JP2004099402A - 大粒硫安の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】硫安の製造に際し大粒硫安が高収率で得られる大粒硫安の製造方法を提供すること。
【解決手段】上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大粒硫安の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、硫安(硫酸アンモニウム)市場に供給される硫安の種類にはその結晶サイズの違いにより粉状と粒状とがある。粉状硫安の製造は当然ながら粒状品の粉砕によって得ることもできるが、粒状硫安の場合は粒径によっては特殊な装置の設計が必要である。近年、農業の機械化に伴い航空機や専用機械により硫安を散布する方法が注目され、大粒硫安(約2〜4mm直径)の需要が増えてきており、高収率でこのサイズの大粒硫安を製造するニーズが存在している。
【0003】
この大粒硫安の製造方法については、多くの公知技術が報告されているが、その殆どが添加物を母液(硫安水溶液)に添加して大粒品を得るものである。例えば、硫安母液に媒晶剤と称するスルファミン酸、その塩、硝安、ハイドロサルファイトなどが使用されている(特許文献1参照)。しかし、その添加濃度については上記特許文献1ではスルファミン酸アンモニウムという形態で0.5〜5質量%(スルファミン酸として0.42〜4.2質量%)と規定されているが、一方、他の特許文献ではスルファミン酸で0.5質量%未満と記載されている(特許文献2参照)。
【0004】
これらの硫安母液は、コークス炉COG(Coke Oven Gas)中のアンモニアを硫酸にて吸収して得られたもので、ほぼ同様な硫安母液でありながら、両者の添加量には大差があり、大粒硫安の製造という観点で普遍的にスルファミン酸の効果であるか否かは疑わしい。また、薬剤以外の添加物として、種結晶として微粉砕した硫安を母液に添加している(特許文献3参照)。また、他の特許文献では晶出装置から出たスラリーを分級して得た細粒硫安スラリーに不飽和母液を加えて、微細結晶を晶出装置から抜いて、硫安結晶の成長を促進させる方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
大粒硫安の製造設備に関しては殆ど報告がないが、晶出缶内の特に底部付近に母液の停滞する個所が生じ、結晶滞留や偏析が大粒品の製造を阻害しているとの発見により、これを防止する吹き込みノズル管の設置の提案が行われている(特許文献5参照)。なお、上記特許文献3および4に関しては添加物の必要性の記述はない。
【0006】
一般的に晶出缶にて粒状硫安を得る設備、硫安の形状、晶癖、成長速度に及ぼす母液性状の影響などについては古くより多くの報告があるが、大粒品を高収率で得る方法および設備に関しては報告は殆ど見られない。
【0007】
原理的に大粒硫安の粒度決定をこの晶出缶内の流動化現象としてとらえることができ、公知文献によればレイノルズ数(Re)が2<Re<500の時はアレン式、500<Re<104の時はニュートン式が使用されることになっている。
アレン式:Dp={225μρv3/4g2(ρp−ρ)2}1/3
ニュートン式:Dp=ρv2/3.03g(ρp−ρ)
ここで、μ:液粘度(kg/m・sec)、ρ:液密度(kg/m3)、v:流速(m/sec)、g:重力加速度(m/sec2)、ρp:硫安密度(1770kg/m3)、Dp:硫安直径(m)である。
従って晶出缶において所定の大きさの大粒品を得ようとする場合にはこの関係を設備の設計および製造条件に考慮しなければならない。
【0008】
【特許文献1】
特公昭60−38338号公報
【特許文献2】
特開昭58−217428号公報
【特許文献3】
特公昭63−51970号公報
【特許文献4】
特開平04−26512号公報
【特許文献5】
特公平04−48729号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、硫安の製造に際し大粒硫安が高収率で得られる大粒硫安の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、第一発明として、上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、第二発明として、上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y:mm)と、ダウン管先端での母液の噴出速度(x:m/sec)との関係を下記式(1)の範囲にして行うことを特徴とする大粒硫安の製造方法を提供する。
