JP2004088014A - ヒートシンク - Google Patents

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江藤 節
Hisashi Hori
堀 久司
Takeshi Minamida
南田 剛
Motoji Hotta
堀田 元司
Harumichi Hino
樋野 治道
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Abstract

【課題】銅ベース板と銅若しくはアルミニウムのフィン又はアルミニウムベース板との接合を低コストで確実に行った放熱部材を備え、放熱性能の高いヒートシンクを提供する。
【解決手段】放熱部材H1とファン20を備えるヒートシンク10Aであって、放熱部材H1が、発熱体たるCPU40に熱的に接続される銅製のベース板5と、このベース板5の一方の面に互いに間隔をあけて立設された複数枚の銅製又はアルミニウム製のフィン4,4,…と、を備え、円周方向に回転する円板状の接合ツール3の周面をベース板5の他方の面に押し当てつつその表面に沿って移動させることにより、ベース板5と各フィン4,4,…とが摩擦振動接合されている。CPU40とベース板5はヒートパイプ30で接続されている。
【選択図】    図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子等の各種電子部品を冷却するためのヒートシンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
パソコン等の各種機器や電子設備等の電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、その使用によってある程度の発熱が避けがたく、その冷却は、近年の電子部品の高出力化・高集積化に伴って極めて重要な技術課題となっている。現在、このような冷却手段としては、たとえば電子部品の発熱部を放熱部材に熱的に接続することにより発熱部の熱を放熱部材のフィンに熱輸送し、これをファンで強制的に冷却して外部に熱を放出する構造のヒートシンクがある。また、薄型のノートブックパソコンのように発熱部の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合には、発熱部と放熱部材とをヒートパイプで接続することにより、放熱部材及びファンを筐体本体側の発熱部から離して、スペースに比較的余裕のあるパネル側に配置した構造のヒートシンクが採用され始めている。
【0003】
このようなヒートシンクにおける放熱部材としては、銅製のベース板に複数枚の銅製又はアルミニウム製のフィンを直接立設接合したものや、ベース板に複数枚のフィンを立設したものをアルミニウムの押出によって一体成形し、これを銅製のベース板に重ねて接合したものがある。そして、前者における銅ベース板と銅フィン又はアルミニウムフィンとの接合にはろう接が用いられ、後者における銅ベース板とアルミニウムベース板との接合にはろう接や爆発圧接が用いられている。
なお、ろう接とは、溶融したろう材を接合部の間隙に流入させ、母材との「ぬれ」及び「流れ」を利用して接合する方法であって、ろうの溶融あるいは反応拡散によってできた液相が毛細現象等によって界面間隙を埋め、やがて冷却に伴い凝固するという過程をたどって接合が完了するものである。
また、爆発圧接とは、火薬の爆発時に生じる極短時間での高エネルギーを金属間の接合に利用する方法であって、金属部材同士を適当な間隔をあけて設置し、一方の金属部材の上に載せた火薬の一端を雷管によって起爆させて両金属部材を高速度で衝突させ、その衝突点での金属の著しい流動現象(メタルジェット)によって、金属表面の汚染層を排除し、同時に高圧で密着・接合するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ろう接は、真空炉中などで所定時間にわたり加熱保持する工程が必要であるためコストが高く、また接合部の品質が安定しないという欠点がある。
また、爆発圧接は、コストが高く、大きな金属部材や複雑な形状の金属部材を接合できないという欠点がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、銅ベース板と銅若しくはアルミニウムのフィン又はアルミニウムベース板との接合を低コストで確実に行った放熱部材を備え、放熱性能の高いヒートシンクを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、放熱部材とファンを備えるヒートシンクであって、前記放熱部材が、発熱体に熱的に接続される銅ベース板と、この銅ベース板の一方の面に互いに間隔をあけて立設された複数枚の銅フィン又はアルミニウムフィンと、を備え、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を前記銅ベース板の他方の面に押し当てつつその表面に沿って移動させることにより、前記銅ベース板と前記各銅フィン又は前記各アルミニウムフィンとが摩擦振動接合されてなる、ことを特徴とする。
【0007】
かかるヒートシンクは、放熱部材とファンを備えた高性能のヒートシンクである。放熱部材はベース板の一方の面に互いに間隔をあけて複数枚のフィンを立設接合したものであって、ベース板は熱伝導率の極めて高い銅からなり、フィンは同じく銅又はこれよりも僅かに熱伝導率の低いアルミニウムからなる。そして、ベース板とフィンは摩擦振動接合されている。ここで摩擦振動接合とは金属部材同士の接合法の一種であって、接合ツールの押圧力によって金属部材同士の接合部における隙間をなくしつつ、回転する接合ツールと金属部材との接触により生ずる振動によって接合面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、摩擦熱によって接合部を高温化して塑性変形させることにより、接合部における接触面積と拡散速度を増大させながら金属部材同士を接合する方法である。
【0008】
