JP2004087864A - 窓材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】その内部の金属濃度が100ng/m3 以下、水分濃度が500μg/m3 以下及び有機物濃度が100μg/m3 以下である部屋に設置される窓の、脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエハ基板などの精密基板の保管、加工、洗浄等を行うのに好適な清浄な部屋に設置する窓のための窓材に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路や液晶表示素子等の高密度化等に伴い、これらの電子部品への、水分、有機物、塵埃(0.1μm程度の大きさの微粒子でも問題となる。)等の汚染物質の混入による製品の品質低下が大きな問題となる。そのため、これらの電子部品の製造に用いられる半導体ウエハ、マスク原板、フォトマスク、磁気ディスク基板、液晶表示素子用基板などの精密基板の保管、搬送、洗浄及び製造等は上記汚染物質を可能な限り排除した環境で行う必要がある。
例えば、精密基板を保管する精密基板ストッカー(工程内精密基盤倉庫)は、清浄な空気を流通させて水分、有機物などを混入させない必要があり、そのため精密基板ストッカーに人が出入りせずに外から保管状況を確認できる窓があると好都合である。しかし、精密基板ストッカーにガラス窓を設けると、ガラス表面からナトリウム、カリウムなど金属のイオンや塩が揮散して、また、万一ガラスが破損するとガラスの微粒子が発生して精密基板を汚染する。ガラスに代えてポリメタクリル酸メチル(PMMA)製透明板を窓材に使用しても、透明板に残留している未反応単量体などが揮散して精密基板を汚染する。
【0003】
また、ウエハ基板は一定の大きさに切断されて用いられるが、近年、その切断には、従来のダイアモンド砥石に代わってエキシマレーザー等のレーザーが用いられるようになった。この場合において、レーザー切断を行なう真空チャンバには透過率の高い窓材が必要であるが、窓材に石英ガラスやPMMA等を用いても、内部の基板が汚染される可能性が高いのは上記ウエハストッカの場合と同じである。
【0004】
また、精密基板は製造工程の各所で、水、有機溶媒などの洗浄液で洗浄されるが、その際に、洗浄器に透明な窓があると的確に洗浄が行われているかを観察でき、しかも、外部に設けた加熱灯で内部を加熱できるのでこの操作を安全に行うことができて便利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ウエハ基板などの精密基板を取り扱うための、金属、水分及び有機物の濃度が著しく小さい清浄な部屋に設置する窓に用いる窓材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の分子構造を有する重合体樹脂からなる窓材が上記目的を達成することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記(1)〜(8)の発明が提供される。
(1) その内部の金属濃度が100ng/m3 以下、水分濃度が500μg/m3 以下及び有機物濃度が100μg/m3 以下である部屋に設置される窓の、脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材。
(2) 金属濃度が1ppb以下で、その液体に不溶性の有機物の濃度が10ppb以下である液体を取り扱う部屋に設置される窓の、脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材。
(3) 前記脂環式構造含有重合体樹脂が、下記[1]〜[3]の特性を満足する上記(1)記載の窓材。
[1]呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、25℃において超高純度アルゴンガス(不純物濃度:1ppb以下)を流速1.2L/minで流通したときに、流通開始から300分後の前記アルゴンガス中の水分量をWH(ppb)、成形体の表面積をS(cm2)とするとき、WH/Sが30(ppb/cm2)以下である。
[2]長さ600mm、呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、密閉して100℃の状態で300分放置した後の前記SUS−EP管内の空気中の有機物の増加量をWO(ng)、成形体の重量をWR(g)とするとき、WO/WRが150(ng/g)以下である。
[3]ASTM D1003に基づく全光線透過率が30%以上である。
(4) 前記脂環式構造含有重合体樹脂が、下記[1]〜[3]の特性を満足する上記(2)記載の窓材。
[1]呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、25℃において超高純度アルゴンガス(不純物濃度:1ppb以下)を流速1.2L/minで流通したときに、流通開始から300分後の前記アルゴンガス中の水分量をWH(ppb)、成形体の表面積をS(cm2 )とするとき、WH/Sが30(ppb/cm2 )以下である。
[2]長さ600mm、呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、密閉して100℃の状態で300分放置した後の前記SUS−EP管内の空気中の有機物の増加量をWO(ng)、成形体の重量をWR(g)とするとき、WO/WRが150(ng/g)以下である。
[3]ASTM D1003に基づく全光線透過率が30%以上である。
(5) 前記部屋が精密基板ストッカーである上記(1)または(3)記載の窓材。
(6) 前記部屋がエキシマレーザーを用いたウエハ切断装置の真空チャンバである蒸気(1)または(3)記載の窓材。
(7) 前記部屋がウエハ洗浄器の洗浄槽である上記(2)または(4)記載の窓材。
(8) 前記脂環式構造含有体の、JIS K7210に基づいて測定したメルトインデックスが、230℃において0.1〜30g/10min又は280℃において2〜100g/10minである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の窓材。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は清浄な部屋に設置する窓用の材料(以下、「窓材」と記す。)に関する。該部屋は、壁、天井、床などの、空間を画する材料(窓以外の材料)が、水分、有機物及び微粒子などの汚染物質をほとんど発生させない材料であって、脂環式構造含有重合体樹脂以外の材料で構成された空間であり、その内部は、ウエハなどの精密基板等の保管、加工、洗浄などを行うのに好適な空間である。
【0008】
本発明の窓材は脂環式構造含有重合体樹脂からなり、金属濃度が100ng/m3 以下、好ましくは50ng/m3 以下、より好ましくは10ng/m3以下で、水分濃度が500μg/m3 以下、好ましくは50μg/m3 以下、より好ましくは5μg/m3 以下で、有機物濃度が100μg/m3 以下、好ましくは50μg/m3 以下、より好ましくは10μg/m3 以下である部屋に設置される窓に用いられる。部屋の内部は、これら以外の気体、例えば空気、窒素、酸素、水素、塩素などが充満していても、また、真空であってよい。
また、本発明の窓材は、金属濃度が1ppb以下、好ましくは0.1ppb以下、より好ましくは0.01ppb以下で、その液体に不溶性の有機物濃度が10ppb以下、好ましくは5ppb以下、より好ましくは1ppb以下である液体を取り扱う部屋に設置される窓に用いる脂環式構造含有重合体樹脂からなるものである。また、前記液体は、脂環式構造含有重合体樹脂を溶解、膨潤しないものが好ましい。
上記の金属としては固体で存在する金属化合物、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属や、酸化鉄、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの重金属酸化物などが挙げられる。
