JP2004104939A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定相の電流振幅値の変化周期からロータ速度を推定することにより、ロータが外力等により回転している状態から同期運転を開始することができる。具体的には、ロータ速度推定サブルーチンの実行によりロータ速度を推定し、その推定したロータ速度より低い回転速度からインバータ回路の出力周波数を決定する。更に、ロータ速度を推定する際に検出される電流振幅値の変化よりロータ位置を推定し、そのロータ位置からインバータ回路の印加電圧位相を決定する。この方法によれば、ロータが回転している状態から、ロータを停止させることなく、そのまま同期運転を開始させることができる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置センサを用いることなく同期モータを制御するモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ロータの電気角位置を位置センサで検出することなく駆動する方法、いわゆる位置センサレス駆動法がある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、位置センサレス駆動法では、起動時にロータの位置や速度が分からないと同期運転できないという問題がある。この問題に対し、ロータ停止時に、ステータ巻線に電圧を短時間印加してインダクタンス値を測定し、あらかじめ測定した基準インダクタンス値と比較してロータの停止位置を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−236789号公報
【特許文献2】
特開2001−136779 公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1及び特許文献2では、起動時にロータが停止していることが前提となっており、起動する前に外力等によりロータが回転している場合でも、一旦ロータの回転を停止させる必要がある。このため、起動前に回転している状態では、スムーズに起動させることができないという問題があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、起動前にロータが回転している場合でも、一旦ロータの回転を停止させる必要がなく、スムーズに起動させることができるモータ制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御する制御装置であって、
複数相のうち少なくとも1つの相(特定相)のコイルに、特定相での巻線インダクタンス周期より高い所定周波数の電圧を印加して特定相のコイル電流を検出する電流検出手段と、検出された電流値より電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、算出された電流振幅値の変化周期からロータの回転速度を推定するロータ速度推定手段とを有している。
【0006】
各相の巻線インダクタンスは、ロータ位置に同期している。ここで、特定相のコイルに対し、巻線インダクタンスの周期より高い所定周波数の電圧を印加すると、コイルに流れる電流値が巻線インダクタンスの変化に影響を受けるため、電流値の包絡線である電流振幅値は、ロータ位置に同期した波形となる。従って、電流振幅値の変化周期からロータ速度(ロータの回転速度)を推定することができる。この方法によれば、位置センサや速度センサを用いることなく、起動前のロータ速度を検出できる。
【0007】
(請求項2の発明)
請求項1に記載したモータ制御装置において、
電流振幅値算出手段は、コイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間にサンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出することを特徴とする。
この構成では、サンプリングした電流値を積分することにより、コイルに電流ノイズが混入した場合に、その影響を減らすことができるので、精度良く電流振幅値を算出できる。
【0008】
(請求項3の発明)
請求項1に記載したモータ制御装置において、
ロータ速度推定手段は、特定相のコイルに所定周波数の電圧を印加した後、所定期間経過してから電流振幅値の変化周期を算出してロータの回転速度を推定することを特徴とする。
【0009】
特定相のコイルに電圧を印加した直後は、電流が安定していないため、その間(電流が安定しない間)に算出される電流振幅値を使用して変化周期を求めても、正確なロータ速度を算出できない。そこで、電流が安定しない間は、電流振幅値の変化周期を算出しない。即ち、電流が安定してから(特定相のコイルに所定周波数の電圧を印加した後、所定期間経過してから)、電流振幅値の変化周期を算出してロータ速度を推定することにより、精度良くロータ速度を求めることができる。
【0010】
(請求項4の発明)
請求項1に記載したモータ制御装置において、
ロータ速度推定手段は、電流振幅値算出手段によって算出された電流振幅値の頂点と、この頂点と電流値の極性が同一となる領域で、頂点の前後に算出された2個の電流振幅値とを用いて頂点の位置を補正することを特徴とする。
電流振幅値算出手段によって算出される電流振幅値の周期が真の周期(巻線インダクタンスの周期)と一致しない場合でも、算出された頂点とその前後の点とでサンプリング周期による検出誤差を補正して真の頂点を求めることが可能である。
【0011】
(請求項5の発明)
請求項1に記載したモータ制御装置において、
ロータ速度推定手段によりロータの回転速度を推定した後、同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数をロータの推定速度(推定された回転速度)から決まる周波数以下に設定して同期運転を開始する同期運転起動手段を有することを特徴とする。
この場合、同期運転を開始する時(起動前)に、インバータ回路の出力周波数をロータ速度に応じた周波数とすることで、スムーズに同期運転を開始することができる。
【0012】
