JP2004103180A - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レーベル面に、レーザー光を用いて可視情報を光学的に記録するための層5を有する光学記録媒体。この可視情報記録層5の上面側に、厚さ10μm以上、100μm以下の塗膜よりなるレーザー光透過層6が設けられている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報の光学的記録/再生が可能な光情報記録媒体に関する。詳しくは、電子情報の光学的な記録/再生ができると共に、該光情報記録媒体のレーベル面に、レーザー光を用いて可視情報を光学的に記録することができる光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの情報を記録、保存、書き換えするための電子情報記録媒体は、近年、コンピューター周辺機器としての重要性が益々高まっている。中でも、レーザー光を用いて記録、再生を行う光情報記録媒体は、高密度の情報記録、保存、再生が可能なことから、大容量記録媒体として注目されている。このような光情報記録媒体の例としては、CD−RW、DVD−RWなどに代表される相変化型光学記録媒体、CD−R、DVD−Rに代表される有機色素系光学記録媒体などが挙げられる。
【0003】
ところで、このような光情報記録媒体に記録された情報の内容は、該情報を光学的に再生することにより確認できるが、この電子情報の内容を可視情報として媒体表面に表示することは、情報管理上重要なことである。従って、従来においては、電子情報を光学的に再生せずに目視により容易に確認するために、媒体のレーベル面に、インクジェットプリンター、感熱プリンターで情報内容を印刷記録したり、情報内容を記録したラベル等を貼り付けるなどの方法が採用されている。
【0004】
しかし、媒体のレーベル面に可視情報をインクジェット又は感熱プリンターで印刷するためには、電子情報の記録装置の他に別途、専用プリンターが必要であり、個人等が少量の媒体に可視情報を記録しようとするには不適当である。また、レーベル面にラベル等を貼る方法では、接着剤等の耐久性の問題で、使用中に剥離したり、張り合わせの際の芯ズレで、記録媒体の回転時のアンバランスが大きくなり、著しい場合には、記録、再生が不可能となることもある。
【0005】
これに対して、レーザー光により可視情報を記録するものであれば、電子情報の記録/再生用のレーザー装置を用いて、光情報記録媒体に機械的な悪影響を及ぼすことなく可視情報の記録を行えるものと考えられるが、一方で、レーザー光を用いたレーベル面への可視情報記録は、熱による反応、溶解、析出等の変化を利用することから、過度のレーザー照射は、媒体に記録された電子情報に悪影響を及ぼすことになるため、照射方法には十分な注意が払われなくてはならない。
【0006】
従来、レーザー光による可視情報を記録する技術として、次のようなものが提案されている。
【0007】
▲1▼ 特開2000−105947:レーザー光で可視情報を記録可能なレーベル面を有する記録媒体。この記録媒体では、熱ヘッドを用いた記録に主眼を置いているため、レーザー光のフォーカスを合わせることは考慮されておらず、可視情報記録面上に設けられる保護層は薄く、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmとされている。
【0008】
▲2▼ 特開2001−283464:両面に光記録可能な光情報記録媒体において、一方の面に通常の情報記録(デジタル情報記録)、他方の面にピットアート記録(可視情報記録)を行うもの。但し、その媒体の構成としては、2枚のポリカーボネート等で形成された透明基板間に、情報記録層とピットアート記録層を狭持したもののみであり、ピットアート記録層を覆う透明基板の厚さについては記載が無く、また透明基板の代わりに塗布で設けられた保護層を使用する旨の記載や示唆もない。
【0009】
このように従来において、レーザー光による可視情報の記録についてのいくつかの提案はなされているが、媒体及び媒体に記録された電子情報に悪影響を及ぼすことなく記録を行える光情報記録媒体の設計については、十分な検討がなされていないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−105947
【特許文献2】
特開2001−283464
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、電子情報の記録/再生用のレーザー装置を用いて、低出力のレーザー照射で、媒体に記録された電子情報に悪影響を及ぼすことなく、レーベル面に可視情報を記録することができる光情報記録媒体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の光情報記録媒体は、レーベル面に、レーザー光によって可視情報を記録するための層を有する光情報記録媒体において、該可視情報記録層の上面側に厚さ10μm以上、100μm以下の塗膜よりなるレーザー光透過層が設けられていることを特徴とする。
【0013】
レーザー光による可視情報記録時の媒体への熱的影響を低減するためには、低出力のレーザー光を用いる必要がある。そして、レーベル面に低出力のレーザー光で可視情報を記録するためには、可視情報記録用の記録層にレーザー光を集光することが必要であり、そのためには、可視情報記録層上にレーザー光の集光に有効なある程度の厚さのあるレーザー光透過層を設ける必要がある。
【0014】
