JP2004091141A - クレーンの過負荷防止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クレーンの限界値と、これに安全を見込んだ設定値との中間の値での作業を可能とし、しかもこの中間設定値での作業時にオペレータの不注意による危険操作を制限して安全性を確保する。
【解決手段】吊荷の巻上/巻下を指令する巻上用リモコン弁9の操作レバー9a、及びブームの巻上/巻下を指令するブーム起伏用リモコン弁10の操作レバー10aにそれぞれ自動復帰式の切換スイッチ16,17を設け、この切換スイッチ16,17が切換操作されたときに、コントローラ11における荷重の設定値が、クレーンの限界値に余裕を持たせた第1設定値から、これよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると危険側動作を自動停止させるように構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】吊荷の巻上/巻下を指令する巻上用リモコン弁9の操作レバー9a、及びブームの巻上/巻下を指令するブーム起伏用リモコン弁10の操作レバー10aにそれぞれ自動復帰式の切換スイッチ16,17を設け、この切換スイッチ16,17が切換操作されたときに、コントローラ11における荷重の設定値が、クレーンの限界値に余裕を持たせた第1設定値から、これよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると危険側動作を自動停止させるように構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は過負荷によるクレーンの転倒や破損等の危険事態の発生を防止するための過負荷防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、クローラクレーン、ホイールクレーン等のクレーンの過負荷防止装置は、一般に、実際の吊り荷重が、作業半径に対応して予め設定された設定値(定格総荷重)に達したときに過負荷防止作用を働かせる(通常は吊荷巻上、ブーム巻下という危険側のクレーン動作を自動停止させる)ように構成されている。
【0003】
ここで、上記設定値は、安全を考慮してクレーンが本来持つ吊り能力(転倒や破損が発生しない限界値)よりも低い値として設定されている。たとえば、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率でいうと、クレーン能力が127%の場合に、負荷率100%で自動停止作用が働くように構成され、実際には吊り能力に余裕を残している。
【0004】
しかし、この「基本設定」では、負荷率100%の近傍での作業時に、頻繁に過負荷防止作用が働いて作業性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、過負荷防止作用を解除する解除手段(通常は、第三者が管理するキー式のメインスイッチと解除スイッチで構成される)を設け、あと一歩で作業が完了する状況で過負荷防止作用が働いた場合等に、「非常設定」として、この解除手段により自動停止作用を無効として、上記余裕分の範囲で作業を継続できるようにした技術が提案され実施されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この非常設定で作業を継続した場合に、オペレータの判断ミス等によって吊り荷重が限界値を超えてしまう可能性があり、安全性に問題がある。
【0007】
一方、この点の対策として、特開2000−143170号に示されているように、解除手段によって過負荷防止作用が解除された場合でも、設定値と限界値の中間の値(中間設定値)で自動停止作用が働くようにした技術が提案されている。
【0008】
しかし、中間設定値で過負荷防止作用が働くとはいえ、基本設定での作業時と異なり、過負荷に直結する危険作業状態であることに変わりはないにもかかわらず、公知技術によると、この中間設定での作業時にオペレータの操作に何ら制約がないため、オペレータの不注意な操作によって危険事態に陥る可能性がある。
【0009】
たとえば、中間設定値近傍で、ブーム下げと走行または旋回の複合操作を行った結果、吊荷が振れて荷重が瞬間的に増大し、限界値に達する可能性がある。とくに、ラチスブーム式のクローラクレーンでは、ブームやジブの操作もウィンチで行う等、複数のアクチュエータを同時に操作する機会が多いことから、この点の改善が望まれていた。
【0010】
本発明は上記の問題を解決し、クレーンの限界値と、これに安全を見込んだ設定値(定格総荷重)との間での作業を可能とし、しかもこの中間設定値での作業時にオペレータの不注意による危険操作を制限して安全性を確保することができるクレーンの過負荷防止装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、操作レバーによってクレーン動作を指令する操作手段と、実際の吊り荷重を検出する吊り荷重検出手段と、この吊り荷重検出手段によって検出される実際の吊り荷重が作業半径に対応して予め設定された値に達したときに過負荷防止作用を行わせる制御手段とを備えたクレーンの過負荷防止装置において、上記制御手段に、上記設定値として、クレーンが持つ限界値に余裕を持たせた第1設定値と、この第1設定値と上記限界値の中間の値である第2設定値が記憶される一方、上記操作手段の操作レバーに自動復帰式の切換スイッチが設けられ、この切換スイッチの操作時に、上記制御手段における設定値が上記第1設定値から第2設定値に切換えられるように構成されたものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、切換スイッチは、吊荷巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーと、ブームまたはジブの巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーの少なくとも一方に設けられたものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに危険側のクレーン動作を減速させるように構成されたものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1または2の構成において、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときにクレーンの全動作を減速させるように構成されたものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成において、制御手段における第1設定値に対する第2設定値の荷重の増加分が、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で異なる値に設定されたものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成において、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第2設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたものである。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成において、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第1設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたものである。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの構成において、制御手段による過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられ、制御手段は、この解除手段が解除側に操作されていないときのみに切換スイッチによる第2設定値への切換えを有効とするように構成されたものである。
【0019】
上記構成によると、操作レバーに設けられた切換スイッチが切換操作されると、設定値が第1設定値からこれよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると過負荷防止作用が行われる。
【0020】
すなわち、中間設定での作業が可能となるため、あと一歩で過負荷防止作用が働いた場合に、この中間設定で作業を継続して作業性を高めることができる。
【0021】
ここで、切換スイッチは、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチであるため、オペレータは必ず同スイッチを操作し続けたまま作業のためのレバー操作を行わなければならない。
【0022】
このため、
▲1▼ 片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となる。