y=687.5×loge(x)+964 (1)
(上記式中の数値は実験値である。)
【0012】
本発明者は、硫安の製造において、晶出缶内における母液の量と母液の上昇線速度と製造装置(特にダウン管先端位置)との関係について詳細に研究の結果、第一発明では、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることにより、そして、第二発明では、晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y)と、ダウン管先端での母液の噴出速度(x)との関係を特定の関係にすることによって、大粒硫安が収率良く得られることを見い出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。図1は、本発明で使用する硫安製造装置を説明する一部切り欠き図である。この装置は全体的には公知であり、本発明は、このような装置を用いた場合の晶出缶内における母液の上昇線速度を変化させ、或いは、装置のうちのダウン管先端の位置を変更することによって本発明の目的を達成した。
【0014】
従来の硫安の製造装置、製造方法および本発明の硫安の製造方法を図を参照して説明する。先ず、操業開始時に硫安水溶液(母液)を供給部1から晶出缶2内に母液抜出部3の位置まで供給し、その後は、母液が常に晶出缶2を満たしている条件で晶出缶2に供給される。母液の供給は、通常約20〜25質量%の濃度で、約10〜50℃の液温で、供給部1から、結晶スラリーの抜出量および蒸発缶4における蒸発減量に見合った流量で供給される。
【0015】
母液抜出部3から抜き出された母液は、循環ポンプ5にて循環され、母液加熱器6で蒸気7により約50〜60℃に加温され、スチームエジェクター8にて減圧された蒸発缶4内で濃縮される。濃縮された過飽和硫安母液は循環流としてダウン管9(通常内径500〜1,500mm)内を流下して晶出缶2の下部に降下し、晶出缶底部付近の母液中の小結晶の成長、大粒化を促す。微細結晶は母液中に懸濁し、母液とともに循環ポンプ5にて再び蒸発缶4に戻される。成長した大粒硫安結晶10は、その沈降重力の大きさが、晶出缶2内の上昇流による抵抗力以上になる時に沈降をはじめて、ついには底部に堆積される。
【0016】
晶出缶2の底部の直下付近には回収経路(結晶スラリー抜出管)11の先端が位置づけられるように配置されており、大粒硫安10を含む結晶スラリーは、ここより結晶抜出ポンプ13により結晶スラリー12として抜き出され、通常は遠心分離機やフィルタープレスなどにより、液から分離された後、乾燥して、所定サイズの篩にて篩い分けして製品とされる。当然のことであるが、結晶スラリー中の結晶が求めるサイズ(2〜4mm)に近いほど大粒品の収率は高くなる。
【0017】
流動化による結晶サイズの分級は、ダウン管9の先端14の周辺の晶出缶内の上部において発生するが、ダウン管の下部においても考慮しなければならないことがあり、これに関しては公知となる記述はなく、これが本発明の内容である。さらに詳細を述べると、ダウン管9の先端14が晶出缶2の底部から高すぎる場合は、好ましい結晶サイズの分級が起こらず、母液中の硫安結晶はダウン管9を下降する母液とともに下降し、沈んでしまう。つまり、底部から上昇する循環流にかかわらないで、そのまま底部に沈積してしまうことになる。
【0018】
本発明者らは大粒硫安を得るためには前述の分級効果とともに、ダウン管9の先端14と晶出缶2の底部との距離に適正値が存在すると考え、実設備にて検証し、その適正値を導く関係式を見出し、本発明に到達した。表1は本発明の実施時の母液からの晶出条件を示したものであるが、設備能力に関わる蒸気供給量以外は、これらの条件は公知のものと大差ない。
【0019】
表2は、本発明の実施とその結果を示すもので、晶出缶底部からダウン管(内径1,100mm)先端14までの高さ、母液循環量を種々変更して硫安の製造を行い、得られた硫安結晶の平均粒径(結晶抜出開始以降の経過に対しほぼ一定となった値で50%質量累積値)を示したものである。なお、表2にはダウン管先端14周辺の晶出缶内の上昇流線速度(z)、その結果得られる硫安の粒径、および使用した計算の式を示した。また、表2中には公知技術と比較のため、添加物(スルファミン酸アンモニウム)を添加した例、および硫酸を添加した例の結果をも示した。
【0020】
下記表2に記載の結果から明らかなように、得られた硫安結晶の平均粒径は流動の式から得られた粒径とほぼ一致することがわかる。一般に流動による粒子の分級の現象は公知ではあるが、大粒硫安の製造においても良好に分級されることを見出した。
【0021】
