JP2004095922A - ZnSe系発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】ZnSe系の発光素子において寿命をより長く、光出力をより大きくすること。
【解決手段】n型クラッド層から注入された電子が活性層からp型クラッド層へと漏れることによって電子がp型クラッド層のドーパントを移動させ劣化させ寿命が制限される。活性層から電子がp型クラッド層へ出て行かないようにp型クラッド層での伝導帯エネルギーEcpを、n型クラッド層での伝導帯エネルギーEcnより高くなるようにした(Ecp>Ecn)。そのためにn型クラッド層は硫黄を含むZnMgSSeとするが、p型クラッド層はMgの混晶比の高いZnMgSSeとするか、Beを含むZnMgBeSe系として、Ecp>Ecnを満足するようにする。
【選択図】 図4
【解決手段】n型クラッド層から注入された電子が活性層からp型クラッド層へと漏れることによって電子がp型クラッド層のドーパントを移動させ劣化させ寿命が制限される。活性層から電子がp型クラッド層へ出て行かないようにp型クラッド層での伝導帯エネルギーEcpを、n型クラッド層での伝導帯エネルギーEcnより高くなるようにした(Ecp>Ecn)。そのためにn型クラッド層は硫黄を含むZnMgSSeとするが、p型クラッド層はMgの混晶比の高いZnMgSSeとするか、Beを含むZnMgBeSe系として、Ecp>Ecnを満足するようにする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はZnSe系の半導体発光素子のクラッド層の改良に関する。ZnSe半導体は、バンドギャップが2.7eVと広くて青色の発光素子として利用できる。青色発光素子としてZnSe−LEDが製造されている。LEDとしては寿命の点でGaN系のLEDに及ばないのでGaN系ほどには未だに広く利用されていない。しかしZnSe系発光素子は白色発光素子としても利用できることがわかってきた。白色発光素子の場合は基板の発光を利用するので余分な構造物を付加する必要がなく、簡便な構造となり、GaN系白色素子よりも小型、低コストのものとなり得る。
【0002】
白色発光する電気製品は、白熱電球、蛍光灯などである。広く普及し充分な実績があるが嵩高く、重量があり、電力消費が大きく寿命が短いなどの欠点がある。ZnSe半導体を白色発光素子とすれば小型、軽量、省電力の理想的なものができる。そのような小型白色発光素子の用途は無限にある。しかしながら現在のところZnSe発光素子はGaN系に比較して輝度、寿命の点で劣る。発光素子とするためには輝度も寿命も重要な因子である。特に寿命はZnSe系発光素子の広い実用化を阻む問題となっている。LDの場合は特に電流密度が高いので劣化が著しく、それがさらに寿命を制限している。
【0003】
寿命を制限する主な原因はp型クラッド層の劣化である。p型の不純物として窒素が使われる。窒素(5族)はSe(6族)を置換することによって正孔を一つ出しp型ドーパントとなる。窒素原子が格子間に入ったりしてSe空孔ができると、深いn型レベルを作るので、折角できた正孔を捕獲して正孔濃度を減らす。アクセプタとなるものがドナーを作りキャリヤを相殺する現象を自己補償と言っている。窒素はp型ドーパントとして最も優れたものであるが自己補償効果が大きくて窒素を大量にドープしてもp型キャリヤ(正孔)を増やすことは難しい。それは初期特性のことであるが、通電によって折角Se位置にあった窒素原子が動いて深いドナーを作ってしまう。それによってp型クラッド層の正孔密度がどんどん減少してゆくので劣化が進行するのである。
【0004】
通電によってというが、p型クラッド層を走行する電荷は正孔である。正孔の減少はクラッド層の抵抗を上げ駆動電圧を上げる(電流を一定とすると)ので望ましくない。しかしそれは結果であって、p型クラッド層の劣化を推進するのは正孔ではなく、むしろ電子であろうということが分かってきた。p型クラッド層では電子は少数キャリヤであるから本来少ないのである。しかし活性層で完全に光に変換されなかった余剰の電子が活性層・p型クラッド層の壁を飛び越えてp型クラッド層へ入りp型クラッド層を流れるということがありうる。その電子がp型クラッド層の窒素ドーパントを動かしてアクセプタレベルを減らしp型クラッド層を劣化させ正孔濃度を下げるようになる。
【0005】
よく知られているように正孔密度pと電子密度nの積pnはフェルミレベルによらず常に一定である。pが減少するとnの密度が増える。すると活性層から飛び込んでくる電子の数がよけいに増える。電子による窒素原子のマイグレーションによってp型クラッド層の劣化がいっそう進行する。そのようなわけで短時間にp型クラッド層の劣化が進むというようなことが本発明者に分かってきた。
【0006】
【従来の技術】
本発明は白色LED、中間色LEDにも用いることができるので、同出願人によるZnSe系白色LED、中間色LEDに関する従来技術について述べる。
【0007】
▲1▼特許第3087742号「白色LED」(特願平10−316169号、特開2000−82845)
【0008】
これはヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)をドープしたn型ZnSeの上にZnSe系のpn接合発光素子部分を形成し、pn接合で485nm程度の青色を作りZnSe基板に青色を当ててそこから580nm程度の広いピークをもつ橙色黄色を発光させ青色と黄色の混合によって白色を作り出す。それは基板のSA発光を利用するので余分に蛍光材、蛍光板などが不要である。構造が簡単で小型、軽量の白色LEDとなるのである。ZnSe−LED自体の構造はよく知られたものであり、活性層はZnSe/ZnCdSeの超格子である。n型クラッド層はZnMgSSe、p型クラッド層もZnMgSSeのものと、n型クラッド層はZnMgSSe、p型クラッド層はZnMgBeSeのものを実施例として挙げている。
【0009】
▲2▼特許第3087743号「中間色LED」(特願平10−321605号、特開2000−150960)
【0010】
これもヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)をドープしたn型ZnSeの上にZnSe系のpn接合発光素子部分を形成し、pn接合で470nm程度青色を作りZnSe基板に青色を当ててそこから550nm〜650nm程度の広いピークをもつ橙色黄色を発光させ青色と黄色の混合によって中間色を作り出す。従来例▲1▼とよく似ているが、青色の波長がより短く、橙色の波長がより長くなるから白色よりも紫よりの中間色が発生する。
【0011】
これらはpn接合での青色発光と基板のSA発光とを組み合わせて白色、中間色を発生させることができる。それはZnSe系の発光素子にしかできないことである。これもZnMgSSeをn型クラッド層に、BeMgZnSeをp型クラッド層に使ったものが実施例に挙げられている。
【0012】
クラッド層は発光素子(LED、LD)には必ず設けられる。それは電荷の閉じ込めのために必要である。活性層よりもバンドギャップの広い半導体をクラッド層とする。そうすると、注入された正孔が活性層の価電子帯に、注入された電子が活性層の伝導帯に閉じ込められる。狭い活性層にキャリヤを閉じ込めるのは電子・正孔の結合を促すためである。キャリヤ閉じ込めがなされないと電子・正孔の衝突断面積が減るので光が弱く輝度が低い。LDの場合、活性層に光を閉じ込めるため屈折率が活性層より低いクラッド層を用いる必要がある。その場合、屈折率、バンドギャップの両方の条件が重なり複雑になる。ここでは電荷(キャリヤ)閉じ込めだけを問題にする。だからクラッド層はバンドギャップが活性層より広くなければならない。
【0013】
それで従来は対称クラッド層構造が取られていた。n型クラッド層もp型クラッド層も同じ組成の混晶とするのである。ドーパントだけn型(塩素)、p型(窒素)に切り換えて4元混晶、3元混晶の組成はn型、p型で同一のものを用いるのが多かった。n型クラッド層がZnMgSSeなら、p型クラッド層もZnMgSSeとする。混晶はパラメータx、yを用いて組成を表現する。詳しくはZn1−xMgxSySe1−yというように書くのであるが簡単に書くため随時パラメータxyを省略してZnMgSSeと書く。
【0014】
ZnSe系の半導体でZnはMg、Cdによって部分的に置換できる。SeはS、Teによって部分的に置換できる。6族のもう一つの候補は酸素Oであるが、酸素でSeを置換するということは未だ行われていない。
【0015】
ZnをMgで置換するとバンドギャップが増え格子定数も増える。ZnをCdで置き換えるとバンドギャップが下がり格子定数が増える。
【0016】
Seを硫黄Sで置換するとバンドギャップが増え格子定数が減る。
【0017】
図1はZnSe系半導体の一部をMg、Sで置換した場合の格子定数、バンドギャップの変化を示すグラフである。横軸は格子定数(Å)、縦軸はバンドギャップ(eV)である。ZnSe、MgSe、MgS、ZnSはひし形の頂点によって示される。4元混晶ZnMgSSeはこのひし形内部の全ての領域を表現することができる。x、yを決めるとひし形の内部の点として4元混晶が表現される。それとともにバンドギャップと格子定数も判然と決まる。
【0018】