【0023】
▲2▼ 切換スイッチから手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われる。
【0024】
▲3▼ オペレータが、意識して切換スイッチを操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を持ち続ける。
【0025】
これらの点により、とくにクローラクレーンにおいて多用される複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に危険事態の発生を防止し、安全を確保することができる。
【0026】
とくに、請求項2の構成によると、切換スイッチが、吊荷巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーと、ブームまたはジブの巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバー、すなわち、危険側動作(吊荷巻上、ブームまたはジブの巻下)を操作対象として含む両操作手段の少なくとも一方に設けたから、危険側の操作を直接抑制できることで、より安全性を高めることができる。
【0027】
また、請求項3,4の構成によると、切換スイッチの操作時にクレーン動作(請求項3では吊荷巻上、ブーム巻下げ、ジブ巻下げといった過負荷に直結する危険側動作、請求項4では走行、旋回といった間接的に過負荷につながる動作を含むクレーンの全動作)が減速するため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0028】
一方、クレーンの過負荷防止装置においては、普通、作業半径の複数の領域で設定値を決める基準が異なる。たとえば、作業半径が小さい第1の領域ではブーム強度、中間の第2領域では前方安定度、作業半径が大きい第3の領域ではブームガイライン(ブームを支持するロープ)の強度をそれぞれ基準として設定値が決められる。
【0029】
そして、あるクレーンではブーム強度に余裕が大きくて前方安定度に余裕が小さく、別のクレーンでは逆の特性を有するというように、クレーンによって特性が異なる場合がある。
【0030】
この点、請求項5の構成によると、このようなクレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定する(たとえば余裕が大きい領域では増加分を大きくとる)ため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0031】
請求項6,7の構成によると、切換スイッチが切換操作されたときに、表示手段によって負荷率をオペレータに向けて表示するため、オペレータは負荷率の推移を見ながら安全に作業することができる。
【0032】
この場合、請求項6では、表示される負荷率が、切換スイッチの操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるため、たとえば負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも100%以下を目標として作業を行えばよい。このため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0033】
これに対し、請求項7では、負荷率が、切換スイッチの操作後も第1設定値に対する割合のまま連続して表示される(たとえば第1設定値のもとで100%で自動停止した後、連続して101%,102%…と表示される)ため、100%を超えた範囲で作業している認識をオペレータに持たせ、慎重な操作を促す効果がある。
【0034】
請求項8の構成によると、過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられたクレーンにおいて、解除手段が解除側に操作されていないときのみに、切換スイッチによる第1設定値から第2設定値への切換えを有効とするため、荷重設定として、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止動作が解除された非常設定の3通りが得られる。
【0035】
すなわち、荷重設定の選択肢が広がり、作業の融通性を高めることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図によって説明する。
【0037】
この実施形態では、ブームが伸縮しない所謂ラチスブーム式のクレーンを適用対象として例にとっている。
【0038】
図1に過負荷防止装置と、過負荷防止の対象となる吊荷巻上/巻下回路及びブーム巻上/巻下回路の構成を示している。
【0039】
同図において、1は吊荷を上げ下げする巻上ウィンチ、2はブームを起伏させるブーム起伏ウィンチで、それぞれ巻上用油圧モータ3、ブーム起伏用油圧モータ4によって回転駆動される。
【0040】
両油圧モータ3,4は、それぞれ油圧パイロット式のコントロールバルブ(方向切換弁)5,6を介して油圧源としての油圧ポンプ7,8に接続され、コントロールバルブ5,6によって油圧モータ3,4の回転方向と速度が制御される。
【0041】
両コントロールバルブ5,6は、それぞれ操作手段としての巻上用、ブーム起伏用のリモコン弁9,10によって制御され、結局、この両リモコン弁9,10の操作方向と操作量に応じて吊荷及びブームの巻上/巻下動作が制御される。
【0042】
また、両コントロールバルブ5,6と両リモコン弁9,10とを結ぶ巻上側及び巻下側両パイロットライン中に、コントローラ11によって制御される電磁比例減圧弁(以下、減速停止弁という)12,13,14,15が設けられ、この減速停止弁12〜15が作動(弁開度が変化)することによりコントロールバルブ5,6へのパイロット圧が低下しまたは0となって、油圧モータ3,4(ウィンチ1,2)が減速または停止する。
【0043】
一方、両リモコン弁9,10の操作レバー9a,10aには、それぞれ切換スイッチ16,17(以下、第1切換スイッチ、第2切換スイッチという)が設けられている。
【0044】
なお、図例では両切換スイッチ16,17を操作レバー9a,10aのグリップ部分に設置した場合を示しているが、同レバー9a,10aのグリップ下部や中間部に設けてもよい。
【0045】
この両切換スイッチ16,17は、押し操作力を解除すると原位置(オフ)に自動的に戻る自動復帰式のモーメンタリスイッチとして構成され、この両切換スイッチ16,17の操作信号がコントローラ11に入力される。
【0046】
また、このコントローラ11には、ブーム起伏用のガイラインの張力を荷重wとして検出する荷重検出器18からの信号と、ブーム角度aを検出するブーム角度検出器19からの信号が入力される。
【0047】
コントローラ11は、入力されたブーム角度a及び荷重wから実際に作用している吊り荷重(以下、実荷重という)Wを、
W=f1(a・w) …式1 (f1は関数)
によって演算するとともに、ブーム角度aからそのときの作業半径Rを、
R=f2(a) …式2 (f2は関数)
によって演算する。
【0048】
コントローラ11には、予め、図2,3の破線で示すように、クレーンが転倒または破損に至る限界値に安全を見込んだ定格総荷重としての第1設定値を作業半径に対応して定めた第1設定値データAと、同実線で示すように、第1設定値よりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値を作業半径に対応して定めた第2設定値データBとが記憶され、切換スイッチ16,17が操作されないときは第1設定値データAが、操作されたときは第2設定値データBがそれぞれ選択される。
【0049】
そして、この選択された設定値データと、式2で得られたそのときの作業半径Rから設定値WAが求められるとともに、この設定値WAに対する実荷重Wの割合である負荷率が求められ、この負荷率が表示手段(たとえばモニタ装置)20によりオペレータに向けて表示される。
【0050】
この場合、表示される負荷率は、切換スイッチ16,17の操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるように構成されている。すなわち、負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも、負荷率が100%を上限として表示される。
【0051】
また、第1設定値のもとで負荷率が100%に達すると、コントローラ11から吊荷巻上側及びブーム巻下側の減速停止弁12,15に停止信号が送られて吊荷巻上及びブーム巻下という危険側動作が自動停止する。
【0052】
ここで、第1設定値に対する第2設定値の増加分は、作業半径の全領域で同じとしてもよいが、図2,3に示すように、適用されるクレーンの特性に応じて複数の領域で異ならせてもよい。
【0053】
