JP2004095541A - Elデバイス、elディスプレイ、el照明装置およびこれを用いた液晶装置、並びに電子機器 - Google Patents
Elデバイス、elディスプレイ、el照明装置およびこれを用いた液晶装置、並びに電子機器 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】発光層で発光した光のうち臨界角未満で光透過性基板に入射した光は低散乱で外部に放出でき、しかも臨界角以上で光透過性基板に入射した光を外部に放出でき、正面方向の輝度を向上できるELディスプレイの提供。
【解決手段】複数のEL素子10が光透過性基板1の一方の面上にマトリクス状に配置され、一対の電極2、5のうち少なくとも基板1側に位置する方の電極2は光透過性電極から形成され、EL素子10の周囲に隔壁8が設けられ、EL素子10に対して個別通電可能とされており、EL素子10に通電時に発光層4で発光した光が基板1側に放出されるELディスプレイであって、基板1の他方の面上に光学手段20が設けられ、光学手段20は基板1内に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光L1を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光L3を弱散乱および/または透過して外部に出射するもの。
【選択図】 図2
【解決手段】複数のEL素子10が光透過性基板1の一方の面上にマトリクス状に配置され、一対の電極2、5のうち少なくとも基板1側に位置する方の電極2は光透過性電極から形成され、EL素子10の周囲に隔壁8が設けられ、EL素子10に対して個別通電可能とされており、EL素子10に通電時に発光層4で発光した光が基板1側に放出されるELディスプレイであって、基板1の他方の面上に光学手段20が設けられ、光学手段20は基板1内に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光L1を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光L3を弱散乱および/または透過して外部に出射するもの。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL素子(エレクトロルミネッセンス素子)を備えたELデバイスに係わり、特に、正面方向の輝度を向上させたELデバイス、ELディスプレイ、EL照明装置およびこれを用いた液晶装置、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL素子を用いたELデバイスの一種にELディスプレイが知られている。
【0003】
以下に従来のELディスプレイの構成例の概要を図面を参照して説明する。
【0004】
図18は、従来のELディスプレイの例を示す模式断面図である。
【0005】
従来のELディスプレイは、透明基板801と、この透明基板801の一方の面上に設けられたEL素子812から概略構成されている。
【0006】
EL素子812は、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOと略記する。)などからなり、陽極として機能する透明電極813と、透明電極813から正孔を注入しやすくする正孔輸送層814と、EL材料からなる発光層815と、陰極として機能する金属電極816が透明基板801側から順に積層され、発光層815を介して透明電極813と金属電極816とが互いに対向するように配置されている。このようなEL素子812が備えられたELディスプレイは、透明電極813および金属電極816に所定の電流を流すことにより、発光層815で光を発光させ、発光層815からの光が透明電極813および透明基板801を透過して、透明基板801側からEL素子812の外部に向かって放出されるようになっている。
【0007】
ところが発光層815で発光した光のうち広角(臨界角以上)で透明基板801に出射された光は、透明基板801内で全反射を繰り返し、透明基板801の外部に放出されない。即ち、透明基板801に入射した光が広角(臨界角以上)である場合は、表示として利用されないため、輝度が低いものであった。
【0008】
なお、屈折率n1の媒質からθ1の角度で入射した光がθ2の屈折角度で屈折率n2の媒質へ進むときに、θ1、θ2、n1、n2の間に次の関係(スネルの法則)
n1sinθ1=n2sinθ2
が成立している。
【0009】
透明基板801に入射した光の臨界角を求めるには、透明基板801としては通常、ガラス基板や、アクリル樹脂等の透明樹脂が用いられているためn1=1.49〜1.6であり、空気の屈折率が1であるからn2=1であり、入射光が臨界角のときの透過光が透明基板801の表面と平行になるときの透明基板801の法線方向Hからの角度θ2が90°であることからことからθ1 は約40°であり、よって透明基板801に入射した光の臨界角は約40°程度である。
【0010】
そこで、従来のELディスプレイにおいては、透明基板801に入射した光が臨界角以上である場合でも透明基板801の外部に取り出せるようにするために、図18に示したように透明基板801のEL素子812が設けられた側の面とは反対側の面上に、例えば厚さ50〜200μmのトリアリルシアネートなどからなる基材に金属酸化物粒子をフィラーとして分散させた等方的な散乱特性を有す散乱層820を形成することで、透明基板801に入射した光(発光層815で発光した光が透明基板801に出射された光)が臨界角以上である場合も透明基板801の外部に取り出せるようにしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような散乱層820が設けられた従来のELディスプレイにおいては、図18に示すように透明基板801に入射した臨界角以上の入射光L10を等方的に散乱(透過光L11が等方的に散乱)させて、透明基板801の外部に取り出すことが可能であるが、透明基板801に入射した臨界角未満の入射光L12に対しても等方的な散乱(透過光L13が等方的に散乱)が生じるために、広視角で見たときの輝度は明るいものの、正面方向(法線方向およびその近傍方向)から見たときの輝度が低く、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0012】
また、透明基板801に入射した光が臨界角以上である場合でも透明基板801の外部に取り出せるようにする他の手段としては、透明基板801の表面を粗くして凹凸を設ける方法があるが、この場合も散乱層820を設けた場合と同様に正面方向から見たときの輝度が低く、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、発光層で発光した光のうち狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光は低散乱で外部に放出でき、しかも広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光を外部に放出でき、正面方向(法線方向およびその近傍方向)の輝度を向上できるELデバイスの提供を目的とする。
【0014】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたELデバイスをELディスプレイとして用い、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができるELディスプレイの提供を他の目的とする。
【0015】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたELデバイスをEL照明装置として用いることを他の目的とする。
【0016】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたEL照明装置を備えた液晶装置の提供を他の目的とする。
【0017】
また、本発明は正面方向の輝度を向上させたELディスプレイ又はEL照明装置を用いた液晶装置を表示手段として備えた電子機器を提供することを他の目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のELデバイスは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなる複数のEL素子が光透過性基板の一方の面上にマトリクス状に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、上記EL素子に対して個別通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする。
【0019】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0020】
すなわち、本発明のELデバイスでは、広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光の少なくとも一部に対しては散乱および/または回折し、狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光に対しては影響を与えないあるいは弱影響とすることができる光学手段をEL素子の支持基板としての光透光性基板の表面に設けることによって、全反射条件を回避するとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については散乱しないようにして、発光層で発光した光を外部に効率良く取り出(放出)しており、これによって正面方向の輝度を向上できる。
【0021】
また、上記課題を解決するために本発明のELデバイスは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなるEL素子が光透過性基板の一方の面上に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、上記EL素子に対して通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする。
【0022】
このような構成のELデバイスにおいても、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0023】
また、上記いずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0024】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱して外部に出射させることができ、しかも臨界角未満の入射光は弱散乱または透過(無散乱)して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光についてはできるだけ散乱が生じないか、あるいは透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0025】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は透過して外部に出射するものであってもよい。
【0026】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光は透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0027】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱および回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0028】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱および回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光についてはできるだけ散乱が生じないか、および/または透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0029】
また、上記いずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0030】
上記光透過性基板に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光透過性基板の法線方向からの傾き角β1の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m1 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β1 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β1≧sin−1(1/m1) と計算できる。従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0031】
上記光学手段は、これに入射した光が強散乱および/または回折を示すときと弱散乱および/または透過を示すときの過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、上記光透過性基板に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段を最適化することが好ましい。
【0032】
従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)−10°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0033】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0034】
光透過性基板に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光透過性基板の法線方向からの傾き角β1の具体的な値(概算値)を求めるには、上記光透過性基板としては、ガラス基板や、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いることができ、これらの屈折率は1.49〜1.6(n1 =1.49〜1.6)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光透過性基板に入射した光の臨界角β1は約40°程度である。
【0035】
従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0036】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。上記光学手段がこのような条件を満たすものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0037】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0038】
上記光学手段に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光学手段の法線方向からの傾き角β2の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m2 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β2 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β2≧sin−1(1/m2) と計算できる。従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)の少なくとも一部を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光学手段に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。上記発光層から上記光透過性基板を経て上記光学手段に入射した入射光が上記光学手段によって強散乱および/または回折を示すときと弱散乱を示すときの角度の過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、上記光透過性基板を経て上記光学手段に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段を最適化することが好ましい。
【0039】
従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)−10°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0040】
また、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β2=0°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0041】
上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光学手段の法線方向からの傾き角β2の具体的な値(概算値)を求めるには、上記光学手段としては、該光学手段中の平均屈折率は約1.57(n1 =1.57程度)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光学手段の表面と平行になるときの光学手段の法線方向からの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光学手段に入射した光の臨界角β2は約40°程度である。
【0042】
従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β2=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0043】
また、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。上記光学手段がこのような条件を満たすものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0044】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光透過性基板の屈折率m1 と光学手段の屈折率m2 は同じ大きさかあるいは略等しい大きさであってもよい。
【0045】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光透過性基板の屈折率m1と光学手段の屈折率m2 は、m1≦m2なる関係を満たすことが上記光透過性基板内に入射した発光層からの光が全反射することがなく、発光層で発光した光を外部に効率良く取り出す(出射する)ことができる点で好ましい。
【0046】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射し、臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射するものであってもよい。上記光学手段が、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射できるものであれば、上記臨界角以上の入射光は上記光学手段により散乱等が生じて外部に出射することができる。また、上記光学手段が、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射できるものであれば、上記臨界角未満の入射光は上記光学手段により透過(無散乱)あるいは殆ど散乱が生じることなく略直進して外部に出射することができる。
【0047】
従って、このような光学手段が設けられたELデバイスによれば、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0048】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、複数枚の光学フィルムを積層して形成されたものであってもよい。
【0049】
上記複数枚の光学フィルムは平行線透過率が指向性を示す軸をずらして積層されたものであってもよい。
【0050】
上記光学フィルムは、ホログラムであってもよい。
【0051】
また、上記課題を解決するために本発明のELディスプレイは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなる複数のEL素子が光透過性基板の一方の面上にマトリクス状に配置され、上記EL素子に対して個別通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射するものであるELデバイスをELディスプレイとして用い、上記光学手段が上記のいずれかの構成のものであることを特徴とする。
【0052】
このようなELディスプレイによれば、正面方向の輝度を向上させた本発明のELデバイスをELディスプレイとして用いたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、表示品質を向上させることができる。また、このようなELディスプレイは、照明装置を別個に設けなくても済むので、照明装置を必要とする液晶ディスプレイに比べて、厚みを薄くできる。また、このELディスプレイの光学手段側に出てくる光は発光層で発光されたものであるので、この発光体による表示は液晶ディスプレイの表示に比べて視野角が広い。さらに、このELディスプレイは、液晶ディスプレイに比べて応答速度が速いとい利点がある。
【0053】
上記構成の本発明のELディスプレイにおいては、上記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子とを用いたものであってもよい。