上記液体は、具体的には、超純水、無機酸(過酸化水素水、硫酸、フッ酸、硝酸、塩酸、リン酸)、無機アルカリ溶液(水酸化アンモニウムなど)、有機アルカリ溶液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)、BHF溶液(フッ化アンモニウム、フッ化水素および水混合液)、イソプロピルアルコール、オゾン水などが挙げられる。
【0009】
該脂環式構造含有重合体樹脂は、その成形体が下記[1]、[2]および[3]の条件を満たす樹脂である。
[1] 呼び径1/2インチのSUS−EP(ステンレス電着塗装)管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、25℃において超高純度アルゴンガス(不純物濃度1ppb以下。不純物は窒素、水分など。)を流速1.2L(リッター)/minで流通したときに、流通開始から300分後の前記アルゴンガス中の水分量をWH(ppb)、成形体の表面積をS(cm2)とするとき、WH/Sが30(ppb/cm2)以下である。
[2] 長さ600mm、呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、密閉して100℃の状態で300分放置した後の前記SUS−EP管内の空気中の有機物の増加量をWO(ng)、成形体の重量をWR(g)とするとき、WO/WRが150(ng/g)以下である。
[3] 脂環式構造含有重合体樹脂成形体のASTM D1003 に基づく全光線透過率が30%以上である。さらに上記全光線透過率は、より好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。全光線透過率が30%未満であると、例えば窓材がシリコンウエハ基板ストッカーの窓材として用いられる場合に、該ストッカーの内部のシリコンウエハの保管状況を窓を通して外から覗き見ても不明瞭となるおそれがある。
【0010】
上記[1]における樹脂成形体から放出される水分量WH/Sは、好ましくは20(ppb/cm2)以下、より好ましくは10(ppb/cm2)以下、特に好ましくは5(ppb/cm2)以下である。WH/Sが(ppb/cm2)を越えると、例えば窓材がシリコンウエハ基板ストッカーの窓として用いられる場合に、シリコンウエハの表面に自然酸化膜が生成して、該シリコンウエハ基板で半導体素子を製造すると絶縁不良などの不具合が発生するおそれがある。
WH/Sの測定に当って、試験片は脂環式構造含有重合体樹脂を用いて押出成形、射出成形または圧縮成形によって成形した厚さ1mmのシート状成形体から切り出した、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の短冊状のものを用いる。
アルゴンガスの流路として、長さ200mmの呼び径1/2インチSUS316L−EP管の両末端にフランジを介して任意の長さの呼び径1/4インチSUS316L−EP管をそれぞれ連結した配管を使用する。
一方のフランジを外し、前記試験片を呼び径1/2インチ管の中に収めてフランジをボルトで結合した後、不純物濃度が1ppb以下である、温度25℃の超高純度アルゴンガスを流速1.2L/minで流して試験片〔表面積S(cm2)〕を該高純度アルゴンガスと接触させ続け、流通開始から300分後に、アルゴンガス気流の下流側の呼び径1/4インチSUS316L−EP管出口のアルゴンガス中の水分量WH(ppb)を大気圧イオン化質量分析計〔以下、「API−MS」と記す。〕で測定する。そして、WH/Sを水分放出量(単位:ppb/cm2)とする。
【0011】
上記[2]における樹脂成形体から放出される有機物量WO/WRは、好ましくは100(ng/g)以下、より好ましくは50(ng/g)以下である。WO/WRが150(ng/g)を越えると、例えば窓材がシリコンウエハ基板ストッカーの窓材として用いられる場合に、有機物がシリコンウエハ基板上に付着することにより製造の歩留まりや信頼性が低下する可能性がある。
WO/WRの測定に当って、試験片は、脂環式構造含有重合体樹脂を用いて押出成形、射出成形、または圧縮成形によって成形した厚さ1mmのシート状成形体から切り出した、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の短冊状のものを、重量を測定してから使用する。
試験片を入れる容器として、長さ600mmの呼び径1/2インチSUS316L−EP管の両末端にブランクフランジを取り付けて密閉できるものを使用する。
放出有機物量の測定は、上記試験片〔重量WR(g)〕をSUS管に収めてブランクフランジで密閉し、SUS管ごと100℃の沸騰水浴に浸し、300分間で試験片からSUS管内の空気中に放出される有機物積算放出量WO(ng)を熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(以下、「TDS−GC−MS」と記す。)にて測定する。そして、WO/WRを有機物放出量(単位:ng/g)とする。SUS管の壁面1箇所に内部の空気をサンプリングできるバルブを取り付けておき、そこから内部空気の試料をサンプリングする。
【0012】
脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材より放出される有機物は、通常、▲1▼樹脂中の未反応モノマーやオリゴマーまたはそれらの分解物、▲2▼樹脂中の残留溶剤(例えば、アセトン、キシレン、シクロヘキサンなど)、▲3▼樹脂に配合された酸化防止剤、可塑剤、滑剤などの添加剤またはそれらの分解物などである。
【0013】
脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造を有する繰り返し単位を重合体中に20重量%以上含有する重合体であって樹脂であるものである。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、ノルボルネン系重合体、単環シクロアルケンの重合体、ビニルシクロアルカンの重合体などが挙げられる。また、脂環式構造としては、単環、多環(縮合多環、橋架け環、これらの組み合わせ多環など)が挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造の炭素数が上記範囲であると、機械的強度、耐熱性および成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。
脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は20〜100重量%、好ましくは30〜100重量%である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式構造を有する繰り返し単位以外の繰り返し単位は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0014】
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系単量体を付加(共)重合または開環(共)重合し、必要に応じてそれらの不飽和結合部分を水素化することによって得ることができる。
単環シクロアルケンの重合体は、単環シクロアルケン単量体または脂環式共役ジエン単量体を付加(共)重合し、必要に応じてそれらの不飽和結合部分を水素化することによって得ることができる。
ビニルシクロアルカンの重合体は、ビニルシクロアルカンの重合体;ビニルシクロアルケンの重合体またはビニルシクロアルカンもしくはビニルシクロアルケンと共重合可能な他の単量体との共重合体の不飽和結合部分の水素化物;芳香族ビニル系重合体または芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体の芳香環およびオレフィン性不飽和結合部分の水素化物である。