たとえば、クレーンの限界値が、作業半径が小さい領域▲1▼ではブームの強度で制限され、中間の領域▲2▼では前方安定度によって制限され、大きい領域▲3▼ではブームガイラインの強度によって制限されるクレーンにおいて、ブーム強度の余裕が大きくて前方安定度の余裕が小さい場合には、図2に示すように領域▲1▼での設定値の増加分を大きすればよい。
【0054】
逆に、ブーム強度の余裕が小さく、前方安定度の余裕が大きいクレーンの場合は、図3に示すように領域▲2▼での設定値の増加分を大きくとればよい。また、図3に示すように最大作業半径を大きく設定することもできる。
【0055】
一方、切換スイッチ16,17が切換操作されると、操作された切換スイッチ16または17が設けられたリモコン弁9または10の操作対象となる動作(吊荷巻上/巻下またはブーム巻上/巻下)が減速される。
【0056】
このコントローラ11の作用を図4のフローチャートによってさらに詳述する。
【0057】
制御開始とともに、ステップS1,S2で、検出されたブーム角度a及び荷重wが読み込まれた後、吊り荷重Wの演算(ステップS3)、作業半径の演算(ステップS4)がそれぞれ行われる。
【0058】
続くステップS5では第1切換スイッチ16の操作の有無、ステップS6では第2切換スイッチ17の操作の有無、ステップS7では両切換スイッチ16,17のいずれか一方の操作の有無がそれぞれ判別され、両切換スイッチ16,17がともに操作されていないときは、ステップS8で第1設定値データAが選択され、ステップS9でこの第1設定値データAに基づき、現在の作業半径における設定値(第1設定値)WAを求める。
【0059】
一方、第1切換スイッチ16が操作された場合(ステップS5でオンの場合)は、ステップS10で、同スイッチ16が設けられた巻上用リモコン弁9の操作対象である吊荷巻上/巻下の減速指令が減速停止弁12,13に向けて出力され、第2切換スイッチ17が操作された場合(ステップS6でオンの場合)は、ステップS11で、同スイッチ17が設けられたリモコン弁10の操作対象であるブーム巻上/巻下(起伏)の減速指令が減速停止弁14,15に向けて出力される。
【0060】
これにより、吊荷巻上/巻下動作またはブーム巻上/巻下動作が減速される。
【0061】
また、両切換スイッチ16,17のいずれか一方が操作された場合、ステップS7からステップS12に移って図2,3中の第2設定値データBが選択され、ステップS9でこの第2設定値データBに基づき、現在の作業半径における設定値(第2設定値)WAを求める。
【0062】
次いで、ステップS13で、第1または第2設定値に対する実荷重の割合である負荷率Sが求められるとともに、ステップS14でこの負荷率Sが100%に達したか否かが判別される。
【0063】
ここで負荷率Sが100%未満であればステップS1に戻り、100%に達すると、ステップS15で危険側動作、すなわち、吊荷巻上及びブーム巻下という負荷が増加する側の動作を停止させる指令が、対応する減速停止弁12,15に向けて出力され、これにより過負荷が防止される。
【0064】
このように、実荷重Wと比較する設定値として、クレーンの限界値に安全を見込んだ第1設定値と、これよりも大きくて限界値よりは小さい中間値としての第2設定値とを定め、リモコン弁9,10の操作レバー9a,10aに設けた切換スイッチ16,17が操作されたときに、設定値を第1設定値から第2設定値に切換えて中間設定での作業が可能となるように構成したから、第1設定値のもとであと一歩で自動停止した場合に、中間設定に切換えて作業を継続することができる。
【0065】
この場合、切換スイッチ16,17として、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチを用いているため、オペレータは同スイッチ16または17を操作し続けたままレバー操作を行わなければならない。
【0066】
このため、片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となるため、複合操作が抑止される。また、切換スイッチ16,17から手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われるとともに、オペレータが、意識して切換スイッチ16,17を操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を失わない。
【0067】
これらの点により、複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に複合操作や不注意な操作によって危険事態が発生するおそれがなくなり、安全を確保することができる。
【0068】
また、切換スイッチ16,17の操作時に、同スイッチ16,17が設けられたリモコン弁9,10によるクレーン動作(吊荷巻上/巻下動作及びブーム巻上/巻下動作)を自動的に減速させるため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0069】
一方、図2,3に示すように、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域▲1▼〜▲3▼で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定するため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0070】
また、前記のように、切換スイッチ16,17が切換操作されないときは第1設定値に対する実荷重の割合、同スイッチ16,17が操作されたときは第2設定値に対する実荷重の割合がそれぞれ上限100%の負荷率として演算され、表示手段20に表示される。すなわち、設定値の切換えに関係なく、負荷率は100%を限度として表示される。
【0071】
従って、オペレータは、第1及び第2いずれの設定値の場合でも負荷率100%以下を目標として作業を行えばよいため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0072】
なお、従来設けられていた解除手段は、この装置においては設けなくてよいし設けてもよく、設ける場合、次のように構成することができる。
【0073】
図1において、21は解除手段を構成するメインスイッチ(通常、第三者が管理するキー式のスイッチ)、22は同解除スイッチ(オペレータによって操作されるスイッチ)で、メインスイッチ21が図下側の解除許可位置に操作されたことを条件として解除スイッチ22のオン操作が有効となり、過負荷防止(自動停止)作用が解除されるように構成されている。
【0074】
この構成を前提として、図示のようにメインスイッチ21が上側の解除不許可位置にあるときに、この解除不許可信号をコントローラ11に入力し、この解除不許可信号が入力されているときのみに、切換スイッチ16,17の操作による設定値の切換え作用が有効となるように構成する。
【0075】
こうすれば、メインスイッチ21が解除不許可位置にある状態で切換スイッチ16,17が切換操作されないときは第1設定値による基本的な過負荷防止作用、同状態で切換スイッチ16,17が切換操作されると第2設定値による過負荷防止作用がそれぞれ働き、メインスイッチ21が解除許可位置に操作されかつ解除スイッチ22がオン操作されたときに過負荷防止作用が解除される。
【0076】
すなわち、荷重設定を、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止作用が解除された非常設定の3通りのうちから選択でき、荷重設定の選択肢が広がるため、作業の融通性を高めることができる。
【0077】
第2実施形態(図5参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0078】
この第2実施形態においては、常に第1設定値を基準として負荷率を求め、切換スイッチ16,17の操作の有無に応じて自動停止条件(自動停止させる負荷率)を変えるように構成されている。
【0079】
すなわち、図5のフローチャートにおいて、図4のステップS1〜ステップS4と同じステップS21〜ステップS24を経た後、ステップS25,S26において第1設定値データAに基づいて負荷率Sを求める。
【0080】
次いで、第1切換スイッチ16が切換操作されたときは吊荷巻上/巻下の減速指令(ステップS27,S28)が、また第2切換スイッチ17が切換操作されたときはブーム巻上/巻下の減速指令(ステップS29,S30)がそれぞれ出されるとともに、両切換スイッチ16,17のいずれもが切換操作されないときは負荷率100%を停止負荷率Tとし、いずれか一方が切換操作されたときは負荷率100%+αを停止負荷率Tとする(ステップS32,S33)。
【0081】
そして、ステップS34で負荷率Sと停止負荷率Tが比較され、S<Tの場合はステップS21に戻り、S≧TとなったときにステップS35で危険側動作である吊荷巻上動作及びブーム巻上動作の自動停止信号を出力する。
【0082】
この実施形態によると、負荷率Sが常に第1設定値を基準として求められるため、フローチャート中には示していないが、求められた負荷率Sがそのまま図1の表示手段20に表示されることとなる。