つまり、このヒートシンクの放熱部材は、接合ツールの押圧力によってベース板とフィンの突合せ部の隙間をなくしつつ、回転する接合ツールとベース板との接触により生ずる振動によって突合せ面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、摩擦熱によって突合せ部を高温化して塑性変形させることにより、突合せ部における接触面積と拡散速度を増大させながらベース板とフィンが接合されたものとなっている。そして、このようにベース板とフィンを摩擦振動接合することにより、従来のようにろう接接合された場合よりもベース板とフィンが高強度に接合された放熱部材を低コストで製造することができる。
そして特に、フィンが銅の場合は、そのままでもよいが、ベース板と銅フィンの間にアルミニウム又はアルミニウム合金の如く銅より融点の低い金属を介在させて摩擦振動接合すると接合温度が低くて済み、設備、電力等が経済的である。また、フィンが銅よりも溶融点の低いアルミニウムからなる場合には、銅ベース板の一方の面にアルミニウムフィンを立設配置して銅ベース板の他方の面から接合ツールを押し込みつつ接合し、銅ベース板とアルミニウムフィンとの突合せ部が接合に必要な温度(共晶温度:548℃)まで上昇し突合せ面にCuAl層が形成されたときに、銅ベース板が依然としてその変形抵抗を高く保って接合ツールの押圧力を突合せ部に対して効率よく伝達するので、突合せ部に隙間がなく両者がより高強度に接合された放熱部材とすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、放熱部材とファンを備えるヒートシンクであって、前記放熱部材が、発熱体に熱的に接続される銅ベース板と、この銅ベース板の一方の面に重ねて配置されたアルミニウムベース板と、前記銅ベース板と反対側の面において前記アルミニウムベース板に互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウムフィンと、を備え、前記アルミニウムベース板と前記各アルミニウムフィンは一体に押出成形され、円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を前記銅ベース板の他方の面に押し当てつつその表面に沿って移動させることにより、前記銅ベース板と前記アルミニウムベース板とが摩擦振動接合されてなる、ことを特徴とする。
【0010】
かかるヒートシンクも、放熱部材とファンを備えた高性能のヒートシンクである点において請求項1に記載のヒートシンクと同様であるが、銅ベース板にフィンが直接立設接合された放熱部材ではなく、ベース板にフィンを立設して全体を一体に押出成形したアルミニウム部材を予め用意しておき、このアルミニウム部材のベース板が銅ベース板に重ね合わせ接合された放熱部材を用いる点が異なる。つまり、このヒートシンクの放熱部材は、接合ツールの押圧力によって銅ベース板とアルミニウムベース板の重ね合わせ部の隙間をなくしつつ、回転する接合ツールと銅ベース板との接触により生ずる振動によって重ね合わせ面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、摩擦熱によって重ね合わせ部を高温化して塑性変形させることにより、重ね合わせ部における接触面積と拡散速度を増大させながら銅ベース板とアルミニウムベース板が接合されたものとなっている。そして、このように銅ベース板とアルミニウムベース板が摩擦振動接合されているので、従来のようにろう接や爆発圧接により接合された場合よりも銅ベース板とアルミニウムベース板が高強度に接合された放熱部材を低コストで製造することができる。また、摩擦振動接合される部位が銅ベース板とアルミニウムベース板の重ね合わせ部であり、接合面積が大きいので、銅ベース板とアルミニウムフィンの突合せ部が摩擦振動接合される請求項1のヒートシンクにおける放熱部材よりも容易に製造できる。
【0011】
もちろん、銅ベース板の一方の面にアルミニウムベース板を重ね合わせて配置して銅ベース板の他方の面から接合ツールを押し込みつつ接合し、重ね合わせ部が接合に必要な温度(共晶温度:548℃)まで上昇し重ね合わせ面にCuAl層が形成されたときには、銅ベース板が依然としてその変形抵抗を高く保って接合ツールの押圧力を重ね合わせ部に対して効率よく伝達するので、重ね合わせ部に隙間がなく両者がより高強度に接合された放熱部材とすることができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のヒートシンクにおいて、発熱体と銅ベース板とがヒートパイプで接続されてなる、ことを特徴とする。
【0013】
かかるヒートシンクは、発熱体と銅ベース板とがヒートパイプで接続されているので、放熱部材及びファンを発熱体から離して配置することができ、薄型のノートブックパソコンのような発熱体の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合にも対応可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略するものとする。
【0015】
<摩擦振動接合>
まず、本題に入る前に、前提となる金属部材の摩擦振動接合の基本メカニズムを説明する。
金属部材の摩擦振動接合とは、接合ツールの押圧力によって金属部材の重ね合わせ部における隙間をなくしつつ、回転する接合ツールと金属部材との接触により生ずる振動によって金属部材の重ね合わせ面に存在する酸化皮膜を分断破壊するとともに、摩擦熱によって重ね合わせ部を高温化して塑性変形させることにより、金属部材同士の接触面積と拡散速度を増大させながら重ね合わせ部を接合する方法である。
そして特に、複数の金属部材を、溶融点の高い順に互いに重ね合わせて配置しておき、最も溶融点の高い金属部材側から接合ツールを押し当てつつ接合するようにすれば、金属部材同士の重ね合わせ部が接合に必要な温度まで上昇したときに、接合ツールに近い側の金属部材ほどその変形抵抗を高く保って接合ツールの押圧力を重ね合わせ面に対して効率よく伝達できるので、金属部材間に隙間のない高強度の接合が可能となるのである。
【0016】