【0054】
このようなELディスプレイとすることにより、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、フルカラーのELディスプレイを提供できる。
【0055】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELディスプレイにおいては、上記光学手段の上記光透過性基板側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)と、偏光板が上記光学手段側から順に設けられていてもよい。
【0056】
上記のような位相差板と、偏光板が設けられていないと、上記対向する電極と光透過性電極のうち前者の電極がアルミニウム等の反射性を有する材料から形成されている場合、周囲光が強い(明るい)と、前記電極が周囲光を反射してしまい、黒表示を視認できない。本発明のELディスプレイでは、上記のような位相差板と、偏光板を設けることで、周囲光が強い(明るい)場合に周囲光は1回目に位相差板を通るときに円偏光し、さらにこの光は前記電極で反射して逆向の円偏光で出てくるがこの逆向きの円偏光は偏向板は通さないため、黒表示を視認できる。
【0057】
また、上記の課題を解決するために本発明のEL照明装置は、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなるEL素子が光透過性基板の一方の面上に配置され、上記EL素子に対して通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射するものであるELデバイスをEL照明装置として用い、上記光学手段が上記のいずれかの構成のものであることを特徴とする。
【0058】
このようなEL照明装置によれば、本発明のELデバイスをEL照明装置として用いたものであるので、正面方向の輝度を向上したものが得られる。
【0059】
上記構成の本発明のEL照明装置においては、上記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子と、白色発光するEL素子のいずれか一つ以上が用いられていてもよい。
【0060】
このようなEL照明装置によれば、用いるEL素子によって、あるいは、用いるEL素子の組み合わせにより、赤色あるいは緑色あるいは緑色あるいは白色あるいはその他の色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0061】
また、上記構成の本発明のEL照明装置においては、上記EL素子として青色発光するEL素子が用いられ、上記EL素子と上記光透過性基板の間又は上記光透過性基板と上記光学手段の間又は上記光学手段の表面に、上記発光層で青色発光した光を波長変換する手段が設けられたものであってもよい。
【0062】
このようなEL照明装置によれば、白色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0063】
また、上記の課題を解決するために本発明の液晶装置は、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層とを具備した液晶パネルと、該液晶パネルの一方の基板の液晶層とは反対側に設けられた上記構成の本発明のEL照明装置とが備えられてなることを特徴とする。上記液晶パネルは、一方の基板の液晶層側に半透過反射層が設けられているものであってもよい。
【0064】
このような液晶装置によれば、正面方向の輝度を向上した本発明のEL照明装置が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0065】
また、上記の課題を解決するために本発明の電子機器は、上記構成の本発明のELディスプレイ又は上記構成のEL照明装置を備えた本発明の液晶装置を表示手段として備えたことを特徴とする。
【0066】
このような電子機器は、明るい表示が得られ、表示品質を向上した本発明のELディスプレイまたは本発明のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられたことにより、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ELディスプレイの実施形態)
図1は、本発明のELデバイスをELディスプレイに適用した一実施形態例を示した図であり、基板側から見た平面図である。図2は、図1に示したELディスプレイの一部を示した概略断面図であり、図1のA−A’断面図である。図3は、図1に示したELディスプレイの要部を示した図であり、このELディスプレイに備えられた複数のEL素子のうちの1個のEL素子およびこれの周辺部分を示した模式拡大断面図である。
【0068】
図1及び図2において、符号1は、ガラスなどからなる光透過性基板を示している。光透過性基板1の一方の面上には、対向する一対の電極2、5の間に発光層4が介在され、赤、緑、青のうちいずれかの色を発光する複数のEL素子10がマトリクス状に配置され、互いに交差するように格子状に設けられた電極2および金属電極5によって個別に通電できるようになっている。一対の電極2、5のうち光透過性基板1側に位置する方の電極2は光透過性電極である。
【0069】
また、複数のEL素子10のそれぞれの周囲には、樹脂ブラックレジストなどからなり、隣り合うEL素子10間を隔てる隔壁8が設けられている。図1および図2に示すELディスプレイにおいては、複数のEL素子10のうち符号11で示で示すEL素子は発光層4Rが赤色発光するもの、符号12で示すEL素子は発光層4Gが緑色発光するもの、符号13で示すEL素子は発光層4Bが青色発光するものとなっている。
【0070】
また、光透過性基板1の他方の面(複数のEL素子10が設けられた側と反対側の面)上に光学手段20が設けられている。この光学手段20は光透過性基板1内に入射した各発光層からの光のうち全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものである。光学手段20の構成および作用については後で詳細に説明する。
また、図2に示すように光学手段20の光透過性基板1側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)41と、偏光板42が光学手段20側から順に設けられている。なお、図1では位相差板(λ/4板)41と、偏光板42は図示を略した。
【0071】
緑色発光するEL素子12は、図2に示すように、光透過性基板1上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOと略記する。)膜からなる光透過性電極2Gと、光透過性電極2Gから正孔を注入しやすくする正孔輸送層3と、EL材料からなる発光層4Gと、金属電極5とが順に積層されたものであり、発光層4Gを介して光透過性電極2Gと金属電極5とが互いに対向するようになっている。
【0072】
図2に示すEL素子12においては、光透過性電極2Gが陽極として機能し、金属電極5が陰極として機能するように構成されている。そして、光透過性電極2Gおよび金属電極5に所定の電流を流すことにより、発光層4Gに緑色光を発光させ、発光層4Gからの緑色光が光透過性電極2Gを透過して光透過性基板1に入射する。
【0073】
そして光透過性基板1に入射した発光層からの光は光学手段20に至り、光透過性基板1に入射したときの入射角度に応じて光学手段20の作用を受けて位相差板41側に出射され、さらに位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。ここでの光学手段20の作用については後で詳細に説明する。
【0074】
また、図2に示すEL素子12では、光透過性電極2Gの膜厚は、150±20nmとされている。
【0075】
正孔輸送層3としては、例えば、4、4’ービス(mートリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4、4’ービス[Nー(1ナフチル)ーNーフェニルアミノ]ビフェニル(αーNPD)、4、4’、4’’ートリス[Nー(3ーメチルフェニル)ーNーフェニルアミノ]トリフェニルアミン(mーMTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェンなど、従来の正孔輸送層に使用されている材料を使用したものなどが挙げられる。また、正孔輸送層3に使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0076】
発光層4Gとしては、従来の発光層に使用されている緑色発光が得られる有機のEl材料(エレクトロルミネッセンス材料)からなるものとすることができ、好ましくは、キナクリドンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Gに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0077】
金属電極5としては、例えば、アルミニウム、銀、銀合金、マグネシウムなど、従来の金属電極に使用されている材料を使用したものなどが挙げられる。
【0078】
また、赤色発光するEL素子11および青色発光するEL素子13は、図2に示す緑色発光するEL素子12と、光透過性電極2の膜厚と発光層4に使用されている材料とが、異なるものである。
【0079】
赤色発光するEL素子11では、光透過性電極2Rの膜厚は、180±20nmとされている。
【0080】
また、発光層4Rとしては、従来の発光層に使用されている赤色発光が得られる有機のEl材料からなるものとすることができ、好ましくは、ローダミンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Rに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0081】
また、青色発光するEL素子13では、光透過性電極2Bの膜厚は、120±20nmとされている。
【0082】
また、発光層4Bとしては、従来の発光層に使用されている青色発光が得られる有機のEl材料からなるものとすることができ、好ましくは、ジスチリルビフェニルおよびその誘導体、クマリンおよびその誘導体、テトラフェニルブタジエンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Bに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0083】
次に、本実施形態のELディスプレイに備えられた光学手段20の構成および作用について詳細に説明する。
【0084】
この光学手段20は、図2及び図3に示すように光透過性基板1内に入射した発光層4(発光層4R、4G、4B)からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光L1を散乱および/または回折して外部(本実施形態の場合、位相差板41側)に出射し、他の光L3を弱散乱および/または透過して外部(本実施形態の場合、位相差板41側)に出射するものである。
【0085】
このELディスプレイでは一対の電極2、5に通電されると、発光層4で発光した光は光透過性基板11側に放出されて、この光透過性基板11に入射するが、この基板11に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板11に入射した光)は光学手段20に至り、この光学手段20で散乱および/または回折されて位相差板41側に出射され、さらにこれら散乱光および/または回折された光L2は位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。
【0086】
一方、光透過性基板11に入射した発光層4からの光のうち他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板11に入射した光)も光学手段20に至り、この光学手段20で弱散乱および/または透過して位相差板41側に出射され、さらにこれら弱散乱光および/または透過光L4は位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。
【0087】
このような光学手段20の具体例としては、光透過性基板1内に入射した各発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光のうち少なくとも一部の入射光L1は強散乱して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は弱散乱または透過して外部に出射するものであってもよい。図4はある点光源Oから放出された光に対して光学手段20の作用を模式的に示す図であり、図4中の符号20bで示される円内の領域(円周上は含まない)は光透過性基板1に入射した入射光が臨界角未満の領域、符号20aで示される円外の領域(円周上を含む)は光透過性基板1内に入射した入射光が臨界角以上を示す領域である。図4に示すように光学手段20は、点光源Oから放出された光のうち臨界角以上を示す領域20aを通って入射する光は強散乱して点光源Oと反対側に出射させる作用があり、点光源Oから放出された光のうち臨界角未満を示す領域20bを通って入射する光は弱散乱または透過して点光源Oと反対側に出射させる作用がある。
【0088】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光L1は強散乱して外部に出射させることができ、しかも臨界角未満の入射光L3は弱散乱または透過(無散乱)して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3についてはできるだけ散乱が生じないか、あるいは透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0089】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は透過して外部に出射するものであってもよい。
【0090】
図5はある点光源Oから放出された光に対して光学手段20の作用を模式的に示す図であり、図5中の符号20bで示される円内の領域(円周上は含まない)は光透過性基板1に入射した入射光が臨界角未満の領域、符号20aで示される円外の領域(円周上を含む)は光透過性基板1内に入射した入射光が臨界角以上を示す領域である。図5に示すように光学手段20は、点光源Oから放出された光のうち臨界角以上を示す領域20aを通って入射する光は回折して点光源Oと反対側に出射させる作用があり、点光源Oから放出された光のうち臨界角未満を示す領域20bを通って入射する光はそのまま透過して点光源Oと反対側に出射させる作用がある。
【0091】
従って、この光学手段20では、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光L3は透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3については透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0092】
また、この光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は強散乱および回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよく、この光学手段20は、上述の図4及び図5を用いて説明した両方の作用を有するものである。
【0093】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は強散乱および回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光L3は弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3についてはできるだけ散乱が生じないか、および/または透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0094】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件(式中、β1は光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m1は光透過性基板1の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0095】
光透過性基板1に入射した光が臨界角以上を示すときの光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角β1の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m1 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β1 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、β1≧sin−1(1/m1) と計算できる。
【0096】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光のうち少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光の少なくとも一部の光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0097】
ところが、光学手段20は、これに入射した光が強散乱および/または回折を示すときと弱散乱および/または透過を示すときの過渡状態は図11に示すように約10°から20°程度の範囲があるため、光透過性基板1に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段20を最適化することが好ましい。図11中、横軸は光学手段20の回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。
【0098】
ここでの平行線透過率は、図7に示すようにして測定したものである。ここでの測定の際には、光学手段20の右側から光学手段20の中央部の原点O1に向けて、光源(発光層からの光)Kからの入射光を入射し、そして、光学手段20の原点O1を通過させて光学手段20を透過して直進する透過光を光センサ等の受光部Jにて受光する測定系を用いた。測定の際には光学手段20を回転(傾斜)させて各回転角度(傾斜角度)において光源Kからの入射光を光学手段20に入射させ、光学手段20の原点O1を透過して直進する透過光を受光部Jにて受光して測定したものである。図7中の0°の位置は、光源Kに対して光学手段20を水平(平行)に配置した位置であり、0°の位置から右回りの角度を+、左回りの角度を−とした。
【0099】
そして光学手段20の一面側(図7及び図8では左側)に設置された光源Kから発せられた入射光Lが光学手段20を透過してこの光学手段20の他面側(図7及び図8では右側)に抜ける場合、光学手段20の一面側(左側)において散乱する光を後方散乱光LRと称し、光学手段20を透過する光を前方散乱光と称することとする。そして、光学手段20を透過した前方散乱光に関し、入射光Lの進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)L5の光強度について、入射光Lの光強度に対する割合を平行線透過率Tと定義し、更に、±2゜を越えて周囲側に斜めに拡散する前方散乱光(拡散透過光)LTの光強度について、入射光Lの光強度に対する割合を拡散透過率と定義し、透過光全体の入射光に対する割合を全光線透過率と定義した。以上の定義から、全光線透過率から拡散透過率を差し引いたものが平行線透過率Tであると定義することができる。
【0100】
よって図7において平行線透過率Tが低い値を示す角度は散乱光が多く(強散乱)、平行線透過率Tが高い値を示す角度は散乱が少なく(弱散乱)および/または透過光(平行線透過光)が多いことを示し、散乱光が多い(強散乱)状態から散乱が少なく(弱散乱)および/または透過光(平行線透過光)が多い状態示すときの過渡状態が10°から20°程度ある。
従って、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)−10°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板1の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。また、光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は光透過性基板1の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0101】
光透過性基板1に入射した光が臨界角以上を示すときの光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角β1の具体的な値(概算値)を求めるには、光透過性基板1としては、ガラス基板(屈折率約1.54)や、アクリル樹脂(屈折率約1.49)等の透明樹脂を用いることができ、これらの屈折率は1.49〜1.6(n1 =1.49〜1.6)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光透過性基板1に入射した光の臨界角β1は約40°程度である。なお、光透過性基板1としてガラス基板(屈折率約1.54)を用いた場合に臨界角β1 は、40.5°である。
【0102】