これらの中で、ノルボルネン系単量体の開環(共)重合体およびその水素化物が好ましい。
【0015】
なお、本発明において、ノルボルネン系単量体、単環シクロアルケン、脂環式共役ジエンおよびビニルシクロアルケンを「脂環式構造含有単量体」と称することがある。
【0016】
脂環式構造含有単量体としては、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ〔4.3.0.12,5 〕デカ−3−エン、トリシクロ〔4.4.0.12,5 〕ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ〔4.4.0.12,5 〕ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ〔4.4.0.12,5 〕ウンデカ−3−エン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13 .02,7 〕−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ〔8.4.0.111,14 .02,8〕−テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン)、テトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、
【0017】
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、などの単環シクロアルケン;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの脂環式共役ジエン;ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセンなどのビニルシクロアルケンや、ビニルシクロペンタン、2−メチル−4−ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタンなどのビニルシクロアルカンを含むビニル脂環式炭化水素などが挙げられる。
【0018】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記脂環式構造含有単量体及び芳香族ビニル化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0019】
脂環式構造含有重合体樹脂は、前記脂環式構造含有単量体または/および芳香族ビニル化合物と、脂環式構造含有単量体または芳香族ビニル化合物と共重合可能なその他の単量体とを共重合して得られるものであってもよい。
脂環式構造含有単量体または芳香族ビニル化合物と共重合可能なその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテンなどの鎖状オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
上記脂環式構造含有重合体樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、酸無水物基などの極性基を含有していてもよい。
【0021】
脂環式構造含有重合体樹脂の重合方法および必要に応じて行われる水素添加の方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0022】
上記ノルボルネン系単量体および単環シクロアルケンの開環重合は、開環重合触媒として、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用い、通常、溶媒中で温度−50℃〜100℃、圧力0〜5MPaで行う。
ノルボルネン系単量体および単環シクロアルケン、または、これらと上記共重合可能な単量体との付加共重合は、例えば、単量体成分を、チタン、ジルコニウム、またはバナジウム化合物と助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下で、通常、温度−50℃〜100℃、圧力0〜5MPaで行う。
【0023】
芳香族ビニル化合物、ビニルシクロアルケンまたはビニルシクロアルカンの重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の方法のいずれでもよいが、カチオン重合では重合体の分子量が小さくなり、ラジカル重合では分子量分布が広くなって成形体の機械的強度が低下する傾向があるので、アニオン重合が好ましい。また、懸濁重合、溶液重合、塊状重合のいずれでもよい。これらの重合体の中では芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物単位を50重量%以上含有するランダムおよびブロック共重合体の水素化物が好ましい。水素化スチレン単独重合体は、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチックのいずれでも良い。
【0024】
芳香族ビニル化合物、ビニルシクロアルケンまたはビニルシクロアルカンのアニオン重合は、具体的には有機溶媒中で、重合触媒としてn−ブチルリチウム、1,4−ジリチオブタンなどの有機アルカリ金属を使用する。機械的強度や耐熱性の確保などの目的で、分子量分布の狭い重合体を得るためにジブチルエーテル、トリエチルアミンなどのルイス塩基を添加する。
上記有機溶媒は炭化水素系溶媒が好ましく、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜40重量%、好ましくは10〜30重量%になる量である。
アニオン重合反応は、通常、−70〜150℃、好ましくは−50〜120℃で、通常、0.01〜20時間、好ましくは0.1〜10時間の反応である。
【0025】
脂環式共役ジエンの重合は、例えば特開平6−136057号公報や特開平7−258318号公報に記載された公知の方法によって行うことができる。
【0026】
上記脂環式構造含有重合体樹脂の重合転化率は、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合転化率を高くすることにより放出有機物量のより少ない成形体が得られる。また、本発明においては、脂環式構造含有重合体樹脂の重量平均分子量が、ヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで(GPC)で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)で、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるものを用いることにより、成形する際の熱分解等が抑制でき、より放出有機物量が少ない成形体を得ることができる。
【0027】
上記脂環式構造含有重合体樹脂は、重合反応後に環や主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより、得られる成形体の放出有機物量がより少なくなる。水素化による脂環式構造含有重合体樹脂中の全炭素−炭素結合数に対する炭素−炭素二重結合数の割合は、0.15重量%以下、好ましくは0.07重量%以下、より好ましくは0.02重量%以下である。二重結合の割合を少なくする程、放出有機物量の少ない成形体が得られる。
【0028】
水素化反応は、水素化する重合体の種類により、反応温度、水素分圧、反応時間及び反応溶液濃度を適宜に最適な範囲に設定する。水素化反応においては、水素化触媒を重合体100重量部あたり0.01〜50重量部用いて、反応温度25〜300℃、水素分圧0.5〜10MPaにて0.5〜20時間反応させる。
水素化触媒としては、例えば、ニッケル、コバルトなどの金属化合物と有機アルミニウムや有機リチウムと組み合わせてなる均一系触媒が好ましい。必要に応じて活性炭、ケイソウ土、マグネシアなどの担体を用いる。水素化触媒の使用量は、触媒成分が水素化対象重合体100重量部当たり、通常、0.03〜50重量部となる量である。