【0083】
すなわち、第1設定値のもとで負荷率100%に達し、第2設定値に切換えられた後も、101%,102%…と連続して表示される。
【0084】
このため、負荷率Sが100%を超えた範囲で作業しているという認識をオペレータに持たせることができるため、慎重な操作を促す効果がある。
【0085】
第3実施形態(図6参照)
第1設定値のもとで負荷率100%に達した後は、第2設定値に切換えられたとしても安全域ではないことに変わりはない。この場合、走行動作や旋回動作は危険事態に直結することはないが、とくに設定値近くでは慎重を期すに越したことはない。
【0086】
そこで第3実施形態においては、切換スイッチ16,17の操作の有無に関係なく、負荷率Sが100%を超えたときにすべてのクレーン動作(吊荷巻上/巻下、ブーム巻上/巻下、走行、旋回)を減速させるように構成されている。
【0087】
すなわち、図5のフローチャートのステップS21〜26と同じステップS41〜S46を経た後、ステップS47で負荷率Sが100%を超えたか否かが判別され、ここでYES(S≧100%)となったときに、ステップS48でクレーンの全動作を減速させる指令が出力される。
【0088】
ステップS47でNOの場合は、ステップS49,S50で両切換スイッチ16,17が切換操作されたか否かが判別され、切換操作されていないときはステップS51でT=100%、いずれか一方が切換操作されたときはステップS52でT=100%+αとそれぞれ停止条件が定められる。
【0089】
そして、図5のステップS34と同様に、ステップS53で負荷率Sと停止負荷率Tとが比較され、S≧TのときにステップS54で危険側動作(吊荷巻上、ブーム巻上)を停止させる信号が出力される。
【0090】
このように、負荷率100%で走行及び旋回を含む全クレーン動作を減速させることにより、安全性を一層高めることができる。
【0091】
他の実施形態
(1)上記実施形態では、図1中の減速停止弁(電磁比例減圧弁)12〜15を作動させることによって減速動作を行わせる構成をとったが、油圧ポンプ7,8の傾転を制御してポンプ吐出流量を下げることによって減速させる構成をとってもよい。あるいは、減速停止弁12〜15とポンプ7,8の双方を制御するようにしてもよい。
【0092】
(2)上記実施形態のように切換スイッチ16,17をリモコン弁9,10のレバー9a,10aに設けることで複合操作を困難にできるが、さらに次のように構成してもよい。
【0093】
▲1▼ 切換スイッチ16,17が切換操作されたときに、同スイッチ16,17が設けられたリモコン弁9,10の対象動作(吊荷巻上/巻下またはブーム巻上/巻下)のみが可能となり、他の動作は一切行われないように油圧処理等によってインターロックをかけるように構成する。
【0094】
▲2▼ 上記他の動作中は、切換スイッチ16,17が切換操作されてもその操作を無効とする(設定値切換作用が働かない)ように構成する。
【0095】
こうすれば、負荷率100%以上では実行可能な動作を一つに制限することができるため、安全性をより高めることができる。
【0096】
(3)上記実施形態ではブームが伸縮しないクレーンを適用対象として例にとったが、本発明はブームが伸縮するクレーンにも適用することができる。
【0097】
【発明の効果】
上記のように本発明によると、操作レバーに自動復帰式の切換スイッチを設け、この切換スイッチが切換操作されたときに、設定値が、クレーンの限界値に余裕を持たせた第1設定値から、これよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると過負荷防止動作が行われるように構成したから、あと一歩で自動停止した場合に、第2設定値による中間設定で作業を継続して作業性を高めることができる。
【0098】
しかも、切換スイッチは、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチであるため、オペレータは必ず同スイッチを操作し続けたまま作業のためのレバー操作を行わなければならない。
【0099】
このため、片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となること、切換スイッチから手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われること、オペレータが、意識して切換スイッチを操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を持ち続けることにより、とくにクローラクレーンにおいて多用される複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に危険事態の発生を防止し、安全を確保することができる。
【0100】
とくに、請求項2の発明によると、切換スイッチを、吊荷巻上/巻下用操作手段とブームまたはジブの巻上/巻下用操作手段の少なくとも一方の操作レバーに設けたから、危険側の操作を直接抑制できることで、より安全性を高めることができる。
【0101】
また、請求項3,4の発明によると、切換スイッチの操作時にクレーン動作(請求項3では危険側動作、請求項4では走行、旋回といった間接的に過負荷につながる動作を含むクレーンの全動作)が減速するため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0102】
一方、請求項5の発明によると、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定するため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0103】
請求項6,7の発明によると、切換スイッチが切換操作されたときに、表示手段によって負荷率をオペレータに向けて表示するため、オペレータは負荷率の推移を見ながら安全に作業することができる。
【0104】
この場合、請求項6では、表示される負荷率が、切換スイッチの操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるため、たとえば負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも100%以下を目標として作業を行えばよい。このため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0105】
これに対し、請求項7では、負荷率が、切換スイッチの操作後も第1設定値に対する割合のまま連続して表示されるため、100%を超えた範囲で作業している認識をオペレータに持たせ、慎重な操作を促す効果がある。
【0106】
請求項8の発明によると、過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられたクレーンにおいて、解除手段が解除側に操作されていないときのみに、切換スイッチによる第1設定値から第2設定値への切換えを有効とするため、荷重設定として、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止動作が解除された非常設定の3通りが得られ、荷重設定の選択肢を広げて作業の融通性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】同実施形態におけるコントローラに記憶された設定値データを示す図である。
【図3】図2と異なる設定値データを示す図である。
【図4】第1実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 巻上ウィンチ
2 ブーム起伏ウィンチ
3 巻上ウィンチを駆動する巻上用油圧モータ
4 ブーム起伏ウィンチを駆動するブーム起伏用油圧モータ
5 巻上用コントロールバルブ
6 ブーム起伏用コントロールバルブ
7 巻上用油圧ポンプ
8 ブーム起伏用油圧ポンプ
9 巻上用操作手段としてのリモコン弁
9a 同リモコン弁の操作レバー
10 ブーム起伏用操作手段としてのリモコン弁
10 a 同リモコン弁の操作レバー
11 制御手段兼荷重検出手段としてのコントローラ
12〜15 減速停止弁
16,17 切換スイッチ
18 荷重検出手段を構成する荷重検出器
19 同ブーム角度検出器
20 表示手段
21 過負荷防止作用を解除する解除手段を構成するメインスイッチ
22 同解除スイッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は過負荷によるクレーンの転倒や破損等の危険事態の発生を防止するための過負荷防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、クローラクレーン、ホイールクレーン等のクレーンの過負荷防止装置は、一般に、実際の吊り荷重が、作業半径に対応して予め設定された設定値(定格総荷重)に達したときに過負荷防止作用を働かせる(通常は吊荷巻上、ブーム巻下という危険側のクレーン動作を自動停止させる)ように構成されている。
