JP2004085221A - プレス用成形型及びレンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レンズ形状設計値に基づいて型形状設計値を決定する。(1)型形状設計値に基づいた加工入力値を加工機に入力することにより暫定型を作製し、暫定型の成形面の型中心から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が成形面に沿って上る方向に測定することにより型形状測定値を求め、加工入力値を補正し、補正した加工入力値を用いて実用成形型を作製する。(2)型形状設計値に基づいて暫定型を作製し、加熱した成形素材を成形して暫定レンズを作製し、作製した暫定レンズ面の中心部分から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が暫定レンズ面に沿って上る方向に測定することによりレンズ形状測定値を求め、型形状設計値を補正し、補正した型形状設計値を用いて実用成形型を作製する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレスによりレンズを成形するために用いる成形型の製造方法及びこの製造方法により得られた成形型を用いるレンズの製造方法に関する。
特に、精密プレスにより、成形後に研削や研磨を行なうことなく形状精度及び面精度の高いレンズが得られる成形型の製造方法と、この成形型を用いた、高密度の光ディスクに用いるピックアップ光学系等に用いられる超高精度の非球面レンズなどの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
所定の光学性能をもつレンズを成形するための成形型の作製、及びその精度の判断や補正については、以下の先行技術がある。
特開2002−96332号公報には、レンズの成形金型の設計方法が開示されている。この方法では、量産型を作る前段階として、まず、基準型を使って基準レンズを作成する。そして、基準型及び基準レンズから収集されたデータに基づいて量産暫定型を作成し、作成した量産暫定型で成形される暫定量産レンズを想定し、暫定量産レンズを光学シュミレーションにより光学評価する。そして、量産暫定型が許容範囲内の球面収差のレンズを生産できるようになるまで、量産暫定型の設計と作成を繰り返す。この方法では、量産暫定型でプレスを行なうことなく、量産型を設計することができる。しかし、この方法を適用するには、まず許容範囲内の光学性能を有する基準型を作製しその形状測定を行う必要がある。ところが、この公報には、基準型を作製し、形状測定を行う方法は開示されておらず、試行錯誤によるしかない。
【0003】
特開2002−96344号公報にも、レンズの成形金型の設計方法が開示されている。この方法では、所定の形状設計値に基づいて、暫定成形金型を作成し、それによってレンズを成形し、成形された暫定レンズの光学特性を測定する。得られた測定値と所望の光学特性とを比較し、その球面収差の差を検出する。検出の結果、所望の光学特性からの非球面収差値のズレ量を、非球面を規定する式の非球面定数のうち高次項の微少な変化量と球面収差値の変動量との関係を予め求めたテーブルに照らし合わせ、対応する非球面定数のうち高次項の微少な変化量を調整量とし、該調整量を暫定成形金型の非球面式の非球面定数に加算して新たな形状設計値として成形金型を設計する。
【0004】
この方法では、予め非球面式の非球面定数の高次項の微少な変化量と球面収差値の変動量との関係を求めたテーブルを用意する必要があり、このテーブルの確度を検証するためには、多くの型を加工し、それによって多くの多種のレンズをプレスして光学性能を測定する必要がある。更に、本先行技術は、金型が設計形状どおりに加工されているか否かの検証については開示していない。
【0005】
球面又は非球面を有するレンズを成形する設計段階においては、レンズに必要とされる光学性能にもとづき、レンズ素材の光学恒数(屈折率、分散)を決定し、更にレンズの第1面、第2面の形状、レンズ厚を含む、レンズ形状設計値が決定される。そして、得られたレンズ形状設計値に基づいて、レンズを成形するための成形型の形状設計値を決定する。その際、例えばガラスレンズの場合、ガラスの熱膨張係数と成形型の熱膨張係数は異なるので、プレス後のガラスの収縮など、成形に影響する要素を織り込んだうえで、上記レンズ形状設計値をもとにして、型の形状設計値を決定する。