【0029】
脂環式構造含有重合体樹脂は、反応溶液を濾過して水素添加触媒を濾別した溶液から溶媒などの揮発成分を除去することにより回収される。前記揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法などが挙げられるが、直接乾燥法を用いることにより放出有機物量のより少ない成形体が得られる。
【0030】
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下で加熱して溶媒を除去する方法である。この方法は、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置などの公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択することができる。
脂環式構造含有重合体樹脂は凝固や直接乾燥した後、さらに減圧下で加熱して乾燥することにより、放出水分量及び放出有機物量のより少ない成形体が得られる。乾燥の際の圧力は、通常、10kPa以下、好ましくは3kPa以下で、加熱温度は、通常、260℃以上、好ましくは280℃以上である。このような条件で乾燥することにより有機物放出量のより少ない成形体が得られる。
【0031】
脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)により昇温速度10℃/分で測定する値が、50〜300℃、好ましくは60〜200℃、より好ましくは70〜160℃である。
また、JIS K 7210に基づくメルトインデックスは、温度230℃で、0.1〜30g/10min、好ましくは0.1〜10g/10min、より好ましくは0.1〜5g/10min、または、温度280℃で、2〜100g/10min、好ましくは3〜50g/10min、より好ましくは5〜30g/10minである。脂環式構造含有重合体樹脂のメルトインデックスが上記範囲であると成形を比較的低温で行うことができ、また、溶融流動性が良好なので成形時に局所的な温度上昇が起きにくいので、樹脂の分解や劣化に伴う低分子量成分の生成を防ぐことができるので、放出有機物量がより少ない窓材の成形に有効である。
【0032】
脂環式構造含有重合体樹脂には、ゴム質重合体を配合して使用することができる。かかるゴム質重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン系ゴム、共役ジエン系ゴム、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、アクリル酸アルキルエステル系重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
脂環式重合含有重合体樹脂にゴム質重合体を配合すると、成形体の機械強度が向上する。ゴム質重合体の配合量は、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部である。
【0033】
また、脂環式構造含有重合体樹脂に、その性能を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を少量配合することによっても、機械強度を向上させることができる。そのような他の熱可塑性樹脂としては、例えば、α−オレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。他の熱可塑性樹脂の添加量は、本発明効果を損なわない範囲で限定されない。
【0034】
脂環式構造含有重合体樹脂には、その他必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、帯電防止剤、安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、アンチブロッキング剤、蛍光増白剤、防臭剤、有機または無機充填剤、架橋剤、加硫剤などの各種の配合剤を適宜配合することができる。酸化防止剤は、脂環式構造含有重合体樹脂の透明性、低吸水性を低下させることなく成形時の酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できるので、配合剤として特に重要である。
【0035】
酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などがある。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、アクリレート系化合物、トリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられ、中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0036】
紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤及び耐候安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができ、その配合量は、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0037】
帯電防止剤としては、長鎖アルキルアルコール、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム塩、脂肪酸エステル、ヒドロキシアミン系化合物、アルキルホスフェートアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアミド;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、有機ホウ素系界面活性剤、カチオン界面活性剤、炭素系充填材(表面処理されたカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維など)、酸化スズ粉、アンチモン含有酸化スズ粉などを例示することができる。帯電防止剤の量は、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部の範囲である。
また、これらの帯電防止剤は、必要に応じて窓材を被覆するコート剤に配合することも可能である。
【0038】
脂環式構造含有重合体樹脂は、上記の配合成分と混合されて成形用樹脂組成物として調製される前に予備乾燥されることが好ましい。該予備乾燥の条件は、通常、脂環式構造含有重合体樹脂のTgより5℃〜80℃、好ましくは10℃〜50℃低い温度で、2時間以上10時間以内、好ましくは4時間以上8時間以内である。
このような条件で予備乾燥を行うと、窓材の成形時に樹脂焼けが少なく色調が無色透明で良好となり、放出有機物量もより少ないものとなる。
【0039】
成形用材料の調製方法としては、通常、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機、ロールなどの公知の混合機を用いてこれらの成分を160〜350℃で溶融混練する方法が採られる。溶融混練後は、通常は、ペレットに成形される。
【0040】
ペレットは、通常、上記成形用樹脂組成物を押出機で溶融混練した後に、直径1〜5mmのストランド状に押出し、このストランドを冷却後にペレタイザーで長さ2〜15mmにカットして作製される。
ペレットの保管は、ステンレス製の容器に入れて窒素シールしておくことが好ましい。
このような保管方法によれば、成形用樹脂組成物に環境から水分や有機物が混入することが防止でき、また、成形体には曇りや白化などがなく外観も良好となる。
【0041】
上記成形用樹脂組成物を使用して本発明の窓材を成形するには、脂環式構造含有重合体樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱して溶融状態にして板状に成形する。具体的には、押出成形法、射出成形法、プレス成形法などがある。これらの溶融成形を行った直後に、冷却条件としてTgより高くて(融点−20)℃以下の温度に10分〜数時間保持(アニール処理)すると、窓材が割れにくくなるので好ましい。特に、アニ−ルの冷却媒体を超純水にすると、汚染性物質の洗浄を兼ねることができるので好ましい。