【0003】
ここで、上記設定値は、安全を考慮してクレーンが本来持つ吊り能力(転倒や破損が発生しない限界値)よりも低い値として設定されている。たとえば、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率でいうと、クレーン能力が127%の場合に、負荷率100%で自動停止作用が働くように構成され、実際には吊り能力に余裕を残している。
【0004】
しかし、この「基本設定」では、負荷率100%の近傍での作業時に、頻繁に過負荷防止作用が働いて作業性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、過負荷防止作用を解除する解除手段(通常は、第三者が管理するキー式のメインスイッチと解除スイッチで構成される)を設け、あと一歩で作業が完了する状況で過負荷防止作用が働いた場合等に、「非常設定」として、この解除手段により自動停止作用を無効として、上記余裕分の範囲で作業を継続できるようにした技術が提案され実施されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この非常設定で作業を継続した場合に、オペレータの判断ミス等によって吊り荷重が限界値を超えてしまう可能性があり、安全性に問題がある。
【0007】
一方、この点の対策として、特開2000−143170号に示されているように、解除手段によって過負荷防止作用が解除された場合でも、設定値と限界値の中間の値(中間設定値)で自動停止作用が働くようにした技術が提案されている。
【0008】
しかし、中間設定値で過負荷防止作用が働くとはいえ、基本設定での作業時と異なり、過負荷に直結する危険作業状態であることに変わりはないにもかかわらず、公知技術によると、この中間設定での作業時にオペレータの操作に何ら制約がないため、オペレータの不注意な操作によって危険事態に陥る可能性がある。
【0009】
たとえば、中間設定値近傍で、ブーム下げと走行または旋回の複合操作を行った結果、吊荷が振れて荷重が瞬間的に増大し、限界値に達する可能性がある。とくに、ラチスブーム式のクローラクレーンでは、ブームやジブの操作もウィンチで行う等、複数のアクチュエータを同時に操作する機会が多いことから、この点の改善が望まれていた。
【0010】
本発明は上記の問題を解決し、クレーンの限界値と、これに安全を見込んだ設定値(定格総荷重)との間での作業を可能とし、しかもこの中間設定値での作業時にオペレータの不注意による危険操作を制限して安全性を確保することができるクレーンの過負荷防止装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、操作レバーによってクレーン動作を指令する操作手段と、実際の吊り荷重を検出する吊り荷重検出手段と、この吊り荷重検出手段によって検出される実際の吊り荷重が作業半径に対応して予め設定された値に達したときに過負荷防止作用を行わせる制御手段とを備えたクレーンの過負荷防止装置において、上記制御手段に、上記設定値として、クレーンが持つ限界値に余裕を持たせた第1設定値と、この第1設定値と上記限界値の中間の値である第2設定値が記憶される一方、上記操作手段の操作レバーに自動復帰式の切換スイッチが設けられ、この切換スイッチの操作時に、上記制御手段における設定値が上記第1設定値から第2設定値に切換えられるように構成されたものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、切換スイッチは、吊荷巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーと、ブームまたはジブの巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーの少なくとも一方に設けられたものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに危険側のクレーン動作を減速させるように構成されたものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1または2の構成において、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときにクレーンの全動作を減速させるように構成されたものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成において、制御手段における第1設定値に対する第2設定値の荷重の増加分が、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で異なる値に設定されたものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成において、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第2設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたものである。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成において、設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第1設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたものである。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの構成において、制御手段による過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられ、制御手段は、この解除手段が解除側に操作されていないときのみに切換スイッチによる第2設定値への切換えを有効とするように構成されたものである。
【0019】
上記構成によると、操作レバーに設けられた切換スイッチが切換操作されると、設定値が第1設定値からこれよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると過負荷防止作用が行われる。
【0020】
すなわち、中間設定での作業が可能となるため、あと一歩で過負荷防止作用が働いた場合に、この中間設定で作業を継続して作業性を高めることができる。
【0021】
ここで、切換スイッチは、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチであるため、オペレータは必ず同スイッチを操作し続けたまま作業のためのレバー操作を行わなければならない。
【0022】
このため、
▲1▼ 片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となる。
【0023】
▲2▼ 切換スイッチから手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われる。
【0024】
▲3▼ オペレータが、意識して切換スイッチを操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を持ち続ける。
【0025】
これらの点により、とくにクローラクレーンにおいて多用される複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に危険事態の発生を防止し、安全を確保することができる。
【0026】
とくに、請求項2の構成によると、切換スイッチが、吊荷巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーと、ブームまたはジブの巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバー、すなわち、危険側動作(吊荷巻上、ブームまたはジブの巻下)を操作対象として含む両操作手段の少なくとも一方に設けたから、危険側の操作を直接抑制できることで、より安全性を高めることができる。
【0027】
また、請求項3,4の構成によると、切換スイッチの操作時にクレーン動作(請求項3では吊荷巻上、ブーム巻下げ、ジブ巻下げといった過負荷に直結する危険側動作、請求項4では走行、旋回といった間接的に過負荷につながる動作を含むクレーンの全動作)が減速するため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0028】
一方、クレーンの過負荷防止装置においては、普通、作業半径の複数の領域で設定値を決める基準が異なる。たとえば、作業半径が小さい第1の領域ではブーム強度、中間の第2領域では前方安定度、作業半径が大きい第3の領域ではブームガイライン(ブームを支持するロープ)の強度をそれぞれ基準として設定値が決められる。
【0029】
そして、あるクレーンではブーム強度に余裕が大きくて前方安定度に余裕が小さく、別のクレーンでは逆の特性を有するというように、クレーンによって特性が異なる場合がある。