4元がこのように面積の広いひし形に広がるのは好都合である。ZnSeを通る縦線の上にある混晶はZnSeと格子整合する。4元混晶のダイヤグラムがひし形ということは、ZnSeと格子整合しながら任意のバンドギャップをもつ混晶がかなり広い範囲で存在するということである。
【0019】
但し、4つの基本化合物のうち3つのZnS、MgS、MgSeは大型単結晶を製造する技術が熟していない。だから大型単結晶基板を作る事ができない。そこでZnSeの単結晶ウエハを基板として使う。実はZnSe基板もいまだに入手しにくいものであり、GaAs基板を出発基板とするZnSe発光素子の方が多いようである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
これまでn型もp型も同じ組成とする対称クラッド構造がZnSe系発光素子に用いられてきたが、それには次のような問題があることが分かってきた。図2は、対称クラッド構造をもつ発光素子のクラッド・活性層のバンド図を示す。これは直流電源によって順方向バイアスを掛けた状態でのバンド構造であり、電源電圧の印加がフェルミレベルEfを変形させている。活性層に大部分の電圧がかかり、そこでフェルミレベルがn層からp層へ大きく低下している。それによって電子・正孔が活性層へと運ばれる。
【0021】
左がn型クラッド層で、右がp型クラッド層、真ん中が活性層である。上に引いた横線が伝導帯(conduction band:Ec)を、下に引いた横線が価電子帯(valence band:Ev)を示す。
【0022】
電源からカソードへと供給された電子はn型クラッド層の伝導帯を左から右へ(イロ)と走り活性層(ハニホヘトチ)にいたる。活性層は伝導帯が低いのでそこに電子が留まる。p型クラッド層はチリというように高くなっているから電子はそれを飛び越えることができない。それが電子の閉じ込めである。
【0023】
電源からアノードへと与えられた正孔はp型クラッド層の価電子帯を右から左へ(ワカ)と進み、活性層(カヨタレソツネ)へと入る。活性層で価電子帯がカヨ、ネナと持ち上がっている。正孔はその上方に留まるから正孔も活性層に閉じ込められる。ZnCdSeはZnSeよりもバンドギャップが狭い(ヘレ間、ホソ間)。電子・正孔はZnCdSe層で結合して光を発生する。だからその光のエネルギーはZnCdSeのバンドギャップによって決まる。
【0024】
ZnSeのバンドギャップ(ハネ間、チヨ間)は2.7eV程度であるが、ZnCdSeはもっと狭いバンドギャップ(ヘレ間、ホソ間)をもち、そこからの発光だから、460nmよりも長い波長をもつ。ZnCdSeはZnSeと格子不整合なので極めて薄い層となっている。それを厚いZnSeによって挟んでいる。ZnCdSeの厚さが発光量を決めるので薄い層を何層にも重ねている。ここではZnCdSeを1層しか書いていないが実際には1層である場合(単一量子井戸)もあるが複数層、例えば6層程度形成し(多重量子井戸)超格子とすることもある。簡単のため、以後の説明図でもZnCdSeは1層のものを図示するが、その説明は多重量子井戸の場合をも含んでいる。
【0025】
活性層で発光のために働くのはZnCdSeであるが、ZnSeの方が厚くて活性層の格子定数を決めているのはZnSeである。
【0026】
クラッド層と活性層の伝導帯の差をΔEcとする。クラッド層と活性層の価電子帯の差をΔEvとする。クラッド層・活性層のバンドギャップの差ΔEgは伝導帯の差ΔEcと価電子帯の差ΔEvの和である。
【0027】
ΔEg=ΔEc+ΔEv (1)
【0028】
混晶比x、yが決まればバンドギャップは分かるからバンドギャップの差ΔEgは計算によってすぐに求められる。しかし、それが価電子帯の差、伝導帯の差にどれだけずつ割り振られるのかということはわからない。実際に製造してみないと分からないことである。しかし電子や正孔の閉じ込めに必要なのは価電子帯の差、伝導帯の差である。
【0029】
p型クラッド層と活性層の価電子帯のエネルギー差をΔEvpとし、伝導帯のエネルギー差をΔEcpと書く事にしよう。
【0030】
n型クラッド層と活性層の価電子帯のエネルギー差をΔEvnとし、伝導帯のエネルギー差をΔEcnと書く事にしよう。
【0031】
図2に示すようにn型クラッド層とp型クラッド層が同一組成の混晶であれば当然にΔEvp(ヨカ)=ΔEvn(ネナ)、ΔEcp(チリ)=ΔEcn(ロハ)である。
【0032】
この図ではn−、p−ZnMgSSeの、活性層との伝導帯の差はΔEcp=ΔEcn=120meVであり、活性層との価電子帯の差はΔEvp=ΔEvn=90meVである。
【0033】
正孔は実効質量が大きくて移動度も小さいのであまり問題がない。ワカヨタと進んで電子と結合して光を発生して消滅する。ネナの壁(90meV)を飛び越え、n型クラッド層へ抜けてゆくということはまずない。
【0034】
しかしカソードから注入された電子はそうではない。電子は実効質量が小さいし、移動度が大きく勢いが付き易い。n型クラッド層から活性層へ注入された電子は電界で加速されているから、活性層を尽き抜けて壁(チリ)を飛び越えてp型クラッド層へ飛び上がることがある。それをここではオーバーフロー電子と呼ぶことにする。活性層の閉じ込め(120meV)が不完全であるとオーバーフロー電子がp型クラッド層へどんどん進入する。
【0035】
それは電子・正孔結合に預からないから光を作らない。損失となる部分である。それだけではなく、p型クラッド層では本来少数キャリヤである電子は、窒素アクセプタを直撃してマイグレ−ションを引き起こす。電子は電界によって加速されるからかなりの速度をもち、それがアクセプタの窒素を移動させる。Seサイトから掘り起こされた窒素原子は格子間に滞留しSeの空孔が深いドナーを形成するので、それが正孔を補集する。正孔がドナーにとらえられて次第に減少する。注入された正孔が減るということは活性層に到る正孔が減るということであり発光効率を低下させる。
【0036】
先に述べたようにnp積はどこでも一定である。正孔が減少するに従って少数キャリヤの電子密度が増える。つまりオーバーフロー電子が増えてp型ドーパントである窒素の状態がより不安定になる。正孔が減少し電子が増え抵抗率が上がる。リヌ、カワは抵抗率が低い極限では水平であるが、抵抗率が増えるので、リヌ、カワが右下がりになる。フェルミレベルもp型クラッド層において右下がりに変形する。p型クラッド層でのフェルミレベルの低下分だけ電源電圧が余分に浪費され活性層にかかる電圧が減少する。
【0037】
もしも定電流駆動しているならば電源電圧を自動的に上げるようになる。するとp型クラッド層での電圧降下を補うだけの電圧が掛かるから活性層電圧が復活し電流は元の値に戻る。しかし電子オーバーフローは増え続ける。それとともに窒素マイグレーションが増え正孔は減少してゆく。
【0038】
それは結果が原因を増強するという正帰還のかかった変化である。だからやがてp型クラッド層の抵抗率が上がりすぎて活性層に電圧がかからないようになり輝度が低下して寿命となる。
【0039】
活性層での電子閉じ込めを強化しp型クラッド層への電子オーバーフローを防ぎ長寿命、高出力を得る事のできるZnSe系発光素子を提供することが本発明の目的である。
【0040】
【課題を解決するための手段】
本発明のZnSe系発光素子は、p型クラッド層の伝導帯エネルギーEcpがn型クラッド層の伝導帯エネルギーEcnよりも高くなるようなクラッド層の構造をもつことを特徴とする。電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐにはp型クラッド層の障壁をより高くすればよい。そのためには伝導帯をn型クラッド層よりp型クラッド層で高くようにする。つまりp型クラッド層、n型クラッド層の組成を異ならせ、p型クラッド層の伝導帯をn型クラッド層伝導帯より高くする。Ecp>Ecnというような非対称構造のクラッドをもつZnSe系発光素子を提案する。
【0041】
n型クラッド層はZnMgSSeであるが、p型クラッド層はZnMgSSeあるいはZnMgBeSeとし、しかもEcp>Ecnを満足するようにする。本発明の骨子は、「Ecp>Ecn」によって簡単に表現される。
【0042】
もしもバンドギャップが同じならn型クラッド層は伝導帯、価電子帯ともに低く、p型クラッド層は伝導帯、価電子帯ともに高いものを使うということである。それは4元の材料が同じであれば難しいことである。
【0043】
もしn型、p型クラッド層でバンドギャップが違うのであれば、p型クラッド層の方がn型クラッド層よりも伝導帯が高いということである。これは同じ4元系でも実現することができる。それは図1においてケフの線に沿ってp型クラッド層の混晶比を与えるということである。
【0044】
格子整合条件を満たしながらEcp>Ecnを満足するのが難しい場合は、p型クラッド層については格子整合条件から少しはずれてもかまわない。図1において線ケコのようにMgよりにすればEcp>Ecnを満足し易い。
【0045】
以上の条件は電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐためのものである。反対に正孔のn型クラッド層へのオーバーフローはあまり考えていない。正孔のオーバーフローは起こりにくいからである。あえて正孔のオーバーフローを防ごうとすれば、n型クラッド層の価電子帯Evnが、p型クラッド層の価電子帯Evpより低ければ良い。つまりEvn<Evpである。しかし、これはあまり重要でない要件である。電子と正孔には非対称があるのである。
