JP2004098818A - 水上用防護フェンスの展開船 - Google Patents
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Abstract
【課題】現場水域まで短時間で移動することができ、オイルフェンスを迅速かつ的確に展開することができる水上用防護フェンスの展開船を提供する。
【解決手段】防護フェンス50を水上に展開するための展開船1であって、展開船1が、防護フェンス50が搭載され、防護フェンス50の基端が接続されている船体2と、船体2に搭載されており、防護フェンス50の先端が接続されている浮遊体と、浮遊体を、船体2から水上に放出する放出部とからなり、防護フェンス50が、船体2に折り畳んだ状態で搭載されている。防護フェンス50の放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンス50の展開を短時間で行うことができ、船体2の駆動力を小さくでき、船体2も小型化できる。
【選択図】 図1
【解決手段】防護フェンス50を水上に展開するための展開船1であって、展開船1が、防護フェンス50が搭載され、防護フェンス50の基端が接続されている船体2と、船体2に搭載されており、防護フェンス50の先端が接続されている浮遊体と、浮遊体を、船体2から水上に放出する放出部とからなり、防護フェンス50が、船体2に折り畳んだ状態で搭載されている。防護フェンス50の放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンス50の展開を短時間で行うことができ、船体2の駆動力を小さくでき、船体2も小型化できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水上用防護フェンスの展開船に関する。船舶の座礁や転覆等の海難事故によるオイル流出事故は、その経済的損失だけでなく、自然の生態系に与える影響も甚大である。また、毎年のように発生する赤潮や湖における藻の異常繁殖は、漁業やその他の生態系に対して深刻な被害をもたらす。そして、オイル流出や赤潮等による水面汚染の被害は、時間経過とともに加速度的に広がるため、一刻も早い迅速な対応が必要となる。本発明は、かかる水面汚染の拡散防止に使用される水上用防護フェンスの展開船に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的なオイルフェンスは、水面に浮遊する浮体部(いわゆるフロート)とこの浮体部の下部に設けられ水中に浸漬されるスカート部とを備えた単体フェンスが、複数連結されて形成されている。このオイルフェンスを水上に展開するときには、オイルフェンスを母船から水上に投下して、その両端を曳航船に連結し、この曳航船によって曳航することによって行われる(例えば、特許文献1,2参照)。そして、流出油の周囲にオイルフェンスを展開して流出油を包囲すれば、オイルフェンスの浮体部とスカートによって流出油をせき止めることができるから、流出油の拡散を防ぐことができる。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−195857号公報
【特許文献2】
特開2000−81046号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、流出油は波や風によって急速に拡散してしまうため、オイルフェンスを迅速に展開する必要がある。しかし、従来、オイルフェンスの水上への投下は人手によって行われていたため、投下に時間がかかる。このため流出現場に到着してからオイルフェンスの展開までに時間がかかるという問題がある。
また、特許文献2に示すように、油回収装置が接続されたオイルフェンスであれば、油回収装置を水上に落下させてから母船を移動させれば、母船が油回収装置から離れるに従い母船上のオイルフェンスが油回収装置によって引っ張られる。すると、オイルフェンスは自動的に水上に投下されるから、オイルフェンスの展開時間を短縮することができる。しかし、特許文献2の場合、オイルフェンスと油回収装置の両方を同じ船に積載しておかなければならず、大型の母船が必要となる。すると、油が流出した現場が陸地から離れている場合、現場水域に船が到着するまでには非常に長時間を要する。このため、船が現場に到着したときには既に油が広範囲に拡散してしまい、オイルフェンスによって油を包囲することが困難な状況となってしまうという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑み、現場水域まで短時間で移動することができ、オイルフェンスを迅速かつ的確に展開することができる水上用防護フェンスの展開船を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の水上用防護フェンスの展開船は、防護フェンスを水上に展開するための展開船であって、該展開船が、前記防護フェンスが搭載され、該防護フェンスの基端が接続されている船体と、該船体に搭載されており、前記防護フェンスの先端が接続されている浮遊体と、該浮遊体を、前記船体から水上に放出する放出部とからなり、前記防護フェンスが、前記船体に折り畳んだ状態で搭載されていることを特徴とする。
請求項2の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記展開船の総重量が、2トン以下であることを特徴とする。
請求項3の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記浮遊体が、水上航行可能な小型船であることを特徴とする。
請求項4の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記防護フェンスが、複数の単体フェンスを連結して形成されたものであり、各単体フェンスが、それぞれガス充填手段を備えており、前記単体フェンスが水上に投下されると、前記ガス充填手段によって前記単体フェンスの内部にガスが充填されることを特徴とする。
請求項5の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記船体に、前記防護フェンスを収容するためのフェンス収容部が設けられており、前記フェンス収容部の一端に、下端が前記船体に取り付けられ、該下端を支点として前記フェンス収容部から外方に向かって揺動可能な放出扉が設けられており、前記防護フェンスが、その基端と先端との間が蛇腹状に折り畳まれており、その先端が前記放出扉側に位置するように前記フェンス収容部内に収容されており、前記放出扉を前記フェンス収容部から外方に向かって揺動させると、該揺動扉の内面が、前記フェンス収容部の床面から水面に向かって下傾するスロープ面となるスロープ面となることを特徴とする。
請求項6の水上用防護フェンスの展開船は、請求項5記載の発明において、前記防護フェンスが、その折り目が前記フェンス収容部の底面に対して垂直となるように、前記フェンス収容部内に収容されており、前記フェンス収容部において、前記放出扉の内方に放出制御手段が設けられており、該放出制御手段が、該放出制御手段と前記フェンス収容部の他端との間に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持する、左右一対のフェンス保持部を備えており、前記防護フェンスにおける前記放出制御手段より外方に位置する部分と該放出制御手段より内方に位置する部分との接続部分に対して、該接続部分の反対側に位置する前記フェンス保持部が、前記放出制御手段よりも内方に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持することを特徴とする。
請求項7の水上用防護フェンスの展開船は、請求項6記載の発明において、前記左右一対のフェンス保持部が、観音開きの扉であることを特徴とする。
請求項8の水上用防護フェンスの展開船は、請求項5記載の発明において、前記フェンス収容部が、該フェンス収容部内の前記防護フェンスを、前記放出扉に向けて押す押出手段を備えていることを特徴とする。
請求項9の水上用防護フェンスの展開船は、請求項8記載の発明において、前記押出手段が、前記防護フェンスの基端部とフェンス収容部の他端部との間に設けられた押出板と、該押出板を前記放出扉に向けて移動させる移動部とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、放出部によって浮遊体を水上に放出し、船体を浮遊体から離間するように航行させれば、防護フェンスの先端が浮遊体に引張られるので、船体と浮遊体との距離に応じた長さの防護フェンスを水上に供給することができる。そして、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体を移動させれば、防護フェンスによって流出油を包囲することができる。したがって、防護フェンスの放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンスの展開を短時間で行うことができる。しかも、防護フェンスを船体から放出するだけで防護フェンスを配置することができ、船体によって水上に放出した防護フェンスを移動させる量を少なくできるから、船体の駆動力を小さくでき、船体も小型化できる。
