃度が50ppmの硫化水素を流通させ、このときのカラム出口での硫化水素濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間(以下、本実施例では寿命という)とした。その結果を(表1)に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(表1)より、複合酸化物Aは活性炭と比較して初期性能、寿命ともに非常に高い。特に、同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。またこれにより、成形困難な大型のハニカム体を作製することなく、高性能な脱臭体を大きな施設に応用することができる。
【0027】
(実施例2)
図2は本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図である。図2(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は固形化した脱臭体4の一部分を拡大した模式図である。固形化した脱臭体4は、化学吸着剤2と物理吸着作用を有する吸着剤5とがバインダ3により結着し、構成されているものである。このような構成をとることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素は化学吸着作用により除去でき、さらにアンモニアや二硫化ジメチルを物理吸着作用により除去できるため、トイレ臭が全般的に除去することが可能となる。また、メチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用をも有する化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれるメチルメルカプタンは二硫化ジメチルとなり、物理吸着作用を有する吸着剤に吸着されることで、さらにトイレ臭が全般的に除去することが可能となる。
【0028】
本実施例では、物理吸着作用を有する吸着剤5として、疎水性ゼオライトを用いたが、親水性のゼオライト、セピオライト、シリカ、アルミナ等を用いても同様な効果が得られる。なお、化学吸着作用を有する吸着剤として複合酸化物Aを、バインダとしてコロイダルシリカを用いた。
【0029】
化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤との比率は、臭気の成分により変えることができる。すなわち、硫化水素が多い場合は化学吸着作用を有する吸着剤を多くし、アンモニアや二硫化ジメチルが多い場合、物理吸着作用を有する吸着剤を多くすると臭気全般を効率よく脱臭することができる。通常のトイレ臭の場合は、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤は重量比で1:1程度が望ましい。また、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤との混合物とバインダとの比は特に限定するものではないが、重量比で10:1程度が望ましい。
【0030】
なお、アンモニア等のガスを吸着し吸着作用を喪失した物理吸着作用を有する吸着剤に、臭気を含まない空気を流通させることにより、吸着したガスを放出させ、吸着作用を復活させることができる。また、温度を上げることによっても、吸着作用を喪失した物理吸着作用を有する吸着剤の吸着作用を復活させることができる。このとき、バインダに無機系のバインダを用いているとより高温まで上げることができ、効率よく吸着ガスを放出させることができる。
【0031】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0032】
<実験例2>
複合酸化物A50gと疎水性ゼオライト50gの混合物に、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラム2という)。また、同条件で直径1mmの固形化した脱臭体も作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラム2という)。さらに、1平方インチあたりのセル数が205のセラミックス繊維を原料とした50ccのハニカム体に、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを重量比1:1で混合したものを、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)をバインダとして、ハニカム体1ccあたり0.10gの重量で担持したものを作製した(以下、本実施例ではハニカムカラム2という)。また、対照として、50ccの容器に活性炭を約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では活性炭カラムという)。
【0033】
これら4種類のカラムを用いて硫化水素、アンモニア、二硫化ジメチル、メチルメルカプタンの通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに50ppmの各種ガスを流通させ、このときのカラム出口での各種ガス濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間(以下、本実施例では寿命という)とした。その結果を(表2)に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(表2)より、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを固形した脱臭体は、各種ガスについて活性炭と比較して初期性能、寿命ともに非常に高い。特に、同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。
