JP2004091900A - ガス浸炭方法及びガス浸炭装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被処理物にガス浸炭を施す際、浸炭時間が短くかつ設備費用が安いガス浸炭方向及びガス浸炭装置を提供することである。
【解決手段】ガス浸炭装置60は、所定圧力、所定温度で浸炭ガスを被処理物50に浸炭させる真空浸炭部20と;浸炭された被処理物に真空浸炭部の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散部25と;から成る。被処理物は浸炭初期に真空浸炭部20においてCP値を急激に上昇され、浸炭時間が短くなる。真空浸炭部20は小さな構造を持ち、設備費用の上昇が抑制されている。
【選択図】図1
【解決手段】ガス浸炭装置60は、所定圧力、所定温度で浸炭ガスを被処理物50に浸炭させる真空浸炭部20と;浸炭された被処理物に真空浸炭部の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散部25と;から成る。被処理物は浸炭初期に真空浸炭部20においてCP値を急激に上昇され、浸炭時間が短くなる。真空浸炭部20は小さな構造を持ち、設備費用の上昇が抑制されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス浸炭方法及びガス浸炭装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
浸炭とは、綱等の被処理物の表面に炭素(原子)を侵入、拡散させて炭素量を増し、その後焼入れ硬化させる表面硬化法である。被処理物は浸炭処理されると、表面はマルテンサイト組織が形成され非常に硬くなって摩耗し難いが、内部は柔軟な組織のため靭性を保ち、衝撃に対する耐摩耗性が大きい。また、被処理物の表面に圧縮残留応力が生じ、疲労強度が向上する。
【0003】
浸炭の一種に、浸炭剤としてガスを使用するガス浸炭があり、ガス浸炭と真空(減圧)浸炭とを含む。従来のガス浸炭の浸炭装置の雰囲気熱処理方法及び熱処理炉がある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−181516号
【0005】
図5に示すように、この特許文献1に開示された熱処理炉100は搬入部102、予熱部104、浸炭部106、降温均熱部108、焼入油槽部110、及び搬出部112から成る。予熱部104及び降温均熱部108は被処理物120を乗せた1つのトレイを挿入でき、浸炭部106は被処理物120を乗せた3個のトレイを挿入できる程度の大きさである。
【0006】
搬入部102と予熱部104との間、予熱部104と浸炭部106との間、浸炭部104と降温均熱部108との間、及び降温均熱部108と焼入油槽部110との間にそれぞれ扉114,115,116及び117が配置されている。
【0007】
浸炭時、1個の被処理物120を予熱部104に挿入して予熱し、次に3個の順次被処理物120を浸炭部106に挿入し所定温度に加熱し、浸炭を施す。所定の浸炭時間経過後、1個の被処理物120を降温均熱部108に挿入すると共に、1個の被処理物120を予熱部104から浸炭部106に挿入する。ガス浸炭は熱処理炉の内部が減圧されないので、次述する真空浸炭に比べて構造が簡単で設備費用が安くできる長所がある。
【0008】
一方、従来の真空浸炭の浸炭装置として連続浸炭炉がある(特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献2】特開2002−146512号
【0010】
図6に示すように、この連続真空浸炭炉130は、装入室132、昇温室134、3個の浸炭兼拡散室136,137及び138、降温・保持室140、焼入室142及び搬出室144から成る。3個の浸炭兼拡散室136から138の雰囲気(浸炭ガスの種類、温度及び圧力等)は同じである。昇温室134は被処理物145を乗せた3個のトレイを収納でき、各浸炭兼拡散室136から138及び降温・保持室140は1個のトレイを収納できる。
【0011】
装入室132は入口扉131を備え、昇温室134は入口扉133a及び出口扉133bを備え、各浸炭兼拡散室136から138は入口扉135a及び出口扉135bを備える。降温・保持室140は入口扉139a及び出口扉139bを備え、焼入室142は入口扉141a及び出口扉141bを備え、搬出室144は出口扉143を備える。
【0012】
浸炭時、装入室132内の被処理物145を乗せたトレイを1個ずつ、合計3個のトレイを昇温室134に収納し、所定温度まで加熱する。昇温室134内の被処理物145を第1浸炭兼拡散室136に挿入し浸炭ガスを浸炭後、第2浸炭兼拡散室137に挿入する。浸炭ガスを浸炭後、トレイを第3浸炭兼拡散室138に挿入し、浸炭する。その後、降温・保持室140に挿入する。
【0013】
真空浸炭は上記ガス浸炭に比べて、浸炭時間が短く、浸炭ガスの使用量が少なくて済む長所がある。浸炭時の温度がガス浸炭よりも高く、被処理物の表面での反応が非平衡反応であり、浸炭ガスと平衡する被処理物の表面炭素濃度(カーボンポテンシャル値、以下「CP値」と略称する)がガス浸炭よりも高いからである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1ではガス浸炭を採用しているため浸炭速度が遅く単位時間当たりの処理個数が少ない。浸炭速度が遅いのは第1に、浸炭時の被処理物120のCP値が1.0%程度と低いためである。しかし、例えば変成ガス(キャリヤガス「Rxガス」)にエンリッチガスを混合した浸炭ガスの浸炭室106内での滞在時間が長くすすが発生し易く、1.0%よりも高くすることは困難である。
【0015】
第2に、浸炭初期において被処理物120のCP値が1.0%に達するまでに時間がかかるためである。これは被処理物120の表面における反応が平衡反応であることによる。
【0016】
そして、第3に、被処理物120の浸炭室106への挿入毎、及び浸炭室106からの排出毎に扉115及び116を開閉するためである。扉115及び116の開放により浸炭室106に外部の空気が侵入し、熱処理炉内の雰囲気が乱れ、CP値が下がる。下がったCP値を所定値に回復させるには浸炭ガスを供給しなければならず、時間がかかる。
【0017】
一方、特許文献2は真空浸炭方式を採用しているため設備費用が高く、コストが上昇する。設備費用が高いのは第1に、3個の減圧された浸炭兼拡散室136から138は真空容器として作用するため、大気圧(約100kPa)に相当する大きな圧力に耐えるべく、その炉壁の厚さは通常ガス浸炭の場合よりも厚くしなければならないからである。第2に、隣接する浸炭兼拡散室136,137及び138間に通常ガス浸炭の場合よりも丈夫な入口扉135a及び出口扉135bやシール機構が必要だからである。第3に、その内部の浸炭ガスを排気して真空にすべく、浸炭兼拡散室136から138に、通常ガス浸炭では不要な真空ポンプ及びその付属部品(不図示)を設ける必要があることによる。
【0018】