請求項2の発明によれば、展開船の総重量が2トン以下であるから、展開船をヘリコプターによって搬送することが可能となり、展開船を防護フェンスを展開する場所まで迅速に移動させることができる。よって、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、船体および小型船の両方を航行させて油等の周囲に防護フェンスを配置できるから、防護フェンスの展開をより迅速に行うことができる。
請求項4の発明によれば、防護フェンスが単体フェンスを連結して形成されており、各単体フェンスがガス充填手段を備えているから、船体に、防護フェンスにガスを充填するための装置を設ける必要がない。よって、船体には防護フェンスのみを搭載すればよいので、船体を小型化でき、展開船全体をコンパクトにすることができる。
請求項5の発明によれば、放出扉をフェンス収容部から外方に向かって揺動させればフェンス収容部の床面から海上に向かって下傾するスローブ面とすることができる。このため、浮遊体を水上に放出して、船体を浮遊体から離間するように航行させれば、防護フェンスの先端が浮遊体に引張られるので、防護フェンスはスローブ面上を滑って水上に放出される。したがって、防護フェンスを水上に容易かつ円滑に供給することができるから、防護フェンスの展開時間を短くすることができる。
請求項6の発明によれば、水上に放出されるとき、防護フェンスは折り目と折り目の間の部分(以下、単にシート部という)が折り目を支点としてフェンス収容部から外方に向かって揺動しながら蛇腹が伸長する。このとき、放出制御手段より外方に放出された直後のシート部(以下、単に直後のシート部という)と、このシート部と連続しかつ放出制御手段よりも内方に位置するシート部(以下、次のシート部という)との接続部分に対して、この接続部分の反対側に位置するフェンス保持部によって次のシート部とフェンス収容部の他端側の間に位置する防護フェンスは折り畳んだ状態で保持される。よって、必要な量の防護フェンスだけを確実に放出できるから、防護フェンスの水上への放出をスムースに行うことができる。
請求項7の発明によれば、直後のシート部が揺動すれば、次のシート部との接続部分と同じ側にある扉は外方に揺動するので、直後のシート部が放出されるときの抵抗にならない。また、次のシート部との接続部分の反対側にある扉によって次のシート部をフェンス収容部の他端側に向けて押し付けることができるので、防護フェンスをフェンス収容部内に折り畳んだ状態で確実に保持しておくことができる。
請求項8の発明によれば、押出手段によって、フェンス収容部内の防護フェンスを、フェンス収容部から放出された防護フェンスの分だけフェンス収容部の一端に向かって移動させれば、フェンス収容部の一端と防護フェンスの基端との間の距離を、常にフェンス保持部内に収容されている防護フェンスの厚さと同じとすることができる。よって、防護フェンスの放出中であっても、フェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持できるから、防護フェンスをスムースに放出できる。
請求項9の発明によれば、移動部によって押出板を移動させて、フェンス収容部内の防護フェンスを、フェンス収容部から放出された防護フェンスの分だけフェンス収容部の一端に向かって移動させれば、フェンス収容部の一端と押出板、つまりフェンス収容部の一端と防護フェンスの基端との間の距離を、常にフェンス保持部内に収容されている防護フェンスの厚さと同じとすることができる。しかも、防護フェンスの基端部は押出板によって保持されるから、確実にフェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持でき、防護フェンスをスムースに放出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の展開船1は、水上に防護フェンス50を迅速に展開するためのものであり、防護フェンス50の水上への展開を容易かつ迅速に行えるようにしたこと、展開船1を現場水域に容易かつ迅速に移動できるようにしたことが特徴である。
【0009】
まず、本実施形態の展開船1を説明する前に、展開船1に収容され、水上に展開される防護フェンス50について説明する。
図6は防護フェンス50の概略説明図である。同図に示すように、防護フェンス50は、複数の単体フェンス51を連結して形成されたものである。各単体フェンス51は、樹脂等を素材とするシート51s 同士を重ね合わせて、縫ったり接着したりすることによって形成されている。そして、重ね合わせたシート51s 同士の間には、その内部にガスを封入することができる、中空な空間であるフロート室52が設けられている。つまり、ガスが封入されていない状態では、単体フェンス51は薄いシートが重なり合っているだけの部材であるから、その状態で折り畳めば、長尺な防護フェンス50であっても、小さなスペースに収容しておくことができる。
【0010】
図6に示すように、前記フロート室52は、メインフロート52a と、このメインフロート52a の上部および下部にそれぞれ設けられた防護壁フロート52b 、下部フロート52c から構成されており、各フロート52a 〜52c は、互いに気密に分離されている。このため、3つのフロート52a 〜52c のうち、1または2のフロートが破損しても、残りのフロート内はガスが封入された状態に保たれるので、フロート室52の破損により防護フェンス50の油等をせき止める機能が低下することを防ぐことができる。
【0011】
また、単体フェンス51は、その下部に重錘を兼ねたガス充填手段55を備えている。このガス充填手段55は、各フロート52a 〜52c にガスを供給するためのものであり、炭酸ガス(CO2)や窒素等のガスが封入され、各フロート52a 〜52c に連通されたガスカートリッジ56と、ガスカートリッジ56と各フロート52a 〜52c の間に介装され、ガスカートリッジ56から各フロート52a 〜52c へのガスの放出を制御する放出制御器57とから構成されている。放出制御器57は、図示しない水センサを備えており、この水センサが水に触れるとガスカートリッジ56と各フロート52a 〜52c とが連通され、各フロート52a 〜52c 内にガスが充填される。このため、防護フェンス50を、水上に放出すればガス充填手段55によって各単体フェンス51のフロート室52にガスが充填されるので、防護フェンス50を水上に容易に展開することができる。
【0012】
なお、単体フェンス51の上部にメッシュシート59を設けておけば、水上の波によって飛散する油等を捕捉することができる。
さらになお、防護フェンス50の表面に、繊維によって形成された油等を吸着する吸着シートを剥離可能に貼付しておけば、防護フェンス51に付着したオイル等の除去が容易になる。
さらになお、メインフロート52a の側方に横転防止板58を設けておけば、防護フェンス50の横揺れや横転を確実に防ぐことができる。
【0013】
また、本実施形態の展開船1に収容される防護フェンス50は、上記の構造のものに限定されず、折り畳んで収容しておくことができ、しかも水上に放出すれば自動的にフロート室52にガスが充填されるものであれば、とくに限定はない。
【0014】
さて、本実施形態の展開船1を説明する。
図1は本実施形態の展開船1の概略断面図である。図2は本実施形態の展開船1の概略平面図である。図1および図2において、符号2は展開船1の船体を示している。この船体2はエンジンやモータ等の動力源によって駆動される推進機構を備えており、自走可能なものである。この船体2の前部には、人が乗るための操縦室2aを備えている。このため、船体2を水上に浮かべれば、人が操縦して自走することができる。
なお、船体2は人が乗って操縦するものに限られず、無線操縦することができるものでもよい。この場合、操縦室2aが不要となるので、船体2をよりコンパクトにすることができる。
さらになお、展開船1は、水に浮かんだ状態で移動する通常の船に限られず、水面に浮上した状態で移動する空気クッションビークル、例えばホバークラフトなどでもよい。
【0015】
図1および図2に示すように、船体2の操縦室2aよりも後部には、フェンス収容部10が設けられている。このフェンス収容部10の一端(船体2の後端側の端部)には、放出扉11が設けられている。この放出扉11は、その下端が船体2の甲板に蝶番等を介して取り付けられている。つまり、放出扉11は、その上端が船体2の後方(図1では右方)、言い換えればフェンス収容部10から外方に向かって揺動可能に設けられている。このため、放出扉11の上端をフェンス収容部10から外方に向かって揺動させると、その内面をフェンス収容部10の床面、つまり船体2の甲板から水面に向かって下傾するスロープ面とすることができる。