【0036】
(実施例3)
図3は本発明の第三の実施例における脱臭体の模式図である。図3(a)は、スペーサーを添加し固形化した脱臭体の一部分を拡大した模式図であり、(b)は除去手段によりスペーサーを除去した固形化した脱臭体の一部分を拡大した模式図である。化学吸着剤2と物理吸着作用を有する吸着剤5とスペーサー6とをバインダ3により結着し固形化した後に、スペーサー6を除去することにより、除去されたスペーサー6の部分が空間となり、多孔質構造をとるものである。このような多孔質構造をとることにより、単位体積あたりの表面積が増加し、脱臭性能が向上する。
【0037】
孔の大きさ、形について特に限定するものではないが、孔のサイズがナノオーダーの大きさの場合、臭気分子が孔に入りにくいため、あまり効果がなく、また孔のサイズが固形化した脱臭体の大きさに非常に近い場合、単位体積あたりの面積があまり増加せず、その効果は小さい。また、孔は独立孔より連続孔の方が脱臭効率は高くなる。
【0038】
スペーサーの形状、物性は特に限定するものではないが、スペーサーに樹脂粉末等の有機物を用いると、燃焼により除去することができるので、非常に簡単に多孔質構造を付与することができる。また、スペーサーにポリビニルアルコール(以下、本実施例ではPVAという)やメチルセルロースなどの有機物のバインダを選択することにより、スペーサー5を除去した後、化学吸着作用を有する吸着剤2や物理吸着作用を有する吸着剤4が表面に表れやすく、脱臭性能を向上させることができる。また、PVAやメチルセルロースと水を添加することにより、粘性を上げることができるので、固形化しやすいというメリットもある。 さらに、スペーサー5として、熱により分解反応を起こしガスを発生させる発泡剤を用いると、少量のスペーサーで多くの空間を確保したり、緻密な孔を作ることができる。
【0039】
バインダに低融点ガラスのような水に溶けないバインダを選定し、スペーサーにPVAやメチルセルロース等の水溶性の物質を選ぶことで、固形化した脱臭体を水に浸漬させることでスペーサーを除去することができ、多孔質構造を付与することができる。
【0040】
以下、実験例を示す。
【0041】
<実験例3>
複合酸化物A100gと、スペーサーとしてメチルセルロース100gに、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。その後、固形化した脱臭体を400℃で12時間保持し、スペーサーであるメチルセルロースを除去し、多孔質構造を有する固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラム3という)。また、同条件で直径1mmの多孔質構造を有する固形化した脱臭体を作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラム3という)。さらに、<実験例1>で用いたハニカムカラムを作製した。
【0042】
これら3種類のカラムを用いて硫化水素の通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに濃度が50ppmの硫化水素を流通させ、このときのカラム出口での硫化水素濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間とした。その結果を(表3)に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(表3)より、多孔質構造を付与して同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等もしくはそれ以上の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。またこれにより、成形困難な大型のハニカム体を作製することなく、高性能な脱臭体を大きな施設に応用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、特に硫化水素について極めて高い除去能力を有する固形化した脱臭体を実現することができ、その固形化した脱臭体は、取扱い性、量産性、輸送性の良さから下水処理施設のような硫化水素が発生する大型施設に簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図2】(a)本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図3】(a)本発明の第三の実施例における脱臭体の一部分を拡大した模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【符号の説明】
1 固形化した脱臭体
2 化学吸着作用を有する吸着剤
3 バインダ
4 固形化した脱臭体
5 物理吸着作用を有する吸着剤
6 スペーサー
