JP2004099866A - 粘弾特性が向上されたカラギーナンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カラギーナン類を、気体または不活性溶剤中で、55〜150℃で加熱処理することによって粘弾特性が向上されたカラギーナンを製造する。加熱処理されたカラギーナンは吸熱エンタルピーが減少するという性質を有し、粘弾特性が向上される。好ましくは水分が50重量%以下のカラギーナン類を加熱処理し、好ましくは80〜130℃、より好ましくは100〜120℃で1分〜6時間加熱処理する。気体中の場合、好ましくは不活性ガス中で加熱処理する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性カラギーナンおよびその製造方法に関する。かかるカラギーナンは、主に食品分野で用いられるが、工業用分野として化粧品分野、医薬品分野、繊維処理分野、皮革処理分野等において増粘剤、安定剤、分散剤、添加剤等として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、カラギーナン類は水溶液中で粘弾特性を有し、食品をはじめとする様々な分野へ応用されている。カラギーナン類には、カッパーカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン等があり、カッパーカラギーナンは強いゲルを、イオタカラギーナンは弱いゲルを作り、ラムダカラギーナンはゲル化せずに増粘することを利用し、目的に応じ配合される。しかし、現在のカラギーナンは粘弾特性に関し、ユーザーのニーズを十分満足させるものではない。例えば、カッパーカラギーナンを用いれば、ある程度の強度のゲルを作ることができるが、そのゲル強度は十分でなく、イオタカラギーナンを用いれば、弱いゲルを作ることができるが、さらに弱いゲルを作るために希薄な溶液でゲル化させると不均一化するという問題がある。また、ラムダカラギーナンでは低い粘度しか得ることができないという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、粘弾特性が向上された変性カラギーナンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、カラギーナン類を加熱することによりカラギーナン類が変性し、粘弾特性等の物性が変化することを見出し、本発明を完成した。本発明で、変性カラギーナンとはカラギーナン類を主成分とし、加熱処理されたカラギーナン類を0.1重量%以上含有したカラギーナン類をいう。すなわち、本発明は、カラギーナン類を主成分とし、加熱処理されたカラギーナン類が0.1重量%以上、好ましくは10重量%〜100重量%であることを特徴とする変性カラギーナンに関する。また、加熱処理されたカッパーカラギーナンは、吸熱エンタルピーのピークが45〜65℃にあり、その値が0.7mJ/mg以下(カラギーナン類1mgあたり0.7ミリジュール)となるという性質を有し、加熱処理されたイオタカラギーナンは、吸熱エンタルピーのピークが125〜150℃にあり、その値が25mJ/mg以下(カラギーナン類1mgあたり25ミリジュール)となるという性質を有し、加熱処理されたラムダカラギーナンは、吸熱エンタルピーのピークが90〜110℃にあり、その値が10mJ/mg以下(カラギーナン類1mgあたり10ミリジュール)という性質を有する。これらの変性カラギーナンは一般には未変性カラギーナンに比べて、カッパーカラギーナンではゲル強度が高く、イオタカラギーナンではゲル強度が低く、また、ラムダカラギーナンでは粘度が高くなるという性質を有する。本発明の変性カラギーナンは、好ましくは、水分が50重量%以下のカラギーナンを、55〜150℃で加熱し、更に好ましくは100〜120℃で1分〜6時間加熱することによって得ることができる。また、加熱は気体中でも液体中でも行うことができる。気体中では不活性ガス中で行うのが好ましく、また、減圧下、加圧下で行うことができる。液体中ではカラギーナンを溶解しない不活性溶剤中にカラギーナンを分散させた状態で加熱することが好ましく、減圧下、加圧下で行うことができる。
【0004】
本発明は下記の態様を含むものである:
項1.カラギーナン類を、不活性溶剤中、55〜150℃で加熱処理することを特徴とする粘弾特性が向上されたカラギーナンの製造方法。
項2.カラギーナン類を、気体中または不活性溶剤中、80〜130℃で加熱処理することを特徴とする粘弾特性が向上されたカラギーナンの製造方法。
項3.加熱処理を100〜120℃で行う項1または2に記載の製造方法。
項4.加熱処理を減圧下で行う項2または3に記載の製造方法。
項5.加熱処理を不活性ガス中で行う項2または3に記載の製造方法。
項6.加熱処理を加圧下で行う項5に記載の製造方法。
