JP2004088919A - 電流差動保護継電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝送速度に拘わらず外部事故時のCT飽和による不要な応動を防止することにある。
【解決手段】電力系統の各端子に設置され、自端から入力される各相電流を同期信号に基づき一定周期でサンプリングした後、ディジタル変換して記憶回路に記憶し、この記憶回路に記憶された自端の電流データを他の端子に送信すると共に、記憶された電流データと他の端子から伝送されてくる電流データに基づいて各端子電流のベクトル和となる動作量を演算し、自端の電流データからスカラー量を演算して記憶回路に記憶し、この記憶回路に記憶された過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出して他の端子へ送信し、自端のスカラー量最大値と他の端子から伝送されてくるスカラー量最大値に基づき抑制量を演算し、これら動作量と抑制量をもとにリレー動作判定を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】電力系統の各端子に設置され、自端から入力される各相電流を同期信号に基づき一定周期でサンプリングした後、ディジタル変換して記憶回路に記憶し、この記憶回路に記憶された自端の電流データを他の端子に送信すると共に、記憶された電流データと他の端子から伝送されてくる電流データに基づいて各端子電流のベクトル和となる動作量を演算し、自端の電流データからスカラー量を演算して記憶回路に記憶し、この記憶回路に記憶された過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出して他の端子へ送信し、自端のスカラー量最大値と他の端子から伝送されてくるスカラー量最大値に基づき抑制量を演算し、これら動作量と抑制量をもとにリレー動作判定を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統を保護する保護継電装置において、特に送電線の事故電流による変流器(以下CTと称す)の飽和の有無に拘わらず、内外部事故を識別する電流差動保護継電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統において、送電線の保護方式として、保護区間内外部の事故判定能力が最も高い差動原理を適用した電流差動保護方式が多用されている。
【0003】
以下、図11により電流差動保護方式の原理について説明する。
【0004】
図11は、3端子A,B,C間を送電線Lにより連繋した電力系統を保護対象にした電流差動保護方式の原理図である。
【0005】
図11において、各端子A,B,Cの送電線Lに設けられたCT1より得られる電流iA,iB,iCをそれぞれ取込んで、これら電流のベクトル和の絶対値|iA+iB+iC|を動作量とし、電流iA,iB,iCの各々のスカラー和|iA|+|iB|+|iC|に定数Rを乗じた量を抑制量として演算する。
【0006】
この動作量と抑制量の差が一定値K以上あるか否かにより動作判定し、各端子A,B,C内外部の事故を識別するものであり、これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0007】
|iA+iB+iC|−R(|iA|+|iB|+|iC|)≧K…………(1)
このような電流差動保護方式を3端子送電線からなる電力系統に適用した場合、図12に示すように端子Cの外部事故時に過大な事故電流分iFが端子Cに集中して流出すると、端子CのCT1が飽和し易くなり、且つこのとき端子A,BでのCT1が飽和していないとすると、端子Cで生じた飽和による誤差分がそのまま差動電流分になり、その大きさによって区間内外部の事故判定を誤る可能性がある。
【0008】
しかし、上記(1)式の左辺第2項目、つまり抑制量を比較的大きくしておけば、誤動作は防止できる。
【0009】
一方、3端子の平行2回線送電線からなる電力系統に適用した場合、図13に示すように端子Aの1回線1L側が遮断されている状態にあるとき、平行2回線送電線の両回線1L,2LのF点に内部事故が発生すると端子Cの2L側が流出電流(1/2)となり、端子CのCT1の誤差がなくとも上記(1)式の左辺第1項目の動作量と第2項目の抑制量の比が接近し、外部事故との認識能力が低下してくる可能性が生じる。この場合、(1)式の左辺第2項目の抑制量を大きくすると内部事故であるにもかかわらず動作できない可能性がある。
【0010】
従って、外部事故で動作量が、又は内部事故で抑制量が発生しても高感度に区間内外部の事故を識別可能にするため、通常小電流域特性と大電流域特性の2組の特性を組合せた方式が適用されている。
【0011】
この動作量と抑制量は、装置の動作時間を重視し、装置の演算周期と同一の周期で伝送されてきた電流データから演算しているが、こと抑制量に関しては図12に示すような区間外部事故時のCT飽和による不要な応動を防止する目的で、大電流域特性の抑制量を現時点の値を含めた過去一定時間内の最大値を選択し使用している。
【0012】
この技術は既に公知であり、その詳細な説明は省略する。これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0013】
|iA+iB+iC|−R1×IR1≧K01 ………(2)
|iA+iB+iC|−R2×IR2≧K02 ………(3)
但し、
IR2=max[(|iA|+|iB|+|iC|)m] ……(4)
(|iA|+|iB|+|iC|)m:現時点を含めた過去一定時間の抑制量
m:m個データ
R1<R2,K01>K02
(2)(3)式は電流差動演算の基本式となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このように電流差動保護継電装置においては、抑制量を過去一定時間内の演算結果の中から最大値を使用することで、区間外部事故時の不要動作に対して効果的な対策を行うことができる。
【0015】
但し、従来の電流差動保護継電装置において、抑制量は、各端子でサンプリング同期信号に基づき、一定周期でサンプリングされたデータを用いて演算し、過去一定時間内の演算結果から最大値を選択するため、ある程度の時系列データが必要となる。