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ臭などの複合臭気や、下水処理場などで発生する硫化水素等の硫黄系臭気を除去する脱臭体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、活性炭やゼオライトやシリカゲル等を粒状で充填層に充填させ、臭気を脱臭する脱臭体としたものや、硫黄系の臭気を化学吸着する吸着剤を粉末状で作製し、シリカ等の金属酸化物繊維で作ったハニカム体に担持させ脱臭体とするものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、活性炭やゼオライト、シリカゲルでは、トイレ臭などの複合臭気、特に硫黄系の臭気を脱臭する能力が極めて低いという課題があった。
【0004】
また、硫黄系の臭気を化学吸着する吸着剤をシリカ等の金属酸化物繊維で作ったハニカム体に担持させた脱臭体は、大型サイズを作製することが難しいため、下水処理場など大型施設で用いることが極めて困難であった。またハニカム体は非常に脆く、外力により簡単に壊れてしまうため、取り扱いにくいという課題もあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するものであり、化学吸着作用を有する吸着剤とバインダとを備え、前記バインダにより前記化学吸着作用を有する吸着剤を結着し固形化した脱臭体としたもので、硫黄系の臭気、特に硫化水素を吸着する能力が極めて高い化学吸着作用を有する吸着剤を用い、固形化することで脱臭体を容易に扱うことができるようになり、また大型施設に対応することが容易となる。
【0006】
また、多孔質構造を持たせて固形化することで、単位体積あたりの表面積を大きくすることができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の表面積を有する脱臭体とすることができる。したがって、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤とバインダとを備え、前記バインダにより前記化学吸着作用を有する吸着剤を結着し固形化した脱臭体としたもので、トイレ臭中に含まれる硫化水素や下水処理場で発生する硫化水素を化学吸着作用により極めて高い脱臭能力で除去することができ、また化学吸着であるため、一度吸着した硫化水素を再度放出することがない。さらに、小さな外力で破壊されることがないので、非常に取扱い性がよい。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1記載の脱臭体としたもので、これらは硫化水素を主に硫酸化物として化学吸着し脱臭するものだが、特にマンガン、コバルト、銅、亜鉛の酸化物や複合酸化物などは、硫酸化物を作りやすく、硫化水素を除去する能力が非常に高い。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1記載の脱臭体としたもので、ゼオライトやセピオライト、シリカ、アルミナ等の物理吸着作用を有する吸着剤を加えることで、トイレ臭のアンモニアや二硫化ジメチルに対する脱臭作用を高めることができる。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、バインダが無機物である請求項1記載の脱臭体としたもので、コロイダルシリカや水ガラス等の無機のバインダを用いることにより、同じ無機物である化学吸着作用を有する吸着剤や物理吸着作用を有する吸着剤を結着しやすく、また物理吸着作用を有する吸着剤に物理吸着した物質を熱をかけて脱着させるときに、200℃以上の高温まで上げることができ脱着を容易にし、再び物理吸着作用を有する脱臭体として用いることができる。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、バインダが無機物である請求項1記載の脱臭体としたもので、単位体積あたりの表面積を大きくすることができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の表面積を有する脱臭体とすることができる。したがって、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保できる。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とスペーサーとをバインダで結着した後に、スペーサーを除去手段で取り除くことにより多孔質構造を付与した請求項5記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、スペーサーが有機物で、かつ除去手段が燃焼である請求項6記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、スペーサーがバインダである請求項6もしくは7記載の脱臭体としたもので、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とを結着する結着力が高まるため、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とを結着する加工工程が容易になる。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、スペーサーが発泡効果を有する物質である請求項6〜8いずれか1項記載の脱臭体としたもので、発泡効果により緻密な多孔質構造を付与することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0016】