【0016】
図1において、符号2bは浮遊体格納室を示している。浮遊体格納室2bの入口、つまり船体2の後端には、浮遊体格納室2b内と外部とを液密に密閉する密閉扉2cが設けられている。そして、この浮遊体格納室2bは、船体2を水上に浮かべたときに、その床面が、船体2の吃水線よりも下方に位置するように形成されている。
この浮遊体格納室2b内には、浮遊体である、例えば水上バイクやラジコンボート、空気クッションビークル等の水上航行可能な小型船3が収容されている。この小型船3は、エンジンやモータ等の動力源によって駆動されるの推進機構を有しており、無線操縦によって水上を自走可能なものである。
このため、密閉扉2cを開けば、浮遊体格納室2b内に水が浸入し、小型船3が浮遊体格納室2b内に浸入した水に浮かぶので、その状態で小型船3を駆動させれば、小型船3を浮遊体格納室2b内から水上に放出させることができる。
この小型船3の推進機構が、特許請求の範囲にいう放出部である。
【0017】
なお、小型船3は無線操縦されるものに限らず、人が乗って操縦するものでもよいが、無線操縦するものであれば非常にコンパクトにクすることができ、小型船3を搭載する船体2小型化できるし、船体2に浮遊体格納室2bの内容積も小さくできるから、船体2の剛性も高く保つことができる。
さらになお、浮遊体格納室2bに、スプリングやゴム、コンベア等、小型船3を浮遊体格納室2b内から外部に放出する機構を設けてもよい。この場合、浮遊体格納室2bの床面が、船体2の吃水線よりも上方に位置するように形成されていたり、浮遊体格納室2b内に浸入した水の量が少ない場合でも、小型船3を浮遊体格納室2bから水上に確実に放出することができる。
さらになお、小型船3に代えて、単なる浮きやブイ等を浮遊体として使用してもよい。この場合も、浮遊体格納室2bに、スプリングやゴム等、浮遊体を浮遊体格納室2b内から外部に放出する機構を設けれておけば、浮遊体を浮遊体格納室2bから水上に確実に放出することができる。
【0018】
前記フェンス収容部10には、前記防護フェンス50がその基端と先端との間が蛇腹状、かつその折り目がフェンス収容部10の底面に対して垂直となるように折り畳まれて収容されている。つまり、防護フェンス50は、折り目と折り目の間に形成される複数のシート状の部分(以下、単にシート部という)が、重なりあった状態でフェンス収容部10内に収容されているのである。そして、防護フェンス50は、その基端がフェンス収容部10の操縦室2a側の端部(図1では右側端部)に固定されており、その先端は放出扉11側に配置されている。この防護フェンス50の先端は、ロープRPやワイヤー等を介して前記小型船3に取り付けられている。この防護フェンス50と小型船3を連結するロープRPは、両者の中間部分を前記放出扉11の上端に引っ掛けるように配置されているが、その理由は後述する。
【0019】
つぎに、本実施形態の展開船1による防護フェンス50の展開作業を説明する。
図3および図4は本実施形態の展開船1による防護フェンス50展開作業の説明図である。まず、オイルの流出や赤潮が発生した現場水域に本実施形態の展開船1を配置する。そして、船体2の密閉扉2cを開くと、浮遊体格納室2b内に水が浸入するので、小型船3が水に浮かぶ。その状態から、小型船3を駆動させれば、小型船3は浮遊体格納室2bから水上に放出される(図3(A))。
小型船3を船体2から離間させるとロープRPが引張られる。前述したように、このロープRPは防護フェンス50と小型船3との間の部分を放出扉11の上端に引っ掛けるように配置されているので、ロープRPが引っ張られることによって放出扉11もその上端が外方に引張られることになる。すると、放出扉11は外方に揺動するから、放出扉11によってフェンス収容部10と水面との間にスロープ面が形成される(図3(B))。
【0020】
スロープ面が形成されると、船体2も駆動させ、船体2と小型船3を互いに離間するように移動させる。すると、フェンス収容部10内からスロープを通って両者の距離に応じた長さだけ防護フェンス50が順次水上に供給される(図3(C))。そして、水上に供給された防護フェンス50は、各単体フェンス51のガス充填手段55によってフロート室52にガスが充填されるので、水上に浮遊する。各単体フェンス51はその下端にガス充填手段55を有しおり、このガス充填手段55が重錘として機能するから、船体2と小型船3の間の水上には、防護フェンス50が立設される。
【0021】
そして、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体2および小型船3を移動させれば、船体2および小型船3の航跡に沿って防護フェンス50が配置立設されるので、流出油等を包囲するように防護フェンス50を展開することができる(図4)。つまり、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体2および小型船3を航行させるだけで、防護フェンス50の水上への放出と流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンス50の展開を短時間で行うことができる。
【0022】
しかも、防護フェンス50を船体2から放出するだけで防護フェンス50を配置することができるから、水上に放出した防護フェンス50を、船体2や小型船3によって大きく移動させる必要がない。言い換えれば、船体2や小型船3によって防護フェンス50をほとんど曳航しないから、船体2や小型船3の駆動力を小さくでき、船体2および小型船をより小型化できる。
そして、船体2だけでなく小型船3も航行させて油等の周囲に防護フェンス50を配置するから、防護フェンス50の展開をより迅速に行うことができる。
【0023】
また、防護フェンス50の各単体フェンス51がガス充填手段55を備えているから、船体2に防護フェンス50にガスを充填するための装置を設ける必要がない。よって、船体2には防護フェンス50のみを搭載すればよいので、船体2を小型化でき、展開船1全体をコンパクトにすることができる。
【0024】
そして、展開船1の総重量を2トン以下となるようにすれば、展開船をヘリコプターによって搬送することが可能となる(図5)。すると、現場水域への展開船1の移動が早くなるので、防護フェンス50を展開する作業の開始を速くすることができる。つまり、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
【0025】
なお、展開船1は自走することができるから、各地の港やマリーナに繋留したり、その近傍の陸上などに保管しておけば、港等の近海でオイルの流出事故や赤潮等の発生のときに、すぐに現場に派遣することができる。
さらになお、展開船1の全長を5〜7m程度とし、幅を2.5〜3m程度とすれば、輸送船等の船舶に常時積載しておくことができる。すると、展開船1を積んだ輸送船等からの油の流出や、この輸送船等の近海で起こった他の船舶の遭難などによって油の流出事故が発生しても、展開船1によって流出油を拡散を迅速に防ぐことができるので、好適である。そして、トラックなどの陸上搬送手段によっても展開船1の搬送を行うことができるから、展開船1を有しない池や湖などおいて藻の大量発生などがおきても、その池などまで簡単に展開船1を搬送することができる。
【0026】
また、図1〜図3に示すように、フェンス収容部10に、以下のごとき放出制御手段20や、押出手段30を設ければ、フェンス収容部10から水上への防護フェンス50の放出作業をより確実に行うことができる。
【0027】
図1に示すように、フェンス収容部10内の操縦室2a側の端部と、防護フェンス50の基端との間には、押出板31が設けられている。この押出板31には、防護フェンス50の基端が取り付けられている。この押出板31は、その下端には図示しない雌ネジが形成されており、この雌ネジには、ネジ軸32が螺合している。このネジ軸32は、その軸方向が船体2の軸方向と平行に設けられている。そして、ネジ軸32の一端にはこのネジ軸32を回転させるモータ33が取り付けられている。
このため、モータ33を駆動すれば、押出板31を船体2の軸方向に沿って移動させることができるから、押出板31によって防護フェンス50を放出扉11に向けて押すことができる。つまり、押出板31によって防護フェンス50の放出を補助することができる。
上記のネジ軸32、モータ33が特許請求の範囲にいう押出手段の移動部である。
【0028】
なお、押出板31を移動する移動部は上記の構成に限られず、油圧シリンダによって移動させる構成としてもよいし、バネの復元力を利用して移動させる構成としてもよく、限定はない。