【0046】
Ecp>Ecnを満足するためのより具体的な手段について述べる。本発明者の研究により、硫黄Sの添加は価電子帯を下げることによってバンドギャップを広げ、マグネシウムMgの添加は伝導帯を上げることによってバンドギャップを広げるという傾向があるということがわかってきた。
【0047】
n型クラッド層は価電子帯の低いものが良いわけだから硫黄を含む4元混晶とするのが良い。それだけなら3元のZnSSeでもよいが格子不整合なのでクラッド層には使えない。n型クラッド層にはそこでZnMgSSeを用いる。4元でないと、バンドギャップを自由に選択しつつZnSe基板に格子整合できない。
【0048】
n型クラッド層はその4元であると決まるが混晶比x、yがあるから組成が確定しない。バンドギャップを決め格子整合を要求すると組成が決まる。
【0049】
p型クラッド層はそうではない。これまでの説明のように本発明は、p型クラッド層はより高い伝導帯をもつものを要求する。より高い伝導帯(Ecp>Ecn)を作るためには同じ4元ZnMgSSeを使いつつバンドギャップの広いものをp型クラッド層とする、というのが一つの選択肢である。p型クラッド層のバンドギャップがより広ければEcp>Ecnとなりうる。
【0050】
同じ4元系でEcp>Ecnという条件を満足するのが難しいときは、ZnSe基板との整合条件を多少犠牲にして、ZnSeと不整合にしてもEcp>Ecnとなるようにする。
【0051】
もう一つの選択肢としてはp型クラッド層として異なる系統の4元混晶を用いる事が可能である。硫黄は価電子帯を下げる傾向があるので、これを省いた4元があればそれを用いる。Beを含む4元混晶ZnMgBeSeがある。これはZnSe系のクラッド層としてよく知られている。そこで、ここではp型クラッド層としてBeを含むp−ZnMgBeSe混晶を用いる。その場合もn−ZnMgSSe層に対して、Ecp>Ecnという条件が課される。
【0052】
Beを含むZnMgBeSeをp型クラッド層に使うと、そのような条件を満足するような組成域が存在する。図3はBeSe、ZnSe、MgSeの格子定数、バンドギャップを図示したものである。硫黄Sがないので、図1のようにひし形にならず三角形になる。Beを入れるとバンドギャップが大きく格子定数が小さくなる傾向がある。格子定数が下がりすぎないようにMgを加えることが必要である。Be、Mgともにバンドギャップを広げる作用がある。その広がりの内どれだけが伝導帯に配分されるか?が問題であるが、Mg、Beともに伝導帯をより高く上げるように働くようである。
【0053】
n−ZnMgSSeクラッド層とp−ZnMgBeSeクラッド層の組み合わせによっても先ほどのEcp>Ecnの条件を満足することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
図4によって本発明の非対称クラッド層を説明する。従来例の図2と違うのはp型クラッド層の伝導帯・価電子帯がより上へ持ち上がっているということである。図2と違うのはp型クラッド層の伝導帯チムウがより高く、価電子帯ノオヨもより高くなっているということである。p型クラッド層の活性層に対する伝導帯の差はΔEcp=0.16eVであり、p型クラッド層の活性層に対する価電子帯の差はΔEvp=0.05eVとする。n型クラッド層は図2と同様である。
【0055】
ΔEcn=0.12eV、 ΔEcp=0.16eV
ΔEvn=0.09eV、 ΔEvp=0.05eV
【0056】
これは活性層とのバンドギャップの差はいずれも0.21eVであるが、その配分が異なっており、伝導帯に対し本発明の要求するEcp>Ecnという条件を満足する。それは電子のp型クラッド層へのオーバーフローを抑止する条件である。この例は価電子帯に対しても付加条件Evp>Evnを満足するから正孔のオーバーフローを防ぐ作用を合わせもつ。
【0057】
図4において電子はn型クラッド層の方からイロハニというように注入されて活性層にいたる。やがて電子の一部はホヘのZnCdSeの谷間に落ち込む。先述のように、ここでは単一量子井戸(ZnCdSe/ZnSe)を示すが多重量子井戸でも同様である。正孔はp型クラッド層の方からノオヨタというように注入されて活性層に到り、レソのZnCdSeの谷間に入る。それらの狭いZnCdSe領域に局在した電子正孔対が結合して光を発生する。それは正常な発光作用である。電子はイロからハチへと落ちるので運動エネルギーが過剰となっている。
【0058】
図2の場合はイロとリヌの高さが同じであるからオーバーフローする可能性があった。しかし図4の場合はn型クラッド層のイロ(Ecn)よりも、p型クラッド層のムウ(Ecp)の方が高いので電子はムチの壁を乗り越えることができない。Ecp>Ecnという条件が成り立つからである。電子の熱運動エネルギーは25meV程度でありわずかなものである。これを加えたとしても、ΔEcp(ム)=160meV、ΔEcn(ロ)=120meVであるから、イロ(n型クラッド層)から活性層へ落ちた電子が高い壁ムチ(p型クラッド層)を乗り越えることはできない。つまりp型クラッド層への電子オーバーフローを有効に抑制できる。
【0059】
図4ではバンドギャップが同じn型クラッド層、p型クラッド層(Egp=Egn)を示すが、それは必須の条件ではない。電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐことが目的なので、Ecp>Ecnであればよい。熱運動25meVを考慮すると、EcpがEcn+25meVと同じかそれ以上であればさらに良い。
【0060】
そのような条件が満足されていれば、電子のp型クラッド層へのオーバーフローがない。もしもオーバーフローがあれば電子によってp型クラッド層の窒素アクセプタが破壊されて正孔が減少し電子が増えて抵抗率が上がり(p型クラッド層の電子は注入に寄与しない)、駆動電圧が上がり電流が減少し寿命が短くなる。本発明はそれを防ぐことができ、発光効率が向上し寿命は増進される。
【0061】
【実施例】
[比較例(n−、p−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85;図5)]
同一組成のn型クラッド層、p型クラッド層を持つ従来例について初めに述べる。これを基準として性能を比較するためである。図5にn型クラッド層・活性層・p型クラッド層のバンド構造の概略を示す。活性層はこれまで説明してきたものと同様にZnCdSe/ZnSe量子井戸である。n型クラッド層もp型クラッド層も同じ組成であり、Mgが0.2、Seが0.15だけ含まれる4元混晶Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85である。これはZnSeとの格子整合条件を満たしており、図1の破線ケフの上にある組成である。そのバンドギャップはEg=2.88eVである。
【0062】
比較を簡単にするため以下の実施例においてn型クラッド層は全てEg=2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85とする。p型クラッド層の組成をEcp>Ecnとなるように変化させる。
【0063】
[実施例1(p−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85;Eg=2.93eV;図6、7)]
p型クラッド層をMg成分を0.1だけ増やしたZn0.70Mg0.30S0.15Se0.85とした。そのバンドギャップはEg=2.93eVである。図6にn型クラッド層・活性層・p型クラッド層のバンド図を示す。図7にそれをp型クラッド層として有するZnSe系LEDの構造を示す。n−ZnSe基板の上に、n−ZnSeバッファ層を形成し、その上にn−ZnMgSSeクラッド層を、さらに、その上にZnCdSe/ZnSeの多重量子井戸活性層を設ける。その上のp型クラッド層がp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85である。さらにその上にp−ZnSeコンタクト層、p−(ZnTe/ZnSe)超格子、p−ZnTeコンタクト層を形成し最上層に薄い金層を被覆し、さらにp電極を形成している。
上から順に層構造を述べる。
【0064】
p電極 Au/Pt/Pd(リング、ドット状)
Au層 10nm〜20nmのAu層
p−ZnTeコンタクト層 10原子層
p−(ZnTe/ZnSe)超格子
p−ZnSeコンタクト層 200nm
p−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85 500nm Eg=2.93eV
ZnCdSe/ZnSe超格子活性層 8nmZnSe4層、2nmZnCdSe3層合計7層 38nm
n−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85 500nm Eg=2.88eV
n−ZnSeバッファ層 1000nm Eg=2.7eV
n−ZnSe基板 Eg=2.7eV
n電極 In(全面に)
【0065】
実施例1は価電子帯は、n型クラッド層とほぼ同じであり、Mgが増えている分だけ伝導帯が余分に上がる。n型クラッド層(Eg=2.88eV)とp型クラッド層(Eg=2.93eV)のバンドギャップの差は0.05eVであるが、それの殆どが伝導帯の増加分になる。つまり図6において、n型クラッド層伝導帯イロに比べ、p型クラッド層の伝導帯は50meV高いということになる。それによって電子のオーバーフローを有効に防止できる。