項7.前記カラギーナン類が、水分が50重量%以下のものである項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
項8.カラギーナン類がカッパーカラギーナン、イオタカラギーナン、及びラムダカラギーナンからなる群より選ばれる1または2以上を主成分とする項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.前記カラギーナン類がカッパーカラギーナンであって、強いゲルをつくる特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項10.前記カラギーナン類がイオタカラギーナンであって、弱いゲルをつくる特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項11.前記カラギーナン類がラムダカラギーナンであって、増粘特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
項12.カラギーナン類を主成分とし、項1〜11のいずれか1項に記載する製造方法で得られるカラギーナンを10〜100重量%の割合で含む変性カラギーナンを、水溶性増粘ゲル化剤として用いる水溶性ゲルまたは水溶性粘性物の取得方法。
項13.前記カラギーナンが項9に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のカッパーカラギーナンを用いるよりも強いゲル強度をもつ水溶性ゲルの取得方法である、項12に記載の取得方法。
項14.前記カラギーナンが項10に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のイオタカラギーナンを用いるよりも弱いゲル強度をもつ水溶性ゲルの取得方法である、項12に記載の取得方法。
項15.前記カラギーナンが項11に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のラムダカラギーナンを用いるよりも高い粘度をもつ水溶性粘性物の取得方法である、項12に記載の取得方法。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。上述のごとく、本発明は、カラギーナン類を主成分とし、加熱処理されたカラギーナン類が0.1重量%以上、好ましくは10重量%〜100重量%であり、粘弾特性が向上された変性カラギーナンおよびその製造方法に関する。
【0006】
カラギーナンは、ライケン(lichen)等の紅藻類に代表される海藻から抽出される多糖類である。本発明において、カラギーナン類とは、カッパー、イオタ、ラムダ、ミュー、ニューのカラギーナンをいう。共通する構造は、主鎖がD−ガラクトースから構成されていて、交互にα(1→3)、β(1→4)で結合していることである。各タイプの構造上の違いは、硫酸基のついている位置と量、1−、4−結合で結合しているガラクトースに3,6アンヒドロ架橋結合があるかないかによって表される。例えば、カッパーカラギーナンは、(1→3)結合の4C1構造β−D−ガラクトース4硫酸と(1→4)結合の1C4構造3,6アンヒドロガラクトースから成り立っている。イオタカラギーナンは(1→3)結合の4C1構造β−D−ガラクトース4硫酸と(1→4)結合の1C4構造3,6アンヒドロガラクトースから成り立ち、3,6アンヒドロガラクトースのC−2の位置に硫酸基がある構造をしている。ラムダカラギーナンの主鎖は(1→3)結合の4C1構造β−D−ガラクトース2硫酸と(1→4)結合の4C1構造2,6−2硫酸α−D−ガラクトースから成り立っている。一般的なカラギーナンの製造方法としては、海藻を洗浄した後、熱湯に浸して抽出し、このとき抽出効率を高めるために海藻をアルカリを用いて砕き、さらに抽出液を濾過助剤等を使用してろ過し、アルコール類による沈殿を経て、そのアルコールを取り除き、乾燥、粉砕する方法などが知られている。一般にカッパー、イオタ、ラムダ等として市販されている各カラギーナンは各カラギーナンを主成分とした混合物であり、それぞれの成分の比率は原料の海藻の種類や採取された場所、季節によって変わってくる。
【0007】
本発明の変性カラギーナンを製造するのに使用する原料カラギーナンは、好ましくは水分、詳しくは乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱、以下別に定義する場合を除き、「乾燥減量」はこの条件下での乾燥減量をいうものとする)が50重量%以下、更に好ましくは20重量%以下のカラギーナンである。かかる原料カラギーナンとしては、市販の粉末状、顆粒状等のカラギーナンを用いることができる。原料カラギーナンの水分が50重量%より多いと、カラギーナンの品温が十分に上がらず、また加熱による変性を妨げるため、粘弾特性向上の効果が得にくい。