とくに、バネを用いた場合、押出板31とフェンス収容部10内の操縦室2a側の端部との間にバネを自然長から収縮させた状態で配置しておけば、常に押出板31によって防護フェンス50を放出扉11に向けて押すことができるから、防護フェンス50を確実に折り畳んだ状態でフェンス収容部10内に収容しておくことができるし、防護フェンス50の放出量に応じて自動的に押出板31を移動させることができる。なお、バネを自然長から伸長させた状態で、押出板31とフェンス収容部10内の一端側との間に配置しておいても同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0029】
また、図2に示すように、前記放出扉11と、防護フェンス50の先端との間には、放出制御手段20の左右一対の制御扉21,22が設けられている。この左右一対の制御扉21,22は、その基端を支点として水平方向揺動可能に設けられている。この左右一対の制御扉21,22の基端部は、いずれもフェンス収容部10内の防護フェンス50の両側端、つまり防護フェンス50の折り目よりも外側に位置するように設けられている。言い換えれば、左右一対の制御扉21,22は、船体2の後端からみて観音開きとなるように設けられているのである。
図示しないが、左右一対の制御扉21,22には、揺動制御手段が設けられている。この揺動制御手段は、バネやゴム等、左右一対の制御扉21,22をフェンス収容部10内に向けて揺動するように付勢する、付勢手段と、左右一対の制御扉21,22が、平面視で両扉の基端同士を結ぶ線より内方(図2では左側)に揺動することを防ぐためストッパとから構成されている。
このため、左右一対の制御扉21,22は、何も力が加わっていないときには、平面視で、両扉が、互いの基端同士を結ぶ線(以下、基準線という)上に保持され(図2参照)、フェンス収容部10の内方から外方に向かうような力が加わると、外方には揺動するのである。
【0030】
なお、揺動制御手段は上記のものに限られず、左右一対の制御扉21,22に力が加わっていないときには、両扉を基準線上に保持することができ、フェンス収容部10の内方から外方に向かうような力が加わると、外方には揺動させることができる構成であれば、特に限定はない。
さらになお、揺動制御手段はモータ等の駆動手段によって揺動されるものでもよく、この場合には、モータ等の駆動を制御して、所望のタイミングで左右一対の制御扉21,22を駆動させることができる。
【0031】
図3および図5に示すように、フェンス収容部10内の防護フェンス50は、シート部が折り目を支点として外方に向かって揺動しながら放出される。すると、基準線より外方に放出された直後のシート部Aは、この直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1側の制御扉21をフェンス収容部10の内方から外方に向けて押すように揺動する。すると、揺動制御手段の付勢力よりも強い力が制御扉21に加わるので、制御扉21が直後のシート部Aとともに外方に揺動する。よって、制御扉21が直後のシート部Aが放出されるときの抵抗にならず、直後のシート部Aをスムースに放出することができる。
一方、直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1側の制御扉22に対して、次のシート部Bから加わる力は弱いので、制御扉22は揺動制御手段によって基準線の位置で保持される。すると、次のシート部Bは、フェンス収容部10内の操縦室2a側の端部に向けて押し付けられたような状態となる。よって、次のシート部Bよりフェンス収容部10内の操縦室2a側の部分は揺動することができないので、フェンス収容部10内に確実に保持することができる。
なお、直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1が、制御扉22側にある場合には、制御扉22が直後のシート部Aとともに外方に揺動し、揺動制御手段によって制御扉21が基準線の位置で保持されるのはいうまでもない。
【0032】
そして、押出手段30と放出制御手段20をいずれも設けている場合、押出板31の移動量を調整してフェンス収容部10から放出された防護フェンス50の分だけ押出板31をフェンス収容部10の一端、つまり放出扉11に向かって移動させるようにしておけば、左右一対の制御扉21,22と押出板31との間の距離を、常にフェンス保持部10内に収容されている防護フェンス50の厚さと同じとすることができる。すると、フェンス収容部10内に位置する防護フェンス50は、押出板31と左右一対の制御扉21,22のいずれか一方の扉とによって挟まれるので、フェンス収容部10内に位置する防護フェンス50は、常に折り畳んだ状態で保持される。よって、防護フェンス50がフェンス収容部10内で延びたりすることを防ぐことができ、防護フェンス50の放出をよりスムースに行うことができる。
上記の左右一対の制御扉21,22が特許請求の範囲にいう放出制御手段のフェンス保持部である。
【0033】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、防護フェンスの放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンスの展開を短時間で行うことができ、船体の駆動力を小さくでき、船体も小型化できる。
請求項2の発明によれば、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、船体および小型船の両方を航行させて油等の周囲に防護フェンスを配置できるから、防護フェンスの展開をより迅速に行うことができる。
請求項4の発明によれば、船体には防護フェンスのみを搭載すればよいので、船体を小型化でき、展開船全体をコンパクトにすることができる。
請求項5の発明によれば、防護フェンスを水上に容易かつ円滑に供給することができるから、防護フェンスの展開時間を短くすることができる。
請求項6の発明によれば、必要な量の防護フェンスだけを確実に放出できるから、防護フェンスの水上への放出をスムースに行うことができる。
請求項7の発明によれば、扉がシート部が放出されるときの抵抗にならず、しかも、防護フェンスをフェンス収容部内に折り畳んだ状態で確実に保持しておくことができる。
請求項8の発明によれば、フェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持できるから、防護フェンスをスムースに放出できる。
請求項9の発明によれば、移動部によって押出板を移動させて、フェンス収容部内の防護フェンスを、確実にフェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持でき、防護フェンスをスムースに放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の展開船1の概略断面図である。
【図2】本実施形態の展開船1の概略平面図である。
【図3】本実施形態の展開船1による防護フェンス展開作業の説明図である。
【図4】本実施形態の展開船1による防護フェンス展開作業の説明図である。
【図5】本実施形態の展開船1を搬送する状況の説明図である。
【図6】防護フェンス50の放出作業中における船体2の後部の概略拡大図である。
【図7】防護フェンス50の概略説明図である。
【符号の説明】
1 展開船1
2 船体
3 小型船
10 フェンス収容部
11 放出扉
20 放出制御手段
21 制御扉
22 制御扉
30 押出手段
31 押出板
50 防護フェンス
51 単体フェンス
55 ガス充填手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、水上用防護フェンスの展開船に関する。船舶の座礁や転覆等の海難事故によるオイル流出事故は、その経済的損失だけでなく、自然の生態系に与える影響も甚大である。また、毎年のように発生する赤潮や湖における藻の異常繁殖は、漁業やその他の生態系に対して深刻な被害をもたらす。そして、オイル流出や赤潮等による水面汚染の被害は、時間経過とともに加速度的に広がるため、一刻も早い迅速な対応が必要となる。本発明は、かかる水面汚染の拡散防止に使用される水上用防護フェンスの展開船に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的なオイルフェンスは、水面に浮遊する浮体部(いわゆるフロート)とこの浮体部の下部に設けられ水中に浸漬されるスカート部とを備えた単体フェンスが、複数連結されて形成されている。このオイルフェンスを水上に展開するときには、オイルフェンスを母船から水上に投下して、その両端を曳航船に連結し、この曳航船によって曳航することによって行われる(例えば、特許文献1,2参照)。そして、流出油の周囲にオイルフェンスを展開して流出油を包囲すれば、オイルフェンスの浮体部とスカートによって流出油をせき止めることができるから、流出油の拡散を防ぐことができる。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−195857号公報