【0066】
それによって光出力は図5の従来例に比較して1.2倍に増えた。
LEDの寿命は、図5の従来例に比較して1.8倍に増えた。
ただし、この実施例のp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85は格子整合条件を満足していない。図1の格子不整合線ケコのような線状にある。p型クラッド層の組成を同じ4元系とする場合は格子整合線ケフに沿ってMgとSの両方を増やすとバンドギャップの増加が価電子帯の下がりに喰われてしまって伝導帯の上がりが不十分になる可能性がある。ケコのようなMgよりの不整合を選ぶと伝導帯を持ち上げることができる。
【0067】
[実施例2(p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se;Eg=2.90eV;図8、9)]
ZnMgSSe4元をやめて、p型クラッド層をBe系のものにした。Be系のものは2族元素が3種類入っており(Mg、Zn、Be)Znの代わりにMgを増やしてもBeを増やしてもバンドギャップは増え、それがほぼ全部伝導帯の増加になる。硫黄Sがないので硫黄による価電子帯の下がりがなくなり、価電子帯が持ち上がる。するとバンドギャップと価電子帯の持ち上がり分の合計が、伝導帯の上昇分となり、より有利な構造である。
【0068】
但し図3に示すようにBeを含ませるとバンドギャップが大きく変化し格子定数も大きく減少するから、あまりBeをたくさん含ませる訳にゆかない。それでこの実施例ではBeが0.06となっている。Beがあると格子定数が減るのでMgを加え、その分を補償する必要がある。この組成はバンドギャップはEg=2.90eVである。n型クラッド層の2.88eVに比べて20meVしか高くない。しかし価電子帯が持ち上がるので、伝導帯の上昇分は50meV程度にはなる。
【0069】
p型クラッド層における正孔密度はp=7×1016cm−3である。図5の従来例(p=6×1016cm−3)に比べてあまり高いわけではない。しかし、これによっても光出力は1.2倍に、寿命は1.8倍に増える。
【0070】
[実施例3(p−BeTe/Be0.10Zn0.72Mg0.18Se;Eg=3.10eV;図10、11)]
これもZnMgSSe4元をやめて、p型クラッド層をBe系のものにした。Be系のものは2族元素が3種類入っており(Mg、Zn、Be)Znの代わりにMgを増やしてもBeを増やしてもバンドギャップは増え、それがほぼ全部伝導帯の増加になる。硫黄Sがないので硫黄による価電子帯の下がりがなくなり、価電子帯が持ち上がる。バンドギャップと価電子帯の持ち上がり分の合計が、伝導帯の上昇分となり、より有利な構造である。しかし大量にBeを入れると格子整合条件を満たすのが難しくなる。
【0071】
伝導帯を上げバンドギャップを増やすにはBeもMgも増やすのが有効である。そこでBeを0.1にMgを0.18に上げて混晶を作製した。これはノンドープであるが、薄いp−BeTe層を挟む超格子構造とした。BeTeはバンドギャップが狭いから、活性層と隣接させると、Ecp>Ecnという条件を満足できない。そこでノンドープのBe0.10Zn0.72Mg0.18Seを活性層に隣接させて形成する。それはEcp>Ecnを満足するがp型キャリヤ正孔の数が不足する。それで正孔を供給するためにp−BeTeを間に挟む。BeTeに窒素をドープしたときの活性化率は高いから正孔が大量に供給され、それがノンドープのBe0.10Zn0.72Mg0.18Seにも広がって伝導率を上げる。p=3×1017cm−3というのは平均の濃度である。
これによっても光出力は1.2倍に、寿命は1.8倍に増える。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、n型クラッド層とp型クラッド層の組成が同一でない非対称クラッド構造のZnSe系発光素子を提案する。n型クラッド層とp型クラッド層が同一の層構造であるとn型クラッド層から活性層へ注入された電子の一部が活性層・p型クラッド層の間の伝導帯障壁を飛び越えてp型クラッド層へとオーバーフローする。それがp型クラッド層のアクセプタを減少させ特性を劣化させていたのである。本発明はp型クラッド層の伝導帯をn型クラッド層伝導帯より高くする(Ecp>Ecn)のでn型クラッド層から活性層へ注入された電子がp型クラッド層へオーバーフローしない。そのためにp型クラッド層のアクセプタは安定な状態を維持し、いつまでも劣化せず長寿命の発光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ZnSe、MgS、MgSe、ZnSを4頂点とするひし形に含まれるZnMgSSe四元系の格子定数(Å)、バンドギャップEgの関係を示すグラフ。
【図2】同じ組成をもつn型クラッド層とp型クラッド層をもつ従来例にかかるZnSe系LEDにおけるクラッド層、活性層の部分の直流バイアスを印加した状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯の差ΔEcpが小さいので電子がp型クラッド層へオーバーフローする可能性があることを示す。
【図3】BeSe、MgSe、ZnSeを3頂点とする三角形に含まれるBeZnMgSe四元系の格子定数(Å)、バンドギャップEgの関係を示すグラフ。
【図4】異なる組成をもつn型クラッド層とp型クラッド層を設けp型クラッド層の伝導帯がn型クラッド層の伝導帯より高くなるようにして、電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防止するようにした本発明の原理を説明するための本発明にかかるZnSe系LEDにおけるクラッド層、活性層の部分の直流バイアスを印加した状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯の差ΔEcpが大きいので電子がp型クラッド層へオーバーフローする可能性がない。
【図5】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ組成のp−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を採用した従来例のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図を示す。p型クラッド層もn型クラッド層も同じ伝導帯の高さになり電子オーバーフローが起こる。正孔密度はp=6×1016cm−3である。
【図6】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ4元であるが混晶比の違うp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85を採用した本発明の実施例1のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。
【図7】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ4元であるが混晶比の違うp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85を採用した本発明の実施例1のLEDの層構造図。
【図8】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se(Eg=2.90eV)を採用した本発明の実施例2のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。光出力は図5の従来例の1.2倍、寿命は1.8倍である。
【図9】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se(Eg=2.90eV)を採用した本発明の実施例2のLEDにおける層構造図。
【図10】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶ノンドープBe0.10Zn0.72Mg0.18Se(Eg=3.10eV)と薄いp−BeTeの超格子層を採用した本発明の実施例3のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。p型クラッド層での正孔の濃度はp=3×1017cm−3である。光出力は図5の従来例の1.2倍、寿命は1.8倍である。
【図11】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶ノンドープBe0.10Zn0.72Mg0.18Se(Eg=3.10eV)と薄いp−BeTeの超格子層を採用した本発明の実施例3のLEDにおける層構造図。
【発明の属する技術分野】
この発明はZnSe系の半導体発光素子のクラッド層の改良に関する。ZnSe半導体は、バンドギャップが2.7eVと広くて青色の発光素子として利用できる。青色発光素子としてZnSe−LEDが製造されている。LEDとしては寿命の点でGaN系のLEDに及ばないのでGaN系ほどには未だに広く利用されていない。しかしZnSe系発光素子は白色発光素子としても利用できることがわかってきた。白色発光素子の場合は基板の発光を利用するので余分な構造物を付加する必要がなく、簡便な構造となり、GaN系白色素子よりも小型、低コストのものとなり得る。