【0016】
一般に電流差動保護継電装置でのデータ伝送周期は、動作時間を重視する意味から装置の演算周期と同一の周期で伝送するため、伝送容量の大きな伝送系が必要となり、一定以上の伝送速度が必要となる制約を受ける。
【0017】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、伝送速度に拘わらず区間外部事故時に生じるCT飽和による不要動作を防止できる電流差動保護継電装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により電流差動保護継電装置を構成する。
【0019】
請求項1に対応する発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、各端子の各相電流をサンプリング同期信号に基づき一定周期でサンプリングし、ディジタル変換してなる電流データを各端子間で伝送しあって、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、自端の電流データと他の端子から伝送されてきた電流データから各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と他の端子から伝送されてくるスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備える。
【0020】
請求項2に対応する発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、自端から入力される各相電流を同期信号に基づき一定周期でサンプリングしディジタル変換するサンプリング手段と、このサンプリング手段によりディジタル変換された電流データを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶された自端の電流データを他の端子に送信すると共に、他の端子から伝送されてくる電流データを受信する第1の伝送手段と、前記第1の記憶手段に記憶された電流データと前記第1の伝送手段により受信された他の端子からの電流データに基づいて各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、前記第1の記憶手段に記憶された自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する第2の記憶手段と、このスカラー量記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段により検出されたスカラー量最大値を他の端子へ送信すると共に、他の端子から伝送されてくるスカラー量最大値を受信する第2の伝送手段と、前記スカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と前記第2の伝送手段により受信された他の端子からのスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備える。
【0021】
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記第3の演算手段で演算された抑制量が、ある一定のレベルであることを条件に前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定手段を設ける。
【0022】
請求項4に対応する発明は、請求項3に対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記抑制量レベル判定手段により切換えられる前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度がある一定値以下に切換らないように抑制するリレー感度抑制手段を設ける。
【0023】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記各端子の各相電流をサンプリングし、ディジタル変換して得られる電流データを演算して正相電流とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明による電流差動保護継電装置の第1の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図である。なお、本システム構成の電流差動保護継電装置は、例えば3端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置されるが、ここでは一つの端子(以下自端と呼ぶ)に対応する装置を示している。
【0026】
図1において、11は自端の送電線に設けられたCTより3相各相に対応する端子電流ia,ib,icが導入されるサンプリング回路で、このサンプリング回路11は、端子電流を各端子に共通のサンプリング同期信号に基づき一定の周期をもってサンプリングし、ディジタルデータに変換するものである。
【0027】
また、12はサンプリング回路11でサンプリングされた自端の電流データを記憶するデータ記憶回路、13はこのデータ記憶回路12に記憶された電流データを取込んで他の端子へ伝送し、且つ他の端子に設置された同様のシステム構成の回路から伝送されてきた電流データを受信する第1のデータ送受信回路である。
【0028】
さらに、14はデータ記憶回路12に記憶された電流データを取込むと共に、第1のデータ送受信回路13で受信された他の端子からの電流データを取込んで、自端及び他の端子からの電流データに基づいて動作量を演算する動作量演算回路である。
【0029】
一方、15はデータ記憶回路12に記憶された電流データからスカラー量を演算するスカラー量演算回路、16はスカラー量演算回路15の演算結果を過去一定時間記憶するスカラー量記憶回路である。
【0030】
また、17はスカラー量記憶回路16に記憶されたスカラー量を取込んでその最大値を検出するスカラー量最大値検出回路、18はスカラー量最大値検出回路17により検出されたスカラー量の最大値を他の端子へ伝送し、且つ他の端子に設置された同様のシステム構成の回路から伝送されてきたスカラー量の最大値を受信する第2のデータ送受信回路である。