ここで、金属部材の一例としてアルミニウム部材とこれよりも溶融点の高い銅部材とを挙げ、より具体的に説明する。図1(a),(b)は、摩擦振動接合の手順を表す正面断面図であり、図1(c)は図1(b)の側面図である。摩擦振動接合では、まず、図1(a)に示すようにアルミニウム部材1と銅部材2とが面接触するように互いに重ね合わせて配置し、図示しない治具で固定する。
【0017】
次に、図1(b),(c)に示すように、回転軸3bを中心として円周方向に周速度Rで高速回転する接合ツール3のツール本体3aの周面を銅部材2の表面2aに垂直に押し当てつつ、接合ツール3を銅部材2の表面2aに沿って送り速度Vで移動させることによって、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて接合する。接合ツール3は回転軸3bの先端部に円板状のツール本体3aを固定してなるものであり、ツール本体3aはJIS:SKD61などの工具鋼からなる。ツール本体3aは、銅部材2の表面2aを押さえ込みつつ進行方向後方に送り込むような向きで回転軸3bのまわりに回転する。
【0018】
ツール本体3aは、図2(a)に示すように、その周面が銅部材2の表面2aに一定量αだけ押し込まれた状態で円周方向に高速回転しつつ、銅部材2の表面2aに沿って移動する。そして、このようなツール本体3aの銅部材2への押し込みによってアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面の隙間をなくしつつ、高速回転するツール本体3aと銅部材2との接触により生ずる振動によってアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面の酸化皮膜を分断破壊するとともに、図2(b)に示すように、ツール本体3aと接触する銅部材2の所定領域及びその近傍領域と、これらの領域に隣接するアルミニウム合金1の所定領域とを、ツール本体3aと銅部材2との摩擦接触により発生した熱で高温化し、それぞれ固相状態のまま可塑化(流動化)させる。その結果、銅部材2とアルミニウム部材1は、互いの境界面においても塑性流動し、それぞれ当初の表面から塑性変形する。
【0019】
接合ツール3のツール本体3aが通過した跡は、図2(c)に示すように、ツール本体3aの押圧力によって銅部材2の表面2aに一対の浅い段部2b,2bが形成される。また、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面は、塑性変形したアルミニウム部材1及び銅部材2が互いに噛み合うように断面凹凸形で固化した接合面Sとなり、この接合面Sを介して銅部材2とアルミニウム部材1とが確実に接合される。
【0020】
ここで、接合ツール3をアルミニウム部材1側から押し当てることも考えられるが、アルミニウム部材1の溶融点は銅部材2の溶融点よりも低く、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面が接合に必要な温度(共晶温度:548℃)以上に達したときにアルミニウム部材1の変形抵抗が比較的小さくなってしまうので、接合ツール3による押圧力がアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面に充分に伝達されず、接合不良となりやすい。一方、接合ツール3をアルミニウム部材1よりも溶融点の高い銅部材2側から押し当てるようにすれば、アルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面が接合に必要な温度(共晶温度)以上に達したときに銅部材2の変形抵抗を比較的大きく保持して、接合ツール3の押圧力をアルミニウム部材1と銅部材2の重ね合わせ面に充分に伝達できるので、両部材間の隙間をなくした高強度の接合を行うことができる。
【0021】
なお、このようにしてアルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(A)で求められる周速度R(m/min)で回転させることが望ましい。
250≦R≦2000  …  (A)
これは、接合時の接合ツール3の周速度が250m/minより小さいと、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が小さすぎて、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面の温度が低く、接合不良となってしまい、一方、接合時の接合ツール3の周速度が2000m/minより大きいと、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が必要以上に大きくなって、接合ツール3の駆動エネルギーロスが大きいだけでなく、接合ツール3と接触している銅部材2の温度が局所的に大きくなりすぎて当該部分が塑性変形してしまい、接合ツール3の押圧力が重ね合わせ面に充分に伝達されず、両部材間に隙間が生じてしまうおそれがあるからである。したがって、接合時の接合ツール3を周速度250〜2000m/minで回転させれば、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が適正な値となって、良好な接合を行うことができるのである。
【0022】
また、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(B)で求められる押込量α(m)だけ銅部材2の表面2aに押し込むことが望ましい。
0.1×t≦α≦0.3×t  …  (B)
t:重ね合わせ部における銅部材の厚さ(m)
これは、接合時の接合ツール3の銅部材2表面への押込量αが0.1tよりも小さいと、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面に隙間が残って接合不良となり、一方、押込量αが0.3tよりも大きいと、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面に隙間は残らないが、接合ツール3の押し込み過大によって銅部材2表面に凹みが顕著に残ってしまい、部材ロスが発生するからである。したがって、接合時の接合ツール3の銅部材2表面への押込量αを0.1t以上0.3t以下とすれば、接合ツール3の押圧力が適正な値となって、銅部材2とアルミニウム部材1との重ね合わせ面に隙間を発生させずに接合することができ、銅部材2表面の凹みも小さくできるのである。