ところで、この可視情報記録層上にレーザー光透過層を形成する場合、予め作成した透明基板を、レーザー光透過層を形成した基板上に貼り合わせようとすると、2枚の基板の正確な位置合わせを行う必要があり、また、接着層に気泡が入らないよう貼り合わせ工程を減圧状態にする等、製造工程上の工夫が種々必要となる。従って、生産性の面からは、レーザー光透過層は塗布法により設ける方が有利である。
【0015】
しかし、一般に、塗布法により、ある程度の厚さのある層を形成するのは困難である。塗布工程を何度も繰り返すことにより、厚膜化は不可能ではないが、工程が増える;膜厚の均一性を確保するのが困難である;塗布、乾燥(硬化)工程を繰り返したり、厚塗りした塗布層を硬化させたりする過程で、層が収縮し、このことで媒体の反りを引き起こし、この結果、媒体への電子情報記録が行えなくなる;等の問題があり、従って、形成するレーザー光透過層の厚みには限度がある。
【0016】
本発明は、このようなことから、レーザー光の集光のために必要とされるレーザー光透過層の厚さと、塗布により媒体の反りを引き起こすことなく均一な厚さに形成することができる厚さとの兼ね合いから、適切なレーザー光透過層の厚さ範囲を決定したものであり、レーザー光透過層の厚さが10μm以上であることから、レーザー光を効率的に集光して、低出力のレーザー光により、鮮明に可視情報を記録することが可能となる。また、レーザー光透過層の厚さが100μm以下であるため、レーザー光透過層の形成工程において、媒体に反り等の変形を引き起こすことなく、均一な厚さのレーザー光透過層を形成することができる。
【0017】
本発明において、可視情報記録層のレーザー光透過層と反対側の面には、直接又はレーザー光透過層を介して反射層が設けられていることが、可視情報記録用のレーザー光を安定に集光するため、好ましい。そして、この反射層は、光情報記録媒体のレーベル面とは反対側の面から情報を光記録するための反射層であり、反射層と可視情報記録層との間のレーザー光透過層がこの反射層の保護層であることが、光情報記録媒体の構造の簡素化の上で好ましい。
【0018】
また、レーザー光の効率的な集光のために、可視情報記録層の上面側のレーザー光透過層の屈折率は0.4以上、2.6以下であることが好ましい。
【0019】
なお、レーザー光透過層の表面における反射率は低いほうが好ましく、例えば20%以下とするには、該層の屈折率は0.4〜2.6程度が好ましく、10%以下にするためには0.5〜1.9程度が好ましい。
【0020】
本発明の光情報記録媒体は、基板、電子情報記録層、反射層、保護層、可視情報記録層及びレーザー光透過層の順で積層された構造を有することが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の光情報記録媒体の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の光情報記録媒体の実施の形態を示す断面図である。
【0023】
本発明の光情報記録媒体は、レーザー光を用いて電子情報の記録、再生が可能なものであれば良く、その構成には特に制限はないが、例えば図1に示すような基板上に電子情報記録層2、反射層3及び保護層4を形成したCD−R10等の光情報記録媒体に更に、可視情報記録層5及びレーザー光透過層6を形成したものが挙げられる。
【0024】
以下に図1に示す光情報記録媒体の各構成層について説明する。
【0025】
基板の材料は、基本的には記録光及び再生光の波長に対して透明なものであればよく、このような材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料の他、ガラス等の無機材料が使用される。特に、ポリカーボネート樹脂は、光の透過性が高く且つ光学的異方性が小さく、また強度が高いなどの点で優れており、好ましい。耐薬品性、耐吸湿性、光学特性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0026】
基板1の電子情報記録層2に接する面には、記録再生用の案内溝やピットを設けても良い。このような案内溝やピットは、基板1の成形時に付与することが好ましいが、基板1の上に紫外線(UV)硬化樹脂を用いて付与することもできる。
【0027】
基板1の厚さの下限は通常1.1mm、好ましくは1.15mmであり、上限は通常1.3mm、好ましくは1.25mmである。
【0028】
基板1上の電子情報記録層2は、基板1上に直接形成されていても良く、必要に応じて任意の層を介して形成されていても良い。
【0029】
電子情報記録層2は、レーザー光の照射により記録可能なものであれば良く、特に制限されず、有機物質よりなる記録層、無機物質よりなる記録層のいずれでも良い。
【0030】
有機物質よりなる記録層には、主として有機色素が使用される。かかる有機色素としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素など)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。中でも含金属アゾ系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素が好ましい。特に、含金属アゾ系色素は、耐久性及び耐光性に優れているため好ましい。
【0031】
有機物質よりなる電子情報記録層2の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などの乾式の薄膜形成法や、キャスト法、スピンコート法、浸漬法など一般に行われている湿式薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からスピンコート法が特に好ましい。
