JP2004093330A - 反応検出チップ及び反応検出チップの作製方法と検出システム - Google Patents
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Abstract
【課題】遺伝子診断及び生理機能診断等に使用される多数の機能分子の認識を可能にする反応検出チップ及びその作製方法と分析システムを提供する。
【解決手段】担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成したオリゴヌクレオチドをプローブ分子として用いることを特徴とする反応検出チップ。担体は多孔質担体であり、それは分相型多孔質ガラスであること、前記活性分子は分子構造中にアミノ基を有する各種のアミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネートの内の1ないし複数種であること、前記プローブが固定された担体を化学的、機械的に安定な素材からなる基板上に、該基板に設けた1つ若しくは1つ以上の複数の微小区分の1つ以上の区分に配列結合固定させることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成したオリゴヌクレオチドをプローブ分子として用いることを特徴とする反応検出チップ。担体は多孔質担体であり、それは分相型多孔質ガラスであること、前記活性分子は分子構造中にアミノ基を有する各種のアミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネートの内の1ないし複数種であること、前記プローブが固定された担体を化学的、機械的に安定な素材からなる基板上に、該基板に設けた1つ若しくは1つ以上の複数の微小区分の1つ以上の区分に配列結合固定させることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子診断及び生理機能診断等に使用される多数の機能分子の認識を可能にする反応検出チップ及びその作製方法並びに分析システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子の変異、特に一塩基多型(塩基配列における一塩基の変異)の検出は、突然変異等に起因する疾患、例えば、ガンの診断等に有効なだけでなく、多因子疾患の病因関連遺伝子の解析や予測医療にも貢献し、個々人の薬剤応答性や副作用の程度を調べる上にも必要である。また、遺伝子の発現状況、すなわち、遺伝子情報がmRNAに読み取られ対応するタンパク質が作られる状況を調べることは、遺伝子レベルで生命現象や病気を理解し、新薬を開発する上に非常に重要である。この遺伝子変異、あるいは、遺伝子の発現状況を速やかに検出する手段として、「DNAチップ」と言われる分析手段が有効であることが知られている。
【0003】
ここで言う「DNAチップ」とは、検体である各種DNAとそれぞれ特異的に結合する性質を有する分子をプローブとし、これらの各種プローブを基板の表面上に、各々の区画に対応させて配列し固定したものである。プローブが固定された表面に、検体DNAを含む試料を接触させ、検体DNAと対応するプローブ間で結合を起こさせる。そして、例えば、検体DNAに予め付加した蛍光標識からの蛍光を検出することにより、プローブと結合した検体DNAを同定し、かつ、定量することができる。通常、プローブと検体DNAの結合は、特定の対応する塩基間で水素結合する性質、すなわち、ハイブリダイゼーションを利用したものである。よって、プローブは、一本鎖にした検体DNAに対し相補的な塩基配列を有する一本鎖のcDNAあるいはオリゴヌクレオチドである。
【0004】
このDNAチップのプローブには、生体を代表とする天然物由来のmRNAから逆転写酵素反応を利用して作られるいわゆる「cDNA」タイプと、オリゴヌクレオチドの塩基配列を一つずつ化学反応を利用して合成するいわゆる「オリゴヌクレオチド」タイプに分かれる。現在は、プローブ設計自由度の高い合成「オリゴヌクレオチド」タイプが主流になりつつある。合成「オリゴヌクレオチド」タイプを用いた「DNAチップ」は大きく2種類に分かれる。1つは、「オリゴヌクレオチド」合成用の担体上にオリゴヌクレオチド鎖を合成したのち担体から切り離し精製し、固定用の担体に固定しプロープとして用いる方法(本明細書では“間接プローブ合成法”と呼ぶことにする)である。もう1つは、固定用の担体に直接オリゴヌクレオチド鎖を合成し、そのままプロープとして用いる方法(本明細書では“直接プローブ合成法”と呼ぶことにする)である。
【0005】
間接プローブ合成法の一例を以下に示す。まず、合成用の担体上にオリゴヌクレオチドを合成し、担体から切り離した後、例えばHPLC精製を行う。それから、精製後のオリゴヌクレオチドの末端に適当なリンカーを付加する。そして、このリンカー付きオリゴヌクレオチドを、官能基を導入したスライドガラス等の固定用担体上に高密度にスポットする。リンカーと官能基が結合し、合成したオリゴヌクレオチドがプローブとして固定されるという方法である。
【0006】
間接プローブ合成法の問題点は、たとえ精製工程を経ても、リンカーを付加する段階でオリゴヌクレオチドが変質し、プローブとしての信頼性が低下する懸念があることである。また、合成用担体からの切り離し→精製→リンカー付加→固定用担体への固定、と複雑な操作を経るため、プローブ作製に手間と時間がかかり、ひいてはDNAチップの製造コストが高価になる傾向がある。
【0007】
一方、直接プローブ合成法は、上記のようなオリゴヌクレオチドに対するリンカー導入が無いため、信頼性の高いプローブを提供できる。また、プローブ作製に手間と時間がかからないので、DNAチップの製造コストを下げる可能性がある。
【0008】
直接プローブ合成法の1つに、合成法として光化学反応を利用し、リソグラフイー技術を駆使して選択的に光化学反応を起こさせ、シリコンもしくはガラス基板上の多数の区画領城に、設計された配列のオリゴヌクレオチドを1塩基づつ合成して行く方法(Science 251,767(1991))があり、Affymetrix杜がこの方法を用いて「ジーンチップ」と呼ばれるDNAチップを製造している。
【0009】
直接プローブ合成法なのでプローブの変性操作がない点は優れている。ただし、オリゴヌクレオチドを合成する場所がシリコンウェハーやガラスなどの基板であるところに問題がある。基板に、担体の機能と合成場の機能を完全に両立させることは、一般に不可能である。よって、基板は、合成場として最適な環境にはなくオリゴヌクレォチドの合成収率は低下し、プローブの信頼性は低下することになる。また、この方法は、少品種のDNAチップを大量生産するには好適だが、パターンを変えるためにはフォトマスクを新たに作らなければならず、必要に応じた各種デザインのDNAチップをフレキシブルに製造するには不向きである。また、フォトリソグラフィーの装置とフォトマスクは高価であるため、相当数のDNAチップが製造されない限り、製造コストは高価になってしまう。
【0010】
また、同じ様な手法として基板上のそれぞれの区画において、インクジェットなどの方法を用いて異なるオリゴヌクレオチドを合成する手法も報告されているが、これもAffymetix杜の場合と同じく合成場として最適な環境にはない。
【0011】
もう一点の問題点として上記2法は共通して基本的に一枚ずつ合成していくために、製造のスケールメリットを出すことが出来ないことと、それぞれのスポットに使われるオリゴヌクレオチドの品質保証がしにくいことも挙げられる。
【0012】
本発明者等は、上述したDNAチップの問題点の改善を意図して、「多孔質粒子を担体として選び、担体表面にプローブを付け、このプローブ付き多孔質粒子を基板上に配列させ固定するDNAチップ」(特開2001−281251、特開2002−98697)などの反応検出チップを提案してきた。そして、これらの発明において、直接プローブ合成法に限定した「多孔質粒子を担体として選び、担体表面に固相反応を利用してオリゴヌクレオチドを合成し、この合成オリゴヌクレオチド付き多孔質粒子を基板上に配列させ固定するDNAチップ」を最適な形態として提案してきた。
【0013】
本発者等が提案してきた直接プロープ合成法の利点を、上述した他のDNAチップの問題点と比較して述べると以下のようになる。
(1)直接プローブ合成法なので、オリゴヌクレオチドにリンカーを付加させる必要がないためオリゴヌクレオチドの変質が起こらず、プローブの信頼性が保たれる。
(2)オリゴヌクレオチドを合成する場所が基板ではなく多孔質担体という最適な合成場であるため、合成収率が向上し、プローブの信頼性が高くなる。
(3)プローブ付き多孔質担体という形態で各種のプローブを作製し保存しておき、要求されるDNAチップのプローブ種に対応して同担体を選択し、決められたプローブ配置に対応して同担体を基板上に固定することができる。よって、DNAチップのデザインに対して自由度が極めて高く、多品種のDNAチップを簡便かつ安価に作製できる。