【0002】
白色発光する電気製品は、白熱電球、蛍光灯などである。広く普及し充分な実績があるが嵩高く、重量があり、電力消費が大きく寿命が短いなどの欠点がある。ZnSe半導体を白色発光素子とすれば小型、軽量、省電力の理想的なものができる。そのような小型白色発光素子の用途は無限にある。しかしながら現在のところZnSe発光素子はGaN系に比較して輝度、寿命の点で劣る。発光素子とするためには輝度も寿命も重要な因子である。特に寿命はZnSe系発光素子の広い実用化を阻む問題となっている。LDの場合は特に電流密度が高いので劣化が著しく、それがさらに寿命を制限している。
【0003】
寿命を制限する主な原因はp型クラッド層の劣化である。p型の不純物として窒素が使われる。窒素(5族)はSe(6族)を置換することによって正孔を一つ出しp型ドーパントとなる。窒素原子が格子間に入ったりしてSe空孔ができると、深いn型レベルを作るので、折角できた正孔を捕獲して正孔濃度を減らす。アクセプタとなるものがドナーを作りキャリヤを相殺する現象を自己補償と言っている。窒素はp型ドーパントとして最も優れたものであるが自己補償効果が大きくて窒素を大量にドープしてもp型キャリヤ(正孔)を増やすことは難しい。それは初期特性のことであるが、通電によって折角Se位置にあった窒素原子が動いて深いドナーを作ってしまう。それによってp型クラッド層の正孔密度がどんどん減少してゆくので劣化が進行するのである。
【0004】
通電によってというが、p型クラッド層を走行する電荷は正孔である。正孔の減少はクラッド層の抵抗を上げ駆動電圧を上げる(電流を一定とすると)ので望ましくない。しかしそれは結果であって、p型クラッド層の劣化を推進するのは正孔ではなく、むしろ電子であろうということが分かってきた。p型クラッド層では電子は少数キャリヤであるから本来少ないのである。しかし活性層で完全に光に変換されなかった余剰の電子が活性層・p型クラッド層の壁を飛び越えてp型クラッド層へ入りp型クラッド層を流れるということがありうる。その電子がp型クラッド層の窒素ドーパントを動かしてアクセプタレベルを減らしp型クラッド層を劣化させ正孔濃度を下げるようになる。
【0005】
よく知られているように正孔密度pと電子密度nの積pnはフェルミレベルによらず常に一定である。pが減少するとnの密度が増える。すると活性層から飛び込んでくる電子の数がよけいに増える。電子による窒素原子のマイグレーションによってp型クラッド層の劣化がいっそう進行する。そのようなわけで短時間にp型クラッド層の劣化が進むというようなことが本発明者に分かってきた。
【0006】
【従来の技術】
本発明は白色LED、中間色LEDにも用いることができるので、同出願人によるZnSe系白色LED、中間色LEDに関する従来技術について述べる。
【0007】
▲1▼特許第3087742号「白色LED」(特願平10−316169号、特開2000−82845)
【0008】
これはヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)をドープしたn型ZnSeの上にZnSe系のpn接合発光素子部分を形成し、pn接合で485nm程度の青色を作りZnSe基板に青色を当ててそこから580nm程度の広いピークをもつ橙色黄色を発光させ青色と黄色の混合によって白色を作り出す。それは基板のSA発光を利用するので余分に蛍光材、蛍光板などが不要である。構造が簡単で小型、軽量の白色LEDとなるのである。ZnSe−LED自体の構造はよく知られたものであり、活性層はZnSe/ZnCdSeの超格子である。n型クラッド層はZnMgSSe、p型クラッド層もZnMgSSeのものと、n型クラッド層はZnMgSSe、p型クラッド層はZnMgBeSeのものを実施例として挙げている。
【0009】
▲2▼特許第3087743号「中間色LED」(特願平10−321605号、特開2000−150960)
【0010】
これもヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)をドープしたn型ZnSeの上にZnSe系のpn接合発光素子部分を形成し、pn接合で470nm程度青色を作りZnSe基板に青色を当ててそこから550nm〜650nm程度の広いピークをもつ橙色黄色を発光させ青色と黄色の混合によって中間色を作り出す。従来例▲1▼とよく似ているが、青色の波長がより短く、橙色の波長がより長くなるから白色よりも紫よりの中間色が発生する。
【0011】
これらはpn接合での青色発光と基板のSA発光とを組み合わせて白色、中間色を発生させることができる。それはZnSe系の発光素子にしかできないことである。これもZnMgSSeをn型クラッド層に、BeMgZnSeをp型クラッド層に使ったものが実施例に挙げられている。
【0012】
クラッド層は発光素子(LED、LD)には必ず設けられる。それは電荷の閉じ込めのために必要である。活性層よりもバンドギャップの広い半導体をクラッド層とする。そうすると、注入された正孔が活性層の価電子帯に、注入された電子が活性層の伝導帯に閉じ込められる。狭い活性層にキャリヤを閉じ込めるのは電子・正孔の結合を促すためである。キャリヤ閉じ込めがなされないと電子・正孔の衝突断面積が減るので光が弱く輝度が低い。LDの場合、活性層に光を閉じ込めるため屈折率が活性層より低いクラッド層を用いる必要がある。その場合、屈折率、バンドギャップの両方の条件が重なり複雑になる。ここでは電荷(キャリヤ)閉じ込めだけを問題にする。だからクラッド層はバンドギャップが活性層より広くなければならない。
【0013】
それで従来は対称クラッド層構造が取られていた。n型クラッド層もp型クラッド層も同じ組成の混晶とするのである。ドーパントだけn型(塩素)、p型(窒素)に切り換えて4元混晶、3元混晶の組成はn型、p型で同一のものを用いるのが多かった。n型クラッド層がZnMgSSeなら、p型クラッド層もZnMgSSeとする。混晶はパラメータx、yを用いて組成を表現する。詳しくはZn1−xMgxSySe1−yというように書くのであるが簡単に書くため随時パラメータxyを省略してZnMgSSeと書く。
【0014】
ZnSe系の半導体でZnはMg、Cdによって部分的に置換できる。SeはS、Teによって部分的に置換できる。6族のもう一つの候補は酸素Oであるが、酸素でSeを置換するということは未だ行われていない。
【0015】
ZnをMgで置換するとバンドギャップが増え格子定数も増える。ZnをCdで置き換えるとバンドギャップが下がり格子定数が増える。
【0016】
Seを硫黄Sで置換するとバンドギャップが増え格子定数が減る。
【0017】
図1はZnSe系半導体の一部をMg、Sで置換した場合の格子定数、バンドギャップの変化を示すグラフである。横軸は格子定数(Å)、縦軸はバンドギャップ(eV)である。ZnSe、MgSe、MgS、ZnSはひし形の頂点によって示される。4元混晶ZnMgSSeはこのひし形内部の全ての領域を表現することができる。x、yを決めるとひし形の内部の点として4元混晶が表現される。それとともにバンドギャップと格子定数も判然と決まる。
【0018】
4元がこのように面積の広いひし形に広がるのは好都合である。ZnSeを通る縦線の上にある混晶はZnSeと格子整合する。4元混晶のダイヤグラムがひし形ということは、ZnSeと格子整合しながら任意のバンドギャップをもつ混晶がかなり広い範囲で存在するということである。
【0019】
但し、4つの基本化合物のうち3つのZnS、MgS、MgSeは大型単結晶を製造する技術が熟していない。だから大型単結晶基板を作る事ができない。そこでZnSeの単結晶ウエハを基板として使う。実はZnSe基板もいまだに入手しにくいものであり、GaAs基板を出発基板とするZnSe発光素子の方が多いようである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
これまでn型もp型も同じ組成とする対称クラッド構造がZnSe系発光素子に用いられてきたが、それには次のような問題があることが分かってきた。図2は、対称クラッド構造をもつ発光素子のクラッド・活性層のバンド図を示す。これは直流電源によって順方向バイアスを掛けた状態でのバンド構造であり、電源電圧の印加がフェルミレベルEfを変形させている。活性層に大部分の電圧がかかり、そこでフェルミレベルがn層からp層へ大きく低下している。それによって電子・正孔が活性層へと運ばれる。
【0021】
左がn型クラッド層で、右がp型クラッド層、真ん中が活性層である。上に引いた横線が伝導帯(conduction band:Ec)を、下に引いた横線が価電子帯(valence band:Ev)を示す。
【0022】
電源からカソードへと供給された電子はn型クラッド層の伝導帯を左から右へ(イロ)と走り活性層(ハニホヘトチ)にいたる。活性層は伝導帯が低いのでそこに電子が留まる。p型クラッド層はチリというように高くなっているから電子はそれを飛び越えることができない。それが電子の閉じ込めである。
【0023】
