JP2004087152A - ナトリウム硫黄電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適な、万一電池が破損しても二酸化硫黄ガス、硫黄ガスまたは硫化ガスがシステムの外部へ漏洩する問題の起こらない、安全性の高いナトリウム硫黄電池システムを提供する。
【解決手段】ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池10を保温容器内13に収納し、前記保温容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12を設けたことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
【選択図】 図2
【解決手段】ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池10を保温容器内13に収納し、前記保温容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12を設けたことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
負極室内に負極活物質のナトリウムを、正極室内に正極活物質の硫黄や多硫化ナトリウムを充填し、負極室/正極室間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質袋管や固体電解質平板で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、夜間電力を貯えて昼間利用する負荷平準化に適した電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車への利用が期待されている。この電池の利用拡大には、昼夜の電気料金差額の利点を生かして、民需用の電力貯蔵装置や電気自動車への適用促進を図ることが重要であり、このためには電池の安全性を確保すること、特に電池破損時に発生する二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスがナトリウム硫黄電池システムの外部へ漏洩する問題への対策が必要である。
【0003】
ここで、二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスには毒性があり、ナトリウム硫黄電池システムから漏れて外へ流出すると、人体に対する障害などの問題が発生する可能性がある。また、硫黄ガスには毒性は無いが、硫黄ガスがナトリウム硫黄電池システムの外部へ漏洩した際に、硫黄ガス温度が高い場合には、外部で空気中の酸素や水分と反応して二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが発生する可能性もあり、硫黄ガスの外部への漏洩も防止することが望ましい。
【0004】
ナトリウム硫黄電池の安全性に関しては、外部短絡や固体電解質破損に対する正極容器や負極容器の安定性確保のために、電池構造に対して種々の対策がなされているが、万一正極容器や負極容器が破損した場合に備えての対策も重要である。この問題に対して、例えば特開平3−283272号公報などに見られるように、ナトリウム容器を収納して約300℃に保温した真空断熱容器などの保温容器内へ乾燥砂を充填して、電池から放出された活物質の移動を阻止する方法が提案されている。この方法は隣接電池の連鎖破損を抑制するには有効であるが、破損した電池から放出された正極活物質である硫黄や多硫化ナトリウムが保温容器内で空気中の酸素や水分と反応して生成した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガス、又は、硫黄が蒸発して発生した硫黄ガスが保温容器の外部へ漏洩する問題に対する対策とは成らない。
【0005】
また、特開平6−68905号公報には、保温容器内に炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの1A族金属,2A族金属の炭酸塩や炭酸鉄を添加してナトリウムと硫黄との反応を制御する方法が提案されているが、一般に1A族金属,2A族金属の炭酸塩や炭酸鉄と二酸化硫黄ガスとの反応速度は約400℃以下では小さいため、ナトリウム硫黄電池の運転温度である約300〜350℃程度の温度では、発生した二酸化硫黄ガスの外部への漏洩を防止することは困難である。
【0006】
一方、特開平6−283217号公報,特開平7−254438号公報及び特開平8−250152号公報では、保温容器の内部を気密又は準気密に密閉して、内部に断熱性ガスとしてアルゴンガスなどの不活性ガスを充填したり、酸素除去手段を設ける方法が提案されている。しかしながら、ナトリウム硫黄電池の場合には、電池運転温度である約300℃と室温との間を昇降温する際に保温容器内部のガスが熱膨張,熱収縮して、密閉された保温容器に応力が掛かるため、保温容器を機械的強度が十分保たれる高強度構造にする必要があり、後者では酸素除去手段を設ける必要があるなど、保温容器の構造が複雑になるという問題がある。
【0007】
なお、保温容器内を真空引きした場合にも同様で、約300℃に加熱した状態で外部の大気圧による応力に対して保温容器を安定に保つためには、保温容器の構造が複雑になるという問題がある。また、保温容器として密閉構造を用いる場合には、保温容器へのナトリウム硫黄電池の出し入れに手間が掛かるという問題もある。
【0008】
さらに、特開平6−104007号公報においては、保温容器に接続した排気管にガス浄化装置を取り付けて、電池破損時に発生した二酸化硫黄ガスをガス浄化装置で浄化処理する方法が提案されている。しかしながら、この場合には保温容器に排気装置やガス浄化装置を取り付ける必要があるために、システム構造が複雑になると共に、システムの体積が増えて、ナトリウム硫黄電池システムの設置可能場所が制限されるという問題がある。
【0009】
以上のように、従来の方法では、電池が破損した場合に発生する二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスの漏洩対策と保温容器構造やシステム構造の簡素化との両立は困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を除き、簡単な保温容器構造又はシステム構造によって、万一電池が破損しても二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は硫黄ガスがシステムの外部へ漏洩する問題が起こらない、安全性の高いナトリウム硫黄電池システムを提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池の外部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の第三のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の一個又は複数個をキュービクルなどの耐火構造容器内に設置して、前記耐火構造容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0014】
ここで、前記吸着剤がゼオライト,シリカゲル、又は、活性炭から成る吸着剤であることが望ましい。さらに、前記吸着剤が無機物の多孔質材あるいは有機物の多孔質材によって保持されていることが望ましく、前記多孔質材が前記ナトリウム硫黄電池を保温するための断熱材であることが特に望ましい。
【0015】