このように、従来の通常ガス浸炭方法及び装置は設備費用は安いものの浸炭速度が遅く、真空浸炭方法及び装置は浸炭速度が早いものの設備費用が高く、何れも一長一短であった。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ガス浸炭の長所と真空浸炭の長所の両方が得られる、即ち浸炭速度が早く浸炭時間が短く、しかも設備費用が安いガス浸炭方法及びガス浸炭装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本願の発明者は、真空浸炭の長所を生かしつつその短所を解消することを思いつき、両者を組み合わせた上で改良を加えて本発明に至った。
【0021】
本願の第1発明によるガス浸炭方法は、請求項1に記載しているように、所定の圧力、所定の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭工程と;その後、真空浸炭工程の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散工程と;から成ることを特徴とする。
【0022】
このガス浸炭方法において、浸炭の初期に真空浸炭工程で被処理物の表面に炭素を侵入させ、CP値を急激に上昇させ、これにより被処理物の表面に炭素が侵入する。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭し、炭素を内部に拡散させる。
【0023】
請求項2のガス浸炭方法は、請求項1の真空浸炭工程での浸炭ガスの所定圧力は100kPaより低く所定温度は950℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高い。ガス浸炭・浸炭工程での浸炭ガスの圧力は大気圧程度であり温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は1.0よりも低い。
請求項3のガス浸炭方法は、請求項1の真空浸炭工程では1から2個の被処理物が真空浸炭される。
【0024】
請求項4のガス浸炭方法は、請求項1において、真空浸炭工程に連続してガス浸炭・拡散工程が実行される。請求項5のガス浸炭方法は、請求項1において更に、真空浸炭工程の前に未浸炭の被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温工程を含み、ガス浸炭・拡散工程の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定値まで降下させる降温工程を含む。
【0025】
本願の第2発明によるガス浸炭装置は、請求項6に記載しているように、所定の圧力、所定の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭部と;浸炭された被処理物に真空浸炭部の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散部と;から成ることを特徴とする。
【0026】
このガス浸炭装置において、浸炭の初期に真空浸炭部で被処理物の表面に炭素を侵入させ、CP値を急激に上昇させ、これにより被処理物の表面に炭素が侵入する。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭し、炭素を内部に拡散させる。
【0027】
請求項7のガス浸炭装置は、請求項6の真空浸炭部での浸炭ガスの所定圧力は100kPaより低く所定温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高い。ガス浸炭・浸炭部での浸炭ガスの圧力は大気圧程度であり温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は1.0%よりも低い。請求項8のガス浸炭装置は、請求項6の真空浸炭部は1から2個の被処理物を収納する長さを持つ。
【0028】
請求項9のガス浸炭装置は、請求項6において、真空浸炭部とガス浸炭・拡散部とは同じ構成の横断面を持つ。請求項10のガス浸炭装置は、請求項6において更に、真空浸炭部の前に未浸炭の被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温部を含み、ガス浸炭・拡散部の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定値まで降下させる降温部を含む。
【0029】
【発明の実施の形態】
<ガス浸炭方法>
▲1▼本発明のガス浸炭方法で使用する浸炭ガスには変成ガスと直接雰囲気変成ガスとがある。前者は一般的に吸熱型変成ガスをベースとし、浸炭の際これにエンリッチガス(プロパンやブタン等)を添加する。これに対して、後者は炭化水素ガスと酸化性ガスとの混合ガスを浸炭炉内に直接導入し、上記Rxガスと類似のガスを発生させると同時に浸炭を行うものである。
▲2▼本発明のガス浸炭方法は真空浸炭(「減圧浸炭」と言うこともある)とガス浸炭方法とを組み合わせた上で改良を加えて、単一のガス浸炭方法としている。真空浸炭とガス浸炭とは浸炭炉内の浸炭ガスの圧力、温度及び被処理物のCP値等が異なる。
【0030】
「真空浸炭工程」では浸炭ガスの圧力は0.1から2kPa、温度は950から1040℃、CP値は0.9%以上である。浸炭ガス中の炭素を被処理物の表面に侵入させ、短時間でCP値を上昇させるので、真空浸炭工程は上記第2従来例のような真空浸炭のみで浸炭を完了する浸炭方法に比べて、浸炭時間が短く、使用する浸炭ガスも少ない。
【0031】
一方、「ガス浸炭・拡散工程」では浸炭ガスの圧力は2から100kPa、温度は850から980℃、CP値は1.0%以下、望ましくは0.9%未満である。真空浸炭工程により上記表面に侵入した炭素を被処理物の内部に拡散させる。既に表面に炭素が侵入しているので、ガス浸炭・拡散工程は上記第1従来例のようなガス浸炭・拡散のみで浸炭を完了する浸炭方法に比べて、浸炭時間が短く、使用する浸炭ガスも少ない。
【0032】
真空浸炭を先に行いその後通常ガス浸炭・拡散を行う。これは、浸炭の初期にCP値を短時間で急速に上昇させその後炭素を拡散させるためである。また、真空浸炭工程に連続してガス浸炭・拡散工程を実行することが望ましい。
▲3▼ガス浸炭方法は更に、真空浸炭の前に被処理物の温度を浸炭温度まで上昇させる昇温工程、及び通常ガス浸炭の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定温度までで降下させる降温工程を含むことができる。昇温工程では温度の上昇につれて、微細な炭素が被処理物の内部に分散する。降温工程では、炭素が拡散し、表面の炭素濃度が0.8%に調整される。
▲4▼「被処理物」の材質に特別の制約はなく、肌焼鋼等の鋼材から成ることができる。形状にも特別の制約はなく、棒形状、板形状又はブロック形状等、任意の形状を採用できる。尚、被処理物は通常トレイに乗せてガス浸炭装置の内部を搬送される。
<ガス浸炭装置>
▲1▼本発明のガス浸炭装置は、真空浸炭装置と通常ガス浸炭装置とを組み合わせた上で改良を加えて単一のガス浸炭装置としている。少なくとも、被処理物に真空浸炭を施す真空浸炭部と、真空浸炭が終了した被処理物にガス浸炭を施して拡散させるガス浸炭・拡散部とを含む。真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部はそれぞれ浸炭炉、浸炭ガスの供給口及び排出口、ヒータ等を含み、これらによって真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の圧力や温度等が上記値に制御される。
【0033】