下記表2の結果からして、大粒硫安製造の際のダウン管先端14周辺の晶出缶内の母液の線速度(z)は0.10m/sec以上が必要とされ、好ましくは0.10〜0.3m/secである。この線速度(z)が0.10m/sec未満であると大粒硫安の収率が低く、一方、0.3m/secを超えると結晶が大きくなり過ぎる。この線速度(z)は母液の循環速度、循環量、ダウン管の内径などによって容易に決定することができる。なお、公知技術で提案された母液中に添加物(硫酸またはスルファミン酸アンモニウム)を混合した場合と、添加しない場合との差は、結晶の粒度については大きな差は認められなかったが、硫酸を添加した場合は無添加のものより結晶に硬さが加わり、また、スルファミン酸アンモニウムを加えた条件では硬さ、光沢、丸み、が加わったがいずれの場合も、これらの添加物が硫安結晶の大きさに本質的な差を生じてはいないことが改めて確認された。
【0022】
さらに晶出缶底部からのダウン管先端までの高さ(y)関しては2,300mmと高い場合は、公知技術では結晶粒径は小さく、大粒硫安の歩留まりも低かった。逆にダウン管先端が600mmと低い場合は、噴出速度が速いと大きすぎる硫安結晶が得られ、結晶の抜出しが不安定となるため抜出し位置に工夫が必要となる。ダウン管先端の母液の噴出速度(x)は、線速度(z)と同様に母液の循環速度、循環量、ダウン管の内径などによって容易に決定することができる。表2で得られたこれらの結果から、平均粒径2〜4mmの硫安結晶が得られる噴出速度は0.30〜1.65m/secとなる。
【0023】
表2で得られたこれらの結果から、ダウン管先端の母液の噴出速度(x:m/sec)とダウン管先端の晶出缶底部からの高さ(y:mm)の関係は、表3に示す硫安の平均粒径2〜4mmの場合における、ダウン管先端の母液の噴出速度(x:m/sec)とダウン管先端の晶出缶底部からの高さ(y:mm)を回帰分析して得られた式、
y=687.5×loge(x)+964 (1)
(上記式中の数値は実験値である。)
のように定まる。
従って、ダウン管内径1,100mmの場合において、噴出速度が0.30〜1.65m/secの時の最適なダウン管先端高さは、130〜1,300mmとなる。
【0024】
図2には、晶出缶底部からダウン管先端までの高さが1,000mm、循環量が2,500m3/時間にて製造試験を行ない、大粒品(2〜4mm)の収率を製造時間経過とともに示した。なお、ダウン管の内径は1,100mmである。比較例としては特開昭63−103821号公報の第3図を引用するが、比較例では種結晶の添加効果が加わり、60〜70質量%の収率が確保されているのに対し、本発明では種結晶の添加もなく、結晶の採取開始以降安定的に60〜80質量%の大粒硫安の製造が可能であった。これは本発明の晶出缶上部での流動化による分級効果と晶出缶低部での小粒結晶の堆積防止効果により高収率で大粒硫安が得られた結果である。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、大粒硫安を高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】硫安製造装置と製造方法を説明する図。
【図2】実施例の大粒品の収率を製造時間経過とともに示す図。
【符号の説明】
1:母液供給部
2:晶出缶
3:母液抜出部
4:蒸発缶
5:循環ポンプ
6:母液加熱器
7:蒸気
8:スチームエジェクター
9:ダウン管
10:大粒硫安
11:結晶スラリー抜出管
12:結晶スラリー
13:結晶抜出ポンプ
14:ダウン管の先端
【発明の属する技術分野】
本発明は、大粒硫安の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、硫安(硫酸アンモニウム)市場に供給される硫安の種類にはその結晶サイズの違いにより粉状と粒状とがある。粉状硫安の製造は当然ながら粒状品の粉砕によって得ることもできるが、粒状硫安の場合は粒径によっては特殊な装置の設計が必要である。近年、農業の機械化に伴い航空機や専用機械により硫安を散布する方法が注目され、大粒硫安(約2〜4mm直径)の需要が増えてきており、高収率でこのサイズの大粒硫安を製造するニーズが存在している。
【0003】
この大粒硫安の製造方法については、多くの公知技術が報告されているが、その殆どが添加物を母液(硫安水溶液)に添加して大粒品を得るものである。例えば、硫安母液に媒晶剤と称するスルファミン酸、その塩、硝安、ハイドロサルファイトなどが使用されている(特許文献1参照)。しかし、その添加濃度については上記特許文献1ではスルファミン酸アンモニウムという形態で0.5〜5質量%(スルファミン酸として0.42〜4.2質量%)と規定されているが、一方、他の特許文献ではスルファミン酸で0.5質量%未満と記載されている(特許文献2参照)。
