JP2004084889A - アルミニウム基複合材製ブレーキドラム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋳包んだブレーキドラム16は、外周面23に微細な凹凸を有する。微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成した。微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとした。凹凸を形成するショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用し、ショット粒に角錐形状のアルミナ粒を用いた。
【効果】微細な凹凸を形成する前の表面積より外周面の表面積を30〜50倍に増加させ、放熱を向上させることができる。表面粗さを70〜150μmとすることで、外周面の表面積を増加させ、放熱を向上させることができる。450〜650μmのショット粒で凹凸の均一化を図ることができる。
【選択図】 図1
【効果】微細な凹凸を形成する前の表面積より外周面の表面積を30〜50倍に増加させ、放熱を向上させることができる。表面粗さを70〜150μmとすることで、外周面の表面積を増加させ、放熱を向上させることができる。450〜650μmのショット粒で凹凸の均一化を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両または自動二輪車のドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブレーキにはドラム式ブレーキとディスク式ブレーキがある。
ディスク式ブレーキのディスクにアルミニウム基複合材を使用したものには、例えば、特開平9−279270号公報「耐摩耗性、耐熱性および耐食性を備えた軽量なAl基複合部材」に示されたものがある。
次に、ドラム式ブレーキのブレーキドラムについて説明する。
【0003】
図9は従来のブレーキドラムを備えた車輪の断面図であり、車輪100は、ホイールハブ101にワイヤスポーク102・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)にてリム103を取付け、このリム103にタイヤ104を嵌め、車軸105にてフォーク106,106に回転自在に取付けたものであり、ホイールハブ101に、次の構成からなるドラム式ブレーキ110を備える。
【0004】
ドラム式ブレーキ110は、ホイールハブ101の内周面に嵌合したブレーキドラム112と、ホイールハブ101の側面を塞ぐように配置したカップ部材113と、このカップ部材113に取付けたブレーキシュー114と、このブレーキシュー114をブレーキドラム112に押圧する作用をなすカムピン116、レバー117およびブレーキワイヤ118とからなる。
すなわち、ブレーキワイヤ118の引き作用でレバー117およびカムピン116を廻し、ブレーキシュー114をブレーキドラム112に押しつけることで、制動を掛ける形式のブレーキをドラム式ブレーキと呼ぶ。
ホイールハブ101の材質は、アルミニウム合金である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
制動時には、ブレーキドラム112とブレーキシュー114との間で摩擦による熱が発生する。上記図9の従来のブレーキドラム112では、発生した熱は、ホイールハブ101の外周面から逃げるが、出力が大きいエンジンを搭載した自動二輪車の場合、より放熱性のよいドラム式ブレーキの開発が望まれていた。
【0006】
放熱性を高めるために、外面に溝を加工した構造もあるが、溝を有する構造にすると、溝の機械加工に手間がかかる。
また、外面に溝を加工すると、ブレーキドラムの素材の肉厚を厚くする必要があり、ブレーキドラムの素材にアルミニウム基複合材を選択した場合、高価なアルミニウム基複合材の使用量が増加し、材料費が嵩む。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放熱性の向上を図り、生産コストを削減するアルミニウム基複合材製ブレーキドラム及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、ドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラムであって、平滑な面の表面積を分母とし、凹凸を含む面の表面積を分子として求めた値を比表面積というときに、ブレーキドラムは、外周面に微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成したことを特徴とする。
【0009】
微細な凹凸を比表面積が30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成したので、外周面の表面積は、微細な凹凸によって、微細な凹凸を形成する前の表面積より30〜50倍に増加し、放熱量が大きくなる。その結果、ブレーキドラムに発生した制動時の熱を微細な凹凸から効率よくホイールハブへ伝導することができる。
【0010】
比表面積が30cm2/cm2未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱はあまり増加しない。
比表面積が50cm2/cm2を超えると、凹凸の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積を30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積を50cm2/cm2以下とした。
【0011】
請求項2は、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとしたことを特徴とする。
表面粗さが70μm未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さが150μmを超えると、ショットブラストでの凹凸の形成は難しく、機械加工で凹凸を加工することになる。機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さを150μm以下とした。
