JP2004102819A - 画像処理方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】写真画像を、明度と色相が分離されたパラメータで表現される画像データの形式に変換し、明度を所定の閾値と比較することで2値化を行ない、色相のデータと合わせて、画像データを再現する。このとき閾値を適正に選択することにより、イラスト化された画像を容易に得ることができる。また、輪郭線の多寡やノイズ除去の程度なども設定して、画面を見ながら調整することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像の処理を行なう技術に関し、詳しくは写真画像に対する2値化の処理を伴う画像処理を行なう技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルカメラの普及とデジタルカメラにより撮像した画像を取り扱う画像処理ソフトの低廉化とに伴い、専門的な知識を有しないものであっても、写真画像を修正したり、トリミングしたり、他の写真やクリップアートと合成するといった画像処理が行なえるようになってきた。
【0003】
また、写真画質の印刷を簡単に実現するプリンタも普及してきており、画像処理後の画像をそのまま印刷することも容易となっている。このため、こうした画像処理の分野では、写植やオフセット印刷といった印刷分野の専門職による画像処理ではなく、特別な知識のないユーザによる使用が広く行なわれている。例えば、年賀状に家族の写真と年賀の文字を合成したり、転居通知に写真と地図を掲載したりといった処理を目的とした一般向けのアプリケーションソフトが発売されている。こうした目的で、写真から画像を取り出す技術については、例えば以下の特許文献がある。
【特許文献1】
特開平10−243211号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、写真画像を用いたこうした画像処理も、当初は斬新に感じられたものの、広汎に普及するに従って、見る者に与える印象は薄くなっていく。むしろ、誰でも撮影できそうな写真よりも、絵手紙のさりげない絵や、ペン画によるイラストなどの方が、見る者に与える印象は強い場合がある。とはいえ、誰でも簡単にイラストなどを描くことはできなかった。
【0005】
そこで、従来から、デジタルカメラやスキャナで取り込んだ写真画像を、イラスト風に変換するフィルタなどが提案されているが、単純なエッジ抽出であったり、色数を減少する単純な処理(いわゆるポスタライズ)であったりするにとどまり、せいぜいイラストの下絵として利用できる程度であった。写真画像を変換したものを、そのままイラストとして用いることは到底できなかった。
【0006】
本発明の装置は、こうした問題を解決し、写真画像を処理してイラストとして利用可能な画像を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決する本発明の画像処理方法は、
写真画像を入力して、処理を行なう画像処理方法であって、
記録媒体に記録された写真画像の少なくとも一つを選択し、
該選択された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、
該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化し、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出し、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示すること
を要旨としている。
【0008】
なお、本発明は、この方法を実現するプログラムとして把握することができる。同様に、そのプログラムを記録した記録媒体としての把握することができる。更に、この方法に対応した装置の発明として把握することもできる。こうした装置の発明は、
写真画像を入力して、処理を行なう画像処理装置であって、
記録媒体に記録された写真画像の少なくとも一つを選択する画像選択手段と、該選択された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する2値化手段と、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に、前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示するイラスト化手段と
を添えたことを要旨としている。
【0009】