上記第一,第二,第三のナトリウム硫黄電池システムにより、簡単な保温容器構造又はシステム構造によって、万一電池が破損しても二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスがシステムの外部へ漏洩する問題が起こりにくく、安全性の高いナトリウム硫黄電池システムが提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の第一のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示している。図において、ナトリウム硫黄電池10は固体電解質1,負極容器2,正極容器3,固体電解質と負極容器とで構成された負極室20内に収納されたナトリウム4、及び、固体電解質と正極容器とで構成された正極室30内に収納された硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質5から構成されている。ここで、固体電解質1としては、普通β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成るナトリウムイオン導電体の袋管や平板から構成され、固体電解質1は負極室/正極室間を分離している。また、負極室20内にはナトリウム容器21が設けられており、ナトリウム容器内に収納されたナトリウムは、重力やガス圧によって下部に設けた貫通孔6を通って固体電解質1の表面へ供給される。なお、この図では負極容器2とナトリウム容器21とが接続されているが、両者を分離することも可能である。
【0018】
一方、正極室30内には、炭素繊維や炭素粒子の集合体から成る多孔質導電材7とセラミックスやガラスの繊維や粒子の集合体から成る多孔質材8が設けられ、正極活物質5は多孔質導電材7や多孔質材8に含浸されて、電池反応が進行する。さらに、固体電解質1の端部には絶縁板9が接合され、且つ、この絶縁板と負極容器2,正極容器3とが接合されて、電池が密閉構造になると共に、負極容器と正極容器とが電気的に絶縁されている。ここで、絶縁板9としてはαアルミナやマグネシウムアルミニウムスピネルなどのセラミックスが用いられ、図示されていないが、固体電解質1の端部とガラス接合、あるいは、一体焼結されている。また、負極容器2や正極容器3はAl合金やFe合金,SUS又はこれらの表面にCrやMo,Co,Si,Cなどを主体とする耐食層を設けた金属材やAl合金とSUS等とのクラッド材から構成され、図示されていないが、AlやAl合金を絶縁板9との接合材として用いて、接合材の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して、加圧接合する熱圧接法によって一般に絶縁板9と接合されている。
【0019】
さらに、図1の構造においては、ナトリウム硫黄電池10の周囲に収納容器11が設けられ、収納容器11とナトリウム硫黄電池10の間に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤12が充填されている。
【0020】
ここで、収納容器11としては、Al合金やFe合金,SUSなどから成る金属容器を用いても良いし、ガラスやセラミックスなどの非金属容器を用いても良い。なお、図示されていないが、収納容器11として金属容器を用いる場合には、正極容器3又は負極容器2と部分的に接合して、収納容器11を電極として利用することも可能である。
【0021】
このように、ナトリウム硫黄電池の外部に吸着剤12を設けて、正極容器3の周囲を吸着剤12と収納容器11とで取り囲むことにより、万一電池が破損して正極容器3の外へ正極活物質5である硫黄や多硫化ナトリウムが漏れ、空気中の酸素や水分と反応して二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが発生したとしても、このガスが吸着剤12で吸着され、外部への二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの漏洩を防止することができる。また、この吸着材12で硫黄ガスを吸着することにより、硫黄ガスが外部へ漏れて、外部で空気中の酸素や水分と反応して、二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスを発生することを防ぐこともできる。
【0022】
ここで、電池破損の可能性は電池運転温度などの高温で高く、電池冷却時の室温での破損の可能性は低い。また、二酸化硫黄ガスは、電池運転時や電池から漏れた硫黄とナトリウムとの反応時の高温において、空気中の酸素と硫黄とが反応して生成する可能性が高い。一方、硫化水素ガスは空気中の水分と硫黄との反応で発生するのが一般的なため、空気中の水分量が比較的多くなる電池の冷却時には発生し易いが、電池の運転温度である約300℃やそれ以上の温度では空気中の水分量が少ないために、硫化水素ガスが発生する可能性は小さい。さらに、外部に漏れた硫黄ガスが空気中の酸素や水分と反応するためには、硫黄ガスの温度が外部でも高く保たれる必要があり、この反応の可能性も比較的小さい。したがって、ナトリウム硫黄電池システムの安全性向上のためには、電池破損時に発生する可能性の高い二酸化硫黄ガスを吸着して、外部への漏洩を防止することが特に重要である。なお、硫化水素ガスや硫黄ガスの外部への漏洩を防止することも、安全性の向上に有効なことは当然である。
【0023】
この目的のためには、収納容器11の少なくとも開口部に吸着剤12を設けて、収納容器11から外部への二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスの漏洩を防止することが望ましい。また、図示されていないが、収納容器11を設ける代りに吸着剤12を多孔質材で保持して、ナトリウム硫黄電池10の周囲を取り囲むことによっても、これらのガスの漏洩防止が可能である。
【0024】
ここで、吸着剤12は収納容器11内に充填しても良いし、図示されていないが、収納容器11内に無機物などの多孔質材を充填して、吸着剤12をこの多孔質材と混合するなどの方法によって、吸着剤12を多孔質材によって保持しても良い。特に、吸着剤12として多孔質材で保持したものを収納容器11内に充填した場合には、吸着剤12をそのまま充填した場合に比べて、正極容器3,収納容器11と吸着剤12との熱膨張差に基づく応力が多孔質材の低剛性によって緩和されて、電池の機械的信頼性が向上するという利点がある。
【0025】
なお、この多孔質材としてポリマー繊維などの有機物を用いることも考えられるが、ナトリウム硫黄電池の場合には電池動作温度が比較的高いため、ナトリウム硫黄電池に隣接して吸着剤12を設けたり、後述のようにナトリウム硫黄電池を収納した保温容器内に吸着剤12を設置する場合には、ガラス繊維やセラミック繊維などの無機物の多孔質材を用いることが望ましい。
【0026】
図2は本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示しており、図1と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図はナトリウム硫黄電池10を真空断熱容器から成る保温容器13内に収納したモジュール40の構造を示している。ここで、ナトリウム硫黄電池10はブスバ14によって電池間が電気接続されると共に、外部回路との間が電気接続されている。一方、ナトリウム硫黄電池10の下部と保温容器13との間にはマイカ板のような絶縁材15が設けられ、両者の間が電気的に分離されている。また、保温容器内には二酸化珪素や酸化アルミニウムなどから成る乾燥砂16が充填され、万一電池が破損して、電池から活物質が漏れた際に活物質の移動を制御して、隣接電池の破損を防止している。なお、図示されていないが、保温容器13の内側には電池温度を高めるためのヒータが設けられている。さらに、ナトリウム硫黄電池10を寝かせて保温容器13内へ収納することもできる。
【0027】
