JP2004099626A - 親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料 - Google Patents

親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料 Download PDF

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Abstract

【課題】親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料を提供する。製紙や塗工、化学および医薬品の分野で利用される。
【解決手段】親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物が、鉱物結晶の表面または内部に、物理的または化学的に結合した変成鉱物結晶。好ましくは、親水性有機化合物が、ヘミセルロース、溶解セルロール、デキストリンから選ばれる1種であり、鉱物結晶が、炭酸カルシウムである。また、その製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙や不織布などの親水性な化合物を主とする材料にある物性を付与するため、操業条件を改良するため、製造コストを下げるためなどに、填料、一般的には鉱物填料を添加したり、塗布したりすることが必要な製品の分野、また、製造するに当たって、鉱物担体の表面を修飾することが好ましいとされる高機能材料、医薬品の分野、における親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、説明の都合上炭酸カルシウムの場合を主に述べていくが、本特許は鉱物結晶が炭酸カルシウムに限定されるものではなく、これと問題点や本特許の手法を用いることによる利点が似たようなものすべてに適応するものである。
【0003】
鉱物結晶は、顔料、填料、研磨剤などに幅広く用いられている。
【0004】
特に炭酸カルシウムは、ゴム、プラスチック、ペイント、シーリング剤、製紙、肥料、歯磨き粉、医薬品、食品添加物、化粧品などを製造する上で欠くことのできない重要な化合物である。
【0005】
鉱物結晶を製紙において、紙の填料として用いる場合、鉱物の種類にもよるが、紙自体の白色度や不透明度の上昇、印刷適正の向上、パルプ繊維の置き換えによるコストダウン効果、寸法安定性、形状安定性、密度上昇など紙の重要な基本物性を向上させる効果がある。
【0006】
鉱物結晶を塗工紙の顔料として用いる場合は、鉱物の種類にもよるが、印刷適正の付与に加え、白色度上昇、光沢向上効果、逆につや消し効果など、白紙としての物性にも大きく関与する。
【0007】
鉱物結晶は基本的に水にほとんど溶けず、また親水性化合物との親和性も高くない。そのために、こういった化合物が主原料となる材料に添加する場合、製造方法によってはその残存率が問題となる場合がある。また、そういった材料中で不均一に分布してしまうことも多い。
【0008】
例えば、抄紙工程では、その歩留まりは最も良いものでも60%程度に留まっている。また、紙中に高添加量にしようとすればするほど、歩留まりは悪くなっていき、30%を越えて原紙中に配合させることは技術的に難しい。高速抄紙の場合、この数値はさらに下がる。このため上述した性質を高度に発現させた紙の製造は不可能であった。
【0009】
これらを改善するための試みとして、定着剤などの助剤を加える方法があるが、十分な効果を発揮することはできず、またコストも上がってしまっていた。抄紙の機械面やパルプなどのソフト面からの対応方法もあるが、いずれも本特許で要求するような高いレベルでの解決は難しく、また他の物性への影響があるため好ましい対策方法ではない。
【0010】
特開平6ー158585号公報では、繊維と鉱物結晶との複合体を製造して問題の解決を試みている。しかしながら、この方法では攪拌を厳しくすると繊維と鉱物結晶が離れてしまったり、1粒子団体自体が大きいため、歩留まりが思ったより改善しなかったり、面質を悪くしたりと言った副作用をもたらしている。
【0011】
一方、鉱物結晶を塗工紙の顔料として用いる場合、粒子自体の原紙との相互作用の低さから塗工時に紙の内部まで深く入り込んでしまう。表面に物性を満足させるために十分な量を残すためには、より多くの量を塗工せざるを得ない。
【0012】
これを解決するための手段としては、原紙のサイズを強くする方法、塗工液の保水性を大きくする方法、顔料の粒子径を大きくする方法などが存在するが、これらも本特許で要求するような大きな効果を発現することは不可能であった。
【0013】
加えて、鉱物結晶には物理/化学修飾することのできる官能基が表面に存在しないため、高機能材料の担体として用いることは基本的に難しく、こういった応用例は少ない。解決策として高価な高分子プラスチックなどを用いなければならなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決することにあり、鉱物結晶の物性を向上させるだけでなく、変成鉱物結晶を添加すべき材料との親和性を向上させ、導入されたり、表面に留まる量を増加させることであり、さらには、例えば、高機能材料の担体として、従来にはなかった新規な高機能材料に応用することをも目的とする親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料を発明するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料は、親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物が、鉱物結晶の表面または内部に、物理的または化学的に結合した変成鉱物結晶である。好ましくは親水性有機化合物が、ヘミセルロース、溶解セルロール、デキストリンから選ばれる1種である変成鉱物結晶であって、鉱物結晶が、炭酸カルシウムである変成鉱物結晶である。
【0017】
本発明において、水または水を主成分とする溶媒を低速攪拌しつつ、親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物を加えて完全に溶解させて後、この水溶液中で鉱物結晶を析出させて製造することを特徴とする変成鉱物結晶の製造方法である。