【0023】
さらに、アルミニウム部材1と銅部材2とを重ね合わせて摩擦振動接合する場合には、接合時の接合ツール3(ツール本体3a)を、次式(C)によって求められる送り速度V(m/min)で銅部材2の表面に沿って移動させることが望ましい。
0.1≦V≦R/(5.0×10×t)  …  (C)
R:接合時の接合ツールの周速度(m/min)
t:重ね合わせ部における銅部材の厚さ(m)
これは、接合時の接合ツール3の周速度が大きくなれば、接合ツール3と銅部材2との摩擦接触によって発生する熱量が大きくなるので、接合ツール3の送り速度Vを大きくしても、重ね合わせ部の温度を一定以上に保つことができるが、銅部材2の厚さが厚くなると、重ね合わせ面が一定温度以上に達するまでの時間がかかるので、接合ツール3の送り速度を大きくしすぎると、重ね合わせ部が一定温度以上に達する前に接合ツール3が通過してしまい、接合不良となってしまうからである。つまり、良好な摩擦振動接合を行うには、接合ツール3の送り速度V、周速度R、銅部材の厚さtを相互に調節する必要があり、実験の結果、V≦R/(5.0×10×t)を満足するときに良好な接合が可能であることが確認されている。一方、接合ツール3の周速度Vが小さすぎると、接合効率が低下するという観点から、0.1≦Vを満足するときに接合効率がよいことも実験によって確認されている。
【0024】
なお、金属部材の摩擦振動接合は、アルミニウム部材と銅部材との重ね合わせ接合に限定されるわけではなく、金属部材同士の重ね合わせ接合に広く適用することができる。そして、そのような金属部材の形状は、互いに重ね合わせて接合ツールを押し当てることができるものであれば任意に定めうる。さらに、金属部材の重ね合わせ数も二つに限定されるわけではなく、三つ以上としてもよい。
たとえば、図3では、三つの金属部材(5000系アルミニウム部材1、1000系アルミニウム部材1’、銅部材2)を互いに重ね合わせて配置し、三つの金属部材のうち最も溶融点の高い銅部材2側から接合ツール3のツール本体3aを押し当てて摩擦振動接合するものである。ここで、接合時に金属部材同士の重ね合わせ部が所定温度以上になることと、そのときの各金属部材の変形抵抗が金属部材同士の重ね合わせ面への接合ツールによる押圧力の伝達効率に影響することを考慮すると、三つの金属部材を溶融点の高い順(ここでは銅部材2、1000系アルミニウム部材1’、5000系アルミニウム部材1の順)に重ね合わせて配置し、最も溶融点の高い金属部材(ここでは銅部材2)の表面から接合ツール3を押し当てて摩擦振動接合することが望ましい。この他、三つの金属部材を銅、アルミニウム、マグネシウムとした場合には、銅部材、アルミニウム部材、マグネシウム部材の順に重ね合わせ、銅部材側から接合ツールを押し当てて摩擦振動接合すればよい。
【0025】
<放熱部材>
以上、金属部材の摩擦振動接合の基本メカニズムについて説明したが、続いて、これを応用して製造される放熱部材について説明する。
図4は、放熱部材の一実施形態を表す斜視図である。同図に示す放熱部材H1は、銅製のベース板5の一方の面に、複数枚のアルミニウム製のフィン4,4,…が互いに間隔をあけて立設接合されたものである。
【0026】
放熱部材H1の製造方法の一例は、スペーサ治具6を使用するものである。
スペーサ治具6は、図5(a)に示すように、スペーサ6a,6a,…の下端部が相互に連結された断面櫛形状の治具である。スペーサ6a,6a,…の高さは、放熱部材H1のフィン4,4,…の高さと等しくなっている。
そして、まず図5(b)に示すように、スペーサ6a,6a,…の間にそれぞれフィン4,4,…を挿入する。このとき、フィン4,4,…の上面とスペーサ6a,6a,…の上面とで水平面が形成される。
続いて、図5(c)に示すように、フィン4,4,…の上面にベース板5の一方の面(図中の下面)が当接するように、ベース板5を固定する。なお、図5(b),(c)の手順を逆にすること、つまりスペーサ治具6の上面にベース板5を固定した後で、側方(紙面直交方向)からフィン4,4,…を挿入することも可能である。
【0027】
次に、図5(d)に示すように、ベース板5の他方の面(図中の上面)から接合ツール3を押し当てつつ、ベース板5にフィン4,4,…を摩擦振動接合する。このとき、ベース板5を構成する銅の溶融点がフィン4を構成するアルミニウムの溶融点よりも高いので、フィン4とベース板5との境界面を両者の接合に必要な温度(共晶温度:548℃)まで上昇させたときにベース板5の変形抵抗を高く保つことができ、接合ツール3の押圧力を境界面に効率よく伝達しながらフィン4とベース板5の間に隙間のない高強度の接合を行うことができる。
また、スペーサ6aを構成する鉄の溶融点がフィン4を構成するアルミニウム及びベース板5を構成する銅の溶融点よりも高いので、接合ツール3の周速度や送り速度を所定の範囲に設定することによって、スペーサ6aがフィン4やベース板5に接合されないように、ベース板5とフィン4だけを容易に接合することができる。
最後に、図5(e)に示すように、ベース板5及びこれに接合されたフィン4,4,…を持ち上げて、スペーサ治具6を取り外すことにより、放熱部材H1の製造が完了する。
【0028】
以上のようにすれば、スペーサ治具6のスペーサ6a,6a,…の間にそれぞれフィン4,4,…を挿入するだけで、フィン4相互の間隔を正確に保ちつつ、互いに所定間隔をあけた状態でフィン4,4,…を並べて位置決めすることができる。また、摩擦振動接合時にはフィン4に曲げ応力が作用するが、スペーサ6aによってフィン4が補強されているので、フィン4の厚さをかなり薄くすることが可能である。また、スペーサ治具6のスペーサ6aの厚さや配置間隔を変更すれば、フィン4の配置間隔や厚さを調節でき、さらにフィン4の高さを併せて変更することによって、特に板厚が薄く高さの大きなフィン4,4,…を、ベース板5の一方の面に短ピッチで立設接合して、ハイトング比の(たとえばトング比20を超える)放熱器H1を製造することができる。もちろん、スペーサ治具6(スペーサ6a)は金属製に限定されるわけではなく、強度や加工性等を考慮してセラミックその他の任意の材質とすることができる。なお、スペーサ治具6のスペーサ6a,6a,…の高さをフィン4の高さよりも小さくして、摩擦振動接合時にベース板5の一方の面にスペーサ6a,6a,…が当接しないようにしてもよいが、摩擦振動接合時に接合ツール3の押圧力によってフィン4に曲げ応力が作用することを考慮すれば、スペーサ6aによるフィン4の補強効果を高めるため、上記実施形態のようにスペーサ6a,6a,…をフィン4,4,…と同じ高さに揃えることが望ましい。