従って、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光のうち少なくとも一部の光)を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光L3を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0103】
また、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板1の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。光学手段20がこのような条件を満たすものであれば、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくととも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光)を強散乱および/または回折して外部に殆ど出射させることができ、臨界角未満の入射光L3を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0104】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0105】
この光学手段20に入射した光が臨界角以上を示すときの光学手段20の法線方向Hからの傾き角β2の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 から計算でき、n1=m2 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β2 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β2≧sin−1(1/m2) と計算できる。
【0106】
従って、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光学手段に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0107】
また、先に述べたように発光層4から光透過性基板1を経て上記光学手段20に入射した入射光が光学手段20によって強散乱および/または回折を示すときと弱散乱を示すときの角度の過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、光透過性基板1を経て光学手段20に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段20を最適化することが好ましい。
【0108】
従って、光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)−10°なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段20の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0109】
また、光学手段20の他の具体例としては、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段20の法線方向Hからの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β2=0°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0110】
発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光が臨界角以上を示すときの光学手段20の法線方向Hからの傾き角β2の具体的な値(概算値)を求めるには、光学手段20としては、光学手段20中の平均屈折率は約1.57(n1 =1.57程度)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光学手段20の表面と平行になるときの光学手段20の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光学手段20に入射した光の臨界角β2はは、39.6°であるから、約40°といえる。
【0111】
従って、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β2=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段20に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0112】
また、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。光学手段20がこのような条件を満たすものであれば、上記発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光学基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に殆ど出射させることができ、臨界角未満の入射光L3を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0113】
なお、本発明において散乱とは、光透過性基板または光学手段に広い角度(臨界角以上)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した前方散乱光のうち入射光の進行方向に対して±2゜を越えて周囲側に斜めに拡散する前方散乱光(拡散透過光)が生じる場合と入射光の進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)の両方または片方が含まれる。
【0114】
また、強散乱とはヘイズ値が50%以上示す場合であり、弱散乱とはヘイズ値が20%以下を示す場合である。
【0115】
また、回折とは、広い角度(臨界角以上)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した透過光のうち入射光の進行方向に対して出射光の進行方向が曲がるという現象のことである。
【0116】
また、透過とは、狭い角度(臨界角未満)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した前方散乱光のうち入射光の進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)のことをいう。
【0117】
上述のように光透過性基板1の屈折率m1 は、1.49〜1.6であり、光学手段20の屈折率m2 は約1.57(平均屈折率)であり、光透過性基板1の屈折率m1と光学手段20の屈折率m2は同じ大きさかあるいは略等しい大きさとなっている。
【0118】
光透過性基板1の屈折率m1と光学手段20の屈折率m2 は、好ましくはm1≦m2なる関係を満たすことが光透過性基板1内に入射した発光層4からの光が全反射することがなく、発光層4で発光した光を外部に効率良く取り出す(出射する)ことができる点で好ましい。
【0119】
また、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射し、臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射するものであってもよい。ここでのヘイズとは、光学の分野においてヘイズ(Haze)と称される透過率尺度であり、上述の図8を用いて説明した拡散透過率を全光線透過率で除算して%表示した値であり、上記平行線透過率とは全く異なる概念の定義である。ヘイズの値が大きいほど、上記の前方散乱光(拡散透過光)が強く(多く)、ヘイズの値が小さいほど、上記の平行線透過光が強く(多く)ということができる。
【0120】
光学手段20が、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射できるものであれば、上記臨界角以上の入射光は光学手段20により散乱等が生じて外部に出射することができる。また、光学手段20が、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射できるものであれば、上記臨界角未満の入射光は上記光学手段により透過(無散乱)あるいは殆ど散乱が生じることなく略直進して外部に出射することができる。従って、このような光学手段20が設けられていると、全ての入射方向で同じ散乱特性を示す従来のもの、言い換えれば、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0121】
本実施形態で用いられる光学手段20をさらに具体的に説明すると、この光学手段20は、例えば、図6の曲線▲1▼で示すような光学特性を示すものである。図6中、横軸は光学手段20の回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。このような光学特性を有する光学手段20は、複数枚の光学フィルムを積層することにより得ることが可能である。
【0122】
上記の各光学フィルムは、基本構造の面から見れば、特開2000−035506、特開2000−066026、特開2000−180607等に開示されている指向性を有する前方散乱フィルムを適宜用いることができる。例えば、特開2000−035506に開示されているように、相互に屈折率の異なる2種以上の光重合可能なモノマーまたはオリゴマーの混合物である樹脂シートに、紫外線を斜め方向から照射して特定の広い方向のみを効率良く散乱させる機能を持たせたもの、あるいは、特開2000−066026に開示されているオンラインホログラフィック拡散シートとして、ホログラム用感光材料にレーザを照射して部分的に屈折率の異なる領域を層構造となるように製造したものなどを適宜用いることができる。
【0123】
図9は、上記のようなホログラム技術により作製された光学フィルム21の断面構造例を示す模式図である。
【0124】
この光学フィルム21は、屈折率がn1の部分と屈折率がn2の部分が光学フィルム21の断面構造において所定の角度を有して斜め方向に層状に交互配置されてなる構造である。
【0125】
この構造の光学フィルム21に斜め方向から広角(臨界角以上)で入射光L1が入射されるとすると、屈折率の異なる各層の境界部分において散乱および/または回折され、これらの光は反対側(図面では下面側)に散乱光および/または回折された光L2として出射されるようになっている。また、この構造の光学フィルム21に斜め方向から狭い角度(臨界角未満)で入射光L3が入射されるとすると、屈折率の異なる各層の境界部分において弱散乱および/または透過され、これらの光は反対側(図面では下面側)に弱散乱光および/または透過光L4として出射されるようになっている。
【0126】
上記のようなホログラム技術により作製された光学フィルム21の光学特性は、例えば図6の曲線▲2▼で示すような光学特性を有している。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。図6の曲線▲2▼で示すような光学特性は、図9の光学フィルム21のA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸αである。
【0127】
従って、このような光学特性を有する光学フィルム21から図▲6▼の曲線▲1▼で示すような光学特性を有する光学手段20を得るには、光学フィルム21を複数枚用意し、平行線透過率が指向性を示す軸αをずらして積層すればよく、具体的には図10に示すように光学フィルム21を二枚用意し、平行線透過率が指向性を示す軸αを180°ずらして積層することによって得られる。
【0128】
本実施形態のELディスプレイでは、光透過性基板1の他方の面上に上記のような構成の光学手段20が設けられたことにより、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光)を散乱および/または回折して位相差板41側に出射し、さらにこれら散乱光および/または回折された光L2を位相差板41、偏光板42を通過させて外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光)を弱散乱および/または透過して位相差板41側に出射し、さらにこれら弱散乱光および/または透過光L4を位相差板41、偏光板42を通過させて外部に出射させることができるので、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0129】
すなわち、本実施形態のELディスプレイでは、広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光のうち少なくとも一部の光L1に対しては散乱および/または回折し、狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光L3に対しては影響を与えないあるいは弱影響とすることができる光学手段20をEL素子10の支持基板としての光透光性基板1の表面に設けることによって、全反射条件を回避するとともに正面方向(法線方向Hおよびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については散乱しないようにして、発光層4で発光した光を外部に効率良く取り出(放出)しており、これによって正面方向の輝度を向上できる。
【0130】
従って、本実施形態のELディスプレイによれば、正面方向の輝度を向上させたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、表示品質を向上させることができる。また、このようなELディスプレイは、照明装置を別個に設けなくても済むので、照明装置を必要とする液晶ディスプレイに比べて、厚みを薄くできる。また、このELディスプレイの光学手段20側に出てくる光は発光層で発光されたものであるので、この発光体による表示は液晶ディスプレイの表示に比べて視野角が広い。さらに、このELディスプレイは、液晶ディスプレイに比べて応答速度が速いとい利点がある。
【0131】
さらにこの本実施形態のELディスプレイにおいては、EL素子10として、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13とを用いたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、フルカラーのELディスプレイとすることができる。
【0132】
また、本実施形態のELディスプレイにおいては、光学手段20の上記光透過性基板側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)41と、偏光板42が光学手段20側から順に設けられたものであるので、周囲光が強い(明るい)場合に周囲光は1回目に位相差板41を通るときに円偏光し、さらにこの光は電極5で反射して逆向の円偏光で出てくるがこの逆向きの円偏光は偏向板42は通さないため、黒表示を視認できる。
【0133】
なお、本実施形態のELディスプレイにおいては、赤色発光するEL素子11の光透過性電極2Rの膜厚と、緑色発光するEL素子12の光透過性電極2Gの膜厚と、青色発光するEL素子13との光透過性電極2Bの膜厚とは、それぞれ異なるものとされているが、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13のうち、光透過性電極2の膜厚が同じであるものがあってもよいし、全ての光透過性電極2の膜厚が同じであってもよい。
また、本実施形態のELディスプレイにおいては、光透過性電極2は、ITOからなるものとしたが、インジウム亜鉛酸化物(以下、IZOと略記する。)膜からなるものであってもよい。
【0134】
さらに、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13とが、すべて同じ材質からなる光透過性電極2を有しているものでなくてもよく、ITOからなる光透過性電極とIZOからなる光透過性電極とが混在していてもよい。
【0135】
また、本実施形態においては、EL素子10の一例として、図2及び図3に示すように、光透過性電極2と、正孔輸送層3と、発光層4と、金属電極5とからなるものを例に挙げて説明したが、本発明で用いられるEL素子はこの例に限定されるものではない。
(液晶装置の実施形態)
図12は、本発明のELデバイスを適用したEL照明装置を備えた液晶装置を示した図であり、図12(a)は反射型として使用時の例を示す断面図を示し、図12(b)は透過型として使用時の例を示す断面図である。図13は、図12の液晶装置に備えられたEL照明装置を示した模式拡大断面図である。
【0136】
この実施形態の液晶装置110に、液晶駆動用IC、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての液晶表示装置(液晶装置)が構成される。
【0137】
この実施形態の液晶装置110は、平面視略矩形状で、かつ環状のシール材112を介して互いにセルギャップをあけて対向するように貼り付けられた一対の平面視矩形状の基板ユニット113、114と、これらの間に上記シール材112とともに囲まれて挟持された液晶層115と、一方(図12の上側)の基板ユニット113の上面側に設けられた位相差板119と偏光板116と、他方(図12の下側)の基板ユニット114の下面側に設けられた位相差板156と偏光板157を備えた液晶パネル111と、この液晶パネル111の下側に設けられたバックライト装置としてのEL照明装置160を主体として構成されている。
【0138】
基板ユニット113、114のうち、基板ユニット113は観測者側に向いて設けられる表側(上側)の基板ユニットであり、基板ユニット114はその反対側、換言すると裏側(下側)に設けられる基板ユニットである。
【0139】
上側の基板ユニット113は、例えばガラス等の透明材料からなる光透過性基板117と、基板117の表側(図12では上面側、観測者側)に順次設けられた位相差板119及び偏光板116と、基板117の裏側(換言すると液晶層115側)に順次形成されたカラーフィルタ層120、オーバーコート層121と、該オーバーコート層121において液晶層115側の面に形成された液晶駆動用のストライプ状の複数の電極層123を具備して構成されている。
【0140】
液晶層115は、ツイスト角θtが240度〜255度のネマチック液晶分子から構成されている。
【0141】
なお、実際の液晶装置においては、電極層123の液晶層115側と、後述する下基板側のストライプ状の電極層135の液晶層115側に、各々配向膜が被覆形成されるが、図12ではこれらの配向膜を省略し説明も略するとともに、以下に順次説明する他の実施形態においても配向膜の図示と説明は省略する。また、図12および以下の各図に示す液晶装置の断面構造は、図示した場合に各層が見やすいように各層の厚さを実際の液晶装置とは異なる厚さに調節して示してある。
【0142】
上記上基板側の駆動用の各電極層123は本実施形態ではITO(Indium TinOxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電材料から平面視ストライプ状に形成されたもので、液晶パネル110の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
【0143】
上記カラーフィルタ層120は、本実施形態では上側の基板117の下面(換言すると液晶層115側の面)に、光遮断用のブラックマスク、カラー表示用のRGBの各パターンを形成することにより構成されている。また、RGBのパターンを保護する透明な保護平坦化膜としてオーバーコート層121が被覆されている。上記ブラックマスクは例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚さ100〜200nm程度のクロム等の金属薄膜をパターニングして形成されている。上記のRGBの各パターンは、赤色パターン(R)、緑色パターン(G)、青色パターン(B)が、所望のパターン形状で配列され、例えば、所定の着色材を含有する感光性樹脂を使用した顔料分散法、各種印刷法、電着法、転写法、染色法等の種々の方法で形成されている。
【0144】
一方、下側の基板ユニット114は、ガラスなどの透明材料からなる光透過性基板128と、基板128の表面側(図12では上面側、換言すると液晶層115側)に順次形成された半透過反射層131、オーバーコート層133と、該オーバーコート層133の液晶層115側の面に形成されたストライプ状の駆動用の複数の電極層135と、基板128の裏面側(図12では下面側、換言すると液晶層115側と反対側)に順次形成された位相差板156と、偏光板157から構成されている。これらの電極層135においても先の電極層123と同様に液晶パネル110の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
【0145】
次に、本実施形態の半透過反射層131は、AgまたはAlなどの光反射性かつ導電性の優れた金属材料からなり、基板128上に蒸着法あるいはスパッタ法などにより形成されたものである。また、この半透過反射層131は、液晶パネル111の下側に設けられたEL照明装置160が発した光を通過させるために十分な厚さの半透過反射層、あるいは、反射層の一部に多数の微細な透孔を形成して光透過性を高めた構造など、半透過反射型の液晶表示装置に広く用いられているものを適宜採用することができる。ただし、半透過反射層131が導電材料からなることは必須ではなく、半透過反射層131とは別に導電材料製の駆動用電極層を設け、半透過反射層131と駆動電極を別個に設けた構造を採用して差し支えない。
【0146】