押出成形法で板状成形体を押出した後に延伸成形法を行うことも可能である。
【0042】
また、本発明の窓材は、成形体が脂環式構造含有重合体樹脂層を最内層とする、他の熱可塑性樹脂層との2〜4層の多層板であってもよい。多層板は、共押出しするか、あるいは他の熱可塑性樹脂製板を貼り合わせて製造される。外層に使用することができる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0043】
成形時の加熱、加圧条件としては、成形機、樹脂の特性などにより適宜選択することができるが、温度は、好ましくは180〜330℃、より好ましくは200〜320℃で、特に好ましくは220〜300℃ある。圧力は、好ましくは0.5〜100MPa、より好ましくは1〜50MPaである。また、押出機におけるシリンダーのような溶融部での樹脂の滞留時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましく、10分以下が特に好ましい。このような条件で加熱溶融成形することにより、放出有機物量のより少ない窓材が得られる。
【0044】
押出機のダイのダイリップは、溶融樹脂との剥離強度が小さい材質のものを用いると、樹脂が固着して熱分解することを抑制でき、放出有機物量が少なくなるので好ましい。このような材質としては、例えば炭化タングステンが挙げられる。また、金型やダイリップの表面に窒化チタン、窒化クロム、炭化クロムなどをコートしたり、DLC(Diamond Like Carbon)膜、BLC(Bluish Like Carbon)膜、GLC(Graphite Like Carbon)膜、FLC(Fluorine Like Carbon)膜などを形成することにより放出有機物量のより少ない成形体が得られる。
【0045】
こうして成形される本発明の窓材の大きさは、限定されないが、通常、縦30〜3000mm、好ましくは50〜1000mm、横30〜5000mm、好ましくは50〜2000mm、厚さ0.1〜100mm、好ましくは1〜50mmの板材である。
本発明の窓材は、金属、水分及び有機物を放出せず、透明性に優れるので、例えば、以下に例示する部屋の窓に使用できる。
具体的には、シリコンウエハ、マスク原板、フォトマスク、磁気ディスク基板及び液晶ディスプレイ基板などの精密基板ストッカーの保管部屋;これらの精密基板切断装置のチャンバ;これらの精密基板の洗浄槽;これらの精密基板の加工等をするクリーンルームなどが挙げられる。
尚、上記のストッカー、切断チャンバ、洗浄槽及びクリーンルーム内で、取り扱われるものは、上記精密基板に限られず、ハードディスク用部品などの精密電子部品;レンズ、プリズムなどの精密光学部品;マイクロバイオチップ、UVプレート、蛍光・りん光プレート、DNAチップなどの生化学検査部品;シリンジ、カテーテル、透析装置などの医療器具;菌体培養液や化学分析試薬;半導体や液晶洗浄用の高純度薬液用容器;などでもよい。
また、上記部屋の他の例としては、無菌室が挙げられる。無菌室は、菌体培養、組織培養、遺伝子組換えなどを行なったり、食品や医薬品を取り扱ったり、農産物を取り扱ったりするためのものである。
【0046】
本発明の窓材の使用例を図面に示す実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の窓材の使用例の一実施形態に係る精密基板ストッカーを示す概略説明図である。精密基板ストッカー(1)は、通常、縦0.5〜10m、好ましくは1〜5m、横0.5〜30m、好ましくは1〜10m、高さ0.5〜5m、好ましくは1〜3mの部屋である。壁材および天井材は、水分、有機物。微粒子など汚染物質の発生量の少ないステンレス鋼、電着塗装ステンレス鋼などの金属板が使われることが多い。精密基板ストッカー(1)にはCDA配管(2)により、例えば、水分濃度が5ppb以下で、有機物濃度が1ppb以下である清浄な空気(CDA;Clean Dry Air)が導入され、排出配管(3)により排出される。これにより該ストッカー内が清浄に保たれる。
ウエハを収納した精密基板カセット(4)は、気密のボープ(BORP;Bottom Opening Removable Pod)(5)に入れて、ここをロードアンロードチャンバ(6)と共に真空にしてからロードアンロードチャンバ(6)に移される。ロードアンロードチャンバ(6)の精密基板ストッカー(1)側の仕切り戸(図示せず)を開けて気層を精密基板ストッカー(1)と連通後、カセット(4)は搬送ロボット(図示せず)により、配列台(7)の上に配置されて保管される。
本発明の脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材を用いた窓(8)により、精密基板ストッカー(1)内の精密基板の保管状況を外から把握することができる。窓材は水分および有機物をほとんど放出しないので、精密基板ストッカー(1)内を清浄に保つことがき、精密基盤を汚染する心配がない。
【0047】
図2は、本発明の窓材の使用例の他の実施形態に係る、エキシマレーザーを用いたウエハ切断装置を示す概略説明図である。ウエハ切断装置(10)は、レーザー発振部(11)からレーザービームを発振させ、それをコリメータ(12)で並行化し、ミラー(13)で方向変換させて集光レンズ(14)により、XYテーブル(15)およびウエハテーブル(16)の上に載置したシリコンウエハ(17)上でフォーカスしてレーザースポット(18)を形成させてシリコンウエハ(17)を切断する装置である。レーザー発振部(11)は冷却部(19)により冷却され、切断作業の操作は電源部(20)で行われる。レーザースポット(18)は、ステンレス鋼製(窓を除く)の真空室(21)内に形成される。XYテーブル(15)、電源部(20)および真空ポンプ(22)は制御部(23)で制御される。
真空室(21)の中に集光レンズで絞られたレーザー光を通し入れる窓(24)には、本発明の脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材が使用される。紫外線領域の短波長でも透過率が高いので、発熱や屈折率低下を起こさずに長時間の切断操作が可能である。窓材から水分や有機物がほとんど放出されないのでシリコンウエハ(17)が汚染されるおそれがない。
【0048】
図3は、本発明の窓材の使用例のさらに他の実施形態に係るウエハ洗浄器の概略説明図である。ウエハ洗浄器(40)は、半導体ウエハ(41)を保持したウエハ保持具(42)を収めたステンレス鋼製(窓を除く)の洗浄槽(43)の内部に洗浄液1を注ぎ入れる洗浄液1供給ノズル(441a)および(441b)、リンス液1を注ぎ入れるリンス液1供給ノズル(451a)および(451b)、ならびに、洗浄処理中に反応生成物を生じさせないための不活性ガスを噴射する窒素ガス導入装置(46)を設置し、洗浄槽(43)の周囲に冷却管(47)および加熱ランプ(48)を配置した装置である。洗浄液およびリンス液の種類は必要に応じて増し、供給ノズルを増設することができる。
ウエハ洗浄液は、金属濃度が1ppb以下であり、その液体に不溶性の有機物濃度が10ppb以下である水または有機液体である。ただし、洗浄液はシクロヘキサン,トルエン,キシレン,デカリン,テトラリン,リモネン,四塩化炭素,ジクロロベンゼンなどの脂環式構造含有重合体を溶解または膨潤するものではない。