図2の構造においては、保温容器13の内部側面に硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12が設置されると共に、保温容器13の開口部、すなわち、保温容器の本体131と蓋132との間隙にも吸着剤12が設置されている。こうすることによって、万一電池が破損して硫黄や多硫化ナトリウムが電池外部へ流出した際には、空気中の酸素や水分と反応して発生した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが吸着されて、保温容器13の外部への漏洩が防止される効果、又は/及び、硫黄ガスが吸着されて、保温容器13の外部での二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの発生が防止できる効果が得られる。
【0028】
なお、このためには、図示されているように、保温容器の本体131と蓋132との間隙に吸着剤12を設置することが望ましい。さらに、吸着剤12を多孔質材で保持することが望ましく、こうすることにより、多孔質材を通ってガスが吸着剤12の内部へ侵入して吸着され易くなると共に、吸着剤12が多孔質材に保持されて保温容器13の内部や外部に落下する恐れは無く、モジュール40への吸着剤12の設置構造の信頼性が高い。
【0029】
また、この構造においては、硫黄や多硫化ナトリウムと反応する酸素量は主に保温容器13内の空気量で決まり、保温容器13内の空隙を小さくすることによって空気量を少なくすることができ、二酸化硫黄ガスの生成量を少なくすることが可能である。例えば、保温容器13の内容積が2000リットル(2m×1m×1m)、内部の空隙割合が1/2、内部温度が300℃の場合の保温容器内部に含まれる空気(酸素量は約21%)中の酸素量は、2000×1/2×0.21×273/(273+300)×1/22.4=4.5モルであり、二酸化硫黄ガスに対しては、4.5 モルが吸着できる程度の量の吸着剤12を保温容器13に充填すれば良い。
【0030】
さらに、この保温容器の本体131と蓋132とは分離されていて、保温容器13の内部は気密に密閉されていないため、室温と電池運転温度の間で昇降温した時には、保温容器13の内外へ空気が移動して、密閉された保温容器のように内部のガスが熱膨張,熱収縮して保温容器に応力が掛かる問題は無く、保温容器13の機械的信頼性が高く、簡素な構造の使用が可能であるという利点がある。なお、この目的のためには、少なくとも保温容器の本体131と蓋132との間隔に設ける吸着剤12にはセラミックス繊維やガラス繊維などの多孔質材で保持されたものを用いるのが望ましく、こうすることによって、昇降温時の保温容器13の内外への空気の移動が円滑に進行し易い。
【0031】
さらに、図2の構造では、保温容器13に酸素除去手段やガス浄化装置を取り付ける必要がないために、ナトリウム硫黄電池システムの構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるために、民需用への適用に特に適しているという利点もある。なお、保温容器13として真空断熱容器を用いる場合、容器を構成する二重壁の内部空間が真空引きされているが、この二重壁の内部空間内に充填された断熱材によって外部大気圧による応力が支えられて、二重壁構造は昇降温に対しても安定して保持される。
【0032】
また、図示されていないが、乾燥砂16に吸着剤12を混ぜて使用したり、例えば乾燥シリカゲルのように、吸着剤12がナトリウムや硫黄の消火剤としての効果を持つ場合には、乾燥砂16の代りに吸着剤12を充填することもできる。さらに、ゼオライトやシリカゲルのように、吸着剤12が電気絶縁性を持つ場合には、絶縁材15の代りに吸着剤12を設置することも可能である。
【0033】
図3は本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムの別の構造例を示しており、図2と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図もナトリウム硫黄電池10を保温容器13内に収納したモジュール40の構造を示しているが、保温容器13は真空断熱容器から成る本体131と金属板から成る蓋18より構成され、蓋の下側に硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12を設けている。また、図示されていないが、吸着剤12は多孔質材で保持されており、この多孔質材として例えばロックウールのようなセラミックス繊維やガラス繊維から成る断熱材を用いて、保温容器13を構成している。なお、蓋18を構成する金属板には貫通孔19を設けて、ブスバ14を外部へ連結すると共に、保温容器13の内部にはヒータ17が設けられている。
【0034】
このような構造を用いることにより、図2のように保温容器13を真空断熱容器のみで構成した構造に比べて、保温容器13の低コスト化が可能であり、ナトリウム硫黄電池システムの普及拡大に有効である。また、吸着剤12を保持する多孔質材で断熱材を兼ねることにより、システム構成材料が低減できるという利点がある。なお、場合によっては、保温容器の本体131も真空断熱容器の代りに金属板と断熱材で構成することができる。さらに、このように保温容器13の開口部である蓋18の下側に多孔質材で保持した吸着剤12を設置することにより、万一電池が破損した場合にも、二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスの保温容器13の外部への漏洩を防止することができる。
【0035】
図4は本発明の第三のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示しており、図2,図3と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図はモジュール40がキュービクルなどの耐火構造容器50内に充填された構造を示しており、耐火構造容器50には本体51と扉52及び換気口54と蓋55が設けられている。また、モジュール40は棚56で支えられて、耐火構造容器50内に積層して充填されている。さらに、耐火構造容器の本体51及び扉52との側面には貫通孔53が設けられ、この貫通孔53と換気口54とを通って空気が内外へ出入りすることにより、耐火構造容器50内の温度が制御されている。
【0036】
この図においては、耐火構造容器の本体51と扉52との側面及び換気口54に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12が設けられており、万一電池が破損してモジュール40から二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスが漏れ出た際に、これらのガスを吸着剤12で吸着して、耐火構造容器50の外への漏洩を防止している。なお、図示されていないが、吸着剤12としては多孔質材に保持されたものを用いることが望ましく、こうすることにより、吸着剤12の設置位置が固定されて、吸着剤12が下部へ落下する問題が防げると共に、貫通孔53や換気口54を通しての空気の移動が円滑に進んで、耐火構造容器50内の温度制御が容易となる。
【0037】
また、この構造においては、電池運転状態においても吸着剤12の温度は室温近傍に保たれるため、多孔質材としては無機物,有機物のどちらを用いても良い。ここで、一般に有機物の多孔質材のほうが無機物の多孔質材よりも軽量で安価なため、ナトリウム硫黄電池システムの低コスト化による普及を図るためには、有機物の多孔質材を用いることが望ましい。一方、ナトリウム硫黄電池システムの耐火性を確保するためには、ロックウールや石綿などのセラミックス繊維やガラス繊維から成る無機物の多孔質材を用いる必要がある。また、この構造を用いれば、耐火構造容器にガス浄化装置を取り付けなくても良いため、システム構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるという実用上の利点もある。
【0038】