かかる画像処理方法や処理装置等によれば、記録媒体に記録された写真画像から選択されたの少なくとも一つの写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータ、例えばYCrCbの色空間によって表現し、このうち、明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する。他方、写真画像からこれに含まれるエッジを抽出し、2値化されたパラメータと色相を表すパラメータとから再現された画像に抽出されたエッジを重ねて表示する。この結果、選択された写真画像はイラスト化されて表示される。
【0010】
こうした画像処理においては、写真画像は、RGBにより表現された画像であり、前記明度と色相が独立したパラメータによって表現された画像は、YCrCbによる画像であるものとすることができる。いずれの表現も、画像処理の分野で多用されており、取り扱うためのツール類も広く出回っている。従って、上記のフォーマットを利用すれば、イラスト化に伴う他の画像処理を容易に行なうことができる。
【0011】
明度を表すパラメータを比較して2値化する際の閾値の大きさによって、イラスト化は大きな影響をうける。明度を表すパラメータが8ビットで表現されている場合には、2値化のための閾値は、デフォルトで60ないし80の間の値とすることが望ましい。かかるデフォルトの閾値を72前後の値とし、更にこの閾値を40ないし110の範囲内で変更可能とすることも、イラスト化の雰囲気を、イラストとして違和感のない範囲で調整する上で有用である。
【0012】
明度を2値化した後のパラメータにより再現された画像に、抽出したエッジを重ね合わせる際、抽出されたエッジに対応する部位の画像を、輪郭線を示す色で表示するものとすることができる。輪郭線は通常は黒など、特定の色で表現されており、これを画像と重ね合わせることで、よりイラストの雰囲気を表現することができる。
【0013】
イラスト化して表示される画像の明度および/または彩度を、所定範囲で変更することができる構成も有用である。画面に明度や彩度を調整するスライドバーなどを表示し、これを修正することで、画像を表現するパラメータを、変更する者とすればよい。
【0014】
更に本発明の第2の画像処理装置は、
デジタルカメラにより撮像された写真画像に対して、一連の処理を行なった結果を出力する画像処理装置であって、
前記デジタルカメラにより撮像された写真画像の少なくとも一つを入力する画像入力手段と、
該入力された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する2値化手段と、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に、前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示するイラスト化手段と、
該イラスト化された画像の少なくとも一部を、画像を構成する他の画像や文字と共に所定の領域内に配置する画像配置配置手段と、
該配置された各画像や文字を、多色の画像を形成可能なプリンタに出力する出力手段と
を備えたことを要旨とする。
【0015】
かかる画像処理装置では、第1の画像処理装置と同様に、写真画像に対してイラスト化する処理を行なうが、特にデジタルカメラにより撮像した画像の少なくとも一部を、これに画像を構成する他の画像や文字などを配置し、しかも、配置された画像を、プリンタに出力して、多色の画像を形成することができる。従って、デジタルカメラにより撮影した画像を元にイラスト化した画像を、年賀状やカード、作品、便せんなどの形態で出力することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の画像処理方法が実施される画像処理装置としてのコンピュータ20およびこのコンピュータ20に接続されたプリンタ30を示す説明図である。コンピュータ20には、メモリカードMCを読み書きするカードリーダライタ40が接続されている。デジタルカメラ50で撮像した画像は、デジタルカメラ50に内蔵されたメモリカードMCに書き込まれ、このメモリカードMCをデジタルカメラ50から抜いて、カードリーダライタ40に装着することで、デジタルカメラ50で撮像した画像を、コンピュータ20で扱うことができる。
【0017】
コンピュータ20は、周知のものであり、CPUやROM,RAM,あるいはビデオ信号の出力回路、カードリーダライタ40とのインタフェース、ハードディスクおよびその制御回路等を内蔵している。これらの回路については、説明は省略する。図2は、コンピュータ20において実現される画像処理関係の機能を説明するブロック図である。かかる機能ブロックは、実際には、コンピュータ20に内蔵したハードディスクからロードされた所定のプログラムが実行されることにより実現される。
【0018】
