JP2004097247A - 医療用容器、液体充填方法および液体収納体 - Google Patents
医療用容器、液体充填方法および液体収納体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】薬液等の液体をエアレスで容易かつ確実に充填することができるとともに、液体を排出した後のデッドスペース(死腔)が小さい医療用容器、液体充填方法および液体収納体を提供すること。
【解決手段】医療用容器1は、軟質な袋状の液体収納部2と、筒状の硬質なポート部材3とを備える。ポート部材3の両端部は、それぞれ、液体収納部2の内部空間22に位置することなく、内部空間22と、ポート部材3の内腔34とは、ポート部材3の管壁に形成された側孔33を介して連通している。ポート部材3の一端に形成された通気口32の付近には、気体は通すが液体は通さないフィルター4が設置されている。また、ポート部材3の他端に形成された通液口31側には、弁体5が設置されている。弁体5は、側孔33と通液口31との間の流路を塞ぐ第1の位置と、該流路を液体が通過可能な第2の位置とに、ポート部材3内で移動可能である。
【選択図】図2
【解決手段】医療用容器1は、軟質な袋状の液体収納部2と、筒状の硬質なポート部材3とを備える。ポート部材3の両端部は、それぞれ、液体収納部2の内部空間22に位置することなく、内部空間22と、ポート部材3の内腔34とは、ポート部材3の管壁に形成された側孔33を介して連通している。ポート部材3の一端に形成された通気口32の付近には、気体は通すが液体は通さないフィルター4が設置されている。また、ポート部材3の他端に形成された通液口31側には、弁体5が設置されている。弁体5は、側孔33と通液口31との間の流路を塞ぐ第1の位置と、該流路を液体が通過可能な第2の位置とに、ポート部材3内で移動可能である。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液等の液体を収納する医療用容器、液体充填方法および液体収納体に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬液等の液体を収納する医療用容器として、軟質な袋(バッグ)と、この袋に設置された硬質な筒状のポート部材とを有する医療用容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の医療用容器には、液体を排出した後の容器内部のデッドスペース(死腔)が大きいという問題がある。このため、液体を排出しきったときに容器内部に残存する残液量が多く、必要量にこの残液量を加えた量の液体を充填しなければならず、液体の無駄が多い。この無駄により、特に、高価な薬液の場合、大幅なコスト増をもたらす。また、規定量の液体を正確に排出できない場合もある。
【0004】
また、空気に触れることで変性する薬液を収納する場合には、空気の混入を確実に防止してエアレスで液体を充填する必要があるが、従来の医療用容器では、エアレスで液体を充填するのが難しく、特に少量の液体を充填する場合、空気の混入を生じ易いという問題もある。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−225922号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、薬液等の液体をエアレスで容易かつ確実に充填することができるとともに、液体を排出した後のデッドスペース(死腔)が小さい医療用容器、液体充填方法および液体収納体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。また、下記(11)〜(18)であるのが好ましい。
【0008】
(1) 軟質な袋状の液体収納部と、
前記液体収納部に対し固定され、前記液体収納部の内部空間への連通口と、気体を通す通気口と、液体を通す通液口とを有する硬質なポート部材と、
前記ポート部材の通気口付近に設置され、気体は通すが液体は通さないフィルターと、
前記ポート部材内で移動可能な弁体とを備え、
前記弁体は、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぐ第1の位置と、前記通液口から遠ざかるように前記ポート部材の奥方に向かって移動し、前記流路を液体が通過可能な第2の位置とに位置し得ることを特徴とする医療用容器。
【0009】
(2) 前記弁体は、主として弾性材料で構成されている上記(1)に記載の医療用容器。
【0010】
(3) 前記ポート部材は、筒状をなし、その両端に前記通気口と前記通液口とがそれぞれ形成され、前記連通口は、前記ポート部材の管壁に形成された少なくとも1つの側孔で構成されている上記(1)または(2)に記載の医療用容器。
【0011】
(4) 前記弁体は、前記ポート部材の軸方向に沿って移動する上記(3)に記載の医療用容器。
【0012】
(5) 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、
前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器。
【0013】
(6) 前記フィルターが気体を通さなくするように、容器外部より、前記フィルターを処理可能である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
【0014】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器に液体を充填する液体充填方法であって、
前記通気口に接続した吸引ラインにより、容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出する排気工程と、
前記吸引ラインにより容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出させつつ、前記通液口に接続した液体供給ラインから液体を供給して、前記ポート部材内に液体を充満させるプライミング工程と、
前記液体供給ラインから液体を供給して前記液体収納部の内部空間に液体を供給する液体供給工程と、
前記フィルターの容器外部に面する部分に気密性を付与するシール処理を施すとともに、前記弁体を前記通液口より前記第1の位置まで挿入して、前記通気口および前記通液口を封止する封止工程とを備えることを特徴とする液体充填方法。
【0015】
(8) 前記プライミング工程は、前記吸引ラインの吸引により生じた減圧状態によって液体を前記ポート部材内に導入し、前記液体供給工程は、前記液体供給ラインから液体を加圧して供給する上記(7)に記載の液体充填方法。
【0016】
(9) 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしており、
前記プライミング工程および前記液体供給工程は、前記液体流通部の少なくとも一部が前記通液口から前記ポート部材内に挿入するとともに前記封止部が前記ポート部材外に位置する状態で、前記液体供給ラインからの液体を、前記隙間を通過させて前記医療用容器内に導入するようにして行う上記(7)または(8)に記載の液体充填方法。
【0017】
(10) 上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法を用いて液体を充填してなる液体収納体。
【0018】
(11) 前記弁体の前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側端部は、前記第2の位置のとき、前記フィルターに当接または近接する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
【0019】
(12) 前記弁体は、前記通液口から挿入した細長い部材によって押圧されることにより、前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する上記(1)ないし(6)、(11)のいずれかに記載の医療用容器。
【0020】
(13) 前記弁体は、前記第2の位置に移動した後、前記細長い部材による押圧を解除しても、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞がない状態を維持する上記(12)に記載の医療用容器。
【0021】
(14) 前記弁体は、前記第2の位置において、前記細長い部材によって押圧され続けているときには、前記弁体および/または前記フィルターが弾性変形することにより、前記連通口と前記通液口との間の流路を開通させる姿勢となり、前記細長い部材による押圧が解除されると、前記弁体および/または前記フィルターの弾性力により、前記流路を塞ぐ姿勢となる上記(12)に記載の医療用容器。
【0022】
(15) 前記フィルターは、合成樹脂材料、ガラスまたはセラミックスよりなる多孔質体で構成されている上記(1)ないし(6)、(11)ないし(14)のいずれかに記載の医療用容器。
【0023】
(16) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を加熱し溶融させて、空孔を封孔する処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0024】
(17) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を、樹脂フィルムを加熱し溶融させたもので覆う処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0025】
(18) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を、前記通気口付近の前記ポート部材の一部を加熱し溶融させたもので覆う処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の医療用容器、液体充填方法および液体収納体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の医療用容器の実施形態(液体を充填して液体収納体とした状態)を示す斜視図、図2は、図1に示す医療用容器におけるポート部材付近の縦断面図、図3は、図1に示す医療用容器における弁体の側面図、図4は、図3中のIV−IV線断面図、図5は、図3中のV−V線断面図である。なお、図1中では、分かり易くするため、液体収納部を構成するシート材に覆われた部分のポート部材を、破線でなく実線で示している。また、図2中では、分かり易くするため、医療用容器内部に収納された液体の図示を省略している(図13、図16、図17においても同じ)。
【0028】
これらの図に示す医療用容器1は、液体を収納する容器であり、軟質な袋状の液体収納部2と、該液体収納部2に設置された筒状の硬質なポート部材3とを備えている。
【0029】
医療用容器1に収納する液体としては、特に限定されず、例えば、インスリン製剤、モルヒネ(麻薬性鎮痛剤)等の鎮痛剤(疼痛緩和用薬剤)、抗生物質、抗ガン剤、キシロカイン等の局麻剤等の各種薬液、生理食塩水、リンゲル液、電解質液、蒸留水、血液(血液成分も含む)、血液製剤、経口栄養剤等が挙げられる。
【0030】