本発明で用いられる吸着剤12としては、ゼオライト,シリカゲル、又は、活性炭から成る吸着剤を用いることが望ましい。本発明に用いるこれらの吸着剤は内部に空隙を持ち、その空隙に硫黄ガス,硫化水素ガスや二酸化硫黄ガスを取り込むことによって、これらのガスが吸着される。したがって、ガス吸着のためには内部の空隙の大きさ制御が必要であり、ガスを構成する分子の大きさが比較的小さい硫黄ガスや硫化水素ガスの吸着は比較的容易であるが、分子の大きさが比較的大きい二酸化硫黄ガスの吸着のためには、内部の空隙の大きい種類のゼオライト,シリカゲルや活性炭を用いることが望ましい。
【0039】
ここで、これらの吸着剤12はほぼ中性の性質を持つために、金属製の正極容器3や収納容器11,保温容器13、あるいは、耐火構造容器50と吸着剤12とが電池運転温度又は室温で接触した場合にも、金属が腐食される問題は起こらず、システムの信頼性が高いという利点がある。また、これらの吸着剤12は水へ溶解することは無いために、電池を室温に冷却した際に保温容器13内に進入する空気中の水分や、耐火構造容器50内に含まれる空気中の水分によって吸着剤が溶け出す問題は無く、吸着剤12の設置方法が簡略化できるという利点もある。
【0040】
なお、吸着剤12として活性炭を用いる場合、ナトリウム硫黄電池の運転温度で活性炭が燃焼する問題は起こらないため、活性炭を保温容器13内に設けることも可能である。但しこの場合には、電池が破損してナトリウムと硫黄との直接反応によって温度上昇した場合にも、活性炭が燃焼しないように設置方法を工夫することが望ましい。一方、図4のように吸着剤12を耐火構造容器50内に設ける場合には、活性炭の燃焼の問題は起こらないという利点がある。
【0041】
また、吸着剤12としてゼオライトやシリカゲルを用いる場合には、高温でも燃焼の問題は起こらない。さらに、ガス吸着性能を高めるには、吸着剤を加熱して内部の空隙に吸着される水分を除去しておくことが望ましく、このためには、図1,図2や図3のように吸着剤12をナトリウム硫黄電池10と隣接したり、保温容器13の内部へ設置して、電池の運転温度に保持することが有効であり、こうすることにより、吸着性能が向上するという利点が得られる。
【0042】
以上のように、本発明のナトリウム硫黄電池システムを用いることにより、万一電池が破損して二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスが発生した場合には、吸着剤12によって、これらのガスが吸着されて、システム外部への漏洩が防止されるため、安全性が高く、民需用への適用に適したナトリウム硫黄電池システムが実現される。また、ゼオライトやシリカゲル又は活性炭から成る吸着剤12を用いることにより、金属製容器の腐食の問題や水分によって吸着剤が溶け出す問題は起こらず、システムの信頼性が高い。
【0043】
さらに、この結果として、保温容器を気密に密閉したり、保温容器に酸素除去手段やガス浄化装置を取り付けたり、耐火構造容器にガス浄化装置を取り付けたりする必要がないために、保温容器13の機械的信頼性が高いと共に、システム構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるという利点もある。なお、吸着剤12として多孔質材で保持されたものを用いることにより、吸着剤12の設置の信頼性が向上すると共に、吸着剤12を通っての空気の移動が円滑に進み、ナトリウム硫黄電池システムの温度制御が容易になったり、機械的信頼性が向上するという効果も得られる。
【0044】
具体例として、図1に示すように、固体電解質1としてリチウムドープのβ″アルミナ焼結体から成る円筒状袋管を用い、αアルミナ焼結体リングから成る絶縁板9と固体電解質1の開口部とをガラス接合した。また、負極容器2とナトリウム容器21にはアルミニウム合金を、正極容器3にはアルミニウム合金の内面にクロム合金を溶射あるいはメッキしたものを用い、絶縁板9の表面と負極容器2及び正極容器3の端部とをAl−Si合金を介して熱圧接接合した。さらに、貫通孔6を設けたナトリウム容器21の内部に液体状のナトリウム4とArガスを充填して負極容器2を封止すると共に、正極室30の内部に炭素繊維マットから成る多孔質導電材7とアルミナ繊維から成る多孔質材8及び硫黄から成る正極活物質5を充填し、正極容器3を封止してナトリウム硫黄電池10を作成した。
【0045】
次に、このナトリウム硫黄電池10、あるいは、図1のように、ナトリウム硫黄電池の周囲にゼオライトから成る吸着剤12及びSUS製の収納容器11を設けたナトリウム硫黄電池を、図2に示すようにSUS製の真空断熱容器から成る保温容器13内に収納して、モジュール40を作成した。なお、この保温容器13内には図2のように、ゼオライトから成る吸着剤12を多孔質材であるロックウールで保持して設置すると共に、マイカ板から成る絶縁材15,乾燥砂16、及び、図示されていないが、電池温度を保持するためのヒータや温度・電圧センサが設けられている。また、電池間はブスバ14で連結されると共に、ブスバは保温容器の本体131と蓋132との間に設けた吸着剤12の内部を通って外部回路と接続されており、ブスバ14と保温容器13とは吸着剤12を保持した多孔質材のロックウールによって電気的に絶縁されている。
【0046】
得られたモジュール40を内部に二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの検知器を設けたキュービクル内に収納し、室温と電池動作温度である330℃との間で30回以上昇降温した結果、昇降温時に保温容器13の内外に空気が移動して、保温容器13への応力印加の問題がおこらないため、保温容器13の破損の問題は全く起こらなかった。また、外部から電池に強制的に電流を流して固体電解質1を破損させると共に、電池温度を高めて正極容器3と絶縁材9との接合部を剥離して、硫黄を電池の外へ流出させた場合には、硫黄と空気とが反応して生成した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスがゼオライトから成る吸着剤でトラップされた。この結果、モジュール40の外へ二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスが漏洩することはなく、ナトリウム硫黄電池システムの安全性が確保された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ナトリウム硫黄電池が破損した際に発生した二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスの外部への漏洩が防止できるために安全性が高く、且つ、システムの構造が簡素化されたナトリウム硫黄電池システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図2】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図3】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図4】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…負極容器、3…正極容器、4…ナトリウム、5…正極活物質、6,19,53…貫通孔、7…多孔質導電材、8…多孔質材、9…絶縁板、10…ナトリウム硫黄電池、11…収納容器、12…吸着剤、13…保温容器、14…ブスバ、15…絶縁材、16…乾燥砂、17…ヒータ、18,55,
132…蓋、20…負極室、21…ナトリウム容器、30…正極室、40…モジュール、50…耐火構造容器、51…耐火構造容器の本体、52…扉、54…換気口、56…棚、131…保温容器の本体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
