JP2004086138A - 感熱性平版印刷版 - Google Patents

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JP2004086138A JP2003038526A JP2003038526A JP2004086138A JP 2004086138 A JP2004086138 A JP 2004086138A JP 2003038526 A JP2003038526 A JP 2003038526A JP 2003038526 A JP2003038526 A JP 2003038526A JP 2004086138 A JP2004086138 A JP 2004086138A
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Akihisa Oda
小田 晃央
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Abstract

【課題】画像形成時現像ラチチュードに優れ、高感度かつ耐傷性に優れたダイレクト製版用の感熱性平版印刷版を提供する。
【解決手段】親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料を含み露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増加する上部感熱層とを有する感熱性平版印刷版であって、上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセット印刷マスターとして使用できる画像記録材料に関するものであり、特にコンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の感熱性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料は、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収染料(IR染料)等とを必須成分とし、IR染料等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まりアルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版では、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差が未だ十分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすいという問題があった。また、平版印刷版の画像形成能は、記録層表面の赤外線レーザ露光による発熱に依存しているため、支持体近傍では、熱の拡散により画像形成、即ち、記録層の可溶化に用いられる熱量が少なくなり、露光未露光の差が小さくなってハイライト再現性が不充分であるという問題もあった。
【0004】
例えば、現像ラチチュードについては、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料、すなわち、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、オニウム塩やキノンジアジド化合物類とを含み、このオニウム塩やキノンジアジド化合物類が、未露光部(画像部)でバインダー樹脂との相互作用により溶解阻止剤として働き、且つ、露光部(非画像部)では、光によって分解して酸を発生し、溶解促進剤として働くという機能を有する従来の平版印刷版材料では殆ど問題となってはいなかった。
【0005】
一方、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料においては、赤外線吸収剤等は、未露光部(画像部)の溶解阻止剤として働くのみで、露光部(非画像部)の溶解を促進するものではない。従って、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料において、十分な感度を確保するためには、露光部の溶解性が高くなるように、バインダー樹脂としてあらかじめアルカリ現像液に対する溶解性の高いものを使用する必要がある。その結果、未露光部分の溶解性をも高くなってしまい、表面を擦るなどのキズが付いたときの耐溶解性が劣り、膜減りとしてキズ痕が顕在化する。一方、表面のキズによる膜減りを抑えるためには感光層の溶解性を低下させる手段を講じる必要があり、感度を低下させてしまい、感度と耐キズ性が両立しないといった問題を抱えている。
【0006】
更にそのような問題を解決するため、特許文献1(特開平10−250255号公報)には上部に画像形成時の溶解性の変化の大きな感熱層を設けて、下層にアルカリ溶解性の高い層を設ける事が開示されており改良効果が見出されているが、感度と耐傷性の両立に関しては未だ満足できるレベルにはない。
【0007】
一方、重層型の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料としては、特許文献2(特開平11−218914号公報)において、特定の構造を有するバインダーを下層に利用した重層型感光性画像形成材料が開示されているが耐傷性については何ら触れられていない。また、特許文献3(米国特許第6242156号明細書)では支持体の凹凸に起因する表面粗さ(Ra)が0.2ミクロン以上の感放射線層を有し、低粘着性で優れたブロック耐性の平版印刷版が開示されているが、これはいわゆる無処理型に関するものであり、サーマルポジ型に関する実施例の記載はない。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−250255号公報
【特許文献2】
特開平11−218914号公報
【特許文献3】
米国特許第6242156号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、画像形成時現像ラチチュードに優れ、高感度かつ耐傷性に優れたダイレクト製版用の感熱性平版印刷版を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、感熱性平版印刷版の上部感熱層表面に微細な突起を特定の個数有することにより、上記目的が達成されることを見出した。
即ち、本発明は、下記構成により達成される。
【0011】
(1) 親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料を含み露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増加する上部感熱層とを有する感熱性平版印刷版であって、上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
(2) 前記上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を形成する手段として、上部感熱層に粒子状物質を含有することを特徴とする前記(1)に記載の感熱性平版印刷版。
(3) 前記上部感熱層に、下層に含有するアルカリ可溶性樹脂と同一のアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の感熱性平版印刷版。
【0012】
水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料を含み露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増加する上部感熱層とを有する感熱性平版印刷版は、上部感熱層を薄くすることにより感度を向上させることができるが、その反面耐傷性が低下する。耐傷性を向上させるために低下する上部感熱層を厚くすると感度が低下する。即ちこのような感熱性平版印刷版は、感度と耐傷性がトレードオフの実情にあった。
しかしながら本発明の感熱性平版印刷版は、上部感熱層表面に上部感熱層の凹凸に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することにより、感度と耐傷性の双方を向上させることができた。
この作用機構は明確ではないが、上部感熱層表面に上部感熱層の凹凸に起因する微細な突起を有することにより、擬似的に上部感熱層を厚くしたのと同じ効果が得られ耐傷性が向上し、かつ、感度は突起間の谷底部の厚さに依存するため感度低下の懸念はないものと推測される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の感熱性平版印刷版における感熱層は、積層構造を有し、表面(露光面)に近い位置に設けられている上部感熱層と、支持体に近い側に設けられているアルカリ可溶性樹脂を含有する下層とを有しており、上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することを特徴とする。
【0014】
このような突起を形成する手段として、上層に微粒子を添加して、粒子状物質を含有させる方法がある。添加する微粒子は無機粒子、金属粒子でもよいし有機粒子であってもよい。
前記無機粒子としては、例えば酸化鉄、酸化亜鉛、二酸化チタン、ジルコニアなどの金属酸化物;無水ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム及び含水ケイ酸アルミニウムなどそれ自体は可視域に吸収を持たないホワイトカーボンとも呼ばれているケイ素含有酸化物;クレー、タルク、カオリン、ふっ石などの粘土鉱物粒子等が使用できる。また、前記金属粒子としては、例えば鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等が使用できる。
【0015】
前記無機粒子又は金属粒子の平均粒径は、1μm以下程度、0.01〜1μmが好ましく、0.05〜0.2μmがさらに好ましい。無機粒子又は金属粒子の平均粒径が、0.01μmを下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。1μmを上回ると印刷物の解像度が悪くなったり、下層との接着性が悪くなったり、表面付近の粒子が取れ易くなったりする。
前記無機粒子又は金属粒子の含有量は、上部感熱層固形分に対し、1〜30体積%程度であり、2〜20体積%がさらに好ましい。含有量が1体積%を下回ると凹凸の形成が不十分で耐傷性に対する効果が無い。30体積%を上回ると上部感熱層の強度が低下して耐刷性が低下する。
【0016】
前記有機粒子としては、特に限定はしないが粒状物の有機粒子として樹脂粒子が使用できる。使用の際に次の注意を払うことが必要である。樹脂粒子を分散させる際に溶剤を用いるときはその溶剤に溶解しない樹脂粒子を選択するか、樹脂粒子を溶解しない溶剤を選択する必要がある。樹脂粒子を分散又は塗布させるときの熱により溶融したり、変形したり、分解しないような物を選択する必要がある。これらの注意点を軽減する物としては、架橋された樹脂粒子が好ましく使用することができる。
前記有機粒子の平均粒径は、0.01〜1μm程度であり、0.05〜0.2μmがさらに好ましい。
前記有機粒子の含有量は、上部感熱層全固形分に対し、1〜30体積%程度であり、2〜20体積%がさらに好ましい。
【0017】