EL照明装置装160は、図12及び図13に示すように、発光層164を介して互いに対向する一対の電極162、165とを備えてなるEL素子210が光透過性基板161の一方の面上に配置され、一対の電極162、165のうち少なくとも光透過性基板161側に位置する方の電極162は光透過性電極から形成され、EL素子210に対して通電可能とされており、EL素子210に通電時に発光層164で発光した光が上記光透過性基板161側に放出されるものである。EL素子210の光透過性電極162と発光層164との間には、光透過性電極162から正孔を注入しやすくする正孔輸送層163が設けられている。
【0147】
EL素子210を構成する各層の材質は、先に述べた実施形態のELディプレイに備えられたEL素子10を構成する各層で用いた材質と同様のものを用いることができるが、特に発光層164は、白色発光が得られる材料からなるものを用いるのが好ましい。
【0148】
また、この光透過性基板161の他方の面(EL素子210が設けられた側と反対側の面)上に光学手段220が設けられている。この光学手段220は光透過性基板161内に入射した発光層164からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものである。ここで用いる光学手段220は、先に述べた実施例のELディスプレイで用いた光学手段20と同様のものが使用される。
【0149】
このようなEL照明装置160は、光学手段220が液晶パネル110側を向くように、すなわち、EL照明装置160は液晶パネル110の下側に配置されて、液晶パネル110の下方側から液晶パネル110に向けて照明光を出射できるようになっている。
【0150】
このEL照明装置160の動作について詳説すると、一対の電極162、165に通電されると、発光層164で発光した光は光透過性基板161側に放出されて、この光透過性基板161に入射するが、この基板161に入射した発光層164からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板161に入射した光)は光学手段220に至り、この光学手段220で散乱および/または回折されて液晶パネル111側に出射され、これら散乱光および/または回折された光L2は図12において下側から液晶パネル111に向かって照明光として出射される。
【0151】
一方、光透過性基板111に入射した発光層164からの光のうち他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板164に入射した光)も光学手段220に至り、この光学手段220で弱散乱および/または透過して液晶パネル111側に出射され、これら弱散乱光および/または透過光L4は図12において下側から液晶パネル111に向かって照明光として出射される。
【0152】
ここでEL照明装置160は、常に点灯するのではなく、周囲光(外光)が殆どないような場合だけ、使用者あるいはセンサの指示によって点灯するものである。従って、EL照明装置160が点灯している場合には、図12(b)に示すようにEL照明装置160からの光が半透過反射層131を通過することによって、透過型として機能し透過表示を行うことになる一方、EL照明装置160が消灯している場合(周囲光が十分強い)には、図12(a)に示すように液晶パネル111の上面側(偏光板116の表面側)から入射した光Lが半透過反射層131表面で反射することによって、反射型として機能し反射表示を行うことになる。
【0153】
本実施形態の液晶装置に備えられたEL照明装置160は、光透過性基板161の他方の面上に上記のような構成の光学手段220が設けられたことにより、正面方向(法線方向Hおよびその近傍)の輝度を向上できる。
【0154】
本実施形態の液晶装置によれば、正面方向の輝度を向上した本実施形態のEL照明装置160が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0155】
なお、本実施形態においては、EL照明装置160に備えられたEL素子210として、白色発光するEL素子が備えられた場合について説明したが、EL素子210としては、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子と、白色発光するEL素子のいずれか一つ以上が用いられていてもよい。このようなEL照明装置によれば、用いるEL素子によって、あるいは、用いるEL素子の組み合わせにより、赤色あるいは緑色あるいは緑色あるいは白色あるいはその他の色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0156】
また、EL素子210として青色発光するEL素子が用いられ、EL素子210と光透過性基板161の間又は光透過性基板161と光学手段220の間又は光学手段220の表面に、発光層164で青色発光した光を波長変換する手段が設けられたものであってもよい。このようなEL照明装置によれば、白色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0157】
なお、上記実施形態においては本実施形態のEL照明装置が半透過反射型液晶装置に備えられた場合について説明したが、透過型液晶装置に備えられていてもよく、その場合の液晶パネルの構成としては、半透過反射層31を設けない以外は図12に示した液晶パネル111と同様の構成のものを用いることができる。
【0158】
また、実施形態の液晶装置においては、単純マトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に本発明のEL照明装置を備えた場合について説明したが、本発明のEL照明装置を、2端子型スイッチング素子あるいは3端子型スイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に備えるようにしても良いのは勿論である。
【0159】
また、これまで説明した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置においては、上側の基板117と、偏光板116との間に位相差板119が一枚設けられた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、位相差板が複数枚設けた半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
【0160】
また、上記の実施形態においては、下側の基板128の照明装置160側に位相差板と偏光板を設けた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、下側の基板128のEL照明装置160側に位相差板と偏光板を設けていない半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
[電子機器の実施形態]
次に、上記実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
【0161】
図14(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図14(a)において、500は携帯電話本体を示し、501は図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。
【0162】
図14(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図14(b)において、600は情報処理装置、601はキーボードなどの入力部、603は情報処理本体、602は上記の図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。図14(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図14(c)において、700は時計本体を示し、701は上記の図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。
【0163】
図14(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられたものであるので、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【0164】
【実施例】
「試験例1」
図15(A)に示すような光学特性を示す実施例の光学フィルムを複数枚作製した。図15中、横軸は光学フィルムの回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。この図15(A)の曲線で示すような光学特性は、図15(B)の光学フィルムのA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸α2である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。
【0165】
そして、図15(A)に示す光学特性を有する光学フィルムを1枚から4枚用いて光学手段を作製した。複数の光学フィルムを用いる場合は、その指向性の軸α2を45度づつずらして積層して光学手段とした。このようにして作製した光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表1に示した。なお、表1において光学フィルムの枚数が0のときは、光学フィルムを設けていない場合である。
【0166】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表2に示した。
表1、表2に示した結果から、実施例の光学フィルムを光学手段として用いたELディスプレイは、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くでき、明るい表示が得られることがわかる。また、実施例の光学フィルムを複数枚用い、指向性の軸をずらして積層した光学手段を用いたELディスプレイにおいては、光学フィルムの枚数が多くなるに従ってその正面輝度も高くでき、明るい表示が得られることがわかる。
【0167】
「試験例2」
図17(A)に示すような光学特性を示す実施例の光学フィルムを複数枚作製した。図17中、横軸は光学フィルムの回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。この図17(A)の曲線で示すような光学特性は、図17(B)の光学フィルムのA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸α1である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。
【0168】
そして、図17(A)に示す光学特性を有する光学フィルムを1枚から8枚用いて光学手段を作製した。複数の光学フィルムを用いる場合は、その指向性の軸α1を図16に示すように45度づつずらして積層して光学手段とした。このようにして作製した光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表3、表4に示した。なお、表3において光学フィルムの枚数が0のときは、光学フィルムを設けていない場合である。
【0169】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表5に示した。
表3乃至表5に示した結果から、実施例の光学フィルムを光学手段として用いたELディスプレイは、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くでき、明るい表示が得られることがわかる。また、実施例の光学フィルムを複数枚用い、指向性の軸をずらして積層した光学手段を用いたELディスプレイにおいては、光学フィルムの枚数が多くなるに従ってその正面輝度も高くでき、明るい表示が得られることがわかる。
「試験例3」
ホログラム技術により作製した光学フィルムを複数枚して光学特性が異なる各種の光学手段を作製した。作製した各種の光学手段の臨界角度以上のヘイズ(%)と、臨界角度未満の範囲のヘイズ(%)を測定した。ここでのヘイズの測定は、図7に示す測定系を用いて測定した前方散乱光(拡散透過光)、入射光Lの光強度から算出した拡散透過率を全光線透過率で除算して%表示したものである。
【0170】
そして、作製した各種の光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表6、表7、表8に示した。なお、表8は図1乃至図3に示したELディスプレイに光学手段を設けていない場合である。
【0171】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表9に示した。
表6乃至表9に示した結果から、臨界角以上の範囲のヘイズが50%以上の光学手段が設けられたELディスプレイは、光学手段が設けられていないELディスプレイ(表8)や、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くできることがわかる。また、特に臨界角以上の範囲のヘイズが60%以上の光学手段が設けられたELディスプレイは、比較例のELディスプレイに比べて正面の輝度が2割以上明るくなることがわかる。
【0172】
また、臨界角未満の範囲のヘイズが20%以下の光学手段が設けられたELディスプレイは、光学手段が設けられていないELディスプレイ(表8)や、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くできることがわかる。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のELデバイスによれば、発光層で発光した光のうち狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光は低散乱で外部に放出でき、しかも広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光を外部に放出でき、正面方向(法線方向およびその近傍方向)の輝度を向上できる。
【0174】
また、本発明のELディスプレイによれば、このような正面方向の輝度を向上させた本発明のELデバイスをELディスプレイとして用いたことにより、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0175】
また、本発明の液晶装置は、正面方向の輝度を向上させた本発明のEL照明装置が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0176】
また、本発明の電子機器は、正面方向の輝度を向上させた本発明のELディスプレイ又はEL照明装置を用いた液晶装置が備えられたものであるので、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のELデバイスをELディスプレイに適用した一実施形態例の説明図であり、基板側から見た平面図である。
【図2】図1のELディスプレイの一部を示した概略断面図であり、図1のA−A’断面図である。
【図3】図1のELディスプレイの要部を示した図であり、1個のEL素子およびこれの周辺部分を示した模式拡大断面図である。
【図4】図1のELディスプレイに備えられた光学手段の作用を示す模式図である。
【図5】図1のELディスプレイに備えられた光学手段の他の作用を示す模式図である。
【図6】本実施形態で用いられる光学手段とこれを構成する光学フィルムの光学特性を示す図である。
【図7】平行線透過率を測定する際の光学手段と光源と受光部の位置関係を示す説明図である。
【図8】光学手段に対する入射光と平行線透過光、拡散透過光、並びに後方散乱光と前方散乱光の関係を示す説明図である。
【図9】本実施形態で用いられる光学手段を構成するホログラム技術により作製された光学フィルムの断面構造例を示す模式図である。
【図10】図9のホログラム技術により作製された光学フィルムを用いて目的とする光学手段の作製する方法を示す模式図である。
【図11】本実施形態のELディスプレイに備えられた光学手段の散乱及び/または回折特性を示す図である。
【図12】本発明のELデバイスを適用したEL照明装置を備えた液晶装置の説明図であり、図12(a)は反射型として使用時の例を示す断面図、図12(b)は透過型として使用時の例を示す断面図である。
【図13】図12の液晶装置に備えられたEL照明装置を示した模式拡大断面図である。
【図14】本発明の実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられた電子機器の例を示すもので、図14(a)は携帯型電話機を示す斜視図、図14(b)は携帯型情報処理装置の一例を示す斜視図、図14(c)は腕時計型電子機器の一例を示す斜視図である。
【図15】図15(A)は実施例の光学フィルムの光学特性を示す図、図15(B)は図15(A)の光学特性を測定した方向の説明図である。
【図16】実施例の光学フィルムの積層方法の説明図で、この光学フィルムを積層して得られた光学手段を上方から見たときの指向性の軸の位置関係を示す図である。
【図17】図17(A)は実施例の光学フィルムの光学特性を示す図、図15(B)は図17(A)の光学特性を測定した方向の説明図である。
【図18】従来のELディスプレイの例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1、161・・・光透過性基板
10、11、12、13、210・・・EL素子
2、162、2R、2G、2B・・・光透過性電極
3、163・・・正孔輸送層
4、4R、4G、4B、164・・・発光層
8・・・隔壁
20・・・光学手段
21・・・光学フィルム
41・・・位相差板(λ/4板)
42・・・偏光板
110・・・液晶装置
111・・・液晶パネル
160・・・EL照明装置
L1、L3…入射光
L2・・・散乱光および/または回折された光
L4・・・弱散乱光および/または透過光
L5・・・平行線透過光
H・・・法線方向
α、α1、α2・・・指向性を示す軸
β1・・・光透過性基板の法線方向からの傾き角
β2・・・光学手段の法線方向からの傾き角
20a・・・臨界角以上を示す領域
20b・・・臨界角未満を示す領域
500・・・携帯電話本体
501・・・EL表示部(表示手段)
600・・・情報処理装置
601・・・入力部
602・・・EL表示部(表示手段)
603・・・情報処理本体
700・・・時計本体
701・・・EL表示部(表示手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL素子(エレクトロルミネッセンス素子)を備えたELデバイスに係わり、特に、正面方向の輝度を向上させたELデバイス、ELディスプレイ、EL照明装置およびこれを用いた液晶装置、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL素子を用いたELデバイスの一種にELディスプレイが知られている。
【0003】
以下に従来のELディスプレイの構成例の概要を図面を参照して説明する。
【0004】
図18は、従来のELディスプレイの例を示す模式断面図である。
【0005】
従来のELディスプレイは、透明基板801と、この透明基板801の一方の面上に設けられたEL素子812から概略構成されている。
【0006】
EL素子812は、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOと略記する。)などからなり、陽極として機能する透明電極813と、透明電極813から正孔を注入しやすくする正孔輸送層814と、EL材料からなる発光層815と、陰極として機能する金属電極816が透明基板801側から順に積層され、発光層815を介して透明電極813と金属電極816とが互いに対向するように配置されている。このようなEL素子812が備えられたELディスプレイは、透明電極813および金属電極816に所定の電流を流すことにより、発光層815で光を発光させ、発光層815からの光が透明電極813および透明基板801を透過して、透明基板801側からEL素子812の外部に向かって放出されるようになっている。
【0007】
ところが発光層815で発光した光のうち広角(臨界角以上)で透明基板801に出射された光は、透明基板801内で全反射を繰り返し、透明基板801の外部に放出されない。即ち、透明基板801に入射した光が広角(臨界角以上)である場合は、表示として利用されないため、輝度が低いものであった。
【0008】
なお、屈折率n1の媒質からθ1の角度で入射した光がθ2の屈折角度で屈折率n2の媒質へ進むときに、θ1、θ2、n1、n2の間に次の関係(スネルの法則)
n1sinθ1=n2sinθ2
が成立している。
【0009】
透明基板801に入射した光の臨界角を求めるには、透明基板801としては通常、ガラス基板や、アクリル樹脂等の透明樹脂が用いられているためn1=1.49〜1.6であり、空気の屈折率が1であるからn2=1であり、入射光が臨界角のときの透過光が透明基板801の表面と平行になるときの透明基板801の法線方向Hからの角度θ2が90°であることからことからθ1 は約40°であり、よって透明基板801に入射した光の臨界角は約40°程度である。
【0010】
そこで、従来のELディスプレイにおいては、透明基板801に入射した光が臨界角以上である場合でも透明基板801の外部に取り出せるようにするために、図18に示したように透明基板801のEL素子812が設けられた側の面とは反対側の面上に、例えば厚さ50〜200μmのトリアリルシアネートなどからなる基材に金属酸化物粒子をフィラーとして分散させた等方的な散乱特性を有す散乱層820を形成することで、透明基板801に入射した光(発光層815で発光した光が透明基板801に出射された光)が臨界角以上である場合も透明基板801の外部に取り出せるようにしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような散乱層820が設けられた従来のELディスプレイにおいては、図18に示すように透明基板801に入射した臨界角以上の入射光L10を等方的に散乱(透過光L11が等方的に散乱)させて、透明基板801の外部に取り出すことが可能であるが、透明基板801に入射した臨界角未満の入射光L12に対しても等方的な散乱(透過光L13が等方的に散乱)が生じるために、広視角で見たときの輝度は明るいものの、正面方向(法線方向およびその近傍方向)から見たときの輝度が低く、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0012】