真空浸炭部の大きさ(特に長さ)は極力短くし、具体的には被処理物(その寸法にもよるが)を乗せるトレイが1又は2個収納できる程度とする。ガス浸炭・拡散部の大きさ(特にその長さ)は真空浸炭部の長さよりも長く、上記第1従来例のガス浸炭部の長さよりも短くする。具体的には、トレイが4から8個収納できる程度とする。
【0034】
真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の横断は同じ構成(形状、寸法)として、同一平面上に配置することが望ましい。
▲2▼ガス浸炭装置は更に、昇温部及び降温部を含むことができる。
【0035】
昇温部は被処理物をの温度を所定値まで上昇させる部分であり、真空浸炭部に隣接して被処理物の装入側に配置される。一方、降温部は被処理物の温度を所定値まで降下させる部分であり、真空浸炭部に隣接して被処理物の搬出側に配置される。昇温部及び降温部も浸炭炉、浸炭ガスの供給口及び排出口、ヒータ等を含む。
▲3▼ガス浸炭装置は昇温部、真空浸炭部、浸炭・拡散部、降温部等が被処理物の搬送方向に沿って配置され、横断面は同じ形状、寸法を持ち、同一平面上に直線上に配置すること、即ち全体を連結炉とすることが望ましい。同じ材質、形状の被処理物を同一熱処理サイクルで多量に処理する場合特に好都合である。尚、被処理物はトレイに載置され、トレイはガス浸炭装置の各部分及び隣接する各部間をプッシャ又はコンベヤにより搬送される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を基にして説明する。
(ガス浸炭装置)
▲1▼構成
図1に示す連続式ガス浸炭装置60は、装入部10、昇温部15、真空浸炭部20、ガス浸炭・拡散部25、降温部35及び油槽40から成る。これらがワーク50の装入側(図1において左側)から搬出側(図1において右側)に順に配置され、全体として細長い箱形状を持つ。尚、ワーク50は無断変速機(CVT)の構成部品である。
【0037】
装入部10は、ワーク50を乗せた1個のトレイ(不図示)を収納できる長さを有する。左側開口は仕切扉11で覆われており、仕切扉11は開閉機構により開閉される。
【0038】
昇温部15は、比較的厚さの薄い炉壁13で区画され、全体的に四角筒形状で横断面は矩形状である。ワーク50を乗せた数個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。昇温部15と装入部10との境界及び昇温部15の右側開口をそれぞれ覆う断熱扉14及び16は開閉機構により開閉される。
【0039】
長手方向(図1において左右方向)の中間部がアーチ17により左ゾーン18aと右ゾーン18bとに区分され、各ゾーンに、浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン19と、両側部及び底部に配置されたヒータ(不図示)とを備えている。左ゾーン18a及び右ゾーン18b内の浸炭ガスの圧力は100kPa程度に維持され、温度は左ゾーン18aが900℃、右ゾーン18bが950℃に維持されている。
【0040】
上記昇温部15の炉壁16よりも厚さの厚い炉壁21で区画された真空浸炭部20は立方体に近い形状であり、ワーク50を乗せた1個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。左側開口及び右側開口がそれぞれ上記断熱扉14及び16よりも厚さが厚く頑丈な真空断熱扉22及び23で覆われている。真空断熱扉22及び23はその周囲をシール部材によりシールされ開閉機構により開閉される。
【0041】
浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)を備え、両側部及び底部にヒータ(不図示)が配置されている。
【0042】
ガス浸炭・拡散部25は、比較的厚さの薄い炉壁26で区画され、全体的に四角筒形状で横断面は矩形状である。ワーク50を乗せた数個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。左側開口及びガス浸炭・拡散部25と降温部35との境界をそれぞれ覆う断熱扉27及び28は開閉機構により開閉される。
【0043】
長手方向の中間部がアーチ29により左ゾーン31aと右ゾーン31bとに区分され、各ゾーンに浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン32と、両側部及び底部に配置されたヒータ(不図示)とを備えている。
【0044】
降温部35は全体的に直方体形状を持ち、ワーク50を乗せた2から3個のトレイを収納できる長さを持つ。右側開口と油槽45との境界部を覆う断熱扉36は開閉機構により開閉される。浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン37とを備えている。また、両側部及び底部にヒータ(不図示)が配置されている。
【0045】
上記昇温部15,真空浸炭部20,ガス浸炭・拡散部25及び降温部35の横断面は形状及び寸法が同じである。
【0046】
内部に冷却湯が貯蔵された油槽45は縦長形状を呈し、ワーク50が乗せられた1個のトレイを収納できる長さを持つ。右側開口を仕切扉41により覆われている。
▲2▼効果
本実施例のガス浸炭装置60において真空浸炭部20は、ワーク50を乗せた1個のトレイを収納できる大きさを持つに過ぎない。よって、厚さの厚い炉壁21の長さが短くでき、丈夫な構造が要求される断熱扉22及び23の個数が少なくて済む。また、ガス浸炭・拡散部25は上記特許文献1のようにガス浸炭のみで浸炭を完了する浸炭装置に比べて短くできる。
(浸炭方法)
次に、上記ガス浸炭装置によるガス浸炭方法について、図1,図2及び図3を参照しつつ説明する。
▲1▼手順
図2に示すように、トレイに乗せられたワーク50は装入工程S1において、油圧式プッシャにより装入部10から次々に装入される。次に、昇温工程S2において昇温部15に搬送され、温度が上昇する。次に、真空浸炭工程S3において真空浸炭部20により真空浸炭され、ワーク50の表面に炭素が侵入する。
【0047】
続いて、ガス浸炭・拡散工程S4においてガス浸炭・拡散部25により浸炭及び拡散され、炭素がワーク50の内部に拡散する。次に、降温工程S5において降温部35に搬送され、ワーク50の温度が降下する。その後、焼入工程S6において油槽40により焼入れされる。
【0048】
上記各工程を、図3を基に詳述する。図3(a)は時間と各部分15,20,25及び35との圧力との関係即ちワーク50が通過している各部分の圧力を示し、(b)は時間と各部分15,16,20,25及び35と温度との関係即ちワークが通過している各部分の温度を示し、(c)は時間とワーク50の表面炭素濃度との関係即ちワークが各部分15,20,25及び35を通過している時点での表面炭素濃度を示す。
【0049】
未処理品のワーク50をトレイに乗せて装入部10に装入する。昇温部15にはワーク50の酸化を防止するため、大気圧下でRxガスを導入する。導入されたRxガスは燃焼し、装入部10から排気される。装入部10がRxガスで置換された後、ワーク50を乗せた一つのトレイを装入部10から昇温部15に搬送する。図3(a)に示すように昇温部15の圧力は100kPaであり、図3(b)に示すように温度は右側ゾーン18bで950℃まで上昇する。これに伴いワーク50はRxガスにより浸炭され、図3(c)に示すようにCP値は0.2から0.4%に上昇する。