【0012】
また、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmの範囲とすることで、凹凸の凹の深さを規制する。その結果、ブレーキドラムの厚さを大きく変えることなく、外周面の表面積を大きくすることができ、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑えることができる。
【0013】
請求項3は、アルミニウム製ホイールハブに鋳包むのに際し、外周面をショットブラストで粗面にするアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの製造方法であって、ショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したことを特徴とする。
【0014】
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
このような観点から、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したので、微細な凹凸の均一化を図りやすく、生産効率は向上する。
【0015】
請求項4では、ショット粒は、角錐形状のアルミナ粒であることを特徴とする。
角錐形状の角でショット粒を楔のように外周面に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
アルミナ粒を用いることで、アルミニウム製ホイールハブの材質およびブレーキドラムの材質と同等の材質とする。その結果、アルミナ粒がブレーキドラムの外周面に衝突した際に、凹にアルミナ粒が食い込んで残ったり、凹にアルミナ粒の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブとブレーキドラムとの間に介在するものは異材とならず、線膨張係数の違いによる剥離の起点はなく、剥離を防げる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの断面図であり、スポークホイールのホイールハブ10ならびにドラム式ブレーキ11を示す。
【0017】
ホイールハブ10は、中央の軸部12と、この軸部12の一端から一体に成形したドラム部13と、このドラム部13の外部に形成した放熱部14およびハブ部15と、ドラム部13の内部に一体鋳造したブレーキドラム16と、からなる。 ホイールハブ10の材質は、例えば、アルミニウム合金(JIS AC2相当)である。
【0018】
ドラム式ブレーキ11は、ホイールハブ10と、このホイールハブ10の内部に納めたブレーキシュー17,18とを有する。
ブレーキシュー17は、円弧状のシュー21と、このシュー21に接着したライニング22とからなる。ブレーキシュー18は、ブレーキシュー17と同様であり、説明を省略する。
【0019】
ブレーキドラム16は、外周面23がホイールハブ10に一体的に密着したものであり、ホイールハブ10とともに回転し、且つ、ホイールハブ10とともに停止するものである。
【0020】
図2は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの斜視図であり、ホイールハブ10と、ドラム式ブレーキ11のブレーキシュー17,18と、シュー21,21と、シュー21,21にそれぞれ接着したライニング22,22と、ホイールハブ10の中央の軸部12と、ドラム部13と、 ドラム部13の内部に一体鋳造したブレーキドラム16を示す。
【0021】
図3は本発明に係るブレーキドラムの斜視図であり、ブレーキドラム16は、既に説明したように、ホイールハブに接合する外周面23と、ブレーキシューが押圧する内周面24とからなり、厚さをt、幅をWに設定したリング状のものである。
ブレーキドラム16の材質は、アルミニウム基複合材である。
外周面23は、微細な凹凸25を形成した面で、微細な凹凸25は、比表面積が30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成した面である。
【0022】
比表面積は、平滑な面の表面積を分母とし、微細な凹凸25を含む面の表面積を分子として求めた値である。凹凸25を含む面の表面積の測定は、例えば、BET法で実施する。平滑な面とは、表面粗さを例えば8μmRy(JIS B 0601)以下に形成した面である。
ここで、平滑な面の表面積をA(cm2),凹凸を含む面の表面積をAd(cm2),比表面積をArとしたときに、比表面積Arは、Ar=Ad/Aである。
なお、ここでは、比表面積をcm2/cm2で表わすこととする。
【0023】
以上に述べた本発明に係るブレーキドラムの作用を次に説明する。
図4は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの作用図であり、図1の4部詳細図である。
ブレーキドラム16は、外周面23に微細な凹凸25(山26、谷27)を比表面積Arが30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成した構造なので、微細な凹凸25(山26、谷27)によって、外周面23の表面積を微細な凹凸25を形成する前の表面積より30〜50倍に増加させることができ、放熱を向上させることができる。その結果、ブレーキドラム16に発生した制動時の熱31を微細な凹凸25(山26、谷27)の面から矢印▲1▼,▲1▼の如く効率よく放熱することができると同時に、ホイールハブ10(ドラム部13)へ熱を効率よく伝導することができる。従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラム16の放熱性の向上を図ることができる。
【0024】
比表面積Arが30cm2/cm2未満になると、外周面23の表面積の増加は小さく、外周面23からの放熱の量はあまり増加しない。