負極室内に負極活物質のナトリウムを、正極室内に正極活物質の硫黄や多硫化ナトリウムを充填し、負極室/正極室間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質袋管や固体電解質平板で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、夜間電力を貯えて昼間利用する負荷平準化に適した電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車への利用が期待されている。この電池の利用拡大には、昼夜の電気料金差額の利点を生かして、民需用の電力貯蔵装置や電気自動車への適用促進を図ることが重要であり、このためには電池の安全性を確保すること、特に電池破損時に発生する二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスがナトリウム硫黄電池システムの外部へ漏洩する問題への対策が必要である。
【0003】
ここで、二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスには毒性があり、ナトリウム硫黄電池システムから漏れて外へ流出すると、人体に対する障害などの問題が発生する可能性がある。また、硫黄ガスには毒性は無いが、硫黄ガスがナトリウム硫黄電池システムの外部へ漏洩した際に、硫黄ガス温度が高い場合には、外部で空気中の酸素や水分と反応して二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが発生する可能性もあり、硫黄ガスの外部への漏洩も防止することが望ましい。
【0004】
ナトリウム硫黄電池の安全性に関しては、外部短絡や固体電解質破損に対する正極容器や負極容器の安定性確保のために、電池構造に対して種々の対策がなされているが、万一正極容器や負極容器が破損した場合に備えての対策も重要である。この問題に対して、例えば特開平3−283272号公報などに見られるように、ナトリウム容器を収納して約300℃に保温した真空断熱容器などの保温容器内へ乾燥砂を充填して、電池から放出された活物質の移動を阻止する方法が提案されている。この方法は隣接電池の連鎖破損を抑制するには有効であるが、破損した電池から放出された正極活物質である硫黄や多硫化ナトリウムが保温容器内で空気中の酸素や水分と反応して生成した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガス、又は、硫黄が蒸発して発生した硫黄ガスが保温容器の外部へ漏洩する問題に対する対策とは成らない。
【0005】
また、特開平6−68905号公報には、保温容器内に炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの1A族金属,2A族金属の炭酸塩や炭酸鉄を添加してナトリウムと硫黄との反応を制御する方法が提案されているが、一般に1A族金属,2A族金属の炭酸塩や炭酸鉄と二酸化硫黄ガスとの反応速度は約400℃以下では小さいため、ナトリウム硫黄電池の運転温度である約300〜350℃程度の温度では、発生した二酸化硫黄ガスの外部への漏洩を防止することは困難である。
【0006】
一方、特開平6−283217号公報,特開平7−254438号公報及び特開平8−250152号公報では、保温容器の内部を気密又は準気密に密閉して、内部に断熱性ガスとしてアルゴンガスなどの不活性ガスを充填したり、酸素除去手段を設ける方法が提案されている。しかしながら、ナトリウム硫黄電池の場合には、電池運転温度である約300℃と室温との間を昇降温する際に保温容器内部のガスが熱膨張,熱収縮して、密閉された保温容器に応力が掛かるため、保温容器を機械的強度が十分保たれる高強度構造にする必要があり、後者では酸素除去手段を設ける必要があるなど、保温容器の構造が複雑になるという問題がある。
【0007】
なお、保温容器内を真空引きした場合にも同様で、約300℃に加熱した状態で外部の大気圧による応力に対して保温容器を安定に保つためには、保温容器の構造が複雑になるという問題がある。また、保温容器として密閉構造を用いる場合には、保温容器へのナトリウム硫黄電池の出し入れに手間が掛かるという問題もある。
【0008】
さらに、特開平6−104007号公報においては、保温容器に接続した排気管にガス浄化装置を取り付けて、電池破損時に発生した二酸化硫黄ガスをガス浄化装置で浄化処理する方法が提案されている。しかしながら、この場合には保温容器に排気装置やガス浄化装置を取り付ける必要があるために、システム構造が複雑になると共に、システムの体積が増えて、ナトリウム硫黄電池システムの設置可能場所が制限されるという問題がある。
【0009】
以上のように、従来の方法では、電池が破損した場合に発生する二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスの漏洩対策と保温容器構造やシステム構造の簡素化との両立は困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を除き、簡単な保温容器構造又はシステム構造によって、万一電池が破損しても二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は硫黄ガスがシステムの外部へ漏洩する問題が起こらない、安全性の高いナトリウム硫黄電池システムを提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池の外部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の第三のナトリウム硫黄電池システムは、ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極室と、前記負極室/正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の一個又は複数個をキュービクルなどの耐火構造容器内に設置して、前記耐火構造容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴としている。
【0014】
ここで、前記吸着剤がゼオライト,シリカゲル、又は、活性炭から成る吸着剤であることが望ましい。さらに、前記吸着剤が無機物の多孔質材あるいは有機物の多孔質材によって保持されていることが望ましく、前記多孔質材が前記ナトリウム硫黄電池を保温するための断熱材であることが特に望ましい。
【0015】
上記第一,第二,第三のナトリウム硫黄電池システムにより、簡単な保温容器構造又はシステム構造によって、万一電池が破損しても二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスがシステムの外部へ漏洩する問題が起こりにくく、安全性の高いナトリウム硫黄電池システムが提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の第一のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示している。図において、ナトリウム硫黄電池10は固体電解質1,負極容器2,正極容器3,固体電解質と負極容器とで構成された負極室20内に収納されたナトリウム4、及び、固体電解質と正極容器とで構成された正極室30内に収納された硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質5から構成されている。ここで、固体電解質1としては、普通β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成るナトリウムイオン導電体の袋管や平板から構成され、固体電解質1は負極室/正極室間を分離している。また、負極室20内にはナトリウム容器21が設けられており、ナトリウム容器内に収納されたナトリウムは、重力やガス圧によって下部に設けた貫通孔6を通って固体電解質1の表面へ供給される。なお、この図では負極容器2とナトリウム容器21とが接続されているが、両者を分離することも可能である。
【0018】