また、請求項10記載の発明は、バインダが水に不溶で、かつスペーサーが水溶性で、かつ除去手段が水への溶解である請求項6記載の脱臭体としたもので、容易に多孔質構造を有する脱臭体を作製することができ、従来のハニカム体に担持した脱臭体と同等以上の脱臭性能を確保した脱臭体を実現できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図である。図1(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は固形化した脱臭体1の一部分を拡大した模式図である。固形化した脱臭体1は、化学吸着を有する吸着剤2(以下、本実施例では化学吸着剤という)がバインダ3により結着し、構成されているものである。本実施例では、化学吸着剤2にマンガン、銅、コバルトの複合酸化物(以下、本実施例では複合酸化物Aという)を用い、バインダ3にコロイダルシリカを用いた。なお、本実施例ではマンガン、銅、コバルトの複合酸化物を用いたが、これに限定するものではなく、マンガン、銅、亜鉛、コバルトのいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物あるいはその混合物とすることにより、同様に硫化水素に対する強力な化学吸着作用を有する脱臭体とすることができる。
【0019】
本実施例で用いた複合酸化物Aは、特に硫化水素の除去に優れ、硫化水素を最終的に硫酸塩の形で化学吸着するものである。また、同じ硫黄系臭気であるメチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用も有する。複合酸化物Aは0.1〜1μm程度の大きさであり、固形化した脱臭体1は直径5mm、高さ5mm程度の円柱状であったが、これらの大きさに拘るものではない。固形化した脱臭体1は極力小さくした方が、同体積での表面積を大きく取ることができるので好ましい。さらに、化学吸着剤2とバインダ3の形は球状に限定されるものでなく、また固形化した脱臭体1の形は円柱に限定されるものではない。固形化した脱臭体の表面に凹凸を設けたり、多孔質構造を付与したりすることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0020】
本実施例で用いたコロイダルシリカは、シリカ粒径がナノオーダーの無機系接着剤であり、本実施例で用いた無機物である複合酸化物A同士の接着に非常に優れる。また、有機の接着剤のように、膜状になり複合酸化物Aの表面を覆ってしまうことがほとんど無いので、複合酸化物Aの吸着性能を低下させることがない。複合酸化物Aとバインダとの混合比は特に限定するものではないが、バインダが多くなると、複合酸化物Aの化学吸着作用が低下し、極端にバインダが少ないと、固形化した複合酸化物Aの強度が小さいものとなる。望ましくは、複合酸化物とバインダが重量比で10:1程度である。
【0021】
複合酸化物Aを固形化した脱臭体は押し出し成形などで簡単に作製することができるため大量に生産でき、大きな施設にも簡単に適用することができる。また、固形化した脱臭体の強度は高く、運搬性、取扱性ともに非常によい。
【0022】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0023】
<実験例1>
複合酸化物A100gに、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラムという)。また、同条件で直径1mmの固形化した脱臭体も作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラムという)。さらに、1平方インチあたりのセル数が205のセラミックス繊維を原料とした50ccのハニカム体に、複合酸化物Aをシリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)をバインダとして、ハニカム体1ccあたり0.10gの重量で担持したものを作製した(以下、本実施例ではハニカムカラムという)。また、対照として、50ccの容器に活性炭を約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では活性炭カラムという)。
【0024】
これら4種類のカラムを用いて硫化水素の通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに濃度が50ppmの硫化水素を流通させ、このときのカラム出口での硫化水素濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間(以下、本実施例では寿命という)とした。その結果を(表1)に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(表1)より、複合酸化物Aは活性炭と比較して初期性能、寿命ともに非常に高い。特に、同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。またこれにより、成形困難な大型のハニカム体を作製することなく、高性能な脱臭体を大きな施設に応用することができる。
【0027】
(実施例2)