【0014】
(4)フオトリソグラフィーのような高価な手段を用いる必要がないので、製造コストの低下が図れる。
多孔質ガラス担体は合成場が多孔質の孔であるため、外界からの物理的影響が少なく、夾雑物との副反応も防止されると考えられる。また、多孔質ガラスはオリゴヌクレオチド合成において最適な合成場であることは良く知られており、分相性多孔質ガラスの一種である「CPG」は標準的なオリゴヌクレオチド合成担体として広く使われている。また、多孔質担体は、表面積が大きいため、固定できるプローブ数が増大し、検出感度が向上する利点も有する。
(5)プローブ付き多孔質担体という「半製品」状態で品質管理を行うことができるので、「最終製品」であるDNAチップの品質保証が容易になる。
【0015】
また、研究者からオリゴヌクレオチドを無孔性粒子に固定し、この粒子を基板、キャピラリーや溝に配列させるDNAチップが提案されている(特開平11−243997)。オリゴヌクレオチドを固定するのに相応しい場を配列場とは別に設けるという点は本発明者等の発明と共通であるが、間接プローブ合成法を採用している点や、粒子は配列されているが固定されておらず、本発明とは異なる。すでに述べたとおり、本発明者等は、直接プローブ合成法に優位性を見出しており、プローブを固定する担体と基板を分離する方法は、直接プローブ合成法を採用することにより多くの利点が生まれると考えている。
【0016】
このように、本発明者等が提案する直接プローブ合成法によるDNAチップは製造時間・製造コストともに抑制でき、多品種対応が可能であり、かつ、検出信頼性が高いため、非常に実用的であると言える。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
オリゴヌクレオチド合成に使用するホスホアミダイトには、合成中に反応してはならない部位に結合が起こるのを防ぐために、反応してはならない部位の官能基に保護基を予め結合させる。この保護基は、検体DNAとのハイブリダイゼーションを阻害するので、ホスホアミダイトの縮合反応サイクルでの長鎖化の後、アンモニア処理等で除去しなければならない。ところが、この脱保護の際、担体との結合が弱い場合は、オリゴヌクレオチド鎖そのものが担体から離脱してしまう。
【0018】
担体に結合したオリゴヌクレオチド鎖を切り離して使用するのではなく、そのままプローブとして使用する直接プローブ合成法においては、合成したオリゴヌクレオチド鎖は、脱保護処理時において、担体に確実に固定されていなければならない。よって、プローブとして利用されるオリゴヌクレオチドを担体上に固相法を用いて合成する際、担体との結合を強固にし、脱保護基処理時において、合成されたオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することがないようにすることが本発明の課題である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段により前記の課題を解決した。
(1)担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接合成したオリゴヌクレオチドをプローブ分子として用いることを特徴とする反応検出チップ。
(2)前記担体が多孔質担体であることを特徴とする前記(1)記載の反応検出チップ。
(3)前記多孔質担体は分相型多孔質ガラスであり、前記活性分子は分子構造中にアミノ基を有する各種のアミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネートの内の1ないし複数種であることを特徴とする前記(2)に記載の反応検出チップ。
【0020】
(4)前記多孔質担体は細孔径10nm〜1μmである分相型多孔質ガラスであることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の反応検出チップ。
(5)前記プローブが固定された前記担体を化学的、機械的に安定な素材からなる基板上に、該基板に設けた1つ若しくは1つ以上の複数の微小区分の1つ以上の区分に配列結合固定させることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
(6)基板がガラス、シリコンウェハー、サファイアガラス、焼結アルミナ、焼結ジルコニアより選ばれるセラミック材料であることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
【0021】
(7)基板がポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、ナイロン樹脂より選ばれる有機質材料であることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
(8)基板がアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼からなる群より選ばれる金属材料の一つであることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
(9)基板が、平板状、フイルム状、ひも状、リボン状、糸状、球状、パイプ状、櫛形、カプセル状、不定形であることを特徴とする前記(5)〜(8)のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
【0022】
(10)担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接、ホスホアミダイト法によりオリゴヌクレオチドを合成してプローブ分子を形成した該多孔質担体を基板上に、該基板に設けた複数の微小区分の1つ以上の区分に、配列結合固定させることを特徴とする反応検出チップの作製方法。
(11)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の反応検出チップを用いることを特徴とする分析システム。
【0023】
本発明者等は、直接プローブ合成法を採用している。よって、オリゴヌクレオチド合成における最初のヌクレオチドと担体の間に強い結合法が必要になる。
この目的のため、本発明では、担体に導入した活性分子のアミノ基に、最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合により直接結合させることを提案する。
【0024】
通常オリゴヌクレオチド合成においては、担体に導入したアミノ基にコハク酸をアミド結合させ、このコハク酸に最初のヌクレオチドをエステル結合させることが一般的に行われている。この方法だと、脱保護処理時において、エステル結合の部分またはアミド結合の部分が加水分解により切り離され、オリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱してしまう。
【0025】
そこで、コハク酸を介することなく、最初のオリゴヌクレオチドをアミノ基に直接リン酸アミド結合させるように変更する。リン酸アミド結合は、エステル結合またはアミド結合と異なり、アンモニア処理等に対し十分安定な結合である。よって、脱保護処理時において結合が切れることはない。すなわち、この方法により合成されたオリゴヌクレオチドプローブは、脱保護処理時に担体から離脱することが完全に防止されるので、高い信頼性が得られる。
【0026】
多孔質ガラス等の担体上に固相法を用いて合成したオリゴヌクレオチドを、担体に強固に結合させるための手法は、オックスフォード・ジーン・テクノロジー・リミテッドからも提案されている(特表平4−500671)。担体に脂肪族ヒドロキシル基を導入し、最初のヌクレオチドをこのヒドロキシル基とホスフォジエステル結合させて固定する手法が提案されており、この固定により脱保護処理時においてオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することはないと述べられている。
【0027】
ガラス担体に脂肪族ヒドロキシル基を導入する際、一回の反応で済ますことのできる適当な分子は一般に存在しない。上記発明においても、まず、担体にエポキシ基を導入し、このエポキシ基に、ヒドロキシル基を含む分子を結合させることによりヒドロキシル基を導入する例が記載されてある。一方、アミノ基を担体に導入する場合は、アミノシラン等の分子を担体に対し一回反応させるだけで済む。このように手間が少ないという点で、アミノ基を用いる結合はヒドロキシル基を用いる結合より合成し易い。
【0028】