【0029】
また、以上のような製造方法によれば、ろう接のように真空炉中などで所定時間にわたり加熱保持することなく、フィン4,4,…とベース板5とを接合できるので、製造コストを削減することができる。
なお、ベース板5とフィン4,4,…との接合強度を高めるとともに、放熱器H1の放熱性能を高めるためには、図6(a)に示すように、各フィン4の基端部(図中の上面)を全て辿るようにベース板5の裏面(ベース板5の他方の面)において接合ツール3を移動させることによって、フィン4,4,…をベース板5に完全に接合することが望ましい(図6において斜線を付した領域は、接合ツール3の移動跡を示している。)。一方、接合コストの削減を重視するのであれば、たとえば図6(b)に示すように、各フィン4の基端部の全面ではなく一部だけを辿るように接合ツール3を移動させればよい。また、ベース板5とフィン4,4,…とを摩擦振動接合するときに同時にベース板5とスペーサ6a,6a,…とを接合しておき、その後に何らかの方法によってベース板5やフィン4からスペーサ6a,6a,…を取り外すようにしてもよいが、接合ツール3のツール本体3aの幅をフィン4の厚さ以下としておき、図6(c)に示すようにベース板5とスペーサ6a,6a,…とが接合されないような軌跡で(図示の場合、フィン4,4,…の直上領域だけで)接合ツール3を移動させるか、又は、ベース板5にフィン4,4,…のみを当接させ、ベース板5とスペーサ6a,6a,…が当接しないように配置して接合するか、あるいは、上記実施形態のようにスペーサ6aの溶融点をフィン4及びベース板5の溶融点よりも高くすることによって、接合ツール3の移動軌跡にかかわらずスペーサ6a,6a,…がベース板5やフィン4に接合されないようにしておけば、摩擦振動接合後もスペーサ6a,6a,…がベース板5やフィン4に接合されないので、スペーサ6aを離脱する手間を省いて製造コストを削減することができる。また、接合ツール3の押込力によってベース板5の他方の面の表面に残った凹みが大きい場合には、ベース板5の表面を一定厚さで切削することによって、外観美麗な放熱部材H1とすることができる。
【0030】
また、摩擦振動接合を簡素化するために、回転軸3bのまわりに所定間隔で複数個のツール本体3a,3a,…が固定された接合ツール(図示省略)を用いて摩擦振動接合するようにしてもよい。この場合、一度に多数箇所を摩擦振動接合できるので、接合に要する時間を短縮でき、さらに接合効率が向上する。
【0031】
図7は、放熱部材の他の実施形態を表す斜視図である。同図に示す放熱部材H2は、銅製のベース板5の一方の面に、アルミ放熱部7が摩擦振動接合されたものである。アルミ放熱部7は、ベース板5の一方の面に重ねて配置されたアルミニウム製のベース板7aと、ベース板5と反対側の面においてベース板7aに互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウム製のフィン7b,7b,…とが一体に押出成形されたものである。
【0032】
この放熱部材H2の製造方法も、上記放熱部材H1の製造方法と略同様である。つまり、図8(a)に示す断面形状のスペーサ治具6を接合テーブル上に固定しておき、図8(b)に示すように、スペーサ治具6のスペーサ6a,6a,…の間にそれぞれフィン7b,7b,…が嵌め込まれるようにアルミ放熱部7をセットする。また、アルミ放熱部7のベース板7aにおけるフィン7b,7b,…と反対側の面(図示上面)にベース板5の一方の面(図示下面)を重ね合わせて固定する。そして、図8(c)に示すように、ベース板5の他方の面(図示上面)側から接合ツール3で摩擦振動接合する。最後に、図8(d)に示すようにスペーサ治具6を取り外せば、放熱部材H2の製造が完了する。その他の点については、放熱部材H1の製造方法と同様である。
【0033】
<ヒートシンク>
続いて、本発明に係るヒートシンクの実施形態を説明する。
図9(a)は本発明に係るヒートシンクの第一実施形態の分解斜視図であり、図9(b)は同組立斜視図である。また、図10(a)は図9のヒートシンクの平面図、図10(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのX矢視側面図、Y矢視側面図である。
このヒートシンク10Aは、放熱部材H1とファン20とを備えた高性能のヒートシンクである。放熱部材H1は発熱体たるCPU40に対してヒートパイプ30で熱的に接続されている。
【0034】
放熱部材H1は、既に説明したように、銅製のベース板5の一方の面に、複数枚のアルミニウム製のフィン4,4,…が互いに間隔をあけて立設した状態で摩擦振動接合されたものである。ここで、ベース板5の両側面には突起5aが形成されている。また、ベース板5の下面には、ヒートパイプ30の端部が嵌合される嵌合溝5bが形成されている。
【0035】
ファン20は、放熱部材H1を強制的に冷却するものであって、ファン取付部材21を介して放熱部材H1に取り付けられ、放熱部材H1の熱を上方に放出する。ファン20には、図示しないモータが接続されている。
ファン取付部材21は、上板部21aと側板部21b,21bとで構成されており、放熱部材H1のフィン4,4,…を包含するように断面門形に形成されている。上板部21aの中央部にはファン20の位置及び大きさに応じた空気孔21cが穿設され、上板部21aの四隅にはビス孔21dが形成されている。側板部21bの下部には、放熱部材H1のベース板5の突起5aに対応する位置に取付孔21eが穿設されている。
【0036】