液体収納部2は、可撓性を有するシート材(軟質フィルム)を、その一部を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)してシールすることにより、袋状(バッグ状)に形成されたものである。
【0031】
本実施形態では、液体収納部2は、1枚のシート材を、ポート部材3を折り返し部分に挟んだ状態で二つに折り重ね、その重なり部分の縁部をシールしてシール部21を形成してなるものである。すなわち、液体収納部2を構成するシート材の折り返し部分は、ポート部材3の外周面を覆った状態になっている。そして、このシート材がポート部材3の外周面を覆った部分の両端部分は、それぞれ、シート材とポート部材3の外周面とが例えば融着または接着等の方法により全周に渡り互いに固着された固着部11、12になっており、シート材がポート部材3の外周面を覆った部分の中央部分は、シート材とポート部材3の外周面とが互いに固着されていない非固着部13になっている。
【0032】
シール部21と固着部11、12との境界部14、15は、シールが難しく、液密性を確保するように製造するのに高度な製造技術を要する。本実施形態では、液体収納部2が1枚のシート材で構成されていることにより、2枚のシート材を重ねて液体収納部2を構成する場合(図15参照)と比べ、境界部14、15の形成個所を少なくすることができるので、比較的容易に製造することができるとともに、収納した液体の液漏れをより確実に防止することができる。
【0033】
液体収納部2を構成するシート材の材料としては、特に限定されないが、後述するポート部材3と熱融着可能なものであるのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、またはこれらとSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)等のスチレン系エラストマー、水添ブタジエンラバー等とのブレンド物であるのが好ましい。また、このシート材は、これらの材料からなる軟質フィルムに、遮光性およびガスバリアー性を考慮してポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を外面にラミネートしたものや、保存時の衝撃に対する強度向上を考慮してナイロン系エラストマーをラミネートしたものなども用いることができる。なお、このようなラミネートフィルムの場合も、内面はポリオレフィンであるのが好ましい。
【0034】
また、液体収納部2を構成するシート材のその他の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0035】
液体収納部2を構成するシート材の厚さは、特に限定されないが、通常、0.05〜0.3mm程度であるのが好ましい。
【0036】
本実施形態では、液体収納部2は、ほぼ長方形をなしている。この液体収納部2の一辺には、ポート部材3が設置されている。ポート部材3は、円筒状をなす硬質な部材であり、ポート部材3の軸方向(長手方向)が液体収納部2の前記一辺の長手方向に対し平行になるように配置されている。
【0037】
図2に示すように、ポート部材3の一端には、液体を通す通液口(開口)31が形成されており、ポート部材3の他端には、気体を通す通気口(開口)32が形成されている。
【0038】
また、ポート部材3の管壁には、側孔(連通口)33が形成されている。本実施形態では、側孔33は、ポート部材3のほぼ中央部分に位置し、ポート部材3の軸方向に沿って細長くスリット状に形成されているとともに、ポート部材3の中心軸を挟んで対向する位置に2つ形成されている。なお、本発明では、側孔33の個数は、1つまたは3つ以上でもよく、その形状も特に限定されない。
【0039】
側孔33は、固着部11、12の間、すなわち、液体収納部2を構成するシート材とポート部材3の外周面とが固着されていない非固着部13に位置している。
【0040】
このような構成により、医療用容器1では、ポート部材3の両端部(通液口31および通気口32)は、それぞれ、液体収納部2の内部空間22に位置することなく、液体収納部2の内部空間22と、ポート部材3の内腔34とは、側孔33を介して連通している。
【0041】
本実施形態では、ポート部材3の外周面の、側孔33が形成された位置には、周方向に沿って全周(側孔33を除く部分)に渡り溝35が形成されている。これにより、液体収納部2に対する側孔33の向き(角度)がいかなる向きでポート部材3が設置された場合であっても、液体が溝35内を通過して液体収納部2の内部空間22と側孔33との間を行き来することができる。よって、医療用容器1の製造工程において、液体収納部2に対するポート部材3の回転位置を管理することなく製造することができるので、製造が容易であり、コスト低減が図れる。
【0042】
なお、溝35に代えて凸条を設けた場合でも、この凸条によって非固着部13のシート材が押し上げられることにより、ポート部材3の外周面とシート材との間に液体が通過可能な隙間が形成されるので、同様の効果が得られる。
【0043】
ポート部材3の通液口31側の端部外周には、全周に渡りリング状に突出するフランジ36が形成されており、ポート部材3の通気口32側の端部外周には、全周に渡りリング状に突出するフランジ37が形成されている。
【0044】
ポート部材3の構成材料は、特に限定されないが、液体収納部2と熱融着可能な材料であるのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、またはこれらとSEBS等のスチレン系エラストマー、水添ブタジエンラバー等とのブレンド物であるのが水蒸気透過性が小さいという観点から好ましい。
【0045】
また、ポート部材3のその他の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、あるいはこれらのうちの2以上を任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0046】
ポート部材3の長さは、特に限定されず、医療用容器1の容量、形状等により適宜設定することができるが、通常、1〜10cm程度とされる。同様に、ポート部材3の肉厚(外径と内径との差の1/2)は、特に限定されないが、通常、0.5〜2mm程度とされる。
【0047】
また、ポート部材3の内径は、後述する弁体5の最大外径よりやや小さく設定されるのが好ましく、特に限定されないが、通常、1〜5mmとされる。
【0048】
また、本発明の医療用容器1は、小容量のものから大容量のものまで適用することができるが、比較的容量の小さいものに特に好ましく適用することができ、その容量は、特に限定されないが、0.5〜100mL程度であるのが好ましく、1〜10mL程度であるのがより好ましい。
【0049】
ポート部材3の通気口32付近には、気体は通すが液体は通さないフィルター4が設置されている。フィルター4は、少なくとも液体接触面が撥水性を有する多孔質体であり、ポート部材3の通気口32付近の内腔34を塞ぐように設置されている。フィルター4のポート部材3への固定方法は、融着、嵌合、接着など、いかなる方法でもよい。
【0050】
フィルター4の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の熱可塑性フッ素樹脂等の各種合成樹脂材料や、ガラス多孔質体(特にシリコンコート等の撥水処理を施したもの)、セラミックス等が挙げられる。
【0051】
本実施形態では、フィルター4は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、ポート部材3と熱融着可能な樹脂材料で構成されている。
【0052】
フィルター4の空孔の孔径は、収納する液体の種類や空気の通過抵抗を考慮して適宜設定されるが、通常、容器内部に面した部分で0.1〜0.5μm程度であるのが好ましい。
【0053】
医療用容器1では、このフィルター4が気体を通さなくするように、容器外部より、フィルター4をシール処理可能であり、図1に示すフィルター4は、その容器外部に面する部分がシール処理されたものである。このシール処理については後述する。
【0054】
弁体5は、ポート部材3の内腔34で、ポート部材3の軸方向に沿って移動可能な部材である。
【0055】
弁体5は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、柔軟かつ弾性のあるポリオレフィン等の弾性材料で構成されているのが好ましい。また、弁体5は、その表面に、フッ素樹脂等の耐薬品性に優れた樹脂がコーティングまたはラミネートされていてもよい。
【0056】
図3および図5に示すように、弁体5は、ほぼ円柱状の封止部51を有している。封止部51の最大外径は、ポート部材3の内径よりやや大きくされている。よって、封止部51がポート部材3の内腔34に挿入したとき、封止部51の外周面は、ポート部材3の内周面に密着する。
【0057】
このような弁体5は、側孔33(連通口)と通液口31との間の流路(内腔34)を塞ぐ第1の位置と、通液口31から遠ざかるようにポート部材3の奥方(図1中の左方向)に向かって移動し、側孔33と通液口31との間を液体が通過可能な第2の位置とに位置し得るようになっている。
【0058】
図1に示す状態では、弁体5は、第1の位置に位置している。この状態では、封止部51は、内腔34の通液口31と側孔33との間の部分に位置してこの部分を塞いでおり、側孔33から通液口31に液体が通過できないようになっている。
【0059】
図3に示すように、本実施形態では、弁体5は、封止部51に隣接して、液体流通部52を有している。液体流通部52は、弁体5の第1の位置から第2の位置への移動方向前方側に形成されており、封止部51は、移動方向後方側に形成されている。
【0060】
液体流通部52は、その外周に、ポート部材3の内腔34の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、内腔34の内面との間に液体が通過可能な隙間16が形成されるような形状をなしている。すなわち、図4に示すように、液体流通部52は、その外周に弁体5の移動方向に沿って延びる3つの溝521が等角度間隔で形成された形状をなしており、これらの溝521内を液体がポート部材3の軸方向に通過可能になっている。また、溝521と溝521との間に形成される3つの接触部522は、内腔34の内面に接触する。
【0061】
図3に示すように、接触部522の途中には、後述する弁体3の第3の位置を規定するための係止部523が外周側に隆起するように形成されている。
【0062】
ポート部材3の通液口31側の端面には、通液口31を封止する封止フィルム17が貼着されている。医療用容器1内の液体を取り出す際には、この封止フィルム17を剥がして開封する。
【0063】
このような医療用容器1では、液体収納部2が空のとき、液体収納部2をポート部材3の外周に巻き付けることができる。すなわち、ポート部材3が巻き芯となって、液体収納部2を巻き取ることができ、巻き取った液体収納部2は、フランジ36、37の高さ内に収まる。これにより、液体を充填する前や、液体を排出した後、コンパクトに収納することができ、製造工程や廃棄時のスペースを小さくすることができる。
【0064】