(請求項6の発明)
請求項5に記載したモータ制御装置において、
同期運転起動手段は、電流振幅値の変化よりロータの回転位置(ロータ位置)を推定し、同期運転を開始する時の初期電圧位相をロータの推定位置から決定することを特徴とする。
この構成によれば、起動時にインバータ回路の電圧位相をロータ位相に合わせることができるので、スムーズに起動できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2はモータ制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
本実施形態のモータ制御装置1は、図2に示す様に、三相(U相、V相、W相)のコイルU、V、Wを有するステータ(図示しない)と突極性を有するロータ(図示しない)とで構成される同期モータ2を制御するもので、以下に説明する各実施例に共通する基本的な構成として、複数のスイッチング素子から成るインバータ回路3と、交流電圧を直流に変換してインバータ回路3に印加するための整流回路4と、インバータ回路3の各スイッチング素子をON/OFF制御する制御部5等を有している。
【0014】
(第1実施例)
本実施例のモータ制御装置1は、上記の基本構成に加えて、図1に示す様に、電流センサ6で検出されるコイル電流(相電流)を取り込んでA/D変換する電流検出手段7と、検出された電流値より電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段8と、電流振幅値の変化周期からロータの回転速度(ロータ速度)を推定するロータ速度推定手段9とを有している。
【0015】
ロータ速度は、以下の論理に基づいて推定することが可能である。
各相の巻線インダクタンスは、ロータ位置に同期している。ここで、図3に示す様に、特定相のコイルに対し、巻線インダクタンスの周期より高い所定周波数の電圧(b)を印加すると、特定相のコイルに流れる電流値(c)が巻線インダクタンスの変化(a)に影響を受けるため、電流値の包絡線である電流振幅値は、ロータ位置に同期した波形(d)となる。従って、電流振幅値の変化周期からロータ速度を推定することが可能である。
【0016】
次に、ロータ速度の推定方法を図4に示すロータ速度推定サブルーチンに基づいて説明する。
Step101 …特定相のコイルに印加する指令電圧の周波数を変更する。
Step102 …指令電圧の周波数を変更してから経過した時間tを判定する(このStep102 を実施する理由については後述する)。この判定結果がYES (t>t1 )の時はStep103 へ進み、判定結果がNO(t≦t1 )の時は再びStep102 を実行する。
Step103 …第2実施例に後述する電流振幅値算出サブルーチンを実行し、算出された電流振幅値をメモリに格納する。
【0017】
Step104 …メモリに格納された電流振幅値がn個(n≧3)になったか否かを判定する。この判定結果がYES (メモリに格納された電流振幅値=n個)の時はStep105 へ進み、判定結果がNOの時はStep103 へ戻る。
Step105 …特定相の電流振幅値の変化周期を求め、その変化周期からロータ速度を推定する。なお、図3(d)では、n=40個の電流振幅値を使い、電流振幅値が最大になる時間t1 及びt2 を計測して周期を求めている。
以上の様に、この第1実施例では、位置センサや速度センサを用いることなく、特定相の電流振幅値の変化周期からロータ速度を推定することができる。
【0018】
(第2実施例)
本実施例では、上記の第1実施例に記載した電流振幅値算出手段8の一例を説明する。
この電流振幅値算出手段8は、何れか1つの相のコイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間、サンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出する。
【0019】
次に、実際の電流振幅値を算出する方法について図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
Step201 …メモリSをクリアする(S←0)。
Step202 …電流振幅値を保存するためのメモリをシフトする(I1 ←I0 )。
Step203 …電流検出手段7(A/D変換器)により所定周期で電流値をサンプリングし、メモリI0 に保存する。
Step204 …サンプリングした電流値の極性を比較する。極性が同じであれば(判定結果:YES )Step205 へ進み、極性が異なる時(判定結果:NO)はStep206 へ進む。
Step205 …メモリI0 に保存された電流値(絶対値)をメモリSに積算した後、Step202 へ戻る。
Step206 …メモリSに積算された値を電流振幅値とする。
【0020】
この方法によれば、図6に示す様に、所定周期でサンプリングした電流値の極性が同じであれば(t1 〜t2 の区間、t2 〜t3 の区間)、サンプリングした電流値(絶対値)をメモリSに加算していき、サンプリングした電流値の極性が替わるタイミング(t2 、t3 )で、それまでメモリSに累積された電流値(絶対値)の合計を電流振幅値として使用するので、コイルU、V、Wに電流ノイズが混入した場合に、その影響を減らすことができ、精度良く電流振幅値を算出できる。
【0021】
(第3実施例)
本実施例は、第1実施例のStep102 について説明する。
ロータ速度を推定する際に、少なくとも1つの相(特定相)のコイルに所定周波数の電圧を印加して、その特定相のコイルに流れる電流を検出しているが、図7に示す様に、電圧を印加した直後は、電流が安定していないため、その間(電流が安定しない間)に算出される電流振幅値を使用して変化周期を求めても、正確なロータ速度を算出できない。
そこで、電流が安定しない間は、電流振幅値を変化周期の算出に使用しない。即ち、電流が安定してから(特定相のコイルに所定周波数の電圧を印加した後、所定期間t1 経過してから)、電流振幅値の変化周期を算出してロータ速度を推定することにより、精度良くロータ速度を求めることができる。
【0022】
(第4実施例)