一方、正極室30内には、炭素繊維や炭素粒子の集合体から成る多孔質導電材7とセラミックスやガラスの繊維や粒子の集合体から成る多孔質材8が設けられ、正極活物質5は多孔質導電材7や多孔質材8に含浸されて、電池反応が進行する。さらに、固体電解質1の端部には絶縁板9が接合され、且つ、この絶縁板と負極容器2,正極容器3とが接合されて、電池が密閉構造になると共に、負極容器と正極容器とが電気的に絶縁されている。ここで、絶縁板9としてはαアルミナやマグネシウムアルミニウムスピネルなどのセラミックスが用いられ、図示されていないが、固体電解質1の端部とガラス接合、あるいは、一体焼結されている。また、負極容器2や正極容器3はAl合金やFe合金,SUS又はこれらの表面にCrやMo,Co,Si,Cなどを主体とする耐食層を設けた金属材やAl合金とSUS等とのクラッド材から構成され、図示されていないが、AlやAl合金を絶縁板9との接合材として用いて、接合材の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して、加圧接合する熱圧接法によって一般に絶縁板9と接合されている。
【0019】
さらに、図1の構造においては、ナトリウム硫黄電池10の周囲に収納容器11が設けられ、収納容器11とナトリウム硫黄電池10の間に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤12が充填されている。
【0020】
ここで、収納容器11としては、Al合金やFe合金,SUSなどから成る金属容器を用いても良いし、ガラスやセラミックスなどの非金属容器を用いても良い。なお、図示されていないが、収納容器11として金属容器を用いる場合には、正極容器3又は負極容器2と部分的に接合して、収納容器11を電極として利用することも可能である。
【0021】
このように、ナトリウム硫黄電池の外部に吸着剤12を設けて、正極容器3の周囲を吸着剤12と収納容器11とで取り囲むことにより、万一電池が破損して正極容器3の外へ正極活物質5である硫黄や多硫化ナトリウムが漏れ、空気中の酸素や水分と反応して二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが発生したとしても、このガスが吸着剤12で吸着され、外部への二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの漏洩を防止することができる。また、この吸着材12で硫黄ガスを吸着することにより、硫黄ガスが外部へ漏れて、外部で空気中の酸素や水分と反応して、二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスを発生することを防ぐこともできる。
【0022】
ここで、電池破損の可能性は電池運転温度などの高温で高く、電池冷却時の室温での破損の可能性は低い。また、二酸化硫黄ガスは、電池運転時や電池から漏れた硫黄とナトリウムとの反応時の高温において、空気中の酸素と硫黄とが反応して生成する可能性が高い。一方、硫化水素ガスは空気中の水分と硫黄との反応で発生するのが一般的なため、空気中の水分量が比較的多くなる電池の冷却時には発生し易いが、電池の運転温度である約300℃やそれ以上の温度では空気中の水分量が少ないために、硫化水素ガスが発生する可能性は小さい。さらに、外部に漏れた硫黄ガスが空気中の酸素や水分と反応するためには、硫黄ガスの温度が外部でも高く保たれる必要があり、この反応の可能性も比較的小さい。したがって、ナトリウム硫黄電池システムの安全性向上のためには、電池破損時に発生する可能性の高い二酸化硫黄ガスを吸着して、外部への漏洩を防止することが特に重要である。なお、硫化水素ガスや硫黄ガスの外部への漏洩を防止することも、安全性の向上に有効なことは当然である。
【0023】
この目的のためには、収納容器11の少なくとも開口部に吸着剤12を設けて、収納容器11から外部への二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスの漏洩を防止することが望ましい。また、図示されていないが、収納容器11を設ける代りに吸着剤12を多孔質材で保持して、ナトリウム硫黄電池10の周囲を取り囲むことによっても、これらのガスの漏洩防止が可能である。
【0024】
ここで、吸着剤12は収納容器11内に充填しても良いし、図示されていないが、収納容器11内に無機物などの多孔質材を充填して、吸着剤12をこの多孔質材と混合するなどの方法によって、吸着剤12を多孔質材によって保持しても良い。特に、吸着剤12として多孔質材で保持したものを収納容器11内に充填した場合には、吸着剤12をそのまま充填した場合に比べて、正極容器3,収納容器11と吸着剤12との熱膨張差に基づく応力が多孔質材の低剛性によって緩和されて、電池の機械的信頼性が向上するという利点がある。
【0025】
なお、この多孔質材としてポリマー繊維などの有機物を用いることも考えられるが、ナトリウム硫黄電池の場合には電池動作温度が比較的高いため、ナトリウム硫黄電池に隣接して吸着剤12を設けたり、後述のようにナトリウム硫黄電池を収納した保温容器内に吸着剤12を設置する場合には、ガラス繊維やセラミック繊維などの無機物の多孔質材を用いることが望ましい。
【0026】
図2は本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示しており、図1と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図はナトリウム硫黄電池10を真空断熱容器から成る保温容器13内に収納したモジュール40の構造を示している。ここで、ナトリウム硫黄電池10はブスバ14によって電池間が電気接続されると共に、外部回路との間が電気接続されている。一方、ナトリウム硫黄電池10の下部と保温容器13との間にはマイカ板のような絶縁材15が設けられ、両者の間が電気的に分離されている。また、保温容器内には二酸化珪素や酸化アルミニウムなどから成る乾燥砂16が充填され、万一電池が破損して、電池から活物質が漏れた際に活物質の移動を制御して、隣接電池の破損を防止している。なお、図示されていないが、保温容器13の内側には電池温度を高めるためのヒータが設けられている。さらに、ナトリウム硫黄電池10を寝かせて保温容器13内へ収納することもできる。
【0027】
図2の構造においては、保温容器13の内部側面に硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12が設置されると共に、保温容器13の開口部、すなわち、保温容器の本体131と蓋132との間隙にも吸着剤12が設置されている。こうすることによって、万一電池が破損して硫黄や多硫化ナトリウムが電池外部へ流出した際には、空気中の酸素や水分と反応して発生した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスが吸着されて、保温容器13の外部への漏洩が防止される効果、又は/及び、硫黄ガスが吸着されて、保温容器13の外部での二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの発生が防止できる効果が得られる。
【0028】
なお、このためには、図示されているように、保温容器の本体131と蓋132との間隙に吸着剤12を設置することが望ましい。さらに、吸着剤12を多孔質材で保持することが望ましく、こうすることにより、多孔質材を通ってガスが吸着剤12の内部へ侵入して吸着され易くなると共に、吸着剤12が多孔質材に保持されて保温容器13の内部や外部に落下する恐れは無く、モジュール40への吸着剤12の設置構造の信頼性が高い。
【0029】
また、この構造においては、硫黄や多硫化ナトリウムと反応する酸素量は主に保温容器13内の空気量で決まり、保温容器13内の空隙を小さくすることによって空気量を少なくすることができ、二酸化硫黄ガスの生成量を少なくすることが可能である。例えば、保温容器13の内容積が2000リットル(2m×1m×1m)、内部の空隙割合が1/2、内部温度が300℃の場合の保温容器内部に含まれる空気(酸素量は約21%)中の酸素量は、2000×1/2×0.21×273/(273+300)×1/22.4=4.5モルであり、二酸化硫黄ガスに対しては、4.5 モルが吸着できる程度の量の吸着剤12を保温容器13に充填すれば良い。