【0031】
さらに、19はスカラー量最大値検出回路17で検出された自端のスカラー量最大値と第2のデータ送受信回路18で受信された他の端子からのスカラー量最大値を取込んで抑制量を演算する抑制量演算回路である。
【0032】
20は動作量演算回路14で演算された動作量と抑制量演算回路19で演算された抑制量に基づいて区間内外部の事故を判定するリレー判定手段で、このリレー判定手段20により内部事故と判定されると遮断器にトリップ指令を与えるものである。
【0033】
次にこのようなシステム構成の電流差動保護継電装置の作用を図2及び図3により説明する。
【0034】
いま、自端のCTより端子電流がサンプリング回路11に入力されると、このサンプリング回路11では端子電流を各端子共通のサンプリング同期信号に基づき、一定周期でサンプリングし、ディジタル変換した後、データ記憶回路12に記憶させる。このデータ記憶回路12に記憶された自端の電流データは、第1のデータ送受信回路13より他の端子へ伝送されると共に、動作量演算回路14により自端の電流データと第1のデータ送受信回路13により受信された他の端子の電流データに基づき動作量が演算される。
【0035】
一方、スカラー量演算回路15によりデータ記憶回路12に記憶された自端の電流データをもとにスカラー量が演算され、スカラー量記憶回路16に一定時間記憶される。
【0036】
次にスカラー量最大値検出回路17では、このスカラー量記憶回路16に記憶されている現時点を含む過去一定時間内のスカラー量の中から最大値を検出して抑制量演算回路19に与えると共に、第2のデータ送受信回路18より他の端子へ伝送される。
【0037】
この抑制量演算回路19では、自端のスカラー量の最大値と第2のデータ送受信回路18により受信された他の端子からのスカラー量の最大値とに基づき抑制量が演算される。
【0038】
そして、リレー判定手段20では、動作量演算回路14で演算された動作量と抑制量演算回路19で演算された抑制量に基づいて区間内外部の事故を判定し、内部事故と判定した場合には遮断器にトリップ指令を与える。
【0039】
このように本実施の形態では、図2(a)に示すように自端のサンプリング値の電流データを装置の演算周期でスカラー量を演算し、現時点を含む過去一定時間内のデータからスカラー量の最大値を検出して他の端子へ伝送すると共に、抑制量の演算に用いている。
【0040】
これにより、例えば図3に示すような3端子A,B,C間を送電線Lにより連繋した電力系統においては、各端子から伝送されてきた過去一定時間の最大値のスカラー和max(|iA|)+max(|iB|)+max(|iC|)を抑制量として演算することで、図2(b)に示す従来の装置の演算周期で伝送されてきたデータから各端子電流iA,iB,iCのスカラー和|iA|+|iB|+|iC|の過去一定時間の最大値max(|iA|+|iB|+|iC|)を抑制量として用いることと同等に扱うことができる。これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0041】
大電流域
|iA+iB+iC|−R2×IR3≧K02 ………(4)
但し、
IR3=(max|iA|m+max|iB|m+max|iC|m)
max|iA|m:現時点を含めた過去一定時間の抑制量
(max|iB|m,max|iC|m)も同様
m:m個データ
R1<R2,K01>K02
従って、各端子でスカラー量の過去一定時間の最大値を検出し、装置の演算周期とは異なった伝送周期でスカラー量の最大値を伝送することにより、伝送速度に拘わらず区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要動作を防止することができる。
【0042】
図4は本発明による電流差動保護継電装置の第2の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0043】
第2の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させる以外は図1と同じである。
【0044】
このような構成としても、演算周期とは異なった伝送周期でスカラー量の最大値を伝送することにより、伝送速度に拘わらず区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要動作を防止することができる。
【0045】
図5は本発明による電流差動保護継電装置の第3の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0046】
第3の実施形態では、抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定し、ある一定のレベルであればリレー判定手段20に感度切換指令を出してリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定回路22を設ける以外は図1と同じである。
【0047】
ここで、抑制量レベル判定回路22とリレー判定手段20の作用を図6により述べる。
【0048】
図6に示す動作特性において、前述した(4)式のK02の値を変化させることで感度切換を実施するが、この切換にはある係数kを乗じて実施する。この係数kは所定値k1に対し過去一定時間の最大スカラー量から演算された抑制量と感度切換をした式により算出する。
【0049】
k=(max|iA|+max|iB|+max|iC|)/k1………(5)
CT飽和による波形歪の現象が現れるまではAB間で変化し、その後波形歪が現れた場合は、BC間で表現されるような区間外部事故時のCT飽和時に、過去一定時間のスカラー量の最大値から演算された抑制量を用いることでBC′間となる。
【0050】
このため、抑制量の大きさにより(5)式で演算された係数kにより大電流域特性を切換えることで、区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要な動作を防止することができる。
【0051】
図7は本発明による電流差動保護継電装置の第4の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0052】