また、プローブとしての性能いう観点から、アミノ基で結合した合成オリゴヌクレオチドとヒドロキシル基で結合した合成オリゴヌクレオチドを、ハイプリダイゼーション試験により比較してみた。ハイプリダイゼーション後の蛍光強度を比較した結果、前者の方が、約1.5倍感度の高いブローブになっていることが判明した。アミノ基を用いる結合の方が、脱保護処理時におけるオリゴヌクレオチドの離脱防止に対して、より確実であったと予想している。
【0029】
オックスフォード・ジーン・テクノロジー・リミテッドの提案では、オリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス粒子を液体中に浮遊させて検出に用いる。一方、本発明の提案では、オリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス担体を基板に固定して用いるところに大きな特色がある。基板に固定することにより、設計自由度の高い反応検出体(チップ)になり得る。
【0030】
直接合成したプローブを担体に強固に結合させる手法に関しては、Beckman Instruments社からも報告されている(Anal.Biochem, 217,306(1994))。無水アンモニアの存在下でプラズマ放電することによりポリプロピレン担体上に導入したアミノ基から直接オリゴヌクレオチドの合成を開始し、合成オリゴヌクレオチド鎖を担体に強固に固定する手法である。
【0031】
最初のヌクレオチドをアミノ基とリン酸アミド結合させる点は、本発明の提案と共通している。ただし、担体にポリプロピレンを選択し、プラズマ処理によりアミノ基を直接導入する点が異なっている。本発明では、多孔質ガラス体、例えば粒子を好適な担体として選択し、アミノシラン等の溶液の接触により活性分子を介してアミノ基を導入することを提案している。このことにより、アミノ基密度のコントロール性などの優れた特性が出ると同時に、アミノ基と担体の間の分子構造を各種選べるので、検出に最適なプローブ分子構造設計が行いやすい。
【0032】
本発明では、オリゴヌクレオチドをプローブとして付けた担体を基板に配列固定してDNAチップを製造することに特色があるため、担体は基板に比し小さいもの、例えば微細粒子が好ましいが、目的によってはタイル状などでも良い。そして、固定するプローブ数を増大させ感度を上げるための表面積拡大、合成時における外界からの物理的影響の減少、夾雑物との副反応防止という観点から、担体は多孔質であることが好ましい。この孔を合成に相応しい滑らかな曲面で形成し、かつ、制御性良く仕上げるには、ガラスが材質として最適である。よって、本発明では、担体に多孔質ガラス担体を選択するのがよい。また、多孔質担体の表面に一様にアミノ基を導入するには、溶液接触が確実で簡便な手段である。
【0033】
以上説明してきたように、本発明は、固相法による直接オリゴヌクレオチド合成に好適な担体である多孔質ガラス担体表面に導入されたアミノ基上に、最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合により直接結合させてそれを起点としてオリゴヌクレオチドを合成し、このオリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス担体を基板に配列固定してDNAチップを作製するところに特色がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明は、(1)多孔質ガラス、シリカゲル、イオン交換樹脂などの結合性表面を持つ多孔質担体上に活性分子を介してアミノ基を導入し、その後固相法を用いて目的とする塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを直接合成する。(2)合成したオリゴヌクレオチドを結合したプローブ多孔質担体を、別に用意した基板に結合し反応検出チップとして使用することを最も好適な態様とする。
【0035】
多孔質担体の材質としては、合成場になる孔表面が合成に相応しい滑らかな曲面で形成され、かつ、制御性良く仕上げられるという点で多孔質ガラスが最適である。結合反応は、主に、多孔質の細孔内表面で起こるので、多孔質担体の細孔は、検体DNAが拡散により充分入り込める大きさでなければならず、概ね、10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは50nm〜100nmである。
【0036】
最初に、多孔質担体表面に活性分子を介してアミノ基を導入する。この導入は、アミノ基を有する活性分子が含まれる溶液を多孔質担体表面に接触させることによりなされ、この手段は本発明のポイントになる箇所である。この活性分子は、アミノ基を有するとともに、多孔質担体表面に存在する官能基と結合する性質を持つ官能基を有する必要がある。多孔質ガラスの場合は、多孔質表面の官能基はシラノール基である。よって、活性分子は、シラノール基と結合する性質を持つ官能基を有するものとなり、アミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネート等が侯補になる。これらはシラノール基と脱アルコール縮合して結合する。また、アミノアルコール、アミノフェノール等を用い、シラノール基と脱水縮合させてアミノ基を導入する方法も考えられる。
【0037】
続いて、最初のヌクレオチド、すなわち、設計された塩基配列の1番目の塩基を有するヌクレオチドに対応するホスホアミダイトを、導入したアミノ基に直接リン酸アミド結合させる。それから先の手順は、通常のホスホアミダイト法に従う。
【0038】
合成直後のオリゴヌクレオチド鎖には、各塩基、各リン、最終のホスホロアミダイトの末端部に保護基が残存しているので、アンモニア処理等でこの保護基を除去する。最初のヌクレオチドがアミノ基とリン酸アミド結合により強固に結合しているので、この脱保護処理時において、オリゴヌクレオチド鎖は担体から離脱することはなく担体上に保持される。こうして、オリゴヌクレオチド鎖が強固に固定された多孔質担体が得られる。
【0039】
次に、この多孔質担体を基板に配列結合固定する。多孔質担体における細孔内部表面を保護する目的で、若干の水分などの保護液を含ませた後、結合性を持つ無機基材、例えばシリカゾルを加えスラリー状にして、ディスペンサーを用い配列する方法がある。この方法は、少量のDNAチップを製造するのには好適だが、大量生産するには印刷インク状にして多色刷りの手段を用いるのが良い。
これらの手法を用いる場合、多孔質担体の大きさは、粒径1μm〜1mmあればよいが、スラリーまたはインク状にする場合には、粒径1μm〜100μmの粒子状が好ましく、特に粒径3μm〜20μmが好ましい。
【0040】
多孔質担体を固定する基板に関しては、検出システムに対して変化しないこと、多孔質担体を固定するのに適した表面特性を有することが要求とされるので石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、シリコンウェハなどの無機基板が好ましい。多孔質担体粒子との結合方法を工夫することにより、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルムなどの有機基板を用いることもでき、場合によっては、紙類を用いることも可能である。また、基板表面には、担体結合剤との親和性等を調整する目的で、適当な表面処理を施す場合もある。
【0041】
基板の形状には特に制限はなく、例えば板、フイルム又はシートのような平板状のものが一般的であるが、それ以外の3次元形状例えば立方体、棒状、紐状、球状等であっても構わない。平板状の場合、厚みは、形状安定性を考慮し適宜決められる。また、大きさは、基板表面上に設けられる微小区分(同一プローブの集合領域)の規模、数で決められる。この微小区分の数は、1cm2当たり100個以上とすることができ、多孔質担体のサイズおよび基板への固定法を工夫すれば、1000個以上にすることも可能である。
【0042】
以上はプローブ分子を固定化する担体として粒子を用いた場合であるが、担体はタイル状やその他の形状.でも良く、該担体とは別に用意した基板・基材に固定する点が共通で有れば良いことは云うまでもない。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例を説明する全図において、同一機能を有する構成要素は同一符号を用いて示す。
【0044】
(実施例1)