比表面積Arが50を超えると、凹凸25の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸25を形成すると、ブレーキドラム16の生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積Arを30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積Arを50cm2/cm2以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0025】
また、比表面積Arが30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成するので、微細な凹凸25の山26の高さの規制値、谷27の深さならびに間隔の規制値を厳しく(小さく)する必要がなく、微細な凹凸25の形成作業は容易になり、生産コストを削減することができる。
【0026】
次に、本発明に係るブレーキドラムの別実施の形態を示す。
図5は図3の別実施の形態図であり、上記図3、図4に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
ブレーキドラム16Bは、ホイールハブに接合する外周面23Bを有し、外周面23Bに微細な凹凸33を形成した。
微細な凹凸33は、表面粗さRyを70〜150μmの範囲としたことを特徴とする。
【0027】
別実施の形態のブレーキドラム16Bでは、ブレーキドラム16(図4参照)と同様の効果を発揮することができる。つまり、アルミニウム基複合材製ブレーキドラム16Bの放熱性の向上を図ることができる。
【0028】
微細な凹凸33の表面粗さRyを70〜150μmの範囲とすることで、ブレーキドラム16(図4参照)と同様の効果を発揮することができる。
表面粗さRyが70μm未満になると、外周面23Bの表面積の増加は小さく、外周面23Bからの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さRyが150μmを超えると、ショットブラストでの形成は難しく、機械加工で凹凸33を加工することになる。機械加工で凹凸33を形成すると、ブレーキドラム16Bの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さRyを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さRyを150μm以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0029】
また、微細な凹凸33の表面粗さRyを70〜150μmの範囲としたので、凹凸33の谷27(図4参照)の深さは規制され、ブレーキドラム16Bの厚さtを大きく変えることなく、外周面23Bの表面積を大きくすることができる。その結果、アルミニウム基複合材の肉厚を厚くする必要はなく、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑制することができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0030】
次に、本発明に係る表面粗さと比表面積の関係を補足説明する。
図6は、表面粗さと比表面積の関係を示したグラフであり、横軸を表面粗さRyとし、縦軸を比表面積Arとしたものである。
表面粗さRyと比表面積Arは比例する。
表面粗さRy70μmのときの凹凸を含む面の表面積と比表面積Ar30cm2/cm2のときの凹凸を含む面の表面積とはほぼ同じである。
表面粗さRy150μmのときの凹凸を含む面の表面積と比表面積Ar50のときの凹凸を含む面の表面積とはほぼ同じである。
【0031】
次に、本発明に係るブレーキドラムの製造方法について説明する。
図7(a),(b)は本発明に係るブレーキドラムの製造方法の素材工程説明図である。
(a):まず、アルミニウム基複合材のビレット39を製造する(例えば、特開2000−233271参照)。その次に、アルミニウム基複合材ビレット39をコンテナ41に挿入し、ラム42で押出すことにより、ダイス43とマンドレル44の間を通して、筒45に成形する。
【0032】
(b):押出し後の筒45を所定幅Wに突切りバイト46で突切り、アルミニウム基複合材のブレーキドラムの素材47を得る。この素材47をショットブラスト工程へ搬送する。
【0033】
図8(a)〜(d)は本発明に係るショットブラスト工程およびブレーキドラムの鋳包み工程説明図である。(b)は(a)のb部詳細図である。
(a):ショットブラスト工程は、素材47をターニング装置51に固定し、ショットブラスト装置52で外周面23にショット粒53を吹き付けることで微細な凹凸33を形成し、ブレーキドラム16((c)参照)を完成させる。
【0034】
(b):ショット粒53は、粉砕粉であり、平均粒径Dが450〜650μmで、形状を角錐形状としたものである。
ショット粒53の材質は、アルミナ(Al2O3)粒である。
【0035】
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹(谷)を形成し難く、凹(谷)の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹を形成し難く、凹の均一化を図り難い。
【0036】
このようにショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒53を使用したので、凹凸33の均一化を図ることができ、凹凸33の加工は容易である。従って、生産コストを削減することができる。
【0037】
ショット粒53の形状は、角錐形状であり、角錐形状の角を楔のように外周面23に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
【0038】