第4の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させ、且つ抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定し、ある一定のレベルであればリレー判定手段20に感度切換指令を出してリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定回路22を設ける以外は図1と同じである。
【0053】
このような構成としても、第1の実施形態及び第3の実施形態と同様の作用並びに効果を得ることができる。
【0054】
図8は本発明による電流差動保護継電装置の第5の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0055】
第5の実施形態では、抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定する抑制量レベル判定回路22を設けると共に、動作感度がある一定値以下に切換らないように抑制してリレー判定手段20に感度切換指令を出すリレー感度抑制回路23を設ける以外は図1と同じである。
【0056】
ここで、抑制量レベル判定回路22及びリレー感度抑制回路23とリレー判定手段20の作用を図9により述べる。
【0057】
図9に示す動作特性において、抑制量レベル判定回路22は図6と同じような感度切換を実施するが、図13に示すような平行2回線送電線に1/2流出が伴う内部事故の発生時に感度切換を実施すると、図9に示すように動作できない可能性があるため、前述した(5)式で演算される係数kを一定以下とならないように(6)式として感度切換を抑制することで、区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要な動作を防止することができる。
【0058】
k≧x ………(6)
図10は本発明による電流差動保護継電装置の第6の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0059】
第6の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させ、且つ抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定する抑制量レベル判定回路22を設けると共に、動作感度がある一定値以下に切換らないように抑制してリレー判定手段20に感度切換指令を出すリレー感度抑制回路23を設ける以外は図1と同じである。
【0060】
このような構成としても、第1の実施形態及び第5の実施形態と同様の作用並びに効果を得ることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、演算周期とは異なった伝送周期で事前に演算された過去一定時間のスカラー量の最大値を伝送することで、従来の抑制量と同等に扱うことが可能となり、伝送速度に拘わらず外部事故時のCT飽和による不要な応動を防止できる電流差動保護継電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電流差動保護継電装置の第1の実施形態をにおけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図2】同実施形態において、電流データから過去のスカラー量の最大値を伝送するときの作用を説明するための概念図。
【図3】同実施形態における原理を説明するための回路構成図。
【図4】本発明による電流差動保護継電装置の第2の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図5】本発明による電流差動保護継電装置の第3の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図6】同実施形態における抑制量レベル判定回路及びリレー判定手段の作用を説明するためのリレー動作特性図。
【図7】本発明による電流差動保護継電装置の第4の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図8】本発明による電流差動保護継電装置の第5の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図9】同実施形態における抑制量レベル判定回路及びリレー感度抑制回路とリレー判定手段の作用を説明するためのリレー動作特性図。
【図10】本発明による電流差動保護継電装置の第6の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図11】従来の電流差動保護継電装置の原理を説明するための回路構成図。
【図12】3端子送電線の外部事故時に1端子に集中して電流が流れる様子を示す電力系統図。
【図13】平行2回線からなる3端子送電線の内部事故時に電流が流出する端子が生じる様子を示す電力系統図。
【符号の説明】
1……CT
11……サンプリング回路
12……データ記憶回路
13……第1のデータ送受信回路
14……動作量演算回路
15……スカラー量演算回路
16……スカラー量記憶回路
17……スカラー量最大値検出回路
18……第2のデータ送受信回路
19……抑制量演算回路
20……リレー判定手段
21……正相電流演算回路
22……抑制量レベル判定回路
23……リレー感度抑制回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統を保護する保護継電装置において、特に送電線の事故電流による変流器(以下CTと称す)の飽和の有無に拘わらず、内外部事故を識別する電流差動保護継電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統において、送電線の保護方式として、保護区間内外部の事故判定能力が最も高い差動原理を適用した電流差動保護方式が多用されている。
【0003】
以下、図11により電流差動保護方式の原理について説明する。
【0004】
図11は、3端子A,B,C間を送電線Lにより連繋した電力系統を保護対象にした電流差動保護方式の原理図である。
【0005】