【0018】
また、本発明において、上記製造方法における工程の際、好ましくは水または水を主成分とする溶媒を低速攪拌しつつ、該溶媒中に生石灰を加えて生石灰と水とを反応させ、親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物を加えて完全に溶解させて後、得られた混合液を高速攪拌しながら二酸化炭素を注入し、炭酸カルシウムの結晶を析出させて製造することを特徴とする変成鉱物結晶の製造方法である。この工程においてさらに好ましくは二酸化炭素を注入する際に、ボイラーの燃焼により発生した二酸化炭素を含む混合気体を用いる。
【0019】
本発明においては、このような新規な変成鉱物結晶を紙の抄造に利用し、さらには塗工紙の製造へ応用するものである。
【0020】
さらには、このような新規な変成鉱物結晶を高機能材料の製造や医薬品の製造へ応用するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料について詳しく述べる。
【0022】
ここで言う親水性有機化合物とは、ヘミセルロースや溶解セルロース、デキストリンなどのように製紙工程中において廃棄物として焼却処分されているものを用いることがコストや環境面から好ましい。しかし、この効果はこれに限定されるものではなく、澱粉、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、などの天然多糖類およびそのオリゴマーさらには酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉などのこれら天然多糖類の変性体、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリヌクレオチドやその変性体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの変性セルロースや、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、シリル変性ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、ポリアミン、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子、オリゴマーなどを指す。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0023】
上記に代表的で安価に手に入るものの例を挙げたが、本発明における親水性有機化合物とはこれらに限定されるものではない。これらの精製方法、製造方法としては、各種公知の方法をそのまま採用することができる。
【0024】
また、上記の鉱物結晶とは、すべての金属元素からなる化合物の中で水中で合成可能なものを指す。代表的なものには、酸化鉄、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸鉛、水酸化鉛、クロム酸鉛、硫酸鉛、酸化コバルト、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、酸化銀、塩化銀、塩化鉛、などが挙げられるが、中でも炭酸カルシウムは資源が豊富でリサイクルも可能であり、コスト的にも物性的にも効果が高い。もちろん、これらを適宜組み合わせても良い。ここで、代表的な物を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
親水性有機化合物が存在する系で炭酸カルシウムなどの鉱物結晶を合成すると、物理的および化学的な力によりその内部にこれらの分子が取り込まれる。取り込まれた分子の一部は表面に残り、結果として、鉱物結晶の表面に親水的官能基が多数存在した変成鉱物結晶ができる。
【0026】
例えば、水を主体とする溶媒を低速攪拌しながら生石灰を加える。生石灰と水との反応が終了した後、親水性有機化合物を加え完全に溶解させる。この際、100℃以下の温度をかけても良い。混合液の有機化合物濃度が0.5〜50質量%で消石灰の濃度が10質量%以下となるようにし、反応温度は4〜60℃に保ちながら高速攪拌しながら二酸化炭素をを注入し炭酸カルシウムの結晶を析出させることによって上述のような変成鉱物結晶を製造することができる。ここで、低速攪拌としては、500rpm以下、また、高速攪拌としては、3000rpm以上である。
【0027】
親水性有機化合物の中で、反応前の金属化合物によって分解反応などを起こすものを使用する場合は別途工夫が必要となる。
【0028】
反応液中には、その他の添加剤として、形状制御剤、結合促進剤、pH調節剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機導電剤、有機導電剤、などを適宜配合することも勿論可能である。
【0029】
親水性有機化合物の種類によっては攪拌をしないほうが効果的な場合もある。逆に超音波をかけながら反応させる場合もある。
【0030】
鉱物結晶の表面に存在することになるこれら親水性有機化合物によって、鉱物結晶は必要以上に結晶を成長せず、適当な大きさの粒子を長期にわたって安定的に存在させることが可能となる。また、従来必要であった分散剤などの添加剤を減らすことができる。ここで言う長期にわたる安定性とは、腐敗などが起こらなかった場合、数ヶ月放置しても製造直後と分散状態や結晶状態が変わらないことを意味する。
【0031】
最初に加えておく親水性有機化合物をコントロールすることにより、粒径、結晶型などをコントロールすることもできる。さらには従来の単なる鉱物結晶では考えられなかった保水性効果も持ち合わせる。
【0032】
できあがった変成鉱物結晶は表面に親水基が存在することにより、例えば、紙に添加したときにセルロースとの相互作用がよく働き、抄紙工程における歩留まりが単なる鉱物結晶に比べて格段に向上する。また、抄紙工程での厚さ方向での移動も小さいため、紙中で均一に分布し、表裏差の小さな紙を抄造することができる。
【0033】
原紙内にすき込むことのできる量も大幅に向上する。さらには、従来の鉱物結晶を大量に配合することによって失われていた物性、すなわち剛直度や紙の強度などの低下度合いも小さくて済む。