そして、取付孔21eに突起5aを挿入した後に突起5aをかしめたり曲げ加工することにより、ファン取付部材21が放熱部材H1に取り付けられる。また、ファン20の上方からビス孔21dにビス21fをねじ込むことにより、ファン20がファン取付部材21に取り付けられる。このようにして、放熱部材H1にファン20が取り付けられている。
【0037】
ヒートパイプ30は、発熱体たるCPU40で発生した熱を放熱部材H1に輸送するものであり、その一端は放熱部材H1に、他端はCPU40に、それぞれ熱的に接続されている。つまり、ヒートパイプ30の一端は、放熱部材H1のベース板5の嵌合溝5bに嵌合され押し付けられた状態で、取付金具31及びビスでベース板5に固定されている。また、CPU40の上に配置された受熱部材41の上面には、放熱部材H1のベース板5の下面と同様、嵌合溝41aが形成されており、ヒートパイプ30の他端はこの嵌合溝41aに嵌合され押し付けられた状態で、取付金具42及びビスで受熱部材41に固定される。受熱部材41は熱伝導率の高い材料(例えば銅など)からなる。
【0038】
CPU40の下方には回路基板のソケット43が配置される。このソケット43の側面には突起43aが形成されている。ソケット43の上にはCPU40が重ね合わせられ、さらにCPU40の上に受熱部材41が重ね合わせられる。そして、両端部に取付孔44aが穿設された門形の取付クリップ44を上方からこれらに被せ、取付孔44aに突起43aを挿入した上で、突起43aをかしめたり曲げ加工することにより、ソケット43、CPU40、受熱部材41が互いに押し付けられた状態で一体に固定される。
【0039】
以上のヒートシンク10Aは、放熱部材H1とファン20を備えており、発熱体たるCPU40で発生した熱を順に、受熱部材41、ヒートパイプ30、放熱部材H1に輸送してファン20で強制的に外部に放出するので、放熱性能が高い。また、CPU40と放熱部材H1とがヒートパイプ30で接続されているので、放熱部材H1及びファン20をCPU40から離して配置することができ、薄型のノートブックパソコンのようなCPU40の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合にも対応可能なものとなっている。
【0040】
また、ヒートシンク10Aの放熱部材H1は、ベース板5の一方の面に互いに間隔をあけて複数枚のフィン4,4,…を立設して摩擦振動接合されたものであるので、従来のようにろう接接合された場合よりもベース板とフィンが高強度に接合され、低コストで製造できる。そして特に、フィン4が銅よりも溶融点の低いアルミニウムからなるので、摩擦振動接合時に銅製のベース板5が接合ツール3の押圧力を突合せ部に対して効率よく伝達し、突合せ部に隙間がなく両者がより高強度に接合されたものとなっている。
なお、ここでは放熱部材H1のフィン4をアルミニウム製としたが、これを銅製としてもよい。
【0041】
図11は、本発明に係るヒートシンクの第二実施形態の組立斜視図である。このヒートシンク10Bは、放熱部材の構成を除いて全て第一実施形態のヒートシンク10Aと同様である。ヒートシンク10Bの放熱部材H2は、既に説明したように、銅製のベース板5の一方の面に、アルミ放熱部7が摩擦振動接合されたものである。アルミ放熱部7は、ベース板5の一方の面に重ねて配置されたアルミニウム製のベース板7aと、ベース板5と反対側の面においてベース板7aに互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウム製のフィン7b,7b,…とが一体に押出成形されたものである。
【0042】
このヒートシンク10Bの放熱部材H2は、銅製のベース板5とアルミニウム製のベース板7aとが摩擦振動接合されているので、従来のようにろう接や爆発圧接により接合された場合よりもベース板5,7aが高強度に接合され、低コストで製造することができる。また、摩擦振動接合される部位がベース板5とベース板7aの重ね合わせ部であり、接合面積が大きいので、第一実施形態のヒートシンク10Aの放熱部材H1よりも製造が容易である。
【0043】
図12(a)は本発明に係るヒートシンクの第三実施形態の分解斜視図であり、図12(b)は同組立斜視図である。また、図13(a)は図12のヒートシンクの平面図、図13(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのX矢視側面図、Y矢視側面図である。
このヒートシンク10Cは、ファンの構造等を除いて第一実施形態のヒートシンク10Aと同様である。
【0044】
このヒートシンク10Cのファン22は、放熱部材H1の側方に配置された状態で放熱部材H1に直接に取り付けられている。つまり、ファン22は、放熱部材H1のフィン4,4,…の側端面に面するようにフィン4,4,…の側方に配置され、放熱部材H1の熱を上方に放出するものとなっている。ファン22は、フィン4,4,…を包含するような断面門形のファンケース22aを含んでいる。ファンケース22aの下部には、放熱部材H1のベース板5の突起5aに対応する位置に取付孔22bが穿設されている。そして、取付孔22bに突起5aを挿入した後に突起5aをかしめたり曲げ加工することにより、ファン22が放熱部材H1に取り付けられている。
【0045】
以上のヒートシンク10Cは、放熱部材H1とファン22を備えており、発熱体たるCPU40で発生した熱を順に、受熱部材41、ヒートパイプ30、放熱部材H1に輸送してファン22で強制的に外部に放出するので、放熱性能が高い。また、CPU40と放熱部材H1とがヒートパイプ30で接続されているので、放熱部材H1及びファン22をCPU40から離して配置することができるとともに、放熱部材H1の側方にファン22を配置してあるので、ヒートシンク10C全体の高さを第一実施形態のヒートシンク10Aよりも小さくすることができ、薄型のノートブックパソコンのようなCPU40の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合に特に適したものとなっている。
なお、その他の構成及び作用は、第一実施形態のヒートシンク10Aと同様である。
【0046】