【0050】
ワーク50が昇温部15で昇温されかつ真空浸炭部20がRxガスで大気圧になった後、一つのワーク50を昇温部15から真空浸炭部20に搬送する。図3(a)に示すように搬送の完了後直ちに真空浸炭部20を0.1kPaまで真空排気し,2kPaまで炭化水素(C2H4)で復圧し、真空浸炭を開始する。図3(c)に示すように浸炭の初期のみワーク50の表面炭素濃度が急速に高く(約1.4%)なる。図3(b)に示すように、このとき真空浸炭部20の温度は950℃である。
【0051】
設定した時間だけワーク50を真空浸炭した後、Rxガス及び炭化水素(C4H10)で真空浸炭部20を大気圧まで復圧し、一つのワーク50をガス浸炭・拡散部25に搬送する。浸炭・拡散部25の装入部10側のCP値が1.0%、油槽45側のCP値が0.8%となるように雰囲気制御を行う。ガス浸炭・拡散部25を搬送される間に、ワーク50は図3(c)に示すように表面炭素濃度を0.8%に下げながら炭素を内部に拡散させる。この間、図3(a)に示すように圧力は100kPaに維持され、図3(b)に示すように温度は950℃に維持される。
【0052】
表面炭素濃度が0.8%になった後、一つのワーク50を降温部35に搬送する。図3(b)に示すように降温部35で焼入温度850度まで降温し、油槽部40へ搬送して焼き入れする。
▲2▼効果
本実施例のガス浸炭方法による効果を確認すべく、実験を行った。肌焼鋼で3つのテストピース(以下「TP」と呼ぶ)を製作した。何れも形状は丸棒で、大きさはφ18x50lである。TP1をトレイに乗せてを上記ガス浸炭装置60の真空浸炭部20及びガス浸炭・拡散部25で炭素を浸炭及び拡散させた。その際、真空浸炭の温度は950℃、ガス浸炭・拡散の温度は950℃とし、炭素の浸炭・拡散時間と肌焼深さ(浸炭深さ)との関係を調べた。
【0053】
これに対して、TP2は、上記ガス浸炭装置60とは別の真空浸炭専用の浸炭炉により、温度950℃で真空浸炭のみで浸炭を完了させた。また、TP3は、上記ガス浸炭装置60とは別のガス浸炭・拡散専用の浸炭炉により温度950℃でガス浸炭及び拡散のみで浸炭を完了させた。
【0054】
TP1からTP3による実験の結果を図4に示す。横軸は浸炭・拡散時間(分)の平方根であり、縦軸は浸炭深さ(mm)である。但し、何れも場合も浸炭工程のみを示し、昇温工程や降温工程は示していない。
【0055】
TP1による実験結果が直線aで、TP2による実験結果が直線bで、TP3による実験結果が直線cで、それぞれ示されている。例えば拡散・浸炭時間の平方根((浸炭・拡散時間)1/2)10分で比較すると、本実施例により浸炭したTP1の浸炭深さは約0.7mmであり、真空浸炭したTP2の浸炭深さ0.75mmに近く、ガス浸炭・拡散したTP3の浸炭深さ0.38mmよりも遙かに深い。一方、例えば浸炭深さ0.6mmで比較すると、TP1の浸炭・拡散時間は約64(82)分であり、TP2の浸炭・拡散時間約(7.5)2分に近く、TP3の浸炭・拡散時間約深さ(12.7)2分よりも遙かに短い。
【0056】
これより、真空浸炭及びガス浸炭・拡散を施したTP1は、真空浸炭のみを施したTP2とほぼ同等の短い時間でほぼ同等の浸炭深さを得ることが分かる。これは、浸炭の初期のみを真空浸炭部20で行い、残りはガス浸炭・拡散部25で行ったためである。
【0057】
尚、上記昇温部15における昇温時の浸炭を避ける場合は、不活性ガス(N2等)又は不活性ガス及び水素を昇温部15に導入する。この場合、装入部10は真空排気できる構造として、ワーク50の酸化を防ぐことが望ましい。
【0058】
【発明の効果】
以上述べてきたように、第1発明のガス浸炭方法では、浸炭の初期に真空浸炭工程で被処理物のCP値を急激に上昇させるので、真空浸炭のみで浸炭を完了させる従来例と同等の浸炭速度が得られる。被処理物の表面に炭素を侵入させるのみなので、浸炭時間は短く、浸炭ガスの使用量が少なくて済み、コストの上昇が抑制できる。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭するので、浸炭時間を従来例よりも短くできる。
【0059】
一方、第2発明のガス浸炭装置では、浸炭の初期に真空浸炭部で被処理物のCP値を急激に上昇させるので、真空浸炭のみで浸炭を完了させる従来例と同等の浸炭速度が得られる。真空浸炭部は被処理物の表面に炭素を侵入させるのみなので、寸法が小さくて済み設備費用の上昇が最低限に抑制できる。また、ガス浸炭・拡散部は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭するので、長さを短くできる。
【0060】
請求項2のガス浸炭方法及び請求項7のガス浸炭装置では、真空浸炭及びガス浸炭・拡散が効果的に行われる。請求項3のガス浸炭方法及び請求項8のガス浸炭装置では、真空浸炭工程の時間を短くでき真空浸炭部の構成を小さくできる。
【0061】
請求項4のガス浸炭方法及び請求項9のガス浸炭装置では、真空浸炭工程及びガス浸炭・拡散工程に要する時間が短くなり、真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の構成が簡単になる。請求項5のガス浸炭方法及び請求項10のガス浸炭装置では、真空浸炭及びガス浸炭・拡散がより効果的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス浸炭装置の実施例を示す正面断面図である。
【図2】上記実施例の作動即ちガス浸炭方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)は時間と各部分との圧力との関係を示し、(b)は時間と各部分と温度との関係を示し、(c)は時間とワークの表面炭素濃度との関係を示す。
【図4】上記実施例等による浸炭拡散時間とテストピースの肌焼深さとの関係を示すグラフである。
【図5】特許文献1の従来例を示す正面断面図である。
【図6】特許文献2の従来例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
10:装入部 15:昇温部
20:真空浸炭部 21:炉壁
25:ガス浸炭・拡散部 26:炉壁
35:降温部 40:油槽
60:ガス浸炭装置
S3:真空浸炭工程 S4:ガス浸炭・拡散工程
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス浸炭方法及びガス浸炭装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
浸炭とは、綱等の被処理物の表面に炭素(原子)を侵入、拡散させて炭素量を増し、その後焼入れ硬化させる表面硬化法である。被処理物は浸炭処理されると、表面はマルテンサイト組織が形成され非常に硬くなって摩耗し難いが、内部は柔軟な組織のため靭性を保ち、衝撃に対する耐摩耗性が大きい。また、被処理物の表面に圧縮残留応力が生じ、疲労強度が向上する。
【0003】
浸炭の一種に、浸炭剤としてガスを使用するガス浸炭があり、ガス浸炭と真空(減圧)浸炭とを含む。従来のガス浸炭の浸炭装置の雰囲気熱処理方法及び熱処理炉がある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−181516号