【0008】
本発明の変性カラギーナンを製造するために、かかる原料カラギーナンを加熱するが、加熱温度は55〜150℃、好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃で、加熱時間は1分以上、好ましくは1分〜24時間、さらに好ましくは1分〜6時間である。これらの条件中においても、高温側では比較的短時間加熱、低温側では比較的長時間加熱が好ましい。
【0009】
上記加熱は、気体中でも液体中でも行うことができる。気体中で行う場合、空気中等酸素の存在下で行うと着色する恐れがあるので、カラギーナンと反応しない不活性ガス中で行うのが好ましい。不活性ガスとしては窒素ガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、水蒸気等を挙げることができる。また、気体中での加熱は減圧下、加圧下でも行うことができる。加熱を減圧下で行うことによっても着色を回避できる。この場合の気体としては上記不活性ガスを用いることができるのは勿論であるが、減圧の程度によっては空気も着色を生じることなく用いることができる。減圧の程度は、特に制限ないが、200〜0.01mmHgが適当である。加熱を加圧下で行う場合は不活性ガス下が好ましく、圧力の制限は特に無く、容器の耐圧限度内で調整され、通常は1〜20atmでの実施が適当である。また、上記加熱における、容器、加熱手段は特に制限はないが、例えば、容器として通常のタンク、攪拌装置付きタンク、耐圧容器、乾燥装置などを用いることができる。加熱方法としては、タンクを電熱ヒーター、熱媒等で加熱する方法、加熱された不活性ガス、不活性溶媒を容器内に注入する方法がある。
【0010】
液体中で加熱を行う場合、カラギーナンを溶解しない不活性溶剤中にカラギーナンを分散させた状態で加熱する。液体中で加熱を行う場合も着色は起こらない。不活性溶剤としてはカラギーナンを溶解せず、カラギーナンと反応しないものであれば特に制限はない。不活性溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール等の炭素数1〜6のアルカノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルカンジオール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)等のエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル等の他、植物油脂、動物油脂、脂肪酸、脂肪酸とグリセリン等のモノ、ジ、トリエステル等を挙げることができる。また、不活性溶剤中での加熱減圧、加圧でも可能である。減圧下での加熱は、例えばエバポレーターでの加熱等が可能である。減圧の程度は、特に制限ないが、200〜0.01mmHgが適当である。加圧の場合は、例えば、実際の加熱温度が不活性溶媒の常圧沸点以上の場合、オートクレーブ等の耐圧容器に、不活性溶媒、カラギーナンを仕込み、容器を密閉加熱するか、容器を密閉する前に不活性ガスで加圧し、その後に加熱する手法を用いることができる。なお、加熱工程においては、着色防止のために、酸素濃度が少ないことが望ましい。その目的で、容器内の気体を不活性溶媒の蒸気、不活性ガスで置換するか等が好ましい。加熱系内の圧力は、特に制限はないが、実際は加熱温度における不活性溶媒の蒸気圧を中心に、容器の耐圧限度内で調整され、通常は1〜20atmでの実施が適当である。
【0011】
カラギーナンの抽出後は、カラギーナンが乾燥状態であれば上述の処理を行うことができる。加熱処理後に得られる変性カラギーナンの単離は、例えば加熱処理液を濾過し、ケーキを必要に応じエタノール等の低沸点溶剤で洗浄し、ついで真空乾燥することによって行うことができる。また、精製工程の最終段階である真空乾燥時に加熱することによっても、変性カラギーナンを得ることができる。
【0012】
本発明の変性カラギーナンに配合されるカラギーナン類は、全てが、加熱処理されている必要はなく、加熱処理されたカラギーナン類を含んでいれば粘弾特性向上の効果を得ることができる。この場合、加熱したカラギーナン類が0.1重量%以上、好ましくは10重量%以上配合されていることが必要である。0.1重量%以下の場合は粘弾特性の向上効果が少ない。
【0013】