また、透明基板801に入射した光が臨界角以上である場合でも透明基板801の外部に取り出せるようにする他の手段としては、透明基板801の表面を粗くして凹凸を設ける方法があるが、この場合も散乱層820を設けた場合と同様に正面方向から見たときの輝度が低く、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、発光層で発光した光のうち狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光は低散乱で外部に放出でき、しかも広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光を外部に放出でき、正面方向(法線方向およびその近傍方向)の輝度を向上できるELデバイスの提供を目的とする。
【0014】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたELデバイスをELディスプレイとして用い、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができるELディスプレイの提供を他の目的とする。
【0015】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたELデバイスをEL照明装置として用いることを他の目的とする。
【0016】
また、本発明はこのような正面方向の輝度を向上させたEL照明装置を備えた液晶装置の提供を他の目的とする。
【0017】
また、本発明は正面方向の輝度を向上させたELディスプレイ又はEL照明装置を用いた液晶装置を表示手段として備えた電子機器を提供することを他の目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のELデバイスは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなる複数のEL素子が光透過性基板の一方の面上にマトリクス状に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、上記EL素子に対して個別通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする。
【0019】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0020】
すなわち、本発明のELデバイスでは、広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光の少なくとも一部に対しては散乱および/または回折し、狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光に対しては影響を与えないあるいは弱影響とすることができる光学手段をEL素子の支持基板としての光透光性基板の表面に設けることによって、全反射条件を回避するとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については散乱しないようにして、発光層で発光した光を外部に効率良く取り出(放出)しており、これによって正面方向の輝度を向上できる。
【0021】
また、上記課題を解決するために本発明のELデバイスは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなるEL素子が光透過性基板の一方の面上に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、上記EL素子に対して通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする。
【0022】
このような構成のELデバイスにおいても、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0023】
また、上記いずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0024】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱して外部に出射させることができ、しかも臨界角未満の入射光は弱散乱または透過(無散乱)して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光についてはできるだけ散乱が生じないか、あるいは透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0025】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は透過して外部に出射するものであってもよい。
【0026】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光は透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0027】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱および回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0028】
このようなELデバイスでは、上記光透過性基板の他方の面上に上記のような構成の光学手段が設けられたことにより、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱および回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光についてはできるだけ散乱が生じないか、および/または透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0029】
また、上記いずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0030】
上記光透過性基板に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光透過性基板の法線方向からの傾き角β1の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m1 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β1 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β1≧sin−1(1/m1) と計算できる。従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0031】
上記光学手段は、これに入射した光が強散乱および/または回折を示すときと弱散乱および/または透過を示すときの過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、上記光透過性基板に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段を最適化することが好ましい。
【0032】
従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)−10°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0033】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0034】
光透過性基板に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光透過性基板の法線方向からの傾き角β1の具体的な値(概算値)を求めるには、上記光透過性基板としては、ガラス基板や、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いることができ、これらの屈折率は1.49〜1.6(n1 =1.49〜1.6)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光透過性基板に入射した光の臨界角β1は約40°程度である。
【0035】
従って、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0036】
また、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。上記光学手段がこのような条件を満たすものであれば、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0037】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0038】
上記光学手段に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光学手段の法線方向からの傾き角β2の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m2 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β2 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板の表面と平行になるときの光透過性基板の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β2≧sin−1(1/m2) と計算できる。従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)の少なくとも一部を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光(狭い角度(臨界角未満)で光学手段に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。上記発光層から上記光透過性基板を経て上記光学手段に入射した入射光が上記光学手段によって強散乱および/または回折を示すときと弱散乱を示すときの角度の過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、上記光透過性基板を経て上記光学手段に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段を最適化することが好ましい。
【0039】
従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)−10°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0040】
また、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β2=0°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0041】
上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光が臨界角以上を示すときの上記光学手段の法線方向からの傾き角β2の具体的な値(概算値)を求めるには、上記光学手段としては、該光学手段中の平均屈折率は約1.57(n1 =1.57程度)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光学手段の表面と平行になるときの光学手段の法線方向からの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光学手段に入射した光の臨界角β2は約40°程度である。
【0042】
従って、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β2=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0043】
また、上記光学手段は、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。上記光学手段がこのような条件を満たすものであれば、上記発光層から上記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0044】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光透過性基板の屈折率m1 と光学手段の屈折率m2 は同じ大きさかあるいは略等しい大きさであってもよい。
【0045】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光透過性基板の屈折率m1と光学手段の屈折率m2 は、m1≦m2なる関係を満たすことが上記光透過性基板内に入射した発光層からの光が全反射することがなく、発光層で発光した光を外部に効率良く取り出す(出射する)ことができる点で好ましい。
【0046】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射し、臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射するものであってもよい。上記光学手段が、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射できるものであれば、上記臨界角以上の入射光は上記光学手段により散乱等が生じて外部に出射することができる。また、上記光学手段が、上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射できるものであれば、上記臨界角未満の入射光は上記光学手段により透過(無散乱)あるいは殆ど散乱が生じることなく略直進して外部に出射することができる。
【0047】
従って、このような光学手段が設けられたELデバイスによれば、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0048】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELデバイスにおいては、上記光学手段は、複数枚の光学フィルムを積層して形成されたものであってもよい。
【0049】
上記複数枚の光学フィルムは平行線透過率が指向性を示す軸をずらして積層されたものであってもよい。
【0050】
上記光学フィルムは、ホログラムであってもよい。
【0051】
また、上記課題を解決するために本発明のELディスプレイは、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなる複数のEL素子が光透過性基板の一方の面上にマトリクス状に配置され、上記EL素子に対して個別通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射するものであるELデバイスをELディスプレイとして用い、上記光学手段が上記のいずれかの構成のものであることを特徴とする。
【0052】
このようなELディスプレイによれば、正面方向の輝度を向上させた本発明のELデバイスをELディスプレイとして用いたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、表示品質を向上させることができる。また、このようなELディスプレイは、照明装置を別個に設けなくても済むので、照明装置を必要とする液晶ディスプレイに比べて、厚みを薄くできる。また、このELディスプレイの光学手段側に出てくる光は発光層で発光されたものであるので、この発光体による表示は液晶ディスプレイの表示に比べて視野角が広い。さらに、このELディスプレイは、液晶ディスプレイに比べて応答速度が速いとい利点がある。
【0053】
上記構成の本発明のELディスプレイにおいては、上記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子とを用いたものであってもよい。
【0054】
このようなELディスプレイとすることにより、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、フルカラーのELディスプレイを提供できる。
【0055】
また、上記のいずれかの構成の本発明のELディスプレイにおいては、上記光学手段の上記光透過性基板側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)と、偏光板が上記光学手段側から順に設けられていてもよい。
【0056】
上記のような位相差板と、偏光板が設けられていないと、上記対向する電極と光透過性電極のうち前者の電極がアルミニウム等の反射性を有する材料から形成されている場合、周囲光が強い(明るい)と、前記電極が周囲光を反射してしまい、黒表示を視認できない。本発明のELディスプレイでは、上記のような位相差板と、偏光板を設けることで、周囲光が強い(明るい)場合に周囲光は1回目に位相差板を通るときに円偏光し、さらにこの光は前記電極で反射して逆向の円偏光で出てくるがこの逆向きの円偏光は偏向板は通さないため、黒表示を視認できる。
【0057】
また、上記の課題を解決するために本発明のEL照明装置は、発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなるEL素子が光透過性基板の一方の面上に配置され、上記EL素子に対して通電可能とされており、上記EL素子に通電時に上記発光層で発光した光が上記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、上記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は上記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射するものであるELデバイスをEL照明装置として用い、上記光学手段が上記のいずれかの構成のものであることを特徴とする。
【0058】
このようなEL照明装置によれば、本発明のELデバイスをEL照明装置として用いたものであるので、正面方向の輝度を向上したものが得られる。
【0059】
上記構成の本発明のEL照明装置においては、上記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子と、白色発光するEL素子のいずれか一つ以上が用いられていてもよい。
【0060】
このようなEL照明装置によれば、用いるEL素子によって、あるいは、用いるEL素子の組み合わせにより、赤色あるいは緑色あるいは緑色あるいは白色あるいはその他の色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0061】
また、上記構成の本発明のEL照明装置においては、上記EL素子として青色発光するEL素子が用いられ、上記EL素子と上記光透過性基板の間又は上記光透過性基板と上記光学手段の間又は上記光学手段の表面に、上記発光層で青色発光した光を波長変換する手段が設けられたものであってもよい。
【0062】
このようなEL照明装置によれば、白色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0063】
また、上記の課題を解決するために本発明の液晶装置は、一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層とを具備した液晶パネルと、該液晶パネルの一方の基板の液晶層とは反対側に設けられた上記構成の本発明のEL照明装置とが備えられてなることを特徴とする。上記液晶パネルは、一方の基板の液晶層側に半透過反射層が設けられているものであってもよい。
【0064】
このような液晶装置によれば、正面方向の輝度を向上した本発明のEL照明装置が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0065】
また、上記の課題を解決するために本発明の電子機器は、上記構成の本発明のELディスプレイ又は上記構成のEL照明装置を備えた本発明の液晶装置を表示手段として備えたことを特徴とする。
【0066】
このような電子機器は、明るい表示が得られ、表示品質を向上した本発明のELディスプレイまたは本発明のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられたことにより、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ELディスプレイの実施形態)
図1は、本発明のELデバイスをELディスプレイに適用した一実施形態例を示した図であり、基板側から見た平面図である。図2は、図1に示したELディスプレイの一部を示した概略断面図であり、図1のA−A’断面図である。図3は、図1に示したELディスプレイの要部を示した図であり、このELディスプレイに備えられた複数のEL素子のうちの1個のEL素子およびこれの周辺部分を示した模式拡大断面図である。
【0068】
図1及び図2において、符号1は、ガラスなどからなる光透過性基板を示している。光透過性基板1の一方の面上には、対向する一対の電極2、5の間に発光層4が介在され、赤、緑、青のうちいずれかの色を発光する複数のEL素子10がマトリクス状に配置され、互いに交差するように格子状に設けられた電極2および金属電極5によって個別に通電できるようになっている。一対の電極2、5のうち光透過性基板1側に位置する方の電極2は光透過性電極である。