【0006】
型の形状設計値が決まったら、その設計値に基づき、加工機に加工入力値を入力して型加工を行ない、暫定型を作製する。例えば、加工入力値は、型形状設計値に等しくすることができる。しかしながら、加工された暫定型の形状は、型形状設計値に一致しない場合がある。温度、湿度、気圧などの変動要因により、型材の物性や型加工に使われる加工機の精度が変動すること、及び、加工される型材の位置によって(光軸付近と、周縁付近とでは)加工抵抗が異なることによって、加工量がわずかに変化することなどが原因している。従って、そのような場合には、加工された暫定型を形状補正する必要がある。このとき、型加工の精度を確認するためには、暫定型の形状を精密に測定し、測定値と型形状設計値とを比較しなければならない。ここで、加工機とは、研削機、切削機などである。
【0007】
加工された暫定型の形状を正確に測定し、設計値との差を算定し、差を加工入力値にフィードバックすることにより、加工入力値を補正する。この補正値を用いて、再度、型加工を行なえば、型形状設計値に対して許容範囲以下の誤差を満足する、実用の型が加工できる。もし、再度型加工を行なっても型形状設計値との差が許容範囲以上であれば、上記を繰り返し行なうことになる。いずれにしても、加工された暫定型の形状を正確に測定することが重要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
球面又は非球面を有するレンズを成形するための成形型の成形面ような曲面を精密に測定するためには、触針式の測定機が用いられる。触針式の測定機には、例えば、図2に示すような先端形状を有し、先端角度が12〜90°であり、先端R(曲率半径)が2〜500μmであり、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、超硬などの材料で形成されたスタイラス(接触子)を用いる。そして、図1に示すように、スタイラスの先端を成形面の斜面を下り、底部からは斜面を上って形状を測定する。既存の触針式の測定機では、図3に示すように、スタイラスが接触する、測定対象の面との間の傾き角(θ)に制約がある。θ≦35°程度の場合には正確な測定が行なえるが、35°を超えると測定機の測定値は保証外となり、正確なデータが得られないか、又は測定して得たデータの信頼性が保証されていない。
【0009】
ところが、光学系によっては、特殊形状のレンズ(例えば、高い分解能を実現するために、凸面の盛り上がりの大きい光ピックアップレンズなど)を必要とする場合がある。このような特殊形状のレンズは、光学機能面として、触針式の面形状測定機器では保証されない、θ>35°となるような曲面を有する場合があり、そのような光学機能面を成形できる成形型を加工する必要がある。しかし、正確な型形状の測定値が得られないかぎり、正確な加工入力値の補正値は得られない。
【0010】
また、例え、型形状設計値との誤差が許容範囲となるような型が得られたとしても、その型を用いてガラス素材をプレス成形し、レンズを作製しても、そのレンズが必ずしも所望の光学性能を有しないことがある。これは、成形されたレンズ(暫定レンズ)が、当初決定したレンズ形状設計値との間に許容範囲以上の差を有していることに起因する。具体的には、プレス成形されたレンズはプレス成形後の冷却工程において収縮するが、この収縮の挙動がレンズ形状によって異なり、型形状設計値を求める際に、予測が困難であることによる。
【0011】
このとき、暫定レンズの形状を正確に測定し、そのレンズ形状測定値とレンズ形状設計値からの差を算定し、それをもとに、型形状設計値を補正することが必要になる。しかし、上記の成形面の場合と同様に、傾き角が35度を越えるレンズ曲面の形状測定は、保証範囲を外れており、精密な形状測定に課題があった。
【0012】