図11において、各端子A,B,Cの送電線Lに設けられたCT1より得られる電流iA,iB,iCをそれぞれ取込んで、これら電流のベクトル和の絶対値|iA+iB+iC|を動作量とし、電流iA,iB,iCの各々のスカラー和|iA|+|iB|+|iC|に定数Rを乗じた量を抑制量として演算する。
【0006】
この動作量と抑制量の差が一定値K以上あるか否かにより動作判定し、各端子A,B,C内外部の事故を識別するものであり、これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0007】
|iA+iB+iC|−R(|iA|+|iB|+|iC|)≧K…………(1)
このような電流差動保護方式を3端子送電線からなる電力系統に適用した場合、図12に示すように端子Cの外部事故時に過大な事故電流分iFが端子Cに集中して流出すると、端子CのCT1が飽和し易くなり、且つこのとき端子A,BでのCT1が飽和していないとすると、端子Cで生じた飽和による誤差分がそのまま差動電流分になり、その大きさによって区間内外部の事故判定を誤る可能性がある。
【0008】
しかし、上記(1)式の左辺第2項目、つまり抑制量を比較的大きくしておけば、誤動作は防止できる。
【0009】
一方、3端子の平行2回線送電線からなる電力系統に適用した場合、図13に示すように端子Aの1回線1L側が遮断されている状態にあるとき、平行2回線送電線の両回線1L,2LのF点に内部事故が発生すると端子Cの2L側が流出電流(1/2)となり、端子CのCT1の誤差がなくとも上記(1)式の左辺第1項目の動作量と第2項目の抑制量の比が接近し、外部事故との認識能力が低下してくる可能性が生じる。この場合、(1)式の左辺第2項目の抑制量を大きくすると内部事故であるにもかかわらず動作できない可能性がある。
【0010】
従って、外部事故で動作量が、又は内部事故で抑制量が発生しても高感度に区間内外部の事故を識別可能にするため、通常小電流域特性と大電流域特性の2組の特性を組合せた方式が適用されている。
【0011】
この動作量と抑制量は、装置の動作時間を重視し、装置の演算周期と同一の周期で伝送されてきた電流データから演算しているが、こと抑制量に関しては図12に示すような区間外部事故時のCT飽和による不要な応動を防止する目的で、大電流域特性の抑制量を現時点の値を含めた過去一定時間内の最大値を選択し使用している。
【0012】
この技術は既に公知であり、その詳細な説明は省略する。これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0013】
|iA+iB+iC|−R1×IR1≧K01 ………(2)
|iA+iB+iC|−R2×IR2≧K02 ………(3)
但し、
IR2=max[(|iA|+|iB|+|iC|)m] ……(4)
(|iA|+|iB|+|iC|)m:現時点を含めた過去一定時間の抑制量
m:m個データ
R1<R2,K01>K02
(2)(3)式は電流差動演算の基本式となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このように電流差動保護継電装置においては、抑制量を過去一定時間内の演算結果の中から最大値を使用することで、区間外部事故時の不要動作に対して効果的な対策を行うことができる。
【0015】
但し、従来の電流差動保護継電装置において、抑制量は、各端子でサンプリング同期信号に基づき、一定周期でサンプリングされたデータを用いて演算し、過去一定時間内の演算結果から最大値を選択するため、ある程度の時系列データが必要となる。
【0016】
一般に電流差動保護継電装置でのデータ伝送周期は、動作時間を重視する意味から装置の演算周期と同一の周期で伝送するため、伝送容量の大きな伝送系が必要となり、一定以上の伝送速度が必要となる制約を受ける。
【0017】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、伝送速度に拘わらず区間外部事故時に生じるCT飽和による不要動作を防止できる電流差動保護継電装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により電流差動保護継電装置を構成する。
【0019】
請求項1に対応する発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、各端子の各相電流をサンプリング同期信号に基づき一定周期でサンプリングし、ディジタル変換してなる電流データを各端子間で伝送しあって、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、自端の電流データと他の端子から伝送されてきた電流データから各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と他の端子から伝送されてくるスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備える。
【0020】
請求項2に対応する発明は、複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、自端から入力される各相電流を同期信号に基づき一定周期でサンプリングしディジタル変換するサンプリング手段と、このサンプリング手段によりディジタル変換された電流データを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶された自端の電流データを他の端子に送信すると共に、他の端子から伝送されてくる電流データを受信する第1の伝送手段と、前記第1の記憶手段に記憶された電流データと前記第1の伝送手段により受信された他の端子からの電流データに基づいて各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、前記第1の記憶手段に記憶された自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する第2の記憶手段と、このスカラー量記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段により検出されたスカラー量最大値を他の端子へ送信すると共に、他の端子から伝送されてくるスカラー量最大値を受信する第2の伝送手段と、前記スカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と前記第2の伝送手段により受信された他の端子からのスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備える。