前記有機粒子としては、ポリスチレン粒子、シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。架橋された樹脂粒子としては、例えば、2種以上のエチレン性不飽和モノマーからなるマイクロゲル、スチレンとジビニルベンゼンとからなる架橋樹脂粒子、メチルメタクリレートとジエチレングリコールジメタクリレートからなる架橋樹脂粒子等、つまり、アクリル樹脂のマイクロゲル、架橋ポリスチレン及び架橋メチルメタクリレート等が挙げられる。これら有機粒子は、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法などの一般的な方法で調製される。
【0018】
突起を形成させる別の手段として、上部感熱層に用いる高分子化合物に、2種類以上の相分離する高分子化合物をブレンドして用いる事が出来る。相分離する高分子化合物は塗液中では均一に溶解しているが、塗布乾燥の際に分離し、添加量の少ない側の高分子化合物が球状に相分離し粒子を添加したのと同様の効果がある。お互い相分離する高分子化合物の具体的な組み合わせとしては、フェノール性水酸基を有する高分子化合物とスルホンアミド基を有する高分子化合物の組み合わせが好ましい。
【0019】
フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0020】
スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO−と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
フェノール性水産基を有する高分子化合物とスルホンアミド基を有する高分子化合物の混合比は1:99〜40:60が好ましく、5:95〜30:70が更に好ましく、スルホンアミド基を有する高分子化合物が少ない側の成分である事が好ましい。
【0021】
突起を形成させるさらに別の手段として、上部感熱層塗布時に塗布溶剤で下層のアルカリ可溶性樹脂を部分的に溶出させることにより、上部感熱層が乾膜になるときに、下層から溶出したアルカリ可溶性樹脂が上部感熱層のアルカリ可溶性樹脂と相分離し、球状の形態となるために、粒子を添加したのと同様の効果を得ることができる。この場合も、前記2種類以上のアルカリ可溶性樹脂を相分離させる方法と同じく、フェノール性水酸基を有する高分子化合物とスルホンアミド基を有する高分子化合物の組み合わせが好ましい。好ましくは上部感熱層のアルカリ可溶性樹脂としてフェノール性水酸基を有する高分子化合物、下層のアルカリ可溶性樹脂としてスルホンアミド基を有する高分子化合物を選択することが望ましい。
【0022】
ここでいう突起の定義として重要なのは、上部感熱層に凹凸が形成されて表面突起となっていることである。支持体の凹凸、下層の凹凸による突起は、本発明で定義する突起に含めない。一般には、断面の顕微鏡写真で判別することができる。更に突起の高さは少なくとも0.05μm以上であることが好ましいが、必ずしも限定されない。
突起の個数は、0.1個/μm以上7個/μm以下であることが必要だが、好ましくは0.2個/μm以上3個/μm以下である。
【0023】
[アルカリ可溶性高分子]
本発明において、上部感熱層及び下層に使用される水不溶性且つアルカリ水可溶性の高分子化合物(以下、適宜、アルカリ可溶性高分子と称する)とは、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。従って、本発明に係る上部感熱層及び下層は、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものである。
ここで用いられるアルカリ可溶性高分子としては、従来公知のものであれば特に制限はないが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子内に有する高分子化合物であることが好ましい。
例えば以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、前述のものが挙げられる。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を得るために用いるフェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。
【0025】
かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0026】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、前述のものが挙げられる。
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に活性イミド基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0027】
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0028】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0029】
本発明においてアルカリ可溶性高分子が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0030】
上部感熱層では未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点においてフェノール性水酸基を有する樹脂が望ましく、更に好ましくはノボラック樹脂である。また、もう1種類のアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する樹脂と相溶性が低いことからアクリル樹脂であることが好ましく、更に好ましくはスルホアミド基を有するアクリル樹脂である。
下層で用いられるアルカリ可溶性高分子としては、アクリル樹脂が好ましい。さらに、このアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましく、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上部感熱層中のアルカリ可溶性高分子化合物は、併せて50〜90質量%の添加量で用いられる。
アルカリ可溶性高分子の添加量が50質量%未満であると感熱層の耐久性が悪化し、また、90質量%を超えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
また、アルカリ性水溶液に対し溶解速度の異なる2種類のアルカリ可溶性高分子化合物の混合比は自由である。
好ましくは、アルカリ可溶性高分子化合物中、未露光部では強い水素結合性を生起し露光部において一部の水素結合が容易に解除されるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が60%〜99.8%で用いられる。
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が60%以下であると、画像形成性が低下する。また、99.8%以上であると、本発明の効果が期待できない。
【0032】
なお、本発明において用いられるアルカリ可溶性高分子化合物は、上部感熱層と下層とで同一であることが好ましい。
【0033】
〔赤外線吸収染料〕
本発明において、感熱層に用いられる赤外線吸収染料は、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収染料として知られる種々の染料を用いることができる。
【0034】
本発明に係る赤外線吸収染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0035】
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号各公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号各公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0036】
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号各公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が、特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0037】
これらの赤外線吸収染料は、上部感熱層のみならず、下層にも添加することができる。下層に赤外線吸収染料を添加することで下層も感熱層として機能させることができる。下層に赤外線吸収染料を添加する場合には、上部の感熱層におけるのと互いに同じ物を用いてもよく、また異なる物を用いてもよい。
また、これらの赤外線吸収染料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。別の層とする場合、感熱層に隣接する層へ添加するのが望ましい。また、染料と前記アルカリ可溶性樹脂とは同一の層に含まれるのが好ましいが、別の層でも構わない。
添加量としては、上部感熱層の場合、印刷版材料全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1.0〜30質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を超えると上部感熱層の均一性が失われ、上部感熱層の耐久性が悪くなる。
【0038】
下層の場合、下層全固形分に対し0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。下層に赤外吸収染料を添加すると下層の溶解性が低下するが、赤外吸収染料を添加することで露光時に熱による下層の溶解性向上が期待できる。但し、支持体近傍の0.2〜0.3μmの領域では露光時に熱による溶解性向上が起こらず、赤外吸収染料添加による下層の溶解性低下が感度を低下させる要因となる。従って、先に示した添加量の範囲の中においても、下層の溶解速度が30nmを下回る添加量は好ましくない。
【0039】
〔その他の添加剤〕
前記ポジ型感熱層の下層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。また上部感熱層においても、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤は下層のみに含有させてもよいし、上部感熱層のみに含有させてもよいし、両方の層に含有させてもよい。以下に、添加剤の例を挙げて説明する。
【0040】
〔溶解性阻害化合物〕
本発明の感熱性平版印刷版は、そのインヒビション(溶解性阻害)を高める目的で、該画像記録層に、種々のインヒビターを含有させることができる。
該インヒビターとしては特に限定されないが、4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール系化合物等が挙げられる。
【0041】
4級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアリールアンモニウム塩、ジアルキルジアリールアンモニウム塩、アルキルトリアリールアンモニウム塩、テトラアリールアンモニウム塩、環状アンモニウム塩、二環状アンモニウム塩が挙げられる。