ショット粒53の材質はアルミナ(Al2O3)であり、ショット粒53の材質をアルミナにすると、ブレーキドラムの素材47の外周面23にアルミナ粒を衝突させた際に、凹にショット粒53が食い込んで残ったり、ショット粒53の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブ10(図1参照)とブレーキドラム16(図1参照)の間に介在する材質は異材とならない。その結果、介在物の線膨張係数の違いにより生じるライナの剥離を防止することができる。
【0039】
(c):ブレーキドラム16,16をブレーキドラムの鋳型54内にセットし、ダイカスト機55でアルミニウム合金の溶湯を充填する。
(b):ブレーキドラムを鋳包んだホイールハブの鋳物56を得る。
【0040】
尚、本発明の実施の形態に示した図3の微細な凹凸を含む面の表面積の算出に「比表面積」を用い、割合で表わしたが、算出法や表わし方は任意であり、換算した結果がほぼ同じであればよい。
図7、図8の製造方法に用いた装置や型は一例である。
【0041】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、ドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラムは、外周面に微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成したので、微細な凹凸によって、外周面の表面積を微細な凹凸を形成する前の表面積より30〜50倍に増加させることができ、放熱を向上させることができる。その結果、ブレーキドラムに発生した制動時の熱を微細な凹凸から効率よく放熱することができると同時に、ホイールハブへ熱を伝導することができる。従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができる。
【0042】
比表面積が30cm2/cm2未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
比表面積が50を超えると、凹凸の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積を30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積を50cm2/cm2以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0043】
請求項2では、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとした。
表面粗さが70μm未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さが150μmを超えると、ショットブラストでの凹凸の形成は難しく、機械加工で凹凸を加工することになる。機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さを150μm以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0044】
また、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmの範囲としたので、凹凸の凹の深さは規制され、ブレーキドラムの厚さを大きく変えることなく、外周面の表面積を大きくすることができる。その結果、アルミニウム基複合材の肉厚を厚くする必要はなく、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑制することができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0045】
請求項3は、アルミニウム製ホイールハブに鋳包むブレーキドラムの外周面を粗面にするショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用した。
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
このような観点から、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したので、微細な凹凸の均一化を図ることができ、凹凸の加工は容易である。従って、生産コストを削減することができる。
【0046】
請求項4では、ショット粒は、角錐形状であり、角錐形状の角でショット粒を楔のように外周面に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
また、ショット粒は、アルミナ粒であり、アルミナ粒を用いることで、アルミニウム製ホイールハブの材質およびブレーキドラムの材質と同等の材質とする。その結果、アルミナ粒がブレーキドラムの外周面に衝突した際に、凹にアルミナ粒が食い込んで残ったり、凹にアルミナ粒の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブとブレーキドラムとの間に介在するものは異材とならず、線膨張係数の違いによる剥離の起点はなく、剥離防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの断面図
【図2】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの斜視図
【図3】本発明に係るブレーキドラムの斜視図
【図4】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの作用図
【図5】図3の別実施の形態図
【図6】表面粗さと比表面積の関係を示したグラフ
【図7】本発明に係るブレーキドラムの製造方法の素材工程説明図
【図8】本発明に係るショットブラスト工程およびブレーキドラムの鋳包み工程説明図
【図9】従来のブレーキドラムを備えた車輪の断面図
【符号の説明】
10…ホイールハブ、11…ドラム式ブレーキ、16,16B…ブレーキドラム、23,23B…外周面、25,33…微細な凹凸、53…ショット粒、Ar…比表面積、D…平均粒径、Ry…表面粗さ。
【発明の属する技術分野】