【0034】
塗工紙の顔料として用いる場合には、原紙の中に入り込まず、よく表面に留まる。そのため、従来と同程度の品質を得るために必要な塗工量を少なくすることができる。微塗工紙や軽塗工紙を作成する上で品質、コストとして有効に働く。塗工量が多いものに対して応用するときは下塗り液に用いることが効果的である。
【0035】
加えて、変成鉱物結晶同士の相互作用によって、バインダ要求量が少なくなり、コストを抑えることができる。また、ピック強度、耐ブリスター性、吸水性などへの向上にも効果がある。
【0036】
塗工液の液性的には、若干の粘度上昇はあるが問題となるレベルではなく、保水性の付与などの効果がある。
【0037】
表面に存在する官能基は当然物理/化学修飾することが可能である。このため、安価な担体として、高機能材料や医薬品への応用が期待できる。例えば、高機能材料としては、アフィニティークロマトグラフィー、有機化合物やタンパク質の固層合成の担体、表面を高級アルキル処理しフィルター中に抄き込むことによるメンブレンフィルターなどが考えられ、医薬品材料としては精密分子修飾などによってDNA担持体、透析膜の填料、胃腸薬、ドラッグデリバリーシステムへの応用などが考えられる。
【0038】
上記の記述はほんの一例であり、本発明の用途はこれらに限られるものではない。
【0039】
本発明では、抄造原紙を抄造する際に使用される木材パルプとしては、NBKP、LBKP、NBSP、LBSP、GP、TMPなどの他に古紙パルプが挙げられる。使用に当たっては、それらを数種類目的に応じた比率で混合して用いる。
【0040】
なお、ここで言う古紙パルプの原料とは、(財)古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。さらに具体例としては、情報関連記録用紙である非塗工コンピュータ記録用紙、感熱紙、感圧紙などのプリンター記録用紙、およびPPC記録用紙などのOA古紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙などの塗工紙、あるいは上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートンなどの非塗工紙などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが使用されるが、印字、複写、印刷、非印刷を問わず特に限定されるものではない。
【0041】
本発明の変成鉱物結晶を原紙を抄造に応用する際に使用されるその他の填料としては、特に制限されず、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどの公知の炭酸カルシウムやタルク、クレー、カオリンなどの無機填料および有機填料が使用できる。勿論、炭酸カルシウムと各種填料を数種類、組み合わせて使用することも可能である。
【0042】
原紙を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、特に制限されず、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、中性ロジンサイズ剤、石油樹脂系サイズ剤などが使用できる。
【0043】
紙料中には、この他に、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性、あるいは両性の紙力向上剤などの抄紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。例えば、各種澱粉、およびポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアミド・ポリアミン、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂の内の1種あるいは2種以上が適宜組み合わされて使用される。
【0044】
なお、紙料中には、染料、pH調節剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの抄紙用内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。
【0045】
原紙の抄紙方法において、抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を適宜使用できる。
【0046】
本発明の変成鉱物結晶を塗工紙に応用する際、塗工層を塗工する方法は特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種メタードフィルムトランスファー、エアーナイフ、ロッド、ブレード、ダイレクトファウンテンなどの各方式を適宜使用する。塗工層は、一層に限定されるものではなく、必要に応じて表裏ともに何層も設けてもよい。
【0047】
本発明の変成鉱物結晶を塗工紙に応用する際、塗工液に用いられる変成鉱物結晶以外の顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトホンなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0048】
塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、エステル化澱紛、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉が挙げられる。また、ガゼインやCMCなどでこれを代用しても良い。
【0049】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。ただし、本発明においては変成鉱物結晶によって既に保水性が高く保てるので、これらの配合料を減らすことができる。
【0050】
塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレンーブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0051】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をアニオン化したものが好適に用いられる。