上記方法によって製造される本発明の変性カラギーナンは、その水溶液の粘弾特性において従来のカラギーナンと異なる。すなわち、市販品を加熱処理して得られた本発明の変性カッパーカラギーナンと、市販品のカッパーカラギーナンの1重量%水溶液のゲル強度を比較したところ、本発明品は、従来品に比して1.3倍以上の機能アップがみられた。すなわち、105℃で15分加熱処理したカッパーカラギーナンを1重量%、90℃の温水に溶解させ、20℃に冷却させて作成したゲルのゲル強度は110g/cm2以上(レオメーター、品温20℃、円柱プランジャー10mmφ、テストスピード30cm/min、破断試験を行い破断強度をゲル強度とする。以下、別に定義する場合を除き、ゲル強度値はこの条件下でのものをいうとする)を示す。一方、加熱処理を施す前のカッパーカラギーナンを同様に配合して試作したゲルの場合、そのゲル強度は77g/cm2を示しており、明らかに本発明の効果が実証されている。市販品を加熱処理して得られた本発明の変性イオタカラギーナンと、市販品のイオタカラギーナンの1重量%水溶液のゲル強度を比較したところ、本発明品は、従来品に比して40%以上のゲル強度の低下を引き起こすことができた。すなわち、105℃で3時間加熱処理したイオタカラギーナンを1重量%、90℃の温水に溶解させ、20℃に冷却させて作成したゲルのゲル強度は14g/cm2を示す。一方、加熱処理を施す前のイオタカラギーナンを同様に配合して試作したゲルの場合、そのゲル強度は24g/cm2を示しており、明らかに本発明の効果が実証されている。市販品を加熱処理して得られた本発明の変性ラムダカラギーナンと、市販品のラムダカラギーナンの1重量%水溶液の粘度を比較したところ、本発明品は、従来品に比して1.3倍以上の粘度向上がみられた。すなわち、105℃で1時間加熱処理したラムダカラギーナンを1重量%、90℃の温水に溶解させ、20℃に冷却させて作成した溶液の粘度は130mPa・s(mPa・s=ミリパスカル×秒)(B型粘度計、6rpm、5℃。以下別に定義する場合を除き、粘度値はこの条件下でのものをいうものとする。なお、1mPa・s=1cP(センチポアズ)である)以上の粘度を示す。一方、加熱処理を施す前のラムダカラギーナンを同様に配合して試作した水溶液の場合、その粘度は100mPa・s程度であるので、本発明の硬化が実証されている。その他の物性については、従来のカラギーナンと比し、特徴的変化はないと考えられる。例えば、NMRスペクトル、元素分析およびIRスペクトル(KBr法およびFT−IR法)は、原料カラギーナンと比べ実質的変化はない。
【0014】
ここで、粘弾特性の向上を目的とすることから、更に強いゲル強度を得たい場合にはカッパーカラギーナンに加熱処理されたカッパーカラギーナンを配合し、更に弱いゲル強度を得たい場合はイオタカラギーナンに加熱処理されたイオタカラギーナンを配合し、更に粘度を増したい場合にはラムダカラギーナンに加熱処理されたラムダカラギーナンを配合するのが通常である。また、カラギーナンが混合品の場合、主成分のカラギーナンの粘弾特性向上と同様の粘弾特性の向上を示す。2種以上を主成分とする場合は、その主成分に組み合わせにより全体的な粘弾特性が決まる。
【0015】
加熱処理されたカラギーナン類について、その粉末をDSC(示差走査熱量計、測定範囲−40〜300℃、昇温速度5℃/min)で測定したときにその特徴的な性質を見ることができる。すなわち、カッパーカラギーナンにおいて、未加熱品は吸熱エンタルピーのピークが45〜65℃、120〜140℃にあり、その値はそれぞれ0.8〜2mJ/mg、80〜100mJ/mgであるが、本発明の加熱カッパーカラギーナンは45〜65℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が0.7mJ/mg以下となるという性質を有する。イオタカラギーナンにおいて、未加熱品は吸熱エンタルピーのピークが125〜150℃にあり、その値が26〜40mJ/mgであるが、本発明の加熱イオタカラギーナンは125〜150℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が25mJ/mg以下となるという性質を有する。ラムダカラギーナンにおいて、未加熱品は90〜110℃、130〜150℃に吸熱エンタルピーのピークがあり、その値がそれぞれ11〜16mJ/mg、11〜20mJ/mgであるが、本発明の加熱ラムダカラギーナンは90〜110℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が10mJ/mg以下となるという性質を有する。
【0016】
本発明の変性カラギーナンは従来品と同様な用途に用いることができる。このとき変性カッパーカラギーナンを用いることで、従来品よりも少ない用量で従来と同等以上のゲルを得ることが可能となり、また、従来にない高いゲル強度を持つゲルを得ることができる。変性イオタカラギーナンを用いることで、従来品よりもゲル強度の弱い物性を得ることができるというメリットがある。このとき、イオタカラギーナンを十分添加することができるので均一なゲルを得ることができる。一方、変性ラムダカラギーナンを用いることで、従来品よりも少ない用量で従来と同等以上の粘性物を得ることが可能となり、また、従来にない高い粘度を持つ粘性物を得ることもできる。かかる本発明の変性カラギーナンは、単独でまたは他の水溶性ゲル化剤や乳化剤と組み合わせて使用することにより、安定なゲルや乳化物を得ることができる。したがって、本発明の変性カラギーナンは、食品、化粧品、医薬品等の分野を始め、石油産業を含む一般工業分野で水溶性増粘剤として用いることができる。本発明を以下実施例、比較例および参考例によって具体的に説明するが、これらは本発明を例証するためのものであって、本発明を何等限定するものではない。