洗浄槽(43)は透明性に優れた本発明の脂環式構造含有重合体樹脂製窓材で形成されているので、半導体ウエハ(41)に洗浄液次いでリンス液を噴射した後に、加熱ランプ(48)を点灯することにより照射光線が有効に半導体ウエハ(41)に届いてこれを加熱することができる。加熱ランプ(48)の点灯と同時に冷却管(47)を作動させて槽内面を室温近辺に低く保つことにより、半導体ウエハ(41)から槽内面に向かう分子流が形成され(熱泳動現象)るので、痕跡の他成分(例えば別の洗浄液)の分子が半導体ウエハに向かうことを防止できる。また、脂環式構造含有重合体樹脂からなる洗浄槽(43)は水分や有機物をほとんど放出しないので、半導体ウエハ(41)を汚染するおそれがない。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中、「部」および「%」は、特記しない限り重量基準である。
<試験及び評価方法>
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中、「部」および「%」は、特記しない限り重量基準である。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
【0050】
(2)ガラス転移温度(Tg)
重合体のTgは、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度10℃/minで測定した。単位℃。
(3)メルトインデックス
ペレットのメルトインデックスをJIS K 7210に従い、温度230℃または280℃にて測定した。単位はg/10分である。
【0051】
(4)放出水分量
樹脂ペレットを、ペレット製造直後からステンレス製の容器内で窒素シールして一週間保管した後、温風循環型乾燥機を用いて110℃で4時間予備乾燥した。このペレットを用いてTダイ式フィルム溶融押出し成形機を用いて、シリンダー滞留時間3分で、幅500mmのTダイより、厚さ1mm、幅500mm、長さ1,000mmのシートを押出成形し、このシートから幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の短冊状の試験片を切り出した。
長さ200mmの呼び径1/2インチSUS316L−EP管の両末端にフランジを介して長さ4,000mmの呼び径1/4インチSUS316L−EP管をそれぞれ連結した配管に、予め、400℃に加熱した高純度アルゴンガス気流を2時間通して内側の表面に吸着していた水分や有機物を除去した。
一方のフランジのボルトを外し、前記試験片を1/2インチ管の中に収めてフランジをボルトで結合した後、不純物濃度が1ppb以下で、温度25℃の超高純度アルゴンガスを1.2L/minで流して試験片を該高純度アルゴンガスと接触させ続け、流通開始から300分後の出口側のアルゴンガス中の水分量をAPI−MS〔UG−400P、日立エレクトロニクス(株)製〕で、ドリフト電圧23.1V、スキャン速度256msec/massの条件にて測定し、この値を試験片から放出される水分量とした。単位はppb(水分)/cm2 (試験片表面積)である。
【0052】
(5)放出有機物量
両末端に付けたブランクフランジを外した長さ600mmの呼び径1/2インチSUS316L−EP管に対して上記(4)と同様にして表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去した後、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2短冊状の重量既知の試験片を入れ、両末端にブランクフランジをして配管ごと温度100℃の沸騰水に浸し、300分後、市販の活性炭チューブをSUS管壁に取り付けられたバルブに連結して内部の気体を連続的に捕集し、TDS−GC−MSで分析して有機物の積算放出量を測定した。単位はng(有機物)/g(試験片重量)である。
(6)全光線透過率
ASTM D1003に基づいて窓材の全光線透過率を測定した。
【0053】
(7)クリーンドライエアー(CDA)ルームの放出物試験
SUS316L−ED板製の縦1,000mm、横1,000mm、高さ1,000mmである小部屋の2つの向かい合った側壁の垂直位置が上から1/4で、水平位置が中央の位置に先端の中心がくるようにSUS316L−ED(電解研磨)製の呼び径13mmのCDA導入配管および排出配管をそれぞれ接合し、これらの配管が接合していない一方の側壁の上半部に脂環式構造含有重合体樹脂で作製した縦300mm、横500mm、厚さ5mmの窓材からなる窓を有するCDAルームに、CDA発生装置(CDASS−100、高砂熱学工業社製)により発生させた温度23℃、金属含有量4ng/m3 、水分含有量3μg/m3 、有機物含有量5μg/m3 のCDAを2m3 /hrで導入して初期変動要因除去期間を3日間取ってから排出配管の空気中の水分含有量および有機物含有量をそれぞれAPI−MSおよびTDS−GC−MSで測定した。
続いてCDAルームに直径5インチ、厚さ0.2mmのシリコンウエハを置いて窓の外からその存在をクリアに確認してから上記CDAを3日間通気させ、次に記すように、シリコンウエハにつき曇り度(ヘイズ)を見ると同時に、MOSキャパッシタを作製して絶縁破壊特性を調べた。
【0054】
(8)シリコンウエハの曇り度(ヘイズ)
上記(7)CDAルームの放出物試験でCDAを3日間受けたシリコンウエハ表面における曇りの度合いを目視にて評価した。評価を次の基準で表記した。
○ :曇りが一切ない。
×:表面に曇りが観察される。
【0055】
(9)MOSキャパシタの絶縁破壊特性
上記(7)CDAルームの放出物試験でCDAに3日間曝されたシリコンウエハを用いてMOSキャパシタを作製し、その絶縁破壊特性を測定し、破壊確率50%の注入電荷量(後述)を求めた。注入電荷量(単位C/cm2 )が大きいほどMOSキャパシタの絶縁破壊特性に優れる。
〔MOSキャパシタ作製条件〕
下記に記す工程を順次行ってMOSキャパシタを作製した。
▲1▼シリコンウエハ基板準備:
6インチn型シリコンウエハを繰り抜いて直径33mmのシリコンウエハ基板を作製した。
▲2▼フィールド酸化工程:
このシリコンウエハ基板を洗浄後、アルゴン雰囲気下でフィールド酸化した。
フィールド酸化条件:1000℃×1h/パイロジェニック式ウエット酸化(H2 :O2 =1:1)
フィールド酸化後、該ウエハ基板をアルゴン中で1,000℃にて1時間アニール処理を行った。
▲3▼ボロンドープ(BSGデポジション)工程:
フィールド酸化及びアニール処理後のウエハ基板を、常圧でCVD法により以下の条件でボロンドープ(シリコン中へのホウ素の添加)を行った。
ボロンドープ条件:SiH4 (シラン)、O2 (酸素)、B2 H4 (ジボラン)の混合気体中、400℃、17.5分間処理した。
ボロンドープ後、該ウエハ基板を窒素中で1000℃にて30分間アニール処理を行った。
▲4▼ゲート酸化膜形成工程:
ボロンドープおよびアニール処理後のウエハ基板を、酸素中で900℃にて5分間処理して、ゲート酸化膜を形成させた。
【0056】
▲5▼容器保管試験:
ゲート酸化膜形成後のウエハ基板を前述の容器中に入れ、保管した。
保管条件:25℃で減圧状態(圧力100torr)にて48時間保管した。
▲6▼多結晶シリコン膜形成(ポリシリコンデポジション)工程:
容器中に保管したウエハ基板を用い、以下の条件でポリシリコンデポジションを行った。
ポリシリコンデポジション条件:SiH4 (シラン)、PH3 (ホスフィン)混合気体中、600℃、20分間処理した。
ポリシリコンデポジション後、該ウエハ基板を窒素中で850℃にて30分間アニール処理を行った。
▲7▼電極層(アルミ)蒸着工程:
ポリシリコンデポジションおよびアニール処理後のウエハ基板にアルミ蒸着処理を行った。
▲8▼欠陥部分水素化(水素シンタリング)工程:
アルミ蒸着処理したウエハ基板を、400℃で30分水素シンタリングした。
尚、上記工程は▲5▼を除き公知のMOSキャパシタ製造方法である。上記工程の間に洗浄、リソグラフィー及びエッチングが含まれる。
【0057】
〔絶縁破壊特性測定法〕
上記手法で作製したMOSキャパシタを、デシケータ内に25℃、100torrで48時間保管した。次いで該MOSキャパシタに一定電流ストレスを下記条件で加えた(電流ストレスを加える時間を段階的に変化させた)、電流ストレスを加えた時間から注入した電荷量を求め、その注入電荷量に対する破壊確率をプロットして検量線を作成し、破壊確率50%となる注入電荷量を求めた。