具体的には、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトララウリルアンモニウムブロミド、テトラフェニルアンモニウムブロミド、テトラナフチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラステアリルアンモニウムブロミド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルトリエチルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムブロミド、3−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ジベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ジステアリルジメチルアンモニウムブロミド、トリステアリルメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ヒドロキシフェニルトリメチルアンモニウムブロミド、N−メチルピリジニウムブロミド等が挙げられる。特に特願2001−226297号、特願2001−370059、特願2001−398047明細書記載の4級アンモニウム塩が好ましい。
【0042】
4級アンモニウム塩の添加量は画像記録層の全固形分量に対して固形分で0.1〜50質量%であることが好ましく、さらには、1〜30質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満では溶解性阻害効果が少なくなり好ましくない。また、50質量%を超えて添加した場合は、バインダーの製膜性に悪影響を与えることがある。
【0043】
ポリエチレングリコール化合物としては、特に限定されないが、下記構造のものが挙げられる。
【0044】
−{−O−(R−O−)−R
【0045】
(Rは多価アルコール残基又は多価フェノール残基、Rは水素原子、C 25の置換基を有しても良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキロイル基、アリール基又はアリーロイル基、Rは置換基を有しても良いアルキレン残基を示す。mは平均で10以上、nは1以上4以下の整数である。)
【0046】
上記構造のポリエチレングリコール化合物の例としては、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアリールエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリプロピレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールグリセリンエステル、ポリプロピレングリコールグリセリンエステル類、ポリエチレンソルビトールエステル類、ポリプロピレングリコールソルビトールエステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール化エチレンジアミン類、ポリプロピレングリコール化エチレンジアミン類、ポリエチレングリコール化ジエチレントリアミン類、ポリプロピレングリコール化ジエチレントリアミン類が挙げられる。
【0047】
これらの具体例を示すと、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール10000、ポリエチレングリコール20000、ポリエチレングリコール5000、ポリエチレングリコール100000、ポリエチレングリコール200000、ポリエチレングリコール500000、ポリプロピレングリコール1500、ポリプロピレングリコール3000、ポリプロピレングリコール4000、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールエチルエーテル、ポリエチレングリコールフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジフェニルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールジラウリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールジステアリルエーテル、ポリエチレングリコールベヘニルエーテル、ポリエチレングリコールジベヘニルエーテル、ポリプロピレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールエチルエーテル、ポリプロピレングリコールフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジエチルエーテル、ポリプロピレングリコールジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールラウリルエーテル、ポリプロピレングリコールジラウリルエーテル、ポリプロピレングリコールノニルエーテル、ポリエチレングリコールアセチルエステル、ポリエチレングリコールジアセチルエステル、ポリエチレングリコール安息香酸エステル、ポリエチレングリコールラウリルエステル、ポリエチレングリコールジラウリルエステル、ポリエチレングリコールノニル酸エステル、ポリエチレングリコールセチル酸エステル、ポリエチレングリコールステアロイルエステル、ポリエチレングリコールジステアロイルエステル、ポリエチレングリコールベヘン酸エステル、ポリエチレングリコールジベヘン酸エステル、ポリプロピレングリコールアセチルエステル、ポリプロピレングリコールジアセチルエステル、ポリプロピレングリコール安息香酸エステル、ポリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、ポリプロピレングリコールラウリル酸エステル、ポリプロピレングリコールジラウリル酸エステル、ポリプロピレングリコールノニル酸エステル、ポリエチレングリコールグリセリンエーテル、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル、ポリエチレングリコールソルビトールエーテル、ポリプロピレングリコールソルビトールエーテル、ポリエチレングリコール化エチレンジアミン、ポリプロピレングリコール化エチレンジアミン、ポリエチレングリコール化ジエチレントリアミン、ポリプロピレングリコール化ジエチレントリアミン、ポリエチレングリコール化ペンタメチレンヘキサミンが挙げられる。
【0048】
ポリエチレングリコール系化合物の添加量は感熱層(画像記録層)の全固形分量に対して固形分で0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満では溶解性阻害効果が少なく好ましくない。また50質量%を超える量を添加した場合、バインダーと相互作用できないポリエチレングリコール化合物が現像液の浸透を促進し、画像形成性へ悪影響を与えることがある。
【0049】
また、上記インヒビション(溶解性阻害)改善の施策を行った場合、感度の低下が生じるが、この場合、ラクトン化合物を添加物することが有効である。このラクトン化合物は、露光部に現像液が浸透した際、現像液とラクトン化合物が反応し、新たにカルボン酸化合物が発生し、露光部の溶解に寄与して感度が向上するものと考えられる。
ラクトン化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(L−I)及び一般式(L−II)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化1】
Figure 2004086138
【0051】
【化2】
Figure 2004086138
【0052】
一般式(L−I)及び一般式(L−II)において、X、X、X及びXは、環の構成原子又は原子団であって、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に置換基を有してもよく、かつ一般式(L−I)におけるX、X及びXの少なくとも一つ及び一般式(L−II)におけるX、X、X及びXの少なくとも一つは、電子吸引性置換基又は電子吸引性基で置換された置換基を有する。
、X、X及びXで表される環の構成原子又は原子団は、環を形成するための二つの単結合を有する非金属原子又は該非金属原子を含む原子団である。
好ましい非金属原子又は非金属原子団は、メチレン基、スルフィニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、硫黄原子、酸素原子及びセレニウム原子から選ばれる原子又は原子団であって、より好ましくは、メチレン基、カルボニル基及びスルホニル基から選ばれる原子団である。
【0053】
一般式(L−I)におけるX、X及びXの少なくとも一つ又は一般式(L−II)におけるX、X、X及びXの少なくとも一つは、電子吸引性基を有する。本明細書において電子吸引性置換基は、ハメットの置換基定数σpが正の価を取る基を指す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry, 1973, Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。ハメットの置換基定数σpが正の価を取る電子吸引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロアルキル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、オキソ基、ホスホリル基等が挙げられる。
【0054】
好ましい電子吸引性基は、アミド基、アゾ基、ニトロ基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基、ニトリル基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜9のアルキルスルホニル基、炭素数6〜9のアリールスルホニル基、炭素数1〜9のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜9のアリールスルフィニル基、炭素数6〜9のアリールカルボニル基、チオカルボニル基、炭素数1〜9の含フッ素アルキル基、炭素数6〜9の含フッ素アリール基、炭素数3〜9の含フッ素アリル基、オキソ基及びハロゲン元素から選ばれる基である。
より好ましくは、ニトロ基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基、ニトリル基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数6〜9のアリールスルホニル基、炭素数6〜9のアリールカルボニル基、オキソ基及びハロゲン元素から選ばれる基である。
以下に、一般式(L−I)及び一般式(L−II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0055】
【化3】
Figure 2004086138
【0056】
【化4】
Figure 2004086138
【0057】
一般式(L−I)及び一般式(L−II)で表される化合物の添加量は、感熱層の全固形分量に対して固形分で0.1〜50質量%が好ましく、さらには、1〜30質量%がより好ましい。0.1質量%未満では効果が少なく、50質量%を超えて添加した場合、画像形成性が劣る。なお、この化合物は現像液と反応するため、選択的に現像液を接触することが望まれる。