平均粒径10μm、細孔径100nmの多孔質ガラス粒子を担体とし、トルエン中にN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを溶解した溶液に同担体を浸し、溶液温度110℃で数時間保つ。同アミノシランが担体表面のシラノール基と脱メタノール反応により結合することにより、担体表面にアミノ基が導入される。このアミノ化多孔質ガラス粒子1に、オリゴヌクレオチドの最初のヌクレオチドに対応するβ−シアノエチルホスホアミダイトを接触させ、アミノ基とリン酸基の間にリン酸アミド結合をさせることにより、担体に最初のヌクレオチドを固定する。以下、通常のホスホアミダイト法によりオリゴヌクレオチドを合成する。続いて、合成オリゴヌクレオチド付き担体をアンモニア溶液に数時間浸し、オリゴヌクレオチドに付加している保護基を除去する。最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合で強固に担体に固定したため、この脱保護処理においてオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することは完全に防止される。脱保護処理後、合成オリゴヌクレオチドが固定された担体を、メタノール、トルエンで洗浄する。
【0045】
この手法により、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意し、それぞれ純水に分散させ、この分散液にシリカゾルを加えて各種スラリーを調合する。そして、表面に1mm角の区画を有する、ホウケイ酸ガラス製のスライドガラス基板3(約2cm×7.5cm)を用意する。図1に示す担体粒子固定用装置(ディスペンサー)の担体粒子固定用極細キャピラリー4を用いて、1mm角のそれぞれの区画に対応するスラリーを滴下する。シリカゾルのゲル化によりオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をスライドガラス基板3に固定する。
こうして、本発明の反応検出チップが作製される。
【0046】
この反応検出チップに、予め蛍光標識した検体DNAを含む検体溶液を接触させ、ハイブリダイゼーション反応を起こさせる。検体DNAは、この検体DNAと相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブに捕獲されるので、蛍光を発するプローブからの蛍光強度を検出することにより同定・定量することができる。この蛍光検出システムは、通常図4に示すように、励起光源10、可動基板台11、ミラー12、対物レンズ13、蛍光検出装置14から構成される。励起光をハイブリダイゼーション済反応検出チップ9上の所定の区画に照射し、発生する蛍光を対物レンズ13により集光し、励起光を分離して蛍光のみを蛍光検出装置14に導き、蛍光強度を測定する。励起光と蛍光の分離は、図4のように、小さいミラー12を用いるほか、波長分離ビームスプリッターを用いる方法もある。
【0047】
本実施例において、アミノ基を導入するためのアミノシランとして、N−(2−アミノエチル)−3−アミプロピルトリメトキシシランを用いたが、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン等を用いることも可能である。アミノ基と、メトキシないしエトキシ基を有することがポイントである。そして、メトキシないしエトキシ基がガラス担体表面のシラノール基と脱アルコール反応により結合した時、アミノ基がガラス担体表面からある程度離れる(アミノシランのシリコンから直鎖炭素3結合分以上)ものであることが好ましい。合成したオリゴヌクレオチドがガラス担体表面に近すぎると、ガラス担体表面の化学活性が検体DNAとのハイブリダイゼーションを阻害するからである。
【0048】
また、アミノ基を導入するのに、アミノシランではなく、アミノチタネート、アミノアルミネート等も用いることが可能である。さらに、アミノアルコール、アミノフェノール類も、硫酸等の共存下においてシラノール基と脱水反応により結合させて使用することも可能である。
【0049】
(実施例2)
本実施例では、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2のスライドガラス基板3への固定化に関する第2の方法を提示する。
実施例1と同様に、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意する。続いて、これらのオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をアクリル系ポリマー等にそれぞれ分散させた各種スラリーを調合する。そして、図2に示す担体粒子固定用装置の担体粒子固定用ビン5の先に各種スラリーを濡れによる吸着で保持し、スライドガラス基板3上の対応する区画に点着させる。点着させる際は、担体粒子固定用ピン5の先をスライドガラス基板3の表面に軽く叩くように接触させると、保持されたスラリーがスムーズにスライドガラス基板3側へ移行し、安定したスポット形状が得られ易い。担体粒子固定用ピン5の先の材質、形状、サイズは、形成するスポットサイズ、スポットピッチに適合するものを選択するようにする。
こうして、本発明の反応検出チップが作製された。
【0050】
(実施例3)
本実施例では、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2のスライドガラス基板3への固定化に関する第3の方法を提示する。
実施例1と同様に、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意する。続いて、これらのオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をアクリル系ポリマー等にそれぞれ分散させた各種のペースト6を調合する。媒体のアクリル系ポリマー等の粘性は、スラリーの場合より高めに調整しておく。また、スライドガラス基板3の表面を、表面ブラスト処理により予め表面つや消し処理を行っておく。その後、図3に示す多色刷りスクリーン印刷の技法により、各種のペースト6を、プローブの区画パターンに対応する印版7を用いて、スライドガラス基板3の表面にそれぞれ印刷していく。
こうして、本発明の反応検出チップが作製された。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、プローブとして利用されるオリゴヌクレオチドを担体上に固相法を用いて合成する際、最初のオリゴヌクレオチドを、担体表面に導入したアミノ基とリン酸アミド結合で強固に結合させるため、脱保護基処理時において、合成されたオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することが完全に防止される。よって、プローブ固定用の担体に直接オリゴヌクレオチド鎖を合成し、そのままプローブとして用いる「直接プローブ合成法」を理想的に行うことが可能になる。
【0052】
本発明における「直接プローブ合成法」を選択することにより、「間接プローブ合成法」におけるリンカー付加によるプローブの変質問題が解消されるので、プロープの信頼性を維持することが可能になる。さらに、「プローブ付き多孔質粒子を基板に固定するDNAチップ」という本発明者等の既提案に「直接プローブ合成法」を適応することにより、多孔質粒子という最適場での合成であるため、プローブの信頼性を上げることが可能になる。また、プローブ付き多孔質粒子の組合せと配列の変化により、設計自由度の高い多品種DNAチップが作製できる利点に加え、フォトリソグラフィーのような高価な手段を用いる必要がないので、作製コストの低下が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における担体粒子固定用装置を用いる反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図2】実施例2における担体粒子固定用ピンを用いる反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図3】実施例3におけるスクリーン印刷による反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図4】本発明の反応検出チップの分析システムの概要を表わす説明図。
【符号の説明】
1 アミノ化多孔質ガラス粒子
2 オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子
3 スライドガラス基板
4 担体粒子固定用極細キャピラリー
5 担体粒子固定用ピン
6 ぺースト
7 印版
9 ハイブリダイゼーション済反応検出チップ
10 励起光源
11 可動基板台
12 ミラー
13 対物レンズ
14 蛍光検出装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子診断及び生理機能診断等に使用される多数の機能分子の認識を可能にする反応検出チップ及びその作製方法並びに分析システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子の変異、特に一塩基多型(塩基配列における一塩基の変異)の検出は、突然変異等に起因する疾患、例えば、ガンの診断等に有効なだけでなく、多因子疾患の病因関連遺伝子の解析や予測医療にも貢献し、個々人の薬剤応答性や副作用の程度を調べる上にも必要である。また、遺伝子の発現状況、すなわち、遺伝子情報がmRNAに読み取られ対応するタンパク質が作られる状況を調べることは、遺伝子レベルで生命現象や病気を理解し、新薬を開発する上に非常に重要である。この遺伝子変異、あるいは、遺伝子の発現状況を速やかに検出する手段として、「DNAチップ」と言われる分析手段が有効であることが知られている。