一方、近年、要望されるレンズには、傾き角が50度〜60度のものがあり、こうしたレンズ、及びこれらのレンズを成形するための型の形状を正確に測定することが課題であった。しかし、スタイラス先端が測定対象物(ワーク)に追従しているか否かは判断できず、信頼性のあるデータが得られているか否かが判断できなかった。
【0013】
形状測定に用いられる測定機としては、触針式のもののほかに、非接触のものがあり、非接触であればスタイラス先端が追従しているかを考慮する必要はない。しかるに、傾き角が大きくなると反射光を拾えず、データ収集ができない欠点がある。
【0014】
実際に加工される型の精度は、誤差0.1μm以下程度であることが要求される。同様に、成形されるレンズは、レンズ形状設計値に対し、誤差が0.1μm以下の精度が要求されている。従って、そうした高精度の面形状測定データが、従来にも増して重要となっているにも関わらず、従来の方法では高精度の面形状測定データはできず、所望の光学特性を有する成形型及びレンズの製造方法は困難であった。
【0015】
そこで本発明の目的は、傾き角が35度を越える曲面を有するレンズまたは成形型であっても精密な形状測定ができ、それにより、所望の形状を有する成形型を製造できる方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、傾き角が35度を越える曲面を有するレンズであっても、所望の形状に成形できるレンズの製造方法を提供することにある。
【0016】
上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
[請求項1]球面又は非球面を有するレンズを成形する成形型の製造方法において、
所望のレンズ光学性能に基づいてレンズ形状設計値を決定し、
決定したレンズ形状設計値に基づいて型形状設計値を決定し、
決定した型形状設計値に基づいた加工入力値を加工機に入力することにより暫定型を作製し、
作製した暫定型の成形面の型中心から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が成形面に沿って上る方向に測定することにより型形状測定値を求め、
求めた型形状測定値と型形状設計値とに差がある場合、その差に基づいて、加工入力値を補正し、かつ
補正した加工入力値を用いて実用成形型を作製し、
求めた形状測定値と型形状設計値とに実質的な差がない場合には、暫定型を実用成形型とする
ことを特徴とするプレス用成形型の製造方法(以下、第1のプレス用成形型の製造方法という)。
[請求項2]球面又は非球面を有するレンズを成形する成形型の製造方法において、
所望のレンズ光学性能に基づいてレンズ形状設計値を決定し、
決定したレンズ形状設計値に基づいて型形状設計値を決定し、
決定した型形状設計値に基づいて暫定型を作製し、
作製した暫定型を用いて、成形可能な温度に加熱した成形素材を成形することにより、暫定レンズを作製し、
作製した暫定レンズ面の中心部分から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が暫定レンズ面に沿って上る方向に測定することによりレンズ形状測定値を求め、
求めたレンズ形状測定値とレンズ形状設計値とに差がある場合、その差に基づいて、型形状設計値を補正し、かつ
補正した型形状設計値を用いて実用成形型を作製し、
求めたレンズ形状とレンズ形状設計値とに実質的な差がない場合には、暫定型を実用成形型とする
ことを特徴とする成形型の製造方法(以下、第2のプレス用成形型の製造方法という)。
[請求項3]請求項1または2に記載の方法により実用成形型を作製し、
得られた実用成形型に成形素材を供給し、
成形素材をプレス成形することによりレンズを得ることを特徴とする
球面又は非球面を有するレンズの製造方法。
[請求項4]傾き角35度以上の面を有するレンズを製造する請求項3に記載の製造方法。
[請求項5]得られたレンズの波面収差が0.04λrms以下である請求項3または4に記載の製造方法。
[請求項6]請求項5に記載の製造方法により製造された光ディスク用ピックアップレンズ。
[請求項7]請求項5に記載の製造方法により製造されたレンズを有する光ピックアップ。
[請求項8]傾き角35度以上の面を有するレンズ面の中心部分から有効径までの形状を、接触子を用いる形状測定機を用いて測定する方法であって、前記接触子が前記レンズ面に沿って上る方向に測定することを特徴とする測定方法。