このラクトン化合物は、いずれか一種を用いても、併用してもよい。また2種類以上の一般式(L−I)の化合物、又は2種類以上の一般式(L−II)の化合物を合計添加量が上記範囲内で任意の比率で併用してもよい。
また、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができる。
【0058】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974) 、T. S. Balet al, Polymer, 21, 423(1980) 、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号各明細書、特開平3−140140号公報に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468(1984)、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf.Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号各明細書に記載のホスホニウム塩、J. V.Crivello et al,Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31 (1988)、欧州特許第104,143号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、J. V.Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivelloet al. J. Org.Chem., 43, 3055 (1978)、W. R. Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 22, 1789 (1984) 、J. V. Crivello et al, Polymer  Bull., 14, 279 (1985) 、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 14(5) ,1141(1981)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed.,17, 2877 (1979) 、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号各明細書に記載のスルホニウム塩、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 17, 1047 (1979) に記載のセレノニウム塩、C. S.Wen et al, Teh,Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものがあげられる。
【0059】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0060】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1、2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号各明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0061】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、及び特公昭49−17481号各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0062】
o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは印刷版材料全固形分に対し、1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0063】
また、感熱層表面の溶解阻止性の強化とともに表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用すること好ましい。
添加量としては、層材料中に占める割合が0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0064】
〔現像促進剤〕
また、感度を更に向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0065】
更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号各公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の印刷版材料中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0066】
〔界面活性剤〕
本発明における上部感熱層および下層中には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許第950517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特願2001−247351号明細書に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0067】
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の印刷版材料中に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0068】
〔焼出し剤/着色剤〕
本発明の感熱性平版印刷版における上部感熱層及び下層中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0069】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、印刷版材料全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で印刷版材料中に添加することができる。
【0070】
〔可塑剤〕
更に本発明の感熱性平版印刷版における上部感熱層及び下層中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0071】
〔ワックス剤〕
本発明の感熱性平版印刷版における上部感熱層及び下層中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6117913号明細書、特願2001−261627号明細書、特願2002−032904号明細書、特願2002−165584号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることが出来る。
添加量として好ましいのは、層を形成する材料中に占める割合が0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0072】
本発明の感熱性平版印刷版における上部感熱層及び下層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
【0073】
また、塗布に用いる溶剤としては、原則的に、上部感熱層に用いるアルカリ可溶性高分子と下層に用いるアルカリ可溶性高分子に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましいが、新たな機能を付与するために積極的に部分相溶を行う事も可能である。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる共重合体と、上部感熱層に含まれるアルカリ可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法、上部感熱層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。以下、これらの方法について詳述するが、2つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
【0074】
下層に含まれる共重合体と上部感熱層に含まれるアルカリ水溶液可溶性樹脂との溶剤溶解性の差を利用する方法は、アルカリ水溶液可溶性樹脂を塗布する際に、下層に含まれる特定共重合体及びこれと併用される共重合体のいずれもが不溶な溶媒系を用いるものである。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、メチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等のアルカリ水溶液可溶性樹脂を溶解する溶剤に不溶な下層成分を構成する特定モノマーを共重合成分として含む共重合体を選択し、該下層成分を構成する共重合体を溶解する溶剤系を用いて該共重合体主体とする下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ水溶液可溶性樹脂を主体とする上部感熱層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノ−ル等下層成分を溶解しない溶剤を用いて塗布することにより二層化が可能になる。
【0075】
一方、二層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法は、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エア−を吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロ−ル(加熱ロ−ル)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギ−を与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
2つの層が本発明の効果を十分に発揮するレベルにおいて層間を部分的に相溶させる方法としては、上記溶剤溶解性の差を利用する方法、2層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法何れにおいても、その程度を調整する事によって可能となる。
【0076】
支持体に塗布する塗布液は、これらの成分を好適な溶媒に溶解して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
上部感熱層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、上部感熱層塗布方法は非接触式である事が望ましい。また接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いる事も可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布する事が望ましい。
【0077】
この感熱性平版印刷版の支持体上に塗布される下層を構成する全材料の塗布量は、0.5〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.6〜2.5gの範囲である。0.5g/m未満であると耐刷性が低下する原因となり、4.0g/mを超えると画像再現性が劣化したり感度が低下したりするため好ましくない。