図2に示したように、画像処理装置として機能するコンピュータ20は、カードリーダライタ40に装着されたメモリカードMCから画像データを選択して読み出す機能を実現する画像データ読出部100、画像データ読出部100から読み出したデータの表現形式をRGB(各8ビット)からYCrCb(各8ビット)に変換する変換部110、変換された画像データのうち明度を表すパラメータであるY値を予め定めた閾値Yrと比較することで2値化を行なう2値化実行部120、明度についての2値化を行なった後のパラメータから画像を再現する画像再現部130、読み出した画像データのノイズを除去してからエッジを抽出して輪郭線とするエッジ抽出部140、この輪郭線と画像再現部130により再現された画像に重ね合わせて画像を形成する画像形成部150、などの機能部を実現する。
【0019】
ここで、画像データ読出部100は、メモリカードMCに保存された画像データを選択し、少なくともその一つを読み出すものである。具体的には、JPEGなどの形式でメモリカードMCに保存された画像データをファイルの形式で表示し、これを使用者に選択させる。選択画面の一例を図3に示した。この画面では、左側に実行する処理の一覧がボタンの形で示されており、このうちの「写真の選択」ボタンBL1操作すると、メモリカードMCやハードディスク内に存在する画像データが、画面右側に表示される。画像データは、欄CC1にはファイルの形態で表示され、その下部の欄CC2にはサムネイルの形態で表示される。いずれかの欄CC1,CC2で、ファイル名やサムネイルを選択する(例えばマウスなどでダブルクリックする)と、選択された画像データはメモリカードMCやハードディスクから読み出され、コンピュータ20のモニタ25に表示するため、RGB(各8ビット)の形式で、コンピュータ20内部の表示用メモリ(図示せず)などに展開される。展開された画像は、図3では、表示欄CC3に表示される。なお、こうして読み出された画像PHは、画面上部の「左回転」ボタンBB湾で左90度回転することができる。同様に「右回転」ボタンBB2では右90度の回転が可能である。「前処理」ボタンBB3を押すと、画像PHに対して、予め規定した前処理、例えば画像全体が暗い場合にこれを明るくするといった処理を行なうことができる。
【0020】
こうして読み出された画像データは、コンピュータ20の内部では、変換部110により、その表現形式が変換される。変換部110は、実施例では、RGB形式の画像データを、明度と色相が独立したパラメータとなっているYCrCbの形式に変換している。この変換は、周知の行列演算により容易に実現することができる。
【0021】
2値化実行部120は、YCrCbの形式で表された画像データを、画像の原点(例えば左上隅)から順次読み出し、2値化を行なう。この処理の詳細は後述するが、大まかに説明すれば、変換部110により変換された画像データのY値を、閾値Yrと比較して、閾値Yrより大きければ予め設定した上限値(Ymax )とし、閾値Yrより小さければ予め設定した下限値(Ymin )とすることになる。閾値Yrが小さな値に設定されれば画像は白っぽくなり影の範囲は狭くなり、大きな値に設定されれば画像は黒っぽくり影の範囲は広くなる。この2値化実行部120には、閾値設定部125が付属しており、2値化に用いる閾値Yrを変更することができる。この例では、閾値Yrのデフォルト値は72であり、これを最小値48から最大値108までの間で可変することができる。なお、明度Yについての2値化を行なった後は、明度Yhと表記する。画像再現部130は、画像データ(YCrCb)について、明度に関して2値化した後の画像データ(YhCrCb)をRGBの形式に逆変換し、これをモニタ25に表示する。
【0022】
メモリカードMC内に保存され、選択された画像に対しては、上述した明度の2値化の処理の他に、もう一つ、エッジの抽出処理が行なわれる。即ち、エッジ抽出部140は、まず画像データに含まれるノイズの除去を行ない、ノイズを除去した後のデータに含まれるエッジを抽出する。エッジの抽出では、エッジではないと判定した画素については元の画像の画像データをそのまま用い、エッジと判定した場合には、その画素のデータを黒に設定している。この結果、エッジと判定された画素は黒色に設定され、輪郭線として以後の処理では扱われる。ノイズ除去とエッジ抽出の手法については、後でまとめて詳述する。なお、エッジ抽出部140には、各種の指定を行なう指定部145が付属している。指定部145では、ノイズの除去に際してのノイズ除去の程度を指定と輪郭線の多寡の指定とを行なうことができる。
【0023】
こうしてエッジ抽出により輪郭線が形成された画像と、先に再現しておいた2値化画像とを重ね合わせるのが、画像形成部150である。この画像形成部150は、画像再現部130の出力とエッジ抽出部140の出力とを比べ、輪郭線に該当していればその画素を黒に設定し、輪郭線に該当していなければ画像再現部130の画像データをその画素のデータとして採用するのである。