本実施例では、第1実施例に記載したロータ速度推定サブルーチンにおいて、Step105 で電流振幅値の変化周期を求める際に、電流振幅値の頂点を補正する方法について説明する。
インバータ回路3の電圧周波数とロータのインダクタンス周波数(巻線インダクタンスの変化周期)との差が小さくなってくると、図8に示す様に、電流値から求めた電流振幅値の変化周期T2 が真の周期T1 とずれてくる(T1 ≠T2 )。このとき、検出精度は、印加電圧の1周期となる。例えば、印加電圧の周波数:300Hz 、ロータ周波数:60Hz(1800rpm )の時、電圧1周期分の誤差があると、検出回転数は約±400rpmの誤差が生じる。
【0023】
そこで、図9(a)に示す様に、電流振幅値算出手段8によって算出された電流振幅値の頂点yと、この頂点yと電流値の極性が同一となる領域で、頂点の前後に算出された2個の電流振幅値x、zとを用いて頂点の位置を補正し、その補正後の頂点を真の頂点として変化周期を算出している。
補正方法としては、図9(b)に示す直線近似による方法、あるいは正弦波から計算して真の頂点を求める方法等がある。
【0024】
(第5実施例)
本実施例では、ロータが外力等により回転している状態から同期運転を開始する方法について説明する。
具体的な方法を図10に示す同期運転起動サブルーチンに基づいて説明する。
Step301 …第1実施例に記載したロータ速度推定サブルーチン(図4参照)を実行してロータ速度を推定する。
Step302 …推定したロータ速度より低い回転速度(ロータ推定速度−所定量a)からインバータ回路3の出力周波数を決定する。
【0025】
Step303 …インバータ回路3の印加電圧位相を所定値に設定する。ここでは、ロータ速度を推定する際に検出される電流振幅値の変化よりロータの回転位置(ロータ位置)を推定し、そのロータ位置からインバータ回路3の印加電圧位相を決定する。
本実施例によれば、ロータが回転している状態から、ロータを停止させることなく、そのまま同期運転を開始させることができる。また、同期運転を開始する時に、インバータ回路3の印加電圧位相をロータ位相に合わせることができるので、スムーズに同期運転を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロータ速度を推定するための構成を示すブロック図である(第1実施例)。
【図2】モータ制御装置の基本構成を示すブロック図である。
【図3】特定相での巻線インダクタンス波形図(a)、電圧波形図(b)、電流波形図(c)、電流振幅値(d)の変化を示す図面である(第1実施例)。
【図4】ロータ速度推定サブルーチンである(第1実施例)。
【図5】電流振幅値算出サブルーチンである(第2実施例)。
【図6】電流振幅値の算出方法を示す説明図である(第2実施例)。
【図7】印加電圧に対する電流値の変化を示す波形図である(第3実施例)。
【図8】ロータ周波数と電流振幅値の変化周期とのずれを説明する波形図である(第4実施例)。
【図9】電流振幅値の検出された頂点と真の頂点とのずれを説明する波形図(a)と、電流振幅値の頂点を補正する方法を示す説明図(b)である(第4実施例)。
【図10】同期運転起動サブルーチンである(第5実施例)。
【符号の説明】
1 モータ制御装置
2 同期モータ
3 インバータ回路
7 電流検出手段
8 電流振幅値算出手段
9 ロータ速度推定手段
U、V、W コイル
Claims (6)
- 複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御するモータ制御装置であって、
前記複数相のうち少なくとも1つの相(特定相)のコイルに、前記特定相での巻線インダクタンス周期より高い所定周波数の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記特定相のコイル電流を検出する電流検出手段と、
検出された電流値より電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、
算出された電流振幅値の変化周期から前記ロータの回転速度を推定するロータ速度推定手段とを有するモータ制御装置。 - 請求項1に記載したモータ制御装置において、
前記電流振幅値算出手段は、前記コイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間にサンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項1に記載したモータ制御装置において、
前記ロータ速度推定手段は、前記特定相のコイルに所定周波数の電圧を印加した後、所定期間経過してから前記電流振幅値の変化周期を算出して前記ロータの回転速度を推定することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項1に記載したモータ制御装置において、
前記ロータ速度推定手段は、前記電流振幅値算出手段によって算出された電流振幅値の頂点と、この頂点と電流値の極性が同一となる領域で、前記頂点の前後に算出された2個の電流振幅値とを用いて前記頂点の位置を補正することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項1に記載したモータ制御装置において、
前記ロータ速度推定手段により前記ロータの回転速度を推定した後、前記同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数を前記ロータの推定速度から決まる周波数以下に設定して同期運転を開始する同期運転起動手段を有することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項5に記載したモータ制御装置において、
前記同期運転起動手段は、前記電流振幅値の変化より前記ロータの回転位置(ロータ位置)を推定し、同期運転を開始する時の初期電圧位相を前記ロータの推定位置から決定することを特徴とするモータ制御装置。
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