【0005】
図5に示すように、この特許文献1に開示された熱処理炉100は搬入部102、予熱部104、浸炭部106、降温均熱部108、焼入油槽部110、及び搬出部112から成る。予熱部104及び降温均熱部108は被処理物120を乗せた1つのトレイを挿入でき、浸炭部106は被処理物120を乗せた3個のトレイを挿入できる程度の大きさである。
【0006】
搬入部102と予熱部104との間、予熱部104と浸炭部106との間、浸炭部104と降温均熱部108との間、及び降温均熱部108と焼入油槽部110との間にそれぞれ扉114,115,116及び117が配置されている。
【0007】
浸炭時、1個の被処理物120を予熱部104に挿入して予熱し、次に3個の順次被処理物120を浸炭部106に挿入し所定温度に加熱し、浸炭を施す。所定の浸炭時間経過後、1個の被処理物120を降温均熱部108に挿入すると共に、1個の被処理物120を予熱部104から浸炭部106に挿入する。ガス浸炭は熱処理炉の内部が減圧されないので、次述する真空浸炭に比べて構造が簡単で設備費用が安くできる長所がある。
【0008】
一方、従来の真空浸炭の浸炭装置として連続浸炭炉がある(特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献2】特開2002−146512号
【0010】
図6に示すように、この連続真空浸炭炉130は、装入室132、昇温室134、3個の浸炭兼拡散室136,137及び138、降温・保持室140、焼入室142及び搬出室144から成る。3個の浸炭兼拡散室136から138の雰囲気(浸炭ガスの種類、温度及び圧力等)は同じである。昇温室134は被処理物145を乗せた3個のトレイを収納でき、各浸炭兼拡散室136から138及び降温・保持室140は1個のトレイを収納できる。
【0011】
装入室132は入口扉131を備え、昇温室134は入口扉133a及び出口扉133bを備え、各浸炭兼拡散室136から138は入口扉135a及び出口扉135bを備える。降温・保持室140は入口扉139a及び出口扉139bを備え、焼入室142は入口扉141a及び出口扉141bを備え、搬出室144は出口扉143を備える。
【0012】
浸炭時、装入室132内の被処理物145を乗せたトレイを1個ずつ、合計3個のトレイを昇温室134に収納し、所定温度まで加熱する。昇温室134内の被処理物145を第1浸炭兼拡散室136に挿入し浸炭ガスを浸炭後、第2浸炭兼拡散室137に挿入する。浸炭ガスを浸炭後、トレイを第3浸炭兼拡散室138に挿入し、浸炭する。その後、降温・保持室140に挿入する。
【0013】
真空浸炭は上記ガス浸炭に比べて、浸炭時間が短く、浸炭ガスの使用量が少なくて済む長所がある。浸炭時の温度がガス浸炭よりも高く、被処理物の表面での反応が非平衡反応であり、浸炭ガスと平衡する被処理物の表面炭素濃度(カーボンポテンシャル値、以下「CP値」と略称する)がガス浸炭よりも高いからである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1ではガス浸炭を採用しているため浸炭速度が遅く単位時間当たりの処理個数が少ない。浸炭速度が遅いのは第1に、浸炭時の被処理物120のCP値が1.0%程度と低いためである。しかし、例えば変成ガス(キャリヤガス「Rxガス」)にエンリッチガスを混合した浸炭ガスの浸炭室106内での滞在時間が長くすすが発生し易く、1.0%よりも高くすることは困難である。
【0015】
第2に、浸炭初期において被処理物120のCP値が1.0%に達するまでに時間がかかるためである。これは被処理物120の表面における反応が平衡反応であることによる。
【0016】
そして、第3に、被処理物120の浸炭室106への挿入毎、及び浸炭室106からの排出毎に扉115及び116を開閉するためである。扉115及び116の開放により浸炭室106に外部の空気が侵入し、熱処理炉内の雰囲気が乱れ、CP値が下がる。下がったCP値を所定値に回復させるには浸炭ガスを供給しなければならず、時間がかかる。
【0017】
一方、特許文献2は真空浸炭方式を採用しているため設備費用が高く、コストが上昇する。設備費用が高いのは第1に、3個の減圧された浸炭兼拡散室136から138は真空容器として作用するため、大気圧(約100kPa)に相当する大きな圧力に耐えるべく、その炉壁の厚さは通常ガス浸炭の場合よりも厚くしなければならないからである。第2に、隣接する浸炭兼拡散室136,137及び138間に通常ガス浸炭の場合よりも丈夫な入口扉135a及び出口扉135bやシール機構が必要だからである。第3に、その内部の浸炭ガスを排気して真空にすべく、浸炭兼拡散室136から138に、通常ガス浸炭では不要な真空ポンプ及びその付属部品(不図示)を設ける必要があることによる。
【0018】
このように、従来の通常ガス浸炭方法及び装置は設備費用は安いものの浸炭速度が遅く、真空浸炭方法及び装置は浸炭速度が早いものの設備費用が高く、何れも一長一短であった。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ガス浸炭の長所と真空浸炭の長所の両方が得られる、即ち浸炭速度が早く浸炭時間が短く、しかも設備費用が安いガス浸炭方法及びガス浸炭装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本願の発明者は、真空浸炭の長所を生かしつつその短所を解消することを思いつき、両者を組み合わせた上で改良を加えて本発明に至った。
【0021】
本願の第1発明によるガス浸炭方法は、請求項1に記載しているように、所定の圧力、所定の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭工程と;その後、真空浸炭工程の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散工程と;から成ることを特徴とする。
【0022】
このガス浸炭方法において、浸炭の初期に真空浸炭工程で被処理物の表面に炭素を侵入させ、CP値を急激に上昇させ、これにより被処理物の表面に炭素が侵入する。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭し、炭素を内部に拡散させる。
【0023】
請求項2のガス浸炭方法は、請求項1の真空浸炭工程での浸炭ガスの所定圧力は100kPaより低く所定温度は950℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高い。ガス浸炭・浸炭工程での浸炭ガスの圧力は大気圧程度であり温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は1.0よりも低い。
請求項3のガス浸炭方法は、請求項1の真空浸炭工程では1から2個の被処理物が真空浸炭される。
【0024】
請求項4のガス浸炭方法は、請求項1において、真空浸炭工程に連続してガス浸炭・拡散工程が実行される。請求項5のガス浸炭方法は、請求項1において更に、真空浸炭工程の前に未浸炭の被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温工程を含み、ガス浸炭・拡散工程の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定値まで降下させる降温工程を含む。