また上部感熱層を構成する全材料の塗布量は0.05g/m〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.08〜0.7gの範囲である。0.05g/m未満であると現像ラチチュード、耐傷性が低下する原因となり、1.0g/mを超えると感度が低下するため好ましくない。
上下層を合わせた塗布量としては、0.6g/m〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.7〜2.5gの範囲である。0.6g/m未満であると耐刷性が低下する原因となり、4.0g/mを超えると画像再現性が劣化したり感度が低下したりするため好ましくない。
【0078】
〔支持体〕
本発明の感熱性平版印刷版に使用される親水性支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0079】
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。
【0080】
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0081】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0082】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/mより少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0083】
本発明に適用される感熱性平版印刷版は、支持体上に少なくともポジ型上部感熱層と下層の2層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0084】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/mが適当であり、好ましくは5〜100mg/mである。上記の被覆量が2mg/mよりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/mより大きくても同様である。
【0085】
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
【0086】
上記のようにして作成された感熱性平版印刷版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0087】
〔アルカリ現像処理工程〕
本発明の製版方法における現像工程で好適に用いられるアルカリ現像処理液について説明する。前記アルカリ現像処理液は、ノニオン性界面活性剤及び塩基を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0088】
(ノニオン性界面活性剤)
本発明においては、アルカリ現像処理液にノニオン性界面活性剤を含有させることにより、アルカリ濃度を上げた現像能力の高い液すなわちオーバー条件で現像処理しても、画像部のアルカリ現像処理液に対する耐溶解性が維持され、外傷に対する現像安定性が向上するという利点が得られる。これは、アルカリ可溶性高分子化合物とノニオン性界面活性剤との相互作用に起因するものと推測される。この相互作用は、ノニオン性界面活性剤がエチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖を含んでいる場合に強く働き、エチレンオキシド鎖を含んでいる場合に特に強く働く。これは、アルカリ可溶性基、特にフェノール性水酸基とエチレンオキシド鎖が強く相互作用するためであると推測される。
【0089】
本発明におけるノニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、従来公知のものであれば、いずれも用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0090】
これらの具体例を示すと、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。以上の界面活性剤の内、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。
【0091】
これらのノニオン性界面活性剤の前記アルカリ現像処理液に対する添加量は、好ましくは、0.001〜5質量%であり、より好ましくは、0.01〜3質量%であり、特に好ましくは、0.1〜3質量%である。前記添加量が、0.001質量%より少ない場合には、ノニオン性界面活性剤が有効に作用しなくなることがあり、5質量%よりも多い場合には、相互作用が強すぎ、現像されなくなることがある。また、これらのノニオン性界面活性剤の重量平均分子量は、300〜50,000が好ましく、500〜5,000が特に好ましい。これらのノニオン性界面活性剤は単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0092】
本発明において、前記ノニオン性界面活性剤は、下記一般式(I) で表される化合物が好ましい。
一般式(I)   R−O(CHCHRO)−(CHCHRO)m−(CHCHRO)n−R
一般式(I) 式中、R 〜R は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基、カルボニル基、カルボキシレート基、スルホニル基、又はスルホネート基を表す。l,m,nは0以上の整数を表す。但し、l,m,nの総てが0であることはない。
【0093】
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基等が挙げられ、前記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基等が挙げられ、前記アルキニル基の具体例としては、アセチル基、プロピニル基等が挙げられ、前記アリール基の具体例としては、フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
【0094】
一般式(I) で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のホモポリマー、エチレングリコール、プロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。前記共重合体の比率は、10/90〜90/10が現像液への溶解性と塗布溶媒への溶解性の両立の点から好ましい。また、共重合体の中でもグラフトポリマー、ブロックポリマーが、非画像部のアルカリ現像液に対する溶解性と画像部のアルカリ現像液に対する耐溶解性との両立の点から好ましい。
【0095】
一般式(I) で表される化合物のうち、画像部のアルカリ現像液に対する耐溶解性の点から、特に下記一般式(II)で表されるポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体が好ましい。
一般式(II)  HO−(CO)−(CO)−(CO)−H
一般式(II)式中、a,b,cは、それぞれ、1〜10,000の整数を表す。本発明に好適な重合体は、総分子に対するオキシエチレンの割合が40〜80質量%、好ましくは40〜60質量%であり、ポリオキシプロピレンの分子量としては1,000〜4,000、好ましくは2,000〜3,500の範囲が特に優れている。
【0096】
(塩基)
本発明に係るアルカリ現像処理液は、その主成分として塩基が含有される。前記塩基としては、従来より公知のアルカリ剤、例えば、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤等が挙げられる。無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等が挙げられる。
【0097】
有機アルカリ剤としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0098】
前記塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの塩基の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、これらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0099】
本発明においては、現像性向上のため、前記アルカリ現像処理液のアルカリ濃度を上げ、所謂オーバー条件で処理することが好ましいが、このためには、前記塩基の添加量を調整すればよい。即ち、前記塩基を、前記アルカリ現像処理液が強アルカリ性、例えば、pHが12.5〜13.5になるように、好ましくはpHが12.8〜13.3になるように、前記アルカリ現像処理液に添加すればよい。
【0100】
(その他の成分)
本発明に係るアルカリ現像処理液は、塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は、塩基にケイ素化合物を混ぜ系中でケイ酸アルカリとしたものを含有した、所謂「シリケート現像液」としてもよい。また、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基とを含有した所謂「ノンシリケート現像液」としてもよい。
【0101】
−ケイ酸アルカリ−
前記ケイ酸アルカリとしては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられ、単独又は組合せて用いることができる。ケイ酸アルカリのSiO/MOモル比(Mはアルカリ金属を表す。)は、0.5〜3.0が好ましく、1.0〜2.0が特に好ましい。上記のモル比が3.0を越えるにつれて現像性が低下する傾向がある。また上記モル比が0.5より小さくなるにつれてアルカリ強度が高くなっていくので、感光性平版印刷版用原版の支持体として汎用されているアルミニウム板等の金属をエッチングする弊害が出てくるようになる。シリケート現像液中のケイ酸アルカリの濃度は、1〜10質量%が好ましく、1.5〜7質量%が特に好ましい。10質量%より高くなると沈殿や結晶が生成しやすくなり、また廃液時の中和に際してゲル化しやすくなるので廃液処理が煩雑になる。また、1質量%より低くなると現像力、処理能力が低くなる。
【0102】
−非還元糖−
ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基とを含有した所謂「ノンシリケート現像液」を用いて、前記赤外線感光性平版印刷版用原版の現像処理を行うと、該赤外線感光性平版印刷版用原版における感光層の表面を劣化させることがなく、該感光層の着肉性を良好な状態に維持することができる。また、前記赤外線感光性平版印刷版用原版は、現像ラチチュードが狭く、現像液pHによる画線幅等の変化が大きいが、前記ノンシリケート現像液にはpHの変動を抑える緩衝性を有する非還元糖が含まれているため、シリケートを含む現像処理液を用いた場合に比べて有利である。更に、前記非還元糖は、前記シリケートに比べて液活性度を制御するための電導度センサ−やpHセンサ−等を汚染し難いため、この点でも、前記ノンシリケート現像液は有利である。
【0103】