【0052】
変成鉱物結晶用いた塗工紙作成時に用いられる原紙としては、LBKP,NBKPなどの化学パルプ、GP、PGWRMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、本発明の変成鉱物結晶、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0053】
変成鉱物結晶用いた塗工紙作成時に用いられる原紙としては、ノーサイズプレス原紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0054】
一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。
【0055】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明の効果を詳細に説明するが、これによって本発明が何ら限定されるものではない。なお、実施例中の%は質量%を示す。
【0056】
実施例1
まずは変成鉱物結晶の合成および帰属の実施例を示す。
【0057】
水1.31kg中に生石灰91.7g(1.63mol)を少量ずつ500rpmで攪拌させながら溶解させた。デカントで粒径の大きい凝集物を除いたあと、ヘミセルロースと溶解セルロースの混合物65.5g(0.404mol残基)を加えた。さらに水酸化ナトリウムを加え、pHを13.5とした。形状制御剤および結合促進剤を各4.84mmol加え、この混合物を回転数3000rpmにて高速攪拌しながら二酸化炭素を1分当たり0.5Lの速度で吹き込んだ。温度上昇が止まった点を持って反応の終了を確認した。反応液を濾過し温純水で十分洗浄した。その真空オーブンで60℃で一昼夜乾燥させた。収量120g(収率71%)。
【0058】
乾燥粉末をガラス板上に均一に伸ばし、発色液(アニスアルデヒド:硫酸:メタノール=5:10:85、体積比)をかけ、180℃に加熱し、で有機分が表面に存在することを確認した。また、粉末1gを塩酸(1N)で溶解させセファデックスGー25で精製した。有機分収量33.6mg(結合量3.4%)。さらに元素分析を行い、グルコース残基が存在することを確かめた。
【0059】
次に、粉末の電子顕微鏡観察を行い、紡錘型の粒子約1μmが均一に合成されていることを確認した。またX線構造回折によりカルサイト型の結晶であることを確認した。
【0060】
[抄紙工程への応用例]
比較例1
<原紙配合>
原紙配合;LBKP(ろ水度;450ml、c.s.f)          100部
炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP−121)                  10部
硫酸アルミニウム                                              0.8部
両性澱粉(日本NSC社製;Cato3210)                     1部
歩留り向上剤(ハイモ社製;NR−11LS)                  0.02部
【0061】
上記原紙配合の0.3%スラリーを用いてテスト抄紙機(1000m/min)で抄紙した。炭酸カルシウムの歩留まりは50%であった。
【0062】
実施例2
<原紙配合>
原紙配合;LBKP(ろ水度;450ml、c.s.f)          100部
合成変成鉱物結晶                           10.3部
硫酸アルミニウム                                              0.8部
両性澱粉(日本NSC社製;Cato3210)                     1部
歩留り向上剤(ハイモ社製;NRー11LS)                  0.02部
【0063】
上記各原紙配合の0.3%スラリーを用いてテスト抄紙機(1000/min)で抄紙した。変成鉱物結晶の歩留まりは63%であった。
【0064】
[高添加原紙の製造例]
比較例2
<原紙配合>
原紙配合;LBKP(ろ水度;450ml、c.s.f)          100部
炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TPー121)                  50部
硫酸アルミニウム                                              0.8部
両性澱粉(日本NSC社製;Cato3210)                     1部
歩留り向上剤(ハイモ社製;NRー11LS)                   0.1部
【0065】
上記各原紙配合の0.3%スラリーを用いてテスト抄紙機(1000/min)で抄紙した。炭酸カルシウムの添加率は30質量%であった。
【0066】
実施例3
<原紙配合>
原紙配合;LBKP(ろ水度;450ml、c.s.f)          100部
変成鉱物結晶                               51.5部
硫酸アルミニウム                                              0.8部
両性澱粉(日本NSC社製;Cato3210)                     1部
歩留り向上剤(ハイモ社製;NRー11LS)                   0.1部
【0067】
上記各原紙配合の0.3%スラリーをテスト抄紙機(1000/min)で抄紙した。変成鉱物結晶の添加率は44質量%であった。
【0068】
[塗工紙への応用例]
比較例3
原紙は以下のような配合で調整し、坪量70g/mの原紙を抄造した。
<原紙配合>
LBKP(濾水度440mlcsf)                          70質量部
NBKP(濾水度490mlcsf)                          30質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示)                    *6質量部
市販カチオン化澱粉                                        1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤            0.03質量部