図6ないし図9は、それぞれ、図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図に基づいて、医療用容器1に液体(薬液)を充填する液体充填方法について説明する。
【0065】
医療用容器1に薬液を充填する際には、医療用容器1を予め例えばガンマー線またはEOG(エチレンオキサイドガス)を用いて滅菌するとともに、以後の操作は無菌環境で行われる。
【0066】
図6に示すように、この液体充填方法は、ポート部材3を、通液口側チャック(治具)8と通気口側チャック(治具)9とで両端側から挟持し固定した状態で行う。
【0067】
ポート部材3の通液口31側の端部は、フランジ36を含め、通液口側チャック8に形成された凹部に液密に挿入し嵌合している。また、弁体5は、その一部がポート部材3の外部に露出した第3の位置に位置している。この第3の位置では、弁体5は、液体流通部52の係止部523までの部分が通液口31からポート部材3の内部に挿入するとともに封止部51がポート部材3の外部に位置している。このとき、係止部523が通液口31の縁部に係止するので、弁体5をこの第3の位置に位置合わせし易い。
【0068】
通液口側チャック8の内腔には、弁体5を第3の位置から第1の位置へ押圧可能なプッシュロッド81がポート部材3の軸方向に移動可能に設置されている。また、通液口側チャック8の内腔には、薬液を供給する薬液供給ライン(液体供給ライン)82が接続されている。
【0069】
ポート部材3の通気口32側に形成されたフランジ37は、通気口側チャック9に形成された凹部に気密に挿入し嵌合している。また、フィルター4は、シール処理されていない状態であり、フィルター4の外側端面は、ポート部材3の通気口32側端面より僅かに突出しているとともに、端部がフランジ状に外周側に突出し、通気口32の縁部付近の端面をも覆った状態になっている。
【0070】
通気口側チャック9の内腔には、加熱可能なシール用ピン(熱ゴテ)91がポート部材3の軸方向に移動可能に設置されている。シール用ピン91の先端部には、ポート部材3の内径より小さい外径の突出部911が形成されている。通気口側チャック9の内腔には、真空ポンプ(図示せず)への吸引ラインが接続されている。
【0071】
このような状態で、前記真空ポンプを作動させ、通気口側チャック9内の吸引ラインにより、医療用容器1内部の気体(空気)を排出する排気工程を行う。これにより、図6中の矢印で示す経路のように、液体収納部2の内部空間22およびポート部材3の内腔34の空気は、フィルター4を通過(透過)して、通気口32から吸引・排出される。
【0072】
次いで、図7に示すように、薬液供給ライン82から薬液100の供給を開始し、ポート部材3の内部に薬液100を充満させるプライミング工程を行う。このとき、薬液供給ライン82からの薬液100は、弁体5の液体流通部52の溝521により形成される隙間16を通過して、通液口31からポート部材3の内腔34に流入する。
【0073】
このプライミング工程では、通気口側チャック9内の吸引ラインによる吸引・排気を継続したまま行い、薬液供給ライン82からは薬液100が加圧せずに供給され、薬液100は、吸引ラインの吸引により生じた減圧状態によってポート部材3の内部に導入される。これにより、薬液供給ライン82内に気体が残っていた場合であっても、この気体がフィルター4を通過して排出されるので、この後に薬液100に混じって医療用容器1内に注入されることがないので、注入量に誤差を生じるのを防止することができる。なお、図7は、プライミング工程の途中の状態を示しており、プライミング工程の終了時には、薬液100の液面101がフィルター4に到達し、ポート部材3内が薬液100で満たされる。
【0074】
このようなプライミング工程でポート部材3の内部に充満した薬液100の量は、過剰充填のベースとなる量である。すなわち、この後に注入される薬液100の量が、薬液100の投与時に医療用容器1より排出可能な量となる。一般に、少量容器では排出可能量の制御が難しいが、医療用容器1では、このように排出可能量を正確に制御することができ、製造管理上、非常に有利である。
【0075】
また、本実施形態では、弁体5を途中までポート部材3内に挿入した状態(前記第3の状態)で薬液100を注入するので、後に弁体5を第1の位置まで押し込むのを容易かつ円滑に行うことができる。
【0076】
次いで、図8に示すように、薬液供給ライン82から薬液100を加圧して(陽圧で)供給する液体供給工程を行う。これにより、液体収納部2の内部空間22に薬液100が供給・充填される。この液体供給工程で注入した薬液100の量が、ほぼ排出可能量となる。
【0077】
この液体供給工程は、通気口側チャック9内の吸引ラインによる吸引・排気を継続したまま行っても、停止して行ってもよい。また、液体供給工程は、プライミング工程と明確な区別なく一連の工程として行ってもよい。
【0078】
次いで、図9に示すように、通液口31および通気口32を封止する封止工程を行う。
【0079】
通液口31を封止するには、通液口側チャック8のプッシュロッド81により、弁体5を第3の位置から第1の位置に押圧し移動(挿入)させる。これにより、弁体5の封止部51が通液口31付近の内腔34を塞ぎ、通液口31が封止される。
【0080】
通気口32の封止は、フィルター4の容器外部に面する部分に気密性を付与するシール処理を施すことにより行う。本実施形態では、このシール処理は、通気口側チャック9内の加熱したシール用ピン91をフィルター4に突き当てて(押し当てて)、フィルター4の容器外部に面する部分を加熱し溶融させて、その部分の空孔を封孔することにより行う。このとき、シール用ピン91の突出部911がフィルター4にめり込むようにしてシールされるので、シール後のフィルター4の容器外部に面する部分には、凹部41が形成される。
【0081】
本実施形態では、上述したようにしてフィルター4をシール処理するので、別部材を設置したりすることなく、容易かつ確実にシールを行うことができる。
【0082】
なお、封止工程においては、通液口31の封止操作と、通気口32の封止操作とは、いずれが先でもよく、また同時に行ってもよい。
【0083】
このような封止工程が終了したら、医療用容器1を通液口側チャック8、通気口側チャック9から取り外す。その後、ポート部材3の通液口31側の端面に封止フィルム17を貼着する。これにより、図1および図2に示すような、医療用容器1に薬液を充填してなる薬液収納体(液体収納体)が得られる。
【0084】
医療用容器1では、以上説明したような液体充填方法により、薬液(液体)を、空気を注入(混入)することなく、エアレスで、容易かつ確実に充填することができ、液体収納体の製造が容易で、液体収納体の量産にも適する。
【0085】
図10および図11は、それぞれ、フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図である。
【0086】
このシール処理においては、図10に示すように、シール処理前、ポート部材3は、通気口32付近に、リブ(突出部)38を有している。通気口32を封止する際には、通気口側チャック9の内腔に移動可能に設置された熱ゴテ92をリブ38に押し当て、リブ38を加熱し溶融させる。これにより、図11に示すように、このリブ38が溶融したものでフィルター4の容器外部に面する部分が覆われ、通気口32を封止する被覆部39が形成される。
【0087】
このようなシール処理方法を用いる場合には、フィルター4を溶解させる必要がないので、フィルター4の材質に、ガラス、セラミック、PTFE等を使用することができる。
【0088】
また、さらに他のシール処理の方法として、リブ38に代えて、フィルター4の容器外部に面する部分に設置した別個の樹脂フィルムを加熱し溶融させて被覆部39を形成することとしてもよい。
【0089】
図12は、図1に示す医療用容器に収納された液体を排出する際に使用するポンプ装置を示す斜視図、図13は、図12に示すポンプ装置に図1に示す医療用容器を装着した状態におけるポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図に基づいて、医療用容器1に収納された液体(薬液100)を排出する際に使用する装置について説明する。
【0090】
図12に示すポンプ装置7は、医療用容器1が装着される装置本体71と、装置本体71に対し回動可能に設置された蓋体72と、装置本体71に設置された管状の中空ピン(細長い部材)73と、蓋体72の内面側から突出する板状のロック片74とを有している。
【0091】
このポンプ装置7に医療用容器1を接続するには、図12に示す状態から医療用容器1をポンプ装置7に対し図中右斜め上方向に移動させ、中空ピン73を通液口31よりポート部材3の内腔34に挿入する。
【0092】
中空ピン73の外径は、ポート部材3の内径とほぼ同じになっており、中空ピン73をポート部材3の内腔34に挿入した状態では、中空ピン73の外周面と内腔34の内面との間には隙間は生じず、液体が漏れることはない。
【0093】
中空ピン73の先端部には、切欠き731が形成されている。この切欠き731の形成態様は、特に限定されず、例えば、図12中の楕円の中に拡大して示す(A)または(B)のような形状に形成することができる。
【0094】
図13に示すように、ポート部材3の内腔34に中空ピン73を挿入した後、蓋体72を閉めると、ロック片74がフランジ36の通気口32側においてポート部材3を跨ぐように位置してフランジ36と係合し、ポート部材3が装置本体71から抜けないように固定される。
【0095】
このようにして医療用容器1をポンプ装置7に接続(装着)すると、弁体5は、中空ピン73によって押圧されることにより、第1の位置から第2の位置(図13に示す位置)へ移動する。この第2の位置では、弁体5は、通液口31から遠ざかってポート部材3の奥方に位置し、封止部51が側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞がない状態になる。これにより、液体収納部2内の液体は、図13中の矢印で示す経路のように、側孔33を通過して中空ピン73内に流入可能になっている。よって、ポンプ装置7を作動して吸引すると、医療用容器1に収納された液体は、中空ピン73内を介して、ポンプ装置7内に吸入され、外部に排出される。
【0096】
なお、図13に示す状態では、中空ピン73の先端と弁体5とが離間しているが、これらが互いに接触した状態であっても中空ピン73の切欠き731が形成されているので、この切欠き731内を液体が通過可能である。
【0097】
上述したように、医療用容器1では、通液口31を開通させて液体を排出するとき、弁体5がポート部材3の奥に移動するので、その部分の内腔34(内部空間)に残存する液体の量を弁体5の体積の分だけ少なくすることができる。よって、液体排出時の残液量が少なく、無駄が少ない。また、規定した量の液体を確実に(正確に)排出することができる。
【0098】
本実施形態では、弁体5が第2の位置にあるときには、弁体5の第1の位置から第2の位置への移動方向前方側端部(図13中の左端)は、フィルター4に近接(または当接)している。これにより、フィルター4付近の内腔34に残存する液体の量をより少なくすることができる。