本発明は車両または自動二輪車のドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブレーキにはドラム式ブレーキとディスク式ブレーキがある。
ディスク式ブレーキのディスクにアルミニウム基複合材を使用したものには、例えば、特開平9−279270号公報「耐摩耗性、耐熱性および耐食性を備えた軽量なAl基複合部材」に示されたものがある。
次に、ドラム式ブレーキのブレーキドラムについて説明する。
【0003】
図9は従来のブレーキドラムを備えた車輪の断面図であり、車輪100は、ホイールハブ101にワイヤスポーク102・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)にてリム103を取付け、このリム103にタイヤ104を嵌め、車軸105にてフォーク106,106に回転自在に取付けたものであり、ホイールハブ101に、次の構成からなるドラム式ブレーキ110を備える。
【0004】
ドラム式ブレーキ110は、ホイールハブ101の内周面に嵌合したブレーキドラム112と、ホイールハブ101の側面を塞ぐように配置したカップ部材113と、このカップ部材113に取付けたブレーキシュー114と、このブレーキシュー114をブレーキドラム112に押圧する作用をなすカムピン116、レバー117およびブレーキワイヤ118とからなる。
すなわち、ブレーキワイヤ118の引き作用でレバー117およびカムピン116を廻し、ブレーキシュー114をブレーキドラム112に押しつけることで、制動を掛ける形式のブレーキをドラム式ブレーキと呼ぶ。
ホイールハブ101の材質は、アルミニウム合金である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
制動時には、ブレーキドラム112とブレーキシュー114との間で摩擦による熱が発生する。上記図9の従来のブレーキドラム112では、発生した熱は、ホイールハブ101の外周面から逃げるが、出力が大きいエンジンを搭載した自動二輪車の場合、より放熱性のよいドラム式ブレーキの開発が望まれていた。
【0006】
放熱性を高めるために、外面に溝を加工した構造もあるが、溝を有する構造にすると、溝の機械加工に手間がかかる。
また、外面に溝を加工すると、ブレーキドラムの素材の肉厚を厚くする必要があり、ブレーキドラムの素材にアルミニウム基複合材を選択した場合、高価なアルミニウム基複合材の使用量が増加し、材料費が嵩む。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放熱性の向上を図り、生産コストを削減するアルミニウム基複合材製ブレーキドラム及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、ドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラムであって、平滑な面の表面積を分母とし、凹凸を含む面の表面積を分子として求めた値を比表面積というときに、ブレーキドラムは、外周面に微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成したことを特徴とする。
【0009】
微細な凹凸を比表面積が30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成したので、外周面の表面積は、微細な凹凸によって、微細な凹凸を形成する前の表面積より30〜50倍に増加し、放熱量が大きくなる。その結果、ブレーキドラムに発生した制動時の熱を微細な凹凸から効率よくホイールハブへ伝導することができる。
【0010】
比表面積が30cm2/cm2未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱はあまり増加しない。
比表面積が50cm2/cm2を超えると、凹凸の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積を30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積を50cm2/cm2以下とした。
【0011】
請求項2は、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとしたことを特徴とする。
表面粗さが70μm未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さが150μmを超えると、ショットブラストでの凹凸の形成は難しく、機械加工で凹凸を加工することになる。機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さを150μm以下とした。
【0012】
また、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmの範囲とすることで、凹凸の凹の深さを規制する。その結果、ブレーキドラムの厚さを大きく変えることなく、外周面の表面積を大きくすることができ、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑えることができる。
【0013】
請求項3は、アルミニウム製ホイールハブに鋳包むのに際し、外周面をショットブラストで粗面にするアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの製造方法であって、ショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したことを特徴とする。
【0014】
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
このような観点から、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したので、微細な凹凸の均一化を図りやすく、生産効率は向上する。
【0015】
請求項4では、ショット粒は、角錐形状のアルミナ粒であることを特徴とする。