【0069】
上記の配合にてパルプスラリーを調整し、長網抄紙機を用いて坪量70g/mの原紙を抄造し、内部結合強度を調節するために、パルプ濾水度を上記の範囲で変化させ、さらにウェットパートのプレス圧も適宜調節しながら、オンラインにより澱粉をサイズプレスして後、乾燥し、さらにソフトカレンダー仕上げ装置を用い、剛性ロールとして外径500mmのチルドロール、弾性ロールとして外径500mmの樹脂ロールにより、線圧180kg/cm、温度80℃にてカレンダリング処理を施し、塗工用原紙を得た。
【0070】
<塗工液の配合>
市販一級カオリンクレー                                        50部
市販重質炭酸カルシウム                             30部
市販軽質炭酸カルシウム                             20部
市販ポリアクリル酸系分散剤                        0.1部
ラテックスバインダー                      15部
市販燐酸エステル化澱粉                                            3部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC)            0.1部
水酸化ナトリウムによりpH9.6に調製
【0071】
上記のようにして製造した塗工用原紙に対して、ラボ用ブレードコーターを用いて塗工速度10m/分で固形分濃度63質量%の塗工液を、片面5g/m塗工し、乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー仕上げ装置(nip数:4、剛性ロール:外径200mmのチルドロール、弾性ロール:外径300mmのコットンロール、線圧:220kg/cm)を用いてカレンダリング処理を施し、印刷用塗工紙を製造した。得られた印刷用塗工紙について、電子顕微鏡撮影による原紙の露出度は目視で50%程度であった。
【0072】
実施例4
<塗工液の配合>
市販一級カオリンクレー                                        50部
市販重質炭酸カルシウム                             30部
合成変成鉱物結晶                                20部
市販ポリアクリル酸系分散剤                        0.1部
ラテックスバインダー                      15部
市販燐酸エステル化澱粉                                            3部
水酸化ナトリウムによりpH9.6に調製
【0073】
比較例3と同じ塗工用原紙に対して、ラボ用ブレードコーターを用いて塗工速度10m/分で固形分濃度63質量%の塗工液を、片面5g/m塗工し、乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー仕上げ装置(nip数:4、剛性ロール:外径200mmのチルドロール、弾性ロール:外径300mmのコットンロール、線圧:220kg/cm)を用いてカレンダリング処理を施し、印刷用塗工紙を製造した。得られた印刷用塗工紙について、電子顕微鏡撮影による原紙の露出度は目視で20%程度であった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、鉱物結晶の物性を向上させるだけでなく、変成鉱物結晶を添加すべき材料との親和性を向上させ、導入されたり、表面に留まる量を増加させることであり、さらには、例えば、高機能材料の担体として、従来にはなかった新規な高機能材料に応用することをも目的とする親水性有機化合物により物理/化学修飾された変成鉱物結晶およびその製造方法、ならびにそれを用いた新規の材料を提供することができる。

Claims (10)

  1. 親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物が、鉱物結晶の表面または内部に、物理的または化学的に結合した変成鉱物結晶。
  2. 親水性有機化合物が、ヘミセルロース、溶解セルロール、デキストリンから選ばれる1種である請求項1記載の変成鉱物結晶。
  3. 鉱物結晶が、炭酸カルシウムである請求項1記載の変成鉱物結晶。
  4. 水または水を主成分とする溶媒を低速攪拌しつつ、親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物を加えて完全に溶解させて後、この水溶液中で鉱物結晶を析出させて製造することを特徴とする変成鉱物結晶の製造方法。
  5. 水または水を主成分とする溶媒を低速攪拌しつつ、該溶媒中に生石灰を加えて生石灰と水とを反応させ、親水性基を分子内に多価にわたって有し、水およびそれを主成分とする溶媒に対して十分に溶解する親水性有機化合物を加えて完全に溶解させて後、得られた混合液を高速攪拌しながら二酸化炭素を注入し、炭酸カルシウムの結晶を析出させて製造することを特徴とする変成鉱物結晶の製造方法。
  6. 二酸化炭素を注入する際に、ボイラーの燃焼により発生した二酸化炭素を含む混合気体を用いる請求項4記載の変成鉱物結晶の製造方法。
  7. 前記請求項1〜3記載の変成鉱物結晶を原紙中または原紙上に含有することを特徴とする紙。
  8. 前記請求項1〜3記載の変成鉱物結晶を原紙上に設けた塗工層に含有することを特徴とする塗工紙。
  9. 前記請求項1〜3記載の変成鉱物結晶を用いることを特徴とする高機能材料。
  10. 前記請求項1〜3記載の変成鉱物結晶を用いることを特徴とする医薬品材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114292476A (zh) * 2021-12-31 2022-04-08 山东日科化学股份有限公司 一种多官能化合物极性改性无机微纳米填料及其制备方法

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