【特許文献2】
特開2000−81046号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、流出油は波や風によって急速に拡散してしまうため、オイルフェンスを迅速に展開する必要がある。しかし、従来、オイルフェンスの水上への投下は人手によって行われていたため、投下に時間がかかる。このため流出現場に到着してからオイルフェンスの展開までに時間がかかるという問題がある。
また、特許文献2に示すように、油回収装置が接続されたオイルフェンスであれば、油回収装置を水上に落下させてから母船を移動させれば、母船が油回収装置から離れるに従い母船上のオイルフェンスが油回収装置によって引っ張られる。すると、オイルフェンスは自動的に水上に投下されるから、オイルフェンスの展開時間を短縮することができる。しかし、特許文献2の場合、オイルフェンスと油回収装置の両方を同じ船に積載しておかなければならず、大型の母船が必要となる。すると、油が流出した現場が陸地から離れている場合、現場水域に船が到着するまでには非常に長時間を要する。このため、船が現場に到着したときには既に油が広範囲に拡散してしまい、オイルフェンスによって油を包囲することが困難な状況となってしまうという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑み、現場水域まで短時間で移動することができ、オイルフェンスを迅速かつ的確に展開することができる水上用防護フェンスの展開船を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の水上用防護フェンスの展開船は、防護フェンスを水上に展開するための展開船であって、該展開船が、前記防護フェンスが搭載され、該防護フェンスの基端が接続されている船体と、該船体に搭載されており、前記防護フェンスの先端が接続されている浮遊体と、該浮遊体を、前記船体から水上に放出する放出部とからなり、前記防護フェンスが、前記船体に折り畳んだ状態で搭載されていることを特徴とする。
請求項2の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記展開船の総重量が、2トン以下であることを特徴とする。
請求項3の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記浮遊体が、水上航行可能な小型船であることを特徴とする。
請求項4の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記防護フェンスが、複数の単体フェンスを連結して形成されたものであり、各単体フェンスが、それぞれガス充填手段を備えており、前記単体フェンスが水上に投下されると、前記ガス充填手段によって前記単体フェンスの内部にガスが充填されることを特徴とする。
請求項5の水上用防護フェンスの展開船は、請求項1記載の発明において、前記船体に、前記防護フェンスを収容するためのフェンス収容部が設けられており、前記フェンス収容部の一端に、下端が前記船体に取り付けられ、該下端を支点として前記フェンス収容部から外方に向かって揺動可能な放出扉が設けられており、前記防護フェンスが、その基端と先端との間が蛇腹状に折り畳まれており、その先端が前記放出扉側に位置するように前記フェンス収容部内に収容されており、前記放出扉を前記フェンス収容部から外方に向かって揺動させると、該揺動扉の内面が、前記フェンス収容部の床面から水面に向かって下傾するスロープ面となるスロープ面となることを特徴とする。
請求項6の水上用防護フェンスの展開船は、請求項5記載の発明において、前記防護フェンスが、その折り目が前記フェンス収容部の底面に対して垂直となるように、前記フェンス収容部内に収容されており、前記フェンス収容部において、前記放出扉の内方に放出制御手段が設けられており、該放出制御手段が、該放出制御手段と前記フェンス収容部の他端との間に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持する、左右一対のフェンス保持部を備えており、前記防護フェンスにおける前記放出制御手段より外方に位置する部分と該放出制御手段より内方に位置する部分との接続部分に対して、該接続部分の反対側に位置する前記フェンス保持部が、前記放出制御手段よりも内方に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持することを特徴とする。
請求項7の水上用防護フェンスの展開船は、請求項6記載の発明において、前記左右一対のフェンス保持部が、観音開きの扉であることを特徴とする。
請求項8の水上用防護フェンスの展開船は、請求項5記載の発明において、前記フェンス収容部が、該フェンス収容部内の前記防護フェンスを、前記放出扉に向けて押す押出手段を備えていることを特徴とする。
請求項9の水上用防護フェンスの展開船は、請求項8記載の発明において、前記押出手段が、前記防護フェンスの基端部とフェンス収容部の他端部との間に設けられた押出板と、該押出板を前記放出扉に向けて移動させる移動部とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、放出部によって浮遊体を水上に放出し、船体を浮遊体から離間するように航行させれば、防護フェンスの先端が浮遊体に引張られるので、船体と浮遊体との距離に応じた長さの防護フェンスを水上に供給することができる。そして、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体を移動させれば、防護フェンスによって流出油を包囲することができる。したがって、防護フェンスの放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンスの展開を短時間で行うことができる。しかも、防護フェンスを船体から放出するだけで防護フェンスを配置することができ、船体によって水上に放出した防護フェンスを移動させる量を少なくできるから、船体の駆動力を小さくでき、船体も小型化できる。
請求項2の発明によれば、展開船の総重量が2トン以下であるから、展開船をヘリコプターによって搬送することが可能となり、展開船を防護フェンスを展開する場所まで迅速に移動させることができる。よって、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、船体および小型船の両方を航行させて油等の周囲に防護フェンスを配置できるから、防護フェンスの展開をより迅速に行うことができる。
請求項4の発明によれば、防護フェンスが単体フェンスを連結して形成されており、各単体フェンスがガス充填手段を備えているから、船体に、防護フェンスにガスを充填するための装置を設ける必要がない。よって、船体には防護フェンスのみを搭載すればよいので、船体を小型化でき、展開船全体をコンパクトにすることができる。
請求項5の発明によれば、放出扉をフェンス収容部から外方に向かって揺動させればフェンス収容部の床面から海上に向かって下傾するスローブ面とすることができる。このため、浮遊体を水上に放出して、船体を浮遊体から離間するように航行させれば、防護フェンスの先端が浮遊体に引張られるので、防護フェンスはスローブ面上を滑って水上に放出される。したがって、防護フェンスを水上に容易かつ円滑に供給することができるから、防護フェンスの展開時間を短くすることができる。
請求項6の発明によれば、水上に放出されるとき、防護フェンスは折り目と折り目の間の部分(以下、単にシート部という)が折り目を支点としてフェンス収容部から外方に向かって揺動しながら蛇腹が伸長する。このとき、放出制御手段より外方に放出された直後のシート部(以下、単に直後のシート部という)と、このシート部と連続しかつ放出制御手段よりも内方に位置するシート部(以下、次のシート部という)との接続部分に対して、この接続部分の反対側に位置するフェンス保持部によって次のシート部とフェンス収容部の他端側の間に位置する防護フェンスは折り畳んだ状態で保持される。よって、必要な量の防護フェンスだけを確実に放出できるから、防護フェンスの水上への放出をスムースに行うことができる。
請求項7の発明によれば、直後のシート部が揺動すれば、次のシート部との接続部分と同じ側にある扉は外方に揺動するので、直後のシート部が放出されるときの抵抗にならない。また、次のシート部との接続部分の反対側にある扉によって次のシート部をフェンス収容部の他端側に向けて押し付けることができるので、防護フェンスをフェンス収容部内に折り畳んだ状態で確実に保持しておくことができる。
請求項8の発明によれば、押出手段によって、フェンス収容部内の防護フェンスを、フェンス収容部から放出された防護フェンスの分だけフェンス収容部の一端に向かって移動させれば、フェンス収容部の一端と防護フェンスの基端との間の距離を、常にフェンス保持部内に収容されている防護フェンスの厚さと同じとすることができる。よって、防護フェンスの放出中であっても、フェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持できるから、防護フェンスをスムースに放出できる。