【0032】
無機物質よりなる記録層には、例えば、光磁気効果により記録を行うTb・Te・CoやDy・Fe・Co等の希土類遷移金属合金が使用される。また、相変化するGe・Te、Ge・Sb・Teのようなカルコゲン系合金も使用し得る。これらの層は、単層であっても良く、2層以上の複層で構成されていても良い。
【0033】
無機物質よりなる電子情報記録層2の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが挙げられるが、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。
【0034】
電子情報記録層2の厚さは、記録層の種類により異なるが、下限は通常5nm、好ましくは10nmであり、上限は通常500nm、好ましくは300nmである。
【0035】
電子情報記録層2上の反射層2の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。中でも、Au、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。特に、Agを主成分としているものはコストが安い、反射率が高いなどの点から特に好ましい。
【0036】
反射層3の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが挙げられるが、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。
【0037】
反射層3の厚さの下限は通常30nm、好ましくは50nmであり、上限は通常150nm、好ましくは120nmである。
【0038】
通常、光情報記録媒体の記録層及び反射層の表面側には、保護層4が設けられる。本発明においては反射層3と可視情報記録層5との間には、何ら層が無くても良いが、通常の光情報記録媒体の表面に可視情報記録層を形成する場合には、反射層3と可視情報記録層5との間に保護層4が存在することになる。その場合、保護層4は、レーザー光透過性の物質よりなることが必要である。
【0039】
このレーザー光透過物質としては特に制限はなく、レーザー光透過性のものであれば良い。一般に光情報記録媒体の保護層として多く用いられているものは、UV硬化性樹脂である。
【0040】
UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料の殆どは、レーザー光透過物質であるため、本発明に好適である。これらのUV硬化性樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、保護層4は一層の単層膜でも良く、2層以上の多層膜であっても良い。
【0041】
UV硬化性樹脂よりなる保護層は、UV硬化性樹脂をそのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を反射層上に塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。この場合、塗布方法としては、スピンコート法やキャスト法等を採用することができる。保護層は、その他、スクリーン印刷法等の印刷法などの各種湿式成膜法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種乾式成膜等により形成することもでき、用いる材料に応じて適宜選択された方法で形成される。中でも湿式成膜法、特にスピンコート法が好ましく、一般的にはスピンコート法が用いられている。
【0042】
保護層4の厚さの下限は通常1.0μm、好ましくは3.0μmであり、上限は通常15μm、好ましくは10μmである。
【0043】
可視情報記録層5の構成材料として使用される物質は、基本的にレーザー光の照射により、変色するもの、即ち、可視光の吸収が変化する物質であれば良いが、大別して、以下のような(a)発色性が変化するタイプと(b)透明性が変化するタイプとがある。
【0044】
(a)発色性が変化するタイプ
発色性が変化するタイプの記録材料に用いられる物質としては、例えば、電子情報の光記録に一般的に用いられる、有機色素が挙げられる。かかる有機色素としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素など)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。
【0045】
また、分子構造中にラクトン環部分を有するロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、例えばクリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)フタリド等のフタリド化合物、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6(N−エチルイソペンチルアミノ)フルオラン、3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ベンジルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−メチルプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオランなどのフルオラン化合物等が好ましい。
【0046】