前記非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明において好適に用いることができる。なお、本発明においては、特開平8−305039号公報に記載された非還元糖を好適に使用することができる。
【0104】
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。更に、二糖類のマルトースに水素添加したマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等が好適に挙げられる。これらの非還元糖の中でも、トレハロース型少糖類、糖アルコールが好ましく、その中でも、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめ、等が適度なpH領域に緩衝作用があり、低価格である点で好ましい。
【0105】
本発明において、これらの非還元糖は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。前記非還元糖の前記ノンシリケート現像液中における含有量としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると十分な緩衝作用が得られず、30質量%を越えると高濃縮化し難く、また原価アップの問題が出てくる。また、前記非還元糖と組み合わせて用いられる塩基としては、上記に列挙した塩基が好適に使用される。ここで使用される塩基の前記ノンシリケート現像液中における含有量としては、所望のpH、前記非還元糖の種類、添加量等に応じて適宜決定される。なお、還元糖は、前記塩基と併用すると、褐変し、pHも徐々に低下し、現像性が低下するため、本発明では好ましくない。
【0106】
また、本発明においては、前記ノンシリケート現像液として、非還元糖と塩基との併用に代えて、非還元糖のアルカリ金属塩を主成分として用いることもできる。前記非還元糖のアルカリ金属塩は、前記非還元糖と、アルカリ金属水酸化物とを混合し、該非還元糖の融点以上に加熱し脱水すること、あるいは、前記非還元糖とアルカリ金属水酸化物との混合水溶液を乾燥することによって得られる。
【0107】
本発明においては、前記ノンシリケート現像液に、前記非還元糖以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を併用することができる。前記弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましく、例えば、Pergamon  Press社発行のIONISATION  CONSTANTS  OF  ORGANIC  ACIDS  IN  AQUEOUSSOLUTION等に記載されているものから選択できる。
【0108】
具体的には、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノ−ル−1(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)等のアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)等のアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルソノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)等のフェノール性水酸基を有する化合物、
【0109】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)等のオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)等の核酸関連物質、
【0110】
他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)等が好適に挙げられる。これらの弱酸の中でも、スルホサリチル酸、サリチル酸が好ましい。
【0111】
これらの弱酸に組み合わせる強塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好適に挙げられる。これらの強塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。前記強塩基は、適宜選択した濃度及び組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0112】
本発明においては、現像性の促進や現像カスの分散、感熱性平版印刷版原版の画像部の親インキ性を高める等の目的で、必要に応じて、現像安定剤、有機溶剤、還元剤、有機カルボン酸、硬水軟化剤、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤等、更に、公知の防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤等をその他の成分として前記アルカリ現像処理液に添加してもよい。
【0113】
−現像安定化剤−
前記現像安定化剤としては、例えば、特開平6−282079号公報に記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド等のヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。また、特開昭50−51324号公報に記載のアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載の水溶性の両性高分子電解質等が挙げられる。
【0114】
更に、特開昭59−84241号公報に記載のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報に記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報に記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報に記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報に記載のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報に記載の酸又はアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物等が挙げられる。
【0115】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、例えば、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが好ましく、5質量%以下のものがより好ましい。前記有機溶剤の具体例としては、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0116】
前記有機溶剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、該アルカリ現像処理液の総質量に対して0.1〜5質量%程度である。前記含有量は、前記界面活性剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量と密接な関係があり、前記有機溶剤の量が増すにつれ、前記界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは、前記界面活性剤の量を少なくし、前記有機溶剤の量を多くすると、該有機溶剤が完全に溶解せず、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0117】
−還元剤−
前記還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤等が挙げられる。これらの還元剤は、印刷版の汚れを防止するのに役立つ。前記有機還元剤の好ましい具体例としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジン等のアミン化合物等が挙げられる。前記無機還元剤の好ましい具体例としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸、亜ジチオン酸等の無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、汚れ防止効果が特に優れている点で、亜硫酸塩が好ましい。前記還元剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、該アルカリ現像処理液の総質量に対して0.05〜5質量%程度である。
【0118】
−有機カルボン酸−
前記有機カルボン酸としては、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸等が挙げられる。前記炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸の具体例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数8〜12のアルカン酸が特に好ましい。また、これらは、炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でもよいし、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。
【0119】
前記炭素原子数6〜20の芳香族カルボン酸の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等にカルボキシル基が置換された化合物等が挙げられ、より具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシナフトエ酸が特に好ましい。
【0120】
前記脂肪族カルボン酸及び前記芳香族カルボン酸は、水溶性を高める点で、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等として用いるのが好ましい。前記有機カルボン酸の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、特に制限はないが、通常0.1〜10質量%程度であり、0.5〜4質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、その添加効果が十分でなく、10質量%を越えても、それに見合う効果が得られない上、併用する別の添加剤の前記アルカリ現像処理液中への溶解を妨げることがある。
【0121】
−硬水軟化剤−
前記硬水軟化剤としては、例えば、ポリリン酸並びにそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸等のアミノポリカルボン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0122】
前記硬水軟化剤は、そのキレート化力と使用される硬水の硬度及び量によって前記アルカリ現像処理液中における最適含有量が変化するが、一般的には、0.01〜5質量%程度であり、0.01〜0.5質量%が好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であるとその添加効果が十分でないことがあり、5質量%を越えると、色抜け等画像部への悪影響が生じることがある。