【0025】
本願の第2発明によるガス浸炭装置は、請求項6に記載しているように、所定の圧力、所定の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭部と;浸炭された被処理物に真空浸炭部の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散部と;から成ることを特徴とする。
【0026】
このガス浸炭装置において、浸炭の初期に真空浸炭部で被処理物の表面に炭素を侵入させ、CP値を急激に上昇させ、これにより被処理物の表面に炭素が侵入する。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭し、炭素を内部に拡散させる。
【0027】
請求項7のガス浸炭装置は、請求項6の真空浸炭部での浸炭ガスの所定圧力は100kPaより低く所定温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高い。ガス浸炭・浸炭部での浸炭ガスの圧力は大気圧程度であり温度は900℃より高く、被処理物の表面炭素濃度は1.0%よりも低い。請求項8のガス浸炭装置は、請求項6の真空浸炭部は1から2個の被処理物を収納する長さを持つ。
【0028】
請求項9のガス浸炭装置は、請求項6において、真空浸炭部とガス浸炭・拡散部とは同じ構成の横断面を持つ。請求項10のガス浸炭装置は、請求項6において更に、真空浸炭部の前に未浸炭の被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温部を含み、ガス浸炭・拡散部の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定値まで降下させる降温部を含む。
【0029】
【発明の実施の形態】
<ガス浸炭方法>
▲1▼本発明のガス浸炭方法で使用する浸炭ガスには変成ガスと直接雰囲気変成ガスとがある。前者は一般的に吸熱型変成ガスをベースとし、浸炭の際これにエンリッチガス(プロパンやブタン等)を添加する。これに対して、後者は炭化水素ガスと酸化性ガスとの混合ガスを浸炭炉内に直接導入し、上記Rxガスと類似のガスを発生させると同時に浸炭を行うものである。
▲2▼本発明のガス浸炭方法は真空浸炭(「減圧浸炭」と言うこともある)とガス浸炭方法とを組み合わせた上で改良を加えて、単一のガス浸炭方法としている。真空浸炭とガス浸炭とは浸炭炉内の浸炭ガスの圧力、温度及び被処理物のCP値等が異なる。
【0030】
「真空浸炭工程」では浸炭ガスの圧力は0.1から2kPa、温度は950から1040℃、CP値は0.9%以上である。浸炭ガス中の炭素を被処理物の表面に侵入させ、短時間でCP値を上昇させるので、真空浸炭工程は上記第2従来例のような真空浸炭のみで浸炭を完了する浸炭方法に比べて、浸炭時間が短く、使用する浸炭ガスも少ない。
【0031】
一方、「ガス浸炭・拡散工程」では浸炭ガスの圧力は2から100kPa、温度は850から980℃、CP値は1.0%以下、望ましくは0.9%未満である。真空浸炭工程により上記表面に侵入した炭素を被処理物の内部に拡散させる。既に表面に炭素が侵入しているので、ガス浸炭・拡散工程は上記第1従来例のようなガス浸炭・拡散のみで浸炭を完了する浸炭方法に比べて、浸炭時間が短く、使用する浸炭ガスも少ない。
【0032】
真空浸炭を先に行いその後通常ガス浸炭・拡散を行う。これは、浸炭の初期にCP値を短時間で急速に上昇させその後炭素を拡散させるためである。また、真空浸炭工程に連続してガス浸炭・拡散工程を実行することが望ましい。
▲3▼ガス浸炭方法は更に、真空浸炭の前に被処理物の温度を浸炭温度まで上昇させる昇温工程、及び通常ガス浸炭の後に浸炭済みの被処理物の温度を所定温度までで降下させる降温工程を含むことができる。昇温工程では温度の上昇につれて、微細な炭素が被処理物の内部に分散する。降温工程では、炭素が拡散し、表面の炭素濃度が0.8%に調整される。
▲4▼「被処理物」の材質に特別の制約はなく、肌焼鋼等の鋼材から成ることができる。形状にも特別の制約はなく、棒形状、板形状又はブロック形状等、任意の形状を採用できる。尚、被処理物は通常トレイに乗せてガス浸炭装置の内部を搬送される。
<ガス浸炭装置>
▲1▼本発明のガス浸炭装置は、真空浸炭装置と通常ガス浸炭装置とを組み合わせた上で改良を加えて単一のガス浸炭装置としている。少なくとも、被処理物に真空浸炭を施す真空浸炭部と、真空浸炭が終了した被処理物にガス浸炭を施して拡散させるガス浸炭・拡散部とを含む。真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部はそれぞれ浸炭炉、浸炭ガスの供給口及び排出口、ヒータ等を含み、これらによって真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の圧力や温度等が上記値に制御される。
【0033】
真空浸炭部の大きさ(特に長さ)は極力短くし、具体的には被処理物(その寸法にもよるが)を乗せるトレイが1又は2個収納できる程度とする。ガス浸炭・拡散部の大きさ(特にその長さ)は真空浸炭部の長さよりも長く、上記第1従来例のガス浸炭部の長さよりも短くする。具体的には、トレイが4から8個収納できる程度とする。
【0034】
真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の横断は同じ構成(形状、寸法)として、同一平面上に配置することが望ましい。
▲2▼ガス浸炭装置は更に、昇温部及び降温部を含むことができる。
【0035】
昇温部は被処理物をの温度を所定値まで上昇させる部分であり、真空浸炭部に隣接して被処理物の装入側に配置される。一方、降温部は被処理物の温度を所定値まで降下させる部分であり、真空浸炭部に隣接して被処理物の搬出側に配置される。昇温部及び降温部も浸炭炉、浸炭ガスの供給口及び排出口、ヒータ等を含む。
▲3▼ガス浸炭装置は昇温部、真空浸炭部、浸炭・拡散部、降温部等が被処理物の搬送方向に沿って配置され、横断面は同じ形状、寸法を持ち、同一平面上に直線上に配置すること、即ち全体を連結炉とすることが望ましい。同じ材質、形状の被処理物を同一熱処理サイクルで多量に処理する場合特に好都合である。尚、被処理物はトレイに載置され、トレイはガス浸炭装置の各部分及び隣接する各部間をプッシャ又はコンベヤにより搬送される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を基にして説明する。
(ガス浸炭装置)
▲1▼構成
図1に示す連続式ガス浸炭装置60は、装入部10、昇温部15、真空浸炭部20、ガス浸炭・拡散部25、降温部35及び油槽40から成る。これらがワーク50の装入側(図1において左側)から搬出側(図1において右側)に順に配置され、全体として細長い箱形状を持つ。尚、ワーク50は無断変速機(CVT)の構成部品である。
【0037】
装入部10は、ワーク50を乗せた1個のトレイ(不図示)を収納できる長さを有する。左側開口は仕切扉11で覆われており、仕切扉11は開閉機構により開閉される。
【0038】
昇温部15は、比較的厚さの薄い炉壁13で区画され、全体的に四角筒形状で横断面は矩形状である。ワーク50を乗せた数個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。昇温部15と装入部10との境界及び昇温部15の右側開口をそれぞれ覆う断熱扉14及び16は開閉機構により開閉される。