【0003】
ここで言う「DNAチップ」とは、検体である各種DNAとそれぞれ特異的に結合する性質を有する分子をプローブとし、これらの各種プローブを基板の表面上に、各々の区画に対応させて配列し固定したものである。プローブが固定された表面に、検体DNAを含む試料を接触させ、検体DNAと対応するプローブ間で結合を起こさせる。そして、例えば、検体DNAに予め付加した蛍光標識からの蛍光を検出することにより、プローブと結合した検体DNAを同定し、かつ、定量することができる。通常、プローブと検体DNAの結合は、特定の対応する塩基間で水素結合する性質、すなわち、ハイブリダイゼーションを利用したものである。よって、プローブは、一本鎖にした検体DNAに対し相補的な塩基配列を有する一本鎖のcDNAあるいはオリゴヌクレオチドである。
【0004】
このDNAチップのプローブには、生体を代表とする天然物由来のmRNAから逆転写酵素反応を利用して作られるいわゆる「cDNA」タイプと、オリゴヌクレオチドの塩基配列を一つずつ化学反応を利用して合成するいわゆる「オリゴヌクレオチド」タイプに分かれる。現在は、プローブ設計自由度の高い合成「オリゴヌクレオチド」タイプが主流になりつつある。合成「オリゴヌクレオチド」タイプを用いた「DNAチップ」は大きく2種類に分かれる。1つは、「オリゴヌクレオチド」合成用の担体上にオリゴヌクレオチド鎖を合成したのち担体から切り離し精製し、固定用の担体に固定しプロープとして用いる方法(本明細書では“間接プローブ合成法”と呼ぶことにする)である。もう1つは、固定用の担体に直接オリゴヌクレオチド鎖を合成し、そのままプロープとして用いる方法(本明細書では“直接プローブ合成法”と呼ぶことにする)である。
【0005】
間接プローブ合成法の一例を以下に示す。まず、合成用の担体上にオリゴヌクレオチドを合成し、担体から切り離した後、例えばHPLC精製を行う。それから、精製後のオリゴヌクレオチドの末端に適当なリンカーを付加する。そして、このリンカー付きオリゴヌクレオチドを、官能基を導入したスライドガラス等の固定用担体上に高密度にスポットする。リンカーと官能基が結合し、合成したオリゴヌクレオチドがプローブとして固定されるという方法である。
【0006】
間接プローブ合成法の問題点は、たとえ精製工程を経ても、リンカーを付加する段階でオリゴヌクレオチドが変質し、プローブとしての信頼性が低下する懸念があることである。また、合成用担体からの切り離し→精製→リンカー付加→固定用担体への固定、と複雑な操作を経るため、プローブ作製に手間と時間がかかり、ひいてはDNAチップの製造コストが高価になる傾向がある。
【0007】
一方、直接プローブ合成法は、上記のようなオリゴヌクレオチドに対するリンカー導入が無いため、信頼性の高いプローブを提供できる。また、プローブ作製に手間と時間がかからないので、DNAチップの製造コストを下げる可能性がある。
【0008】
直接プローブ合成法の1つに、合成法として光化学反応を利用し、リソグラフイー技術を駆使して選択的に光化学反応を起こさせ、シリコンもしくはガラス基板上の多数の区画領城に、設計された配列のオリゴヌクレオチドを1塩基づつ合成して行く方法(Science 251,767(1991))があり、Affymetrix杜がこの方法を用いて「ジーンチップ」と呼ばれるDNAチップを製造している。
【0009】
直接プローブ合成法なのでプローブの変性操作がない点は優れている。ただし、オリゴヌクレオチドを合成する場所がシリコンウェハーやガラスなどの基板であるところに問題がある。基板に、担体の機能と合成場の機能を完全に両立させることは、一般に不可能である。よって、基板は、合成場として最適な環境にはなくオリゴヌクレォチドの合成収率は低下し、プローブの信頼性は低下することになる。また、この方法は、少品種のDNAチップを大量生産するには好適だが、パターンを変えるためにはフォトマスクを新たに作らなければならず、必要に応じた各種デザインのDNAチップをフレキシブルに製造するには不向きである。また、フォトリソグラフィーの装置とフォトマスクは高価であるため、相当数のDNAチップが製造されない限り、製造コストは高価になってしまう。
【0010】
また、同じ様な手法として基板上のそれぞれの区画において、インクジェットなどの方法を用いて異なるオリゴヌクレオチドを合成する手法も報告されているが、これもAffymetix杜の場合と同じく合成場として最適な環境にはない。
【0011】
もう一点の問題点として上記2法は共通して基本的に一枚ずつ合成していくために、製造のスケールメリットを出すことが出来ないことと、それぞれのスポットに使われるオリゴヌクレオチドの品質保証がしにくいことも挙げられる。
【0012】
本発明者等は、上述したDNAチップの問題点の改善を意図して、「多孔質粒子を担体として選び、担体表面にプローブを付け、このプローブ付き多孔質粒子を基板上に配列させ固定するDNAチップ」(特開2001−281251、特開2002−98697)などの反応検出チップを提案してきた。そして、これらの発明において、直接プローブ合成法に限定した「多孔質粒子を担体として選び、担体表面に固相反応を利用してオリゴヌクレオチドを合成し、この合成オリゴヌクレオチド付き多孔質粒子を基板上に配列させ固定するDNAチップ」を最適な形態として提案してきた。
【0013】
本発者等が提案してきた直接プロープ合成法の利点を、上述した他のDNAチップの問題点と比較して述べると以下のようになる。
(1)直接プローブ合成法なので、オリゴヌクレオチドにリンカーを付加させる必要がないためオリゴヌクレオチドの変質が起こらず、プローブの信頼性が保たれる。
(2)オリゴヌクレオチドを合成する場所が基板ではなく多孔質担体という最適な合成場であるため、合成収率が向上し、プローブの信頼性が高くなる。
(3)プローブ付き多孔質担体という形態で各種のプローブを作製し保存しておき、要求されるDNAチップのプローブ種に対応して同担体を選択し、決められたプローブ配置に対応して同担体を基板上に固定することができる。よって、DNAチップのデザインに対して自由度が極めて高く、多品種のDNAチップを簡便かつ安価に作製できる。
【0014】
(4)フオトリソグラフィーのような高価な手段を用いる必要がないので、製造コストの低下が図れる。
多孔質ガラス担体は合成場が多孔質の孔であるため、外界からの物理的影響が少なく、夾雑物との副反応も防止されると考えられる。また、多孔質ガラスはオリゴヌクレオチド合成において最適な合成場であることは良く知られており、分相性多孔質ガラスの一種である「CPG」は標準的なオリゴヌクレオチド合成担体として広く使われている。また、多孔質担体は、表面積が大きいため、固定できるプローブ数が増大し、検出感度が向上する利点も有する。
(5)プローブ付き多孔質担体という「半製品」状態で品質管理を行うことができるので、「最終製品」であるDNAチップの品質保証が容易になる。
【0015】
また、研究者からオリゴヌクレオチドを無孔性粒子に固定し、この粒子を基板、キャピラリーや溝に配列させるDNAチップが提案されている(特開平11−243997)。オリゴヌクレオチドを固定するのに相応しい場を配列場とは別に設けるという点は本発明者等の発明と共通であるが、間接プローブ合成法を採用している点や、粒子は配列されているが固定されておらず、本発明とは異なる。すでに述べたとおり、本発明者等は、直接プローブ合成法に優位性を見出しており、プローブを固定する担体と基板を分離する方法は、直接プローブ合成法を採用することにより多くの利点が生まれると考えている。
【0016】
このように、本発明者等が提案する直接プローブ合成法によるDNAチップは製造時間・製造コストともに抑制でき、多品種対応が可能であり、かつ、検出信頼性が高いため、非常に実用的であると言える。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
オリゴヌクレオチド合成に使用するホスホアミダイトには、合成中に反応してはならない部位に結合が起こるのを防ぐために、反応してはならない部位の官能基に保護基を予め結合させる。この保護基は、検体DNAとのハイブリダイゼーションを阻害するので、ホスホアミダイトの縮合反応サイクルでの長鎖化の後、アンモニア処理等で除去しなければならない。ところが、この脱保護の際、担体との結合が弱い場合は、オリゴヌクレオチド鎖そのものが担体から離脱してしまう。