請求項9の発明によれば、移動部によって押出板を移動させて、フェンス収容部内の防護フェンスを、フェンス収容部から放出された防護フェンスの分だけフェンス収容部の一端に向かって移動させれば、フェンス収容部の一端と押出板、つまりフェンス収容部の一端と防護フェンスの基端との間の距離を、常にフェンス保持部内に収容されている防護フェンスの厚さと同じとすることができる。しかも、防護フェンスの基端部は押出板によって保持されるから、確実にフェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持でき、防護フェンスをスムースに放出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の展開船1は、水上に防護フェンス50を迅速に展開するためのものであり、防護フェンス50の水上への展開を容易かつ迅速に行えるようにしたこと、展開船1を現場水域に容易かつ迅速に移動できるようにしたことが特徴である。
【0009】
まず、本実施形態の展開船1を説明する前に、展開船1に収容され、水上に展開される防護フェンス50について説明する。
図6は防護フェンス50の概略説明図である。同図に示すように、防護フェンス50は、複数の単体フェンス51を連結して形成されたものである。各単体フェンス51は、樹脂等を素材とするシート51s 同士を重ね合わせて、縫ったり接着したりすることによって形成されている。そして、重ね合わせたシート51s 同士の間には、その内部にガスを封入することができる、中空な空間であるフロート室52が設けられている。つまり、ガスが封入されていない状態では、単体フェンス51は薄いシートが重なり合っているだけの部材であるから、その状態で折り畳めば、長尺な防護フェンス50であっても、小さなスペースに収容しておくことができる。
【0010】
図6に示すように、前記フロート室52は、メインフロート52a と、このメインフロート52a の上部および下部にそれぞれ設けられた防護壁フロート52b 、下部フロート52c から構成されており、各フロート52a 〜52c は、互いに気密に分離されている。このため、3つのフロート52a 〜52c のうち、1または2のフロートが破損しても、残りのフロート内はガスが封入された状態に保たれるので、フロート室52の破損により防護フェンス50の油等をせき止める機能が低下することを防ぐことができる。
【0011】
また、単体フェンス51は、その下部に重錘を兼ねたガス充填手段55を備えている。このガス充填手段55は、各フロート52a 〜52c にガスを供給するためのものであり、炭酸ガス(CO2)や窒素等のガスが封入され、各フロート52a 〜52c に連通されたガスカートリッジ56と、ガスカートリッジ56と各フロート52a 〜52c の間に介装され、ガスカートリッジ56から各フロート52a 〜52c へのガスの放出を制御する放出制御器57とから構成されている。放出制御器57は、図示しない水センサを備えており、この水センサが水に触れるとガスカートリッジ56と各フロート52a 〜52c とが連通され、各フロート52a 〜52c 内にガスが充填される。このため、防護フェンス50を、水上に放出すればガス充填手段55によって各単体フェンス51のフロート室52にガスが充填されるので、防護フェンス50を水上に容易に展開することができる。
【0012】
なお、単体フェンス51の上部にメッシュシート59を設けておけば、水上の波によって飛散する油等を捕捉することができる。
さらになお、防護フェンス50の表面に、繊維によって形成された油等を吸着する吸着シートを剥離可能に貼付しておけば、防護フェンス51に付着したオイル等の除去が容易になる。
さらになお、メインフロート52a の側方に横転防止板58を設けておけば、防護フェンス50の横揺れや横転を確実に防ぐことができる。
【0013】
また、本実施形態の展開船1に収容される防護フェンス50は、上記の構造のものに限定されず、折り畳んで収容しておくことができ、しかも水上に放出すれば自動的にフロート室52にガスが充填されるものであれば、とくに限定はない。
【0014】
さて、本実施形態の展開船1を説明する。
図1は本実施形態の展開船1の概略断面図である。図2は本実施形態の展開船1の概略平面図である。図1および図2において、符号2は展開船1の船体を示している。この船体2はエンジンやモータ等の動力源によって駆動される推進機構を備えており、自走可能なものである。この船体2の前部には、人が乗るための操縦室2aを備えている。このため、船体2を水上に浮かべれば、人が操縦して自走することができる。
なお、船体2は人が乗って操縦するものに限られず、無線操縦することができるものでもよい。この場合、操縦室2aが不要となるので、船体2をよりコンパクトにすることができる。
さらになお、展開船1は、水に浮かんだ状態で移動する通常の船に限られず、水面に浮上した状態で移動する空気クッションビークル、例えばホバークラフトなどでもよい。
【0015】
図1および図2に示すように、船体2の操縦室2aよりも後部には、フェンス収容部10が設けられている。このフェンス収容部10の一端(船体2の後端側の端部)には、放出扉11が設けられている。この放出扉11は、その下端が船体2の甲板に蝶番等を介して取り付けられている。つまり、放出扉11は、その上端が船体2の後方(図1では右方)、言い換えればフェンス収容部10から外方に向かって揺動可能に設けられている。このため、放出扉11の上端をフェンス収容部10から外方に向かって揺動させると、その内面をフェンス収容部10の床面、つまり船体2の甲板から水面に向かって下傾するスロープ面とすることができる。
【0016】
図1において、符号2bは浮遊体格納室を示している。浮遊体格納室2bの入口、つまり船体2の後端には、浮遊体格納室2b内と外部とを液密に密閉する密閉扉2cが設けられている。そして、この浮遊体格納室2bは、船体2を水上に浮かべたときに、その床面が、船体2の吃水線よりも下方に位置するように形成されている。
この浮遊体格納室2b内には、浮遊体である、例えば水上バイクやラジコンボート、空気クッションビークル等の水上航行可能な小型船3が収容されている。この小型船3は、エンジンやモータ等の動力源によって駆動されるの推進機構を有しており、無線操縦によって水上を自走可能なものである。
このため、密閉扉2cを開けば、浮遊体格納室2b内に水が浸入し、小型船3が浮遊体格納室2b内に浸入した水に浮かぶので、その状態で小型船3を駆動させれば、小型船3を浮遊体格納室2b内から水上に放出させることができる。
この小型船3の推進機構が、特許請求の範囲にいう放出部である。
【0017】
なお、小型船3は無線操縦されるものに限らず、人が乗って操縦するものでもよいが、無線操縦するものであれば非常にコンパクトにクすることができ、小型船3を搭載する船体2小型化できるし、船体2に浮遊体格納室2bの内容積も小さくできるから、船体2の剛性も高く保つことができる。
さらになお、浮遊体格納室2bに、スプリングやゴム、コンベア等、小型船3を浮遊体格納室2b内から外部に放出する機構を設けてもよい。この場合、浮遊体格納室2bの床面が、船体2の吃水線よりも上方に位置するように形成されていたり、浮遊体格納室2b内に浸入した水の量が少ない場合でも、小型船3を浮遊体格納室2bから水上に確実に放出することができる。
さらになお、小型船3に代えて、単なる浮きやブイ等を浮遊体として使用してもよい。この場合も、浮遊体格納室2bに、スプリングやゴム等、浮遊体を浮遊体格納室2b内から外部に放出する機構を設けれておけば、浮遊体を浮遊体格納室2bから水上に確実に放出することができる。
【0018】
前記フェンス収容部10には、前記防護フェンス50がその基端と先端との間が蛇腹状、かつその折り目がフェンス収容部10の底面に対して垂直となるように折り畳まれて収容されている。つまり、防護フェンス50は、折り目と折り目の間に形成される複数のシート状の部分(以下、単にシート部という)が、重なりあった状態でフェンス収容部10内に収容されているのである。そして、防護フェンス50は、その基端がフェンス収容部10の操縦室2a側の端部(図1では右側端部)に固定されており、その先端は放出扉11側に配置されている。この防護フェンス50の先端は、ロープRPやワイヤー等を介して前記小型船3に取り付けられている。この防護フェンス50と小型船3を連結するロープRPは、両者の中間部分を前記放出扉11の上端に引っ掛けるように配置されているが、その理由は後述する。
【0019】
つぎに、本実施形態の展開船1による防護フェンス50の展開作業を説明する。