【0069】
また、複数のEL素子10のそれぞれの周囲には、樹脂ブラックレジストなどからなり、隣り合うEL素子10間を隔てる隔壁8が設けられている。図1および図2に示すELディスプレイにおいては、複数のEL素子10のうち符号11で示で示すEL素子は発光層4Rが赤色発光するもの、符号12で示すEL素子は発光層4Gが緑色発光するもの、符号13で示すEL素子は発光層4Bが青色発光するものとなっている。
【0070】
また、光透過性基板1の他方の面(複数のEL素子10が設けられた側と反対側の面)上に光学手段20が設けられている。この光学手段20は光透過性基板1内に入射した各発光層からの光のうち全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものである。光学手段20の構成および作用については後で詳細に説明する。
また、図2に示すように光学手段20の光透過性基板1側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)41と、偏光板42が光学手段20側から順に設けられている。なお、図1では位相差板(λ/4板)41と、偏光板42は図示を略した。
【0071】
緑色発光するEL素子12は、図2に示すように、光透過性基板1上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOと略記する。)膜からなる光透過性電極2Gと、光透過性電極2Gから正孔を注入しやすくする正孔輸送層3と、EL材料からなる発光層4Gと、金属電極5とが順に積層されたものであり、発光層4Gを介して光透過性電極2Gと金属電極5とが互いに対向するようになっている。
【0072】
図2に示すEL素子12においては、光透過性電極2Gが陽極として機能し、金属電極5が陰極として機能するように構成されている。そして、光透過性電極2Gおよび金属電極5に所定の電流を流すことにより、発光層4Gに緑色光を発光させ、発光層4Gからの緑色光が光透過性電極2Gを透過して光透過性基板1に入射する。
【0073】
そして光透過性基板1に入射した発光層からの光は光学手段20に至り、光透過性基板1に入射したときの入射角度に応じて光学手段20の作用を受けて位相差板41側に出射され、さらに位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。ここでの光学手段20の作用については後で詳細に説明する。
【0074】
また、図2に示すEL素子12では、光透過性電極2Gの膜厚は、150±20nmとされている。
【0075】
正孔輸送層3としては、例えば、4、4’ービス(mートリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4、4’ービス[Nー(1ナフチル)ーNーフェニルアミノ]ビフェニル(αーNPD)、4、4’、4’’ートリス[Nー(3ーメチルフェニル)ーNーフェニルアミノ]トリフェニルアミン(mーMTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェンなど、従来の正孔輸送層に使用されている材料を使用したものなどが挙げられる。また、正孔輸送層3に使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0076】
発光層4Gとしては、従来の発光層に使用されている緑色発光が得られる有機のEl材料(エレクトロルミネッセンス材料)からなるものとすることができ、好ましくは、キナクリドンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Gに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0077】
金属電極5としては、例えば、アルミニウム、銀、銀合金、マグネシウムなど、従来の金属電極に使用されている材料を使用したものなどが挙げられる。
【0078】
また、赤色発光するEL素子11および青色発光するEL素子13は、図2に示す緑色発光するEL素子12と、光透過性電極2の膜厚と発光層4に使用されている材料とが、異なるものである。
【0079】
赤色発光するEL素子11では、光透過性電極2Rの膜厚は、180±20nmとされている。
【0080】
また、発光層4Rとしては、従来の発光層に使用されている赤色発光が得られる有機のEl材料からなるものとすることができ、好ましくは、ローダミンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Rに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0081】
また、青色発光するEL素子13では、光透過性電極2Bの膜厚は、120±20nmとされている。
【0082】
また、発光層4Bとしては、従来の発光層に使用されている青色発光が得られる有機のEl材料からなるものとすることができ、好ましくは、ジスチリルビフェニルおよびその誘導体、クマリンおよびその誘導体、テトラフェニルブタジエンおよびその誘導体などの有機El材料からなるものとされる。また、発光層4Bに使用される材料としては、1種または複数種使用することができる。
【0083】
次に、本実施形態のELディスプレイに備えられた光学手段20の構成および作用について詳細に説明する。
【0084】
この光学手段20は、図2及び図3に示すように光透過性基板1内に入射した発光層4(発光層4R、4G、4B)からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光L1を散乱および/または回折して外部(本実施形態の場合、位相差板41側)に出射し、他の光L3を弱散乱および/または透過して外部(本実施形態の場合、位相差板41側)に出射するものである。
【0085】
このELディスプレイでは一対の電極2、5に通電されると、発光層4で発光した光は光透過性基板11側に放出されて、この光透過性基板11に入射するが、この基板11に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板11に入射した光)は光学手段20に至り、この光学手段20で散乱および/または回折されて位相差板41側に出射され、さらにこれら散乱光および/または回折された光L2は位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。
【0086】
一方、光透過性基板11に入射した発光層4からの光のうち他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板11に入射した光)も光学手段20に至り、この光学手段20で弱散乱および/または透過して位相差板41側に出射され、さらにこれら弱散乱光および/または透過光L4は位相差板41、偏光板42を通過して図2において下側からELディスプレイの外部に向かって放出されるようになっている。
【0087】
このような光学手段20の具体例としては、光透過性基板1内に入射した各発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光のうち少なくとも一部の入射光L1は強散乱して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は弱散乱または透過して外部に出射するものであってもよい。図4はある点光源Oから放出された光に対して光学手段20の作用を模式的に示す図であり、図4中の符号20bで示される円内の領域(円周上は含まない)は光透過性基板1に入射した入射光が臨界角未満の領域、符号20aで示される円外の領域(円周上を含む)は光透過性基板1内に入射した入射光が臨界角以上を示す領域である。図4に示すように光学手段20は、点光源Oから放出された光のうち臨界角以上を示す領域20aを通って入射する光は強散乱して点光源Oと反対側に出射させる作用があり、点光源Oから放出された光のうち臨界角未満を示す領域20bを通って入射する光は弱散乱または透過して点光源Oと反対側に出射させる作用がある。
【0088】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光L1は強散乱して外部に出射させることができ、しかも臨界角未満の入射光L3は弱散乱または透過(無散乱)して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3についてはできるだけ散乱が生じないか、あるいは透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0089】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は透過して外部に出射するものであってもよい。
【0090】
図5はある点光源Oから放出された光に対して光学手段20の作用を模式的に示す図であり、図5中の符号20bで示される円内の領域(円周上は含まない)は光透過性基板1に入射した入射光が臨界角未満の領域、符号20aで示される円外の領域(円周上を含む)は光透過性基板1内に入射した入射光が臨界角以上を示す領域である。図5に示すように光学手段20は、点光源Oから放出された光のうち臨界角以上を示す領域20aを通って入射する光は回折して点光源Oと反対側に出射させる作用があり、点光源Oから放出された光のうち臨界角未満を示す領域20bを通って入射する光はそのまま透過して点光源Oと反対側に出射させる作用がある。
【0091】
従って、この光学手段20では、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光L3は透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3については透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0092】
また、この光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は強散乱および回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光L3は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよく、この光学手段20は、上述の図4及び図5を用いて説明した両方の作用を有するものである。
【0093】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部の入射光L1は強散乱および回折して外部に出射させることができ、臨界角未満の入射光L3は弱散乱および/または透過して外部に出射させることができるので、すなわち全反射条件を回避できるとともに正面方向(法線方向およびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光L3についてはできるだけ散乱が生じないか、および/または透過できるので、正面方向の輝度を向上できる。
【0094】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件(式中、β1は光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m1は光透過性基板1の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0095】
光透過性基板1に入射した光が臨界角以上を示すときの光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角β1の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 )から計算でき、n1=m1 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β1 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、β1≧sin−1(1/m1) と計算できる。
【0096】
従って、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光のうち少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光の少なくとも一部の光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0097】
ところが、光学手段20は、これに入射した光が強散乱および/または回折を示すときと弱散乱および/または透過を示すときの過渡状態は図11に示すように約10°から20°程度の範囲があるため、光透過性基板1に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段20を最適化することが好ましい。図11中、横軸は光学手段20の回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。
【0098】
ここでの平行線透過率は、図7に示すようにして測定したものである。ここでの測定の際には、光学手段20の右側から光学手段20の中央部の原点O1に向けて、光源(発光層からの光)Kからの入射光を入射し、そして、光学手段20の原点O1を通過させて光学手段20を透過して直進する透過光を光センサ等の受光部Jにて受光する測定系を用いた。測定の際には光学手段20を回転(傾斜)させて各回転角度(傾斜角度)において光源Kからの入射光を光学手段20に入射させ、光学手段20の原点O1を透過して直進する透過光を受光部Jにて受光して測定したものである。図7中の0°の位置は、光源Kに対して光学手段20を水平(平行)に配置した位置であり、0°の位置から右回りの角度を+、左回りの角度を−とした。
【0099】
そして光学手段20の一面側(図7及び図8では左側)に設置された光源Kから発せられた入射光Lが光学手段20を透過してこの光学手段20の他面側(図7及び図8では右側)に抜ける場合、光学手段20の一面側(左側)において散乱する光を後方散乱光LRと称し、光学手段20を透過する光を前方散乱光と称することとする。そして、光学手段20を透過した前方散乱光に関し、入射光Lの進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)L5の光強度について、入射光Lの光強度に対する割合を平行線透過率Tと定義し、更に、±2゜を越えて周囲側に斜めに拡散する前方散乱光(拡散透過光)LTの光強度について、入射光Lの光強度に対する割合を拡散透過率と定義し、透過光全体の入射光に対する割合を全光線透過率と定義した。以上の定義から、全光線透過率から拡散透過率を差し引いたものが平行線透過率Tであると定義することができる。
【0100】
よって図7において平行線透過率Tが低い値を示す角度は散乱光が多く(強散乱)、平行線透過率Tが高い値を示す角度は散乱が少なく(弱散乱)および/または透過光(平行線透過光)が多いことを示し、散乱光が多い(強散乱)状態から散乱が少なく(弱散乱)および/または透過光(平行線透過光)が多い状態示すときの過渡状態が10°から20°程度ある。
従って、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)−10°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m1は上記光透過性基板1の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。また、光学手段20の他の具体例としては、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は光透過性基板1の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0101】
光透過性基板1に入射した光が臨界角以上を示すときの光透過性基板1の法線方向Hからの傾き角β1の具体的な値(概算値)を求めるには、光透過性基板1としては、ガラス基板(屈折率約1.54)や、アクリル樹脂(屈折率約1.49)等の透明樹脂を用いることができ、これらの屈折率は1.49〜1.6(n1 =1.49〜1.6)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光透過性基板1に入射した光の臨界角β1は約40°程度である。なお、光透過性基板1としてガラス基板(屈折率約1.54)を用いた場合に臨界角β1 は、40.5°である。
【0102】
従って、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、上記光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光のうち少なくとも一部の光)を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光L3を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0103】
また、この光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は上記光透過性基板1の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。光学手段20がこのような条件を満たすものであれば、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくととも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光)を強散乱および/または回折して外部に殆ど出射させることができ、臨界角未満の入射光L3を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0104】
また、上記光学手段20の他の具体例としては、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0105】
この光学手段20に入射した光が臨界角以上を示すときの光学手段20の法線方向Hからの傾き角β2の値は、上記のスネルの法則(n1sinθ1=n2sinθ2 から計算でき、n1=m2 、空気の屈折率が1であるからn2=1、θ1=β2 、入射光が臨界角のときの透過光が光透過性基板1の表面と平行になるときの光透過性基板1の法線方向からの角度θ2が90°であることから、β2≧sin−1(1/m2) と計算できる。
【0106】
従って、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折でき、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光学手段に入射した光)を散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光学手段に入射した光)を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0107】
また、先に述べたように発光層4から光透過性基板1を経て上記光学手段20に入射した入射光が光学手段20によって強散乱および/または回折を示すときと弱散乱を示すときの角度の過渡状態は約10°から20°程度の範囲があるため、光透過性基板1を経て光学手段20に入射した入射光の臨界角から10°程度ずれた範囲の角度の入射光も散乱および/または回折できるようにして、光学手段20を最適化することが好ましい。
【0108】
従って、光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)−10°なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段20の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。
【0109】
また、光学手段20の他の具体例としては、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は上記光学手段20の法線方向Hからの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β2=0°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであってもよい。
【0110】
発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光が臨界角以上を示すときの光学手段20の法線方向Hからの傾き角β2の具体的な値(概算値)を求めるには、光学手段20としては、光学手段20中の平均屈折率は約1.57(n1 =1.57程度)であり、空気の屈折率が1(n2=1)であり、入射光が臨界角のときの透過光が光学手段20の表面と平行になるときの光学手段20の法線方向Hからの角度θ2が90°であることから、上記のスネルの法則よりθ1 は約40°であり、よって光学手段20に入射した光の臨界角β2はは、39.6°であるから、約40°といえる。
【0111】
従って、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折でき、β2=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過できるものであれば、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光(広角(臨界角以上)で光学手段20に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に出射させることができ、しかも正面方向(法線方向)に真っ直ぐ出射されてくる光を弱散乱および/または透過して外部に出射させることができる。