【0018】
担体に結合したオリゴヌクレオチド鎖を切り離して使用するのではなく、そのままプローブとして使用する直接プローブ合成法においては、合成したオリゴヌクレオチド鎖は、脱保護処理時において、担体に確実に固定されていなければならない。よって、プローブとして利用されるオリゴヌクレオチドを担体上に固相法を用いて合成する際、担体との結合を強固にし、脱保護基処理時において、合成されたオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することがないようにすることが本発明の課題である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段により前記の課題を解決した。
(1)担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接合成したオリゴヌクレオチドをプローブ分子として用いることを特徴とする反応検出チップ。
(2)前記担体が多孔質担体であることを特徴とする前記(1)記載の反応検出チップ。
(3)前記多孔質担体は分相型多孔質ガラスであり、前記活性分子は分子構造中にアミノ基を有する各種のアミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネートの内の1ないし複数種であることを特徴とする前記(2)に記載の反応検出チップ。
【0020】
(4)前記多孔質担体は細孔径10nm〜1μmである分相型多孔質ガラスであることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の反応検出チップ。
(5)前記プローブが固定された前記担体を化学的、機械的に安定な素材からなる基板上に、該基板に設けた1つ若しくは1つ以上の複数の微小区分の1つ以上の区分に配列結合固定させることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
(6)基板がガラス、シリコンウェハー、サファイアガラス、焼結アルミナ、焼結ジルコニアより選ばれるセラミック材料であることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
【0021】
(7)基板がポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、ナイロン樹脂より選ばれる有機質材料であることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
(8)基板がアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼からなる群より選ばれる金属材料の一つであることを特徴とする前記(5)記載の反応検出チップ。
(9)基板が、平板状、フイルム状、ひも状、リボン状、糸状、球状、パイプ状、櫛形、カプセル状、不定形であることを特徴とする前記(5)〜(8)のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
【0022】
(10)担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接、ホスホアミダイト法によりオリゴヌクレオチドを合成してプローブ分子を形成した該多孔質担体を基板上に、該基板に設けた複数の微小区分の1つ以上の区分に、配列結合固定させることを特徴とする反応検出チップの作製方法。
(11)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の反応検出チップを用いることを特徴とする分析システム。
【0023】
本発明者等は、直接プローブ合成法を採用している。よって、オリゴヌクレオチド合成における最初のヌクレオチドと担体の間に強い結合法が必要になる。
この目的のため、本発明では、担体に導入した活性分子のアミノ基に、最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合により直接結合させることを提案する。
【0024】
通常オリゴヌクレオチド合成においては、担体に導入したアミノ基にコハク酸をアミド結合させ、このコハク酸に最初のヌクレオチドをエステル結合させることが一般的に行われている。この方法だと、脱保護処理時において、エステル結合の部分またはアミド結合の部分が加水分解により切り離され、オリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱してしまう。
【0025】
そこで、コハク酸を介することなく、最初のオリゴヌクレオチドをアミノ基に直接リン酸アミド結合させるように変更する。リン酸アミド結合は、エステル結合またはアミド結合と異なり、アンモニア処理等に対し十分安定な結合である。よって、脱保護処理時において結合が切れることはない。すなわち、この方法により合成されたオリゴヌクレオチドプローブは、脱保護処理時に担体から離脱することが完全に防止されるので、高い信頼性が得られる。
【0026】
多孔質ガラス等の担体上に固相法を用いて合成したオリゴヌクレオチドを、担体に強固に結合させるための手法は、オックスフォード・ジーン・テクノロジー・リミテッドからも提案されている(特表平4−500671)。担体に脂肪族ヒドロキシル基を導入し、最初のヌクレオチドをこのヒドロキシル基とホスフォジエステル結合させて固定する手法が提案されており、この固定により脱保護処理時においてオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することはないと述べられている。
【0027】
ガラス担体に脂肪族ヒドロキシル基を導入する際、一回の反応で済ますことのできる適当な分子は一般に存在しない。上記発明においても、まず、担体にエポキシ基を導入し、このエポキシ基に、ヒドロキシル基を含む分子を結合させることによりヒドロキシル基を導入する例が記載されてある。一方、アミノ基を担体に導入する場合は、アミノシラン等の分子を担体に対し一回反応させるだけで済む。このように手間が少ないという点で、アミノ基を用いる結合はヒドロキシル基を用いる結合より合成し易い。
【0028】
また、プローブとしての性能いう観点から、アミノ基で結合した合成オリゴヌクレオチドとヒドロキシル基で結合した合成オリゴヌクレオチドを、ハイプリダイゼーション試験により比較してみた。ハイプリダイゼーション後の蛍光強度を比較した結果、前者の方が、約1.5倍感度の高いブローブになっていることが判明した。アミノ基を用いる結合の方が、脱保護処理時におけるオリゴヌクレオチドの離脱防止に対して、より確実であったと予想している。
【0029】
オックスフォード・ジーン・テクノロジー・リミテッドの提案では、オリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス粒子を液体中に浮遊させて検出に用いる。一方、本発明の提案では、オリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス担体を基板に固定して用いるところに大きな特色がある。基板に固定することにより、設計自由度の高い反応検出体(チップ)になり得る。
【0030】
直接合成したプローブを担体に強固に結合させる手法に関しては、Beckman Instruments社からも報告されている(Anal.Biochem, 217,306(1994))。無水アンモニアの存在下でプラズマ放電することによりポリプロピレン担体上に導入したアミノ基から直接オリゴヌクレオチドの合成を開始し、合成オリゴヌクレオチド鎖を担体に強固に固定する手法である。
【0031】
最初のヌクレオチドをアミノ基とリン酸アミド結合させる点は、本発明の提案と共通している。ただし、担体にポリプロピレンを選択し、プラズマ処理によりアミノ基を直接導入する点が異なっている。本発明では、多孔質ガラス体、例えば粒子を好適な担体として選択し、アミノシラン等の溶液の接触により活性分子を介してアミノ基を導入することを提案している。このことにより、アミノ基密度のコントロール性などの優れた特性が出ると同時に、アミノ基と担体の間の分子構造を各種選べるので、検出に最適なプローブ分子構造設計が行いやすい。
【0032】
本発明では、オリゴヌクレオチドをプローブとして付けた担体を基板に配列固定してDNAチップを製造することに特色があるため、担体は基板に比し小さいもの、例えば微細粒子が好ましいが、目的によってはタイル状などでも良い。そして、固定するプローブ数を増大させ感度を上げるための表面積拡大、合成時における外界からの物理的影響の減少、夾雑物との副反応防止という観点から、担体は多孔質であることが好ましい。この孔を合成に相応しい滑らかな曲面で形成し、かつ、制御性良く仕上げるには、ガラスが材質として最適である。よって、本発明では、担体に多孔質ガラス担体を選択するのがよい。また、多孔質担体の表面に一様にアミノ基を導入するには、溶液接触が確実で簡便な手段である。