【0017】
発明者らは、傾き角が35度を越えるレンズ曲面を有するレンズを作製する過程で、種々の形状を有するレンズ曲面や成形型の成形面の形状を触針式の形状測定機(触針式表面粗さ輪郭形状測定機)を用いて測定した。そして、成形型の成形面の場合、スタイラスが成形面を下る方向に測定した型形状測定値と上る方向に測定した型形状測定値に僅かながら違いがあることに気づいた。
そこで、成形面を下る方向に測定した型形状測定値に基づいて加工入力値を補正して作製した実用成形型と、成形面を上る方向に測定した型形状測定値に基づいて加工入力値を補正して作製した実用成形型とを用いて成形したレンズの精度について検証を行なった。その結果、成形面を上る方向に測定した型形状測定値に基づいて加工入力値を補正して作製した実用成形型を用いて成形したレンズの精度が、良好であることを見いだし、本発明を完成した。ここで、加工入力値とは、型の成形面を加工する加工機に入力する形状値であり、非球面式である場合、点列データである場合などがある。
【0018】
本発明の第1のプレス用成形型の製造方法では、作製した暫定型の成形面の型中心から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、スタイラスが成形面に沿って上る方向に測定することにより型形状測定値を求め、求めた型形状測定値と型形状設計値との差に基づいて、型の加工入力値を補正する。
また、本発明の第2のプレス用成形型の製造方法では、作製した暫定レンズ面の中心部分から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、スタイラスが暫定レンズの表面に沿って上る方向に測定することによりレンズ形状測定値を求め、求めたレンズ形状測定値とレンズ形状設計値との差に基づいて、型形状設計値を補正する。
【0019】
本発明の第1のプレス用成形型の製造方法において、「型中心から有効径まで」とは、成形面の中心位置から、レンズの有効径を決定する円の円周に向かって引いた垂線までの、成形面上の投影上の距離である。図1に示す成形型の成形面の右半分に相当する。
【0020】
測定は、スタイラスが曲面に上り方向に接触しながら行う。上り方向とは、スタイラスが測定する曲を登っていく方向である。すなわち、成形面が凸面の場合には、レンズ外周から型中心に向かう方向であり、成形面が凹面の場合には、型中心から外周に向かう方向に、スタイラスを移動させて測定する。このように測定することにより得られた型形状測定値に基づいて型の加工入力値を補正し、この加工入力値に基づいて作製した実用成形型を用いることで、高い精度でレンズを成形することができる。
【0021】
上記方法で測定した型形状測定値は、型形状設計値と比較する。このとき両者の間に差があれば、その差にもとづいて、加工入力値を補正する。差がなければ、加工入力値を変更することなく、暫定型を実用成形型とする。
【0022】
型形状測定を行い、そのデータを型設計値と比較して、両者の差(誤差量)を、中心からの距離に対してプロットすると、例えば図4のようなグラフが得られる。中心部分に対し、外周部分の方が加工抵抗(ここでは、研削抵抗)が大きいために誤差量が大きくなっている。これを補正するためには、中心より外周部分の研削量を大きくするような加工入力値の補正を行ない、再度、型加工を行なえば良い。
加工入力値の補正は、具体的には、生じた誤差量をキャンセルするような加工入力値を入力すること等で行うことができる。
【0023】
また、本発明の第2の製造方法では、暫定型で実際にプレスしてレンズを成形し、得られた暫定レンズの形状測定を行う。暫定レンズの形状測定にあたっては、レンズが凸面の場合には、レンズ外周から光軸部分に向かい、レンズが凹面の場合は、光軸部分から外周に向かって測定することにより、上り方向の測定データを採用する。
【0024】
本発明の成形型の製造方法に用いる、暫定型や実用成形型の材質や形状、構造は特に制限はなく、従来のものをそのまま使用できる。但し、本発明の成形型の製造方法は、傾き角35度以上の面を有するレンズを成形するための成形型の製造方法に特に適している。また、暫定型や実用成形型の作製のための型加工に用いる、研削、切削、研磨のための方法や装置も公知のものを適宜用いることができる。