【0021】
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記第3の演算手段で演算された抑制量が、ある一定のレベルであることを条件に前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定手段を設ける。
【0022】
請求項4に対応する発明は、請求項3に対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記抑制量レベル判定手段により切換えられる前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度がある一定値以下に切換らないように抑制するリレー感度抑制手段を設ける。
【0023】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに対応する発明の電流差動保護継電装置において、前記各端子の各相電流をサンプリングし、ディジタル変換して得られる電流データを演算して正相電流とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明による電流差動保護継電装置の第1の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図である。なお、本システム構成の電流差動保護継電装置は、例えば3端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置されるが、ここでは一つの端子(以下自端と呼ぶ)に対応する装置を示している。
【0026】
図1において、11は自端の送電線に設けられたCTより3相各相に対応する端子電流ia,ib,icが導入されるサンプリング回路で、このサンプリング回路11は、端子電流を各端子に共通のサンプリング同期信号に基づき一定の周期をもってサンプリングし、ディジタルデータに変換するものである。
【0027】
また、12はサンプリング回路11でサンプリングされた自端の電流データを記憶するデータ記憶回路、13はこのデータ記憶回路12に記憶された電流データを取込んで他の端子へ伝送し、且つ他の端子に設置された同様のシステム構成の回路から伝送されてきた電流データを受信する第1のデータ送受信回路である。
【0028】
さらに、14はデータ記憶回路12に記憶された電流データを取込むと共に、第1のデータ送受信回路13で受信された他の端子からの電流データを取込んで、自端及び他の端子からの電流データに基づいて動作量を演算する動作量演算回路である。
【0029】
一方、15はデータ記憶回路12に記憶された電流データからスカラー量を演算するスカラー量演算回路、16はスカラー量演算回路15の演算結果を過去一定時間記憶するスカラー量記憶回路である。
【0030】
また、17はスカラー量記憶回路16に記憶されたスカラー量を取込んでその最大値を検出するスカラー量最大値検出回路、18はスカラー量最大値検出回路17により検出されたスカラー量の最大値を他の端子へ伝送し、且つ他の端子に設置された同様のシステム構成の回路から伝送されてきたスカラー量の最大値を受信する第2のデータ送受信回路である。
【0031】
さらに、19はスカラー量最大値検出回路17で検出された自端のスカラー量最大値と第2のデータ送受信回路18で受信された他の端子からのスカラー量最大値を取込んで抑制量を演算する抑制量演算回路である。
【0032】
20は動作量演算回路14で演算された動作量と抑制量演算回路19で演算された抑制量に基づいて区間内外部の事故を判定するリレー判定手段で、このリレー判定手段20により内部事故と判定されると遮断器にトリップ指令を与えるものである。
【0033】
次にこのようなシステム構成の電流差動保護継電装置の作用を図2及び図3により説明する。
【0034】
いま、自端のCTより端子電流がサンプリング回路11に入力されると、このサンプリング回路11では端子電流を各端子共通のサンプリング同期信号に基づき、一定周期でサンプリングし、ディジタル変換した後、データ記憶回路12に記憶させる。このデータ記憶回路12に記憶された自端の電流データは、第1のデータ送受信回路13より他の端子へ伝送されると共に、動作量演算回路14により自端の電流データと第1のデータ送受信回路13により受信された他の端子の電流データに基づき動作量が演算される。
【0035】
一方、スカラー量演算回路15によりデータ記憶回路12に記憶された自端の電流データをもとにスカラー量が演算され、スカラー量記憶回路16に一定時間記憶される。
【0036】
次にスカラー量最大値検出回路17では、このスカラー量記憶回路16に記憶されている現時点を含む過去一定時間内のスカラー量の中から最大値を検出して抑制量演算回路19に与えると共に、第2のデータ送受信回路18より他の端子へ伝送される。
【0037】
この抑制量演算回路19では、自端のスカラー量の最大値と第2のデータ送受信回路18により受信された他の端子からのスカラー量の最大値とに基づき抑制量が演算される。
【0038】
そして、リレー判定手段20では、動作量演算回路14で演算された動作量と抑制量演算回路19で演算された抑制量に基づいて区間内外部の事故を判定し、内部事故と判定した場合には遮断器にトリップ指令を与える。
【0039】
このように本実施の形態では、図2(a)に示すように自端のサンプリング値の電流データを装置の演算周期でスカラー量を演算し、現時点を含む過去一定時間内のデータからスカラー量の最大値を検出して他の端子へ伝送すると共に、抑制量の演算に用いている。
【0040】