【0099】
また、同様に、本実施形態では、ポート部材3内に挿入した部分の中空ピン73の体積の分だけ残液量を少なくすることができるので、さらに液体の無駄が少なく、規定量をより確実に排出することができる。また、針(中空針)を使用しないので、誤刺の危険がなく、安全性も高い。
【0100】
このようなことから、医療用容器1は、ポンプ装置7がインスリン注入ポンプや疼痛緩和用薬剤注入ポンプなどの、微量の薬剤を体内に必要量注入するポンプである場合に、このポンプに装着して使用するプレフィルド容器として特に好適に用いることができる。
【0101】
本実施形態では、弁体5は、第2の位置に移動した後、中空ピン73による押圧を解除しても(中空ピン73を抜去しても)、側孔33と通液口31との間の流路を塞がない状態を維持する。
【0102】
図14は、図1に示す医療用容器における液体を排出した後のポート部材の中央部付近の横断面図である。
【0103】
図14に示すように、医療用容器1では、収納した液体を排出した後、液体収納部2は、ポート部材3付近においても重なったシート材が歪まずに互いに密着することができ、液体が残存するデッドスペース(死腔)18が極めて小さくしか残らない。よって、液体排出後の残液量が少なく、液体収納部2に収納された液体のほとんどを排出することができ、液体の無駄が少ない。また、規定した量の液体を確実に(正確に)排出することができる。
【0104】
これに対し、図18に示す従来一般的に使用されている形状を有する比較例の容器300では、硬質ポート部材301の一端部が軟質容器(バッグ)302の内部空間に挿入されているので、液体排出後も硬質ポート部材301の一端部付近において軟質容器302に膨らみが残り、この膨らみ部分に大きなデッドスペース303が生じ、残液量が多い。
【0105】
図15は、本発明の医療用容器の他の実施形態におけるポート部材の中央部付近の横断面図である。以下、この図を参照して本発明の医療用容器の他の実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0106】
図15に示す医療用容器1は、液体収納部2が2枚のシート材から構成されていること以外は、前述した実施形態と同様である。この医療用容器1における液体収納部2は、2枚のシート材28、29を、それらの間にポート部材3を挟んで重ね、その重なり部分の縁部をシールしてなるものである。
【0107】
このように、医療用容器1は、液体収納部2が2枚または3枚以上のシート材から構成されているものでもよい。
【0108】
なお、図15に示す医療用容器1では、液体収納部2がポート部材3の片側にのみ設置されているが、液体収納部2をポート部材3の図15中の左側にも設置し、ポート部材3の両側に液体収納部2が設けられているようなものでもよい。
【0109】
図16および図17は、それぞれ、本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図を参照して本発明の医療用容器のさらに他の実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0110】
本実施形態の医療用容器1では、弁体5のポート部材3の軸方向の長さが比較的長く設定されている。液体排出時、通液口31より中空ピン73が挿入されると、弁体5は、中空ピン73に押圧されて第1の位置から第2の位置へ移動する。そして、中空ピン73がさらに深く挿入されると、図16に示すように、弁体5は、中空ピン73とフィルター4との間で挟まれて圧縮され、その長さが短くなるように弾性変形する。この状態では、弁体5の封止部51は、側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞がない状態になり、図16中の矢印で示す経路のように液体を排出可能である。
【0111】
図16に示す状態から中空ピン73を抜去すると、図17に示す状態となる。この状態では、弁体5は、中空ピン73による押圧力が解除されたことにより、自身の弾性力により、その長さが伸長する。これにより、封止部51が側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞ぐ状態となる。
【0112】
すなわち、本実施形態では、弁体5は、第2の位置にあるとき、中空ピン73によって押圧され続けているときには、弾性変形して、側孔33と通液口31との間の流路を開通させる姿勢となり、中空ピン73による押圧が解除されると、その流路を塞ぐ姿勢となって、通液口31からの液体の流出を防ぐ。よって、中空ピン73を抜去することによって自動的に通液口31が封鎖されるので、収納された液体の全量を一度に使用しないような場合、残りの液体を保存するのに便利である。
【0113】
なお、第2の位置において弁体5が側孔33と通液口31との間の流路を塞ぐ姿勢と塞がない姿勢とに変位させるのを、フィルター4が弾性変形することによって(フィルター4の弾性力によって)行うように構成してもよく、また、弁体5とフィルター4とが共に弾性変形することによって行うように構成してもよい。
【0114】
以上、本発明の医療用容器、液体充填方法および液体収納体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の医療用容器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0115】
また、ポート部材の形状は、図示のような一文字状のものに限らず、例えば、通気口付近(フィルターの設置部位)の部分が他の部分に対し屈曲し、全体としてL字状をなすような形状であってもよい。
【0116】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、薬液等の液体をエアレスで容易かつ確実に充填することができる。特に、少量の液体を充填する場合でも上記効果を達成することができるので、例えば薬液のプレフィルド容器などに好適に適用することができる。
【0117】
また、液体排出後のデッドスペース(死腔)が小さいので、容器内部の残液量を少なくすることができる。よって、液体の無駄がないとともに、規定の量を正確かつ確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用容器の実施形態(液体を充填して液体収納体とした状態)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す医療用容器におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図3】図1に示す医療用容器における弁体の側面図である。
【図4】図3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図3中のV−V線断面図である。
【図6】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図7】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図8】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図9】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図10】フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図(シール処理前)である。
【図11】フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図(シール処理後)である。
【図12】図1に示す医療用容器に収納された液体を排出する際に使用するポンプ装置を示す斜視図である。
【図13】図12に示すポンプ装置に図1に示す医療用容器を装着した状態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図14】図1に示す医療用容器における液体を排出した後のポート部材の中央部付近の横断面図である。
【図15】本発明の医療用容器の他の実施形態におけるポート部材の中央部付近の横断面図である。
【図16】本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図17】本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図18】比較例の容器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 医療用容器
11、12 固着部
13 非固着部
14、15 境界部
16 隙間
17 封止フィルム
18 デッドスペース
2 液体収納部
21 シール部
22 内部空間
28、29 シート材
3 ポート部材
31 通液口
32 通気口
33 側孔
34 内腔
35 溝
36、37 フランジ
38 リブ
39 被覆部
4 フィルター
41 凹部
5 弁体
51 封止部
52 液体流通部
521 溝
522 接触部
523 係止部
7 ポンプ装置
71 装置本体
72 蓋体
73 中空ピン
731 切欠き
74 ロック片
8 通液口側チャック
81 プッシュロッド
82 薬液供給ライン
9 通気口側チャック
91 シール用ピン
92 熱ゴテ
100 薬液
101 液面
300 容器(比較例)
301 硬質ポート部材
302 軟質容器
303 デッドスペース
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液等の液体を収納する医療用容器、液体充填方法および液体収納体に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬液等の液体を収納する医療用容器として、軟質な袋(バッグ)と、この袋に設置された硬質な筒状のポート部材とを有する医療用容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の医療用容器には、液体を排出した後の容器内部のデッドスペース(死腔)が大きいという問題がある。このため、液体を排出しきったときに容器内部に残存する残液量が多く、必要量にこの残液量を加えた量の液体を充填しなければならず、液体の無駄が多い。この無駄により、特に、高価な薬液の場合、大幅なコスト増をもたらす。また、規定量の液体を正確に排出できない場合もある。
【0004】
また、空気に触れることで変性する薬液を収納する場合には、空気の混入を確実に防止してエアレスで液体を充填する必要があるが、従来の医療用容器では、エアレスで液体を充填するのが難しく、特に少量の液体を充填する場合、空気の混入を生じ易いという問題もある。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−225922号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、薬液等の液体をエアレスで容易かつ確実に充填することができるとともに、液体を排出した後のデッドスペース(死腔)が小さい医療用容器、液体充填方法および液体収納体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。また、下記(11)〜(18)であるのが好ましい。