【0025】
さらに本発明は、上記本発明の製造方法により実用成形型を作製し、得られた実用成形型に成形素材を供給し、成形素材をプレス成形することによりレンズを得ることを含む、球面又は非球面を有するレンズの製造方法を包含する。
【0026】
本発明のレンズの製造方法に用いる成形素材の材質や形状、プレス成形の条件等は公知のものから適宜選択できる。また、プレス成形に用いる成形装置も、ガラスレンズの精密プレスに用いるものを適宜使用すればよい。
【0027】
本発明のレンズの製造方法は、傾き角35度以上の面を有するレンズの製造に特に適しており、傾き角35度以上の面を有するレンズ、例えば、傾き角50〜60度の面を有するレンズであっても、波面収差が0.04λrms以下のものが得られるという効果を有する。
【0028】
本発明は、傾き角35度以上の面を有するレンズ面の中心部分から有効径までの形状を、接触子を用いる形状測定機を用いて測定する方法を包含する。この方法は、接触子がレンズ面に沿って上る方向に測定することを特徴とする。上り方向の測定は、具体的には、レンズが凸面の場合には、レンズ外周から光軸部分に向かい、レンズが凹面の場合は、光軸部分から外周に向かって行うことができる。傾き角35度以上の面を有するレンズ、例えば、傾き角35度以上、60度以下であることができ、傾き角50〜60度の面を有するレンズであっても測定可能である。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
型の表面形状測定において触針式表面粗さ輪郭形状測定機(テーラーホブソン社製フォームタリサーフ)を使用して成形型の曲面の座標データを測定した。具体的には、所望の光学性能をもつレンズ形状設計値を決定し、それを基に、ガラスの熱膨張係数などを加味して、型形状設計値を決定した。この型形状設計値を、加工入力値として研削機に入力し、型加工を行なった。作製した成形型につき図1のように形状測定を行った。形状測定は、型の曲面(図1では凹面)の最下点を探索した後左平坦部までスタイラスを移動させ、その後自動測定にて図1の矢印のように所定距離スタイラスを移動させ、その間に得られる測定データを座標データとして取り込んだ。被測定物の形状が凹であればスタイラスは“下り”→“上り”となり凸であれば “上り” → “下り”となる。
【0030】
測定した座標データ(型形状測定値)を型形状設計値と比較(フィッティング)し、その差異(誤差量)を求めて、図4に示す形状測定データを得た。この誤差量をもとに、研削用の形状補正プログラムを作成し、型を再加工して誤差値のより少ないものを加工する。
【0031】
図4に示す形状測定データによると、中央(光軸部分)が谷となっており、外周付近に向かって誤差量が相対的に大きくなっている。外縁付近では再び減少しているが、この変化は左右非対称である。
【0032】
研削機は、回転する被研削物に対して、砥石によって研削するものであるから、被研削物である成形型は回転対象の形状となる。従って、図4において左右非対称となっているのは、研削の不均一ではなく、形状測定の精度不足が原因していると考えられた。そこで、このデータを、光軸を対称に左右の平均をとり(図7参照)、その平均データを研削用の形状補正プログラムに用いた。
【0033】
この形状補正プログラムにより、型の再加工を行い、再加工された型形状を型形状設計値と比較して誤差量を示したものが図5である。加工入力値を補正したにもかかわらず両端(外縁周辺)において、設計値に対して0.2μmを超える差(誤差)となっている。
【0034】
一方、図4のデータにおいて左右の平均をとらず、右半分のみ(測定機のスタイラスの上り方向のみ)のデータ(図7参照)を用いて、研削用の形状補正プログラムを作成した。この補正により加工された型の形状を図6に示す。(図6では、右半分のみのデータを反転させた左半分のデータも合わせて並べて示した)設計値に対しする誤差量は、0.1μmを大幅に下回り、正しく補正された型形状となったことが検証された。
【0035】