【0004】
これらの硫安母液は、コークス炉COG(Coke Oven Gas)中のアンモニアを硫酸にて吸収して得られたもので、ほぼ同様な硫安母液でありながら、両者の添加量には大差があり、大粒硫安の製造という観点で普遍的にスルファミン酸の効果であるか否かは疑わしい。また、薬剤以外の添加物として、種結晶として微粉砕した硫安を母液に添加している(特許文献3参照)。また、他の特許文献では晶出装置から出たスラリーを分級して得た細粒硫安スラリーに不飽和母液を加えて、微細結晶を晶出装置から抜いて、硫安結晶の成長を促進させる方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
大粒硫安の製造設備に関しては殆ど報告がないが、晶出缶内の特に底部付近に母液の停滞する個所が生じ、結晶滞留や偏析が大粒品の製造を阻害しているとの発見により、これを防止する吹き込みノズル管の設置の提案が行われている(特許文献5参照)。なお、上記特許文献3および4に関しては添加物の必要性の記述はない。
【0006】
一般的に晶出缶にて粒状硫安を得る設備、硫安の形状、晶癖、成長速度に及ぼす母液性状の影響などについては古くより多くの報告があるが、大粒品を高収率で得る方法および設備に関しては報告は殆ど見られない。
【0007】
原理的に大粒硫安の粒度決定をこの晶出缶内の流動化現象としてとらえることができ、公知文献によればレイノルズ数(Re)が2<Re<500の時はアレン式、500<Re<104の時はニュートン式が使用されることになっている。
アレン式:Dp={225μρv3/4g2(ρp−ρ)2}1/3
ニュートン式:Dp=ρv2/3.03g(ρp−ρ)
ここで、μ:液粘度(kg/m・sec)、ρ:液密度(kg/m3)、v:流速(m/sec)、g:重力加速度(m/sec2)、ρp:硫安密度(1770kg/m3)、Dp:硫安直径(m)である。
従って晶出缶において所定の大きさの大粒品を得ようとする場合にはこの関係を設備の設計および製造条件に考慮しなければならない。
【0008】
【特許文献1】
特公昭60−38338号公報
【特許文献2】
特開昭58−217428号公報
【特許文献3】
特公昭63−51970号公報
【特許文献4】
特開平04−26512号公報
【特許文献5】
特公平04−48729号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、硫安の製造に際し大粒硫安が高収率で得られる大粒硫安の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、第一発明として、上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、第二発明として、上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に母液を供給する供給部と、晶出缶に供給された母液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y:mm)と、ダウン管先端での母液の噴出速度(x:m/sec)との関係を下記式(1)の範囲にして行うことを特徴とする大粒硫安の製造方法を提供する。
y=687.5×loge(x)+964 (1)
(上記式中の数値は実験値である。)
【0012】
本発明者は、硫安の製造において、晶出缶内における母液の量と母液の上昇線速度と製造装置(特にダウン管先端位置)との関係について詳細に研究の結果、第一発明では、ダウン管先端周辺の晶出缶内の母液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることにより、そして、第二発明では、晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y)と、ダウン管先端での母液の噴出速度(x)との関係を特定の関係にすることによって、大粒硫安が収率良く得られることを見い出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。図1は、本発明で使用する硫安製造装置を説明する一部切り欠き図である。この装置は全体的には公知であり、本発明は、このような装置を用いた場合の晶出缶内における母液の上昇線速度を変化させ、或いは、装置のうちのダウン管先端の位置を変更することによって本発明の目的を達成した。
【0014】