【0008】
(1) 軟質な袋状の液体収納部と、
前記液体収納部に対し固定され、前記液体収納部の内部空間への連通口と、気体を通す通気口と、液体を通す通液口とを有する硬質なポート部材と、
前記ポート部材の通気口付近に設置され、気体は通すが液体は通さないフィルターと、
前記ポート部材内で移動可能な弁体とを備え、
前記弁体は、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぐ第1の位置と、前記通液口から遠ざかるように前記ポート部材の奥方に向かって移動し、前記流路を液体が通過可能な第2の位置とに位置し得ることを特徴とする医療用容器。
【0009】
(2) 前記弁体は、主として弾性材料で構成されている上記(1)に記載の医療用容器。
【0010】
(3) 前記ポート部材は、筒状をなし、その両端に前記通気口と前記通液口とがそれぞれ形成され、前記連通口は、前記ポート部材の管壁に形成された少なくとも1つの側孔で構成されている上記(1)または(2)に記載の医療用容器。
【0011】
(4) 前記弁体は、前記ポート部材の軸方向に沿って移動する上記(3)に記載の医療用容器。
【0012】
(5) 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、
前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器。
【0013】
(6) 前記フィルターが気体を通さなくするように、容器外部より、前記フィルターを処理可能である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
【0014】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器に液体を充填する液体充填方法であって、
前記通気口に接続した吸引ラインにより、容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出する排気工程と、
前記吸引ラインにより容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出させつつ、前記通液口に接続した液体供給ラインから液体を供給して、前記ポート部材内に液体を充満させるプライミング工程と、
前記液体供給ラインから液体を供給して前記液体収納部の内部空間に液体を供給する液体供給工程と、
前記フィルターの容器外部に面する部分に気密性を付与するシール処理を施すとともに、前記弁体を前記通液口より前記第1の位置まで挿入して、前記通気口および前記通液口を封止する封止工程とを備えることを特徴とする液体充填方法。
【0015】
(8) 前記プライミング工程は、前記吸引ラインの吸引により生じた減圧状態によって液体を前記ポート部材内に導入し、前記液体供給工程は、前記液体供給ラインから液体を加圧して供給する上記(7)に記載の液体充填方法。
【0016】
(9) 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしており、
前記プライミング工程および前記液体供給工程は、前記液体流通部の少なくとも一部が前記通液口から前記ポート部材内に挿入するとともに前記封止部が前記ポート部材外に位置する状態で、前記液体供給ラインからの液体を、前記隙間を通過させて前記医療用容器内に導入するようにして行う上記(7)または(8)に記載の液体充填方法。
【0017】
(10) 上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法を用いて液体を充填してなる液体収納体。
【0018】
(11) 前記弁体の前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側端部は、前記第2の位置のとき、前記フィルターに当接または近接する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
【0019】
(12) 前記弁体は、前記通液口から挿入した細長い部材によって押圧されることにより、前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する上記(1)ないし(6)、(11)のいずれかに記載の医療用容器。
【0020】
(13) 前記弁体は、前記第2の位置に移動した後、前記細長い部材による押圧を解除しても、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞がない状態を維持する上記(12)に記載の医療用容器。
【0021】
(14) 前記弁体は、前記第2の位置において、前記細長い部材によって押圧され続けているときには、前記弁体および/または前記フィルターが弾性変形することにより、前記連通口と前記通液口との間の流路を開通させる姿勢となり、前記細長い部材による押圧が解除されると、前記弁体および/または前記フィルターの弾性力により、前記流路を塞ぐ姿勢となる上記(12)に記載の医療用容器。
【0022】
(15) 前記フィルターは、合成樹脂材料、ガラスまたはセラミックスよりなる多孔質体で構成されている上記(1)ないし(6)、(11)ないし(14)のいずれかに記載の医療用容器。
【0023】
(16) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を加熱し溶融させて、空孔を封孔する処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0024】
(17) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を、樹脂フィルムを加熱し溶融させたもので覆う処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0025】
(18) 前記シール処理は、前記フィルターの容器外部に面する部分を、前記通気口付近の前記ポート部材の一部を加熱し溶融させたもので覆う処理である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の液体充填方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の医療用容器、液体充填方法および液体収納体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の医療用容器の実施形態(液体を充填して液体収納体とした状態)を示す斜視図、図2は、図1に示す医療用容器におけるポート部材付近の縦断面図、図3は、図1に示す医療用容器における弁体の側面図、図4は、図3中のIV−IV線断面図、図5は、図3中のV−V線断面図である。なお、図1中では、分かり易くするため、液体収納部を構成するシート材に覆われた部分のポート部材を、破線でなく実線で示している。また、図2中では、分かり易くするため、医療用容器内部に収納された液体の図示を省略している(図13、図16、図17においても同じ)。
【0028】
これらの図に示す医療用容器1は、液体を収納する容器であり、軟質な袋状の液体収納部2と、該液体収納部2に設置された筒状の硬質なポート部材3とを備えている。
【0029】
医療用容器1に収納する液体としては、特に限定されず、例えば、インスリン製剤、モルヒネ(麻薬性鎮痛剤)等の鎮痛剤(疼痛緩和用薬剤)、抗生物質、抗ガン剤、キシロカイン等の局麻剤等の各種薬液、生理食塩水、リンゲル液、電解質液、蒸留水、血液(血液成分も含む)、血液製剤、経口栄養剤等が挙げられる。
【0030】
液体収納部2は、可撓性を有するシート材(軟質フィルム)を、その一部を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)してシールすることにより、袋状(バッグ状)に形成されたものである。
【0031】
本実施形態では、液体収納部2は、1枚のシート材を、ポート部材3を折り返し部分に挟んだ状態で二つに折り重ね、その重なり部分の縁部をシールしてシール部21を形成してなるものである。すなわち、液体収納部2を構成するシート材の折り返し部分は、ポート部材3の外周面を覆った状態になっている。そして、このシート材がポート部材3の外周面を覆った部分の両端部分は、それぞれ、シート材とポート部材3の外周面とが例えば融着または接着等の方法により全周に渡り互いに固着された固着部11、12になっており、シート材がポート部材3の外周面を覆った部分の中央部分は、シート材とポート部材3の外周面とが互いに固着されていない非固着部13になっている。
【0032】
シール部21と固着部11、12との境界部14、15は、シールが難しく、液密性を確保するように製造するのに高度な製造技術を要する。本実施形態では、液体収納部2が1枚のシート材で構成されていることにより、2枚のシート材を重ねて液体収納部2を構成する場合(図15参照)と比べ、境界部14、15の形成個所を少なくすることができるので、比較的容易に製造することができるとともに、収納した液体の液漏れをより確実に防止することができる。
【0033】
液体収納部2を構成するシート材の材料としては、特に限定されないが、後述するポート部材3と熱融着可能なものであるのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、またはこれらとSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)等のスチレン系エラストマー、水添ブタジエンラバー等とのブレンド物であるのが好ましい。また、このシート材は、これらの材料からなる軟質フィルムに、遮光性およびガスバリアー性を考慮してポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を外面にラミネートしたものや、保存時の衝撃に対する強度向上を考慮してナイロン系エラストマーをラミネートしたものなども用いることができる。なお、このようなラミネートフィルムの場合も、内面はポリオレフィンであるのが好ましい。
【0034】
また、液体収納部2を構成するシート材のその他の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0035】
液体収納部2を構成するシート材の厚さは、特に限定されないが、通常、0.05〜0.3mm程度であるのが好ましい。
【0036】
本実施形態では、液体収納部2は、ほぼ長方形をなしている。この液体収納部2の一辺には、ポート部材3が設置されている。ポート部材3は、円筒状をなす硬質な部材であり、ポート部材3の軸方向(長手方向)が液体収納部2の前記一辺の長手方向に対し平行になるように配置されている。
【0037】
図2に示すように、ポート部材3の一端には、液体を通す通液口(開口)31が形成されており、ポート部材3の他端には、気体を通す通気口(開口)32が形成されている。
【0038】
また、ポート部材3の管壁には、側孔(連通口)33が形成されている。本実施形態では、側孔33は、ポート部材3のほぼ中央部分に位置し、ポート部材3の軸方向に沿って細長くスリット状に形成されているとともに、ポート部材3の中心軸を挟んで対向する位置に2つ形成されている。なお、本発明では、側孔33の個数は、1つまたは3つ以上でもよく、その形状も特に限定されない。