上記のように、スタイラスの上り方向の動きにより得られたデータを用いた成形型形状の測定は、より精度が高く、これにより形状補正された成形型は所望の設計値に近いことが確認された。
【0036】
実施例2
次に、図8に示す形状を有する平凸レンズについて、レンズ形状設計値を基に決定された型形状設計値によって成形型を作製し、この成形型によりプレス成形した。このレンズの曲面側(第1面)の面傾き角度は48°である。
【0037】
要求される光学性能にもとづき、レンズ形状設計値を決定し、それを基に、ガラスの熱膨張係数などを加味して型形状設計値を決定した。この型形状設計値を満足する暫定型を作製し、実際にプレス成形した、ガラスレンズの波面収差をレーザー干渉測定(Zygo社製透過波面収差測定装置)により測定したところ、図9の結果を得た。ここで、同時に測定された波面収差は0.026λrmsであった。
【0038】
次に、このレンズの第1面を、実施例1と同様の触針式の形状測定機により、形状測定し、これをレンズ形状設計値と比較し、図10に示す形状誤差データを得た。図10において、左半分がスタイラスの上り方向、右半分が下り方向である。やはり左右が非対称となっているが、これは形状測定上の精度が不充分なためである。
【0039】
一方、この形状誤差データとレンズ形状設計値を光学設計ソフト(CodeV等)に取り込み、このレンズの波面収差のシミュレーションを行った。図11(a) (上り方向のデータから計算した波面収差図)と図11(b)(下り方向のデータから計算した波面収差図)にその結果を示す。波面収差はそれぞれ、0.025λrms及び0.05λrmsであった。
【0040】
この2つの波面収差図をみると、図11(a)は、その振幅においても、得られた波面収差値においても、図9の実測データにほぼ一致することがわかる。一方で、図11(b)は図9と整合しない。
上記より、保証範囲の35°以上でも、登り方向のデータから計算した波面収差が実測したレンズの波面収差に極めて近い値を示したことより、上り方向のデータの精度が充分に高いことがわかった。同時に成形されたレンズの波面収差値は、0.026λrmsであって、所望の光学性能を満足していた。その結果、暫定型を実用成形型とすることができた。
【0041】
尚、所望の光学性能を満たしていない場合は、スタイラスの上り方向で測定したレンズ形状測定値とレンズ形状設計値との差のデータに基づいて、型形状設計値を補正し、研削用の形状補正プログラムを作成し、それによって実用成形型の加工を行えば良い。上記のように、スタイラスの上り方向の動きにより得られたデータを用いたレンズ形状の測定は、より精度が高く、これにより形状補正された成形型は所望の光学性能を有するレンズを作製するのに適している。
【0042】
本発明の方法によれば、充分に信頼できるレンズの形状測定方法が得られたことにより、暫定レンズをプレス成形した後のレンズ形状誤差を正確に測定できる。
また、レンズ形状測定による測定値とレンズ形状設計値を比較することにより、正確に型形状の修正にフィードバックできることにより成型時に発生するレンズ形状誤差を容易に低減できることとなった。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、金型の形状精度を精度高く数値化することができ、光学素子の高次の収差が補正できるようになった。ガラスレンズの精密プレスに限らず、金型を用いる成形方法であれば、本発明を用いることができる。
【0044】
本発明は、傾き角の大きな非球面を有するレンズを精度高く成形するために、有効に適用される。従来は、例えば傾き角の大きな第1面の信頼できる形状測定のデータが得られなかったため、傾き角の小さい第2面の形状測定データと、レンズの波面収差測定値をもって、測定できない第1面の形状データを補う手法によってしか、精度の高い形状評価はできなかった。しかし、本発明により、信頼できる形状データが直接的に得られ、これに基づいて成形型を製造できるようになった。
【0045】