図2は本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図である。図2(a)は本実施例の脱臭体の模式図であり、(b)は固形化した脱臭体4の一部分を拡大した模式図である。固形化した脱臭体4は、化学吸着剤2と物理吸着作用を有する吸着剤5とがバインダ3により結着し、構成されているものである。このような構成をとることにより、トイレ臭に含まれる硫化水素は化学吸着作用により除去でき、さらにアンモニアや二硫化ジメチルを物理吸着作用により除去できるため、トイレ臭が全般的に除去することが可能となる。また、メチルメルカプタンを二硫化ジメチルに転化する触媒作用をも有する化学吸着作用を有する吸着剤を用いることにより、トイレ臭に含まれるメチルメルカプタンは二硫化ジメチルとなり、物理吸着作用を有する吸着剤に吸着されることで、さらにトイレ臭が全般的に除去することが可能となる。
【0028】
本実施例では、物理吸着作用を有する吸着剤5として、疎水性ゼオライトを用いたが、親水性のゼオライト、セピオライト、シリカ、アルミナ等を用いても同様な効果が得られる。なお、化学吸着作用を有する吸着剤として複合酸化物Aを、バインダとしてコロイダルシリカを用いた。
【0029】
化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤との比率は、臭気の成分により変えることができる。すなわち、硫化水素が多い場合は化学吸着作用を有する吸着剤を多くし、アンモニアや二硫化ジメチルが多い場合、物理吸着作用を有する吸着剤を多くすると臭気全般を効率よく脱臭することができる。通常のトイレ臭の場合は、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤は重量比で1:1程度が望ましい。また、化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤との混合物とバインダとの比は特に限定するものではないが、重量比で10:1程度が望ましい。
【0030】
なお、アンモニア等のガスを吸着し吸着作用を喪失した物理吸着作用を有する吸着剤に、臭気を含まない空気を流通させることにより、吸着したガスを放出させ、吸着作用を復活させることができる。また、温度を上げることによっても、吸着作用を喪失した物理吸着作用を有する吸着剤の吸着作用を復活させることができる。このとき、バインダに無機系のバインダを用いているとより高温まで上げることができ、効率よく吸着ガスを放出させることができる。
【0031】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
【0032】
<実験例2>
複合酸化物A50gと疎水性ゼオライト50gの混合物に、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラム2という)。また、同条件で直径1mmの固形化した脱臭体も作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラム2という)。さらに、1平方インチあたりのセル数が205のセラミックス繊維を原料とした50ccのハニカム体に、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを重量比1:1で混合したものを、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)をバインダとして、ハニカム体1ccあたり0.10gの重量で担持したものを作製した(以下、本実施例ではハニカムカラム2という)。また、対照として、50ccの容器に活性炭を約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では活性炭カラムという)。
【0033】
これら4種類のカラムを用いて硫化水素、アンモニア、二硫化ジメチル、メチルメルカプタンの通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに50ppmの各種ガスを流通させ、このときのカラム出口での各種ガス濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間(以下、本実施例では寿命という)とした。その結果を(表2)に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
(表2)より、複合酸化物Aと疎水性ゼオライトを固形した脱臭体は、各種ガスについて活性炭と比較して初期性能、寿命ともに非常に高い。特に、同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。
【0036】
(実施例3)
図3は本発明の第三の実施例における脱臭体の模式図である。図3(a)は、スペーサーを添加し固形化した脱臭体の一部分を拡大した模式図であり、(b)は除去手段によりスペーサーを除去した固形化した脱臭体の一部分を拡大した模式図である。化学吸着剤2と物理吸着作用を有する吸着剤5とスペーサー6とをバインダ3により結着し固形化した後に、スペーサー6を除去することにより、除去されたスペーサー6の部分が空間となり、多孔質構造をとるものである。このような多孔質構造をとることにより、単位体積あたりの表面積が増加し、脱臭性能が向上する。
【0037】
孔の大きさ、形について特に限定するものではないが、孔のサイズがナノオーダーの大きさの場合、臭気分子が孔に入りにくいため、あまり効果がなく、また孔のサイズが固形化した脱臭体の大きさに非常に近い場合、単位体積あたりの面積があまり増加せず、その効果は小さい。また、孔は独立孔より連続孔の方が脱臭効率は高くなる。