図14は、本発明に係るヒートシンクの第四実施形態の組立斜視図である。このヒートシンク10Dは、放熱部材の構成を除いて全て第三実施形態のヒートシンク10Cと同様である。つまり、ヒートシンク10Dの放熱部材H2は、既に説明したように、銅製のベース板5の一方の面に、アルミ放熱部7が摩擦振動接合されたものである。アルミ放熱部7は、ベース板5の一方の面に重ねて配置されたアルミニウム製のベース板7aと、ベース板5と反対側の面においてベース板7aに互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウム製のフィン7b,7b,…とが一体に押出成形されたものである。
【0047】
図15(a)は本発明に係るヒートシンクの第五実施形態の分解斜視図であり、図15(b)は同組立斜視図である。また、図16(a)は図15のヒートシンクの平面図、図16(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのX矢視側面図、Y矢視側面図である。
このヒートシンク10Eは、第一実施形態のヒートシンク10Aと略同様であり、放熱部材H1’とファン20とを備えた高性能のヒートシンクである。放熱部材H1’は、ヒートパイプ30を経由せずにCPU40に対して直接的に熱接続されている。
【0048】
放熱部材H1’は、第一実施形態のヒートシンク10Aの放熱部材H1と略同様の構成であるが、アルミニウム製のフィン4,4,…を横切るように、取付クリップ44が挿入されるクリップ溝4aが形成されたものとなっている。つまり、放熱部材H1’は、銅製のベース板5の一方の面に、クリップ溝4aをあけて二列にアルミニウム製のフィン4,4,…が立設され、摩擦振動接合されたものとなっている。
また、放熱部材H1’のベース板5の下面に嵌合溝は形成されていない。
【0049】
ヒートシンク10Eのファン取付部材21’の側板部21bの下部中央部には取付クリップ44が嵌合されるクリップ溝21gが形成されている。
【0050】
ヒートシンク10Eの組立手順としては、まずソケット43の上にCPU40、放熱部材H1’のベース板5を順に重ね合わておき、放熱部材H1’のクリップ溝4aに取付クリップ44を挿入して、さらに取付クリップ44の取付孔44aにソケット43の突起43aを挿入した上で、突起43aをかしめたり曲げ加工することにより、ソケット43、CPU40、放熱部材H1’を互いに押し付けた状態で一体に固定し、発熱体たるCPU40と放熱部材H1’とを熱的に接続する。
【0051】
次に、取付クリップ44をクリップ溝21gに挿入しながらファン取付部材21’を放熱部材H1’に上から被せ、取付孔21eに突起5aを挿入した後に突起5aをかしめたり曲げ加工することにより、ファン取付部材21’を放熱部材H1’に取り付ける。最後に、ファン20の上方からビス孔21dにビス21fをねじ込むことにより、ファン20をファン取付部材21’に取り付けて、ヒートシンク10Eの組立が完了する。
【0052】
以上のヒートシンク10Eは、放熱部材H1’とファン20を備えており、CPU40で発生した熱をヒートパイプを経由せずに直接的に放熱部材H1’に伝達し、ファン20で強制的に外部に放出するので、特に放熱性能が高い。
なお、その他の構成及び作用は、第一実施形態のヒートシンク10Aと同様である。
【0053】
図17は、本発明に係るヒートシンクの第六実施形態の組立斜視図である。このヒートシンク10Fは、放熱部材の構成を除いて全て第五実施形態のヒートシンク10Eと同様である。ヒートシンク10Fの放熱部材H2’は、第二実施形態のヒートシンク10Bの放熱部材H2と同様、銅製のベース板5の一方の面に、アルミ放熱部7が摩擦振動接合されたものである。アルミ放熱部7は、ベース板5の一方の面に重ねて配置されたアルミニウム製のベース板7aと、ベース板5と反対側の面においてベース板7aに互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウム製のフィン7b,7b,…とが一体に押出成形されたものである。また、フィン7b,7b,…には、第五実施形態と同様の形状で、図示しないクリップ溝が形成されている。
【0054】
図18(a)は本発明に係るヒートシンクの第七実施形態の分解斜視図であり、図18(b)は同組立斜視図である。また、図19(a)は図18のヒートシンクの平面図、図19(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのX矢視側面図、Y矢視側面図である。
このヒートシンク10Gは、第五実施形態のヒートシンク10Eと略同様であり、放熱部材H1’とファン20とを備えた高性能のヒートシンクである。放熱部材H1’は、ヒートパイプを経由せずにCPU40に対して直接的に熱接続されている。
【0055】
ヒートシンク10Gでは、ファン20が放熱部材H1’の側方に取り付けられ、放熱部材H1’の熱が側方に放出される。したがって、ヒートシンク10Gのファン取付部材21”の空気孔21c、ビス孔21dは側方に形成されている。
【0056】
以上のヒートシンク10Gは、放熱部材H1”とファン20を備えており、CPU40で発生した熱をヒートパイプを経由せずに直接的に放熱部材H1’に伝達し、ファン20で強制的に外部に放出するので、特に放熱性能が高い。さらに、放熱部材H1’の側方にファン20を配置してあるので、ヒートシンク10G全体の高さを小さくすることができ、薄型のノートブックパソコンのようなCPU40の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合に特に適したものとなっている。
なお、その他の構成及び作用は、第五実施形態のヒートシンク10Eと同様である。
【0057】
図20は、本発明に係るヒートシンクの第八実施形態の組立斜視図である。このヒートシンク10Hは、放熱部材の構成を除いて全て第七実施形態のヒートシンク10Gと同様である。ヒートシンク10Hの放熱部材H2’は、第六実施形態のヒートシンク10Fの放熱部材H2’と同様である。
【0058】
なお、具体的寸法について一例を示すと下記の如くである。
▲1▼ 銅ベース板の厚さ×幅×奥行:2mm×72mm×55mm