従来の硫安の製造装置、製造方法および本発明の硫安の製造方法を図を参照して説明する。先ず、操業開始時に硫安水溶液(母液)を供給部1から晶出缶2内に母液抜出部3の位置まで供給し、その後は、母液が常に晶出缶2を満たしている条件で晶出缶2に供給される。母液の供給は、通常約20〜25質量%の濃度で、約10〜50℃の液温で、供給部1から、結晶スラリーの抜出量および蒸発缶4における蒸発減量に見合った流量で供給される。
【0015】
母液抜出部3から抜き出された母液は、循環ポンプ5にて循環され、母液加熱器6で蒸気7により約50〜60℃に加温され、スチームエジェクター8にて減圧された蒸発缶4内で濃縮される。濃縮された過飽和硫安母液は循環流としてダウン管9(通常内径500〜1,500mm)内を流下して晶出缶2の下部に降下し、晶出缶底部付近の母液中の小結晶の成長、大粒化を促す。微細結晶は母液中に懸濁し、母液とともに循環ポンプ5にて再び蒸発缶4に戻される。成長した大粒硫安結晶10は、その沈降重力の大きさが、晶出缶2内の上昇流による抵抗力以上になる時に沈降をはじめて、ついには底部に堆積される。
【0016】
晶出缶2の底部の直下付近には回収経路(結晶スラリー抜出管)11の先端が位置づけられるように配置されており、大粒硫安10を含む結晶スラリーは、ここより結晶抜出ポンプ13により結晶スラリー12として抜き出され、通常は遠心分離機やフィルタープレスなどにより、液から分離された後、乾燥して、所定サイズの篩にて篩い分けして製品とされる。当然のことであるが、結晶スラリー中の結晶が求めるサイズ(2〜4mm)に近いほど大粒品の収率は高くなる。
【0017】
流動化による結晶サイズの分級は、ダウン管9の先端14の周辺の晶出缶内の上部において発生するが、ダウン管の下部においても考慮しなければならないことがあり、これに関しては公知となる記述はなく、これが本発明の内容である。さらに詳細を述べると、ダウン管9の先端14が晶出缶2の底部から高すぎる場合は、好ましい結晶サイズの分級が起こらず、母液中の硫安結晶はダウン管9を下降する母液とともに下降し、沈んでしまう。つまり、底部から上昇する循環流にかかわらないで、そのまま底部に沈積してしまうことになる。
【0018】
本発明者らは大粒硫安を得るためには前述の分級効果とともに、ダウン管9の先端14と晶出缶2の底部との距離に適正値が存在すると考え、実設備にて検証し、その適正値を導く関係式を見出し、本発明に到達した。表1は本発明の実施時の母液からの晶出条件を示したものであるが、設備能力に関わる蒸気供給量以外は、これらの条件は公知のものと大差ない。
【0019】
表2は、本発明の実施とその結果を示すもので、晶出缶底部からダウン管(内径1,100mm)先端14までの高さ、母液循環量を種々変更して硫安の製造を行い、得られた硫安結晶の平均粒径(結晶抜出開始以降の経過に対しほぼ一定となった値で50%質量累積値)を示したものである。なお、表2にはダウン管先端14周辺の晶出缶内の上昇流線速度(z)、その結果得られる硫安の粒径、および使用した計算の式を示した。また、表2中には公知技術と比較のため、添加物(スルファミン酸アンモニウム)を添加した例、および硫酸を添加した例の結果をも示した。
【0020】
下記表2に記載の結果から明らかなように、得られた硫安結晶の平均粒径は流動の式から得られた粒径とほぼ一致することがわかる。一般に流動による粒子の分級の現象は公知ではあるが、大粒硫安の製造においても良好に分級されることを見出した。
【0021】
下記表2の結果からして、大粒硫安製造の際のダウン管先端14周辺の晶出缶内の母液の線速度(z)は0.10m/sec以上が必要とされ、好ましくは0.10〜0.3m/secである。この線速度(z)が0.10m/sec未満であると大粒硫安の収率が低く、一方、0.3m/secを超えると結晶が大きくなり過ぎる。この線速度(z)は母液の循環速度、循環量、ダウン管の内径などによって容易に決定することができる。なお、公知技術で提案された母液中に添加物(硫酸またはスルファミン酸アンモニウム)を混合した場合と、添加しない場合との差は、結晶の粒度については大きな差は認められなかったが、硫酸を添加した場合は無添加のものより結晶に硬さが加わり、また、スルファミン酸アンモニウムを加えた条件では硬さ、光沢、丸み、が加わったがいずれの場合も、これらの添加物が硫安結晶の大きさに本質的な差を生じてはいないことが改めて確認された。
【0022】
さらに晶出缶底部からのダウン管先端までの高さ(y)関しては2,300mmと高い場合は、公知技術では結晶粒径は小さく、大粒硫安の歩留まりも低かった。逆にダウン管先端が600mmと低い場合は、噴出速度が速いと大きすぎる硫安結晶が得られ、結晶の抜出しが不安定となるため抜出し位置に工夫が必要となる。ダウン管先端の母液の噴出速度(x)は、線速度(z)と同様に母液の循環速度、循環量、ダウン管の内径などによって容易に決定することができる。表2で得られたこれらの結果から、平均粒径2〜4mmの硫安結晶が得られる噴出速度は0.30〜1.65m/secとなる。