図3および図4は本実施形態の展開船1による防護フェンス50展開作業の説明図である。まず、オイルの流出や赤潮が発生した現場水域に本実施形態の展開船1を配置する。そして、船体2の密閉扉2cを開くと、浮遊体格納室2b内に水が浸入するので、小型船3が水に浮かぶ。その状態から、小型船3を駆動させれば、小型船3は浮遊体格納室2bから水上に放出される(図3(A))。
小型船3を船体2から離間させるとロープRPが引張られる。前述したように、このロープRPは防護フェンス50と小型船3との間の部分を放出扉11の上端に引っ掛けるように配置されているので、ロープRPが引っ張られることによって放出扉11もその上端が外方に引張られることになる。すると、放出扉11は外方に揺動するから、放出扉11によってフェンス収容部10と水面との間にスロープ面が形成される(図3(B))。
【0020】
スロープ面が形成されると、船体2も駆動させ、船体2と小型船3を互いに離間するように移動させる。すると、フェンス収容部10内からスロープを通って両者の距離に応じた長さだけ防護フェンス50が順次水上に供給される(図3(C))。そして、水上に供給された防護フェンス50は、各単体フェンス51のガス充填手段55によってフロート室52にガスが充填されるので、水上に浮遊する。各単体フェンス51はその下端にガス充填手段55を有しおり、このガス充填手段55が重錘として機能するから、船体2と小型船3の間の水上には、防護フェンス50が立設される。
【0021】
そして、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体2および小型船3を移動させれば、船体2および小型船3の航跡に沿って防護フェンス50が配置立設されるので、流出油等を包囲するように防護フェンス50を展開することができる(図4)。つまり、流出油や赤潮、藻、アオコ等の周囲を周るように船体2および小型船3を航行させるだけで、防護フェンス50の水上への放出と流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンス50の展開を短時間で行うことができる。
【0022】
しかも、防護フェンス50を船体2から放出するだけで防護フェンス50を配置することができるから、水上に放出した防護フェンス50を、船体2や小型船3によって大きく移動させる必要がない。言い換えれば、船体2や小型船3によって防護フェンス50をほとんど曳航しないから、船体2や小型船3の駆動力を小さくでき、船体2および小型船をより小型化できる。
そして、船体2だけでなく小型船3も航行させて油等の周囲に防護フェンス50を配置するから、防護フェンス50の展開をより迅速に行うことができる。
【0023】
また、防護フェンス50の各単体フェンス51がガス充填手段55を備えているから、船体2に防護フェンス50にガスを充填するための装置を設ける必要がない。よって、船体2には防護フェンス50のみを搭載すればよいので、船体2を小型化でき、展開船1全体をコンパクトにすることができる。
【0024】
そして、展開船1の総重量を2トン以下となるようにすれば、展開船をヘリコプターによって搬送することが可能となる(図5)。すると、現場水域への展開船1の移動が早くなるので、防護フェンス50を展開する作業の開始を速くすることができる。つまり、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
【0025】
なお、展開船1は自走することができるから、各地の港やマリーナに繋留したり、その近傍の陸上などに保管しておけば、港等の近海でオイルの流出事故や赤潮等の発生のときに、すぐに現場に派遣することができる。
さらになお、展開船1の全長を5〜7m程度とし、幅を2.5〜3m程度とすれば、輸送船等の船舶に常時積載しておくことができる。すると、展開船1を積んだ輸送船等からの油の流出や、この輸送船等の近海で起こった他の船舶の遭難などによって油の流出事故が発生しても、展開船1によって流出油を拡散を迅速に防ぐことができるので、好適である。そして、トラックなどの陸上搬送手段によっても展開船1の搬送を行うことができるから、展開船1を有しない池や湖などおいて藻の大量発生などがおきても、その池などまで簡単に展開船1を搬送することができる。
【0026】
また、図1〜図3に示すように、フェンス収容部10に、以下のごとき放出制御手段20や、押出手段30を設ければ、フェンス収容部10から水上への防護フェンス50の放出作業をより確実に行うことができる。
【0027】
図1に示すように、フェンス収容部10内の操縦室2a側の端部と、防護フェンス50の基端との間には、押出板31が設けられている。この押出板31には、防護フェンス50の基端が取り付けられている。この押出板31は、その下端には図示しない雌ネジが形成されており、この雌ネジには、ネジ軸32が螺合している。このネジ軸32は、その軸方向が船体2の軸方向と平行に設けられている。そして、ネジ軸32の一端にはこのネジ軸32を回転させるモータ33が取り付けられている。
このため、モータ33を駆動すれば、押出板31を船体2の軸方向に沿って移動させることができるから、押出板31によって防護フェンス50を放出扉11に向けて押すことができる。つまり、押出板31によって防護フェンス50の放出を補助することができる。
上記のネジ軸32、モータ33が特許請求の範囲にいう押出手段の移動部である。
【0028】
なお、押出板31を移動する移動部は上記の構成に限られず、油圧シリンダによって移動させる構成としてもよいし、バネの復元力を利用して移動させる構成としてもよく、限定はない。
とくに、バネを用いた場合、押出板31とフェンス収容部10内の操縦室2a側の端部との間にバネを自然長から収縮させた状態で配置しておけば、常に押出板31によって防護フェンス50を放出扉11に向けて押すことができるから、防護フェンス50を確実に折り畳んだ状態でフェンス収容部10内に収容しておくことができるし、防護フェンス50の放出量に応じて自動的に押出板31を移動させることができる。なお、バネを自然長から伸長させた状態で、押出板31とフェンス収容部10内の一端側との間に配置しておいても同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0029】
また、図2に示すように、前記放出扉11と、防護フェンス50の先端との間には、放出制御手段20の左右一対の制御扉21,22が設けられている。この左右一対の制御扉21,22は、その基端を支点として水平方向揺動可能に設けられている。この左右一対の制御扉21,22の基端部は、いずれもフェンス収容部10内の防護フェンス50の両側端、つまり防護フェンス50の折り目よりも外側に位置するように設けられている。言い換えれば、左右一対の制御扉21,22は、船体2の後端からみて観音開きとなるように設けられているのである。
図示しないが、左右一対の制御扉21,22には、揺動制御手段が設けられている。この揺動制御手段は、バネやゴム等、左右一対の制御扉21,22をフェンス収容部10内に向けて揺動するように付勢する、付勢手段と、左右一対の制御扉21,22が、平面視で両扉の基端同士を結ぶ線より内方(図2では左側)に揺動することを防ぐためストッパとから構成されている。
このため、左右一対の制御扉21,22は、何も力が加わっていないときには、平面視で、両扉が、互いの基端同士を結ぶ線(以下、基準線という)上に保持され(図2参照)、フェンス収容部10の内方から外方に向かうような力が加わると、外方には揺動するのである。
【0030】
なお、揺動制御手段は上記のものに限られず、左右一対の制御扉21,22に力が加わっていないときには、両扉を基準線上に保持することができ、フェンス収容部10の内方から外方に向かうような力が加わると、外方には揺動させることができる構成であれば、特に限定はない。
さらになお、揺動制御手段はモータ等の駆動手段によって揺動されるものでもよく、この場合には、モータ等の駆動を制御して、所望のタイミングで左右一対の制御扉21,22を駆動させることができる。
【0031】
図3および図5に示すように、フェンス収容部10内の防護フェンス50は、シート部が折り目を支点として外方に向かって揺動しながら放出される。すると、基準線より外方に放出された直後のシート部Aは、この直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1側の制御扉21をフェンス収容部10の内方から外方に向けて押すように揺動する。すると、揺動制御手段の付勢力よりも強い力が制御扉21に加わるので、制御扉21が直後のシート部Aとともに外方に揺動する。よって、制御扉21が直後のシート部Aが放出されるときの抵抗にならず、直後のシート部Aをスムースに放出することができる。