【0030】
さらに、この保温容器の本体131と蓋132とは分離されていて、保温容器13の内部は気密に密閉されていないため、室温と電池運転温度の間で昇降温した時には、保温容器13の内外へ空気が移動して、密閉された保温容器のように内部のガスが熱膨張,熱収縮して保温容器に応力が掛かる問題は無く、保温容器13の機械的信頼性が高く、簡素な構造の使用が可能であるという利点がある。なお、この目的のためには、少なくとも保温容器の本体131と蓋132との間隔に設ける吸着剤12にはセラミックス繊維やガラス繊維などの多孔質材で保持されたものを用いるのが望ましく、こうすることによって、昇降温時の保温容器13の内外への空気の移動が円滑に進行し易い。
【0031】
さらに、図2の構造では、保温容器13に酸素除去手段やガス浄化装置を取り付ける必要がないために、ナトリウム硫黄電池システムの構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるために、民需用への適用に特に適しているという利点もある。なお、保温容器13として真空断熱容器を用いる場合、容器を構成する二重壁の内部空間が真空引きされているが、この二重壁の内部空間内に充填された断熱材によって外部大気圧による応力が支えられて、二重壁構造は昇降温に対しても安定して保持される。
【0032】
また、図示されていないが、乾燥砂16に吸着剤12を混ぜて使用したり、例えば乾燥シリカゲルのように、吸着剤12がナトリウムや硫黄の消火剤としての効果を持つ場合には、乾燥砂16の代りに吸着剤12を充填することもできる。さらに、ゼオライトやシリカゲルのように、吸着剤12が電気絶縁性を持つ場合には、絶縁材15の代りに吸着剤12を設置することも可能である。
【0033】
図3は本発明の第二のナトリウム硫黄電池システムの別の構造例を示しており、図2と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図もナトリウム硫黄電池10を保温容器13内に収納したモジュール40の構造を示しているが、保温容器13は真空断熱容器から成る本体131と金属板から成る蓋18より構成され、蓋の下側に硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12を設けている。また、図示されていないが、吸着剤12は多孔質材で保持されており、この多孔質材として例えばロックウールのようなセラミックス繊維やガラス繊維から成る断熱材を用いて、保温容器13を構成している。なお、蓋18を構成する金属板には貫通孔19を設けて、ブスバ14を外部へ連結すると共に、保温容器13の内部にはヒータ17が設けられている。
【0034】
このような構造を用いることにより、図2のように保温容器13を真空断熱容器のみで構成した構造に比べて、保温容器13の低コスト化が可能であり、ナトリウム硫黄電池システムの普及拡大に有効である。また、吸着剤12を保持する多孔質材で断熱材を兼ねることにより、システム構成材料が低減できるという利点がある。なお、場合によっては、保温容器の本体131も真空断熱容器の代りに金属板と断熱材で構成することができる。さらに、このように保温容器13の開口部である蓋18の下側に多孔質材で保持した吸着剤12を設置することにより、万一電池が破損した場合にも、二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスの保温容器13の外部への漏洩を防止することができる。
【0035】
図4は本発明の第三のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示しており、図2,図3と同じ符号で示されたものは同じ部品を示している。この図はモジュール40がキュービクルなどの耐火構造容器50内に充填された構造を示しており、耐火構造容器50には本体51と扉52及び換気口54と蓋55が設けられている。また、モジュール40は棚56で支えられて、耐火構造容器50内に積層して充填されている。さらに、耐火構造容器の本体51及び扉52との側面には貫通孔53が設けられ、この貫通孔53と換気口54とを通って空気が内外へ出入りすることにより、耐火構造容器50内の温度が制御されている。
【0036】
この図においては、耐火構造容器の本体51と扉52との側面及び換気口54に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスの吸着剤12が設けられており、万一電池が破損してモジュール40から二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスが漏れ出た際に、これらのガスを吸着剤12で吸着して、耐火構造容器50の外への漏洩を防止している。なお、図示されていないが、吸着剤12としては多孔質材に保持されたものを用いることが望ましく、こうすることにより、吸着剤12の設置位置が固定されて、吸着剤12が下部へ落下する問題が防げると共に、貫通孔53や換気口54を通しての空気の移動が円滑に進んで、耐火構造容器50内の温度制御が容易となる。
【0037】
また、この構造においては、電池運転状態においても吸着剤12の温度は室温近傍に保たれるため、多孔質材としては無機物,有機物のどちらを用いても良い。ここで、一般に有機物の多孔質材のほうが無機物の多孔質材よりも軽量で安価なため、ナトリウム硫黄電池システムの低コスト化による普及を図るためには、有機物の多孔質材を用いることが望ましい。一方、ナトリウム硫黄電池システムの耐火性を確保するためには、ロックウールや石綿などのセラミックス繊維やガラス繊維から成る無機物の多孔質材を用いる必要がある。また、この構造を用いれば、耐火構造容器にガス浄化装置を取り付けなくても良いため、システム構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるという実用上の利点もある。
【0038】
本発明で用いられる吸着剤12としては、ゼオライト,シリカゲル、又は、活性炭から成る吸着剤を用いることが望ましい。本発明に用いるこれらの吸着剤は内部に空隙を持ち、その空隙に硫黄ガス,硫化水素ガスや二酸化硫黄ガスを取り込むことによって、これらのガスが吸着される。したがって、ガス吸着のためには内部の空隙の大きさ制御が必要であり、ガスを構成する分子の大きさが比較的小さい硫黄ガスや硫化水素ガスの吸着は比較的容易であるが、分子の大きさが比較的大きい二酸化硫黄ガスの吸着のためには、内部の空隙の大きい種類のゼオライト,シリカゲルや活性炭を用いることが望ましい。
【0039】
ここで、これらの吸着剤12はほぼ中性の性質を持つために、金属製の正極容器3や収納容器11,保温容器13、あるいは、耐火構造容器50と吸着剤12とが電池運転温度又は室温で接触した場合にも、金属が腐食される問題は起こらず、システムの信頼性が高いという利点がある。また、これらの吸着剤12は水へ溶解することは無いために、電池を室温に冷却した際に保温容器13内に進入する空気中の水分や、耐火構造容器50内に含まれる空気中の水分によって吸着剤が溶け出す問題は無く、吸着剤12の設置方法が簡略化できるという利点もある。
【0040】
なお、吸着剤12として活性炭を用いる場合、ナトリウム硫黄電池の運転温度で活性炭が燃焼する問題は起こらないため、活性炭を保温容器13内に設けることも可能である。但しこの場合には、電池が破損してナトリウムと硫黄との直接反応によって温度上昇した場合にも、活性炭が燃焼しないように設置方法を工夫することが望ましい。一方、図4のように吸着剤12を耐火構造容器50内に設ける場合には、活性炭の燃焼の問題は起こらないという利点がある。
【0041】