ロイコ染料には、必要に応じて電子受容性化合や、記録用レーザー光を吸収して発熱する色素などと併用する。この場合、電子受容性化合物としては、炭素数6以上の脂肪族基を持つ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物又はフェノール化合物などが挙げられる。好ましくは、炭素数12以上の脂肪族基を一つ有するフェノール性化合物である。
【0047】
電子受容性化合物としては、具体的には、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等が挙げられる。
【0048】
また、フェノール化合物としては4’−ヒドロキシ−4−オクタデシルベンズアニリド、N−オクタデシル−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−オクタデシル尿素、4−ヒドロキシフェニルプロピオノ−ベヘニルヒドラジドなどが挙げられる。
【0049】
レーザー光吸収色素としては、電子情報の光記録に使用する有機色素として前掲した各種色素や、ビスアンスロン系、インドアニリン系などの赤外線吸収性色素などが挙げられる。
【0050】
(b)透明性が変化するタイプ
透明性が変化するタイプの記録材料に用いる物質としては、例えば樹脂母材内に0.1〜2.0μm程度で分散し、熱処理によって融解又は結晶化する有機低分子化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば炭素数12以上の、高級脂肪酸などの周知の有機低分子化合物を使用できる。このような有機低分子化合物は、脂肪酸、脂肪族二塩基酸、ケトン、エーテル、アルコール、脂肪酸エステル及びその誘導体などからなる化合物であってもよく、それらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0051】
結晶性の有機低分子化合物のうち、炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルは、低融点(mp)のものであり、比較的低温での熱処理によって融解、結晶化する好ましいものである。更に炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルに加えて炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の高融点(mp)のものを併用し、脂肪酸アルキルエステルと脂肪族二塩基酸の配合割合を調整すれば、透明化する温度領域を調整することができ、所定温度での透明性及び白濁の程度を変化させることができる。
【0052】
炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルの例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチルなどが挙げられる。
【0053】
また、炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の例としては、セバシン酸、ドデカン2酸、テトラデカン2酸、エイコサン2酸などが挙げられる。
【0054】
炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルと炭素数10以上の脂肪族二塩基酸を併用する場合、その配合比としては1:1〜10:1程度が好ましく、2:1〜6:1がより好ましい。高融点側の脂肪族二塩基酸は低融点側の脂肪酸アルキルエステルの種晶として結晶化挙動を操作する役割をするため、少なすぎるとその効果がなくなる虞があり、逆に多すぎるとコントラストの低下が生じる可能性がある。
【0055】
可視情報記録層5の形成方法としては、電子情報記録層2の形成方法の項で挙げたような、公知の湿式薄膜形成方法が使用できるが、好ましくはスピンコート法又はスクリーン印刷法、より好ましくはスピンコート法である。
【0056】
可視情報記録層5の厚さの下限は通常10nm、好ましくは50nmであり、上限は通常500nm、好ましくは300nmである。
【0057】
可視情報記録層5の表面側(可視情報記録用レーザー光の入射側)には、可視情報記録層5を物理的な傷付けなどから保護するため、また、レーザー光を可視情報記録層に効率良く絞り込むために、レーザー光透過体からなる層が必要である。レーザー光透過層6を構成する材料としては、レーザー光を透過し、かつ可視情報記録層5を外力から保護できるものであれば良く、特に限定されない。また、レーザー光に透過性であれば、レーザー光透過層6は単層膜であっても2層以上の多層膜であっても良い。
【0058】
レーザー光透過層6の構成材料のうち、有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによってレーザー光透過層を形成することができる。UV硬化性樹脂は、そのままか、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによってレーザー光透過層を形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。
【0059】
また、無機物質としては、SiO2、SiN4、MgF2、SnO2等が挙げられる。
【0060】
これらの材料は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、前述の如く、レーザー光透過層6は単層膜であっても多層膜であっても良い。
【0061】
本発明において、レーザー光透過層は、塗布法により形成される。塗布の方法としては、前述の保護層と同様なスピンコート法やキャスト法、スクリーン印刷法等を採用することができるが、特に表面の平滑性が高いという点からスピンコート法が好ましい。