角錐形状の角でショット粒を楔のように外周面に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
アルミナ粒を用いることで、アルミニウム製ホイールハブの材質およびブレーキドラムの材質と同等の材質とする。その結果、アルミナ粒がブレーキドラムの外周面に衝突した際に、凹にアルミナ粒が食い込んで残ったり、凹にアルミナ粒の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブとブレーキドラムとの間に介在するものは異材とならず、線膨張係数の違いによる剥離の起点はなく、剥離を防げる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの断面図であり、スポークホイールのホイールハブ10ならびにドラム式ブレーキ11を示す。
【0017】
ホイールハブ10は、中央の軸部12と、この軸部12の一端から一体に成形したドラム部13と、このドラム部13の外部に形成した放熱部14およびハブ部15と、ドラム部13の内部に一体鋳造したブレーキドラム16と、からなる。 ホイールハブ10の材質は、例えば、アルミニウム合金(JIS AC2相当)である。
【0018】
ドラム式ブレーキ11は、ホイールハブ10と、このホイールハブ10の内部に納めたブレーキシュー17,18とを有する。
ブレーキシュー17は、円弧状のシュー21と、このシュー21に接着したライニング22とからなる。ブレーキシュー18は、ブレーキシュー17と同様であり、説明を省略する。
【0019】
ブレーキドラム16は、外周面23がホイールハブ10に一体的に密着したものであり、ホイールハブ10とともに回転し、且つ、ホイールハブ10とともに停止するものである。
【0020】
図2は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの斜視図であり、ホイールハブ10と、ドラム式ブレーキ11のブレーキシュー17,18と、シュー21,21と、シュー21,21にそれぞれ接着したライニング22,22と、ホイールハブ10の中央の軸部12と、ドラム部13と、 ドラム部13の内部に一体鋳造したブレーキドラム16を示す。
【0021】
図3は本発明に係るブレーキドラムの斜視図であり、ブレーキドラム16は、既に説明したように、ホイールハブに接合する外周面23と、ブレーキシューが押圧する内周面24とからなり、厚さをt、幅をWに設定したリング状のものである。
ブレーキドラム16の材質は、アルミニウム基複合材である。
外周面23は、微細な凹凸25を形成した面で、微細な凹凸25は、比表面積が30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成した面である。
【0022】
比表面積は、平滑な面の表面積を分母とし、微細な凹凸25を含む面の表面積を分子として求めた値である。凹凸25を含む面の表面積の測定は、例えば、BET法で実施する。平滑な面とは、表面粗さを例えば8μmRy(JIS B 0601)以下に形成した面である。
ここで、平滑な面の表面積をA(cm2),凹凸を含む面の表面積をAd(cm2),比表面積をArとしたときに、比表面積Arは、Ar=Ad/Aである。
なお、ここでは、比表面積をcm2/cm2で表わすこととする。
【0023】
以上に述べた本発明に係るブレーキドラムの作用を次に説明する。
図4は本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの作用図であり、図1の4部詳細図である。
ブレーキドラム16は、外周面23に微細な凹凸25(山26、谷27)を比表面積Arが30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成した構造なので、微細な凹凸25(山26、谷27)によって、外周面23の表面積を微細な凹凸25を形成する前の表面積より30〜50倍に増加させることができ、放熱を向上させることができる。その結果、ブレーキドラム16に発生した制動時の熱31を微細な凹凸25(山26、谷27)の面から矢印▲1▼,▲1▼の如く効率よく放熱することができると同時に、ホイールハブ10(ドラム部13)へ熱を効率よく伝導することができる。従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラム16の放熱性の向上を図ることができる。
【0024】
比表面積Arが30cm2/cm2未満になると、外周面23の表面積の増加は小さく、外周面23からの放熱の量はあまり増加しない。
比表面積Arが50を超えると、凹凸25の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸25を形成すると、ブレーキドラム16の生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積Arを30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積Arを50cm2/cm2以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0025】
また、比表面積Arが30〜50cm2/cm2の範囲になるように形成するので、微細な凹凸25の山26の高さの規制値、谷27の深さならびに間隔の規制値を厳しく(小さく)する必要がなく、微細な凹凸25の形成作業は容易になり、生産コストを削減することができる。
【0026】
次に、本発明に係るブレーキドラムの別実施の形態を示す。
図5は図3の別実施の形態図であり、上記図3、図4に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
ブレーキドラム16Bは、ホイールハブに接合する外周面23Bを有し、外周面23Bに微細な凹凸33を形成した。
微細な凹凸33は、表面粗さRyを70〜150μmの範囲としたことを特徴とする。
【0027】