【0030】
この点、請求項5の構成によると、このようなクレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定する(たとえば余裕が大きい領域では増加分を大きくとる)ため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0031】
請求項6,7の構成によると、切換スイッチが切換操作されたときに、表示手段によって負荷率をオペレータに向けて表示するため、オペレータは負荷率の推移を見ながら安全に作業することができる。
【0032】
この場合、請求項6では、表示される負荷率が、切換スイッチの操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるため、たとえば負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも100%以下を目標として作業を行えばよい。このため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0033】
これに対し、請求項7では、負荷率が、切換スイッチの操作後も第1設定値に対する割合のまま連続して表示される(たとえば第1設定値のもとで100%で自動停止した後、連続して101%,102%…と表示される)ため、100%を超えた範囲で作業している認識をオペレータに持たせ、慎重な操作を促す効果がある。
【0034】
請求項8の構成によると、過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられたクレーンにおいて、解除手段が解除側に操作されていないときのみに、切換スイッチによる第1設定値から第2設定値への切換えを有効とするため、荷重設定として、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止動作が解除された非常設定の3通りが得られる。
【0035】
すなわち、荷重設定の選択肢が広がり、作業の融通性を高めることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図によって説明する。
【0037】
この実施形態では、ブームが伸縮しない所謂ラチスブーム式のクレーンを適用対象として例にとっている。
【0038】
図1に過負荷防止装置と、過負荷防止の対象となる吊荷巻上/巻下回路及びブーム巻上/巻下回路の構成を示している。
【0039】
同図において、1は吊荷を上げ下げする巻上ウィンチ、2はブームを起伏させるブーム起伏ウィンチで、それぞれ巻上用油圧モータ3、ブーム起伏用油圧モータ4によって回転駆動される。
【0040】
両油圧モータ3,4は、それぞれ油圧パイロット式のコントロールバルブ(方向切換弁)5,6を介して油圧源としての油圧ポンプ7,8に接続され、コントロールバルブ5,6によって油圧モータ3,4の回転方向と速度が制御される。
【0041】
両コントロールバルブ5,6は、それぞれ操作手段としての巻上用、ブーム起伏用のリモコン弁9,10によって制御され、結局、この両リモコン弁9,10の操作方向と操作量に応じて吊荷及びブームの巻上/巻下動作が制御される。
【0042】
また、両コントロールバルブ5,6と両リモコン弁9,10とを結ぶ巻上側及び巻下側両パイロットライン中に、コントローラ11によって制御される電磁比例減圧弁(以下、減速停止弁という)12,13,14,15が設けられ、この減速停止弁12〜15が作動(弁開度が変化)することによりコントロールバルブ5,6へのパイロット圧が低下しまたは0となって、油圧モータ3,4(ウィンチ1,2)が減速または停止する。
【0043】
一方、両リモコン弁9,10の操作レバー9a,10aには、それぞれ切換スイッチ16,17(以下、第1切換スイッチ、第2切換スイッチという)が設けられている。
【0044】
なお、図例では両切換スイッチ16,17を操作レバー9a,10aのグリップ部分に設置した場合を示しているが、同レバー9a,10aのグリップ下部や中間部に設けてもよい。
【0045】
この両切換スイッチ16,17は、押し操作力を解除すると原位置(オフ)に自動的に戻る自動復帰式のモーメンタリスイッチとして構成され、この両切換スイッチ16,17の操作信号がコントローラ11に入力される。
【0046】
また、このコントローラ11には、ブーム起伏用のガイラインの張力を荷重wとして検出する荷重検出器18からの信号と、ブーム角度aを検出するブーム角度検出器19からの信号が入力される。
【0047】
コントローラ11は、入力されたブーム角度a及び荷重wから実際に作用している吊り荷重(以下、実荷重という)Wを、
W=f1(a・w) …式1 (f1は関数)
によって演算するとともに、ブーム角度aからそのときの作業半径Rを、
R=f2(a) …式2 (f2は関数)
によって演算する。
【0048】
コントローラ11には、予め、図2,3の破線で示すように、クレーンが転倒または破損に至る限界値に安全を見込んだ定格総荷重としての第1設定値を作業半径に対応して定めた第1設定値データAと、同実線で示すように、第1設定値よりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値を作業半径に対応して定めた第2設定値データBとが記憶され、切換スイッチ16,17が操作されないときは第1設定値データAが、操作されたときは第2設定値データBがそれぞれ選択される。
【0049】
そして、この選択された設定値データと、式2で得られたそのときの作業半径Rから設定値WAが求められるとともに、この設定値WAに対する実荷重Wの割合である負荷率が求められ、この負荷率が表示手段(たとえばモニタ装置)20によりオペレータに向けて表示される。
【0050】
この場合、表示される負荷率は、切換スイッチ16,17の操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるように構成されている。すなわち、負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも、負荷率が100%を上限として表示される。
【0051】
また、第1設定値のもとで負荷率が100%に達すると、コントローラ11から吊荷巻上側及びブーム巻下側の減速停止弁12,15に停止信号が送られて吊荷巻上及びブーム巻下という危険側動作が自動停止する。
【0052】
ここで、第1設定値に対する第2設定値の増加分は、作業半径の全領域で同じとしてもよいが、図2,3に示すように、適用されるクレーンの特性に応じて複数の領域で異ならせてもよい。
【0053】
たとえば、クレーンの限界値が、作業半径が小さい領域▲1▼ではブームの強度で制限され、中間の領域▲2▼では前方安定度によって制限され、大きい領域▲3▼ではブームガイラインの強度によって制限されるクレーンにおいて、ブーム強度の余裕が大きくて前方安定度の余裕が小さい場合には、図2に示すように領域▲1▼での設定値の増加分を大きすればよい。
【0054】
逆に、ブーム強度の余裕が小さく、前方安定度の余裕が大きいクレーンの場合は、図3に示すように領域▲2▼での設定値の増加分を大きくとればよい。また、図3に示すように最大作業半径を大きく設定することもできる。
【0055】
一方、切換スイッチ16,17が切換操作されると、操作された切換スイッチ16または17が設けられたリモコン弁9または10の操作対象となる動作(吊荷巻上/巻下またはブーム巻上/巻下)が減速される。
【0056】
このコントローラ11の作用を図4のフローチャートによってさらに詳述する。
【0057】
制御開始とともに、ステップS1,S2で、検出されたブーム角度a及び荷重wが読み込まれた後、吊り荷重Wの演算(ステップS3)、作業半径の演算(ステップS4)がそれぞれ行われる。
【0058】
続くステップS5では第1切換スイッチ16の操作の有無、ステップS6では第2切換スイッチ17の操作の有無、ステップS7では両切換スイッチ16,17のいずれか一方の操作の有無がそれぞれ判別され、両切換スイッチ16,17がともに操作されていないときは、ステップS8で第1設定値データAが選択され、ステップS9でこの第1設定値データAに基づき、現在の作業半径における設定値(第1設定値)WAを求める。
【0059】
一方、第1切換スイッチ16が操作された場合(ステップS5でオンの場合)は、ステップS10で、同スイッチ16が設けられた巻上用リモコン弁9の操作対象である吊荷巻上/巻下の減速指令が減速停止弁12,13に向けて出力され、第2切換スイッチ17が操作された場合(ステップS6でオンの場合)は、ステップS11で、同スイッチ17が設けられたリモコン弁10の操作対象であるブーム巻上/巻下(起伏)の減速指令が減速停止弁14,15に向けて出力される。
【0060】
これにより、吊荷巻上/巻下動作またはブーム巻上/巻下動作が減速される。
【0061】