【0062】
このレーザー光透過層6の厚さは10〜100μmとする。レーザー光透過層6の厚さが、10μmより小さい場合、記録用レーザー光のフォーカスが不安定になり、安定して記録を行うことができない。即ち、レーザー光透過層6の厚さが10μm未満の場合、レーザー光透過層6の周方向の厚さ変動がレーザー光の波長(〜900nm)以上あると、レーザー光の干渉が起こり、フォーカシングのための反射光量の変動が大きくなり、安定的にフォーカシングすることができなくなる。レーザー光透過層6の周方向の厚さ変動をレーザー光波長以下にすることは、スピンコート、スクリーン印刷など通常の成膜方法では極めて困難である。厚さ10μm以上であれば、厚さ変動があっても、干渉が起こり難いため、安定的にフォーカシングが可能となる。また、レーザー光透過層6の厚さが、100μmより大きい場合は、塗布時の硬化収縮による媒体の反り、レーザー光透過層と基板材料との吸湿性の違いによる媒体の反り等の影響が大きくなり、安定した反りの光情報記録媒体を得ることができなくなる。
【0063】
レーザー光透過層6の好ましい厚さは20μm以上、80μm以下である。
【0064】
レーザー光透過層6により、レーザー光を効率的に集光して安定的にフォーカシングするために、レーザー光透過層6のレーザー光透過物質の屈折率は0.4以上、2.6以下、特に0.5以上、1.9以下であることが好ましい。
【0065】
なお、図1は本発明の光情報記録媒体の実施の形態の一例を示すものであって、本発明の光情報記録媒体は何ら図1に示す層構成のものに限定されるものではないが、可視情報の記録時に、安定的にフォーカシングするための反射光を得るために、可視情報記録層の下側(記録用レーザー光の入射面と反対側)に記録用レーザー光を反射するための反射層が設けられていることが好ましい。また、光情報記録媒体の構成を簡素化して製造コストを低減する上で、この反射層は、可視情報記録層とは反対側から電子情報を記録するための反射層であることが好ましい。この反射層と可視情報記録層との間には、レーザー光透過性の保護層が形成されていても良い。
【0066】
本発明の光情報記録媒体の電子情報記録層は、記録/消去が可能な相変化型記録層であっても良く、可視情報記録層5と反射層3の間の層は、レーザー光に対して透過性であれば、2層以上であっても良く、また無くても良い。
【0067】
また、本発明においては、CD−R等の光情報記録媒体の最表面層(保護層4)上に、更に直接可視情報記録層5を形成しても良く、例えば接着剤層などのレーザー光に透過性の層を介して可視情報記録層5を形成しても良い。
【0068】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0069】
なお、以下において、光情報記録媒体への可視情報の記録は、図2に示す記録装置を用いて行った。
【0070】
この装置は、可視情報記録層を有する光ディスクに、通常の光ディスクドライブで可視情報記録を行えるようにしたものであり、光ディスク11をスピンドル12に装着してスピンドルモータ13で回転させると共に、フィード送り用のステッピングモータ14でねじ軸15を回転させ、任意の位置にピックアップ16を移動させる。スピンドルモーター14をFGパルス信号にてサーボを行い、ディスク11を任意の回転数に合わせる。フォーカスサーボにてディスク11面に焦点を合わせ、レーザー光17を集光させてディスク11に可視情報を書き込む。
【0071】
このときレーザーパワーはフロントモニターにより適度なパワーで書き込めるように制御しておく。書きこみ信号は、デューティー約50%のパルスをディスク面にて40〜50mWの出力で照射する。スピンドル回転数は160〜2560rpmである。
【0072】
実施例1
射出成形により、幅0.45μm、深さ155nmのグルーブを有する1.2mm厚さのポリカーボネート基板を得た。この基板に、含金アゾ色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、90℃で15分乾燥して電子情報記録層(厚さ:70nm)を形成した。更に、この上にAgをスパッタリングして70nm厚さの反射層とした。その上に、アクリレート系モノマーを主体にしたUV硬化性樹脂(大日本インキ社製「SD−374」)をスピンコートで塗布した後、UV光を照射して硬化させ、厚さ7μmの保護層を形成した。
【0073】
このようにして作製したCD−Rの保護層上に、CD−Rの電子情報記録層形成に用いたと同じ、含金アゾ色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートで塗布し、90℃で15分乾燥して厚さ700nmの可視情報記録層を形成した。更にその上に、アクリレート系モノマーを主体にしたUV硬化性樹脂をスピンコートで塗布し、UV光を照射して硬化させ、厚さ20μmのレーザー光透過層(屈折率:1.5)を形成した。
【0074】
このようにして作成した光ディスクに、図2に示す装置で、レーベル面にレーザー照射して文字記録を行ったところ、安定したフォーカスが得られ、所望の記録を行うことができた。また、電子情報記録に何ら問題を生じることはなかった。
【0075】
実施例2
レーザー光透過層の厚さを30μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報の記録を行ったところ、安定したフォーカスが得られ、所望の記録を行うことができた。電子情報記録にも何ら問題を生じることはなかった。
【0076】
実施例3