電源からアノードへと与えられた正孔はp型クラッド層の価電子帯を右から左へ(ワカ)と進み、活性層(カヨタレソツネ)へと入る。活性層で価電子帯がカヨ、ネナと持ち上がっている。正孔はその上方に留まるから正孔も活性層に閉じ込められる。ZnCdSeはZnSeよりもバンドギャップが狭い(ヘレ間、ホソ間)。電子・正孔はZnCdSe層で結合して光を発生する。だからその光のエネルギーはZnCdSeのバンドギャップによって決まる。
【0024】
ZnSeのバンドギャップ(ハネ間、チヨ間)は2.7eV程度であるが、ZnCdSeはもっと狭いバンドギャップ(ヘレ間、ホソ間)をもち、そこからの発光だから、460nmよりも長い波長をもつ。ZnCdSeはZnSeと格子不整合なので極めて薄い層となっている。それを厚いZnSeによって挟んでいる。ZnCdSeの厚さが発光量を決めるので薄い層を何層にも重ねている。ここではZnCdSeを1層しか書いていないが実際には1層である場合(単一量子井戸)もあるが複数層、例えば6層程度形成し(多重量子井戸)超格子とすることもある。簡単のため、以後の説明図でもZnCdSeは1層のものを図示するが、その説明は多重量子井戸の場合をも含んでいる。
【0025】
活性層で発光のために働くのはZnCdSeであるが、ZnSeの方が厚くて活性層の格子定数を決めているのはZnSeである。
【0026】
クラッド層と活性層の伝導帯の差をΔEcとする。クラッド層と活性層の価電子帯の差をΔEvとする。クラッド層・活性層のバンドギャップの差ΔEgは伝導帯の差ΔEcと価電子帯の差ΔEvの和である。
【0027】
ΔEg=ΔEc+ΔEv (1)
【0028】
混晶比x、yが決まればバンドギャップは分かるからバンドギャップの差ΔEgは計算によってすぐに求められる。しかし、それが価電子帯の差、伝導帯の差にどれだけずつ割り振られるのかということはわからない。実際に製造してみないと分からないことである。しかし電子や正孔の閉じ込めに必要なのは価電子帯の差、伝導帯の差である。
【0029】
p型クラッド層と活性層の価電子帯のエネルギー差をΔEvpとし、伝導帯のエネルギー差をΔEcpと書く事にしよう。
【0030】
n型クラッド層と活性層の価電子帯のエネルギー差をΔEvnとし、伝導帯のエネルギー差をΔEcnと書く事にしよう。
【0031】
図2に示すようにn型クラッド層とp型クラッド層が同一組成の混晶であれば当然にΔEvp(ヨカ)=ΔEvn(ネナ)、ΔEcp(チリ)=ΔEcn(ロハ)である。
【0032】
この図ではn−、p−ZnMgSSeの、活性層との伝導帯の差はΔEcp=ΔEcn=120meVであり、活性層との価電子帯の差はΔEvp=ΔEvn=90meVである。
【0033】
正孔は実効質量が大きくて移動度も小さいのであまり問題がない。ワカヨタと進んで電子と結合して光を発生して消滅する。ネナの壁(90meV)を飛び越え、n型クラッド層へ抜けてゆくということはまずない。
【0034】
しかしカソードから注入された電子はそうではない。電子は実効質量が小さいし、移動度が大きく勢いが付き易い。n型クラッド層から活性層へ注入された電子は電界で加速されているから、活性層を尽き抜けて壁(チリ)を飛び越えてp型クラッド層へ飛び上がることがある。それをここではオーバーフロー電子と呼ぶことにする。活性層の閉じ込め(120meV)が不完全であるとオーバーフロー電子がp型クラッド層へどんどん進入する。
【0035】
それは電子・正孔結合に預からないから光を作らない。損失となる部分である。それだけではなく、p型クラッド層では本来少数キャリヤである電子は、窒素アクセプタを直撃してマイグレ−ションを引き起こす。電子は電界によって加速されるからかなりの速度をもち、それがアクセプタの窒素を移動させる。Seサイトから掘り起こされた窒素原子は格子間に滞留しSeの空孔が深いドナーを形成するので、それが正孔を補集する。正孔がドナーにとらえられて次第に減少する。注入された正孔が減るということは活性層に到る正孔が減るということであり発光効率を低下させる。
【0036】
先に述べたようにnp積はどこでも一定である。正孔が減少するに従って少数キャリヤの電子密度が増える。つまりオーバーフロー電子が増えてp型ドーパントである窒素の状態がより不安定になる。正孔が減少し電子が増え抵抗率が上がる。リヌ、カワは抵抗率が低い極限では水平であるが、抵抗率が増えるので、リヌ、カワが右下がりになる。フェルミレベルもp型クラッド層において右下がりに変形する。p型クラッド層でのフェルミレベルの低下分だけ電源電圧が余分に浪費され活性層にかかる電圧が減少する。
【0037】
もしも定電流駆動しているならば電源電圧を自動的に上げるようになる。するとp型クラッド層での電圧降下を補うだけの電圧が掛かるから活性層電圧が復活し電流は元の値に戻る。しかし電子オーバーフローは増え続ける。それとともに窒素マイグレーションが増え正孔は減少してゆく。
【0038】
それは結果が原因を増強するという正帰還のかかった変化である。だからやがてp型クラッド層の抵抗率が上がりすぎて活性層に電圧がかからないようになり輝度が低下して寿命となる。
【0039】
活性層での電子閉じ込めを強化しp型クラッド層への電子オーバーフローを防ぎ長寿命、高出力を得る事のできるZnSe系発光素子を提供することが本発明の目的である。
【0040】
【課題を解決するための手段】
本発明のZnSe系発光素子は、p型クラッド層の伝導帯エネルギーEcpがn型クラッド層の伝導帯エネルギーEcnよりも高くなるようなクラッド層の構造をもつことを特徴とする。電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐにはp型クラッド層の障壁をより高くすればよい。そのためには伝導帯をn型クラッド層よりp型クラッド層で高くようにする。つまりp型クラッド層、n型クラッド層の組成を異ならせ、p型クラッド層の伝導帯をn型クラッド層伝導帯より高くする。Ecp>Ecnというような非対称構造のクラッドをもつZnSe系発光素子を提案する。
【0041】
n型クラッド層はZnMgSSeであるが、p型クラッド層はZnMgSSeあるいはZnMgBeSeとし、しかもEcp>Ecnを満足するようにする。本発明の骨子は、「Ecp>Ecn」によって簡単に表現される。
【0042】
もしもバンドギャップが同じならn型クラッド層は伝導帯、価電子帯ともに低く、p型クラッド層は伝導帯、価電子帯ともに高いものを使うということである。それは4元の材料が同じであれば難しいことである。
【0043】
もしn型、p型クラッド層でバンドギャップが違うのであれば、p型クラッド層の方がn型クラッド層よりも伝導帯が高いということである。これは同じ4元系でも実現することができる。それは図1においてケフの線に沿ってp型クラッド層の混晶比を与えるということである。
【0044】
格子整合条件を満たしながらEcp>Ecnを満足するのが難しい場合は、p型クラッド層については格子整合条件から少しはずれてもかまわない。図1において線ケコのようにMgよりにすればEcp>Ecnを満足し易い。
【0045】
以上の条件は電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐためのものである。反対に正孔のn型クラッド層へのオーバーフローはあまり考えていない。正孔のオーバーフローは起こりにくいからである。あえて正孔のオーバーフローを防ごうとすれば、n型クラッド層の価電子帯Evnが、p型クラッド層の価電子帯Evpより低ければ良い。つまりEvn<Evpである。しかし、これはあまり重要でない要件である。電子と正孔には非対称があるのである。
【0046】
Ecp>Ecnを満足するためのより具体的な手段について述べる。本発明者の研究により、硫黄Sの添加は価電子帯を下げることによってバンドギャップを広げ、マグネシウムMgの添加は伝導帯を上げることによってバンドギャップを広げるという傾向があるということがわかってきた。
【0047】
n型クラッド層は価電子帯の低いものが良いわけだから硫黄を含む4元混晶とするのが良い。それだけなら3元のZnSSeでもよいが格子不整合なのでクラッド層には使えない。n型クラッド層にはそこでZnMgSSeを用いる。4元でないと、バンドギャップを自由に選択しつつZnSe基板に格子整合できない。
【0048】
n型クラッド層はその4元であると決まるが混晶比x、yがあるから組成が確定しない。バンドギャップを決め格子整合を要求すると組成が決まる。
【0049】
p型クラッド層はそうではない。これまでの説明のように本発明は、p型クラッド層はより高い伝導帯をもつものを要求する。より高い伝導帯(Ecp>Ecn)を作るためには同じ4元ZnMgSSeを使いつつバンドギャップの広いものをp型クラッド層とする、というのが一つの選択肢である。p型クラッド層のバンドギャップがより広ければEcp>Ecnとなりうる。
【0050】
同じ4元系でEcp>Ecnという条件を満足するのが難しいときは、ZnSe基板との整合条件を多少犠牲にして、ZnSeと不整合にしてもEcp>Ecnとなるようにする。
【0051】
もう一つの選択肢としてはp型クラッド層として異なる系統の4元混晶を用いる事が可能である。硫黄は価電子帯を下げる傾向があるので、これを省いた4元があればそれを用いる。Beを含む4元混晶ZnMgBeSeがある。これはZnSe系のクラッド層としてよく知られている。そこで、ここではp型クラッド層としてBeを含むp−ZnMgBeSe混晶を用いる。その場合もn−ZnMgSSe層に対して、Ecp>Ecnという条件が課される。
【0052】