【0024】
以上簡単に説明したように、この画像処理装置では、元の画像データから、明度の2値化とエッジの抽出とを行ない、両者から処理後の画像を形成している。かかる処理を行なうことにより、写真画像からイラスト化した画像を得ることができる。図3に示した画面で、左側の「イラスト化」のボタンBL2をクリックすると、上記のイラスト化の処理が行なわれ、図4に示すように、イラスト化された画像が、欄CL1に表示される。これらの処理は、予め設定した閾値Yrなどを用いて一律に行なわれるので、得られた画像が所望のものでない場合を想定し、既に説明した閾値設定部125や指定部145などが付属している。同様に画像形成部150の設定を変更する設定変更部155も設けられている。これらの閾値設定部125や指定部145、あるいは設定変更部155は、図4に示したように、実際には、イラスト化した画像を表示する欄CL3の隣に表示された5つのスライドバーSL1ないしSL5として構成されている。
【0025】
上部の3つのスライドバーSL1ないしSL3は、イラスト化された画像の色の調整に関するものであり、一番上のスライドバーSL1は、影の範囲を設定する閾値設定部125に相当している。このスライドバーSL1のスライダを移動することで、影(イラスト化された画像で黒い部分)の範囲を調整することができる。スライダを「狭い」の方に移動すると黒い部分が減り、「広い」の側に移動すると黒い部分か増える。こうしたスライダの移動は、他のスライドバーSL2ないしSL5も同様だが、直ちに欄CL1の画像に反映される。第2のスライドバーSL2は、イラスト化された画像の明るさを設定するものであり、第3のスライドバーSL3は、イラスト化された画像の鮮やかさ(彩度)を設定するものである。これらは、設定変更部155に相当している。
【0026】
下部の2つのスライドバーSL4,SL5は、輪郭線とノイズの調整に関するものであり、指定部145に相当している。スライドバーSL4は、輪郭線の多さを設定するものである。スライダを「少ない」の側に移動すると、イラストにおける輪郭線の数は減少する。他方、スライダを「多い」の側に移動すると、イラストにおける輪郭線の数を増加する。また、スライドバーSL5は、ノイズ除去の強さを設定するものであり、イラスト化された画像に残る細かな黒い点(ノイズ)の量を調整する。
【0027】
次に2値化実行部120などにおける処理の詳細について説明する。図5は、2値化の処理の概要を示すフローチャートである。図示するように、2値化の処理を行なう2値化実行部120では、まず、閾値Yrの設定を行なう(ステップS200)。閾値Yrは、画像処理としては、影の範囲を設定するものであり、使用者の側からは、図4に示したスライドバーSL1のスライダを操作することに相当する。この例では、Yrのデフォルト値は72であり、最小値(狭い)は48、最大値(広い)は108である。
【0028】
閾値Yrの設定を行なった後、写真画像について原点から順次各画素の画像データを読み込む(ステップS210)。次にその画素のY値が、設定された閾値Yrより大きいか否かの判断を行ない(ステップS220)、閾値Yrより大きければY値を上限値Ymax (本実施例では値255)に設定し(ステップS230)、閾値Yr以下であればY値を下限値Ymin (本実施例では値0)に設定する処理を行なう(ステップS240)。設定後のY値はYhとして表す。
【0029】
以上の処理の後、総ての画素について処理を終了したかを判断し(ステップS250)、処理が終了していなければ、着目する画素を一つ進めて(ステップS260)、ステップS210から上述した処理を繰り返す。総ての画素についての処理が完了すれば、得られた画像データ(YhCrCb)を、表示用のRGBの形式のデータに変換し(ステップS270)、その後、「END」に抜けて処理を終了する。以上の処理の結果、元の画像データに対して、明度Yのみ2値化した画像データ(YhCrCb)が得られる。
【0030】
図6は、スライドバーSL2よる画像の明るさの変更処理を示すフローチャートである。この処理は、スライドバーSL2により設定された明るさの補正値Cを読み込み(ステップS300)、この補正値を用いて、2値化された後のYh値を、補正量C分だけ補正するものである。補正量Cは、−32〜+32の値を取ることができ、スライダが「暗い」側に設定されていれば−32、「明るい」に設定されていれば+32となっている。この補正量Cを用いて、総ての画素の画像データ(YhCrCb)を補正する処理を行ない(ステップS310)、処理を終了する。なお、このフローチャートで示された処理は、実際には、スライドバーSL2のスライダが移動された時にのみ実行される。補正量Cが0の場合には元の画像は補正されない。