別実施の形態のブレーキドラム16Bでは、ブレーキドラム16(図4参照)と同様の効果を発揮することができる。つまり、アルミニウム基複合材製ブレーキドラム16Bの放熱性の向上を図ることができる。
【0028】
微細な凹凸33の表面粗さRyを70〜150μmの範囲とすることで、ブレーキドラム16(図4参照)と同様の効果を発揮することができる。
表面粗さRyが70μm未満になると、外周面23Bの表面積の増加は小さく、外周面23Bからの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さRyが150μmを超えると、ショットブラストでの形成は難しく、機械加工で凹凸33を加工することになる。機械加工で凹凸33を形成すると、ブレーキドラム16Bの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さRyを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さRyを150μm以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0029】
また、微細な凹凸33の表面粗さRyを70〜150μmの範囲としたので、凹凸33の谷27(図4参照)の深さは規制され、ブレーキドラム16Bの厚さtを大きく変えることなく、外周面23Bの表面積を大きくすることができる。その結果、アルミニウム基複合材の肉厚を厚くする必要はなく、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑制することができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0030】
次に、本発明に係る表面粗さと比表面積の関係を補足説明する。
図6は、表面粗さと比表面積の関係を示したグラフであり、横軸を表面粗さRyとし、縦軸を比表面積Arとしたものである。
表面粗さRyと比表面積Arは比例する。
表面粗さRy70μmのときの凹凸を含む面の表面積と比表面積Ar30cm2/cm2のときの凹凸を含む面の表面積とはほぼ同じである。
表面粗さRy150μmのときの凹凸を含む面の表面積と比表面積Ar50のときの凹凸を含む面の表面積とはほぼ同じである。
【0031】
次に、本発明に係るブレーキドラムの製造方法について説明する。
図7(a),(b)は本発明に係るブレーキドラムの製造方法の素材工程説明図である。
(a):まず、アルミニウム基複合材のビレット39を製造する(例えば、特開2000−233271参照)。その次に、アルミニウム基複合材ビレット39をコンテナ41に挿入し、ラム42で押出すことにより、ダイス43とマンドレル44の間を通して、筒45に成形する。
【0032】
(b):押出し後の筒45を所定幅Wに突切りバイト46で突切り、アルミニウム基複合材のブレーキドラムの素材47を得る。この素材47をショットブラスト工程へ搬送する。
【0033】
図8(a)〜(d)は本発明に係るショットブラスト工程およびブレーキドラムの鋳包み工程説明図である。(b)は(a)のb部詳細図である。
(a):ショットブラスト工程は、素材47をターニング装置51に固定し、ショットブラスト装置52で外周面23にショット粒53を吹き付けることで微細な凹凸33を形成し、ブレーキドラム16((c)参照)を完成させる。
【0034】
(b):ショット粒53は、粉砕粉であり、平均粒径Dが450〜650μmで、形状を角錐形状としたものである。
ショット粒53の材質は、アルミナ(Al2O3)粒である。
【0035】
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹(谷)を形成し難く、凹(谷)の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹を形成し難く、凹の均一化を図り難い。
【0036】
このようにショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒53を使用したので、凹凸33の均一化を図ることができ、凹凸33の加工は容易である。従って、生産コストを削減することができる。
【0037】
ショット粒53の形状は、角錐形状であり、角錐形状の角を楔のように外周面23に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
【0038】
ショット粒53の材質はアルミナ(Al2O3)であり、ショット粒53の材質をアルミナにすると、ブレーキドラムの素材47の外周面23にアルミナ粒を衝突させた際に、凹にショット粒53が食い込んで残ったり、ショット粒53の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブ10(図1参照)とブレーキドラム16(図1参照)の間に介在する材質は異材とならない。その結果、介在物の線膨張係数の違いにより生じるライナの剥離を防止することができる。
【0039】
(c):ブレーキドラム16,16をブレーキドラムの鋳型54内にセットし、ダイカスト機55でアルミニウム合金の溶湯を充填する。
(b):ブレーキドラムを鋳包んだホイールハブの鋳物56を得る。
【0040】
尚、本発明の実施の形態に示した図3の微細な凹凸を含む面の表面積の算出に「比表面積」を用い、割合で表わしたが、算出法や表わし方は任意であり、換算した結果がほぼ同じであればよい。
図7、図8の製造方法に用いた装置や型は一例である。
【0041】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、ドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラムは、外周面に微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成したので、微細な凹凸によって、外周面の表面積を微細な凹凸を形成する前の表面積より30〜50倍に増加させることができ、放熱を向上させることができる。その結果、ブレーキドラムに発生した制動時の熱を微細な凹凸から効率よく放熱することができると同時に、ホイールハブへ熱を伝導することができる。従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができる。