【0112】
また、上記光学手段20は、発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は光学手段20の法線方向Hからの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることが好ましい。光学手段20がこのような条件を満たすものであれば、上記発光層4から光透過性基板1を経て該光学手段20に入射した光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光学基板に入射した光)の少なくとも一部を強散乱および/または回折して外部に殆ど出射させることができ、臨界角未満の入射光L3を弱散乱および/または透過して外部に殆ど出射させることができる。
【0113】
なお、本発明において散乱とは、光透過性基板または光学手段に広い角度(臨界角以上)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した前方散乱光のうち入射光の進行方向に対して±2゜を越えて周囲側に斜めに拡散する前方散乱光(拡散透過光)が生じる場合と入射光の進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)の両方または片方が含まれる。
【0114】
また、強散乱とはヘイズ値が50%以上示す場合であり、弱散乱とはヘイズ値が20%以下を示す場合である。
【0115】
また、回折とは、広い角度(臨界角以上)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した透過光のうち入射光の進行方向に対して出射光の進行方向が曲がるという現象のことである。
【0116】
また、透過とは、狭い角度(臨界角未満)で入射した入射光が光透過性基板または光学手段を透過した前方散乱光のうち入射光の進行方向に対して±2°以内の角度誤差で同じ方向に直進する前方散乱光(平行線透過光)のことをいう。
【0117】
上述のように光透過性基板1の屈折率m1 は、1.49〜1.6であり、光学手段20の屈折率m2 は約1.57(平均屈折率)であり、光透過性基板1の屈折率m1と光学手段20の屈折率m2は同じ大きさかあるいは略等しい大きさとなっている。
【0118】
光透過性基板1の屈折率m1と光学手段20の屈折率m2 は、好ましくはm1≦m2なる関係を満たすことが光透過性基板1内に入射した発光層4からの光が全反射することがなく、発光層4で発光した光を外部に効率良く取り出す(出射する)ことができる点で好ましい。
【0119】
また、光学手段20は、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射し、臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射するものであってもよい。ここでのヘイズとは、光学の分野においてヘイズ(Haze)と称される透過率尺度であり、上述の図8を用いて説明した拡散透過率を全光線透過率で除算して%表示した値であり、上記平行線透過率とは全く異なる概念の定義である。ヘイズの値が大きいほど、上記の前方散乱光(拡散透過光)が強く(多く)、ヘイズの値が小さいほど、上記の平行線透過光が強く(多く)ということができる。
【0120】
光学手段20が、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射できるものであれば、上記臨界角以上の入射光は光学手段20により散乱等が生じて外部に出射することができる。また、光学手段20が、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射できるものであれば、上記臨界角未満の入射光は上記光学手段により透過(無散乱)あるいは殆ど散乱が生じることなく略直進して外部に出射することができる。従って、このような光学手段20が設けられていると、全ての入射方向で同じ散乱特性を示す従来のもの、言い換えれば、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0121】
本実施形態で用いられる光学手段20をさらに具体的に説明すると、この光学手段20は、例えば、図6の曲線▲1▼で示すような光学特性を示すものである。図6中、横軸は光学手段20の回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。このような光学特性を有する光学手段20は、複数枚の光学フィルムを積層することにより得ることが可能である。
【0122】
上記の各光学フィルムは、基本構造の面から見れば、特開2000−035506、特開2000−066026、特開2000−180607等に開示されている指向性を有する前方散乱フィルムを適宜用いることができる。例えば、特開2000−035506に開示されているように、相互に屈折率の異なる2種以上の光重合可能なモノマーまたはオリゴマーの混合物である樹脂シートに、紫外線を斜め方向から照射して特定の広い方向のみを効率良く散乱させる機能を持たせたもの、あるいは、特開2000−066026に開示されているオンラインホログラフィック拡散シートとして、ホログラム用感光材料にレーザを照射して部分的に屈折率の異なる領域を層構造となるように製造したものなどを適宜用いることができる。
【0123】
図9は、上記のようなホログラム技術により作製された光学フィルム21の断面構造例を示す模式図である。
【0124】
この光学フィルム21は、屈折率がn1の部分と屈折率がn2の部分が光学フィルム21の断面構造において所定の角度を有して斜め方向に層状に交互配置されてなる構造である。
【0125】
この構造の光学フィルム21に斜め方向から広角(臨界角以上)で入射光L1が入射されるとすると、屈折率の異なる各層の境界部分において散乱および/または回折され、これらの光は反対側(図面では下面側)に散乱光および/または回折された光L2として出射されるようになっている。また、この構造の光学フィルム21に斜め方向から狭い角度(臨界角未満)で入射光L3が入射されるとすると、屈折率の異なる各層の境界部分において弱散乱および/または透過され、これらの光は反対側(図面では下面側)に弱散乱光および/または透過光L4として出射されるようになっている。
【0126】
上記のようなホログラム技術により作製された光学フィルム21の光学特性は、例えば図6の曲線▲2▼で示すような光学特性を有している。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。図6の曲線▲2▼で示すような光学特性は、図9の光学フィルム21のA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸αである。
【0127】
従って、このような光学特性を有する光学フィルム21から図▲6▼の曲線▲1▼で示すような光学特性を有する光学手段20を得るには、光学フィルム21を複数枚用意し、平行線透過率が指向性を示す軸αをずらして積層すればよく、具体的には図10に示すように光学フィルム21を二枚用意し、平行線透過率が指向性を示す軸αを180°ずらして積層することによって得られる。
【0128】
本実施形態のELディスプレイでは、光透過性基板1の他方の面上に上記のような構成の光学手段20が設けられたことにより、光透過性基板1内に入射した発光層4からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返すような角度で入射した光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光)を散乱および/または回折して位相差板41側に出射し、さらにこれら散乱光および/または回折された光L2を位相差板41、偏光板42を通過させて外部に出射させることができ、しかも他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光)を弱散乱および/または透過して位相差板41側に出射し、さらにこれら弱散乱光および/または透過光L4を位相差板41、偏光板42を通過させて外部に出射させることができるので、等方的な散乱特性を有す散乱層や透明基板の表面に凹凸を設けた従来のものに比べて正面方向(法線方向およびその近傍)の輝度を向上できる。
【0129】
すなわち、本実施形態のELディスプレイでは、広角(臨界角以上)で光透過性基板1に入射した光のうち少なくとも一部の光L1に対しては散乱および/または回折し、狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板1に入射した光L3に対しては影響を与えないあるいは弱影響とすることができる光学手段20をEL素子10の支持基板としての光透光性基板1の表面に設けることによって、全反射条件を回避するとともに正面方向(法線方向Hおよびその近傍方向)に略真っ直ぐ出射されてくる光については散乱しないようにして、発光層4で発光した光を外部に効率良く取り出(放出)しており、これによって正面方向の輝度を向上できる。
【0130】
従って、本実施形態のELディスプレイによれば、正面方向の輝度を向上させたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、表示品質を向上させることができる。また、このようなELディスプレイは、照明装置を別個に設けなくても済むので、照明装置を必要とする液晶ディスプレイに比べて、厚みを薄くできる。また、このELディスプレイの光学手段20側に出てくる光は発光層で発光されたものであるので、この発光体による表示は液晶ディスプレイの表示に比べて視野角が広い。さらに、このELディスプレイは、液晶ディスプレイに比べて応答速度が速いとい利点がある。
【0131】
さらにこの本実施形態のELディスプレイにおいては、EL素子10として、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13とを用いたものであるので、正面方向(法線方向およびその近傍方向)からみたときの表示が明るく、フルカラーのELディスプレイとすることができる。
【0132】
また、本実施形態のELディスプレイにおいては、光学手段20の上記光透過性基板側とは反対側の面上に位相差板(λ/4板)41と、偏光板42が光学手段20側から順に設けられたものであるので、周囲光が強い(明るい)場合に周囲光は1回目に位相差板41を通るときに円偏光し、さらにこの光は電極5で反射して逆向の円偏光で出てくるがこの逆向きの円偏光は偏向板42は通さないため、黒表示を視認できる。
【0133】
なお、本実施形態のELディスプレイにおいては、赤色発光するEL素子11の光透過性電極2Rの膜厚と、緑色発光するEL素子12の光透過性電極2Gの膜厚と、青色発光するEL素子13との光透過性電極2Bの膜厚とは、それぞれ異なるものとされているが、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13のうち、光透過性電極2の膜厚が同じであるものがあってもよいし、全ての光透過性電極2の膜厚が同じであってもよい。
また、本実施形態のELディスプレイにおいては、光透過性電極2は、ITOからなるものとしたが、インジウム亜鉛酸化物(以下、IZOと略記する。)膜からなるものであってもよい。
【0134】
さらに、赤色発光するEL素子11と、緑色発光するEL素子12と、青色発光するEL素子13とが、すべて同じ材質からなる光透過性電極2を有しているものでなくてもよく、ITOからなる光透過性電極とIZOからなる光透過性電極とが混在していてもよい。
【0135】
また、本実施形態においては、EL素子10の一例として、図2及び図3に示すように、光透過性電極2と、正孔輸送層3と、発光層4と、金属電極5とからなるものを例に挙げて説明したが、本発明で用いられるEL素子はこの例に限定されるものではない。
(液晶装置の実施形態)
図12は、本発明のELデバイスを適用したEL照明装置を備えた液晶装置を示した図であり、図12(a)は反射型として使用時の例を示す断面図を示し、図12(b)は透過型として使用時の例を示す断面図である。図13は、図12の液晶装置に備えられたEL照明装置を示した模式拡大断面図である。
【0136】
この実施形態の液晶装置110に、液晶駆動用IC、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての液晶表示装置(液晶装置)が構成される。
【0137】
この実施形態の液晶装置110は、平面視略矩形状で、かつ環状のシール材112を介して互いにセルギャップをあけて対向するように貼り付けられた一対の平面視矩形状の基板ユニット113、114と、これらの間に上記シール材112とともに囲まれて挟持された液晶層115と、一方(図12の上側)の基板ユニット113の上面側に設けられた位相差板119と偏光板116と、他方(図12の下側)の基板ユニット114の下面側に設けられた位相差板156と偏光板157を備えた液晶パネル111と、この液晶パネル111の下側に設けられたバックライト装置としてのEL照明装置160を主体として構成されている。
【0138】
基板ユニット113、114のうち、基板ユニット113は観測者側に向いて設けられる表側(上側)の基板ユニットであり、基板ユニット114はその反対側、換言すると裏側(下側)に設けられる基板ユニットである。
【0139】
上側の基板ユニット113は、例えばガラス等の透明材料からなる光透過性基板117と、基板117の表側(図12では上面側、観測者側)に順次設けられた位相差板119及び偏光板116と、基板117の裏側(換言すると液晶層115側)に順次形成されたカラーフィルタ層120、オーバーコート層121と、該オーバーコート層121において液晶層115側の面に形成された液晶駆動用のストライプ状の複数の電極層123を具備して構成されている。
【0140】
液晶層115は、ツイスト角θtが240度〜255度のネマチック液晶分子から構成されている。
【0141】
なお、実際の液晶装置においては、電極層123の液晶層115側と、後述する下基板側のストライプ状の電極層135の液晶層115側に、各々配向膜が被覆形成されるが、図12ではこれらの配向膜を省略し説明も略するとともに、以下に順次説明する他の実施形態においても配向膜の図示と説明は省略する。また、図12および以下の各図に示す液晶装置の断面構造は、図示した場合に各層が見やすいように各層の厚さを実際の液晶装置とは異なる厚さに調節して示してある。
【0142】
上記上基板側の駆動用の各電極層123は本実施形態ではITO(Indium TinOxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電材料から平面視ストライプ状に形成されたもので、液晶パネル110の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
【0143】
上記カラーフィルタ層120は、本実施形態では上側の基板117の下面(換言すると液晶層115側の面)に、光遮断用のブラックマスク、カラー表示用のRGBの各パターンを形成することにより構成されている。また、RGBのパターンを保護する透明な保護平坦化膜としてオーバーコート層121が被覆されている。上記ブラックマスクは例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚さ100〜200nm程度のクロム等の金属薄膜をパターニングして形成されている。上記のRGBの各パターンは、赤色パターン(R)、緑色パターン(G)、青色パターン(B)が、所望のパターン形状で配列され、例えば、所定の着色材を含有する感光性樹脂を使用した顔料分散法、各種印刷法、電着法、転写法、染色法等の種々の方法で形成されている。
【0144】
一方、下側の基板ユニット114は、ガラスなどの透明材料からなる光透過性基板128と、基板128の表面側(図12では上面側、換言すると液晶層115側)に順次形成された半透過反射層131、オーバーコート層133と、該オーバーコート層133の液晶層115側の面に形成されたストライプ状の駆動用の複数の電極層135と、基板128の裏面側(図12では下面側、換言すると液晶層115側と反対側)に順次形成された位相差板156と、偏光板157から構成されている。これらの電極層135においても先の電極層123と同様に液晶パネル110の表示領域と画素数に合わせて必要本数形成されている。
【0145】
次に、本実施形態の半透過反射層131は、AgまたはAlなどの光反射性かつ導電性の優れた金属材料からなり、基板128上に蒸着法あるいはスパッタ法などにより形成されたものである。また、この半透過反射層131は、液晶パネル111の下側に設けられたEL照明装置160が発した光を通過させるために十分な厚さの半透過反射層、あるいは、反射層の一部に多数の微細な透孔を形成して光透過性を高めた構造など、半透過反射型の液晶表示装置に広く用いられているものを適宜採用することができる。ただし、半透過反射層131が導電材料からなることは必須ではなく、半透過反射層131とは別に導電材料製の駆動用電極層を設け、半透過反射層131と駆動電極を別個に設けた構造を採用して差し支えない。
【0146】
EL照明装置装160は、図12及び図13に示すように、発光層164を介して互いに対向する一対の電極162、165とを備えてなるEL素子210が光透過性基板161の一方の面上に配置され、一対の電極162、165のうち少なくとも光透過性基板161側に位置する方の電極162は光透過性電極から形成され、EL素子210に対して通電可能とされており、EL素子210に通電時に発光層164で発光した光が上記光透過性基板161側に放出されるものである。EL素子210の光透過性電極162と発光層164との間には、光透過性電極162から正孔を注入しやすくする正孔輸送層163が設けられている。
【0147】
EL素子210を構成する各層の材質は、先に述べた実施形態のELディプレイに備えられたEL素子10を構成する各層で用いた材質と同様のものを用いることができるが、特に発光層164は、白色発光が得られる材料からなるものを用いるのが好ましい。
【0148】
また、この光透過性基板161の他方の面(EL素子210が設けられた側と反対側の面)上に光学手段220が設けられている。この光学手段220は光透過性基板161内に入射した発光層164からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものである。ここで用いる光学手段220は、先に述べた実施例のELディスプレイで用いた光学手段20と同様のものが使用される。
【0149】
このようなEL照明装置160は、光学手段220が液晶パネル110側を向くように、すなわち、EL照明装置160は液晶パネル110の下側に配置されて、液晶パネル110の下方側から液晶パネル110に向けて照明光を出射できるようになっている。
【0150】
このEL照明装置160の動作について詳説すると、一対の電極162、165に通電されると、発光層164で発光した光は光透過性基板161側に放出されて、この光透過性基板161に入射するが、この基板161に入射した発光層164からの光のうち全反射を繰り返すような角度で入射した光のうち少なくとも一部の光L1(広角(臨界角以上)で光透過性基板161に入射した光)は光学手段220に至り、この光学手段220で散乱および/または回折されて液晶パネル111側に出射され、これら散乱光および/または回折された光L2は図12において下側から液晶パネル111に向かって照明光として出射される。
【0151】
一方、光透過性基板111に入射した発光層164からの光のうち他の光L3(狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板164に入射した光)も光学手段220に至り、この光学手段220で弱散乱および/または透過して液晶パネル111側に出射され、これら弱散乱光および/または透過光L4は図12において下側から液晶パネル111に向かって照明光として出射される。
【0152】
ここでEL照明装置160は、常に点灯するのではなく、周囲光(外光)が殆どないような場合だけ、使用者あるいはセンサの指示によって点灯するものである。従って、EL照明装置160が点灯している場合には、図12(b)に示すようにEL照明装置160からの光が半透過反射層131を通過することによって、透過型として機能し透過表示を行うことになる一方、EL照明装置160が消灯している場合(周囲光が十分強い)には、図12(a)に示すように液晶パネル111の上面側(偏光板116の表面側)から入射した光Lが半透過反射層131表面で反射することによって、反射型として機能し反射表示を行うことになる。
【0153】
本実施形態の液晶装置に備えられたEL照明装置160は、光透過性基板161の他方の面上に上記のような構成の光学手段220が設けられたことにより、正面方向(法線方向Hおよびその近傍)の輝度を向上できる。
【0154】
本実施形態の液晶装置によれば、正面方向の輝度を向上した本実施形態のEL照明装置160が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0155】
なお、本実施形態においては、EL照明装置160に備えられたEL素子210として、白色発光するEL素子が備えられた場合について説明したが、EL素子210としては、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子と、白色発光するEL素子のいずれか一つ以上が用いられていてもよい。このようなEL照明装置によれば、用いるEL素子によって、あるいは、用いるEL素子の組み合わせにより、赤色あるいは緑色あるいは緑色あるいは白色あるいはその他の色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0156】