条件
ゲート面積:1×10−4cm2 (0.1mm×0.1mm)
ストレス条件:ゲート電極から基板側へ0.1A/cm2 で電子を注入
サンプルの酸化膜厚:5.0nm
測定系
測定器:Vector Semiconductor社製、MX−1100A
計測部:LCRメーター、HP4284A(20Hz−1MHz)
電源部:スイッチングコントローラー、HP4156A
コンピューター:HP382
【0058】
(10)超純水での放出物試験
脂環式構造含有重合体樹脂で作製した縦300mm、横300mm、厚さ5mmの窓材5枚からなる、上方に開口する立方体状の容器を、超純水製造装置により製造された金属含有量0.01ppb、有機物含有量10ppb未満、温度80℃の超純水で洗浄後、金属含有量0.01ppb、有機物含有量10ppb未満、温度23℃の超純水10,000mLを入れ、3日間置いた後、金属含有量および有機物含有量をそれぞれ全有機炭素測定装置(TOC−5000、島津製作所製)及びICP質量分析装置(Agilent7500a、横河アナリティカルシステムズ社製)で測定した。
【0059】
[脂環式構造含有重合体樹脂製造例1(脂環式構造含有重合体樹脂Aの製造)]
室温、窒素雰囲気の反応器に、脱水したシクロヘキサン250部を入れ、さらに1−ヘキセン0.84部、ジブチルエ−テル0.06部及びトリイソブチルアルミニウム0.11部を入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5 ]−デカ−3−エン(以下DCPと略す)38部、テトラシクロ[4.4.12,5 .17,10.0]−ドデカ−3−エン(以下TCDと略す。)35部およびテトラシクロ[7.4.110,13 .01,9.02,7 ]−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(以下MTFと略す)27部及び六塩化タングステンの0.7%トルエン溶液15部を2時間かけて連続的に添加して重合した。重合転化率は100%であった。
得られた重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製;G−96D、ニッケル担持率58重量%)5部およびシクロヘキサン100部を加え、150℃、水素圧4.4MPaで8時間反応させた。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(フンダフィルター、石川島播磨重工社製)を行い、水素化触媒を除去して無色透明な溶液を得た。
上記溶液に、酸化防止剤ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010、チバガイギー社製)を、水素化した重合体100部に対し0.05部となる量を添加した。その後、該溶液を金属ファイバー製フィルター(孔径3μm、ニチダイ社製)、ゼータープラスフィルター30H(孔径0.5〜1μm、キュノ社製)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。
次いで、上記溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及び有機物ガス発生の原因となる低分子量成分を、円筒形濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて除去して、DCP−TCD−MTF開環重合体水素化物(脂環式構造含有重合体樹脂A)を回収した。溶媒及び低分子量成分の除去は、2段階に分けて行った。濃縮の条件は、第1ステップ:温度260℃、圧力13.4kPa(100Torr)、第2ステップ:温度270℃、圧力0.7kPa(5Torr)とした。溶媒及び低分子量成分の除去された開環重合体水素化物を、クラス1000のクリーンルーム内で、濃縮機に直結したダイから溶融状態で押し出し、水冷した後、ペレタイザー(OSP−2、長田製作所製)で切断し、ペレット状で回収した。得られた脂環式構造含有重合体樹脂AのMwは31,000、全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合は0.02%で、重合体中のノルボルナン環構造を有さない繰り返し単位の含有率は89%で、ガラス転移温度は101℃であった。メルトインデックスは、230℃で4.2g/10min、280℃で17.8g/10minであった。
【0060】
[脂環式構造含有重合体樹脂製造例2(脂環式構造含有重合体樹脂Bの製造)]
脂環式構造含有重合体樹脂製造例1において、DCP38部、TCD35部およびMTF27部の代りにDCP85部および8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−ドデカ−3−エン(以下ETDと略す。)15部を用い、溶媒と低分子量成分の除去(濃縮)の第1ステップの温度を280℃、第2ステップの温度を280℃とした以外は脂環式構造含有重合体樹脂製造例1と同様に行い、DCP−ETD開環重合体水素添加物(脂環式構造含有重合体樹脂B)のペレットを得た。得られた脂環式構造含有重合体樹脂BのMwは34,000、全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合は0.02%で、重合体中のノルボルナン環構造を有さない繰り返し単位の含有率は67%で、ガラス転移温度は140℃であった。メルトインデックスは、230℃で12.1g/10min、280℃で42.5g/10minであった。
【0061】
[脂環式構造含有重合体樹脂製造例3(脂環式構造含有重合体樹脂Cの製造)]
十分に乾燥し窒素置換した、撹拌装置を備えたステンレス鋼製重合器に、脱水シクロヘキサン320部、スチレン37.5部およびジブチルエーテル0.38部を仕込み、60℃で撹拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.36部を添加して重合反応を開始した。重合反応を1時間行った後、反応溶液にスチレン8部とイソプレン12部とからなる混合モノマー20部を添加してさらに1時間重合し、スチレン37.5部をさらに添加して1時間反応した後、イソプロピルアルコール0.2部を添加して反応を停止させた。
こうして、スチレン由来の繰り返し単位を含有するブロック(以下、「St」と略記す。)、およびスチレンとイソプレン由来の繰り返し単位を含有するブロック(以下、「St/Ip」と略記す。)を有するSt−(St/Ip)−Stの三元ブロック共重合体の溶液を得た。
次いで、上記重合反応溶液400部を、撹拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、シリカ−アルミナ坦持型ニッケル触媒(E22U、日揮化学工業社製)10部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を撹拌しながら水素を供給し、温度を160℃に維持しつつ、圧力4.5MPaで8時間反応することにより、芳香族環も含めて水素化を行った。
水素化触媒の除去工程以降は脂環式構造含有重合体樹脂製造例1と同様にして、St−(St/Ip)−Stブロック共重合体水素添加物(脂環式構造含有重合体樹脂C)のペレットを得た。
得られた脂環式構造含有重合体樹脂CのMwは84,900、Mw/Mnは1.20、全炭素−炭素結合に対する二重結合数の割合は0.14%、ガラス転移温度は127℃、メルトインデックスは230℃で7.2g/10min、280℃で11.3g/10minであった。
【0062】
〔実施例1〕
脂環式構造含有重合体樹脂Aのペレットをペレット製造直後から、ステンレス製の容器内で窒素シールして5日間保管した後、温風循環型乾燥機を用いて110℃で4時間予備乾燥した。このペレットを用いて東芝機械(株)製の115mmφ単軸押出機にて樹脂温度280℃、シリンダー滞留時間3分で押出成形して、厚さ5mm、幅300mm、長さ500mmの透明板を得た。