アルミニウムフィンの厚さ×奥行×高さ:0.3mm×54mm×10mm
フィンピッチ:1.5〜1.6mm
フィン枚数:42枚
最大放熱能力:42〜43W
▲2▼ 銅ベース板の厚さ×幅×奥行:2.5mm×72mm×55mm
アルミニウムフィンの厚さ×奥行×高さ:0.3mm×58mm×12.5mm
フィンピッチ:1.5〜1.6mm
フィン枚数:42枚
最大放熱能力:58〜59W
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るヒートシンクによれば、放熱部材が、銅ベース板と銅若しくはアルミニウムのフィン又はアルミニウムベース板とを摩擦振動接合したものであるので、従来品よりも低コストで確実に製造できる。
また、放熱部材の熱をファンで強制的に冷却する構成であるので、放熱性能が高い。
さらに、発熱体と銅ベース板とがヒートパイプで接続されている場合には、放熱部材及びファンを発熱体から離して配置することができ、薄型のノートブックパソコンのような発熱体の近傍で熱を放出する構造とすることがスペース的に困難な場合にも対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は摩擦振動接合の手順を表す正面断面図であり、(c)は(b)の側面図である。
【図2】図1におけるアルミニウム部材と銅部材との重ね合わせ面の塑性変形の様子を時系列的に表す断面図である。
【図3】金属部材の摩擦振動接合の別の例を表す正面断面図である。
【図4】放熱部材の一実施形態を表す斜視図である。
【図5】図4の放熱部材の製造方法を説明するための図である。
【図6】図5(d)における接合ツールの移動軌跡の各例を表す斜視図である。
【図7】放熱部材の他の実施形態を表す斜視図である。
【図8】図7の放熱部材の製造方法を説明するための図である。
【図9】(a)は本発明に係るヒートシンクの第一実施形態の分解斜視図であり、(b)は同組立斜視図である。
【図10】(a)は図9のヒートシンクの平面図、(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのX矢視側面図、Y矢視側面図である。
【図11】本発明に係るヒートシンクの第二実施形態の組立斜視図である。
【図12】(a)は本発明に係るヒートシンクの第三実施形態の分解斜視図であり、(b)は同組立斜視図である。
【図13】(a)は図12のヒートシンクの平面図、(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのA矢視側面図、B矢視側面図である。
【図14】本発明に係るヒートシンクの第四実施形態の組立斜視図である。
【図15】(a)は本発明に係るヒートシンクの第五実施形態の分解斜視図であり、(b)は同組立斜視図である。
【図16】(a)は図15のヒートシンクの平面図、(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのA矢視側面図、B矢視側面図である。
【図17】本発明に係るヒートシンクの第六実施形態の組立斜視図である。
【図18】(a)は本発明に係るヒートシンクの第七実施形態の分解斜視図であり、(b)は同組立斜視図である。
【図19】(a)は図18のヒートシンクの平面図、(b),(c)はそれぞれ同ヒートシンクのA矢視側面図、B矢視側面図である。
【図20】本発明に係るヒートシンクの第八実施形態の組立斜視図である。
【符号の説明】
1  … アルミニウム部材
2  … 銅部材
2a … 表面
2b … 段部
3  … 接合ツール
3a … ツール本体
3b … 回転軸
4  … フィン
4a … クリップ溝
5  … ベース板
5a … 突起
5b … 嵌合溝
6  … スペーサ治具
6a … スペーサ
7  … アルミ放熱部
7a … ベース板
7b … フィン
10  … ヒートシンク
20  … ファン
21  … ファン取付部材
21a … 上板部
21b … 側板部
21c … 空気孔
21d … ビス孔
21e … 取付孔
21f … ビス
21g … クリップ溝
22  … ファン
22a … ファンケース
22b … 取付孔
30  … ヒートパイプ
31  … 取付金具
40  … CPU
41  … 受熱部材
41a … 嵌合溝
42  … 取付金具
43  … ソケット
43a … 突起
44  … 取付クリップ
44a … 取付孔
H1,H1’,H2,H2’  … 放熱部材

Claims (3)

  1. 放熱部材とファンを備えるヒートシンクであって、
    前記放熱部材は、発熱体に熱的に接続される銅ベース板と、この銅ベース板の一方の面に互いに間隔をあけて立設された複数枚の銅フィン又はアルミニウムフィンと、を備え、
    円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を前記銅ベース板の他方の面に押し当てつつその表面に沿って移動させることにより、前記銅ベース板と前記各銅フィン又は各アルミニウムフィンとが摩擦振動接合されてなる、
    ことを特徴とするヒートシンク。
  2. 放熱部材とファンを備えるヒートシンクであって、
    前記放熱部材は、発熱体に熱的に接続される銅ベース板と、この銅ベース板の一方の面に重ねて配置されたアルミニウムベース板と、前記銅ベース板と反対側の面において前記アルミニウムベース板に互いに間隔をあけて立設された複数枚のアルミニウムフィンと、を備え、
    前記アルミニウムベース板と前記各アルミニウムフィンは一体に押出成形され、
    円周方向に回転する円板状の接合ツールの周面を前記銅ベース板の他方の面に押し当てつつその表面に沿って移動させることにより、前記銅ベース板と前記アルミニウムベース板とが摩擦振動接合されてなる、
    ことを特徴とするヒートシンク。
  3. 前記発熱体と前記銅ベース板とがヒートパイプで接続されてなる、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートシンク。
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