また、両切換スイッチ16,17のいずれか一方が操作された場合、ステップS7からステップS12に移って図2,3中の第2設定値データBが選択され、ステップS9でこの第2設定値データBに基づき、現在の作業半径における設定値(第2設定値)WAを求める。
【0062】
次いで、ステップS13で、第1または第2設定値に対する実荷重の割合である負荷率Sが求められるとともに、ステップS14でこの負荷率Sが100%に達したか否かが判別される。
【0063】
ここで負荷率Sが100%未満であればステップS1に戻り、100%に達すると、ステップS15で危険側動作、すなわち、吊荷巻上及びブーム巻下という負荷が増加する側の動作を停止させる指令が、対応する減速停止弁12,15に向けて出力され、これにより過負荷が防止される。
【0064】
このように、実荷重Wと比較する設定値として、クレーンの限界値に安全を見込んだ第1設定値と、これよりも大きくて限界値よりは小さい中間値としての第2設定値とを定め、リモコン弁9,10の操作レバー9a,10aに設けた切換スイッチ16,17が操作されたときに、設定値を第1設定値から第2設定値に切換えて中間設定での作業が可能となるように構成したから、第1設定値のもとであと一歩で自動停止した場合に、中間設定に切換えて作業を継続することができる。
【0065】
この場合、切換スイッチ16,17として、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチを用いているため、オペレータは同スイッチ16または17を操作し続けたままレバー操作を行わなければならない。
【0066】
このため、片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となるため、複合操作が抑止される。また、切換スイッチ16,17から手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われるとともに、オペレータが、意識して切換スイッチ16,17を操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を失わない。
【0067】
これらの点により、複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に複合操作や不注意な操作によって危険事態が発生するおそれがなくなり、安全を確保することができる。
【0068】
また、切換スイッチ16,17の操作時に、同スイッチ16,17が設けられたリモコン弁9,10によるクレーン動作(吊荷巻上/巻下動作及びブーム巻上/巻下動作)を自動的に減速させるため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0069】
一方、図2,3に示すように、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域▲1▼〜▲3▼で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定するため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0070】
また、前記のように、切換スイッチ16,17が切換操作されないときは第1設定値に対する実荷重の割合、同スイッチ16,17が操作されたときは第2設定値に対する実荷重の割合がそれぞれ上限100%の負荷率として演算され、表示手段20に表示される。すなわち、設定値の切換えに関係なく、負荷率は100%を限度として表示される。
【0071】
従って、オペレータは、第1及び第2いずれの設定値の場合でも負荷率100%以下を目標として作業を行えばよいため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0072】
なお、従来設けられていた解除手段は、この装置においては設けなくてよいし設けてもよく、設ける場合、次のように構成することができる。
【0073】
図1において、21は解除手段を構成するメインスイッチ(通常、第三者が管理するキー式のスイッチ)、22は同解除スイッチ(オペレータによって操作されるスイッチ)で、メインスイッチ21が図下側の解除許可位置に操作されたことを条件として解除スイッチ22のオン操作が有効となり、過負荷防止(自動停止)作用が解除されるように構成されている。
【0074】
この構成を前提として、図示のようにメインスイッチ21が上側の解除不許可位置にあるときに、この解除不許可信号をコントローラ11に入力し、この解除不許可信号が入力されているときのみに、切換スイッチ16,17の操作による設定値の切換え作用が有効となるように構成する。
【0075】
こうすれば、メインスイッチ21が解除不許可位置にある状態で切換スイッチ16,17が切換操作されないときは第1設定値による基本的な過負荷防止作用、同状態で切換スイッチ16,17が切換操作されると第2設定値による過負荷防止作用がそれぞれ働き、メインスイッチ21が解除許可位置に操作されかつ解除スイッチ22がオン操作されたときに過負荷防止作用が解除される。
【0076】
すなわち、荷重設定を、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止作用が解除された非常設定の3通りのうちから選択でき、荷重設定の選択肢が広がるため、作業の融通性を高めることができる。
【0077】
第2実施形態(図5参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0078】
この第2実施形態においては、常に第1設定値を基準として負荷率を求め、切換スイッチ16,17の操作の有無に応じて自動停止条件(自動停止させる負荷率)を変えるように構成されている。
【0079】
すなわち、図5のフローチャートにおいて、図4のステップS1〜ステップS4と同じステップS21〜ステップS24を経た後、ステップS25,S26において第1設定値データAに基づいて負荷率Sを求める。
【0080】
次いで、第1切換スイッチ16が切換操作されたときは吊荷巻上/巻下の減速指令(ステップS27,S28)が、また第2切換スイッチ17が切換操作されたときはブーム巻上/巻下の減速指令(ステップS29,S30)がそれぞれ出されるとともに、両切換スイッチ16,17のいずれもが切換操作されないときは負荷率100%を停止負荷率Tとし、いずれか一方が切換操作されたときは負荷率100%+αを停止負荷率Tとする(ステップS32,S33)。
【0081】
そして、ステップS34で負荷率Sと停止負荷率Tが比較され、S<Tの場合はステップS21に戻り、S≧TとなったときにステップS35で危険側動作である吊荷巻上動作及びブーム巻上動作の自動停止信号を出力する。
【0082】
この実施形態によると、負荷率Sが常に第1設定値を基準として求められるため、フローチャート中には示していないが、求められた負荷率Sがそのまま図1の表示手段20に表示されることとなる。
【0083】
すなわち、第1設定値のもとで負荷率100%に達し、第2設定値に切換えられた後も、101%,102%…と連続して表示される。
【0084】
このため、負荷率Sが100%を超えた範囲で作業しているという認識をオペレータに持たせることができるため、慎重な操作を促す効果がある。
【0085】
第3実施形態(図6参照)
第1設定値のもとで負荷率100%に達した後は、第2設定値に切換えられたとしても安全域ではないことに変わりはない。この場合、走行動作や旋回動作は危険事態に直結することはないが、とくに設定値近くでは慎重を期すに越したことはない。
【0086】
そこで第3実施形態においては、切換スイッチ16,17の操作の有無に関係なく、負荷率Sが100%を超えたときにすべてのクレーン動作(吊荷巻上/巻下、ブーム巻上/巻下、走行、旋回)を減速させるように構成されている。
【0087】
すなわち、図5のフローチャートのステップS21〜26と同じステップS41〜S46を経た後、ステップS47で負荷率Sが100%を超えたか否かが判別され、ここでYES(S≧100%)となったときに、ステップS48でクレーンの全動作を減速させる指令が出力される。
【0088】
ステップS47でNOの場合は、ステップS49,S50で両切換スイッチ16,17が切換操作されたか否かが判別され、切換操作されていないときはステップS51でT=100%、いずれか一方が切換操作されたときはステップS52でT=100%+αとそれぞれ停止条件が定められる。
【0089】
そして、図5のステップS34と同様に、ステップS53で負荷率Sと停止負荷率Tとが比較され、S≧TのときにステップS54で危険側動作(吊荷巻上、ブーム巻上)を停止させる信号が出力される。
【0090】
このように、負荷率100%で走行及び旋回を含む全クレーン動作を減速させることにより、安全性を一層高めることができる。
【0091】
他の実施形態
(1)上記実施形態では、図1中の減速停止弁(電磁比例減圧弁)12〜15を作動させることによって減速動作を行わせる構成をとったが、油圧ポンプ7,8の傾転を制御してポンプ吐出流量を下げることによって減速させる構成をとってもよい。あるいは、減速停止弁12〜15とポンプ7,8の双方を制御するようにしてもよい。