【0038】
スペーサーの形状、物性は特に限定するものではないが、スペーサーに樹脂粉末等の有機物を用いると、燃焼により除去することができるので、非常に簡単に多孔質構造を付与することができる。また、スペーサーにポリビニルアルコール(以下、本実施例ではPVAという)やメチルセルロースなどの有機物のバインダを選択することにより、スペーサー5を除去した後、化学吸着作用を有する吸着剤2や物理吸着作用を有する吸着剤4が表面に表れやすく、脱臭性能を向上させることができる。また、PVAやメチルセルロースと水を添加することにより、粘性を上げることができるので、固形化しやすいというメリットもある。 さらに、スペーサー5として、熱により分解反応を起こしガスを発生させる発泡剤を用いると、少量のスペーサーで多くの空間を確保したり、緻密な孔を作ることができる。
【0039】
バインダに低融点ガラスのような水に溶けないバインダを選定し、スペーサーにPVAやメチルセルロース等の水溶性の物質を選ぶことで、固形化した脱臭体を水に浸漬させることでスペーサーを除去することができ、多孔質構造を付与することができる。
【0040】
以下、実験例を示す。
【0041】
<実験例3>
複合酸化物A100gと、スペーサーとしてメチルセルロース100gに、シリカ分20wt%のコロイダルシリカ(溶媒は水)50gをバインダとして加え、さらに水を40g加え混練した後、押し出し成形により、直径5mm高さ5mmの固形化した脱臭体を作製した。その後、固形化した脱臭体を400℃で12時間保持し、スペーサーであるメチルセルロースを除去し、多孔質構造を有する固形化した脱臭体を作製した。これを50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では円柱カラム3という)。また、同条件で直径1mmの多孔質構造を有する固形化した脱臭体を作製し、50ccの容器に約40%の充填率で充填させた充填層を作製した(以下、本実施例では球カラム3という)。さらに、<実験例1>で用いたハニカムカラムを作製した。
【0042】
これら3種類のカラムを用いて硫化水素の通気試験を行った。このとき、空間速度を7200h−1に設定し、カラムに濃度が50ppmの硫化水素を流通させ、このときのカラム出口での硫化水素濃度を測定し、除去率を算出した。そして、流通開始直後の除去率を初期性能とし、除去率が50%になる時間を破過時間として、これら脱臭体の脱臭性能を喪失する時間とした。その結果を(表3)に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(表3)より、多孔質構造を付与して同体積あたりの表面積を増加させることにより、初期性能、寿命ともに向上させることができ、ハニカムカラムと同等もしくはそれ以上の初期性能、寿命を有するものを作製することができる。またこれにより、成形困難な大型のハニカム体を作製することなく、高性能な脱臭体を大きな施設に応用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、特に硫化水素について極めて高い除去能力を有する固形化した脱臭体を実現することができ、その固形化した脱臭体は、取扱い性、量産性、輸送性の良さから下水処理施設のような硫化水素が発生する大型施設に簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第一の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図2】(a)本発明の第二の実施例における脱臭体の模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【図3】(a)本発明の第三の実施例における脱臭体の一部分を拡大した模式図
(b)同、脱臭体の一部分を拡大した模式図
【符号の説明】
1 固形化した脱臭体
2 化学吸着作用を有する吸着剤
3 バインダ
4 固形化した脱臭体
5 物理吸着作用を有する吸着剤
6 スペーサー
Claims (10)
- 化学吸着作用を有する吸着剤とバインダとを備え、前記バインダにより前記化学吸着作用を有する吸着剤を結着し固形化した脱臭体。
- 化学吸着作用を有する吸着剤は少なくともマンガン、コバルト、銅、亜鉛のいずれかを含む酸化物、水酸化物、複合酸化物、あるいはその混合物である請求項1記載の脱臭体。
- 物理吸着作用を有する吸着剤を含む請求項1記載の脱臭体。
- バインダが無機物である請求項1記載の脱臭体。
- 多孔質構造を有する請求項1〜4いずれか1項に記載の脱臭体。
- 化学吸着作用を有する吸着剤と物理吸着作用を有する吸着剤とスペーサーとをバインダで結着した後に、スペーサーを除去手段で取り除くことにより多孔質構造を付与した請求項5記載の脱臭体。
- スペーサーが有機物で、かつ除去手段が燃焼である請求項6記載の脱臭体。
- スペーサーがバインダである請求項6もしくは7記載の脱臭体。
- スペーサーが発泡効果を有する物質である請求項6〜8いずれか1項記載の脱臭体。
- バインダが水に不溶で、かつスペーサーが水溶性で、かつ除去手段が水への溶解である請求項6記載の脱臭体。
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-
2002
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