【0123】
−その他の界面活性剤−
本発明においては、前記アルカリ現像処理液に前記ノニオン性界面活性剤の他に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を更に添加してもよい。
【0124】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
【0125】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。前記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
【0126】
前記フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有する。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
【0127】
以上の界面活性剤の内、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記界面活性剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、通常0.001〜10質量%であり、0.01〜5質量%が好ましい。
【0128】
前記アルカリ現像処理液は、以上説明した各成分の外、水を含有する。本発明における前記アルカリ現像処理液は、未使用時(保管時)には水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時には水で希釈するようにしておくと、運搬上有利である。この場合、前記アルカリ現像処理液の濃縮度は、前記各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0129】
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版の製版方法における後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0130】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0131】
本発明においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば、原画フィルムのフィルムエッジ跡等)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行われる。このような消去は、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0132】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニング処理する場合には、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0133】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m (乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0134】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引き等のいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0135】
【実施例】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
[感熱性平版印刷版原版の作製]
(実施例1)
[基板の作成1]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0136】
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
【0137】
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m であった。
【0138】
<下塗液組成>
・下記化合物                        0.3g
・メタノール                        100g
・水                              1g
【0139】
【化5】
Figure 2004086138
【0140】
得られたウエブ状の基板に以下の下層用塗布液1を塗布量が0.85g/mになるようバーコーターで塗布したのち178℃で35秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した後、上部感熱層用塗布液1を塗布量が0.22g/mになるようバーコーター塗布したのち、149℃で20秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、感熱性平版印刷版1を作成した。
【0141】
〔下層用塗布液1〕
N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/
アクリロニトリル/メタクリル酸メチル
(36/34/30:重量平均分子量50000、酸価2.65)        2.133g
シアニン染料A(下記構造)                    0.134g
4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン             0.126g
無水テトラヒドロフタル酸                     0.190g
p−トルエンスルホン酸                      0.008g
3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート                    0.032g
エチルバイオレットの対イオンを
6−ヒイドロキシナフタレンスルホンに変えたもの         0.781g
ポリマー1(下記構造)                          0.035g
メチルエチルケトン                     25.41g
1−メトキシ−2−プロパノール               12.97g
γ−ブチロラクトン                     13.18g
【0142】
【化6】
Figure 2004086138
【0143】
【化7】
Figure 2004086138
【0144】
〔上部感熱層用塗布液1〕
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、
重量平均分子量 4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有)             0.3479 g
シアニン染料A(上記構造)                      0.0192 g
エチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体
(37/37/26wt%) 30% MEK溶液               0.1403 g
ポリマー1(上記構造)                 0.015  g
ポリマー2(下記構造)                 0.00328 g
メチルエチルケトン                   10.39  g
1−メトキシ−2−プロパノール             20.78  g
【0145】
【化8】
Figure 2004086138
【0146】
感熱性平版印刷版1において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。上部感熱層部分の成分分析を行ったところ、下層に添加していたN−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミト゛/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体が検出された。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、40個観測され、0.4個/μmであった。
【0147】
(実施例2)
実施例1における上部感熱層用塗布液1を下記上部感熱層用塗布液2に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版2を作成した。
【0148】
〔上部感熱層用塗布液2〕
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、
重量平均分子量 4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有)            0.3478g
シアニン染料A(上記構造)                 0.0192g
特願平2001−398047明細書実施例2で用いられている
アンモニウム化合物                    0.0115g
メガファックF176(20%)、大日本インキ化学工業(株)製
(面状改良界面活性剤)                       0.022g
メチルエチルケトン                     13.07  g
1−メトキシ−2−プロパノール               6.79 g
【0149】
感熱性平版印刷版2において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。上部感熱層部分の成分分析を行ったところ、下層に添加していたN−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体が検出された。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、120個観測され、1.2個/μmであった。
【0150】
(実施例3)
実施例1における上部感熱層用塗布液1を下記上部感熱層用塗布液3に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版3を作成した。
【0151】
〔上部感熱層用塗布液3〕
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、
重量平均分子量 4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有)            0.3479g
シアニン染料A(上記構造)                   0.0192g
Nipol  SX1302(日本ゼオン株式会社製、スチレン粒子、
平均粒径0.12μm)                     0.015g
エチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体
(37/37/26wt%)30% MEK溶液                     0.1403g
メガファックF176(20%)、大日本インキ化学工業(株)製
(面状改良界面活性剤)                       0.022g
メガファックMCF−312(30%)、大日本インキ化学工業(株)製   0.011g