これにより、例えば図3に示すような3端子A,B,C間を送電線Lにより連繋した電力系統においては、各端子から伝送されてきた過去一定時間の最大値のスカラー和max(|iA|)+max(|iB|)+max(|iC|)を抑制量として演算することで、図2(b)に示す従来の装置の演算周期で伝送されてきたデータから各端子電流iA,iB,iCのスカラー和|iA|+|iB|+|iC|の過去一定時間の最大値max(|iA|+|iB|+|iC|)を抑制量として用いることと同等に扱うことができる。これを動作式で表現すると下式のようになる。
【0041】
大電流域
|iA+iB+iC|−R2×IR3≧K02 ………(4)
但し、
IR3=(max|iA|m+max|iB|m+max|iC|m)
max|iA|m:現時点を含めた過去一定時間の抑制量
(max|iB|m,max|iC|m)も同様
m:m個データ
R1<R2,K01>K02
従って、各端子でスカラー量の過去一定時間の最大値を検出し、装置の演算周期とは異なった伝送周期でスカラー量の最大値を伝送することにより、伝送速度に拘わらず区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要動作を防止することができる。
【0042】
図4は本発明による電流差動保護継電装置の第2の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0043】
第2の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させる以外は図1と同じである。
【0044】
このような構成としても、演算周期とは異なった伝送周期でスカラー量の最大値を伝送することにより、伝送速度に拘わらず区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要動作を防止することができる。
【0045】
図5は本発明による電流差動保護継電装置の第3の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0046】
第3の実施形態では、抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定し、ある一定のレベルであればリレー判定手段20に感度切換指令を出してリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定回路22を設ける以外は図1と同じである。
【0047】
ここで、抑制量レベル判定回路22とリレー判定手段20の作用を図6により述べる。
【0048】
図6に示す動作特性において、前述した(4)式のK02の値を変化させることで感度切換を実施するが、この切換にはある係数kを乗じて実施する。この係数kは所定値k1に対し過去一定時間の最大スカラー量から演算された抑制量と感度切換をした式により算出する。
【0049】
k=(max|iA|+max|iB|+max|iC|)/k1………(5)
CT飽和による波形歪の現象が現れるまではAB間で変化し、その後波形歪が現れた場合は、BC間で表現されるような区間外部事故時のCT飽和時に、過去一定時間のスカラー量の最大値から演算された抑制量を用いることでBC′間となる。
【0050】
このため、抑制量の大きさにより(5)式で演算された係数kにより大電流域特性を切換えることで、区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要な動作を防止することができる。
【0051】
図7は本発明による電流差動保護継電装置の第4の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0052】
第4の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させ、且つ抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定し、ある一定のレベルであればリレー判定手段20に感度切換指令を出してリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定回路22を設ける以外は図1と同じである。
【0053】
このような構成としても、第1の実施形態及び第3の実施形態と同様の作用並びに効果を得ることができる。
【0054】
図8は本発明による電流差動保護継電装置の第5の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0055】
第5の実施形態では、抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定する抑制量レベル判定回路22を設けると共に、動作感度がある一定値以下に切換らないように抑制してリレー判定手段20に感度切換指令を出すリレー感度抑制回路23を設ける以外は図1と同じである。
【0056】
ここで、抑制量レベル判定回路22及びリレー感度抑制回路23とリレー判定手段20の作用を図9により述べる。
【0057】
図9に示す動作特性において、抑制量レベル判定回路22は図6と同じような感度切換を実施するが、図13に示すような平行2回線送電線に1/2流出が伴う内部事故の発生時に感度切換を実施すると、図9に示すように動作できない可能性があるため、前述した(5)式で演算される係数kを一定以下とならないように(6)式として感度切換を抑制することで、区間外部事故時のCT飽和による電流差動保護継電装置の不要な動作を防止することができる。
【0058】
k≧x ………(6)
図10は本発明による電流差動保護継電装置の第6の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0059】
第6の実施形態では、サンプリング回路11でサンプリングされた端子電流を正相電流演算回路21に与えて正相電流としてデータ記憶回路12に記憶させ、且つ抑制量演算回路19により演算された抑制量を取込んでそのレベルがある一定のレベルであるか否かを判定する抑制量レベル判定回路22を設けると共に、動作感度がある一定値以下に切換らないように抑制してリレー判定手段20に感度切換指令を出すリレー感度抑制回路23を設ける以外は図1と同じである。
【0060】