レーザー光透過層の厚さを80μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報の記録を行ったところ、安定したフォーカスが得られ、所望の記録を行うことができた。電子情報記録にも何ら問題を生じることはなかった。
【0077】
実施例4
可視情報記録層の材料として、下記組成のトルエン溶液をスピンコートで塗布して、50℃で30分乾燥したこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報の記録を行ったところ、安定したフォーカスが得られ、所望の記録を行うことができた。電子情報記録にも何ら問題を生じることはなかった。
【0078】
【0079】
【化1】
【0080】
実施例5
レーザー光透過層の厚さを13μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報記録を行ったところ、フォーカスエラーが5回の記録のうち1回だけ発生した。なお、電子情報記録には問題はなかった。
【0081】
比較例1
レーザー光透過層の厚さを7μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報記録を行ったところ、フォーカスエラーが5回の記録のうち5回発生した。なお、電子情報記録には問題はなかった。
【0082】
比較例2
レーザー光透過層の厚さを120μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で光ディスクの作製と可視情報記録を行ったところ、可視情報の記録は、安定したフォーカスが得られて所望の記録を行えたが、電子情報記録時にフォーカスエラーが発生して記録を行えなかった。これは、レーザー光透過層形成時の、硬化収縮により、ディスクが反ったことが原因であると考えられる。
【0083】
以上の結果から明らかなように、所定の膜厚のレーザー光透過層を可視情報記録層上に形成した本発明の光情報記録媒体によれば、CD−R,CD−RW,DVD−R,DVD−RWなどの光情報記録媒体において、電子情報記録に使われている記録/再生用レーザー装置を用いてレーベル面に可視情報を記録する際、レーザー光をフォーカシングしながら記録することにより、レーザー光のエネルギーを効率良く可視情報の記録層に集中させることができる。このため比較的低出力のレーザー光で可視情報の記録が可能となるため、記録部周辺への熱影響が少なくなり、電子情報記録への悪影響がなく、且つ鮮明な可視情報記録を行うことができる。また、レーザー光透過層形成時に媒体に反り等の悪影響を及ぼすことも防止される。
【0084】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の光情報記録媒体は、レーベル面の可視情報記録層の上面側にレーザー光の集光に十分な厚さであって、媒体に反りを生じることなく均一な厚さに形成可能な適切な厚さのレーザー光透過層が設けられているため、低出力のレーザー光により、媒体及び媒体の電子情報に悪影響を及ぼすことなく鮮明な可視情報を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光情報記録媒体の実施の形態を示す断面図である。
【図2】実施例及び比較例において用いた情報記録装置の記録機構を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 基板
2 電子情報記録層
3 反射層
4 保護層
5 可視情報記録層
6 レーザー光透過層
10 CD−R
11 光ディスク
13 スピンドルモータ
14 ステッピングモータ
16 アクチュエータ
17 レーザー光
Claims (5)
- レーベル面に、レーザー光によって可視情報を記録するための層を有する光情報記録媒体において、該可視情報記録層の上面側に厚さ10μm以上、100μm以下の塗膜よりなるレーザー光透過層が設けられていることを特徴とする光情報記録媒体。
- 請求項1において、該可視情報記録層の前記レーザー光透過層と反対側の面に直接又はレーザー光透過層を介して反射層が設けられていることを特徴とする光情報記録媒体。
- 請求項2において、該反射層が該光情報記録媒体の前記レーベル面とは反対側の面から情報を光記録するための反射層であり、該反射層と前記可視情報記録層との間のレーザー光透過層が該反射層の保護層であることを特徴とする光情報記録媒体。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記可視情報記録層の上面側のレーザー光透過層の屈折率が0.4以上、2.6以下であることを特徴とする光情報記録媒体。
- 請求項3又は4において、基板、電子情報記録層、反射層、保護層、可視情報記録層及びレーザー光透過層の順で積層された構造を有することを特徴とする光情報記録媒体。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2005101383A1 (ja) * | 2004-04-16 | 2005-10-27 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | 情報処理装置 |
WO2007013229A1 (ja) * | 2005-07-26 | 2007-02-01 | Pioneer Corporation | 情報記録媒体 |
-
2002
- 2002-09-12 JP JP2002267021A patent/JP2004103180A/ja active Pending
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