【0039】
長手方向(図1において左右方向)の中間部がアーチ17により左ゾーン18aと右ゾーン18bとに区分され、各ゾーンに、浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン19と、両側部及び底部に配置されたヒータ(不図示)とを備えている。左ゾーン18a及び右ゾーン18b内の浸炭ガスの圧力は100kPa程度に維持され、温度は左ゾーン18aが900℃、右ゾーン18bが950℃に維持されている。
【0040】
上記昇温部15の炉壁16よりも厚さの厚い炉壁21で区画された真空浸炭部20は立方体に近い形状であり、ワーク50を乗せた1個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。左側開口及び右側開口がそれぞれ上記断熱扉14及び16よりも厚さが厚く頑丈な真空断熱扉22及び23で覆われている。真空断熱扉22及び23はその周囲をシール部材によりシールされ開閉機構により開閉される。
【0041】
浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)を備え、両側部及び底部にヒータ(不図示)が配置されている。
【0042】
ガス浸炭・拡散部25は、比較的厚さの薄い炉壁26で区画され、全体的に四角筒形状で横断面は矩形状である。ワーク50を乗せた数個のトレイを収納できる程度の長さを持つ。左側開口及びガス浸炭・拡散部25と降温部35との境界をそれぞれ覆う断熱扉27及び28は開閉機構により開閉される。
【0043】
長手方向の中間部がアーチ29により左ゾーン31aと右ゾーン31bとに区分され、各ゾーンに浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン32と、両側部及び底部に配置されたヒータ(不図示)とを備えている。
【0044】
降温部35は全体的に直方体形状を持ち、ワーク50を乗せた2から3個のトレイを収納できる長さを持つ。右側開口と油槽45との境界部を覆う断熱扉36は開閉機構により開閉される。浸炭ガスの導入口及び排出口(不図示)と、導入した浸炭ガスを攪拌する攪拌用ファン37とを備えている。また、両側部及び底部にヒータ(不図示)が配置されている。
【0045】
上記昇温部15,真空浸炭部20,ガス浸炭・拡散部25及び降温部35の横断面は形状及び寸法が同じである。
【0046】
内部に冷却湯が貯蔵された油槽45は縦長形状を呈し、ワーク50が乗せられた1個のトレイを収納できる長さを持つ。右側開口を仕切扉41により覆われている。
▲2▼効果
本実施例のガス浸炭装置60において真空浸炭部20は、ワーク50を乗せた1個のトレイを収納できる大きさを持つに過ぎない。よって、厚さの厚い炉壁21の長さが短くでき、丈夫な構造が要求される断熱扉22及び23の個数が少なくて済む。また、ガス浸炭・拡散部25は上記特許文献1のようにガス浸炭のみで浸炭を完了する浸炭装置に比べて短くできる。
(浸炭方法)
次に、上記ガス浸炭装置によるガス浸炭方法について、図1,図2及び図3を参照しつつ説明する。
▲1▼手順
図2に示すように、トレイに乗せられたワーク50は装入工程S1において、油圧式プッシャにより装入部10から次々に装入される。次に、昇温工程S2において昇温部15に搬送され、温度が上昇する。次に、真空浸炭工程S3において真空浸炭部20により真空浸炭され、ワーク50の表面に炭素が侵入する。
【0047】
続いて、ガス浸炭・拡散工程S4においてガス浸炭・拡散部25により浸炭及び拡散され、炭素がワーク50の内部に拡散する。次に、降温工程S5において降温部35に搬送され、ワーク50の温度が降下する。その後、焼入工程S6において油槽40により焼入れされる。
【0048】
上記各工程を、図3を基に詳述する。図3(a)は時間と各部分15,20,25及び35との圧力との関係即ちワーク50が通過している各部分の圧力を示し、(b)は時間と各部分15,16,20,25及び35と温度との関係即ちワークが通過している各部分の温度を示し、(c)は時間とワーク50の表面炭素濃度との関係即ちワークが各部分15,20,25及び35を通過している時点での表面炭素濃度を示す。
【0049】
未処理品のワーク50をトレイに乗せて装入部10に装入する。昇温部15にはワーク50の酸化を防止するため、大気圧下でRxガスを導入する。導入されたRxガスは燃焼し、装入部10から排気される。装入部10がRxガスで置換された後、ワーク50を乗せた一つのトレイを装入部10から昇温部15に搬送する。図3(a)に示すように昇温部15の圧力は100kPaであり、図3(b)に示すように温度は右側ゾーン18bで950℃まで上昇する。これに伴いワーク50はRxガスにより浸炭され、図3(c)に示すようにCP値は0.2から0.4%に上昇する。
【0050】
ワーク50が昇温部15で昇温されかつ真空浸炭部20がRxガスで大気圧になった後、一つのワーク50を昇温部15から真空浸炭部20に搬送する。図3(a)に示すように搬送の完了後直ちに真空浸炭部20を0.1kPaまで真空排気し,2kPaまで炭化水素(C2H4)で復圧し、真空浸炭を開始する。図3(c)に示すように浸炭の初期のみワーク50の表面炭素濃度が急速に高く(約1.4%)なる。図3(b)に示すように、このとき真空浸炭部20の温度は950℃である。
【0051】
設定した時間だけワーク50を真空浸炭した後、Rxガス及び炭化水素(C4H10)で真空浸炭部20を大気圧まで復圧し、一つのワーク50をガス浸炭・拡散部25に搬送する。浸炭・拡散部25の装入部10側のCP値が1.0%、油槽45側のCP値が0.8%となるように雰囲気制御を行う。ガス浸炭・拡散部25を搬送される間に、ワーク50は図3(c)に示すように表面炭素濃度を0.8%に下げながら炭素を内部に拡散させる。この間、図3(a)に示すように圧力は100kPaに維持され、図3(b)に示すように温度は950℃に維持される。
【0052】
表面炭素濃度が0.8%になった後、一つのワーク50を降温部35に搬送する。図3(b)に示すように降温部35で焼入温度850度まで降温し、油槽部40へ搬送して焼き入れする。
▲2▼効果
本実施例のガス浸炭方法による効果を確認すべく、実験を行った。肌焼鋼で3つのテストピース(以下「TP」と呼ぶ)を製作した。何れも形状は丸棒で、大きさはφ18x50lである。TP1をトレイに乗せてを上記ガス浸炭装置60の真空浸炭部20及びガス浸炭・拡散部25で炭素を浸炭及び拡散させた。その際、真空浸炭の温度は950℃、ガス浸炭・拡散の温度は950℃とし、炭素の浸炭・拡散時間と肌焼深さ(浸炭深さ)との関係を調べた。
【0053】
これに対して、TP2は、上記ガス浸炭装置60とは別の真空浸炭専用の浸炭炉により、温度950℃で真空浸炭のみで浸炭を完了させた。また、TP3は、上記ガス浸炭装置60とは別のガス浸炭・拡散専用の浸炭炉により温度950℃でガス浸炭及び拡散のみで浸炭を完了させた。
【0054】
TP1からTP3による実験の結果を図4に示す。横軸は浸炭・拡散時間(分)の平方根であり、縦軸は浸炭深さ(mm)である。但し、何れも場合も浸炭工程のみを示し、昇温工程や降温工程は示していない。