【0031】
次に彩度の変更処理について説明する。イラスト化された画像の彩度は、図4に示したスライドバーSL3のスライダを移動することにより補正される。この処理は、2値化の処理によりRGBのデータに変換された後の画像データ(RGB)に対して行なわれる。彩度の補正処理を図7のフローチャートに示した。彩度補正用のスライドバーSL3のスライダが変更されると、図7に示した処理が起動され、まず彩度の補正値kを読み出す(ステップS350)。次に、元の画像データ(RGB)を、一旦HSV(色相,彩度,明度)の形式の変換し(ステップS360)、この彩度値Sに係数kを乗算する処理を行なう(ステップS370)。スライドバーSL3により設定される係数kの範囲は、実施例では、0.25〜4.0とした。こうした彩度の補正を、すべての画素について行なった後、今度はHSV形式の画像データを、RGB形式に逆変換し(ステップS380)、処理を終了する。彩度の補正も明るさ補正と同様、スライドバーSL3のスライダを移動すると、その都度直ちに実施され、表示欄CL1に表示された画像の彩度が変更される。
【0032】
次に、エッジ抽出部140が行なうエッジ抽出の処理と指定部145の指定を受けて調整される輪郭線の多寡の変更について説明する。この処理は、図8に示したフローチャートに従って行なわれる。この処理が開始されると、まず指定部145による閾値Bの設定を行なう(ステップS400)。実際には、この指定は、図4に示したスライドバーSL4により行なわれる。エッジであるか否かの判断は、着目している画素の色と周りの画素の平均的な色との差が閾値B以上であるところをエッジと判定することで行なっており、その判断のための閾値Bは、本実施例では、デフォルトが値2、最小が値0、最大が値4である。即ち、図4に示したスライドバーSL4のスライダを「少ない」の側に持っていくと、閾値Bは値4の側に設定され、「多い」の側に持っていくと、閾値Bは値0の側に設定される。なお、各色について8ビットの画像データにより表現されている画像では、着目してる画素の画像データと、周辺の画素の平均値との差は、理論上は0から255まで取りうるが、写真などの自然画像では、そうした大きなデータの変化のみでエッジを形成していることはなく、0ないし4程度の範囲で閾値を設定すれば、イラスト化を図ることができる。
【0033】
次に、着目している画素Pの画像データSを読み出す処理を行なう(ステップS410)。このとき画像データはRGBの形式で読み出される。次に、着目している画素の周辺8画素の画像データ(色)の平均値Savを計算する処理を行なう(ステップS420)。実際には平均値Savは、RGBの各色について平均値が求められる。続いて、着目している画素Pの画像データSと平均値Savとの差が閾値B以上であるか否かを判定する(ステップS430)。この判定は、RGBの各色についてすべて閾値B以上であるとき、|S−Sav|>Bと判断しても良いし、RGBについての差分の平均値で判断しても良い。
【0034】
着目している画素Pの画像データSと周辺8画素の画像データの平均値Savとの差が閾値B以上であると判断された場合には、その画素をエッジと反対する(ステップS440)。エッジと判定した場合には、その点の画像データを黒に設定する。ステップS430での判断が成り立たない場合には、エッジではなく背景と判断し、その画素の画像データをそのまま保持する。以上の処理は、着目した一つの画素に関するものであるが、実際には、2値化実行部120で2値化され、RGB形式に戻された画像データの総ての画素について行なわれる。
【0035】
以上の処理が実行されると、結局着目している画素が周辺の8画素の平均的な画像データから見て閾値B以上変化している画素について、これをエッジだと判定し、輪郭線として黒の点に変更する処理が実行されることになる。エッジであるか否かの判定は、明度だけによるのではなく、RGB形式の画像データを用いて、色ごとに比較しているので、明るさが同じでも色相が変化する点は、エッジとして抽出される。閾値Bが小さくなれば、変化の小さな箇所でも輪郭線として拾い出されることになるから、輪郭線の数は増える。
【0036】
次に、輪郭線の抽出処理と同時に行なわれるノイズ除去の処理について説明する。ノイズ除去は、輪郭線として抽出されたエッジのうち、孤立した点を除く処理に該当する。この処理の概要を図9に示した。図示するように、この処理が開始されると、まずノイズ除去のための閾値Tに、指定部145により指定された閾値Tpを設定する処理を行なう(ステップS500)。閾値Tpは、実際には、図4に示したスライドバーSL5により指定される。スライドバーSL5のスライダを左に持っていくほどノイズの除去は弱くなり、つまりノイズのように見える孤立した輪郭線が増え、スライダを右に持っていくほど、ノイズの除去は強くなり、つまり輪郭線の数は一般に増加する。このノイズ除去の強さを設定する閾値Tpは、8ビットのデータにより指定されるので、内部的には値0ないし255まで理論上は指定できるが、本実施例では、デフォルトで値16、最小で値0(ノイズ除去なし)、最大で値56まで設定可能となっている。