また、EL素子210として青色発光するEL素子が用いられ、EL素子210と光透過性基板161の間又は光透過性基板161と光学手段220の間又は光学手段220の表面に、発光層164で青色発光した光を波長変換する手段が設けられたものであってもよい。このようなEL照明装置によれば、白色の光を効率良く放出し、正面方向の輝度を向上した、EL照明装置が得られる。
【0157】
なお、上記実施形態においては本実施形態のEL照明装置が半透過反射型液晶装置に備えられた場合について説明したが、透過型液晶装置に備えられていてもよく、その場合の液晶パネルの構成としては、半透過反射層31を設けない以外は図12に示した液晶パネル111と同様の構成のものを用いることができる。
【0158】
また、実施形態の液晶装置においては、単純マトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に本発明のEL照明装置を備えた場合について説明したが、本発明のEL照明装置を、2端子型スイッチング素子あるいは3端子型スイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型の半透過反射型液晶表示装置に備えるようにしても良いのは勿論である。
【0159】
また、これまで説明した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置においては、上側の基板117と、偏光板116との間に位相差板119が一枚設けられた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、位相差板が複数枚設けた半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
【0160】
また、上記の実施形態においては、下側の基板128の照明装置160側に位相差板と偏光板を設けた半透過反射型液晶表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明を、下側の基板128のEL照明装置160側に位相差板と偏光板を設けていない半透過反射型液晶表示装置に適用しても良いのは勿論である。
[電子機器の実施形態]
次に、上記実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
【0161】
図14(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図14(a)において、500は携帯電話本体を示し、501は図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。
【0162】
図14(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図14(b)において、600は情報処理装置、601はキーボードなどの入力部、603は情報処理本体、602は上記の図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。図14(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図14(c)において、700は時計本体を示し、701は上記の図1乃至図3に示した実施形態のELディスプレイ又は図12乃至図13に示した実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置を備えたEL表示部(表示手段)を示している。
【0163】
図14(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられたものであるので、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【0164】
【実施例】
「試験例1」
図15(A)に示すような光学特性を示す実施例の光学フィルムを複数枚作製した。図15中、横軸は光学フィルムの回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。この図15(A)の曲線で示すような光学特性は、図15(B)の光学フィルムのA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸α2である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。
【0165】
そして、図15(A)に示す光学特性を有する光学フィルムを1枚から4枚用いて光学手段を作製した。複数の光学フィルムを用いる場合は、その指向性の軸α2を45度づつずらして積層して光学手段とした。このようにして作製した光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表1に示した。なお、表1において光学フィルムの枚数が0のときは、光学フィルムを設けていない場合である。
【0166】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表2に示した。
表1、表2に示した結果から、実施例の光学フィルムを光学手段として用いたELディスプレイは、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くでき、明るい表示が得られることがわかる。また、実施例の光学フィルムを複数枚用い、指向性の軸をずらして積層した光学手段を用いたELディスプレイにおいては、光学フィルムの枚数が多くなるに従ってその正面輝度も高くでき、明るい表示が得られることがわかる。
【0167】
「試験例2」
図17(A)に示すような光学特性を示す実施例の光学フィルムを複数枚作製した。図17中、横軸は光学フィルムの回転角度(傾斜角度)であり、縦軸は平行線透過率(T%)である。この図17(A)の曲線で示すような光学特性は、図17(B)の光学フィルムのA−B方向の特性であり、このA−B方向が平行線透過率が指向性を示す軸α1である。ここでの光学特性は、上述の図7に示した測定系を用いて同様に測定したものである。
【0168】
そして、図17(A)に示す光学特性を有する光学フィルムを1枚から8枚用いて光学手段を作製した。複数の光学フィルムを用いる場合は、その指向性の軸α1を図16に示すように45度づつずらして積層して光学手段とした。このようにして作製した光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表3、表4に示した。なお、表3において光学フィルムの枚数が0のときは、光学フィルムを設けていない場合である。
【0169】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表5に示した。
表3乃至表5に示した結果から、実施例の光学フィルムを光学手段として用いたELディスプレイは、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くでき、明るい表示が得られることがわかる。また、実施例の光学フィルムを複数枚用い、指向性の軸をずらして積層した光学手段を用いたELディスプレイにおいては、光学フィルムの枚数が多くなるに従ってその正面輝度も高くでき、明るい表示が得られることがわかる。
「試験例3」
ホログラム技術により作製した光学フィルムを複数枚して光学特性が異なる各種の光学手段を作製した。作製した各種の光学手段の臨界角度以上のヘイズ(%)と、臨界角度未満の範囲のヘイズ(%)を測定した。ここでのヘイズの測定は、図7に示す測定系を用いて測定した前方散乱光(拡散透過光)、入射光Lの光強度から算出した拡散透過率を全光線透過率で除算して%表示したものである。
【0170】
そして、作製した各種の光学手段を図1乃至図3に示したELディスプレイに備えた場合に、このELディスプレイの正面輝度を測定した。その結果を以下の表6、表7、表8に示した。なお、表8は図1乃至図3に示したELディスプレイに光学手段を設けていない場合である。
【0171】
また、比較のために透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例のELディスプレイ(図18の従来のELディスプレイにおいて散乱層820を設ける代わりに透明基板801の表面を粗くして凹凸を設けたもの)の正面輝度を測定した。その結果を以下の表9に示した。
表6乃至表9に示した結果から、臨界角以上の範囲のヘイズが50%以上の光学手段が設けられたELディスプレイは、光学手段が設けられていないELディスプレイ(表8)や、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くできることがわかる。また、特に臨界角以上の範囲のヘイズが60%以上の光学手段が設けられたELディスプレイは、比較例のELディスプレイに比べて正面の輝度が2割以上明るくなることがわかる。
【0172】
また、臨界角未満の範囲のヘイズが20%以下の光学手段が設けられたELディスプレイは、光学手段が設けられていないELディスプレイ(表8)や、透明基板の表面を粗くして凹凸を設けた比較例(従来)のELディスプレイに比べて正面の輝度を高くできることがわかる。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のELデバイスによれば、発光層で発光した光のうち狭い角度(臨界角未満)で光透過性基板に入射した光は低散乱で外部に放出でき、しかも広角(臨界角以上)で光透過性基板に入射した光を外部に放出でき、正面方向(法線方向およびその近傍方向)の輝度を向上できる。
【0174】
また、本発明のELディスプレイによれば、このような正面方向の輝度を向上させた本発明のELデバイスをELディスプレイとして用いたことにより、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0175】
また、本発明の液晶装置は、正面方向の輝度を向上させた本発明のEL照明装置が備えられたものであるので、明るい表示が得られ、表示品質を向上させることができる。
【0176】
また、本発明の電子機器は、正面方向の輝度を向上させた本発明のELディスプレイ又はEL照明装置を用いた液晶装置が備えられたものであるので、優れた表示品質が得られる表示手段を備えた電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のELデバイスをELディスプレイに適用した一実施形態例の説明図であり、基板側から見た平面図である。
【図2】図1のELディスプレイの一部を示した概略断面図であり、図1のA−A’断面図である。
【図3】図1のELディスプレイの要部を示した図であり、1個のEL素子およびこれの周辺部分を示した模式拡大断面図である。
【図4】図1のELディスプレイに備えられた光学手段の作用を示す模式図である。
【図5】図1のELディスプレイに備えられた光学手段の他の作用を示す模式図である。
【図6】本実施形態で用いられる光学手段とこれを構成する光学フィルムの光学特性を示す図である。
【図7】平行線透過率を測定する際の光学手段と光源と受光部の位置関係を示す説明図である。
【図8】光学手段に対する入射光と平行線透過光、拡散透過光、並びに後方散乱光と前方散乱光の関係を示す説明図である。
【図9】本実施形態で用いられる光学手段を構成するホログラム技術により作製された光学フィルムの断面構造例を示す模式図である。
【図10】図9のホログラム技術により作製された光学フィルムを用いて目的とする光学手段の作製する方法を示す模式図である。
【図11】本実施形態のELディスプレイに備えられた光学手段の散乱及び/または回折特性を示す図である。
【図12】本発明のELデバイスを適用したEL照明装置を備えた液晶装置の説明図であり、図12(a)は反射型として使用時の例を示す断面図、図12(b)は透過型として使用時の例を示す断面図である。
【図13】図12の液晶装置に備えられたEL照明装置を示した模式拡大断面図である。
【図14】本発明の実施形態のELディスプレイ又は実施形態のEL照明装置が備えられた液晶装置が備えられた電子機器の例を示すもので、図14(a)は携帯型電話機を示す斜視図、図14(b)は携帯型情報処理装置の一例を示す斜視図、図14(c)は腕時計型電子機器の一例を示す斜視図である。
【図15】図15(A)は実施例の光学フィルムの光学特性を示す図、図15(B)は図15(A)の光学特性を測定した方向の説明図である。
【図16】実施例の光学フィルムの積層方法の説明図で、この光学フィルムを積層して得られた光学手段を上方から見たときの指向性の軸の位置関係を示す図である。
【図17】図17(A)は実施例の光学フィルムの光学特性を示す図、図15(B)は図17(A)の光学特性を測定した方向の説明図である。
【図18】従来のELディスプレイの例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1、161・・・光透過性基板
10、11、12、13、210・・・EL素子
2、162、2R、2G、2B・・・光透過性電極
3、163・・・正孔輸送層
4、4R、4G、4B、164・・・発光層
8・・・隔壁
20・・・光学手段
21・・・光学フィルム
41・・・位相差板(λ/4板)
42・・・偏光板
110・・・液晶装置
111・・・液晶パネル
160・・・EL照明装置
L1、L3…入射光
L2・・・散乱光および/または回折された光
L4・・・弱散乱光および/または透過光
L5・・・平行線透過光
H・・・法線方向
α、α1、α2・・・指向性を示す軸
β1・・・光透過性基板の法線方向からの傾き角
β2・・・光学手段の法線方向からの傾き角
20a・・・臨界角以上を示す領域
20b・・・臨界角未満を示す領域
500・・・携帯電話本体
501・・・EL表示部(表示手段)
600・・・情報処理装置
601・・・入力部
602・・・EL表示部(表示手段)
603・・・情報処理本体
700・・・時計本体
701・・・EL表示部(表示手段)
Claims (28)
- 発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなる複数のEL素子が光透過性基板の一方の面上にマトリクス状に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、前記EL素子に対して個別通電可能とされており、前記EL素子に通電時に前記発光層で発光した光が前記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
前記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とするELデバイス。 - 発光層を含む少なくとも1つの有機層と該有機層を介して互いに対向する一対の電極とを備えてなるEL素子が光透過性基板の一方の面上に配置され、前記一対の電極のうち少なくとも光透過性基板側に位置する方の電極は光透過性電極から形成され、前記EL素子に対して通電可能とされており、前記EL素子に通電時に前記発光層で発光した光が前記光透過性基板側に放出されるELデバイスであって、
前記光透過性基板の他方の面上に光学手段が設けられ、該光学手段は前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち少なくとも一部の全反射を繰り返す光を散乱および/または回折して外部に出射し、他の光を弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とするELデバイス。 - 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光の少なくとも一部は強散乱および回折して外部に出射し、臨界角未満の入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)なる条件(式中、β1は前記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は前記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧sin−1(1/m1)−10°なる条件(式中、β1は前記光透過性基板の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m1は前記光透過性基板の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<sin−1(1/m1)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は前記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β1=0なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうちβ1≧40°なる条件(式中、β1は前記光透過性基板の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β1<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記発光層から前記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)なる条件(式中、β2は前記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記発光層から前記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧sin−1(1/m2)−10°なる条件(式中、β2は前記光学手段の法線方向からの傾き角、1は空気の屈折率、m2は光学手段の屈折率である。)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<sin−1(1/m2)−10°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記発光層から前記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は前記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は強散乱および/または回折して外部に出射し、β2=0°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記発光層から前記光透過性基板を経て該光学手段に入射した光のうちβ2≧40°なる条件(式中、β2は前記光学手段の法線方向からの傾き角)を満たす入射光の少なくとも一部は散乱および/または回折して外部に出射し、β2<40°なる条件を満たす入射光は弱散乱および/または透過して外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光透過性基板の屈折率m1 と光学手段の屈折率m2 は同じ大きさかあるいは略等しい大きさであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光透過性基板の屈折率m1と光学手段の屈折率m2 は、m1≦m2なる関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、前記光透過性基板内に入射した発光層からの光のうち臨界角以上の入射光はヘイズ50%以上で外部に出射し、臨界角未満の入射光はヘイズ20%以下で外部に出射するものであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のELデバイス。
- 前記光学手段は、複数枚の光学フィルムを積層して形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の記載のELデバイス。
- 前記複数枚の光学フィルムは平行線透過率が指向性を示す軸をずらして積層されたことを特徴とする請求項17記載のELデバイス。
- 前記光学フィルムは、ホログラムであることを特徴する請求項17又は18に記載のELデバイス。
- 請求項1又は請求項3乃至19のいずれか一項に記載のELデバイスを用いたELディスプレイ。
- 前記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子とを用いることを特徴とする請求項20に記載のELディスプレイ。
- 前記光学手段の前記光透過性基板側とは反対側の面上に位相差板と、偏光板が前記光学手段側から順に設けられたことを特徴とする請求項20又は21に記載のELディスプレイ。
- 請求項2又は請求項3乃至19のいずれか一項に記載のELデバイスを用いたEL照明装置。
- 前記EL素子として、赤色発光するEL素子と、緑色発光するEL素子と、青色発光するEL素子と、白色発光するEL素子のいずれか一つ以上が用いられることを特徴とする請求項23に記載のEL照明装置。
- 前記EL素子として青色発光するEL素子が用いられ、前記EL素子と前記光透過性基板の間又は前記光透過性基板と前記光学手段の間又は前記光学手段の表面に、前記発光層で青色発光した光を波長変換する手段が設けられたことを特徴とする請求項23に記載のEL照明装置。
- 一対の基板と、これらの基板間に挟持された液晶層とを具備した液晶パネルと、該液晶パネルの一方の基板の液晶層とは反対側に設けられた前記請求項23乃至25のいずれか一項に記載のEL照明装置とが備えられてなることを特徴とする液晶装置。
- 前記液晶パネルは、一方の基板の液晶層側に半透過反射層が設けられていることを特徴とする請求項26に記載の液晶装置。
- 請求項20乃至22のいずれか一項に記載のELディスプレイ又は請求項26又は27に記載の液晶装置を表示手段として備えたことを特徴とする電子機器。
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