このような構成としても、第1の実施形態及び第5の実施形態と同様の作用並びに効果を得ることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、演算周期とは異なった伝送周期で事前に演算された過去一定時間のスカラー量の最大値を伝送することで、従来の抑制量と同等に扱うことが可能となり、伝送速度に拘わらず外部事故時のCT飽和による不要な応動を防止できる電流差動保護継電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電流差動保護継電装置の第1の実施形態をにおけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図2】同実施形態において、電流データから過去のスカラー量の最大値を伝送するときの作用を説明するための概念図。
【図3】同実施形態における原理を説明するための回路構成図。
【図4】本発明による電流差動保護継電装置の第2の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図5】本発明による電流差動保護継電装置の第3の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図6】同実施形態における抑制量レベル判定回路及びリレー判定手段の作用を説明するためのリレー動作特性図。
【図7】本発明による電流差動保護継電装置の第4の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図8】本発明による電流差動保護継電装置の第5の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図9】同実施形態における抑制量レベル判定回路及びリレー感度抑制回路とリレー判定手段の作用を説明するためのリレー動作特性図。
【図10】本発明による電流差動保護継電装置の第6の実施形態におけるシステム構成を示すブロック回路図。
【図11】従来の電流差動保護継電装置の原理を説明するための回路構成図。
【図12】3端子送電線の外部事故時に1端子に集中して電流が流れる様子を示す電力系統図。
【図13】平行2回線からなる3端子送電線の内部事故時に電流が流出する端子が生じる様子を示す電力系統図。
【符号の説明】
1……CT
11……サンプリング回路
12……データ記憶回路
13……第1のデータ送受信回路
14……動作量演算回路
15……スカラー量演算回路
16……スカラー量記憶回路
17……スカラー量最大値検出回路
18……第2のデータ送受信回路
19……抑制量演算回路
20……リレー判定手段
21……正相電流演算回路
22……抑制量レベル判定回路
23……リレー感度抑制回路
Claims (5)
- 複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、各端子の各相電流をサンプリング同期信号に基づき一定周期でサンプリングし、ディジタル変換してなる電流データを各端子間で伝送しあって、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、
自端の電流データと他の端子から伝送されてきた電流データから各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と他の端子から伝送されてくるスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備えたことを特徴とする電流差動保護継電装置。 - 複数端子間を送電線により連繋してなる電力系統の各端子に設置され、電流差動保護方式により保護区間内外の事故を判定する電流差動保護継電装置において、
自端から入力される各相電流を同期信号に基づき一定周期でサンプリングしディジタル変換するサンプリング手段と、このサンプリング手段によりディジタル変換された電流データを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶された自端の電流データを他の端子に送信すると共に、他の端子から伝送されてくる電流データを受信する第1の伝送手段と、前記第1の記憶手段に記憶された電流データと前記第1の伝送手段により受信された他の端子からの電流データに基づいて各端子電流のベクトル和となる動作量を演算する第1の演算手段と、前記第1の記憶手段に記憶された自端の電流データからスカラー量を演算する第2の演算手段と、この第2の演算手段で演算されたスカラー量を記憶する第2の記憶手段と、このスカラー量記憶手段に記憶された現時点を含む過去一定時間内のスカラー量から最大値を検出するスカラー量最大値検出手段と、このスカラー量最大値検出手段により検出されたスカラー量最大値を他の端子へ送信すると共に、他の端子から伝送されてくるスカラー量最大値を受信する第2の伝送手段と、前記スカラー量最大値検出手段で検出されたスカラー量の最大値と前記第2の伝送手段により受信された他の端子からのスカラー量の最大値とに基づいて抑制量を演算する第3の演算手段と、前記第1の演算手段で演算された動作量と前記第3の演算手段で演算された抑制量をもとにリレー動作判定を行うリレー判定手段とを備えたことを特徴とする電流差動保護継電装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の電流差動保護継電装置において、
前記第3の演算手段で演算された抑制量が、ある一定のレベルであることを条件に前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度を切換える抑制量レベル判定手段を設けたことを特徴とする電流差動保護継電装置。 - 請求項3に記載の電流差動保護継電装置において、
前記抑制量レベル判定手段により切換えられる前記リレー判定手段のリレー動作判定の感度がある一定値以下に切換らないように抑制するリレー感度抑制手段を設けたことを特徴とする電流差動保護継電装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電流差動保護継電装置において、
前記各端子の各相電流をサンプリングし、ディジタル変換して得られる電流データを演算して正相電流としたことを特徴とする電流差動保護継電装置。
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