【0037】
閾値Tを設定した後、着目画素Pmnの画像データSを読み込み処理を行なう(ステップS510)。着目画素Pは二次元の座標(m, n)を使ってその位置を特定することができるので、ココでは、X方向の座標をm、Y方向の座標をnとして表している。次に変数Nを値1に、画像データの計算用変数Lを値0に、それぞれ初期化し(ステップS520)、画素Pmnの近傍8画素の一つとその画像データを比較して(色単位)、差ΔSを求める処理を行なう(ステップS530)。変数Nは、近傍の画素を指定するのに用いている。次に、この画像データの差ΔSが先に設定した閾値T以下か否かの判断を行なう(ステップS540)。ここで、差ΔSが閾値T以下であれば、着目している画素Pmnについての画像データLにその画素自身の画像データをSを加える処理を行なう(ステップS4ー550)。差ΔSが閾値Tより大きければ、計算用変数Lには何も加えない。
【0038】
次に、変数Nを値1だけインクリメントし(ステップS560)、変数Nが値8より大きくなったか否かについて判定を行なう(ステップS570)。変数Nが値8より多くなければ(値8以下であれば)、着目画素Pmnの周辺の総ての画素との比較が終わっていないとして、ステップS530の処理に戻り、上記の処理を繰り返す。一方、周辺の8画素との比較がすべて終わっていれば、ステップS480に移行して、着目している画素について累積してきた計算用データLを8で乗算して、その画素についてのデータを求める処理を行なう(ステップS580)。この処理は、実際には、既に説明した輪郭線の抽出処理の後に行なわれる。即ち、輪郭線として抽出された画素が、いくつかの方向について同様に輪郭線として抽出された画素と隣接していれば(ΔS≦T)、その画素の画像データSは高い値に保持され(ステップS580)、隣接する位置に輪郭線がないか、少ない場合には、その画素の画像データは小さな値に修正され、ノイズとして消去されることになる。
【0039】
以上説明した本実施例によれば、写真画像から、極めて簡単に、イラスト化の処理を行なって、イラスト的な画像を得ることができる。特に、本実施例では、画像データを一旦明度と色相とがパラメータとして分離されている画像データの形式に変換し、その明度を表しているパラメータYについて、所定の閾値Yrとの比較を行なうという極めて単純な手法で、適切にイラスト化された画像を得ることができる。閾値Yrについてのデフォルト値72(8ビットで画像を表現している場合)は、試行錯誤のなかなか見い出された値であり、多くの写真画像を、適切にイラスト化できる閾値である。また、一旦イラスト化した画像を欄CL1に表示しつつ、スライドバーSL1ないしSL5を用いて、影の部分の大きさ、明度補正、鮮やかさの補正、更には輪郭線の多寡やノイズ除去の強さなどを極めて容易に変更することができる。しかも、それらの変更の結果は直ちに欄CL1に表示された画像に反映され、画像処理の結果を確認することができる。
【0040】
欄CL1に表示された画像が適正だと判断した場合には、図4に示した「保存」ボタンBL3を操作して、イラスト化した後の画像を保存することができる。また、イラスト化した画像に文字やクリップアートなどを加えて、所望の画像に調整し、これを年賀状やカード、カレンダなどとして印刷するものとしても良い。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施例の画像処理装置は、画像処理方法や、画像処理方法を記録した記録媒体、画像処理方法を実現するプログラムとして具現化することもできる。また、イラスト化した画像に対して、更に種々のフィルタを用意し、例えば一旦イラスト化した画像を再度水彩風に修正したり、○○画家風にアレンジするといった処理を付加することも差し支えない。また、この画像処理を、年賀状作成ソフトといった特定のアプリケーションに組み込むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における画像処理装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】画像を選択する様子を示す説明図である。
【図4】イラスト化された画像に対して種々の設定を行なう様子を示す説明図である。