【0017】
【実施例】
比較例1
市販のカラギーナンとして、三栄源エフエフアイ(株)より入手したカラギーナン(商品名:「CSK−1」「CSI−1」「CSL−1」)を1重量部秤量し、80〜90℃に加熱した温水99重量部へ溶解させた。室温まで冷却し、翌日のゲル強度もしくは粘度を測定した。ゲル強度はレオメーター(FUDOH製NRM−2002J、20℃、円柱プランジャー10mmφ、テストスピード30cm/min)を用い破断試験を行い破断強度をゲル強度とした。粘度はB型粘度計((株)東京計器製、25℃、6rpm、ローターNo.3または4)を用い測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で、▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例1
比較例1のカラギーナン粉末10重量部を1,3−ブチレングリコール30重量部に分散させ、加熱した。カラギーナン分散液をそれぞれ濾過し、ケーキをエタノール40重量部で洗浄した。真空乾燥に12時間付してエタノールを除去して変性カラギーナンを得た(試料No.4〜12)。それぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の条件および結果については、表2〜4に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
実施例2
比較例1のカラギーナン粉末10重量部を大豆油20重量部に分散させ、加熱した。カラギーナン分散液をそれぞれ濾過し、ケーキをヘキサン40重量部で洗浄した。真空乾燥に12時間付してヘキサンを除去して変性カラギーナンを得た(試料No.13〜15)。それぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の条件および結果については、表5に示す。
【0024】
【表5】
【0025】
実施例3
比較例1のカラギーナン粉末10重量部を恒温槽にて加熱し、変性カラギーナンを得た(試料No.16〜18)。それぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の条件および結果については、表6に示す。
【0026】
【表6】
【0027】
実施例4
カッパーカラギーナン粉末を室温減圧にて脱水、もしくは80%湿度条件下で吸湿させた。オートクレーブに当該サンプルを入れ、容器中の気体を不活性ガスで置換した後に、圧力を調整し、125℃で30分加熱した(試料No.19〜22)。得られた変性カラギーナンについてそれぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の結果については、表7に示す。
【0028】
【表7】
【0029】
実施例5
未加熱品の試料1、2、3と、加熱品の試料6、15,17を用い、表8、9に示す比率で試料を混ぜ、変性カラギーナンを作成した。各試料を1重量部秤量し、得られた変性カラギーナンをについて、それぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の結果を表8、9に示す。
【0030】
【表8】
【0031】
【表9】
【0032】
実施例6
未加熱品の試料1、2、3を用い、表10のように試料を混ぜた後、加熱処理を行い、変性カラギーナンを作成した。得られた変性カラギーナン20重量部を不活性溶媒であるメタノール、イソプロパノールもしくはピリジン200重量部に分散させ、オートクレーブに入れ、容器を密閉して130℃で30分加熱した後に、ろ過を行い、室温にて減圧乾燥を行った。それぞれの1.0重量%水溶液を比較例1と同様に調製し、ゲル強度もしくは粘度を測定した。さらに、DSC(セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220C)にて、−40〜300℃(昇温、5℃/min)で▲1▼45〜65℃、▲2▼90〜110℃、▲3▼120〜150℃の吸熱エンタルピーを測定した。この実施例の結果については、表10に示す。
【0033】
【表10】
【0034】