1−メトキシ−2−プロパノール               19.86  g
【0152】
感熱性平版印刷版3において、上部感熱層塗布時に微粒子を添加することで上部感熱層表面に微細な突起が発生した。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、30個観測され、0.3個/μmであった。
【0153】
(比較例1)
実施例1における上部感熱層用塗布液1を下記上部感熱層用塗布液4に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版4を作成した。
【0154】
〔上部感熱層用塗布液4〕
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、
重量平均分子量 4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有)            0.3478g
シアニン染料A(上記構造)                 0.0192g
特願平2001−398047明細書実施例2で用いられている
アンモニウム化合物                    0.0115g
メガファックF176(20%)、大日本インキ化学工業(株)製
(面状改良界面活性剤)                       0.022g
1−メトキシ−2−プロパノール               19.86  g
【0155】
感熱性平版印刷版4において、上部感熱層塗布時に下層を相溶させることなく、上部感熱層表面に突起は観測されなかった。
【0156】
(比較例2)
実施例1における上部感熱層用塗布液1を下記上部感熱層用塗布液5に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版5を作成した。
【0157】
〔上部感熱層用塗布液5〕
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、
重量平均分子量 4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有)            0.3479g
シアニン染料A(上記構造)                 0.0192g
Nipol LX407BP6(日本ゼオン株式会社製、有機顔料粒子、
平均粒径0.2μm)                      0.005g
エチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体
(37/37/26wt%)30% MEK溶液                     0.1403g
メガファックF176(20%)、大日本インキ化学工業(株)製
(面状改良界面活性剤)                       0.022g
メガファックMCF−312(30%)、大日本インキ化学工業(株)製   0.011g
1−メトキシ−2−プロパノール               19.86 g
【0158】
感熱性平版印刷版5において、上部感熱層塗布時に微粒子を添加することで上部感熱層表面に微細な突起が発生した。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、3個観測され、0.03個/μmであった。
【0159】
(実施例4)
実施例1における基板の作成方法を下記基板の作成2に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版6を作成した。
【0160】
[基板の作成2]
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、500C/dmの電気量で電気化学的な粗面化処理を行い、水洗した。次に、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い、水洗した。さらに、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dmの条件下で、陽極酸化皮膜量が2.5g/m相当となるように陽極酸化処理し、その後、水洗を行い、支持体(I)を作製した。支持体(I)の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.55μmであった。
【0161】
感熱性平版印刷版6において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。上部感熱層部分の成分分析を行ったところ、下層に添加していたN−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体が検出された。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、52個観測され、0.52個/μmであった。
【0162】
(実施例5)
実施例1における基板の作成方法を下記基板の作成3に変更した以外は実施例1と同様に感熱性平版印刷版7を作成した。
【0163】
[基板の作成3]
厚さ0.3mmのアルミニウム板(Fe;0.3%、Si;0.08%、Cu;0.001%、Ti;0.015%)をメジアン径25μmのパミス混濁液(比重1.1g/cm)を用い、毛径0.3mmの束植ブラシ3本(回転数、1本目250rpm、2本目200rpm、3本目200rpm)にて粗面化後、苛性ソーダ濃度26%、アルミニウムイオン濃度5%を含む苛性ソーダ水溶液にてAl溶解量が10g/mになるようエッチング処理を行い、流水で水洗し、硝酸1%水溶液で中和洗浄後、水洗した。これを硝酸濃度1%、Alイオン濃度0.5%の硝酸水溶液にて175c/dmの電気量で電気的粗面化を行った。その後、苛性ソーダ濃度26%、アルミニウムイオン濃度5%を含む苛性ソーダ水溶液にてAl溶解量が0.5g/mになるようエッチンク゛処理を行い、流水で水洗し、硫酸25%水溶液で中和洗浄後、水洗した。
次に、塩酸濃度0.5%、Alイオン濃度0.5%の塩酸水溶液にて50c/dmの電気量で追加的な電気的粗面化を行った。その後、苛性ソーダ濃度5%、アルミニウムイオン濃度0.5%を含む苛性ソーダ水溶液にてAl溶解量が0.1g/mになるようエッチング処理を行い、流水で水洗し、硫酸25%水溶液で中和洗浄後、水洗した。
更に、硫酸濃度15%、Alイオン濃度0.5%の硫酸水溶液にて、直流電解により陽極酸化皮膜量が2.5g/mになるよう連続直流電解を実施し、平版印刷版用の粗面化基板を作成した。
【0164】
感熱性平版印刷版7において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。上部感熱層部分の成分分析を行ったところ、下層に添加していたN−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体が検出された。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm当たりの突起の数を数えたところ、60個観測され、0.6個/μmであった。
【0165】
〔感度評価〕
得られた感熱性平版印刷版1〜7の感度を以下のようにして測定した。
感熱性平版印刷版を、Creo社製Trendsetterにてビーム強度2〜10Wの範囲、ドラム回転速度150rpmでベタ画像を描き込んだ後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12sで現像した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。
現像後の版を25倍のルーペで観察し、実質上印刷汚れにならないレベルの残膜の有無を評価し、残膜が観測されないところの露光ビーム強度から、実際の露光エネルギーを計算し、感度とした。露光エネルギーが小さいものほど高感度であると評価する。
【0166】
〔耐キズ性評価〕
得られた感熱性平版印刷版1〜7をHEIDON社製引っかき試験機を用いてサファイヤ(先端計1.0mm)に荷重をかけてプレートを引っかき、その後直ちに、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12sで現像した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。傷が目視で確認できなくなった荷重を耐キズ性の値とした。数値が大きいほど耐キズ性に優れていると評価する。
【0167】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた感熱性平版印刷版1〜7をCreo社製Trendsetterにてビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2Rを1:5に希釈し、電導度が37mS/cmになるまで炭酸ガスを吹き込んだ液及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12sで現像した。その後、現像液にDT−2R(1:5に希釈したもの)を適量加え、電導度を39mS/cmに調整し、同じくテストパターンを画像状に描き込んだ感熱性平版印刷版を現像した。更に電導度を2mS/cmづつ上げ、画像の現像による膜減りが顕著に観察されるまでこの作業を続けた。
この時、各電導度で現像した版を、現像不良の感熱層残膜に起因する汚れや着色がないかを確認し、良好に現像が行なえた現像液の電導度を決定した。次に、実質上耐刷に影響を及ぼさない程度に現像膜減りが維持される限界の電導度を決定した。
良好に現像が行なえた現像液の電導度と実質上耐刷に影響を及ぼさない程度に現像膜減りが維持される限界の電導度の幅を現像ラチチュードとした。
表1に感熱性平版印刷版1〜7の評価結果を示す。
【0168】
【表1】
Figure 2004086138
【0169】
【発明の効果】
本発明の感熱性平版印刷版は、上部感熱層表面に上部感熱層の凹凸に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することにより、画像形成時現像ラチチュードに優れ、高感度かつ耐傷性に優れている。

Claims (3)

  1. 親水性支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料を含み露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増加する上部感熱層とを有する感熱性平版印刷版であって、上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を0.1個/μm以上7個/μm以下有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
  2. 前記上部感熱層表面に上部感熱層の厚みの不均一に起因する微細な突起を形成する手段として、上部感熱層に粒子状物質を含有することを特徴とする請求項1記載の感熱性平版印刷版。
  3. 前記上部感熱層に、下層に含有するアルカリ可溶性樹脂と同一のアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の感熱性平版印刷版。
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