【0023】
表2で得られたこれらの結果から、ダウン管先端の母液の噴出速度(x:m/sec)とダウン管先端の晶出缶底部からの高さ(y:mm)の関係は、表3に示す硫安の平均粒径2〜4mmの場合における、ダウン管先端の母液の噴出速度(x:m/sec)とダウン管先端の晶出缶底部からの高さ(y:mm)を回帰分析して得られた式、
y=687.5×loge(x)+964 (1)
(上記式中の数値は実験値である。)
のように定まる。
従って、ダウン管内径1,100mmの場合において、噴出速度が0.30〜1.65m/secの時の最適なダウン管先端高さは、130〜1,300mmとなる。
【0024】
図2には、晶出缶底部からダウン管先端までの高さが1,000mm、循環量が2,500m3/時間にて製造試験を行ない、大粒品(2〜4mm)の収率を製造時間経過とともに示した。なお、ダウン管の内径は1,100mmである。比較例としては特開昭63−103821号公報の第3図を引用するが、比較例では種結晶の添加効果が加わり、60〜70質量%の収率が確保されているのに対し、本発明では種結晶の添加もなく、結晶の採取開始以降安定的に60〜80質量%の大粒硫安の製造が可能であった。これは本発明の晶出缶上部での流動化による分級効果と晶出缶低部での小粒結晶の堆積防止効果により高収率で大粒硫安が得られた結果である。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、大粒硫安を高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】硫安製造装置と製造方法を説明する図。
【図2】実施例の大粒品の収率を製造時間経過とともに示す図。
【符号の説明】
1:母液供給部
2:晶出缶
3:母液抜出部
4:蒸発缶
5:循環ポンプ
6:母液加熱器
7:蒸気
8:スチームエジェクター
9:ダウン管
10:大粒硫安
11:結晶スラリー抜出管
12:結晶スラリー
13:結晶抜出ポンプ
14:ダウン管の先端
Claims (4)
- 上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に硫安水溶液を供給する供給部と、晶出缶に供給された硫安水溶液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、ダウン管先端周辺の晶出缶内の硫安水溶液の上昇流の線速度(z)を0.10m/sec以上とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法。
- 線速度(z)が、0.10〜0.3m/secである請求項1に記載の大粒硫安の製造方法。
- 上方に位置する蒸発缶と、下方に位置する晶出缶と、蒸発缶の底部から晶出缶内部に延びるダウン管と、晶出缶に硫安水溶液を供給する供給部と、晶出缶に供給された硫安水溶液を蒸発缶に循環する経路と、晶出缶内において晶出した硫安結晶を回収する経路を有する硫安製造装置を用いて硫安を製造する方法において、晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y:mm)と、ダウン管先端での硫安水溶液の噴出速度(x:m/sec)を下記式(1)の関係とすることを特徴とする大粒硫安の製造方法。
y=687.5×loge(x)+964 (1)
(上記式中の数値は実験値である。) - ダウン管の内径が500〜1,500mmの場合において、噴出速度(x)が0.30〜1.65m/sec、かつ晶出缶底部からダウン管先端までの高さ(y)が、130〜1,300mmである請求項3に記載の大粒硫安の製造方法。
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JP2011510895A (ja) * | 2008-02-01 | 2011-04-07 | ゲア メッソ ゲーエムベーハー | 晶析による粗大硫安結晶製品の製造方法,及び前記製造方法を実行するための設備 |
CN115520879A (zh) * | 2021-06-24 | 2022-12-27 | 中国石油化工股份有限公司 | 异相晶种连续制备颗粒硫酸铵的方法及装置 |
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- 2002-09-12 JP JP2002266434A patent/JP2004099402A/ja active Pending
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