更に、傾き角の大きな非球面を有する、複数枚のレンズによって構成され、所定の光学性能を有するレンズ群(組レンズ)においては、それぞれのレンズの面形状が精度高く評価されることが非常に重要であり、本発明の効果が更に発揮される。これはレンズ群の光学性能の測定(波面収差など)によって、所定の光学性能に未達であることがわかっても、群の中のどのレンズの面形状修正がどれだけ必要であるか判断できないためである。またレンズ群においては、個々のレンズの波面収差測定が不可能な場合が多く、このため、上記方法(測定できない面形状データをレンズの波面収差測定で補う)は適用できない。本発明によれば、ひとつひとつのレンズ形状を、その形状設計値と比較してレンズ形状を修正することで個々のレンズの形状精度を上げ、形状誤差を最小化して、結果としてレンズ群の精度を上げることができるからである。また、第1面と第2面に、傾き角の大きな非球面を有するレンズにおいても、上記と同様の理由により、本発明が有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スタイラスによる形状測定概略図。
【図2】スタイラスの先端形状を示す。
【図3】触針式の測定機においてスタイラスが接触する、測定対象の面との間の傾き角(θ)を示す。
【図4】標準プログラム形状測定データ。
【図5】補正後形状データ(左右平均補正)。
【図6】補正後形状データ(右側データ補正)。
【図7】補正データ比較。
【図8】実施例2で作製した平凸レンズの形状。
【図9】実施例2で実際にプレス成形したガラスレンズの波面収差をレーザー干渉測定装置により測定した結果。
【図10】形状誤差データ。
【図11】波面収差図。
Claims (8)
- 球面又は非球面を有するレンズを成形する成形型の製造方法において、
所望のレンズ光学性能に基づいてレンズ形状設計値を決定し、
決定したレンズ形状設計値に基づいて型形状設計値を決定し、
決定した型形状設計値に基づいた加工入力値を加工機に入力することにより暫定型を作製し、
作製した暫定型の成形面の型中心から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が成形面に沿って上る方向に測定することにより型形状測定値を求め、
求めた型形状測定値と型形状設計値とに差がある場合、その差に基づいて、加工入力値を補正し、かつ
補正した加工入力値を用いて実用成形型を作製し、
求めた形状測定値と型形状設計値とに実質的な差がない場合には、暫定型を実用成形型とする
ことを特徴とするプレス用成形型の製造方法。 - 球面又は非球面を有するレンズを成形する成形型の製造方法において、
所望のレンズ光学性能に基づいてレンズ形状設計値を決定し、
決定したレンズ形状設計値に基づいて型形状設計値を決定し、
決定した型形状設計値に基づいて暫定型を作製し、
作製した暫定型を用いて、成形可能な温度に加熱した成形素材を成形することにより、暫定レンズを作製し、
作製した暫定レンズ面の中心部分から有効径までの形状を、触針式の形状測定機を用いて、接触子が暫定レンズ面に沿って上る方向に測定することによりレンズ形状測定値を求め、
求めたレンズ形状測定値とレンズ形状設計値とに差がある場合、その差に基づいて、型形状設計値を補正し、かつ
補正した型形状設計値を用いて実用成形型を作製し、
求めたレンズ形状とレンズ形状設計値とに実質的な差がない場合には、暫定型を実用成形型とする
ことを特徴とする成形型の製造方法。 - 請求項1または2に記載の方法により実用成形型を作製し、
得られた実用成形型に成形素材を供給し、
成形素材をプレス成形することによりレンズを得ることを特徴とする
球面又は非球面を有するレンズの製造方法。 - 傾き角35度以上の面を有するレンズを製造する請求項3に記載の製造方法。
- 得られたレンズの波面収差が0.04λrms以下である請求項3または4に記載の製造方法。
- 請求項5に記載の製造方法により製造された光ディスク用ピックアップ。
- 請求項5に記載の製造方法により製造されたレンズを有する光ピックアップレンズ。
- 傾き角35度以上の面を有するレンズ面の中心部分から有効径までの形状を、接触子を用いる形状測定機を用いて測定する方法であって、前記接触子が前記レンズ面に沿って上る方向に測定することを特徴とする測定方法。
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