Beを含むZnMgBeSeをp型クラッド層に使うと、そのような条件を満足するような組成域が存在する。図3はBeSe、ZnSe、MgSeの格子定数、バンドギャップを図示したものである。硫黄Sがないので、図1のようにひし形にならず三角形になる。Beを入れるとバンドギャップが大きく格子定数が小さくなる傾向がある。格子定数が下がりすぎないようにMgを加えることが必要である。Be、Mgともにバンドギャップを広げる作用がある。その広がりの内どれだけが伝導帯に配分されるか?が問題であるが、Mg、Beともに伝導帯をより高く上げるように働くようである。
【0053】
n−ZnMgSSeクラッド層とp−ZnMgBeSeクラッド層の組み合わせによっても先ほどのEcp>Ecnの条件を満足することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
図4によって本発明の非対称クラッド層を説明する。従来例の図2と違うのはp型クラッド層の伝導帯・価電子帯がより上へ持ち上がっているということである。図2と違うのはp型クラッド層の伝導帯チムウがより高く、価電子帯ノオヨもより高くなっているということである。p型クラッド層の活性層に対する伝導帯の差はΔEcp=0.16eVであり、p型クラッド層の活性層に対する価電子帯の差はΔEvp=0.05eVとする。n型クラッド層は図2と同様である。
【0055】
ΔEcn=0.12eV、 ΔEcp=0.16eV
ΔEvn=0.09eV、 ΔEvp=0.05eV
【0056】
これは活性層とのバンドギャップの差はいずれも0.21eVであるが、その配分が異なっており、伝導帯に対し本発明の要求するEcp>Ecnという条件を満足する。それは電子のp型クラッド層へのオーバーフローを抑止する条件である。この例は価電子帯に対しても付加条件Evp>Evnを満足するから正孔のオーバーフローを防ぐ作用を合わせもつ。
【0057】
図4において電子はn型クラッド層の方からイロハニというように注入されて活性層にいたる。やがて電子の一部はホヘのZnCdSeの谷間に落ち込む。先述のように、ここでは単一量子井戸(ZnCdSe/ZnSe)を示すが多重量子井戸でも同様である。正孔はp型クラッド層の方からノオヨタというように注入されて活性層に到り、レソのZnCdSeの谷間に入る。それらの狭いZnCdSe領域に局在した電子正孔対が結合して光を発生する。それは正常な発光作用である。電子はイロからハチへと落ちるので運動エネルギーが過剰となっている。
【0058】
図2の場合はイロとリヌの高さが同じであるからオーバーフローする可能性があった。しかし図4の場合はn型クラッド層のイロ(Ecn)よりも、p型クラッド層のムウ(Ecp)の方が高いので電子はムチの壁を乗り越えることができない。Ecp>Ecnという条件が成り立つからである。電子の熱運動エネルギーは25meV程度でありわずかなものである。これを加えたとしても、ΔEcp(ム)=160meV、ΔEcn(ロ)=120meVであるから、イロ(n型クラッド層)から活性層へ落ちた電子が高い壁ムチ(p型クラッド層)を乗り越えることはできない。つまりp型クラッド層への電子オーバーフローを有効に抑制できる。
【0059】
図4ではバンドギャップが同じn型クラッド層、p型クラッド層(Egp=Egn)を示すが、それは必須の条件ではない。電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防ぐことが目的なので、Ecp>Ecnであればよい。熱運動25meVを考慮すると、EcpがEcn+25meVと同じかそれ以上であればさらに良い。
【0060】
そのような条件が満足されていれば、電子のp型クラッド層へのオーバーフローがない。もしもオーバーフローがあれば電子によってp型クラッド層の窒素アクセプタが破壊されて正孔が減少し電子が増えて抵抗率が上がり(p型クラッド層の電子は注入に寄与しない)、駆動電圧が上がり電流が減少し寿命が短くなる。本発明はそれを防ぐことができ、発光効率が向上し寿命は増進される。
【0061】
【実施例】
[比較例(n−、p−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85;図5)]
同一組成のn型クラッド層、p型クラッド層を持つ従来例について初めに述べる。これを基準として性能を比較するためである。図5にn型クラッド層・活性層・p型クラッド層のバンド構造の概略を示す。活性層はこれまで説明してきたものと同様にZnCdSe/ZnSe量子井戸である。n型クラッド層もp型クラッド層も同じ組成であり、Mgが0.2、Seが0.15だけ含まれる4元混晶Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85である。これはZnSeとの格子整合条件を満たしており、図1の破線ケフの上にある組成である。そのバンドギャップはEg=2.88eVである。
【0062】
比較を簡単にするため以下の実施例においてn型クラッド層は全てEg=2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85とする。p型クラッド層の組成をEcp>Ecnとなるように変化させる。
【0063】
[実施例1(p−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85;Eg=2.93eV;図6、7)]
p型クラッド層をMg成分を0.1だけ増やしたZn0.70Mg0.30S0.15Se0.85とした。そのバンドギャップはEg=2.93eVである。図6にn型クラッド層・活性層・p型クラッド層のバンド図を示す。図7にそれをp型クラッド層として有するZnSe系LEDの構造を示す。n−ZnSe基板の上に、n−ZnSeバッファ層を形成し、その上にn−ZnMgSSeクラッド層を、さらに、その上にZnCdSe/ZnSeの多重量子井戸活性層を設ける。その上のp型クラッド層がp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85である。さらにその上にp−ZnSeコンタクト層、p−(ZnTe/ZnSe)超格子、p−ZnTeコンタクト層を形成し最上層に薄い金層を被覆し、さらにp電極を形成している。
上から順に層構造を述べる。
【0064】
p電極 Au/Pt/Pd(リング、ドット状)
Au層 10nm〜20nmのAu層
p−ZnTeコンタクト層 10原子層
p−(ZnTe/ZnSe)超格子
p−ZnSeコンタクト層 200nm
p−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85 500nm Eg=2.93eV
ZnCdSe/ZnSe超格子活性層 8nmZnSe4層、2nmZnCdSe3層合計7層 38nm
n−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85 500nm Eg=2.88eV
n−ZnSeバッファ層 1000nm Eg=2.7eV
n−ZnSe基板 Eg=2.7eV
n電極 In(全面に)
【0065】
実施例1は価電子帯は、n型クラッド層とほぼ同じであり、Mgが増えている分だけ伝導帯が余分に上がる。n型クラッド層(Eg=2.88eV)とp型クラッド層(Eg=2.93eV)のバンドギャップの差は0.05eVであるが、それの殆どが伝導帯の増加分になる。つまり図6において、n型クラッド層伝導帯イロに比べ、p型クラッド層の伝導帯は50meV高いということになる。それによって電子のオーバーフローを有効に防止できる。
【0066】
それによって光出力は図5の従来例に比較して1.2倍に増えた。
LEDの寿命は、図5の従来例に比較して1.8倍に増えた。
ただし、この実施例のp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85は格子整合条件を満足していない。図1の格子不整合線ケコのような線状にある。p型クラッド層の組成を同じ4元系とする場合は格子整合線ケフに沿ってMgとSの両方を増やすとバンドギャップの増加が価電子帯の下がりに喰われてしまって伝導帯の上がりが不十分になる可能性がある。ケコのようなMgよりの不整合を選ぶと伝導帯を持ち上げることができる。
【0067】
[実施例2(p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se;Eg=2.90eV;図8、9)]
ZnMgSSe4元をやめて、p型クラッド層をBe系のものにした。Be系のものは2族元素が3種類入っており(Mg、Zn、Be)Znの代わりにMgを増やしてもBeを増やしてもバンドギャップは増え、それがほぼ全部伝導帯の増加になる。硫黄Sがないので硫黄による価電子帯の下がりがなくなり、価電子帯が持ち上がる。するとバンドギャップと価電子帯の持ち上がり分の合計が、伝導帯の上昇分となり、より有利な構造である。
【0068】
但し図3に示すようにBeを含ませるとバンドギャップが大きく変化し格子定数も大きく減少するから、あまりBeをたくさん含ませる訳にゆかない。それでこの実施例ではBeが0.06となっている。Beがあると格子定数が減るのでMgを加え、その分を補償する必要がある。この組成はバンドギャップはEg=2.90eVである。n型クラッド層の2.88eVに比べて20meVしか高くない。しかし価電子帯が持ち上がるので、伝導帯の上昇分は50meV程度にはなる。