【0055】
TP1による実験結果が直線aで、TP2による実験結果が直線bで、TP3による実験結果が直線cで、それぞれ示されている。例えば拡散・浸炭時間の平方根((浸炭・拡散時間)1/2)10分で比較すると、本実施例により浸炭したTP1の浸炭深さは約0.7mmであり、真空浸炭したTP2の浸炭深さ0.75mmに近く、ガス浸炭・拡散したTP3の浸炭深さ0.38mmよりも遙かに深い。一方、例えば浸炭深さ0.6mmで比較すると、TP1の浸炭・拡散時間は約64(82)分であり、TP2の浸炭・拡散時間約(7.5)2分に近く、TP3の浸炭・拡散時間約深さ(12.7)2分よりも遙かに短い。
【0056】
これより、真空浸炭及びガス浸炭・拡散を施したTP1は、真空浸炭のみを施したTP2とほぼ同等の短い時間でほぼ同等の浸炭深さを得ることが分かる。これは、浸炭の初期のみを真空浸炭部20で行い、残りはガス浸炭・拡散部25で行ったためである。
【0057】
尚、上記昇温部15における昇温時の浸炭を避ける場合は、不活性ガス(N2等)又は不活性ガス及び水素を昇温部15に導入する。この場合、装入部10は真空排気できる構造として、ワーク50の酸化を防ぐことが望ましい。
【0058】
【発明の効果】
以上述べてきたように、第1発明のガス浸炭方法では、浸炭の初期に真空浸炭工程で被処理物のCP値を急激に上昇させるので、真空浸炭のみで浸炭を完了させる従来例と同等の浸炭速度が得られる。被処理物の表面に炭素を侵入させるのみなので、浸炭時間は短く、浸炭ガスの使用量が少なくて済み、コストの上昇が抑制できる。また、ガス浸炭・拡散工程は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭するので、浸炭時間を従来例よりも短くできる。
【0059】
一方、第2発明のガス浸炭装置では、浸炭の初期に真空浸炭部で被処理物のCP値を急激に上昇させるので、真空浸炭のみで浸炭を完了させる従来例と同等の浸炭速度が得られる。真空浸炭部は被処理物の表面に炭素を侵入させるのみなので、寸法が小さくて済み設備費用の上昇が最低限に抑制できる。また、ガス浸炭・拡散部は表面に炭素が侵入した被処理物を浸炭するので、長さを短くできる。
【0060】
請求項2のガス浸炭方法及び請求項7のガス浸炭装置では、真空浸炭及びガス浸炭・拡散が効果的に行われる。請求項3のガス浸炭方法及び請求項8のガス浸炭装置では、真空浸炭工程の時間を短くでき真空浸炭部の構成を小さくできる。
【0061】
請求項4のガス浸炭方法及び請求項9のガス浸炭装置では、真空浸炭工程及びガス浸炭・拡散工程に要する時間が短くなり、真空浸炭部及びガス浸炭・拡散部の構成が簡単になる。請求項5のガス浸炭方法及び請求項10のガス浸炭装置では、真空浸炭及びガス浸炭・拡散がより効果的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス浸炭装置の実施例を示す正面断面図である。
【図2】上記実施例の作動即ちガス浸炭方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)は時間と各部分との圧力との関係を示し、(b)は時間と各部分と温度との関係を示し、(c)は時間とワークの表面炭素濃度との関係を示す。
【図4】上記実施例等による浸炭拡散時間とテストピースの肌焼深さとの関係を示すグラフである。
【図5】特許文献1の従来例を示す正面断面図である。
【図6】特許文献2の従来例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
10:装入部 15:昇温部
20:真空浸炭部 21:炉壁
25:ガス浸炭・拡散部 26:炉壁
35:降温部 40:油槽
60:ガス浸炭装置
S3:真空浸炭工程 S4:ガス浸炭・拡散工程
Claims (10)
- 所定圧力、所定温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭工程と、
その後、該真空浸炭工程の所定圧力よりも高い圧力、所定温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散工程と、から成ることを特徴とするガス浸炭方法。 - 前記真空浸炭工程における浸炭ガスの圧力は100kPaより低く温度は900℃より高く、前記被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高く、前記ガス浸炭・浸炭工程における浸炭ガスの圧力は大気圧程度で温度は900℃より高く、該被処理物の表面炭素濃度は1.0%よりも低い請求項1に記載のガス浸炭方法。
- 前記真空浸炭工程において1から2個の前記被処理物が真空浸炭される請求項1に記載のガス浸炭方法。
- 前記真空浸炭工程に連続して前記ガス浸炭・拡散工程が実行される請求項1に記載のガス浸炭方法。
- 更に、前記真空浸炭工程の前に未浸炭の前記被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温工程を含み、前記ガス浸炭・拡散工程の後に浸炭済みの該被処理物の温度を所定値まで降下させる降温工程を含む請求項1に記載のガス浸炭方法。
- 所定圧力、所定温度で浸炭ガスを被処理物に浸炭させる真空浸炭部と、
浸炭された該被処理物に該真空浸炭部の所定の圧力よりも高い圧力、所定の温度よりも低い又は同等の温度で浸炭ガスを浸炭及び拡散させるガス浸炭・拡散部と、
から成ることを特徴とするガス浸炭装置。 - 前記真空浸炭部における浸炭ガスの所定圧力は100kPaより低く所定温度は900℃より高く、前記被処理物の表面炭素濃度は0.9%より高く、前記ガス浸炭・浸炭部における浸炭ガスの圧力は大気圧程度であり温度は900℃より高く、表面炭素濃度は1.0%よりも低い請求項6に記載のガス浸炭装置。
- 前記真空浸炭部は1から2個の前記被処理物を収納する長さを持つ請求項6に記載のガス浸炭装置。
- 前記真空浸炭部と前記ガス浸炭・拡散部とは同じ構成の横断面を持つ請求項6に記載のガス浸炭装置。
- 更に、前記真空浸炭部の前に未浸炭の前記被処理物の温度を所定値まで上昇させる昇温部を含み、前記ガス浸炭・拡散部の後に浸炭済みの該被処理物の温度を所定値まで降下させる降温部を含む請求項6に記載のガス浸炭装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006009087A (ja) * | 2004-06-25 | 2006-01-12 | Fuji Heavy Ind Ltd | 多段連続浸炭焼入れ炉及び連続浸炭焼入れ方法 |
JP2008509282A (ja) * | 2004-08-06 | 2008-03-27 | エテュード エ コンストリュクスィオン メカニーク | 低圧熱化学的処理機械 |
-
2002
- 2002-09-03 JP JP2002257705A patent/JP2004091900A/ja active Pending
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JP4540406B2 (ja) * | 2004-06-25 | 2010-09-08 | 富士重工業株式会社 | 多段連続浸炭焼入れ炉及び連続浸炭焼入れ方法 |
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