この透明板を用いて測定した放出水分量、放出有機物量、全光線透過率、CDAルーム放出物試験、シリコンウエハ曇り度、キャパシタの50%破壊注入電荷量及び超純水放出物試験の評価結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例2〕
実施例1において、ペレットをポリエチレン袋内で窒素シールせずに保管してから使用した他は実施例1と同様に行った。放出水分量、放出有機物量、全光線透過率、CDAルーム放出物試験、シリコンウエハ曇り度、キャパシタの50%破壊注入電荷量及び超純水放出物試験の評価結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例3〕
実施例1において、樹脂として脂環式構造含有重合体樹脂Bを用い、予備乾燥温度を90℃とし、押出成形での溶融樹脂温度を300℃とした他は実施例1と同様に行った。放出水分量、放出有機物量、全光線透過率、CDAルーム放出物試験、シリコンウエハ曇り度、キャパシタの50%破壊注入電荷量及び超純水放出物試験の評価結果を表1に示す。
【0065】
〔実施例4〕
実施例1において、樹脂として脂環式構造含有重合体樹脂Cを用いた他は実施例1と同様に行った。実施例1同様に行った放出水分量、放出有機物量、全光線透過率、CDAルーム放出物試験、シリコンウエハ曇り度、キャパシタの50%破壊注入電荷量及び超純水放出物試験の評価結果を表1に示す。
【0066】
〔比較例1〕
ポリカーボネート樹脂(PC)を用いて単軸押出機で、厚さ5mm、幅300mm、長さ500mmの板を成形し、温度80℃の超純水で洗浄後、老化防止剤無添加のポリエチレンフィルム袋に入れてクラス100のクリーンルーム(温度23℃、相対湿度50%)に保存し、24時間以内に、実施例1と同様に行った放出水分量、放出有機物量、全光線透過率、CDAルーム放出物試験、シリコンウエハ曇り度、キャパシタの50%破壊注入電荷量及び超純水放出物試験の結果を表1に記す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1が示すように、脂環式構造含有重合体樹脂成形体は水分および有機物をほとんど放出せず、また、透明性に優れるので、脂環式構造含有重合体樹脂板製の窓材で作製した窓を備えたCDAルーム中の空気の水分含有量および有機物含有量は極めて僅少であった。シリコンウエハは窓外からその存在がクリアに確認された。また、シリコンウエハは3日間経ても曇り度は小さく、これを用いて作製したキャパシタは絶縁破壊特性が極めて良好であった。さらに、脂環式構造含有重合体樹脂製の板は超純水に3日間接し続けても金属および有機物をほとんど放出しなかった(実施例1〜4)。
これに対し、成形体から水分および有機物を多く放出するPC製板を用いた窓を供えたCDAルームに置かれたシリコンウエハの曇り度は高く、これを使ったキャパッシタの50%破壊電荷注入量は少なかった。また、PC製板は超純水に接して金属および有機物を多く放出した。(比較例1)。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体ウエハなどを保管する精密基板ストッカーやウエハ切断装置の真空チャンバなどの清浄な部屋や、ウエハ洗浄器などの清浄な液体を取り扱う部屋に設置する窓に好適な、水分、有機物、金属などをほとんど放出しない清浄な窓材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の窓材使用の一実施形態に係る精密基板ストッカーを示す概略説明図である。
【図2】図2は本発明の窓材使用の他の実施形態に係る、エキシマレーザーを用いたウエハ切断装置を示す概略説明図である。
【図3】図3は本発明の窓材使用のさらに他の実施形態に係るウエハ洗浄器を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1… 精密基板ストッカー
2… CDA配管
3… 排出配管
4… 精密基板カセット
8… 窓
10… ウエハ切断装置
11… レーザー発振部
14… 集光レンズ
17… シリコンウエハ
18… レーザースポット
19… 冷却部
20… 電源部
21… 真空室
22… 真空ポンプ
23… 制御部
24… 窓
40… ウエハ洗浄器
41… 半導体ウエハ
42… ウエハ保持具
43… 洗浄槽
441a、441b… 洗浄液1供給ノズル
451a、451b… リンス液1供給ノズル
46… 窒素導入装置
47… 冷却管
48… 加熱ランプ
Claims (8)
- その内部の金属濃度が100ng/m3 以下、水分濃度が500μg/m3 以下及び有機物濃度が100μg/m3 以下である部屋に設置される窓の、脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材。
- 金属濃度が1ppb以下で、その液体に不溶性の有機物の濃度が10ppb以下である液体を取り扱う部屋に設置される窓の、脂環式構造含有重合体樹脂からなる窓材。
- 前記脂環式構造含有重合体樹脂が、下記[1]〜[3]の特性を満足する請求項1記載の窓材。
[1]呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、25℃において超高純度アルゴンガス(不純物濃度:1ppb以下)を流速1.2L/minで流通したときに、流通開始から300分後の前記アルゴンガス中の水分量をWH(ppb)、成形体の表面積をS(cm2)とするとき、WH/Sが30(ppb/cm2)以下である。
[2]長さ600mm、呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、密閉して100℃の状態で300分放置した後の前記SUS−EP管内の空気中の有機物の増加量をWO(ng)、成形体の重量をWR(g)とするとき、WO/WRが150(ng/g)以下である。
[3]ASTM D1003に基づく全光線透過率が30%以上である。 - 前記脂環式構造含有重合体樹脂が、下記[1]〜[3]の特性を満足する請求項2記載の窓材。
[1]呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積32cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、25℃において超高純度アルゴンガス(不純物濃度:1ppb以下)を流速1.2L/minで流通したときに、流通開始から300分後の前記アルゴンガス中の水分量をWH(ppb)、成形体の表面積をS(cm2 )とするとき、WH/Sが30(ppb/cm2 )以下である。
[2]長さ600mm、呼び径1/2インチのSUS−EP管内に、幅8mm、厚さ1mm、表面積100cm2 の脂環式構造含有重合体樹脂成形体を置き、密閉して100℃の状態で300分放置した後の前記SUS−EP管内の空気中の有機物の増加量をWO(ng)、成形体の重量をWR(g)とするとき、WO/WRが150(ng/g)以下である。
[3]ASTM D1003に基づく全光線透過率が30%以上である。 - 前記部屋が精密基板ストッカーである請求項1または3記載の窓材。
- 前記部屋がエキシマレーザーを用いたウエハ切断装置の真空チャンバである請求項1または3記載の窓材。
- 前記部屋がウエハ洗浄器の洗浄槽である請求項2または4記載の窓材。
- 前記脂環式構造含有体の、JIS K7210に基づいて測定したメルトインデックスが、230℃において0.1〜30g/10min又は280℃において2〜100g/10minである請求項1〜7のいずれかに記載の窓材。
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- 2002-08-28 JP JP2002247961A patent/JP2004087864A/ja active Pending
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