比較例1および実施例1〜6から明らかなように、本発明の変性カラギーナンは、通常の未変性カラギーナンに比べて粘弾特性が向上されている。詳しくは、カッパーカラギーナンはゲル強度が更に強くなっており、イオタカラギーナンはゲル強度が更に弱くなっており、ラムダカラギーナンは粘度が更に増している。混合品の場合は主成分の粘弾特性向上と同し傾向の粘弾特性向上が見られ、組み合わせによっては相乗効果による更なる粘弾特性の向上が見られる。混合が、加熱処理前でも加熱処理あとでも上記と同様に粘弾特性の向上が見られる。また、吸熱エンタルピーに関しては、加熱処理されたカッパーカラギーナンは、40〜70℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が0.7mJ/mg以下となるという性質を有し、加熱処理されたイオタカラギーナンは、125〜150℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が25mJ/mg以下となるという性質を有し、加熱処理されたラムダカラギーナンは、90〜110℃にピークを持つ吸熱エンタルピーの値が10mJ/mg以下であるという性質を有する。不活性気体下、不活性溶液中の場合も同様の結果であった。また、加圧下、減圧下でもそれぞれ同様の結果であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の変性カラギーナンは従来のカラギーナンにないゲル特性もしくは粘度特性を有する極めて優れた水溶性増粘ゲル化剤であり、従来にない水溶性ゲルや水溶性粘性物を得ることができ、食品などにおいて好みの粘弾特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常のカッパーカラギーナンのDSCチャートを示す。
【図2】加熱処理したカッパーカラギーナンのDSCチャートを示す。
【図3】常のイオタカラギーナンのDSCチャートを示す。
【図4】加熱処理したイオタカラギーナンのDSCチャートを示す。
【図5】通常のラムダカラギーナンのDSCチャートを示す。
【図6】加熱処理したラムダカラギーナンのDSCチャートを示す。
Claims (12)
- カラギーナン類を、不活性溶剤中、55〜150℃で加熱処理することを特徴とする粘弾特性が向上されたカラギーナンの製造方法。
- カラギーナン類を、気体中または不活性溶剤中、80〜130℃で加熱処理することを特徴とする粘弾特性が向上されたカラギーナンの製造方法。
- 加熱処理を100〜120℃で行う請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記カラギーナン類が、水分が50重量%以下のものである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- カラギーナン類がカッパーカラギーナン、イオタカラギーナン、及びラムダカラギーナンからなる群より選ばれる1または2以上を主成分とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記カラギーナン類がカッパーカラギーナンであって、強いゲルをつくる特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記カラギーナン類がイオタカラギーナンであって、弱いゲルをつくる特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記カラギーナン類がラムダカラギーナンであって、増粘特性が向上されたカラギーナンを製造する方法である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- カラギーナン類を主成分とし、請求項1〜8のいずれか1項に記載する製造方法で得られるカラギーナンを10〜100重量%の割合で含む変性カラギーナンを、水溶性増粘ゲル化剤として用いる水溶性ゲルまたは水溶性粘性物の取得方法。
- 前記カラギーナンが請求項6に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のカッパーカラギーナンを用いるよりも強いゲル強度をもつ水溶性ゲルの取得方法である、請求項9に記載の取得方法。
- 前記カラギーナンが請求項7に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のイオタカラギーナンを用いるよりも弱いゲル強度をもつ水溶性ゲルの取得方法である、請求項9に記載の取得方法。
- 前記カラギーナンが請求項8に記載する製造方法で得られるカラギーナンであって、未加熱のラムダカラギーナンを用いるよりも高い粘度をもつ水溶性粘性物の取得方法である、請求項9に記載の取得方法。
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