【0042】
比表面積が30cm2/cm2未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
比表面積が50を超えると、凹凸の形成に手間がかかる。例えば、機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、制動時の放熱対策の観点から比表面積を30cm2/cm2以上とし、生産コストの観点から比表面積を50cm2/cm2以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0043】
請求項2では、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとした。
表面粗さが70μm未満になると、外周面の表面積の増加は小さく、外周面からの放熱の量はあまり増加しない。
表面粗さが150μmを超えると、ショットブラストでの凹凸の形成は難しく、機械加工で凹凸を加工することになる。機械加工で凹凸を形成すると、ブレーキドラムの生産コストが嵩む。
つまり、所望の大きさの表面積を確保する観点から表面粗さを70μm以上とし、生産コストの観点から表面粗さを150μm以下とした。
従って、アルミニウム基複合材製ブレーキドラムの放熱性の向上を図ることができるとともに、生産コストを削減することができる。
【0044】
また、微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmの範囲としたので、凹凸の凹の深さは規制され、ブレーキドラムの厚さを大きく変えることなく、外周面の表面積を大きくすることができる。その結果、アルミニウム基複合材の肉厚を厚くする必要はなく、高価なアルミニウム基複合材の使用量を抑制することができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0045】
請求項3は、アルミニウム製ホイールハブに鋳包むブレーキドラムの外周面を粗面にするショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用した。
平均粒径が450μm未満になると、粒径が小さく、所望の形状(深さや直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
平均粒径が650μmを超えると、粒径が大きく、所望の形状(間隔や直径)の凹凸を形成し難く、凹凸の均一化を図り難い。
このような観点から、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したので、微細な凹凸の均一化を図ることができ、凹凸の加工は容易である。従って、生産コストを削減することができる。
【0046】
請求項4では、ショット粒は、角錐形状であり、角錐形状の角でショット粒を楔のように外周面に打ち込むことで、所望の形状(深さや直径)の凹を形成しやすくする。
また、ショット粒は、アルミナ粒であり、アルミナ粒を用いることで、アルミニウム製ホイールハブの材質およびブレーキドラムの材質と同等の材質とする。その結果、アルミナ粒がブレーキドラムの外周面に衝突した際に、凹にアルミナ粒が食い込んで残ったり、凹にアルミナ粒の破片が残ったりしても、鋳包んだ後にホイールハブとブレーキドラムとの間に介在するものは異材とならず、線膨張係数の違いによる剥離の起点はなく、剥離防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの断面図
【図2】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムを用いたホイールハブの斜視図
【図3】本発明に係るブレーキドラムの斜視図
【図4】本発明に係るアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの作用図
【図5】図3の別実施の形態図
【図6】表面粗さと比表面積の関係を示したグラフ
【図7】本発明に係るブレーキドラムの製造方法の素材工程説明図
【図8】本発明に係るショットブラスト工程およびブレーキドラムの鋳包み工程説明図
【図9】従来のブレーキドラムを備えた車輪の断面図
【符号の説明】
10…ホイールハブ、11…ドラム式ブレーキ、16,16B…ブレーキドラム、23,23B…外周面、25,33…微細な凹凸、53…ショット粒、Ar…比表面積、D…平均粒径、Ry…表面粗さ。
Claims (4)
- ドラム式ブレーキに用いるアルミニウム基複合材製ブレーキドラムであって、
平滑な面の表面積を分母とし、凹凸を含む面の表面積を分子として求めた値を比表面積というときに、
前記ブレーキドラムは、外周面に微細な凹凸を比表面積30〜50cm2/cm2の範囲に形成したことを特徴とするアルミニウム基複合材製ブレーキドラム。 - 前記微細な凹凸の表面粗さを70〜150μmとしたことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材製ブレーキドラム。
- アルミニウム製ホイールハブに鋳包むのに際し、外周面をショットブラストで粗面にするアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの製造方法であって、
前記ショットブラスト工程では、平均粒径が450〜650μmのショット粒を使用したことを特徴とするアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの製造方法。 - 前記ショット粒は、角錐形状のアルミナ粒であることを特徴とする請求項3記載のアルミニウム基複合材製ブレーキドラムの製造方法。
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2002
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