【0069】
p型クラッド層における正孔密度はp=7×1016cm−3である。図5の従来例(p=6×1016cm−3)に比べてあまり高いわけではない。しかし、これによっても光出力は1.2倍に、寿命は1.8倍に増える。
【0070】
[実施例3(p−BeTe/Be0.10Zn0.72Mg0.18Se;Eg=3.10eV;図10、11)]
これもZnMgSSe4元をやめて、p型クラッド層をBe系のものにした。Be系のものは2族元素が3種類入っており(Mg、Zn、Be)Znの代わりにMgを増やしてもBeを増やしてもバンドギャップは増え、それがほぼ全部伝導帯の増加になる。硫黄Sがないので硫黄による価電子帯の下がりがなくなり、価電子帯が持ち上がる。バンドギャップと価電子帯の持ち上がり分の合計が、伝導帯の上昇分となり、より有利な構造である。しかし大量にBeを入れると格子整合条件を満たすのが難しくなる。
【0071】
伝導帯を上げバンドギャップを増やすにはBeもMgも増やすのが有効である。そこでBeを0.1にMgを0.18に上げて混晶を作製した。これはノンドープであるが、薄いp−BeTe層を挟む超格子構造とした。BeTeはバンドギャップが狭いから、活性層と隣接させると、Ecp>Ecnという条件を満足できない。そこでノンドープのBe0.10Zn0.72Mg0.18Seを活性層に隣接させて形成する。それはEcp>Ecnを満足するがp型キャリヤ正孔の数が不足する。それで正孔を供給するためにp−BeTeを間に挟む。BeTeに窒素をドープしたときの活性化率は高いから正孔が大量に供給され、それがノンドープのBe0.10Zn0.72Mg0.18Seにも広がって伝導率を上げる。p=3×1017cm−3というのは平均の濃度である。
これによっても光出力は1.2倍に、寿命は1.8倍に増える。
【0072】
【発明の効果】
本発明は、n型クラッド層とp型クラッド層の組成が同一でない非対称クラッド構造のZnSe系発光素子を提案する。n型クラッド層とp型クラッド層が同一の層構造であるとn型クラッド層から活性層へ注入された電子の一部が活性層・p型クラッド層の間の伝導帯障壁を飛び越えてp型クラッド層へとオーバーフローする。それがp型クラッド層のアクセプタを減少させ特性を劣化させていたのである。本発明はp型クラッド層の伝導帯をn型クラッド層伝導帯より高くする(Ecp>Ecn)のでn型クラッド層から活性層へ注入された電子がp型クラッド層へオーバーフローしない。そのためにp型クラッド層のアクセプタは安定な状態を維持し、いつまでも劣化せず長寿命の発光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ZnSe、MgS、MgSe、ZnSを4頂点とするひし形に含まれるZnMgSSe四元系の格子定数(Å)、バンドギャップEgの関係を示すグラフ。
【図2】同じ組成をもつn型クラッド層とp型クラッド層をもつ従来例にかかるZnSe系LEDにおけるクラッド層、活性層の部分の直流バイアスを印加した状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯の差ΔEcpが小さいので電子がp型クラッド層へオーバーフローする可能性があることを示す。
【図3】BeSe、MgSe、ZnSeを3頂点とする三角形に含まれるBeZnMgSe四元系の格子定数(Å)、バンドギャップEgの関係を示すグラフ。
【図4】異なる組成をもつn型クラッド層とp型クラッド層を設けp型クラッド層の伝導帯がn型クラッド層の伝導帯より高くなるようにして、電子のp型クラッド層へのオーバーフローを防止するようにした本発明の原理を説明するための本発明にかかるZnSe系LEDにおけるクラッド層、活性層の部分の直流バイアスを印加した状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯の差ΔEcpが大きいので電子がp型クラッド層へオーバーフローする可能性がない。
【図5】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ組成のp−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を採用した従来例のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図を示す。p型クラッド層もn型クラッド層も同じ伝導帯の高さになり電子オーバーフローが起こる。正孔密度はp=6×1016cm−3である。
【図6】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ4元であるが混晶比の違うp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85を採用した本発明の実施例1のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。
【図7】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層として同じ4元であるが混晶比の違うp−Zn0.70Mg0.30S0.15Se0.85を採用した本発明の実施例1のLEDの層構造図。
【図8】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se(Eg=2.90eV)を採用した本発明の実施例2のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。光出力は図5の従来例の1.2倍、寿命は1.8倍である。
【図9】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶p−Be0.06Zn0.86Mg0.08Se(Eg=2.90eV)を採用した本発明の実施例2のLEDにおける層構造図。
【図10】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶ノンドープBe0.10Zn0.72Mg0.18Se(Eg=3.10eV)と薄いp−BeTeの超格子層を採用した本発明の実施例3のLEDにおける直流電源による順方向バイアスが掛かった状態でのバンド図。p型クラッド層の伝導帯が高くて電子オーバーフローが起こらない。p型クラッド層での正孔の濃度はp=3×1017cm−3である。光出力は図5の従来例の1.2倍、寿命は1.8倍である。
【図11】n型クラッド層としてバンドギャップが2.88eVのn−Zn0.80Mg0.20S0.15Se0.85を、p型クラッド層としてBe系4元混晶ノンドープBe0.10Zn0.72Mg0.18Se(Eg=3.10eV)と薄いp−BeTeの超格子層を採用した本発明の実施例3のLEDにおける層構造図。
Claims (4)
- n型ZnSe基板と、n型ZnSe基板の上に直接にあるいはn−ZnSeバッファ層を介して設けられたn−ZnMgSSeクラッド層と、n−ZnMgSSeクラッド層の上に設けられたZnCdSe/ZnSe超格子活性層と、ZnCdSe/ZnSe超格子活性層の上に設けられたp−BeMgZnSeまたはp−ZnMgSSeクラッド層と、p−クラッド層の上に設けられたp−BeTe/ZnSeまたはp−ZnSe/ZnTe超格子コンタクト層と、p−超格子コンタクト層の上に設けられたp電極とよりなり、n−ZnMgSSeクラッド層の伝導帯エネルギーEcnよりp−クラッド層の伝導帯エネルギーEcpが高い(Ecp>Ecn)ことを特徴とするZnSe系発光素子。
- n型ZnSe基板と、n型ZnSe基板の上に直接にあるいはn−ZnSeバッファ層を介して設けられたn−ZnMgSSeクラッド層と、n−ZnMgSSeクラッド層の上に設けられたZnCdSe/ZnSe超格子活性層と、ZnCdSe/ZnSe超格子活性層の上に設けられたp−BeMgZnSeまたはp−ZnMgSSeクラッド層と、p−クラッド層の上に設けられたp−BeTe/ZnSeまたはp−ZnSe/ZnTe超格子コンタクト層と、p−超格子コンタクト層の上に設けられたp電極とよりなり、n−ZnMgSSeクラッド層の伝導帯エネルギーEcnよりp−クラッド層の伝導帯エネルギーEcpが25meV以上高い(Ecp≧Ecn+25meV)ことを特徴とするZnSe系発光素子。
- p−クラッド層とp−超格子コンタクト層の間にp−ZnSeコンタクト層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のZnSe系発光素子。
- p−超格子コンタクト層とp電極の間にp−BeTeまたはp−ZnTeコンタクト層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のZnSe系発光素子。
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US7668217B2 (en) | 2006-08-25 | 2010-02-23 | Hitachi, Ltd. | Semiconductor laser diode device |
-
2002
- 2002-09-02 JP JP2002256265A patent/JP2004095922A/ja active Pending
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