【0039】
側孔33は、固着部11、12の間、すなわち、液体収納部2を構成するシート材とポート部材3の外周面とが固着されていない非固着部13に位置している。
【0040】
このような構成により、医療用容器1では、ポート部材3の両端部(通液口31および通気口32)は、それぞれ、液体収納部2の内部空間22に位置することなく、液体収納部2の内部空間22と、ポート部材3の内腔34とは、側孔33を介して連通している。
【0041】
本実施形態では、ポート部材3の外周面の、側孔33が形成された位置には、周方向に沿って全周(側孔33を除く部分)に渡り溝35が形成されている。これにより、液体収納部2に対する側孔33の向き(角度)がいかなる向きでポート部材3が設置された場合であっても、液体が溝35内を通過して液体収納部2の内部空間22と側孔33との間を行き来することができる。よって、医療用容器1の製造工程において、液体収納部2に対するポート部材3の回転位置を管理することなく製造することができるので、製造が容易であり、コスト低減が図れる。
【0042】
なお、溝35に代えて凸条を設けた場合でも、この凸条によって非固着部13のシート材が押し上げられることにより、ポート部材3の外周面とシート材との間に液体が通過可能な隙間が形成されるので、同様の効果が得られる。
【0043】
ポート部材3の通液口31側の端部外周には、全周に渡りリング状に突出するフランジ36が形成されており、ポート部材3の通気口32側の端部外周には、全周に渡りリング状に突出するフランジ37が形成されている。
【0044】
ポート部材3の構成材料は、特に限定されないが、液体収納部2と熱融着可能な材料であるのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、またはこれらとSEBS等のスチレン系エラストマー、水添ブタジエンラバー等とのブレンド物であるのが水蒸気透過性が小さいという観点から好ましい。
【0045】
また、ポート部材3のその他の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、あるいはこれらのうちの2以上を任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0046】
ポート部材3の長さは、特に限定されず、医療用容器1の容量、形状等により適宜設定することができるが、通常、1〜10cm程度とされる。同様に、ポート部材3の肉厚(外径と内径との差の1/2)は、特に限定されないが、通常、0.5〜2mm程度とされる。
【0047】
また、ポート部材3の内径は、後述する弁体5の最大外径よりやや小さく設定されるのが好ましく、特に限定されないが、通常、1〜5mmとされる。
【0048】
また、本発明の医療用容器1は、小容量のものから大容量のものまで適用することができるが、比較的容量の小さいものに特に好ましく適用することができ、その容量は、特に限定されないが、0.5〜100mL程度であるのが好ましく、1〜10mL程度であるのがより好ましい。
【0049】
ポート部材3の通気口32付近には、気体は通すが液体は通さないフィルター4が設置されている。フィルター4は、少なくとも液体接触面が撥水性を有する多孔質体であり、ポート部材3の通気口32付近の内腔34を塞ぐように設置されている。フィルター4のポート部材3への固定方法は、融着、嵌合、接着など、いかなる方法でもよい。
【0050】
フィルター4の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の熱可塑性フッ素樹脂等の各種合成樹脂材料や、ガラス多孔質体(特にシリコンコート等の撥水処理を施したもの)、セラミックス等が挙げられる。
【0051】
本実施形態では、フィルター4は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、ポート部材3と熱融着可能な樹脂材料で構成されている。
【0052】
フィルター4の空孔の孔径は、収納する液体の種類や空気の通過抵抗を考慮して適宜設定されるが、通常、容器内部に面した部分で0.1〜0.5μm程度であるのが好ましい。
【0053】
医療用容器1では、このフィルター4が気体を通さなくするように、容器外部より、フィルター4をシール処理可能であり、図1に示すフィルター4は、その容器外部に面する部分がシール処理されたものである。このシール処理については後述する。
【0054】
弁体5は、ポート部材3の内腔34で、ポート部材3の軸方向に沿って移動可能な部材である。
【0055】
弁体5は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、柔軟かつ弾性のあるポリオレフィン等の弾性材料で構成されているのが好ましい。また、弁体5は、その表面に、フッ素樹脂等の耐薬品性に優れた樹脂がコーティングまたはラミネートされていてもよい。
【0056】
図3および図5に示すように、弁体5は、ほぼ円柱状の封止部51を有している。封止部51の最大外径は、ポート部材3の内径よりやや大きくされている。よって、封止部51がポート部材3の内腔34に挿入したとき、封止部51の外周面は、ポート部材3の内周面に密着する。
【0057】
このような弁体5は、側孔33(連通口)と通液口31との間の流路(内腔34)を塞ぐ第1の位置と、通液口31から遠ざかるようにポート部材3の奥方(図1中の左方向)に向かって移動し、側孔33と通液口31との間を液体が通過可能な第2の位置とに位置し得るようになっている。
【0058】
図1に示す状態では、弁体5は、第1の位置に位置している。この状態では、封止部51は、内腔34の通液口31と側孔33との間の部分に位置してこの部分を塞いでおり、側孔33から通液口31に液体が通過できないようになっている。
【0059】
図3に示すように、本実施形態では、弁体5は、封止部51に隣接して、液体流通部52を有している。液体流通部52は、弁体5の第1の位置から第2の位置への移動方向前方側に形成されており、封止部51は、移動方向後方側に形成されている。
【0060】
液体流通部52は、その外周に、ポート部材3の内腔34の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、内腔34の内面との間に液体が通過可能な隙間16が形成されるような形状をなしている。すなわち、図4に示すように、液体流通部52は、その外周に弁体5の移動方向に沿って延びる3つの溝521が等角度間隔で形成された形状をなしており、これらの溝521内を液体がポート部材3の軸方向に通過可能になっている。また、溝521と溝521との間に形成される3つの接触部522は、内腔34の内面に接触する。
【0061】
図3に示すように、接触部522の途中には、後述する弁体3の第3の位置を規定するための係止部523が外周側に隆起するように形成されている。
【0062】
ポート部材3の通液口31側の端面には、通液口31を封止する封止フィルム17が貼着されている。医療用容器1内の液体を取り出す際には、この封止フィルム17を剥がして開封する。
【0063】
このような医療用容器1では、液体収納部2が空のとき、液体収納部2をポート部材3の外周に巻き付けることができる。すなわち、ポート部材3が巻き芯となって、液体収納部2を巻き取ることができ、巻き取った液体収納部2は、フランジ36、37の高さ内に収まる。これにより、液体を充填する前や、液体を排出した後、コンパクトに収納することができ、製造工程や廃棄時のスペースを小さくすることができる。
【0064】
図6ないし図9は、それぞれ、図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図に基づいて、医療用容器1に液体(薬液)を充填する液体充填方法について説明する。
【0065】
医療用容器1に薬液を充填する際には、医療用容器1を予め例えばガンマー線またはEOG(エチレンオキサイドガス)を用いて滅菌するとともに、以後の操作は無菌環境で行われる。
【0066】
図6に示すように、この液体充填方法は、ポート部材3を、通液口側チャック(治具)8と通気口側チャック(治具)9とで両端側から挟持し固定した状態で行う。
【0067】
ポート部材3の通液口31側の端部は、フランジ36を含め、通液口側チャック8に形成された凹部に液密に挿入し嵌合している。また、弁体5は、その一部がポート部材3の外部に露出した第3の位置に位置している。この第3の位置では、弁体5は、液体流通部52の係止部523までの部分が通液口31からポート部材3の内部に挿入するとともに封止部51がポート部材3の外部に位置している。このとき、係止部523が通液口31の縁部に係止するので、弁体5をこの第3の位置に位置合わせし易い。
【0068】
通液口側チャック8の内腔には、弁体5を第3の位置から第1の位置へ押圧可能なプッシュロッド81がポート部材3の軸方向に移動可能に設置されている。また、通液口側チャック8の内腔には、薬液を供給する薬液供給ライン(液体供給ライン)82が接続されている。
【0069】
ポート部材3の通気口32側に形成されたフランジ37は、通気口側チャック9に形成された凹部に気密に挿入し嵌合している。また、フィルター4は、シール処理されていない状態であり、フィルター4の外側端面は、ポート部材3の通気口32側端面より僅かに突出しているとともに、端部がフランジ状に外周側に突出し、通気口32の縁部付近の端面をも覆った状態になっている。
【0070】
通気口側チャック9の内腔には、加熱可能なシール用ピン(熱ゴテ)91がポート部材3の軸方向に移動可能に設置されている。シール用ピン91の先端部には、ポート部材3の内径より小さい外径の突出部911が形成されている。通気口側チャック9の内腔には、真空ポンプ(図示せず)への吸引ラインが接続されている。
【0071】
このような状態で、前記真空ポンプを作動させ、通気口側チャック9内の吸引ラインにより、医療用容器1内部の気体(空気)を排出する排気工程を行う。これにより、図6中の矢印で示す経路のように、液体収納部2の内部空間22およびポート部材3の内腔34の空気は、フィルター4を通過(透過)して、通気口32から吸引・排出される。
【0072】
次いで、図7に示すように、薬液供給ライン82から薬液100の供給を開始し、ポート部材3の内部に薬液100を充満させるプライミング工程を行う。このとき、薬液供給ライン82からの薬液100は、弁体5の液体流通部52の溝521により形成される隙間16を通過して、通液口31からポート部材3の内腔34に流入する。
【0073】
このプライミング工程では、通気口側チャック9内の吸引ラインによる吸引・排気を継続したまま行い、薬液供給ライン82からは薬液100が加圧せずに供給され、薬液100は、吸引ラインの吸引により生じた減圧状態によってポート部材3の内部に導入される。これにより、薬液供給ライン82内に気体が残っていた場合であっても、この気体がフィルター4を通過して排出されるので、この後に薬液100に混じって医療用容器1内に注入されることがないので、注入量に誤差を生じるのを防止することができる。なお、図7は、プライミング工程の途中の状態を示しており、プライミング工程の終了時には、薬液100の液面101がフィルター4に到達し、ポート部材3内が薬液100で満たされる。