また、吸着剤12としてゼオライトやシリカゲルを用いる場合には、高温でも燃焼の問題は起こらない。さらに、ガス吸着性能を高めるには、吸着剤を加熱して内部の空隙に吸着される水分を除去しておくことが望ましく、このためには、図1,図2や図3のように吸着剤12をナトリウム硫黄電池10と隣接したり、保温容器13の内部へ設置して、電池の運転温度に保持することが有効であり、こうすることにより、吸着性能が向上するという利点が得られる。
【0042】
以上のように、本発明のナトリウム硫黄電池システムを用いることにより、万一電池が破損して二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスが発生した場合には、吸着剤12によって、これらのガスが吸着されて、システム外部への漏洩が防止されるため、安全性が高く、民需用への適用に適したナトリウム硫黄電池システムが実現される。また、ゼオライトやシリカゲル又は活性炭から成る吸着剤12を用いることにより、金属製容器の腐食の問題や水分によって吸着剤が溶け出す問題は起こらず、システムの信頼性が高い。
【0043】
さらに、この結果として、保温容器を気密に密閉したり、保温容器に酸素除去手段やガス浄化装置を取り付けたり、耐火構造容器にガス浄化装置を取り付けたりする必要がないために、保温容器13の機械的信頼性が高いと共に、システム構造が小型化,簡素化されて、設置可能場所の範囲が広げられるという利点もある。なお、吸着剤12として多孔質材で保持されたものを用いることにより、吸着剤12の設置の信頼性が向上すると共に、吸着剤12を通っての空気の移動が円滑に進み、ナトリウム硫黄電池システムの温度制御が容易になったり、機械的信頼性が向上するという効果も得られる。
【0044】
具体例として、図1に示すように、固体電解質1としてリチウムドープのβ″アルミナ焼結体から成る円筒状袋管を用い、αアルミナ焼結体リングから成る絶縁板9と固体電解質1の開口部とをガラス接合した。また、負極容器2とナトリウム容器21にはアルミニウム合金を、正極容器3にはアルミニウム合金の内面にクロム合金を溶射あるいはメッキしたものを用い、絶縁板9の表面と負極容器2及び正極容器3の端部とをAl−Si合金を介して熱圧接接合した。さらに、貫通孔6を設けたナトリウム容器21の内部に液体状のナトリウム4とArガスを充填して負極容器2を封止すると共に、正極室30の内部に炭素繊維マットから成る多孔質導電材7とアルミナ繊維から成る多孔質材8及び硫黄から成る正極活物質5を充填し、正極容器3を封止してナトリウム硫黄電池10を作成した。
【0045】
次に、このナトリウム硫黄電池10、あるいは、図1のように、ナトリウム硫黄電池の周囲にゼオライトから成る吸着剤12及びSUS製の収納容器11を設けたナトリウム硫黄電池を、図2に示すようにSUS製の真空断熱容器から成る保温容器13内に収納して、モジュール40を作成した。なお、この保温容器13内には図2のように、ゼオライトから成る吸着剤12を多孔質材であるロックウールで保持して設置すると共に、マイカ板から成る絶縁材15,乾燥砂16、及び、図示されていないが、電池温度を保持するためのヒータや温度・電圧センサが設けられている。また、電池間はブスバ14で連結されると共に、ブスバは保温容器の本体131と蓋132との間に設けた吸着剤12の内部を通って外部回路と接続されており、ブスバ14と保温容器13とは吸着剤12を保持した多孔質材のロックウールによって電気的に絶縁されている。
【0046】
得られたモジュール40を内部に二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスの検知器を設けたキュービクル内に収納し、室温と電池動作温度である330℃との間で30回以上昇降温した結果、昇降温時に保温容器13の内外に空気が移動して、保温容器13への応力印加の問題がおこらないため、保温容器13の破損の問題は全く起こらなかった。また、外部から電池に強制的に電流を流して固体電解質1を破損させると共に、電池温度を高めて正極容器3と絶縁材9との接合部を剥離して、硫黄を電池の外へ流出させた場合には、硫黄と空気とが反応して生成した二酸化硫黄ガスや硫化水素ガスがゼオライトから成る吸着剤でトラップされた。この結果、モジュール40の外へ二酸化硫黄ガス,硫化水素ガスや硫黄ガスが漏洩することはなく、ナトリウム硫黄電池システムの安全性が確保された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ナトリウム硫黄電池が破損した際に発生した二酸化硫黄ガス,硫化水素ガス又は/及び硫黄ガスの外部への漏洩が防止できるために安全性が高く、且つ、システムの構造が簡素化されたナトリウム硫黄電池システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図2】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図3】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【図4】本発明のナトリウム硫黄電池システムの構造例を示す構造図。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…負極容器、3…正極容器、4…ナトリウム、5…正極活物質、6,19,53…貫通孔、7…多孔質導電材、8…多孔質材、9…絶縁板、10…ナトリウム硫黄電池、11…収納容器、12…吸着剤、13…保温容器、14…ブスバ、15…絶縁材、16…乾燥砂、17…ヒータ、18,55,
132…蓋、20…負極室、21…ナトリウム容器、30…正極室、40…モジュール、50…耐火構造容器、51…耐火構造容器の本体、52…扉、54…換気口、56…棚、131…保温容器の本体。
Claims (6)
- ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムを含む正極活物質を収納した正極室と、前記負極室と正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池の外部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
- ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムを含む正極活物質を収納した正極室と、前記負極室と正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
- ナトリウムを収納した負極室と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムを含む正極活物質を収納した正極室と、前記負極室と正極室間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池を保温容器内に収納し、前記保温容器の一個又は/複数個をキュービクルなどの耐火構造容器内に設置して、前記耐火構造容器の内部又は/及び開口部に、硫黄ガス,二酸化硫黄ガス又は/及び硫化水素ガスを吸着する吸着剤を設けたことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
- 請求項1,2あるいは3のいずれかにおいて、前記吸着剤がゼオライト,シリカゲル、又は、活性炭を含むことを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
- 請求項1,2あるいは3のいずれかにおいて、前記吸着剤が無機物の多孔質材によって保持されていることを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
- 請求項5において、前記多孔質材が前記ナトリウム硫黄電池を保温するための断熱材であることを特徴とするナトリウム硫黄電池システム。
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