【0033】
以上説明してきたように、本発明は、固相法による直接オリゴヌクレオチド合成に好適な担体である多孔質ガラス担体表面に導入されたアミノ基上に、最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合により直接結合させてそれを起点としてオリゴヌクレオチドを合成し、このオリゴヌクレオチド付き多孔質ガラス担体を基板に配列固定してDNAチップを作製するところに特色がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明は、(1)多孔質ガラス、シリカゲル、イオン交換樹脂などの結合性表面を持つ多孔質担体上に活性分子を介してアミノ基を導入し、その後固相法を用いて目的とする塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを直接合成する。(2)合成したオリゴヌクレオチドを結合したプローブ多孔質担体を、別に用意した基板に結合し反応検出チップとして使用することを最も好適な態様とする。
【0035】
多孔質担体の材質としては、合成場になる孔表面が合成に相応しい滑らかな曲面で形成され、かつ、制御性良く仕上げられるという点で多孔質ガラスが最適である。結合反応は、主に、多孔質の細孔内表面で起こるので、多孔質担体の細孔は、検体DNAが拡散により充分入り込める大きさでなければならず、概ね、10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは50nm〜100nmである。
【0036】
最初に、多孔質担体表面に活性分子を介してアミノ基を導入する。この導入は、アミノ基を有する活性分子が含まれる溶液を多孔質担体表面に接触させることによりなされ、この手段は本発明のポイントになる箇所である。この活性分子は、アミノ基を有するとともに、多孔質担体表面に存在する官能基と結合する性質を持つ官能基を有する必要がある。多孔質ガラスの場合は、多孔質表面の官能基はシラノール基である。よって、活性分子は、シラノール基と結合する性質を持つ官能基を有するものとなり、アミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネート等が侯補になる。これらはシラノール基と脱アルコール縮合して結合する。また、アミノアルコール、アミノフェノール等を用い、シラノール基と脱水縮合させてアミノ基を導入する方法も考えられる。
【0037】
続いて、最初のヌクレオチド、すなわち、設計された塩基配列の1番目の塩基を有するヌクレオチドに対応するホスホアミダイトを、導入したアミノ基に直接リン酸アミド結合させる。それから先の手順は、通常のホスホアミダイト法に従う。
【0038】
合成直後のオリゴヌクレオチド鎖には、各塩基、各リン、最終のホスホロアミダイトの末端部に保護基が残存しているので、アンモニア処理等でこの保護基を除去する。最初のヌクレオチドがアミノ基とリン酸アミド結合により強固に結合しているので、この脱保護処理時において、オリゴヌクレオチド鎖は担体から離脱することはなく担体上に保持される。こうして、オリゴヌクレオチド鎖が強固に固定された多孔質担体が得られる。
【0039】
次に、この多孔質担体を基板に配列結合固定する。多孔質担体における細孔内部表面を保護する目的で、若干の水分などの保護液を含ませた後、結合性を持つ無機基材、例えばシリカゾルを加えスラリー状にして、ディスペンサーを用い配列する方法がある。この方法は、少量のDNAチップを製造するのには好適だが、大量生産するには印刷インク状にして多色刷りの手段を用いるのが良い。
これらの手法を用いる場合、多孔質担体の大きさは、粒径1μm〜1mmあればよいが、スラリーまたはインク状にする場合には、粒径1μm〜100μmの粒子状が好ましく、特に粒径3μm〜20μmが好ましい。
【0040】
多孔質担体を固定する基板に関しては、検出システムに対して変化しないこと、多孔質担体を固定するのに適した表面特性を有することが要求とされるので石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、シリコンウェハなどの無機基板が好ましい。多孔質担体粒子との結合方法を工夫することにより、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルムなどの有機基板を用いることもでき、場合によっては、紙類を用いることも可能である。また、基板表面には、担体結合剤との親和性等を調整する目的で、適当な表面処理を施す場合もある。
【0041】
基板の形状には特に制限はなく、例えば板、フイルム又はシートのような平板状のものが一般的であるが、それ以外の3次元形状例えば立方体、棒状、紐状、球状等であっても構わない。平板状の場合、厚みは、形状安定性を考慮し適宜決められる。また、大きさは、基板表面上に設けられる微小区分(同一プローブの集合領域)の規模、数で決められる。この微小区分の数は、1cm2当たり100個以上とすることができ、多孔質担体のサイズおよび基板への固定法を工夫すれば、1000個以上にすることも可能である。
【0042】
以上はプローブ分子を固定化する担体として粒子を用いた場合であるが、担体はタイル状やその他の形状.でも良く、該担体とは別に用意した基板・基材に固定する点が共通で有れば良いことは云うまでもない。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例を説明する全図において、同一機能を有する構成要素は同一符号を用いて示す。
【0044】
(実施例1)
平均粒径10μm、細孔径100nmの多孔質ガラス粒子を担体とし、トルエン中にN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを溶解した溶液に同担体を浸し、溶液温度110℃で数時間保つ。同アミノシランが担体表面のシラノール基と脱メタノール反応により結合することにより、担体表面にアミノ基が導入される。このアミノ化多孔質ガラス粒子1に、オリゴヌクレオチドの最初のヌクレオチドに対応するβ−シアノエチルホスホアミダイトを接触させ、アミノ基とリン酸基の間にリン酸アミド結合をさせることにより、担体に最初のヌクレオチドを固定する。以下、通常のホスホアミダイト法によりオリゴヌクレオチドを合成する。続いて、合成オリゴヌクレオチド付き担体をアンモニア溶液に数時間浸し、オリゴヌクレオチドに付加している保護基を除去する。最初のヌクレオチドをリン酸アミド結合で強固に担体に固定したため、この脱保護処理においてオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することは完全に防止される。脱保護処理後、合成オリゴヌクレオチドが固定された担体を、メタノール、トルエンで洗浄する。
【0045】
この手法により、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意し、それぞれ純水に分散させ、この分散液にシリカゾルを加えて各種スラリーを調合する。そして、表面に1mm角の区画を有する、ホウケイ酸ガラス製のスライドガラス基板3(約2cm×7.5cm)を用意する。図1に示す担体粒子固定用装置(ディスペンサー)の担体粒子固定用極細キャピラリー4を用いて、1mm角のそれぞれの区画に対応するスラリーを滴下する。シリカゾルのゲル化によりオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をスライドガラス基板3に固定する。
こうして、本発明の反応検出チップが作製される。
【0046】
この反応検出チップに、予め蛍光標識した検体DNAを含む検体溶液を接触させ、ハイブリダイゼーション反応を起こさせる。検体DNAは、この検体DNAと相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブに捕獲されるので、蛍光を発するプローブからの蛍光強度を検出することにより同定・定量することができる。この蛍光検出システムは、通常図4に示すように、励起光源10、可動基板台11、ミラー12、対物レンズ13、蛍光検出装置14から構成される。励起光をハイブリダイゼーション済反応検出チップ9上の所定の区画に照射し、発生する蛍光を対物レンズ13により集光し、励起光を分離して蛍光のみを蛍光検出装置14に導き、蛍光強度を測定する。励起光と蛍光の分離は、図4のように、小さいミラー12を用いるほか、波長分離ビームスプリッターを用いる方法もある。
【0047】