【0074】
このようなプライミング工程でポート部材3の内部に充満した薬液100の量は、過剰充填のベースとなる量である。すなわち、この後に注入される薬液100の量が、薬液100の投与時に医療用容器1より排出可能な量となる。一般に、少量容器では排出可能量の制御が難しいが、医療用容器1では、このように排出可能量を正確に制御することができ、製造管理上、非常に有利である。
【0075】
また、本実施形態では、弁体5を途中までポート部材3内に挿入した状態(前記第3の状態)で薬液100を注入するので、後に弁体5を第1の位置まで押し込むのを容易かつ円滑に行うことができる。
【0076】
次いで、図8に示すように、薬液供給ライン82から薬液100を加圧して(陽圧で)供給する液体供給工程を行う。これにより、液体収納部2の内部空間22に薬液100が供給・充填される。この液体供給工程で注入した薬液100の量が、ほぼ排出可能量となる。
【0077】
この液体供給工程は、通気口側チャック9内の吸引ラインによる吸引・排気を継続したまま行っても、停止して行ってもよい。また、液体供給工程は、プライミング工程と明確な区別なく一連の工程として行ってもよい。
【0078】
次いで、図9に示すように、通液口31および通気口32を封止する封止工程を行う。
【0079】
通液口31を封止するには、通液口側チャック8のプッシュロッド81により、弁体5を第3の位置から第1の位置に押圧し移動(挿入)させる。これにより、弁体5の封止部51が通液口31付近の内腔34を塞ぎ、通液口31が封止される。
【0080】
通気口32の封止は、フィルター4の容器外部に面する部分に気密性を付与するシール処理を施すことにより行う。本実施形態では、このシール処理は、通気口側チャック9内の加熱したシール用ピン91をフィルター4に突き当てて(押し当てて)、フィルター4の容器外部に面する部分を加熱し溶融させて、その部分の空孔を封孔することにより行う。このとき、シール用ピン91の突出部911がフィルター4にめり込むようにしてシールされるので、シール後のフィルター4の容器外部に面する部分には、凹部41が形成される。
【0081】
本実施形態では、上述したようにしてフィルター4をシール処理するので、別部材を設置したりすることなく、容易かつ確実にシールを行うことができる。
【0082】
なお、封止工程においては、通液口31の封止操作と、通気口32の封止操作とは、いずれが先でもよく、また同時に行ってもよい。
【0083】
このような封止工程が終了したら、医療用容器1を通液口側チャック8、通気口側チャック9から取り外す。その後、ポート部材3の通液口31側の端面に封止フィルム17を貼着する。これにより、図1および図2に示すような、医療用容器1に薬液を充填してなる薬液収納体(液体収納体)が得られる。
【0084】
医療用容器1では、以上説明したような液体充填方法により、薬液(液体)を、空気を注入(混入)することなく、エアレスで、容易かつ確実に充填することができ、液体収納体の製造が容易で、液体収納体の量産にも適する。
【0085】
図10および図11は、それぞれ、フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図である。
【0086】
このシール処理においては、図10に示すように、シール処理前、ポート部材3は、通気口32付近に、リブ(突出部)38を有している。通気口32を封止する際には、通気口側チャック9の内腔に移動可能に設置された熱ゴテ92をリブ38に押し当て、リブ38を加熱し溶融させる。これにより、図11に示すように、このリブ38が溶融したものでフィルター4の容器外部に面する部分が覆われ、通気口32を封止する被覆部39が形成される。
【0087】
このようなシール処理方法を用いる場合には、フィルター4を溶解させる必要がないので、フィルター4の材質に、ガラス、セラミック、PTFE等を使用することができる。
【0088】
また、さらに他のシール処理の方法として、リブ38に代えて、フィルター4の容器外部に面する部分に設置した別個の樹脂フィルムを加熱し溶融させて被覆部39を形成することとしてもよい。
【0089】
図12は、図1に示す医療用容器に収納された液体を排出する際に使用するポンプ装置を示す斜視図、図13は、図12に示すポンプ装置に図1に示す医療用容器を装着した状態におけるポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図に基づいて、医療用容器1に収納された液体(薬液100)を排出する際に使用する装置について説明する。
【0090】
図12に示すポンプ装置7は、医療用容器1が装着される装置本体71と、装置本体71に対し回動可能に設置された蓋体72と、装置本体71に設置された管状の中空ピン(細長い部材)73と、蓋体72の内面側から突出する板状のロック片74とを有している。
【0091】
このポンプ装置7に医療用容器1を接続するには、図12に示す状態から医療用容器1をポンプ装置7に対し図中右斜め上方向に移動させ、中空ピン73を通液口31よりポート部材3の内腔34に挿入する。
【0092】
中空ピン73の外径は、ポート部材3の内径とほぼ同じになっており、中空ピン73をポート部材3の内腔34に挿入した状態では、中空ピン73の外周面と内腔34の内面との間には隙間は生じず、液体が漏れることはない。
【0093】
中空ピン73の先端部には、切欠き731が形成されている。この切欠き731の形成態様は、特に限定されず、例えば、図12中の楕円の中に拡大して示す(A)または(B)のような形状に形成することができる。
【0094】
図13に示すように、ポート部材3の内腔34に中空ピン73を挿入した後、蓋体72を閉めると、ロック片74がフランジ36の通気口32側においてポート部材3を跨ぐように位置してフランジ36と係合し、ポート部材3が装置本体71から抜けないように固定される。
【0095】
このようにして医療用容器1をポンプ装置7に接続(装着)すると、弁体5は、中空ピン73によって押圧されることにより、第1の位置から第2の位置(図13に示す位置)へ移動する。この第2の位置では、弁体5は、通液口31から遠ざかってポート部材3の奥方に位置し、封止部51が側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞がない状態になる。これにより、液体収納部2内の液体は、図13中の矢印で示す経路のように、側孔33を通過して中空ピン73内に流入可能になっている。よって、ポンプ装置7を作動して吸引すると、医療用容器1に収納された液体は、中空ピン73内を介して、ポンプ装置7内に吸入され、外部に排出される。
【0096】
なお、図13に示す状態では、中空ピン73の先端と弁体5とが離間しているが、これらが互いに接触した状態であっても中空ピン73の切欠き731が形成されているので、この切欠き731内を液体が通過可能である。
【0097】
上述したように、医療用容器1では、通液口31を開通させて液体を排出するとき、弁体5がポート部材3の奥に移動するので、その部分の内腔34(内部空間)に残存する液体の量を弁体5の体積の分だけ少なくすることができる。よって、液体排出時の残液量が少なく、無駄が少ない。また、規定した量の液体を確実に(正確に)排出することができる。
【0098】
本実施形態では、弁体5が第2の位置にあるときには、弁体5の第1の位置から第2の位置への移動方向前方側端部(図13中の左端)は、フィルター4に近接(または当接)している。これにより、フィルター4付近の内腔34に残存する液体の量をより少なくすることができる。
【0099】
また、同様に、本実施形態では、ポート部材3内に挿入した部分の中空ピン73の体積の分だけ残液量を少なくすることができるので、さらに液体の無駄が少なく、規定量をより確実に排出することができる。また、針(中空針)を使用しないので、誤刺の危険がなく、安全性も高い。
【0100】
このようなことから、医療用容器1は、ポンプ装置7がインスリン注入ポンプや疼痛緩和用薬剤注入ポンプなどの、微量の薬剤を体内に必要量注入するポンプである場合に、このポンプに装着して使用するプレフィルド容器として特に好適に用いることができる。
【0101】
本実施形態では、弁体5は、第2の位置に移動した後、中空ピン73による押圧を解除しても(中空ピン73を抜去しても)、側孔33と通液口31との間の流路を塞がない状態を維持する。
【0102】
図14は、図1に示す医療用容器における液体を排出した後のポート部材の中央部付近の横断面図である。
【0103】
図14に示すように、医療用容器1では、収納した液体を排出した後、液体収納部2は、ポート部材3付近においても重なったシート材が歪まずに互いに密着することができ、液体が残存するデッドスペース(死腔)18が極めて小さくしか残らない。よって、液体排出後の残液量が少なく、液体収納部2に収納された液体のほとんどを排出することができ、液体の無駄が少ない。また、規定した量の液体を確実に(正確に)排出することができる。
【0104】
これに対し、図18に示す従来一般的に使用されている形状を有する比較例の容器300では、硬質ポート部材301の一端部が軟質容器(バッグ)302の内部空間に挿入されているので、液体排出後も硬質ポート部材301の一端部付近において軟質容器302に膨らみが残り、この膨らみ部分に大きなデッドスペース303が生じ、残液量が多い。
【0105】
図15は、本発明の医療用容器の他の実施形態におけるポート部材の中央部付近の横断面図である。以下、この図を参照して本発明の医療用容器の他の実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0106】
図15に示す医療用容器1は、液体収納部2が2枚のシート材から構成されていること以外は、前述した実施形態と同様である。この医療用容器1における液体収納部2は、2枚のシート材28、29を、それらの間にポート部材3を挟んで重ね、その重なり部分の縁部をシールしてなるものである。
【0107】
このように、医療用容器1は、液体収納部2が2枚または3枚以上のシート材から構成されているものでもよい。
【0108】
なお、図15に示す医療用容器1では、液体収納部2がポート部材3の片側にのみ設置されているが、液体収納部2をポート部材3の図15中の左側にも設置し、ポート部材3の両側に液体収納部2が設けられているようなものでもよい。
【0109】
図16および図17は、それぞれ、本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。以下、これらの図を参照して本発明の医療用容器のさらに他の実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0110】