一方、直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1側の制御扉22に対して、次のシート部Bから加わる力は弱いので、制御扉22は揺動制御手段によって基準線の位置で保持される。すると、次のシート部Bは、フェンス収容部10内の操縦室2a側の端部に向けて押し付けられたような状態となる。よって、次のシート部Bよりフェンス収容部10内の操縦室2a側の部分は揺動することができないので、フェンス収容部10内に確実に保持することができる。
なお、直後のシート部Aと次のシート部Bとの接続部分となる折り目R1が、制御扉22側にある場合には、制御扉22が直後のシート部Aとともに外方に揺動し、揺動制御手段によって制御扉21が基準線の位置で保持されるのはいうまでもない。
【0032】
そして、押出手段30と放出制御手段20をいずれも設けている場合、押出板31の移動量を調整してフェンス収容部10から放出された防護フェンス50の分だけ押出板31をフェンス収容部10の一端、つまり放出扉11に向かって移動させるようにしておけば、左右一対の制御扉21,22と押出板31との間の距離を、常にフェンス保持部10内に収容されている防護フェンス50の厚さと同じとすることができる。すると、フェンス収容部10内に位置する防護フェンス50は、押出板31と左右一対の制御扉21,22のいずれか一方の扉とによって挟まれるので、フェンス収容部10内に位置する防護フェンス50は、常に折り畳んだ状態で保持される。よって、防護フェンス50がフェンス収容部10内で延びたりすることを防ぐことができ、防護フェンス50の放出をよりスムースに行うことができる。
上記の左右一対の制御扉21,22が特許請求の範囲にいう放出制御手段のフェンス保持部である。
【0033】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、防護フェンスの放出と、流出油等の周囲への配置を同時に行うことができるから、防護フェンスの展開を短時間で行うことができ、船体の駆動力を小さくでき、船体も小型化できる。
請求項2の発明によれば、油の流出や赤潮発生の初期段階で、油等の拡散を防ぐことが可能となるので、水面汚染の拡散を効率よく確実に防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、船体および小型船の両方を航行させて油等の周囲に防護フェンスを配置できるから、防護フェンスの展開をより迅速に行うことができる。
請求項4の発明によれば、船体には防護フェンスのみを搭載すればよいので、船体を小型化でき、展開船全体をコンパクトにすることができる。
請求項5の発明によれば、防護フェンスを水上に容易かつ円滑に供給することができるから、防護フェンスの展開時間を短くすることができる。
請求項6の発明によれば、必要な量の防護フェンスだけを確実に放出できるから、防護フェンスの水上への放出をスムースに行うことができる。
請求項7の発明によれば、扉がシート部が放出されるときの抵抗にならず、しかも、防護フェンスをフェンス収容部内に折り畳んだ状態で確実に保持しておくことができる。
請求項8の発明によれば、フェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持できるから、防護フェンスをスムースに放出できる。
請求項9の発明によれば、移動部によって押出板を移動させて、フェンス収容部内の防護フェンスを、確実にフェンス収容部内の防護フェンスを確実に折り畳んだ状態で保持でき、防護フェンスをスムースに放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の展開船1の概略断面図である。
【図2】本実施形態の展開船1の概略平面図である。
【図3】本実施形態の展開船1による防護フェンス展開作業の説明図である。
【図4】本実施形態の展開船1による防護フェンス展開作業の説明図である。
【図5】本実施形態の展開船1を搬送する状況の説明図である。
【図6】防護フェンス50の放出作業中における船体2の後部の概略拡大図である。
【図7】防護フェンス50の概略説明図である。
【符号の説明】
1 展開船1
2 船体
3 小型船
10 フェンス収容部
11 放出扉
20 放出制御手段
21 制御扉
22 制御扉
30 押出手段
31 押出板
50 防護フェンス
51 単体フェンス
55 ガス充填手段
Claims (9)
- 防護フェンスを水上に展開するための展開船であって、
該展開船が、
前記防護フェンスが搭載され、該防護フェンスの基端が接続されている船体と、該船体に搭載されており、前記防護フェンスの先端が接続されている浮遊体と、該浮遊体を、前記船体から水上に放出する放出部とからなり、
前記防護フェンスが、前記船体に折り畳んだ状態で搭載されている
ことを特徴とする水上用防護フェンスの展開船。 - 前記展開船の総重量が、2トン以下である
ことを特徴とする請求項1記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記浮遊体が、水上航行可能な小型船である
ことを特徴とする請求項1記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記防護フェンスが、複数の単体フェンスを連結して形成されたものであり、各単体フェンスが、それぞれガス充填手段を備えており、
前記単体フェンスが水上に投下されると、前記ガス充填手段によって前記単体フェンスの内部にガスが充填される
ことを特徴とする請求項1記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記船体に、前記防護フェンスを収容するためのフェンス収容部が設けられており、
前記フェンス収容部の一端に、下端が前記船体に取り付けられ、該下端を支点として前記フェンス収容部から外方に向かって揺動可能な放出扉が設けられており、
前記防護フェンスが、その基端と先端との間が蛇腹状に折り畳まれ、その先端が前記放出扉側に位置するように前記フェンス収容部内に収容されており、
前記放出扉を前記フェンス収容部から外方に向かって揺動させると、該揺動扉の内面が、前記フェンス収容部の床面から水面に向かって下傾するスロープ面となる
ことを特徴とする請求項1記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記防護フェンスが、その折り目が前記フェンス収容部の底面に対して垂直となるように、前記フェンス収容部内に収容されており、
前記フェンス収容部において、前記放出扉の内方に放出制御手段が設けられており、
該放出制御手段が、該放出制御手段と前記フェンス収容部の他端との間に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持する、左右一対のフェンス保持部を備えており、
前記防護フェンスにおける前記放出制御手段より外方に位置する部分と該放出制御手段より内方に位置する部分との接続部分に対して、該接続部分の反対側に位置する前記フェンス保持部が、前記放出制御手段よりも内方に位置する前記防護フェンスを折り畳んだ状態で保持する
ことを特徴とする請求項5記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記左右一対のフェンス保持部が、観音開きの扉である
ことを特徴とする請求項6記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記フェンス収容部が、該フェンス収容部内の前記防護フェンスを、前記放出扉に向けて押す押出手段を備えている
ことを特徴とする請求項5記載の水上用防護フェンスの展開船。 - 前記押出手段が、
前記防護フェンスの基端部とフェンス収容部の他端部との間に設けられた押出板と、
該押出板を前記放出扉に向けて移動させる移動部とからなる
ことを特徴とする請求項8記載の水上用防護フェンスの展開船。
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JP2002262446A JP2004098818A (ja) | 2002-09-09 | 2002-09-09 | 水上用防護フェンスの展開船 |
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JP (1) | JP2004098818A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5704377B1 (ja) * | 2014-05-19 | 2015-04-22 | 岡本 應守 | 浸水防御ネット |
CN107558456A (zh) * | 2017-08-18 | 2018-01-09 | 重庆交通大学 | 一种石油泄漏及时回收可折叠装置 |
-
2002
- 2002-09-09 JP JP2002262446A patent/JP2004098818A/ja active Pending
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