本実施例において、アミノ基を導入するためのアミノシランとして、N−(2−アミノエチル)−3−アミプロピルトリメトキシシランを用いたが、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン等を用いることも可能である。アミノ基と、メトキシないしエトキシ基を有することがポイントである。そして、メトキシないしエトキシ基がガラス担体表面のシラノール基と脱アルコール反応により結合した時、アミノ基がガラス担体表面からある程度離れる(アミノシランのシリコンから直鎖炭素3結合分以上)ものであることが好ましい。合成したオリゴヌクレオチドがガラス担体表面に近すぎると、ガラス担体表面の化学活性が検体DNAとのハイブリダイゼーションを阻害するからである。
【0048】
また、アミノ基を導入するのに、アミノシランではなく、アミノチタネート、アミノアルミネート等も用いることが可能である。さらに、アミノアルコール、アミノフェノール類も、硫酸等の共存下においてシラノール基と脱水反応により結合させて使用することも可能である。
【0049】
(実施例2)
本実施例では、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2のスライドガラス基板3への固定化に関する第2の方法を提示する。
実施例1と同様に、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意する。続いて、これらのオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をアクリル系ポリマー等にそれぞれ分散させた各種スラリーを調合する。そして、図2に示す担体粒子固定用装置の担体粒子固定用ビン5の先に各種スラリーを濡れによる吸着で保持し、スライドガラス基板3上の対応する区画に点着させる。点着させる際は、担体粒子固定用ピン5の先をスライドガラス基板3の表面に軽く叩くように接触させると、保持されたスラリーがスムーズにスライドガラス基板3側へ移行し、安定したスポット形状が得られ易い。担体粒子固定用ピン5の先の材質、形状、サイズは、形成するスポットサイズ、スポットピッチに適合するものを選択するようにする。
こうして、本発明の反応検出チップが作製された。
【0050】
(実施例3)
本実施例では、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2のスライドガラス基板3への固定化に関する第3の方法を提示する。
実施例1と同様に、各種の合成オリゴヌクレオチドが固定された、オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2を用意する。続いて、これらのオリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子2をアクリル系ポリマー等にそれぞれ分散させた各種のペースト6を調合する。媒体のアクリル系ポリマー等の粘性は、スラリーの場合より高めに調整しておく。また、スライドガラス基板3の表面を、表面ブラスト処理により予め表面つや消し処理を行っておく。その後、図3に示す多色刷りスクリーン印刷の技法により、各種のペースト6を、プローブの区画パターンに対応する印版7を用いて、スライドガラス基板3の表面にそれぞれ印刷していく。
こうして、本発明の反応検出チップが作製された。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、プローブとして利用されるオリゴヌクレオチドを担体上に固相法を用いて合成する際、最初のオリゴヌクレオチドを、担体表面に導入したアミノ基とリン酸アミド結合で強固に結合させるため、脱保護基処理時において、合成されたオリゴヌクレオチド鎖が担体から離脱することが完全に防止される。よって、プローブ固定用の担体に直接オリゴヌクレオチド鎖を合成し、そのままプローブとして用いる「直接プローブ合成法」を理想的に行うことが可能になる。
【0052】
本発明における「直接プローブ合成法」を選択することにより、「間接プローブ合成法」におけるリンカー付加によるプローブの変質問題が解消されるので、プロープの信頼性を維持することが可能になる。さらに、「プローブ付き多孔質粒子を基板に固定するDNAチップ」という本発明者等の既提案に「直接プローブ合成法」を適応することにより、多孔質粒子という最適場での合成であるため、プローブの信頼性を上げることが可能になる。また、プローブ付き多孔質粒子の組合せと配列の変化により、設計自由度の高い多品種DNAチップが作製できる利点に加え、フォトリソグラフィーのような高価な手段を用いる必要がないので、作製コストの低下が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における担体粒子固定用装置を用いる反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図2】実施例2における担体粒子固定用ピンを用いる反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図3】実施例3におけるスクリーン印刷による反応検出チップの作製過程を表わす説明図。
【図4】本発明の反応検出チップの分析システムの概要を表わす説明図。
【符号の説明】
1 アミノ化多孔質ガラス粒子
2 オリゴヌクレオチド担持多孔質ガラス粒子
3 スライドガラス基板
4 担体粒子固定用極細キャピラリー
5 担体粒子固定用ピン
6 ぺースト
7 印版
9 ハイブリダイゼーション済反応検出チップ
10 励起光源
11 可動基板台
12 ミラー
13 対物レンズ
14 蛍光検出装置
Claims (11)
- 担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接合成したオリゴヌクレオチドをプローブ分子として用いることを特徴とする反応検出チップ。
- 前記担体が多孔質担体であることを特徴とする請求項1記載の反応検出チップ。
- 前記多孔質担体は分相型多孔質ガラスであり、前記活性分子は分子構造中にアミノ基を有する各種のアミノシラン、アミノチタネート、アミノアルミネートの内の1ないし複数種であることを特徴とする請求項2に記載の反応検出チップ。
- 前記多孔質担体は細孔径10nm〜1μmである分相型多孔質ガラスであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の反応検出チップ。
- 前記プローブが固定された前記担体を化学的、機械的に安定な素材からなる基板上に、該基板に設けた1つ若しくは1つ以上の複数の微小区分の1つ以上の区分に配列結合固定させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
- 基板がガラス、シリコンウェハー、サファイアガラス、焼結アルミナ、焼結ジルコニアより選ばれるセラミック材料であることを特徴とする請求項5記載の反応検出チップ。
- 基板がポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、ナイロン樹脂より選ばれる有機質材料であることを特徴とする請求項5記載の反応検出チップ。
- 基板がアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼からなる群より選ばれる金属材料の一つであることを特徴とする請求項5記載の反応検出チップ。
- 基板が、平板状、フイルム状、ひも状、リボン状、糸状、球状、パイプ状、櫛形、カプセル状、不定形であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の反応検出チップ。
- 担体の表面に末端がアミノ基である活性分子を導入し、該アミノ基から脱水反応により形成されるリン酸アミド結合を介して直接、ホスホアミダイト法によりオリゴヌクレオチドを合成してプローブ分子を形成した該多孔質担体を基板上に、該基板に設けた複数の微小区分の1つ以上の区分に、配列結合固定させることを特徴とする反応検出チップの作製方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の反応検出チップを用いることを特徴とする分析システム。
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JP2006247492A (ja) * | 2005-03-09 | 2006-09-21 | Ebara Corp | 固相合成装置 |
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2002
- 2002-08-30 JP JP2002254558A patent/JP2004093330A/ja active Pending
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