本実施形態の医療用容器1では、弁体5のポート部材3の軸方向の長さが比較的長く設定されている。液体排出時、通液口31より中空ピン73が挿入されると、弁体5は、中空ピン73に押圧されて第1の位置から第2の位置へ移動する。そして、中空ピン73がさらに深く挿入されると、図16に示すように、弁体5は、中空ピン73とフィルター4との間で挟まれて圧縮され、その長さが短くなるように弾性変形する。この状態では、弁体5の封止部51は、側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞がない状態になり、図16中の矢印で示す経路のように液体を排出可能である。
【0111】
図16に示す状態から中空ピン73を抜去すると、図17に示す状態となる。この状態では、弁体5は、中空ピン73による押圧力が解除されたことにより、自身の弾性力により、その長さが伸長する。これにより、封止部51が側孔33と通液口31との間の流路(内腔34)を塞ぐ状態となる。
【0112】
すなわち、本実施形態では、弁体5は、第2の位置にあるとき、中空ピン73によって押圧され続けているときには、弾性変形して、側孔33と通液口31との間の流路を開通させる姿勢となり、中空ピン73による押圧が解除されると、その流路を塞ぐ姿勢となって、通液口31からの液体の流出を防ぐ。よって、中空ピン73を抜去することによって自動的に通液口31が封鎖されるので、収納された液体の全量を一度に使用しないような場合、残りの液体を保存するのに便利である。
【0113】
なお、第2の位置において弁体5が側孔33と通液口31との間の流路を塞ぐ姿勢と塞がない姿勢とに変位させるのを、フィルター4が弾性変形することによって(フィルター4の弾性力によって)行うように構成してもよく、また、弁体5とフィルター4とが共に弾性変形することによって行うように構成してもよい。
【0114】
以上、本発明の医療用容器、液体充填方法および液体収納体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の医療用容器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0115】
また、ポート部材の形状は、図示のような一文字状のものに限らず、例えば、通気口付近(フィルターの設置部位)の部分が他の部分に対し屈曲し、全体としてL字状をなすような形状であってもよい。
【0116】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、薬液等の液体をエアレスで容易かつ確実に充填することができる。特に、少量の液体を充填する場合でも上記効果を達成することができるので、例えば薬液のプレフィルド容器などに好適に適用することができる。
【0117】
また、液体排出後のデッドスペース(死腔)が小さいので、容器内部の残液量を少なくすることができる。よって、液体の無駄がないとともに、規定の量を正確かつ確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用容器の実施形態(液体を充填して液体収納体とした状態)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す医療用容器におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図3】図1に示す医療用容器における弁体の側面図である。
【図4】図3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図3中のV−V線断面図である。
【図6】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図7】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図8】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図9】図1ないし図3に示す医療用容器に液体を充填する方法を順を追って説明するためのポート部材付近の縦断面図である。
【図10】フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図(シール処理前)である。
【図11】フィルターのシール処理の他の方法を説明するための縦断面図(シール処理後)である。
【図12】図1に示す医療用容器に収納された液体を排出する際に使用するポンプ装置を示す斜視図である。
【図13】図12に示すポンプ装置に図1に示す医療用容器を装着した状態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図14】図1に示す医療用容器における液体を排出した後のポート部材の中央部付近の横断面図である。
【図15】本発明の医療用容器の他の実施形態におけるポート部材の中央部付近の横断面図である。
【図16】本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図17】本発明の医療用容器のさらに他の実施形態におけるポート部材付近の縦断面図である。
【図18】比較例の容器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 医療用容器
11、12 固着部
13 非固着部
14、15 境界部
16 隙間
17 封止フィルム
18 デッドスペース
2 液体収納部
21 シール部
22 内部空間
28、29 シート材
3 ポート部材
31 通液口
32 通気口
33 側孔
34 内腔
35 溝
36、37 フランジ
38 リブ
39 被覆部
4 フィルター
41 凹部
5 弁体
51 封止部
52 液体流通部
521 溝
522 接触部
523 係止部
7 ポンプ装置
71 装置本体
72 蓋体
73 中空ピン
731 切欠き
74 ロック片
8 通液口側チャック
81 プッシュロッド
82 薬液供給ライン
9 通気口側チャック
91 シール用ピン
92 熱ゴテ
100 薬液
101 液面
300 容器(比較例)
301 硬質ポート部材
302 軟質容器
303 デッドスペース
Claims (10)
- 軟質な袋状の液体収納部と、
前記液体収納部に対し固定され、前記液体収納部の内部空間への連通口と、気体を通す通気口と、液体を通す通液口とを有する硬質なポート部材と、
前記ポート部材の通気口付近に設置され、気体は通すが液体は通さないフィルターと、
前記ポート部材内で移動可能な弁体とを備え、
前記弁体は、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぐ第1の位置と、前記通液口から遠ざかるように前記ポート部材の奥方に向かって移動し、前記流路を液体が通過可能な第2の位置とに位置し得ることを特徴とする医療用容器。 - 前記弁体は、主として弾性材料で構成されている請求項1に記載の医療用容器。
- 前記ポート部材は、筒状をなし、その両端に前記通気口と前記通液口とがそれぞれ形成され、前記連通口は、前記ポート部材の管壁に形成された少なくとも1つの側孔で構成されている請求項1または2に記載の医療用容器。
- 前記弁体は、前記ポート部材の軸方向に沿って移動する請求項3に記載の医療用容器。
- 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、
前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしている請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用容器。 - 前記フィルターが気体を通さなくするように、容器外部より、前記フィルターを処理可能である請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用容器に液体を充填する液体充填方法であって、
前記通気口に接続した吸引ラインにより、容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出する排気工程と、
前記吸引ラインにより容器内部の気体を前記フィルターを通過させて前記通気口から吸引・排出させつつ、前記通液口に接続した液体供給ラインから液体を供給して、前記ポート部材内に液体を充満させるプライミング工程と、
前記液体供給ラインから液体を供給して前記液体収納部の内部空間に液体を供給する液体供給工程と、
前記フィルターの容器外部に面する部分に気密性を付与するシール処理を施すとともに、前記弁体を前記通液口より前記第1の位置まで挿入して、前記通気口および前記通液口を封止する封止工程とを備えることを特徴とする液体充填方法。 - 前記プライミング工程は、前記吸引ラインの吸引により生じた減圧状態によって液体を前記ポート部材内に導入し、前記液体供給工程は、前記液体供給ラインから液体を加圧して供給する請求項7に記載の液体充填方法。
- 前記弁体は、前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向前方側に形成された液体流通部と、前記移動方向後方側に形成され、前記連通口と前記通液口との間の流路を塞ぎ得る封止部とを有し、前記液体流通部は、その外周に、前記流路の内面に接触する部分と接触しない部分とがあり、前記流路の内面との間に液体が通過可能な隙間が形成されるような形状をなしており、
前記プライミング工程および前記液体供給工程は、前記液体流通部の少なくとも一部が前記通液口から前記ポート部材内に挿入するとともに前記封止部が前記ポート部材外に位置する状態で、前記液体供給ラインからの液体を、前記隙間を通過させて前記医療用容器内に導入するようにして行う請求項7または8に記載の液体充填方法。 - 請求項7ないし9のいずれかに記載の液体充填方法を用いて液体を充填してなる液体収納体。
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JP2002259083A JP2004097247A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | 医療用容器、液体充填方法および液体収納体 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100372517C (zh) * | 2005-05-19 | 2008-03-05 | 上海武彬包装制品有限公司 | 一种侧面或底部灌装密封塑料输液容器及其制造方法 |
CN103264781A (zh) * | 2013-05-17 | 2013-08-28 | 四川科伦药业股份有限公司 | 软袋输液产品药液灌装系统 |
CN103264780A (zh) * | 2013-05-17 | 2013-08-28 | 四川科伦药业股份有限公司 | 软袋输液产品的药液灌装方法 |
JP6185212B1 (ja) * | 2016-04-27 | 2017-08-23 | 悠一 佐紺 | Ptfeフィルムを用いた成形体フィルター、及びそれを用いた医療吸引器用ディスポーザブルバッグまたは容器 |
WO2021106425A1 (ja) * | 2019-11-28 | 2021-06-03 | テルモ株式会社 | 輸液カートリッジ及び輸液ポンプ |
-
2002
- 2002-09-04 JP JP2002259083A patent/JP2004097247A/ja active Pending
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