【図5】2値化の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】明るさ変更の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】彩度変更を行なう処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】輪郭線を抽出するための輪郭処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】ノイズ除去の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
20…コンピュータ
25…モニタ
30…プリンタ
40…カードリーダライタ
50…デジタルカメラ
100…画像データ読出部
110…変換部
120…2値化実行部
125…閾値設定部
130…画像再現部
140…エッジ抽出部
145…指定部
150…画像形成部
155…設定変更部
Claims (10)
- 写真画像を入力して、処理を行なう画像処理方法であって、
記録媒体に記録された写真画像の少なくとも一つを選択し、
該選択された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、
該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化し、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出し、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示する
画像処理方法。 - 請求項1記載の画像処理方法であって、
前記写真画像は、RGBにより表現された画像であり、
前記明度と色相が独立したパラメータによって表現された画像は、YCrCbによる画像である
画像処理方法。 - 請求項1記載の画像処理方法であって、
前記パラメータが8ビットで表現されており、
前記2値化のための閾値は、デフォルトで60ないし80の間の値である
画像処理方法。 - 請求項3記載の画像処理方法であって、
前記デフォルトの閾値は72前後の値であり、該閾値が40ないし110の範囲内で変更可能な
画像処理方法。 - 前記エッジが抽出された場合には、該エッジに対応する部位の画像を、輪郭線を示す色で表示する請求項1記載の画像処理方法。
- 前記イラスト化して表示される画像の明度および/または彩度を、所定範囲で変更する請求項1記載の画像処理方法。
- 写真画像を入力して、処理を行なう画像処理装置であって、記録媒体に記録された写真画像の少なくとも一つを選択する画像選択手段と、該選択された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する2値化手段と、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に、前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示するイラスト化手段と
を備えた画像処理装置。 - 写真画像に対して行なう画像処理をコンピュータにより実現させるためのプログラムであって、
記録媒体に記録された写真画像の少なくとも一つを選択する機能と、
該選択された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する機能と、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出する機能と、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示する機能と
を実現するプログラム。 - 請求項8記載のプログラムを記録した記録媒体。
- デジタルカメラにより撮像された写真画像に対して、一連の処理を行なった結果を出力する画像処理装置であって、
前記デジタルカメラにより撮像された写真画像の少なくとも一つを入力する画像入力手段と、
該入力された写真画像を、明度と色相とが独立したパラメータによって表現し、該明度を表すパラメータを、予め定めた閾値と比較して2値化する2値化手段と、
前記写真画像から、該画像に含まれるエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
該2値化されたパラメータと前記色相を表すパラメータとから再現された画像に、前記抽出されたエッジを重ねて表示することで、前記画像をイラスト化して表示するイラスト化手段と、
該イラスト化された画像の少なくとも一部を、画像を構成する他の画像や文字と共に所定の領域内に配置する画像配置配置手段と、
該配置された各画像や文字を、多色の画像を形成可能なプリンタに出力する出力手段と
を備えた画像処理装置。
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