【0092】
(2)上記実施形態のように切換スイッチ16,17をリモコン弁9,10のレバー9a,10aに設けることで複合操作を困難にできるが、さらに次のように構成してもよい。
【0093】
▲1▼ 切換スイッチ16,17が切換操作されたときに、同スイッチ16,17が設けられたリモコン弁9,10の対象動作(吊荷巻上/巻下またはブーム巻上/巻下)のみが可能となり、他の動作は一切行われないように油圧処理等によってインターロックをかけるように構成する。
【0094】
▲2▼ 上記他の動作中は、切換スイッチ16,17が切換操作されてもその操作を無効とする(設定値切換作用が働かない)ように構成する。
【0095】
こうすれば、負荷率100%以上では実行可能な動作を一つに制限することができるため、安全性をより高めることができる。
【0096】
(3)上記実施形態ではブームが伸縮しないクレーンを適用対象として例にとったが、本発明はブームが伸縮するクレーンにも適用することができる。
【0097】
【発明の効果】
上記のように本発明によると、操作レバーに自動復帰式の切換スイッチを設け、この切換スイッチが切換操作されたときに、設定値が、クレーンの限界値に余裕を持たせた第1設定値から、これよりも大きくて限界値よりも小さい第2設定値に切換えられ、実際の吊り荷重がこの第2設定値に達すると過負荷防止動作が行われるように構成したから、あと一歩で自動停止した場合に、第2設定値による中間設定で作業を継続して作業性を高めることができる。
【0098】
しかも、切換スイッチは、操作力が解除されると原位置に復帰する自動復帰式のスイッチであるため、オペレータは必ず同スイッチを操作し続けたまま作業のためのレバー操作を行わなければならない。
【0099】
このため、片手で複数本の操作レバーを操作する複合操作が困難となること、切換スイッチから手が離れないようにレバー操作が必然的に慎重に注意深く行われること、オペレータが、意識して切換スイッチを操作し続けていることから、危険作業状態であるという認識を持ち続けることにより、とくにクローラクレーンにおいて多用される複合操作を含めたオペレータの不注意かつ危険な操作が抑止されるため、第2設定値での作業時に危険事態の発生を防止し、安全を確保することができる。
【0100】
とくに、請求項2の発明によると、切換スイッチを、吊荷巻上/巻下用操作手段とブームまたはジブの巻上/巻下用操作手段の少なくとも一方の操作レバーに設けたから、危険側の操作を直接抑制できることで、より安全性を高めることができる。
【0101】
また、請求項3,4の発明によると、切換スイッチの操作時にクレーン動作(請求項3では危険側動作、請求項4では走行、旋回といった間接的に過負荷につながる動作を含むクレーンの全動作)が減速するため、一層、過負荷状態に陥る危険性が低くなる。
【0102】
一方、請求項5の発明によると、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で、第1設定値に対する第2設定値の増加分を設定するため、安全性を確保しながらクレーン能力を最大限に生かすことができる。
【0103】
請求項6,7の発明によると、切換スイッチが切換操作されたときに、表示手段によって負荷率をオペレータに向けて表示するため、オペレータは負荷率の推移を見ながら安全に作業することができる。
【0104】
この場合、請求項6では、表示される負荷率が、切換スイッチの操作とともに、それまでの第1設定値に対する割合から第2設定値に対する割合に切換わるため、たとえば負荷率100%で自動停止する場合に、第1及び第2いずれの設定値の場合でも100%以下を目標として作業を行えばよい。このため、オペレータが現状の負荷率を把握し易い。
【0105】
これに対し、請求項7では、負荷率が、切換スイッチの操作後も第1設定値に対する割合のまま連続して表示されるため、100%を超えた範囲で作業している認識をオペレータに持たせ、慎重な操作を促す効果がある。
【0106】
請求項8の発明によると、過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられたクレーンにおいて、解除手段が解除側に操作されていないときのみに、切換スイッチによる第1設定値から第2設定値への切換えを有効とするため、荷重設定として、第1設定値による基本設定と、第2設定値による中間設定と、過負荷防止動作が解除された非常設定の3通りが得られ、荷重設定の選択肢を広げて作業の融通性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】同実施形態におけるコントローラに記憶された設定値データを示す図である。
【図3】図2と異なる設定値データを示す図である。
【図4】第1実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 巻上ウィンチ
2 ブーム起伏ウィンチ
3 巻上ウィンチを駆動する巻上用油圧モータ
4 ブーム起伏ウィンチを駆動するブーム起伏用油圧モータ
5 巻上用コントロールバルブ
6 ブーム起伏用コントロールバルブ
7 巻上用油圧ポンプ
8 ブーム起伏用油圧ポンプ
9 巻上用操作手段としてのリモコン弁
9a 同リモコン弁の操作レバー
10 ブーム起伏用操作手段としてのリモコン弁
10 a 同リモコン弁の操作レバー
11 制御手段兼荷重検出手段としてのコントローラ
12〜15 減速停止弁
16,17 切換スイッチ
18 荷重検出手段を構成する荷重検出器
19 同ブーム角度検出器
20 表示手段
21 過負荷防止作用を解除する解除手段を構成するメインスイッチ
22 同解除スイッチ
Claims (8)
- 操作レバーによってクレーン動作を指令する操作手段と、実際の吊り荷重を検出する吊り荷重検出手段と、この吊り荷重検出手段によって検出される実際の吊り荷重が作業半径に対応して予め設定された値に達したときに過負荷防止作用を行わせる制御手段とを備えたクレーンの過負荷防止装置において、上記制御手段に、上記設定値として、クレーンが持つ限界値に余裕を持たせた第1設定値と、この第1設定値と上記限界値の中間の値である第2設定値が記憶される一方、上記操作手段の操作レバーに自動復帰式の切換スイッチが設けられ、この切換スイッチの操作時に、上記制御手段における設定値が上記第1設定値から第2設定値に切換えられるように構成されたことを特徴とするクレーンの過負荷防止装置。
- 切換スイッチは、吊荷巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーと、ブームまたはジブの巻上/巻下を指令する操作手段の操作レバーの少なくとも一方に設けられたことを特徴とする請求項1記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに危険側のクレーン動作を減速させるように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときにクレーンの全動作を減速させるように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 制御手段における第1設定値に対する第2設定値の荷重の増加分が、クレーンの特性に応じて作業半径の複数の領域で異なる値に設定されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第2設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 設定値に対する実際の吊り荷重の割合である負荷率を表示する表示手段を備え、制御手段は、切換スイッチが切換操作されたときに、第1設定値に対する実際の吊り荷重の割合を負荷率として上記表示手段に表示させるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のクレーンの過負荷防止装置。
- 制御手段による過負荷防止作用を解除する解除手段が設けられ、制御手段は、この解除手段が解除側に操作されていないときのみに切換スイッチによる第2設定値への切換えを有効とするように構成されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のクレーンの過負荷防止装置。
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JP2013035356A (ja) * | 2011-08-04 | 2013-02-21 | Central Japan Railway Co | 車両 |
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- 2002-08-30 JP JP2002255422A patent/JP2004091141A/ja active Pending
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